説明

電荷輸送性ワニス

電荷輸送性モノマー又は数平均分子量200〜50万の電荷輸送性オリゴマー若しくはポリマーからなる電荷輸送物質、又はこの電荷輸送物質及び電子若しくは正孔受容性ドーパント物質からなる電荷輸送性有機材料と、20℃で10〜200mPa・sの粘度を有する少なくとも1種の高粘度溶剤を含む溶剤とを含有し、電荷輸送物質又は電荷輸送性有機材料が溶剤中に溶解または均一に分散しているワニスを電荷輸送性ワニスとして用いることにより、低分子量の電荷輸送物質及び電荷受容性ドーパント物質を使用する系においても高い均一成膜性を有し、特にOLED素子及びPLED素子中で用いる事によって、優れたEL素子特性、即ち低駆動電圧,高発光効率,長寿命等を実現し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、電荷輸送性ワニス、並びにこれを用いた電荷輸送性薄膜、有機エレクトロルミネッセンス(以下有機ELと略す)素子及び太陽電池に関する。
【背景技術】
有機EL素子は、低分子系有機EL(以下、OLEDと略す)素子と高分子系有機EL(以下、PLEDと略す)素子とに大別される。
OLED素子では、銅フタロシアニン(CuPC)層を正孔注入層として設ける事によって、低駆動電圧、高発光効率等の初期特性や、寿命特性を向上し得ることが報告されている(例えば、非特許文献1:アプライド・フィジックス・レターズ(Applied Physics Letters)、米国、1996年、69巻、p.2160−2162参照)。
PLED素子では、ポリアニリン系材料(例えば、非特許文献2:ネイチャー(Nature)、英国、1992年、第357巻、p.477−479、非特許文献3:アプライド・フィジックス・レターズ(Applied Physics Letters)、米国、1994年、64巻、p.1245−1247参照)や、ポリチオフェン系材料(例えば、非特許文献4:アプライド・フィジックス・レターズ(Applied Physics Letters)、米国、1998年、72巻、p.2660−2662参照)を、正孔輸送層(バッファ層)として用いる事によって、上記OLED素子の場合と同様の効果が得られる事が報告されている。
有機EL素子の陰極側においても、金属酸化物(例えば、非特許文献5:アイイーイーイー・トランサクションズ・オン・エレクトロン・デバイシイズ(IEEE Transactions on Electron Devices)、米国、1997年、44巻、p.1245−1248参照)、金属ハロゲン化物(例えば、非特許文献6:アプライド・フィジックス・レターズ(Applied Physics Letters)、米国、1997年、70巻、p.152−154参照)、金属錯体(例えば、非特許文献7:ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Japanese Journal of Applied Physics)、1999年、第38巻、p.1348−1350参照)などを電子注入層として用いる事によって、初期特性が向上する事が報告され、これらの電荷注入層、バッファ層は一般的に使用されるようになった。
OLED素子用正孔注入材料には蒸着系材料が広く用いられている。この蒸着系材料の問題点としては、非晶質固体、昇華性、高耐熱性、適切なイオン化ポテンシャル(以下Iと略す)等の様々な特性が必要となること、そのため材料系が限られることが挙げられる。また蒸着系材料ではドーピングが困難であることから、高い電荷輸送性を発揮させることが難しく、結果として電荷注入効率を上げにくい。よく用いられる正孔注入材料であるCuPCは凹凸が激しく、また、この材料が他の有機層に微量混入する事によって特性を低下させるなどの欠点がある。
PLED素子用正孔輸送材料としては、高い電荷輸送性、トルエン等の発光ポリマー溶剤への不溶性、適切なI等の要求特性がある。現在よく用いられているポリアニリン系材料、ポリチオフェン系材料は、素子劣化を促進する可能性のある水を溶剤として含む事、溶解性が低いため溶剤の選択肢が限られる事、材料の凝集が生じ易い事、均一な成膜ができる方法が限られる事等の問題点を含んでいる。
ところで最近、電荷輸送物質に低分子オリゴアニリン系材料を用いた有機溶液系の電荷輸送性ワニスが見出され、これを使用して得られる正孔注入層を有機EL素子内に挿入する事によって、優れたEL素子特性を示す事が報告されている(例えば、特許文献1:特開2002−151272号公報参照)。
しかしながら、この低分子量の電荷輸送物質あるいはこれに電荷受容性ドーパント物質を加えた電荷輸送性ワニスは、高い平坦性を示す成膜が難しい場合がある。のみならず、電荷輸送物質の分子量が低いために通常その粘度も低いことから、ワニスの粘度も必然的に低くなり、印刷法やインクジェット法等種々の塗布プロセスへの対応が困難な場合がある。
一般にワニスの粘度調整は、材料の分子量を変化させたり、増粘剤を添加したりすることによって行われる事が多い。
しかし、電荷輸送性材料の分子量を変えると、それに伴って電荷輸送性、I、溶解性、モルホロジー等の様々な物性が大きく変化し、このため粘度以外の物性の維持が困難になるという問題がある。一方、増粘剤の添加による方法では、その添加により電荷輸送性が低下する傾向にあるという問題がある。
このような理由から、電荷輸送性等のその他の性質を維持しつつ、ワニスの粘度を適度な値に調整することは、困難であった。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、低分子量の電荷輸送物質及び電荷受容性ドーパント物質を使用する系においても高い均一成膜性を有し、特にOLED素子及びPLED素子中で用いる事によって、優れたEL素子特性、即ち低駆動電圧,高発光効率,長寿命等を実現する電荷輸送性ワニス、並びにこれを用いた電荷輸送性薄膜、有機EL素子及び太陽電池を提供する事を目的とする。
【発明の開示】
本発明者らは、有機電荷輸送物質、特に数平均分子量5000以下の電荷輸送性オリゴマー物質等が、π−πスタッキング効果による強い分子間力を有しており、分子量の十分大きいポリマー材料と比較して材料の分散力が乏しいため、これに溶剤を加えてワニスを調製して成膜を試みた場合、ワニス塗布後の溶剤蒸発時に材料の凝集現象により、膜の凹凸が発生する可能性が高いことを知見した。この知見を基に、本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、所定の電荷輸送物質、又は電荷輸送物質及びドーパントからなる電荷輸送性有機材料と、所定粘度の高粘度溶剤を含む溶剤とを備えて構成され、電荷輸送物質等が溶剤に溶解あるいは均一に分散しているワニスが、比較的低い流動性を有しており、成膜時における溶剤の蒸発による材料及び溶剤の凝集を抑えることができ、その結果、高い均一成膜性を有する薄膜の作製が可能である事を見出すとともに、このワニスから形成される薄膜を有機EL素子の正孔注入層として用いる事により、駆動電圧の低下、発光効率の向上、素子の長寿命化を達成し得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
1.電荷輸送性モノマー又は数平均分子量200〜50万の電荷輸送性オリゴマー若しくはポリマーからなる電荷輸送物質、又はこの電荷輸送物質及び電子受容性ドーパント物質若しくは正孔受容性ドーパント物質からなる電荷輸送性有機材料と、20℃で10〜200mPa・sの粘度を有する少なくとも1種の高粘度溶剤を含む溶剤とを含有し、前記電荷輸送物質又は電荷輸送性有機材料が前記溶剤中に溶解または均一に分散していることを特徴とする電荷輸送性ワニス、
2.前記電荷輸送物質が、共役単位を有する電荷輸送性モノマー又は共役単位を有する数平均分子量200〜5000の電荷輸送性オリゴマーであり、かつ、単一の前記共役単位が連続している、又は相異なる2種以上の前記共役単位が任意の順序の組み合わせで連続している1の電荷輸送性ワニス、
3.前記共役単位が、置換もしくは非置換、かつ、2〜4価の、アニリン、チオフェン、ジチイン、フラン、ピロール、エチニレン、ビニレン、フェニレン、ナフタレン、アントラセン、イミダゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、キノキザリン、シロール、シリコン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、トリアリールアミン、金属−若しくは無金属−フタロシアニン、及び金属−若しくは無金属−ポルフィリンから選ばれる少なくとも1種である2の電荷輸送性ワニス、
4.前記電荷輸送物質が、一般式(1)で表されるオリゴアニリン誘導体、又は一般式(1)の酸化体であるキノンジイミン誘導体であることを特徴とする1〜3のいずれかの電荷輸送性ワニス、

