説明

電荷輸送物質含有アゾ顔料の合成方法、電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置

【課題】 感度が高く、かつ、耐久電位変動が小さい電子写真感光体を提供しうるアゾ顔料の合成方法を提供する。
【解決手段】 溶媒中で、アゾニウム塩とカプラー成分とをカップリング反応させることによりアゾ顔料を合成する方法において、該溶媒中に、該アゾニウム塩と反応しない電荷輸送物質を存在させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電荷輸送物質含有アゾ顔料の合成方法、該合成方法によって合成された電荷輸送物質含有アゾ顔料を含有する電子写真感光体、ならびに、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真感光体には、セレン、硫化カドミウム、酸化亜鉛などの無機光導電性物質が広く用いられてきたが、近年、成膜性が良く、塗工によって生産できる点で、有機光導電性物質を用いた電子写真感光体(有機電子写真感光体)が普及している。有機電子写真感光体は、生産性が高く、安価に製造できるという利点を有する。また、有機電子写真感光体は、使用する有機光導電性物質(染料や顔料など)の選択により、電子写真感光体の特性を自在にコントロールできるなどの利点を有し、これまで幅広い検討がなされてきた。また、近年では、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とを積層してなる積層型感光層を有する電子写真感光体が開発されている。積層型感光層を有する電子写真感光体は、感度や耐久性に優れている。
【0003】
光導電性物質の中でも、アゾ顔料は、特に優れた光導電性を示す。しかも、アミン成分(アゾニウム塩など)とカプラー成分との組み合わせによって、様々な特性を持った化合物が容易に得られることから、これまで数多くのアゾ顔料が提案されている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、従来のアゾ顔料を含有する電子写真感光体は、必ずしも、感度や、繰り返し使用時の電位変動(以下「耐久電位変動」ともいう。)に関して、十分に満足できる性能を有していない。
【0005】
このうち、耐久電位変動は、特に低湿環境下で電子写真感光体を繰り返し使用した際に顕著に現れ、明部電位の上昇による出力画像の濃度ムラや色味ムラが問題となっている。
【0006】
したがって、感度が高く、かつ、低湿環境下における耐久電位変動が小さい電子写真感光体が求められている。
【0007】
電子写真感光体の特性を向上させる方法の1つとして、感光層および/または中間層に電荷輸送物質を含有させる方法が用いられている。
【0008】
特許文献2には、積層型感光層を有する電子写真感光体の電荷発生層を形成する際、電荷発生層用塗布液に有機アクセプター性化合物を添加する方法が記載されている。
【0009】
また、特許文献3には、カプラーに電荷輸送部位を有するアゾ顔料を電子写真感光体の感光層に含有させる方法が記載されている。
【特許文献1】特開昭63−061258号公報
【特許文献2】特開平7−104495号公報
【特許文献3】特開平9−48757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2や特許文献3に記載されている方法は、たとえば高速の電子写真装置においては、電子写真感光体の感度が十分でないという問題がある。よって、電子写真装置の高速化が求められている現在は、一層の感度向上が望まれている。
【0011】
また、電荷発生層用塗布液を調製する段階で電荷輸送物質を添加する方法では、電荷輸送物質の結晶化や分散不良が発生し、電荷発生層用塗布液(分散液)中の粒子の粒径が大きくなりがちである。粒子の粒径が大きくなりすぎると、電荷発生層の膜厚が不均一になり、出力画像に濃度ムラが発生したり、黒ポチや白ポチなど画像欠陥が増加したりするという問題が発生する。
【0012】
本発明の目的は、上記課題に鑑みてなされたものであり、感度が高く、かつ、耐久電位変動が小さい電子写真感光体を提供しうるアゾ顔料の合成方法を提供することにある。
【0013】
また、本発明の目的は、この合成方法によって合成されたアゾ顔料を含有する電子写真感光体を提供することにある。
【0014】
また、本発明の目的は、この電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、溶媒中で、アゾニウム塩とカプラー成分とをカップリング反応させることによりアゾ顔料を合成する方法において、該溶媒中に、該アゾニウム塩と反応しない電荷輸送物質を存在させることを特徴とする電荷輸送物質含有アゾ顔料の合成方法である。
【0016】
また、本発明は、支持体および該支持体上に形成された感光層を有する電子写真感光体において、該感光層が上記合成方法によって合成されたアゾ顔料を含有することを特徴とする電子写真感光体である。
【0017】
また、本発明は、支持体、該支持体上に形成された中間層および該中間層上に形成された感光層を有する電子写真感光体において、該中間層が上記合成方法によって合成された電荷輸送物質含有アゾ顔料を含有することを特徴とする電子写真感光体である。
【0018】
また、本発明は、上記電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段および転写手段を有することを特徴とする電子写真装置である。
【0019】
また、本発明は、上記電子写真感光体と、帯電手段、現像手段およびクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、感度が高く、かつ、耐久電位変動が小さい電子写真感光体を提供しうるアゾ顔料(電荷輸送物質含有アゾ顔料)の合成方法を提供することができる。
【0021】
また、本発明によれば、この合成方法によって合成されたアゾ顔料(電荷輸送物質含有アゾ顔料)を含有する電子写真感光体を提供することができる。
【0022】
また、本発明によれば、この電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明のアゾ顔料の合成方法は、溶媒中で、アミン成分であるアゾニウム塩とカプラー成分とをカップリング反応させることによりアゾ顔料を合成する方法において、該溶媒中に、該アゾニウム塩と反応しない電荷輸送物質を存在させることを特徴とする。
【0024】
アゾニウム塩およびカプラー成分としては、アゾ顔料(アゾ化合物)を合成するための材料として従来から知られている種々の材料を用いることができる。アゾニウム塩としては、たとえば、ホウフッ化塩、塩酸塩、塩化亜鉛複塩などが挙げられる。また、カプラー成分としては、たとえば、ナフトール系化合物、ベンズカルバゾール系化合物、ナフタルイミド系化合物、ペリノン系化合物などが挙げられる。
【0025】
また、カップリング反応時の溶媒としては、アゾ顔料(アゾ化合物)を合成する際の溶媒として従来から知られている種々の溶媒を用いることができる。たとえば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0026】
本発明の合成方法では、上述のとおり、アゾニウム塩とカプラー成分とのカップリング反応時の溶媒中に、該アゾニウム塩とは反応しない電荷輸送物質を存在させているため、合成されるアゾ顔料には、電荷輸送物質が取り込まれているものと考えられる。すなわち、本発明の合成方法によって合成されるアゾ顔料は「電荷輸送物質含有アゾ顔料」であり、その「電荷輸送物質含有アゾ顔料」には、電荷輸送物質(電荷輸送性化合物)とアゾ化合物とが含まれているものと考えられる。
【0027】
本発明の合成方法によって合成される電荷輸送物質含有アゾ顔料に含まれるアゾ化合物としては、たとえば、以下に示す化合物が挙げられる。ただし、本発明はこれらに限定されるわけではない。