(式中、R、R及びRはそれぞれ独立して水素、水酸基、ハロゲン基、アミノ基、シラノール基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基又はスルホン基を示し、A及びBはそれぞれ独立に下記一般式(2)又は(3)

で表される二価の基であり、R〜R11はそれぞれ独立して水素、水酸基、ハロゲン基、アミノ基、シラノール基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基又はスルホン基を示し、m及びnはそれぞれ独立に1以上の整数で、m+n≦20を満足する。)
5.前記電荷輸送物質が、一般式(4)で表される1,4−ジチイン誘導体であることを特徴とする1または2の電荷輸送性ワニス、

(式中、R12、R13、R14及びR15はそれぞれ独立して水素、水酸基、ハロゲン基、アミノ基、シラノール基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基又はスルホン基を示し、X及びYは、置換若しくは非置換、かつ、2〜4価のアニリン、チオフェン、フラン、ピロール、エチニレン、ビニレン、フェニレン、ナフタレン、アントラセン、イミダゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、キノキザリン、シロール、シリコン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、トリアリールアミン、金属−若しくは無金属−フタロシアニン、及び金属−若しくは無金属−ポルフィリンから選ばれる少なくとも1種を示し、ジチイン環はジインオキシド環又はジチインジオキシド環であってもよい。p、q及びrはそれぞれ独立して0又は1以上の整数で、p+q+r≦20を満足する。)
6.前記電子受容性ドーパント物質が一般式(5)で表されるスルホン酸誘導体であることを特徴とする1〜5のいずれかの電荷輸送性ワニス、

(式中、Dはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環又は複素環を表し、R16、R17はそれぞれ独立してカルボキシル基若しくはヒドロキシル基を表す。)
7.1〜6のいずれかの電荷輸送性ワニスを使用して作製される電荷輸送性薄膜、
8.7の電荷輸送性薄膜を備える有機エレクトロルミネッセンス素子、
9.前記電荷輸送性薄膜が、正孔注入層又は正孔輸送層である8の有機エレクトロルミネッセンス素子、
10.1〜6のいずれかの電荷輸送性ワニスを使用して作製される太陽電池
を提供する。
本発明の電荷輸送性ワニスは、低分子量の電荷輸送物質を使用した場合でも適度な粘度を有しているため、様々な塗膜法、焼成法への対応が可能であるだけでなく、平坦性、均一性の非常に高い電荷輸送性薄膜を得ることができる。また、この電荷輸送性ワニスを用いて得られる電荷輸送性薄膜を有機EL正孔注入層として用いる事により、有機EL素子の駆動電圧の低下、発光効率の向上、素子の長寿命化等を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明に係る電荷輸送性ワニスは、電荷輸送性モノマー又は数平均分子量200〜50万の電荷輸送性オリゴマー若しくはポリマーからなる電荷輸送物質、又はこの電荷輸送物質及び電子若しくは正孔受容性ドーパント物質からなる電荷輸送性有機材料と、20℃で10〜200mPa・sの粘度を有する少なくとも1種の高粘度溶剤を含む溶剤とを含有し、電荷輸送物質又は電荷輸送材料が溶剤中に溶解または均一に分散しているものである。
ここで電荷輸送性とは、導電性と同義であり、正孔輸送性、電子輸送性、正孔及び電子の両電荷輸送性のいずれかを意味する。本発明の電荷輸送性ワニスは、それ自体に電荷輸送性があるものでもよく、ワニスを使用して得られる固体膜に電荷輸送性があるものでもよい。
本発明で用いる電荷輸送物質は、溶剤中に溶解または均一に分散可能な電荷輸送性モノマー、電荷輸送性オリゴマー又はポリマーであれば特に限定されないが、共役単位を有する電荷輸送性モノマー又は共役単位を有する数平均分子量200〜5000の電荷輸送性オリゴマーであり、かつ、単一の共役単位が連続している、又は相異なる2種以上の共役単位が任意の順序の組み合わせで連続しているオリゴマーが望ましい。
この場合、共役単位とは電荷を輸送できる原子、芳香環、共役基などであれば特に限定されるものではないが、有機溶媒に対する高溶解性や高い電荷輸送性の発現ということを考慮すると、置換もしくは非置換、かつ、2〜4価のアニリン、チオフェン、ジチイン、フラン、ピロール、エチニレン、ビニレン、フェニレン、ナフタレン、アントラセン、イミダゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、キノキザリン、シロール、シリコン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、トリアリールアミン、金属−若しくは無金属−フタロシアニン、及び金属−若しくは無金属−ポルフィリンを用いることが好ましい。なお、共役単位が連結して形成される共役鎖は、環状である部分を含んでいてもよい。
共役単位上の置換基としては、具体的に、それぞれ独立して水素、水酸基、ハロゲン基、アミノ基、シラノール基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基及びスルホン基等が例示され、これらの官能基がさらに任意の官能基で置換されていてもよい。
この場合、一価炭化水素基としては具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基及びデシル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビシクロヘキシル基等のビシクロアルキル基、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、1,2又は3−ブテニル基及びヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、キシリル基、トリル基、ビフェニル基及びナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基及びフェニルシクロヘキシル基等のアラルキル基などや、これらの一価炭化水素基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子、水酸基及び/又はアルコキシ基などで置換されたものを例示することができる。
オルガノオキシ基としては、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基などが挙げられ、これらの基を構成するアルキル基、アルケニル基及びアリール基としては、上で例示した基と同様のものが挙げられる。
オルガノアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基及びラウリルアミノ基等のアルキルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、ジヘプチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、ジノニルアミノ基及びジデシルアミノ基等のジアルキルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基及びモルホリノ基などが挙げられる。
オルガノシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリブチルシリル基、トリペンチルシリル基、トリヘキシルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基及びデシルジメチルシリル基などが挙げられる。
オルガノチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基及びラウリルチオ基などのアルキルチオ基が挙げられる。
アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基及びベンゾイル基等が挙げられる。
一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基及びアシル基などにおける炭素数は特に限定されるものではないが、一般に炭素数1〜20、好ましくは1〜8である。
好ましい置換基として、フッ素、スルホン酸基、置換もしくは非置換のオルガノオキシ基、アルキル基及びオルガノシリル基を挙げる事ができるが、良好な電荷輸送性を発揮させるという点から、特に、置換基を有さないものであることが好ましい。
本発明において、電荷輸送性オリゴマー又はポリマーからなる電荷輸送物質の数平均分子量は200〜50万である。数平均分子量が200未満では、揮発性が高くなりすぎて電荷輸送性が充分に発現されない可能性が高く、一方、50万を超えると溶剤に対する溶解性が低すぎて使用に適さない可能性が高い。
特に、電荷輸送物質の溶剤に対する溶解性を向上させることを考慮すると、その数平均分子量は5000以下である事が望ましく、2000以下が好適である。また、数平均分子量5000〜500000の電荷輸送物質を使用する場合は、この物質の溶解性を高めるため、後に詳述する高溶解性溶剤を少なくとも一種使用することが好ましい。この高溶解性溶剤は、使用する電荷輸送物質に応じて適宜選択すればよい。さらに、溶解性、電荷輸送性を均一にするということを考慮すると、分子量分布のないオリゴマー又はポリマーであることが望ましい。
なお、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(ポリスチレン換算)による測定値である。
電荷輸送物質としては、高溶解性及び高電荷輸送性を示すとともに、適切なイオン化ポテンシャルを有することから、特に、一般式(1)で表されるオリゴアニリン誘導体、又はその酸化体であるキノンジイミン誘導体を用いることが好ましい。オリゴアニリン誘導体に関してはヒドラジンによる還元操作を行うと更に望ましい。

(式中、R、R及びRはそれぞれ独立して水素、水酸基、ハロゲン基、アミノ基、シラノール基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基又はスルホン基を示し、A及びBはそれぞれ独立に下記一般式(2)又は(3)

で表される二価の基であり、R〜R11はそれぞれ独立して水素、水酸基、ハロゲン基、アミノ基、シラノール基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基又はスルホン基を示し、m及びnはそれぞれ独立に1以上の整数で、m+n≦20を満足する。)
この場合、R〜R11の具体例としては、先に共役単位上の置換基で述べたものと同様の置換基が挙げられ、これらの置換基は、さらにその他の任意の置換基で置換されていてもよい。
このような化合物の具体例としては、フェニルテトラアニリン、ペンタフェニルアニリン、テトラアニリン(アニリン4量体)、オクタアニリン(アニリン8量体)、ヘキサデカアニリン(アニリン16量体)、(フェニルトリアニリノ)トリフェニルアミン、(フェニルトリアニリノ)ジフェニルオクチルアミン、ヘキサデカ−o−フェネチジン(o−フェネチジン16量体)、アミノテトラアニリン、フェニルテトラアニリンスルホン酸(スルホン酸基数1〜4)、(ブチルフェニル)テトラアニリン等の有機溶媒に可溶なオリゴアニリン誘導体が挙げられる。
なお、これらのオリゴアニリン誘導体等の合成法としては、特に限定されないが、例えば、ブレティン・オブ・ケミカル・ソサエティ・オブ・ジャパン(Bulletin of Chemical Society of Japan)、1994年、第67巻、p.1749−1752、及びシンセティック・メタルズ(Synthetic Metals)、米国、1997年、第84巻、p.119−120に記載されている方法を用いることができる。
また、電荷輸送物質として、一般式(4)で表される1,4−ジチイン誘導体も好適に用いることができる。