【0028】
【化1】

【0029】
溶媒中に存在させる電荷輸送物質としては、従来から知られている種々の材料を用いることができ、正孔輸送物質と電子輸送物質のどちらも用いることができる。
【0030】
正孔輸送物質としては、たとえば、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン系化合物、スチリル系化合物、ベンジジン系化合物、トリアリールメタン系化合物、フェニレンジアミン系化合物、ビスシクロヘキシルアミン系化合物、トリフェニルアミン系化合物などが挙げられる。多環芳香族化合物としては、たとえば、ピレン、アントラセンなどが挙げられる。複素環化合物としては、たとえば、カルバゾール系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、オキサジアゾール系化合物、ピラゾール系化合物、ピラゾリン系化合物、チアジアゾール系化合物、トリアゾール系化合物などが挙げられる。
【0031】
これらの正孔輸送物質の中でも、特に、酸化電位が0.6V以上1.0V以下である正孔輸送物質が好ましい。
【0032】
本発明において、正孔輸送物質の酸化電位の測定は、以下のように3電極式のサイクリックボルターメトリーにて行った。
【0033】
作用電極:グラッシーカーボン電極
対極:白金電極
参照電極:飽和カロメル電極(0.1mol/l 塩化カリウム水溶液)
測定溶液:測定対象の正孔輸送物質を0.001mol、電解質として過塩素酸t−ブチルアンモニウムを0.1mol、溶剤としてアセトニトリルを1リットル用いた溶液
測定により得られた電流−電位曲線において、電流値がピーク(ピークが複数ある場合には最初のピーク)を示したときのピークトップを、その正孔輸送物質の酸化電位とした。
【0034】
以下に、正孔輸送物質の好適例を示す。ただし、本発明はこれらに限定されるわけではない。
【0035】
【化2】

【0036】
これらの正孔輸送物質の中でも、上記構造式(5)で示される化合物、上記構造式(6)で示される化合物がより好ましい。
【0037】
電子輸送物質としては、たとえば、フルオレノン系化合物、イミド系化合物、キノン系化合物、フルオレニリデン系化合物、カルボン酸無水物系化合物、環状スルホン系化合物、オキサジアゾール系化合物、トリアゾール系化合物、および、それらの誘導体などが挙げられる。フルオレノン系化合物としては、たとえば、トリニトロフルオレノンなどが挙げられる。イミド系化合物としては、たとえば、ピロメリットイミド、ナフチルイミドなどが挙げられる。キノン系化合物としては、たとえば、ベンゾキノン、ジフェノキノン、ジイミノキノン、ナフトキノン、スチルベンキノン、アントラキノンなどが挙げられる。フルオレニリデン系化合物としては、たとえば、フルオレニリデンアニリン、フルオレニリデンマロノニトリルなどが挙げられる。カルボン酸無水物系化合物としては、たとえば、フタル酸無水物などが挙げられる。環状スルホン系化合物としては、たとえば、チオピランジオキシドなどが挙げられる。
【0038】
これらの電子輸送物質の中でも、特に、還元電位が−1.0V以上−0.3V以下である電子輸送物質が好ましい。
【0039】
本発明において、還元電位の測定は、測定溶液の溶剤としてアセトニトリルの代わりにジクロロメタンを使用した以外は、上記の酸化電位の測定と同様に行った。測定結果の第一還元電位のピークトップを、その電子輸送物質の還元電位とした。
【0040】
以下に、電子輸送物質の好適例を示す。ただし、本発明はこれらに限定されるわけではない。
【0041】
【化3】

【0042】
これらの電子輸送物質の中でも、上記構造式(10)で示される化合物、上記構造式(11)で示される化合物がより好ましい。
【0043】
また、本発明の合成方法において、カップリング反応時の溶媒中の電荷輸送物質の仕込み量は、アゾニウム塩の仕込み量に対して5mol%以上50mol%以下であることが好ましい。5mol%より少ないと、感度向上や耐久電位変動抑制の効果を十分に得られない場合がある。50mol%より多いと、アゾ顔料(アゾ化合物)の本来の電荷発生機能が低下して、感度向上や耐久電位変動抑制の効果を十分に得られない場合がある。
【0044】
次に、電子写真感光体の構成について説明する。
【0045】
本発明の電子写真感光体は、支持体および支持体上に形成された感光層を有するものである。感光層は、支持体側から電荷発生物質を有する電荷発生層と電荷輸送物質を有する電荷輸送層の順で積層してなる積層型(順層型)の感光層であることが好ましい。また、支持体と感光層との間には、必要に応じて、導電層および/または中間層を形成することができる。
【0046】
支持体としては、導電性を有するもの(導電性支持体)であればよい。支持体の材質として、たとえば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、ステンレス、バナジウム、モリブデン、クロム、チタン、ニッケル、インジウム、金、白金などの金属(合金)が挙げられる。また、これらの金属(合金)を真空蒸着法によって被膜形成したプラスチック(たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂など)であってもよい。また、導電性粒子(たとえば、カーボンブラック、銀粒子など)を結着樹脂とともに上記金属(合金)やプラスチック上に被覆したものであってもよい。また、導電性粒子をプラスチックや紙に含浸させた支持体であってもよい。
【0047】
また、支持体の表面は、ホーニング加工、センターレス研削、切削などの粗面化処理が施されてもよい。さらに、これら粗面化処理により、支持体の表面を適当な粗さに設計することができ、干渉縞対策を施すことができる。支持体の表面の十点平均粗さRzjisは0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。
【0048】
十点平均粗さRzjisの測定は、JIS B0601(2001)に基づき、サーフコーダーSE−3500((株)小坂研究所製)にて、カットオフを0.8mm、測定長さを8mmとして行う。
【0049】
支持体の形状としては、たとえば、円筒状、ベルト状、シート状などが挙げられる。
【0050】
支持体上には、支持体のムラや欠陥の被覆および/または干渉縞防止などを目的として、導電層を設けてもよい。
【0051】
導電層は、たとえば、酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、硫酸バリウムなどの無機粒子をフェノール樹脂などの硬化性樹脂とともに溶剤中に分散させて同伝送用塗布液を調製し、これを支持体上に塗布し、これを乾燥および/または硬化させることによって、形成することができる。
【0052】
導電層の膜厚は1〜40μmであることが好ましく、1〜30μmであることがより好ましい。
【0053】
支持体または導電層と電荷発生層との間には、支持体または導電層と感光層との密着性確保、感光層の電気的破壊に対する保護、感光層へのキャリア注入性の改良などを目的として、中間層を設けてもよい。
【0054】
中間層の材料としては、たとえば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、メチルセルロース、カゼイン、ポリアミド、にかわ、ゼラチンなどが挙げられる。中間層は、これらの材料を溶剤(たとえば、アルコール)に溶解させて支持体または導電層上に塗布し、これを乾燥させることによって、形成することができる。
【0055】
中間層の膜厚は0.2〜3.0μmであることが好ましい。
【0056】
また、中間層には、本発明のアゾ顔料の合成方法によって合成された電荷輸送物質含有アゾ顔料を含有させることができる。
【0057】
中間層に電荷輸送物質含有アゾ顔料を含有させる場合、たとえば、ポリアミド樹脂などの結着樹脂およびアルコール溶剤を用いて、該電荷輸送物質含有アゾ顔料を分散させて得られた中間層用塗布液を支持体または導電層上に塗布し、これを乾燥させることによって、形成することができる。また、2種以上の電荷輸送物質含有アゾ顔料を組み合わせて用いてもよいし、他のアゾ顔料と組み合わせて使用してもよい。
【0058】
本発明のアゾ顔料の合成方法によって合成された電荷輸送物質含有アゾ顔料を中間層に含有させた場合、低湿環境下において繰り返し使用した際の電位変動(特に明部電位の変動)が抑制される。また、中間層用塗布液中のアゾ顔料(電荷輸送物質含有アゾ顔料)の分散粒子径が小さくなり、画像欠陥も抑制される。
【0059】
中間層用塗布液中に含有される電荷輸送物質含有アゾ顔料の質量(a)と結着樹脂の質量(b)との比率(a/b)は、分散性や分散後の保存安定性の観点から、1/1000〜2/1であることが好ましく、1/100〜1/1であることがより好ましい。
【0060】
中間層用塗布液中の電荷輸送物質含有アゾ顔料の平均粒径(メジアン径)は、遠心沈降式粒度分布測定装置(商品名:CAPA−700、(株)堀場製作所製)を用いて、以下の条件で測定した。
【0061】
溶媒 エタノール
DISP.VISC. 1.20mPa・s
DISP.DENS. 0.79g/cc
SAMP.DENS. 1.20g/cc
D(MAX) 1.00μm
D(MIN) 0.10μm
D(DIV) 0.05μm
SPEED 7000rpm
感光層が積層型(順層型)の感光層である場合、支持体、導電層または中間層上には、電荷発生層が設けられる。
【0062】
電荷発生層は、電荷発生物質を結着樹脂とともに溶剤中に分散させることによって調製した電荷発生層用塗布液を、支持体、導電層または中間層上に塗布し、これを乾燥させることによって、形成することができる。分散方法としては、たとえば、ホモジナイザー、超音波、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミルなどを用いた方法が挙げられる。
【0063】
電荷発生物質としては、本発明の合成方法によって合成された電荷輸送物質含有アゾ顔料を用いることができる。電荷発生物質として、2種以上の電荷輸送物質含有アゾ顔料を組み合わせて用いてもよい。さらに必要に応じて、他の電荷発生物質と組み合わせて使用してもよい。他の電荷発生物質としては、たとえば、カチオン染料、スクエアリウム塩系染料、アントアントロン系顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、フタロシアニン顔料などが挙げられる。カチオン染料としては、たとえば、ピリリウム系染料、チアピリリウム系染料、アズレニウム系染料、チアシアニン系染料、キノシアニン系染料などが挙げられる。多環キノン顔料としては、たとえば、ジベンズピレンキノン系顔料、ピラントロン系顔料などが挙げられる。
【0064】
電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂あるいは有機光導電性ポリマーを用いることができる。具体的には、たとえば、ポリビニルブチラール、ポリビニルベンザール、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、フェノキシ樹脂、セルロース系樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタンなどが挙げられる。また、これら2種以上の共重合体も好ましい。また、これらの樹脂は、置換基を有してもよく、置換基としては、たとえば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。
【0065】
また、電荷発生層中の結着樹脂の使用量は、電荷発生層の全質量に対して80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。
【0066】
電荷発生層用塗布液に用いられる溶剤は、使用する結着樹脂や電荷発生物質の溶解性や分散安定性を考慮して選択される。具体的には、たとえば、エーテル、ケトン、アミン、エステル、芳香族、アルコール、脂肪族ハロゲン化炭化水素などが挙げられる。エーテルとしては、たとえば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなどが挙げられる。ケトンとしては、たとえば、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、ペンタノンなどが挙げられる。アミンとしては、たとえば、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。エステルとしては、たとえば、酢酸メチル、酢酸エチルなどが挙げられる。芳香族としては、たとえば、トルエン、キシレン、クロロベンゼンなどが挙げられる。アルコールとしては、たとえば、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどが挙げられる。脂肪族ハロゲン化炭化水素としては、たとえば、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエチレン、四塩化炭素、トリクロロエチレンなどが挙げられる。
【0067】
電荷発生層の膜厚は5μm以下であることが好ましく、0.1〜2μmであることがより好ましい。
【0068】
また、電荷発生層には、必要に応じて、増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、増粘剤などを含有させることもできる。
【0069】
感光層が積層型(順層型)の感光層である場合、電荷発生層上には、電荷輸送層が設けられる。
【0070】
電荷輸送層は、電荷輸送物質を結着樹脂とともに溶剤に溶解させることによって調製した電荷輸送層用塗布液を、電荷発生層上に塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。
【0071】
電荷輸送層の膜厚は3〜40μmであることが好ましく、4〜30μmであることがより好ましい。
【0072】
電荷輸送物質としては、たとえば、トリアリールアミン系化合物、ヒドラゾン系化合物、スチルベン系化合物、ピラゾリン系化合物、オキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、トリアリルメタン系化合物などが挙げられる。また、電荷輸送物質は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0073】
電荷輸送層に用いられる結着樹脂としては、たとえば、アクリル樹脂、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリアミド、塩素化ゴムなどの絶縁性樹脂が挙げられる。また、電荷輸送層の結着樹脂としては、たとえば、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセンなどの有機光導電性ポリマーを用いることもできる。これらは単独、混合または共重合体として1種または2種以上用いることができる。また、上記電荷輸送物質から誘導される基を主鎖または側鎖に有する高分子(たとえば、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン)のような電荷輸送物質の機能と結着樹脂の機能とを兼ね備えた光導電性樹脂を用いてもよい。
【0074】