(式中、R12、R13、R14及びR15はそれぞれ独立して水素、水酸基、ハロゲン基、アミノ基、シラノール基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基又はスルホン基を示し、X及びYは、置換若しくは非置換、かつ、2〜4価のアニリン、チオフェン、フラン、ピロール、エチニレン、ビニレン、フェニレン、ナフタレン、アントラセン、イミダゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、キノキザリン、シロール、シリコン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、トリアリールアミン、金属−若しくは無金属−フタロシアニン、及び金属−若しくは無金属−ポルフィリンから選ばれる少なくとも1種を示し、ジチイン環はジインオキシド環又はジチインジオキシド環であってもよい。p、q及びrはそれぞれ独立して0又は1以上の整数で、p+q+r≦20を満足する。)
この場合、R12〜R15の具体例としては、先に共役単位上の置換基で述べたものと同様の置換基が挙げられ、これらの置換基は、さらにその他の任意の置換基で置換されていてもよい。また、X及びYは、上述した共役単位と同様の単位であり、これらの共役単位も上述した置換基で置換されていてもよい。
このような化合物の具体例としては、2,6−ビス(2,2’−ビチオフェニル)−1,4−ジチイン、2,6−ビス(2,2’−テルチオフェニル)−1,4−ジチイン、2,6−ビス(2,2’−ビフェニル)−1,4−ジチイン、2,6−ビス(2,2’−ビナフチル)−1,4−ジチイン、2,6−ビス(2,2’−ビフリル)−1,4−ジチイン等が挙げられる。また、α−テルチエニル、2,2’:5’,2”−テルチオフェン−5,5”−ジアルデヒド等の有機溶媒に可溶なオリゴチオフェン誘導体も好適に用いることができる。
なお、上記オリゴチオフェン誘導体の合成法としては、特に限定されないが、例えば、ヘテロサイクルズ(Heterocycles)、1987年、第26巻、p.939−942及びヘテロサイクルズ(Heterocycles)、1987年、第26巻、p.1793−1796に記載されている方法を用いることができる。
さらに、その他の電荷輸送物質としては、β−カロテン,リコペン,カンタキサンチン,キサントフィル,アスタキサンチン,ビキシンなどのオリゴビニレン誘導体等の電荷輸送性オリゴマー、銅(II)2,3,9,10,16,17,23,24−オクタキス(オクチロキシ)−29H,31H−フタロシアニン、亜鉛(II)2,3,8,10,16,17,23,24−オクタキス(オクチロキシ)−29H,31H−フタロシアニン、ニッケル(II)2,3,9,10,16,17,23,24−オクタキス(オクタチロキシ)−29H,31H−フタロシアニン、1,4,8,11,15,18,22,25−オクタブトキシ−29H,31H−フタロシアニンなどの金属−もしくは無金属−フタロシアニン等の電荷輸送性モノマーが挙げられ、これらの化合物も好適に用いることができる。
本発明の電荷輸送性ワニスには、電荷輸送物質を単独で用いる態様に加え、上述した電荷輸送物質と電荷受容性ドーパント物質とからなる電荷輸送性有機材料を用いることもできる。
ここで、電荷受容性ドーパント物質としては、正孔輸送性物質に対しては電子受容性ドーパント物質を、電子輸送性物質に対しては正孔受容性ドーパント物質を用いることができ、いずれも高い電荷受容性を持つ事が望ましい。電荷受容性ドーパント物質の溶解性に関しては、ワニスに使用する少なくとも一種の溶剤に溶解するものであれば特に限定されない。
電子受容性ドーパントの具体例としては、塩化水素、硫酸、硝酸及びリン酸のような無機強酸や、塩化アルミニウム(III)(AlCl)、四塩化チタン(IV)(TiCl)、三臭化ホウ素(BBr)、三フッ化ホウ素エーテル錯体(BF・OEt)、塩化鉄(III)(FeCl)、塩化銅(II)(CuCl)、五塩化アンチモン(V)(SbCl)、五フッ化砒素(V)(AsF)、五フッ化リン(PF)、トリス(4−ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモナート(TBPAH)のようなルイス酸や、ベンゼンスルホン酸、トシル酸、カンファスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸のような有機強酸、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)及びヨウ素のような有機あるいは無機酸化剤を挙げる事ができるがこれに限定されるものではない。
正孔受容性ドーパントの具体例としては、アルカリ金属(Li,Na,K,Cs)、リチウムキノリノラート(Liq)及びリチウムアセチルアセトナート(Li(acac))等の金属錯体が挙げられるが、これに限定されるものではない。
本発明においては、電荷輸送物質、電荷受容性ドーパント物質の両者とも非晶質固体である事が好ましいが、少なくとも一方の物質として結晶性固体を使用する必要がある場合、電荷輸送物質、電荷受容性ドーパント物質及び後に詳述する高粘度溶剤を含む溶剤からなるワニスを成膜した後、非晶質固体性を示す材料を用いることが好ましい。
特に、電荷輸送物質又は電荷受容性ドーパント物質の少なくとも一方が結晶性固体の場合、少なくとも一方の物質はランダムな分子間相互作用を有する物質である事が好ましく、電荷受容性ドーパントとして低分子化合物を使用する場合、例えば、同一分子内に3種類以上の異なった極性官能基を持つ化合物が良い。
このような化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば、タイロン、ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、一般式(5)で示されるスルホン酸誘導体が挙げられるが、特に一般式(5)で示されるスルホン酸誘導体が好ましい。このスルホン酸誘導体の具体例としては、スルホサリチル酸誘導体、例えば、5−スルホサリチル酸などが挙げられる。