電荷輸送層用塗布液に用いられる溶剤としては、たとえば、ケトン、エーテル、エステル、芳香族炭化水素、アルキルシクロヘキサン、ハロゲン原子で置換された炭化水素などが挙げられる。ケトンとしては、たとえば、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。エーテルとしては、たとえば、テトラヒドロフラン、ジメトキシメタンなどが挙げられる。エステルとしては、たとえば、酢酸メチル、酢酸エチルなどが挙げられる。芳香族炭化水素としては、たとえば、トルエン、キシレンなどが挙げられる。アルキルシクロヘキサンとしては、たとえば、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどが挙げられる。ハロゲン原子で置換された炭化水素としては、たとえば、クロロベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素などが挙げられる。
【0075】
また、電荷輸送層には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、フィラーなどを含有させることもできる。
【0076】
感光層(電荷輸送層、電荷発生層)上には、感光層を機械的外力や化学的外力などから保護することを目的として、および/または、転写性やクリーニング性の向上を目的として、保護層を設けてもよい。
【0077】
保護層は、樹脂を溶剤に溶解させることによって得られる保護層用塗布液を感光層(電荷輸送層、電荷発生層)上に塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。
【0078】
保護層に用いられる樹脂としては、たとえば、ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアリレート、ポリウレタン、スチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−アクリル酸コポリマー、スチレン−アクリロニトリルコポリマーなどが挙げられる。
【0079】
保護層に電荷輸送能を併せ持たせるために、電荷輸送能を有するモノマー材料や高分子型の電荷輸送物質を種々の架橋反応を用いて硬化させることによって保護層を形成してもよい。硬化させる反応・方法としては、ラジカル重合、イオン重合、熱重合、光重合、放射線重合(電子線重合)、プラズマCVD法、光CVD法などが挙げられる。
【0080】
また、保護層には、必要に応じて、導電性粒子、紫外線吸収剤、耐摩耗性改良剤などを含有させてもよい。導電性粒子としては、たとえば、酸化スズ粒子などの金属酸化物が挙げられる。耐摩耗性改良剤としては、たとえば、フッ素原子含有樹脂粒子、アルミナ、シリカなどが挙げられる。
【0081】
保護層の膜厚は0.5〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることが好ましい。
【0082】
上記の各層用の塗布液を塗布する際には、たとえば、浸漬塗布法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法のような塗布方法を用いることができる。
【0083】
図1に本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す。
【0084】
図1において、円筒状の本発明の電子写真感光体1は、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度(プロセススピード)をもって回転駆動される。電子写真感光体1の表面は、回転過程において、帯電手段3(一次帯電手段:帯電ローラーなど)により、正または負の所定電位の均一に帯電される。次いで、原稿からの反射光であるスリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段(不図示)から出力される目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して強度変調された露光光4を受ける。こうして電子写真感光体1の表面に対し、目的の画像情報に対応した静電潜像が順次形成されていく。
【0085】
電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5内の現像剤に含まれるトナーで現像(正規現像または反転現像)されてトナー像となる。
【0086】
電子写真感光体1の表面に形成されたトナー像は、転写手段6(転写ローラーなど)からの転写バイアスによって、転写材Pに順次転写されていく。このとき、転写手段6にはバイアス電源(不図示)からトナーの電荷とは逆極性のバイアス電圧が印加される。なお、転写材Pは、転写材供給手段(不図示)から電子写真感光体1と転写手段6との間(当接部)に電子写真感光体1の回転と同期して取り出されて給送される。
【0087】
トナー像の転写を受けた転写材P(最終転写材(紙やフィルムなど)の場合)は、電子写真感光体面から分離されて像定着手段8へ搬送されてトナー像の定着処理を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。転写材Pが一次転写材(中間転写体など)の場合は、複数次の転写工程の後に定着処理を受けてプリントアウトされる。
【0088】
トナー像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段7(クリーニングブレードなど)によって転写残トナーなどの付着物の除去を受けて清浄面化される。近年、クリーナーレスシステムも研究され、転写残トナーを直接、現像器などで回収することもできる。さらに、前露光手段(不図示)からの前露光光(不図示)により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、図1に示すように、帯電手段3が帯電ローラーなどを用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0089】
また、電子写真感光体1、帯電手段3、現像手段5、クリーニング手段7などの構成要素のうち、複数のものを容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。たとえば、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段7の少なくとも1つを電子写真感光体1とともに一体に支持してカートリッジ化して、レールなどの案内手段10を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ9とすることができる。
【0090】
また、露光光4は、原稿からの反射光や透過光、あるいは、センサーで原稿を読み取って信号化し、この信号に従って行われるレーザービームの走査、LEDアレイの駆動または液晶シャッターアレイの駆動などにより照射される光などである。
【0091】
本発明の電子写真感光体は、複写機、レーザービームプリンター、LEDプリンター、FAX、液晶シャッター式プリンターなどの電子写真装置一般に適応しうる。また、電子写真技術を応用したディスプレー、記録、軽印刷、製版およびファクシミリなどの装置にも幅広く適用しうる。
【実施例】
【0092】
以下に、実施例に基づき、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるわけではない。また、実施例中、「部」は「質量部」を意味する。
【0093】
(実施例1)
・電荷輸送物質含有アゾ顔料の合成例
500mlビーカーに、4,4’−ジアミノベンゾフェノン10gと、イオン交換水(電導度が1×10−4S/m以下のもの、以下同じ。)200mlと、濃塩酸39.4mlとを入れて攪拌しながら5℃まで冷却した。
【0094】
その後、これに、亜硝酸ナトリウム6.8gをイオン交換水17mlに溶かした液を、液温を0〜5℃に保ちながら25分間かけて液中滴下した。その後、液温を0〜5℃に保ちながら30分間撹拌した後、活性炭1.06gを加えて5分間攪拌した後、吸引濾過した。この濾液を0〜5℃に保ったまま、ホウフッ化ナトリウム36.2gをイオン交換水104mlに溶解させた液を5分かけて撹拌下に滴下した後、60分間攪拌した。析出した結晶を吸引濾過した。次に、濾過物を0〜5℃に保ったまま5%のホウフッ化ナトリウム水溶液315mlで30分間分散洗浄した後、吸引濾過した。さらに、この濾過物をアセトニトリル61mlとジイソプロピルエーテル135mlの混合溶剤で液温を0〜5℃に保ったまま30分間分散洗浄し、吸引濾過した。イソプロピルエーテル100mlで2回濾過器洗浄した後、濾過物を室温で乾燥させて(減圧乾燥)、下記構造式(A)で示される化合物を得た。得られた下記構造式(A)で示される化合物の収量は15.2gであり、収率は77.2%であった。
【0095】
【化4】

【0096】
次に、300mlビーカーにN,N−ジメチルホルムアミド100mlを入れ、これに下記構造式(B)で示される化合物(B)2.88gおよび上記構造式(10)で示される化合物(電子輸送物質)0.119g(上記構造式(A)で示される化合物の量に対して10mol%)を溶解させて、液温が0℃になるように冷却した。
【0097】
【化5】

【0098】
その後、上記構造式(A)で示される化合物1.5gを添加し、次いで、N−メチルモルホリン0.85gを2分間で滴下した。
【0099】
その後、液温を0〜5℃に保ちながら2時間撹拌し、さらに室温で1.5時間攪拌した後、吸引濾過した。得られた濾過物に対して、N,N’−ジメチルホルムアミドおよびイオン交換水を用いて分散洗浄を行った後、乾燥させて(凍結乾燥)、電荷輸送物質含有アゾ顔料を得た。得られた電荷輸送物質含有アゾ顔料の収量は2.27gであった。また、得られた電荷輸送物質含有アゾ顔料に含まれるアゾ化合物は、上記構造式(1)で示される化合物である。
【0100】
なお、以上の合成工程は全て黄色光下で実施した。
【0101】
また、以上のようにして合成した電荷輸送物質含有アゾ顔料を、以下、電荷輸送物質含有アゾ顔料(1)と称する。
【0102】
・シート状の電子写真感光体の作製・評価
アルミニウムシートを支持体として用いた。
【0103】
次に、メトキシメチル化ナイロン樹脂(数平均分子量:32000)5部およびアルコール可溶性共重合ナイロン樹脂(数平均分子量:29000)10部を、メタノール180部およびブタノール90部の混合溶剤に溶解させることによって中間層用塗布液を調製した。
【0104】
この中間層用塗布液を支持体上にマイヤーバーで塗布し、これを10分間100℃で乾燥させることによって、膜厚が0.6μmの中間層を形成した。
【0105】
次に、上記合成例によって得られた電荷輸送物質含有アゾ顔料(1)(電荷発生物質)2部を、テトラヒドロフラン43部中に添加し、直径0.8mmのガラスビーズを用いたペイントシェーカー装置を使用して20時間分散処理した。分散処理後、これにブチラール樹脂(商品名:エスレックBX−1、積水化学工業(株)製)1部をテトラヒドロフラン9部に溶かした液を加え、さらにペイントシェーカー装置を使用して2時間分散処理した。その後、これをシクロヘキサノン37.5部およびテトラヒドロフラン37.5部の混合溶剤で希釈することによって、電荷発生層用塗布液を調製した。
【0106】
この電荷発生層用塗布液を中間層上にマイヤーバーで塗布し、これを10分間80℃で乾燥させることによって、膜厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0107】
次に、下記構造式(C)で示される化合物(電荷輸送物質)10部およびポリカーボネート樹脂(商品名:ユーピロンZ−200、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)10部を、クロロベンゼン350部に溶解させることによって、電荷輸送層用塗布液を調製した。
【0108】
【化6】

【0109】
この電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上にマイヤーバーで塗布し、これを60分間110℃で乾燥させることによって、膜厚が20μmの電荷輸送層を形成した。
【0110】
このようにして、シート状の電子写真感光体を作製した。
【0111】
このようにして作製した電子写真感光体の感度を、10cmのNESAガラスを用いる直接電圧印加方式の電子写真感光体測定装置を使用して測定した。なお、測定シーケンスについては、電子写真感光体をコンデンサーとみなして、コンデンサーモデルのシーケンスとした。具体的には、所定の印加電圧Vaを電子写真感光体に印加し、電子写真感光体の表面電位が−700Vになった20ミリ秒後、露光波長476nmの光を100ミリ秒間照射し、95ミリ秒後に電子写真感光体の表面電位を測定した。光源としては、ハロゲンランプを波長476nmの干渉フィルターで単色化したものを用いた。NESA感度(EΔ500V)は、電子写真感光体の表面電位が露光によって−200Vになるときの光量から求めた。表1に示すように、実施例1の電子写真感光体のNESA感度(EΔ500V)は、0.34cJ/mであった。
【0112】
・円筒状の電子写真感光体の作製・評価
アルミニウム素管(ED)(昭和電工(株)製、直径30mm×長さ370mm、Rzjis=0.8μm)を液体ホーニング処理したシリンダー(Rzjis=1.8μm)を支持体として用いた。
【0113】
次に、6−66−610−12四元系ポリアミド共重合体5部を、メタノール70部およびブタノール25部の混合溶剤に溶解させることによって、中間層用塗布液を調製した。
【0114】
この中間層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、これを10分間100℃で乾燥させることによって、膜厚が1.5μmの中間層を形成した。
【0115】
次に、上記合成例によって得られた電荷輸送物質含有アゾ顔料(1)(電荷発生物質)15部を、テトラヒドロフラン215部中に添加し、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置を使用して25℃の環境下で40時間分散処理した。さらに、ポリ(ビニル・アセテート−コ−ビニル・アルコール−コ−ビニル(p−フルオロ)ベンザール)(ベンザール化度:85mol%、重量平均分子量:160000)5部をテトラヒドロフラン45部に溶解させた溶液を添加し、サンドミル装置を使用して30℃の環境下で5時間分散処理した。これにテトラヒドロフラン150部およびシクロヘキサノン175部を添加して希釈することによって、電荷発生層用塗布液を調製した。
【0116】
この電荷発生層用塗布液を中間層上に浸漬塗布し、これを10分間90℃で乾燥させることによって、膜厚が0.40μmの電荷発生層を形成した。
【0117】
次に、上記構造式(C)で示される化合物(電荷輸送物質)10部、および、ポリカーボネート樹脂(商品名:ユーピロンZ−400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)10部を、モノクロルベンゼン70部に溶解させることによって、電荷輸送層用塗布液を調製した。
【0118】
この電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布し、これを1時間110℃で乾燥させることによって、膜厚が15μmの電荷輸送層を形成した。
【0119】
このようにして、円筒状の電子写真感光体を作製した。
【0120】
このようにして作製した電子写真感光体にギアおよびフランジを取り付け、フルカラー複写機(商品名:IRC3200、キヤノン(株)製)の改造機に装着した。この複写機は、露光手段のレーザー露光光学系として、発振波長が476nm、出力5mWのGaN系チップ(日亜化学工業(株)製)が搭載されており、また、ビームスポット径が32μmとなるように改造されているものである。20℃/60%の環境下において、暗部電位(Vd):−500V、明部電位(Vl):−200V、現像バイアス(Vbis):−350Vになるように設定し、1ドット1スペースの画像と文字(5ポイント)画像の出力を実施した。