(式中、Dはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環又は複素環を表し、R16、R17はそれぞれ独立してカルボキシル基若しくはヒドロキシル基を表す。)
本発明の電荷輸送性ワニスを得る際に用いる溶剤には、20℃で10〜200mPa・sの粘度を有し、常圧で沸点50〜300℃の高粘度有機溶剤が少なくとも一種類含まれる。好ましくは、20℃で50〜150mPa・sの粘度、常圧で沸点150〜250℃の有機溶剤が良い。また、電荷輸送物質及び電荷受容性ドーパント物質の有する酸化・還元作用に影響を与えないために、この高粘度溶剤は中性であることが好ましい。なお、粘度は、E型粘度計(ELD−50、東京計器社製)により測定した値である。
具体的にはシクロヘキサノール、エチレングリコール、エチレングリコールジクリシジルエーテル、1,3−オクチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール及びヘキシレングリコール等を挙げる事ができるがこれらに限定されるものではない。これらの中でも、適切な粘度及び沸点を有し、基板に対して良好な塗布性を示すという点から、特に、シクロヘキサノール、ジプロピレングリコールを用いることが好ましい。
本発明の電荷輸送性ワニスを得る際に用いる高粘度溶剤の割合は、ワニスに使用する溶剤全体に対して10〜100重量%、好ましくは30〜90重量%、より好ましくは50〜80重量%である。固体が析出しない場合、高粘度溶剤の割合は50〜80重量%である事が好ましい。
また、電荷輸送物質及び電荷受容性ドーパント物質をよく溶解する溶剤である高溶解性溶剤を用いることもでき、この高溶解性溶剤を用いることによって、溶解性の低い電荷輸送物質等を用いた場合でも、電荷輸送物質等がワニス中で完全に溶解しているか均一に分散している状態とすることができる。この場合、上記高粘度溶剤と高溶解性溶剤との混合割合は、特に限定されるものではないが、通常、高粘度溶剤:高溶解性溶剤=99:1〜10:90(質量比)、好ましくは、90:10〜30:70(質量比)、より好ましくは80:20〜50:50(質量比)である。
高溶解性溶剤の具体例としては、水、メタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−メチルホルムアニリド、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、トルエン及びメタノール等の溶剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
その他、基板への濡れ性の向上、溶剤の表面張力の調整、極性の調整、沸点の調整等の目的で、焼成時に膜の平坦性を付与する溶剤をワニスに使用する溶剤全体量に対して1〜90重量%、好ましくは1〜50重量%の量でさらに添加しても良い。
このような溶剤として、具体的にはブチルセロソルブ、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチルカルビトール、ジアセトンアルコール、γ−ブチロラクトン及び乳酸エチル等を挙げる事ができるがこれに限定されるものではない。
なお、本発明の電荷輸送性ワニスの粘度は、溶剤組成、比率の調整によって1〜60mPa・sの範囲に調整が可能である。
本発明に係る電荷輸送性薄膜は、上述した電荷輸送性ワニスを用いて作成されるものであり、この薄膜は有機EL素子の正孔注入層若しくは正孔輸送層、又は電子注入層若しくは電子輸送層として好適に使用できるものである。
この薄膜は、例えば、電荷輸送性ワニスを基材上に塗布し、溶剤を蒸発させる事により、形成させる事ができる。ワニスの塗布方法としては特に限定されるものではないが、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、インクジェット法、スプレー法、刷毛塗り等が挙げられ、それぞれ均一な成膜が可能である。
溶剤の蒸発法としては特に限定されるものではないが、ホットプレートやオーブンを用いて、適切な雰囲気下、即ち大気下、窒素等の不活性ガス下、又は真空中等で蒸発を行い、均一な成膜面を得る事が可能である。焼成温度は溶剤を蒸発させる事ができれば特に限定されないが、40〜250℃で行うのが好ましい。より高い均一成膜性を発現させるため、また基材上で反応を進行させるために2段階以上の温度変化をつけても良い。
電荷輸送性薄膜の膜厚は特に限定されないが、有機EL素子内で電荷注入層として用いる場合、5〜200nmである事が望ましい。膜厚を調整する方法としては、ワニス中の固形分濃度を変えたり、塗布時の基板上溶液量を変えたりする等の方法がある。
本発明の電荷輸送性ワニス(電荷輸送性薄膜)を使用するOLED素子の作製方法、使用材料は以下のように挙げる事ができるが、これに限定されるものではない。
使用する電極基板は予め洗剤、アルコール、純水等による液体洗浄を行って浄化しておき、陽極基板では使用直前にオゾン処理、酸素−プラズマ処理等の表面処理を行う事が好ましい。ただし陽極材料が有機物を主成分とする場合、表面処理は行わなくともよい。
正孔輸送性ワニスをOLED素子に使用する場合は以下の方法により薄膜を形成して用いればよい。
陽極基板に対して当該正孔輸送性ワニスを用いて上記の塗布方法により電極上に正孔輸送性薄膜を作製する。これを真空蒸着装置内に導入し、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極金属を順次蒸着してOLED素子とする。発光領域をコントロールするために任意の層間にキャリアブロック層を設けてもよい。
陽極材料にはインジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)に代表される透明電極が挙げられ、平坦化処理を行ったものが好ましい。高電荷輸送性を有するポリチオフェン誘導体やポリアニリン類を用いる事もできる。
正孔輸送層を形成する材料としては(トリフェニルアミン)ダイマー誘導体(TPD)、(α−ナフチルジフェニルアミン)ダイマー(α−NPD)、[(トリフェニルアミン)ダイマー]スピロダイマー(Spiro−TAD)等のトリアリールアミン類、4,4’,4”−トリス[3−メチルフェニル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(m−MTDATA)、4,4’,4”−トリス[1・ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(1−TNATA)等のスターバーストアミン類及び5,5”−ビス−{4−[ビス(4−メチルフェニル)アミノ]フェニル}−2,2’:5’,2”ターチオフェン(BMA−3T)等のオリゴチオフェン類を挙げる事ができる。
発光層を形成する材料としてはトリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)(Alq)、ビス(8−キノリノラート)亜鉛(II)(Znq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム(III)(BAlq)及び4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)等が挙げられ、電子輸送材料あるいは正孔輸送材料と発光性ドーパントを共蒸着することによって発光層を形成してもよい。
電子輸送材料としてはAlq、BAlq、DPVBi、(2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)(PBD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、バソクプロイン(BCP)及びシロール誘導体等が挙げられる。
発光性ドーパントとしてはキナクリドン、ルブレン、クマリン540、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(ppy))及び(1,10−フェナントロリン)−トリス(4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−ブタン−1,3−ジオナート)ユーロピウム(III)(Eu(TTA)phen)等が挙げられる。
キャリアブロック層を形成する材料としては、PBD、TAZ及びBCPを挙げられる。
電子注入層としては、酸化リチウム(LiO)、酸化マグネシウム(MgO)、アルミナ(Al)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化ストロンチウム(SrF)、Liq、Li(acac)、酢酸リチウム及び安息香酸リチウム等が挙げられる。
陰極材料としてはアルミニウム、マグネシウム−銀合金、アルミニウム−リチウム合金、リチウム、ナトリウム、カリウム及びセシウム等が挙げられる。
電子輸送性ワニスをOLED素子に使用する場合は以下の方法により薄膜を形成して用いればよい。
陰極基板上に電子輸送性ワニスを用いて電子輸送性薄膜を作製し、これを真空蒸着装置内に導入し、上記と同様の材料を用いて電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層を形成した後、陽極材料をスパッタリング等の方法により成膜してOLED素子とする。
本発明の電荷輸送性ワニスを用いたPLED素子の作製方法は特に限定されないが、以下の方法が挙げられる。
OLED素子作製において正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の真空蒸着操作を行う代わりに、発光性電荷輸送性高分子層を形成する事により、本発明の電荷輸送性ワニスによって形成される電荷輸送性薄膜を含むPLED素子を作製する事ができる。
具体的には陽極基板に対して正孔輸送性ワニスを用いてOLED素子と同様の方法により電極上に正孔輸送性薄膜を作製し、その上部に発光性電荷輸送性高分子層を形成し、さらに陰極電極を蒸着してPLED素子とする。
あるいは陰極基板に対し、電子輸送性ワニスを用いてOLED素子と同様の方法により電極上に電子輸送性薄膜を作製し、その上部に発光性電荷輸送性高分子層を形成し、さらに陽極電極をスパッタリング、蒸着、スピンコート等の方法により作製してPLED素子とする。
使用する陰極及び陽極材料としてはOLED素子作製時と同様の物質が使用でき、同様の洗浄処理、表面処理を行う事ができる。
発光性電荷輸送性高分子層の形成法としては、発光性電荷輸送性高分子材料あるいはこれに発光性ドーパントを加えた材料に対して、溶剤を加えて溶解あるいは均一に分散し、正孔注入層を形成してある電極基板に塗布した後に、溶剤の蒸発により成膜する方法が挙げられる。
発光性電荷輸送性高分子材料としてポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)等のポリフルオレン誘導体、ポリ(2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキソキシ)−1,4−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)等のポリフェニレンビニレン誘導体、ポリ(3−アルキルチオフェン)(PAT)などのポリチオフエン誘導体、ポリビニルカルバゾール(PVCz)等を挙げる事ができる。
溶剤としては、トルエン、キシレン、クロロホルム等を挙げる事ができ、溶解あるいは均一分散法としては攪拌、加熱攪拌、超音波分散等の方法により溶解あるいは均一に分散する方法が挙げられる。
塗布方法としては特に限定されるものではないが、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、インクジェット法、スプレー法、刷毛塗り等が挙げられ、窒素、アルゴン等の不活性ガス下で塗布する事が望ましい。
溶剤の蒸発法としては不活性ガス下あるいは真空中、オーブンあるいはホットプレートでの加熱による方法を挙げる事ができる。
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
なお、以下の実施例及び比較例において、粘度は、E型粘度計(ELD−50、東京計器社製)を、膜厚は、表面形状測定装置(DEKTAK3ST、日本真空技術社製)を、表面粗さは、原子間力顕微鏡(AFM)(ナノスコープ(商標)IIIa、日本ビーコ(株)製)を使用して測定した。電流計は、デジタルマルチメーター7555(横河電気社製)を、電圧発生器は、DCボルテージカレントソース R6145(アドバンテスト社製)を、輝度計は、BM−8(トプコン(TOPCON)社製)を使用した。イオン化ポテンシャルは、光電子分光装置(AC−2、理研計器社製)を使用して測定した。
【実施例1】
ブレティン・オブ・ケミカル・ソサエティ・オブ・ジャパン(Bulletin of Chemical Society of Japan)、1994年、第67巻、p.1749−1752に記載されている方法を基に、以下の方法に従いフェニルテトラアニリン(PTA)を得た。
即ち、p−フェニレンジアミン12.977gをトルエン2リットルに溶解させ、これに脱水縮合剤であるテトラ−n−ブトキシチタン245.05gを溶解させ70℃で30分溶解させた。その後p−ヒドロキシジフェニルアミン53.346gを添加し、窒素雰囲気下反応温度100℃で24時間反応させた。反応終了後、反応液を濾過し、濾物をトルエン、エーテルで順次洗浄した後乾燥して銀色結晶を得た。得られた結晶に対し25重量部のジオキサン、0.2当量のヒドラジン一水和物を加え、反応系内を窒素置換した後、加熱還流して結晶を溶解した。
得られた溶液に、トルエンを結晶に対し25重量部加えて溶液を懸濁し、加熱還流した後、ジオキサンをさらに10重量部加え加熱還流して溶解し、得られた溶液を熱時濾過した。濾液から析出した固体を再結晶し、窒素雰囲気下トルエン−ジオキサン(1:1)、エーテルで順次洗浄した後濾取し、得られた結晶を減圧下60℃で10時間乾燥した。同様の再結晶操作をもう一度繰り返して白色結晶39.60gを得た(収率75%)。
得られたPTA1.000g(2.260mmol)に対し、5−スルホサリチル酸二水和物(以下5−SSA略す)2.298g(9.039mmol)及びN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)17.50gを窒素雰囲気下加えて溶解し、得られた溶液に高粘度溶剤であるシクロヘキサノール(c−HexOH 粘度 20℃ 68mPa・s)52.50gを加え攪拌し、ワニスを調製した(固形分濃度4.2重量%)。得られたワニスの外観、粘度および成膜条件を表1に示す。
40分間オゾン洗浄を行ったITOガラス基板に対し、得られたワニスをスピンコート法により上に塗布し、空気中180℃で2時間焼成し、均一な薄膜とした。得られた薄膜の膜厚、導電率、表面粗さを表2に示す。
上記と同様の方法によって、ITOガラス基板上に上記ワニスを用いた正孔輸送性薄膜を形成し、真空蒸着装置内に導入し、α−NPD、Alq、LiF、Alを順次蒸着した。膜厚はそれぞれ40nm、60nm、0.5nm、100nmとし、それぞれ8×10−4Pa以下の圧力となってから蒸着操作を行った。蒸着レートはLiFを除いて0.3〜0.4nm/sとし、LiFについては0.02〜0.04nm/sとした。蒸着操作間の移動操作は真空中行った。得られたOLED素子の特性を表3に示す。
[比較例1]
実施例1に記載の方法を用いて合成及び精製を行って得たPTA1.000g(2.260mmol)に対し、5−SSA2.298g(9.039mmol)及びN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)70gを窒素雰囲気下加えて溶解し、ワニスを調製した。さらに、得られたワニスを用い、実施例1に記載の方法と同条件でITOガラス基板上に成膜した。
ワニスの外観、粘度及び成膜条件を表1に示すとともに、得られた薄膜の膜厚、及び表面粗さを表2に示す。
表1に示されるように、比較例1のワニスは、実施例1のそれと比較して、低粘度であることがわかる。また、表2に示されるように、比較例1のワニスを用いて作成された薄膜は、実施例1のワニスを用いて得られた薄膜と比較して、表面に粗さがあることがわかる。
[比較例2]
実施例1に記載の方法を用いて合成及び精製を行って得たPTA1.000g(2.260mmol)に対し、5−SSA2.298g(9.039mmol)及びDMAc70gを窒素雰囲気下加えて溶解し、ワニスを調製した。ワニスの外観、粘度及び成膜条件を表1に示す。
表1に示されるように、比較例2のワニスは、実施例1のそれと比較して、低粘度であることがわかる。
[比較例3]
実施例1と同条件で処理したITOガラス基板を真空蒸着装置内に導入し、実施例1に記載の方法と同条件でα−NPD、Alq、LiF、Alを順次蒸着した。使用したITOガラス基板の表面粗さを表2に、得られたOLED素子の特性を表3に示す。
表2に示されるように、本発明のワニスからなる薄膜を形成していないITOガラス基板は、表面に粗さがあることがわかる。表3に示されるように、比較例3で得られたOLED素子は、10mA/cmの電流密度において、電圧、輝度、電流効率の各特性が実施例1の素子より劣っていることがわかる。また、比較例3で得られたOLED素子は、7.0Vの電圧において、電流密度、輝度、電流効率の各特性が実施例1の素子より劣っていることがわかる。
[比較例4]
ポリエチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルホン酸水溶液をスピンコート法により実施例1と同条件で処理したITOガラス基板上に塗布し、空気中120℃1時間焼成し、均一な薄膜とした。得られた薄膜の膜厚、導電率、表面粗さを表2に示す。
表2に示されるように、比較例1の薄膜は、実施例1のワニスを用いて得られた薄膜と比較して、導電率が低く、表面に粗さがあることがわかる。
さらに、実施例1と同様の方法によってITOガラス基板上に正孔輸送性薄膜を形成し、実施例1に記載の方法と同条件でOLED素子を作製した。得られたOLED素子の特性を表3に示す。
表3に示されるように、比較例4で得られたOLED素子は、10mA/cmの電流密度において、電圧、輝度、電流効率の各特性が実施例1の素子より劣っていることがわかる。また、比較例4で得られたOLED素子は、7.0Vの電圧において、電流密度、輝度、電流効率の各特性が実施例1の素子より劣っていることがわかる。
【実施例2】
実施例1に記載の方法を用いて合成及び精製を行って得たPTA、及び5−SSAを用いて、それぞれの比率(モル比1:4)および固形分濃度(4.2重量%)を保ったまま溶剤組成や比率の変更を行った。
すなわち、PTA及び5−SSAに対して窒素雰囲気下DMAcを加えて溶解させ、高粘度溶剤であるc−HexOH、ジプロピレングリコール(以下DPGと略す 粘度 20℃ 107mPa・s)及び一部BCを添加し、溶剤組成、比率の調整によって4種のワニスを調製したところ、いずれのワニスも完全な溶液であり、固体の析出はみられなかった。
得られたワニスの外観、粘度および成膜条件を表1に示す。表1に示されるように、溶剤組成、比率の調整によって1.4−58mPa・sの範囲で粘度調整が可能であることがわかる。
得られた各ワニスを使用して実施例1と同様の方法を用いてOLED素子を作製したところ、それらの特性は実施例1の結果と同等であった。
【実施例3】
実施例2に記載の方法を用いて得られたワニスのうち、溶剤としてDPG−DMAc−BC(6:3:1)を用いたものについて、オフセット印刷法を用いて塗膜を行い、表1に記載の条件で成膜し、実施例1と同様の方法によってOLED素子を作製した。得られたOLED素子の特性を表3に示す。
【実施例4】
シンセティック・メタルズ(Synthetic Metals)、1997年、第84巻、p.119−120に記載されている方法を用いてアニリン16量体(Ani16)を合成した。得られたAni16 1.000gに対し、5−スルホサリチル酸2.786g及びN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)35.00gを窒素雰囲気下で加えて溶解し、得られた溶液に高粘度溶剤であるシクロヘキサノール(c−HexOH 粘度 20℃ 68mP・s)105.00gを加えて攪拌し、ワニスを調製した(固形分濃度2.36重量%)。
得られたワニスの外観、粘度および成膜条件を表1に示す。実施例1と同様の方法により得られたOLED素子の特性を表3に示す。
【実施例5】
ヘテロサイクルズ(Heterocycles)、1987年、第26巻、p.939−942に記載されている方法を用いて下記式で示される2,6−bis(2,2’−bithiophenyl)−1,4−dithiin(以下BBDと略す)を合成した。