【0121】
5000枚画像出力後の暗部電位(Vd)および明部電位(Vl)を測定した結果、それぞれ−500Vおよび−203Vであった。このときの初期から5000枚画像出力後までの暗部電位の変動量(ΔVd)、明部電位の変動量(ΔVl)は、ΔVd=0V、ΔVl=+3Vとなり、耐久電位変動が小さかった。
【0122】
以上の結果を表1に示す。
【0123】
(実施例2〜15)
実施例1の電荷輸送物質含有アゾ顔料の合成例において、使用した電荷輸送物質を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、電荷輸送物質含有アゾ顔料(2)〜(12)、(14)〜(16)を合成した。
【0124】
また、この電荷輸送物質含有アゾ顔料(2)〜(12)、(14)〜(16)を電荷発生層の電荷発生物質として用いた以外は、実施例1と同様にして、シート状および円筒状の電子写真感光体を作製し、NESA感度(EΔ500V)ならびに暗部電位の変動量(ΔVd)および明部電位の変動量(ΔVl)を求めた。
【0125】
なお、実施例12〜15においては、NESA感度(EΔ500V)の測定は、波長476nmの干渉フィルターを403nmの干渉フィルターに変更して行った。また、実施例12〜15においては、暗部電位の変動量(ΔVd)および明部電位の変動量(ΔVl)の測定は、レーザー露光光学系の発振波長を476nmから403nmに変更して行った。結果を表1に示す。
【0126】
(比較例1)
300mlビーカーにN,N−ジメチルホルムアミド100mlを入れ、これに上記構造式(B)で示される化合物2.88gを溶解させて、液温が0℃になるように冷却した。その後、上記構造式(A)で示される化合物1.5gを添加し、次いで、N−メチルモルホリン0.85gを2分間で滴下した。その後、液温を0〜5℃に保ちながら2時間撹拌し、さらに室温で1.5時間攪拌した後、吸引濾過した。得られた濾過物に対して、N,N’−ジメチルホルムアミドおよびイオン交換水を用いて実施例1と同様に分散洗浄を行った後、乾燥させ(凍結乾燥)、電荷輸送物質を含有しないアゾ顔料(アゾ顔料(1)と称する。)を得た。アゾ顔料(1)は、上記構造式(1)で示される化合物からなるものである。
【0127】
このアゾ顔料(1)を電荷発生層の電荷発生物質として用いた以外は、実施例1と同様にして、シート状および円筒状の電子写真感光体を作製し、NESA感度(EΔ500V)ならびに暗部電位の変動量(ΔVd)および明部電位の変動量(ΔVl)を求めた。結果を表1に示す。
【0128】
(比較例2)
比較例1で合成されたアゾ顔料(1)を用いて、以下の方法によりシート状の電子写真感光体を作製した。
【0129】
アルミニウムシートを支持体として用いた。
【0130】
この支持体上に、実施例1と同様にして、膜厚が0.6μmの中間層を形成した。
【0131】
次に、比較例1で合成されたアゾ顔料(1)2部および上記構造式(10)で示される化合物0.066部(アゾ顔料に対して10mol%)を、テトラヒドロフラン45部中に添加し、直径0.8mmのガラスビーズを用いたペイントシェーカー装置を使用して20時間分散処理した。分散処理後、これにブチラール樹脂(商品名:エスレックBX−1、積水化学工業(株)製)1部をテトラヒドロフラン9部に溶かした液を加え、さらにペイントシェーカー装置を使用して2時間分散処理した。その後、これをシクロヘキサノン37.5部およびテトラヒドロフラン37.5部の混合溶剤で希釈することによって、電荷発生層用塗布液を調製した。
【0132】
この電荷発生層用塗布液を中間層上にマイヤーバーで塗布し、これを10分間80℃で乾燥させることによって、膜厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0133】
次に、この電荷発生層上に、実施例1と同様にして、膜厚が20μmの電荷輸送層を形成した。
【0134】
このようにして、シート状の電子写真感光体を作製した。
【0135】
このようにして作製した電子写真感光体について、実施例1と同様にして、NESA感度(EΔ500V)を求めた。結果を表1に示す。
【0136】
また、比較例1で合成されたアゾ顔料(1)を用いて、以下の方法により円筒状の電子写真感光体を作製した。
【0137】
アルミニウム素管を液体ホーニング処理したシリンダー上に、実施例1と同様にして、膜厚が1.5μmの中間層を設けた。
【0138】
次に、比較例1で合成されたアゾ顔料(1)15部および上記構造式(10)で示される化合物(電荷輸送物質)0.495部を、テトラヒドロフラン222部中に添加し、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置を使用して25℃の環境下で40時間前分散処理した。さらに、ポリ(ビニル・アセテート−コ−ビニル・アルコール−コ−ビニル(p−フルオロ)ベンザール)(ベンザール化度85mol%、重量平均分子量160000)5部をテトラヒドロフラン45部に溶かした溶液を添加し、サンドミル装置を使用して30℃の環境下で5時間分散処理した。これにテトラヒドロフラン150部およびシクロヘキサノン175部を添加して希釈することによって、電荷発生層用塗布液を調製した。
【0139】
この電荷発生層用塗布液を中間層上に浸漬塗布し、これを10分間90℃で乾燥させることによって、膜厚が0.40μmの電荷発生層を形成した。
【0140】
次に、電荷発生層上に、実施例1と同様にして、膜厚15μmの電荷輸送層を形成した。
【0141】
このようにして、円筒状の電子写真感光体を作製した。
【0142】
このようにして作製した電子写真感光体について、実施例1と同様にして、5000枚画像出力後の暗部電位の変動量(ΔVd)および明部電位の変動量(ΔVl)を求めた。結果を表1に示す。
【0143】
(比較例3〜5)
比較例2において、電荷発生層用塗布液に用いた電荷輸送物質(上記構造式(10)で示される化合物)を表1に示すように変更し、さらに希釈後の電荷発生層用塗布液中の固形分および溶剤の比率が比較例2〜5の間で一致するように溶剤量を調整した以外は、比較例2と同様にして、シート状および円筒状の電子写真感光体を作製した。
【0144】
作製した電子写真感光体について、比較例2と同様にして、NESA感度(EΔ500V)ならびに暗部電位の変動量(ΔVd)および明部電位の変動量(ΔVl)を求めた。結果を表1に示す。
【0145】
(比較例6)
比較例1において、電荷発生層に用いたアゾ顔料(1)を下記構造式(15)で示される化合物からなるアゾ顔料(15)に変更した以外は、比較例1と同様にして、シート状および円筒状の電子写真感光体を作製した。
【0146】
【化7】

【0147】
作製した電子写真感光体について、比較例1と同様にして、NESA感度(EΔ500V)ならびに暗部電位の変動量(ΔVd)および明部電位の変動量(ΔVl)を求めた。結果を表1に示す。
【0148】
(比較例7)
比較例1において、電荷発生層に用いたアゾ顔料(1)を下記構造式(16)で示される化合物からなるアゾ顔料(16)に変更した以外は、比較例1と同様にして、シート状および円筒状の電子写真感光体を作製した。
【0149】
【化8】

【0150】
作製した電子写真感光体について、比較例1と同様にして、NESA感度(EΔ500V)ならびに暗部電位の変動量(ΔVd)および明部電位の変動量(ΔVl)を求めた。結果を表1に示す。
【0151】
【表1】

【0152】
表1より、実施例1〜15のように本発明の合成方法によって得られた電荷輸送物質含有アゾ顔料を含有する感光層を有する電子写真感光体は、本発明の合成方法によって得られた電荷輸送物質含有アゾ顔料を含有しない感光層を有する電子写真感光体に比べ、感度が高く、かつ、耐久電位変動(ΔVd、ΔVl)が小さいことがわかる。
【0153】
(実施例16)
実施例1と同様にして、電荷輸送物質含有アゾ顔料(1)を合成した。
【0154】
アルミニウム素管(ED管)(昭和電工(株)製、直径30mm×長さ357.5mm、Rzjis=0.8μm)を支持体として用いた。
【0155】
次に、下記の材料を、直径0.8mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置を使用して3時間分散処理した。
【0156】
酸化スズで被覆した酸化チタン粒子(商品名:クロノスECT−62、チタン工業(株)製) 50部
レゾール型フェノール樹脂 25部
1−メトキシ−2−プロパノール 20部
球状シリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール120、東芝シリコーン社製) 3.8部
メタノール 5部
シリコーンオイル(ポリジメチルシロキサン・ポリオキシアルキレン共重合体、平均分子量3000) 0.002部
分散処理後、ガラスビーズをメッシュ濾過により分離し、1−メトキシ−2−プロパノール:メタノール=1:1の混合溶剤で固形分が55%になるように希釈することによって、導電層用塗布液を調製した。
【0157】
この導電層用塗布液を、支持体上に浸漬塗布し、これを30分間140℃で乾燥させることによって、膜厚が15μmの導電層を形成した。
【0158】
次に、下記の材料を用いてゲル化したポリアミド樹脂を作製した。
【0159】
すなわち、n−ブタノール180部に、N−メトキシメチル化6ナイロン樹脂(商品名:トレジンEF−30T、ナガセケムテックス(株)製、メトキシメチル化率:36.8%)20部を65℃で加熱しながら溶解させた。その後、メンブランフィルター(商品名:FP−022、孔径0.22μm、住友電気工業(株)製)で濾過し、濾液を密閉容器中で5℃の環境下で5日間静置保管することによって、ゲル化したポリアミド樹脂を得た。
【0160】
得られたゲル化したポリアミド樹脂160部、エタノール65部および電荷輸送物質含有アゾ顔料(1)5.3部を、直径0.8mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置を使用して5時間分散処理した。
【0161】
分散処理後、ガラスビーズをメッシュ濾過により分離し、エタノール:n−ブタノール=4:1の混合溶剤で固形分が3.0%になるように希釈することによって、中間層用塗布液を調製した。
【0162】
この中間層用塗布液中のアゾ顔料の平均粒径(メジアン径)を、遠心沈降式粒度分布測定装置(商品名:CAPA−700、(株)堀場製作所製)を用いて前述の条件で測定した。結果を表2に示す。
【0163】
さらに、この中間層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、これを10分間100℃で乾燥させることによって、膜厚が0.60μmの中間層を形成した。
【0164】
次に、下記の材料を、直径0.8mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置を使用して4時間分散処理した。
【0165】
CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°および28.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン 21部
ポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBX−1、積水化学工業(株)製)を5質量%含むシクロヘキサノン溶液 210部
分散処理後、ガラスビーズをメッシュ濾過により分離し、シクロヘキサノン:酢酸エチル=1:2の混合溶剤で固形分が1.8%になるように希釈することによって、電荷発生層用塗布液を調製した。
【0166】
この電荷発生層用塗布液を中間層上に浸漬塗布し、これを10分間100℃で乾燥させることによって、膜厚が0.15μmの電荷発生層を形成した。
【0167】
次に、上記構造式(C)で示される化合物(電荷輸送物質)7部およびポリカーボネート樹脂(商品名:ユーピロンZ200、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)10部を、モノクロロベンゼン70部に溶解させることによって、電荷輸送層用塗布液を調製した。
【0168】
この電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布し、これを60分間110℃で乾燥させることによって、膜厚が20μmの電荷輸送層を形成した。
【0169】
このようにして、円筒状の電子写真感光体を作製した。
【0170】
このようにして作製した電子写真感光体を、レーザービームを用いたデジタル複写機(商品名:GP−405、キヤノン(株)製)に装着した。この複写機は、帯電手段として、帯電ローラーを備えている。また、現像手段として、現像剤と、電子写真感光体が非接触である一成分ジャンピング現像方法を採用した一成分現像器とを備えている。また、転写手段として、帯電ローラーを備えている。また、クリーニング手段として、クリーニングブレードを備えている。また、帯電前露光手段を備えている。また、電子写真感光体、帯電ローラーおよびクリーニングブレードは一体に支持され、プロセスカートリッジを構成している。プロセススピードは210mm/sである。
【0171】
23℃/5%RHの常温低湿環境下でA4サイズのベタ白画像を出力し、出力画像の評価を行った。
【0172】
ベタ白画像の評価は、
ベタ白画像上に黒ポチが観察されないものを「黒ポチレベル4」、
0.1mm幅以下の黒ポチが画像の一部に観察されるものを「黒ポチレベル3」、
0.2mm幅以下の黒ポチが画像の一部に観察されるものを「黒ポチレベル2」、
0.4mm幅以下の黒ポチが画像の一部に観察されるものを「黒ポチレベル1」
とした。結果を表2に示す。
【0173】
その後、上記電子写真感光体を、レーザービームを用いたデジタル複写機(商品名:GP−405、キヤノン(株)製)の改造機に装着し、耐久電位特性を評価した。この複写機は、露光手段の光源は光量が可変な778nmの半導体レーザーになっており、前露光手段の光源は光量が可変な赤色LEDになっている。また、プロセススピードを可変なモーターに変更してある。
【0174】
評価手法としては、上記複写機本体から現像器ユニットを取り外し、代わりに電位測定用プローブを現像位置に固定することにより、電位の測定を行った。なお、その際に転写ユニットは電子写真感光体に非接触とし、紙は非通紙とした。
【0175】
まず、23℃/5%RHの常温低湿環境下で、暗部電位(Vd)を−750Vに調整した。また、明部電位(Vl)を−200Vに調整した。また、前露光を、その光量が−750Vの表面電位を−200Vに減衰するLED光量の3倍の光量になるように調整した。また、プロセススピードを320mm/sに調整した。
【0176】
その後、連続5万回転のVl耐久試験(全画面黒画像モード)を行った。5万回転目の明部電位(Vl)の測定を行った結果、−235Vであった。この場合の初期と5万回転目の明部電位の変動量(ΔVl)は、ΔVl=+35Vとなり、耐久電位変動が小さかった。
【0177】
(実施例17〜30)
実施例16において、電荷輸送物質含有アゾ顔料(1)を合成する際に使用した電荷輸送物質を表2に示すように変更した以外は、実施例16と同様にして、電荷輸送物質含有アゾ顔料(3)〜(5)、(12)〜(22)を合成した。
【0178】
また、中間層に用いた電荷輸送物質含有アゾ顔料(1)の代わりに電荷輸送物質含有アゾ顔料(3)〜(5)、(12)〜(22)を用いた以外は、実施例16と同様にして、円筒状の電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0179】