得られたBBD1.000gに対し、5−スルホサリチル酸1.142g及びN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)97.87gを大気中で加えて溶解し、得られた溶液に高粘度溶剤であるシクロヘキサノール48.94gを加え攪拌し、ワニスを調製した(固形分濃度1.2重量%)。
得られたワニスの外観、粘度および成膜条件を表1に示す。このワニスを用いて実施例1と同様の方法により得られたOLED素子の特性を表3に示す。
【実施例6】
実施例5記載の方法により得られたBBD1.000gと5−SSA1.142gの混合物に対し、DMAc17.50gを大気中で加え、60℃で10分間加熱攪拌して溶解させた。得られた溶液にシクロヘキサノール52.50gを加え攪拌し、ワニスを調製した(固形分濃度2.8重量%)。得られたワニスは室温まで放冷しても固体の析出は全くみられなかった。得られたワニスの外観、粘度および成膜条件を表1に示す。得られたワニスを用いて実施例1と同様の方法により成膜したところ、欠陥のない均一な薄膜が得られた。また、得られた薄膜のイオン化ポテンシャル値を測定したところ、5.5eVであった。
[比較例5]
実施例5記載の方法により得られたBBD1.000gと5−SSA2.285gの混合物に対し、DMF140gを大気中で加え、室温で攪拌して溶解させワニスを調製した(固形分濃度1.4重量%)。得られたワニスの外観、粘度および成膜条件を表1に示す。得られたワニスを用いて実施例1と同様の方法により成膜を試みたが、スピンコート時に放射状のムラが発生し、均一な薄膜を得ることはできなかった。
【実施例7】
実施例1に記載の方法を用いて合成及び精製を行って得たPTA、及び5−SSAを用い、PTA量と5−SSA量の比率を変化させ、実施例1に記載の溶媒を用いて5種のワニスを調製したところ、得られたワニスはいずれも完全な溶液であり、固体の析出はみられなかった。各ワニスのPTA量、5−SSA量、固形分濃度、粘度および成膜条件を表4に示す。
各ワニスを用い、実施例1に記載の方法により得られたOLED素子の特性を表5に示す。また以下の方法に従って作製したPLED素子の特性についても併せて表5に示す。
PLED素子作製法
実施例1に記載の方法によりITOガラス基板上に上記記載のワニスを用いて成膜した後、その上部に窒素雰囲気下MEH−PPVのトルエン溶液(固形分濃度10g/L)をスピンコート法により塗膜し、110℃で20分間焼成して膜厚80nmの発光層を形成した。得られた基板を蒸着装置内に導入し、Ca20nm、A1100nmを順次蒸着してPLED素子を作製した。





以上説明したように、本発明の電荷輸送性ワニスを用いる事により、平坦性、均一性の非常に高い電荷輸送性薄膜を得る事ができ、電極表面に本発明の電荷輸送性薄膜を形成する事により電極表面の平坦化、均一化がなされ、電気短絡の防止が可能となる。溶剤比率の変更によって粘度調整も容易であり、数種類の溶剤の添加によって焼成温度の変化や種々の塗布プロセスに対応可能である。即ち、本発明の電荷輸送性ワニスを用いる事により、印刷法、インクジェット法、スプレー法等の簡便で低コストなウェットプロセスで電荷輸送性薄膜を得る事ができる。有機EL素子の電荷注入層として用いる事により、電極と有機層の注入障壁の低下により低駆動電圧駆動が可能である。また電極表面の平坦化、本発明の電荷輸送性薄膜と接する有機層の界面の高平坦化により、有機EL素子の発光効率向上、長寿命化が可能である。従来使用されている水溶液系の電荷輸送性ワニスに対して有機溶剤のみで使用する事ができ、素子の劣化を招く水分の混入を防ぐことができる。昇華性、耐熱性に乏しい共役系オリゴマー群についても有機EL素子へ適用する事が可能となる。電荷輸送物質に対し、電荷受容性ドーパント物質を用いて容易にドーピングを行うことができる。電荷受容性ドーパント物質の比率を変更することによりイオン化ポテンシャル等の膜物性や有機EL素子特性を変化させることができる。高い平坦化性、良好なプロセス性を有するため、コンデンサ電極保護膜への応用や、帯電防止膜、太陽電池への応用も有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電荷輸送性モノマー又は数平均分子量200〜50万の電荷輸送性オリゴマー若しくはポリマーからなる電荷輸送物質、又はこの電荷輸送物質及び電子受容性ドーパント物質若しくは正孔受容性ドーパント物質からなる電荷輸送性有機材料と、20℃で10〜200mPa・sの粘度を有する少なくとも1種の高粘度溶剤を含む溶剤とを含有し、前記電荷輸送物質又は電荷輸送性有機材料が前記溶剤中に溶解または均一に分散していることを特徴とする電荷輸送性ワニス。
【請求項2】
前記電荷輸送物質が、共役単位を有する電荷輸送性モノマー又は共役単位を有する数平均分子量200〜5000の電荷輸送性オリゴマーであり、かつ、単一の前記共役単位が連続している、又は相異なる2種以上の前記共役単位が任意の順序の組み合わせで連続している請求の範囲第1項記載の電荷輸送性ワニス。
【請求項3】
前記共役単位が、置換もしくは非置換、かつ、2〜4価の、アニリン、チオフェン、ジチイン、フラン、ピロール、エチニレン、ビニレン、フェニレン、ナフタレン、アントラセン、イミダゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、キノキザリン、シロール、シリコン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、トリアリールアミン、金属−若しくは無金属−フタロシアニン、及び金属−若しくは無金属−ポルフィリンから選ばれる少なくとも1種である請求の範囲第2項記載の電荷輸送性ワニス。
【請求項4】
前記電荷輸送物質が、一般式(1)で表されるオリゴアニリン誘導体、又は一般式(1)の酸化体であるキノンジイミン誘導体であることを特徴とする請求の範囲第1項から第3項のいずれか1項に記載の電荷輸送性ワニス。

(式中、R、R及びRはそれぞれ独立して水素、水酸基、ハロゲン基、アミノ基、シラノール基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基又はスルホン基を示し、A及びBはそれぞれ独立に下記一般式(2)又は(3)

で表される二価の基であり、R〜R11はそれぞれ独立して水素、水酸基、ハロゲン基、アミノ基、シラノール基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基又はスルホン基を示し、m及びnはそれぞれ独立に1以上の整数で、m+n≦20を満足する。)
【請求項5】
前記電荷輸送物質が、一般式(4)で表される1,4−ジチイン誘導体であることを特徴とする請求の範囲第1項または第2項に記載の電荷輸送性ワニス。

(式中、R12、R13、R14及びR15はそれぞれ独立して水素、水酸基、ハロゲン基、アミノ基、シラノール基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基又はスルホン基を示し、X及びYは、置換若しくは非置換、かつ、2〜4価のアニリン、チオフェン、フラン、ピロール、エチニレン、ビニレン、フェニレン、ナフタレン、アントラセン、イミダゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、キノキザリン、シロール、シリコン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、トリアリールアミン、金属−若しくは無金属−フタロシアニン、及び金属−若しくは無金属−ポルフィリンから選ばれる少なくとも1種を示し、ジチイン環はジインオキシド環又はジチインジオキシド環であってもよい。p、q及びrはそれぞれ独立して0又は1以上の整数で、p+q+r≦20を満足する数である。)
【請求項6】
前記電子受容性ドーパント物質が一般式(5)で表されるスルホン酸誘導体であることを特徴とする請求の範囲第1から第5項のいずれか1項に記載の電荷輸送性ワニス。

(式中、Dはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環又は複素環を表し、R16、R17はそれぞれ独立してカルボキシル基若しくはヒドロキシル基を表す。)
【請求項7】
請求の範囲第1項から第6項のいずれかに記載の電荷輸送性ワニスを使用して作製される電荷輸送性薄膜。
【請求項8】
請求の範囲第7項に記載の電荷輸送性薄膜を備える有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
前記電荷輸送性薄膜が、正孔注入層又は正孔輸送層である請求の範囲第8項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
請求の範囲第1項から第6項のいずれかに記載の電荷輸送性ワニスを使用して作製される太陽電池。

【国際公開番号】WO2004/043117
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【発行日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−549623(P2004−549623)
【国際出願番号】PCT/JP2003/014145
【国際出願日】平成15年11月6日(2003.11.6)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】