(実施例31)
300mlビーカーにN,N−ジメチルホルムアミド100mlを入れ、これに下記構造式(D)で示される化合物2.29gおよび上記構造式(10)で示される化合物0.119g(下記構造式(E)で示される化合物に対して10mol%)を溶解させて、液温が0℃になるように冷却した。その後、下記構造式(E)で示される化合物1.7gを添加し、次いで、N−メチルモルホリン0.85gを2分間で滴下した。
【0180】
【化9】

【0181】
【化10】

【0182】
その後、0〜5℃で2時間撹拌し、さらに室温で1.5時間攪拌した後、吸引濾過した。得られた濾過物に対して、N,N’−ジメチルホルムアミドおよびイオン交換水を用いて分散洗浄を行った後、乾燥させて(凍結乾燥)、電荷輸送物質含有アゾ顔料(23)を得た。得られた電荷輸送物質含有アゾ顔料(23)の収量は2.25gであった。
【0183】
中間層に用いた電荷輸送物質含有アゾ顔料(1)の代わりに電荷輸送物質含有アゾ顔料(23)を用いた以外は、実施例16と同様にして、円筒状の電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0184】
(比較例8)
実施例16において、中間層に用いた電荷輸送物質含有アゾ顔料(1)の代わりに比較例1で合成されたアゾ顔料(1)を用いた以外は、実施例16と同様にして、円筒状の電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0185】
(比較例9)
アルミニウム素管(ED管)上に、実施例16と同様にして、膜厚が15μmの導電層を形成した。
【0186】
次に、実施例16と同様の方法で得られたゲル化したポリアミド樹脂165部、エタノール67部、比較例1で合成されたアゾ顔料(1)5.3部および上記構造式(10)で示される化合物(電荷輸送物質)0.175部(アゾ顔料(1)に対して10mol%)を、直径0.8mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置を使用して5時間分散処理した。分散処理後、ガラスビーズをメッシュ濾過により分離し、エタノール:n−ブタノール=4:1の混合溶剤で固形分が3.0%になるように希釈することによって、中間層用塗布液を調製した。
【0187】
この中間層用塗布液中のアゾ顔料の平均粒径(メジアン径)を、実施例16と同様に測定した。結果を表2に示す。
【0188】
また、この中間層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、これを10分間100℃で乾燥させることによって、膜厚が0.60μmの中間層を形成した。
【0189】
次に、この中間層上に、実施例16と同様にして、膜厚が0.15μmの電荷発生層を形成した。
【0190】
次に、この電荷発生層上に、実施例16と同様にして、膜厚が20μmの電荷輸送層を形成し、円筒状の電子写真感光体を作製した。
【0191】
作製した電子写真感光体について、実施例16と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0192】
(比較例10)
比較例9において、中間層用塗布液作成時に用いた電荷輸送物質(上記構造式(10)で示される化合物)を表2に示すように変更し、さらに希釈後の中間層用塗布液中の固形分および液の溶剤の比率が比較例9と10との間で一致するように溶剤量を調整した以外は、比較例9と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0193】
なお、比較例9と同様にして、中間層用塗布液中のアゾ顔料の平均粒径(メジアン径)測定した。
【0194】
また、作製した電子写真感光体について、比較例9と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0195】
(比較例11)
比較例8において、中間層に用いたアゾ顔料(1)をアゾ顔料(2)に変更した以外は、比較例8と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0196】
なお、比較例8と同様にして、中間層用塗布液中のアゾ顔料の平均粒径(メジアン径)測定した。
【0197】
また、作製した電子写真感光体について、比較例8と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0198】
(比較例12〜13)
比較例8において、中間層に用いたアゾ顔料(1)を表2に示すように変更した以外は、比較例8と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0199】
なお、比較例8と同様にして、中間層用塗布液中のアゾ顔料の平均粒径(メジアン径)測定した。
【0200】
また、作製した電子写真感光体について、比較例8と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0201】
【表2】

表2より、実施例16〜31のように本発明の合成方法によって得られた電荷輸送物質含有アゾ顔料を含有する中間層を有する電子写真感光体は、低湿環境下における耐久時の明部電位の変動が抑制されている。また、本発明の合成方法によって合成された電荷輸送物質含有アゾ顔料を用いた場合は、比較例9、10のように中間層用塗布液調製時に電荷輸送物質を添加した場合や、比較例12、13のように電荷輸送物質が結合したアゾ顔料を用いた場合に比べて、中間層用塗布液中のアゾ顔料の平均粒径(メジアン径)が小さくなることがわかる。
【0202】
(示差熱分析(DTA))
実施例21で用いた電荷輸送物質含有アゾ顔料(13)に関して、示差熱熱重量同時測定装置(商品名:TG/DTA220、セイコーインスツル(株)製)を用いて示差熱分析を行った。結果を図2に示す。吸熱ピークは166.9℃および285.8℃の位置で確認できる。
【0203】
分析は、電荷輸送物質含有アゾ顔料(13)を1.5mgを秤量し、アルミニウムをリファレンスとして、空気雰囲気下、25℃から500℃まで10℃/分で昇温することによって行った。
【0204】
また、上記構造式(1)で示されるアゾ化合物および上記構造式(6)で示される化合物(正孔輸送物質)のそれぞれに関しても、上記と同様の方法で示差熱分析を行った。結果をそれぞれ図3および図4に示す。上記構造式(1)で示されるアゾ化合物の吸熱ピークは285.7℃である。上記構造式(6)で示される化合物(正孔輸送物質)の吸熱ピークは168.8℃である。
【0205】
また、上記構造式(1)で示されるアゾ化合物と上記構造式(6)で示される化合物(正孔輸送物質)とを単に質量比1:0.1で混合した混合物に関しても、上記と同様の方法で示差熱分析を行った。結果を図5に示す。吸熱ピークは168.1℃および286.3℃の位置で確認できる。
【0206】
電荷輸送物質含有アゾ顔料(13)の示差熱曲線(図2)において、上記構造式(1)で示されるアゾ化合物および上記構造式(6)で示される化合物(正孔輸送物質)の吸熱ピークがそれぞれ確認されたことから、本発明の合成方法によって得られる電荷輸送物質含有アゾ顔料には、アゾ化合物および電荷輸送物質が混合状態で存在していることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0207】
【図1】本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す図である。
【図2】電荷輸送物質含有アゾ顔料(13)の示差熱曲線である。
【図3】上記構造式(1)で示されるアゾ化合物の示差熱曲線である。
【図4】上記構造式(6)で示される化合物の示差熱曲線である。
【図5】上記構造式(1)で示されるアゾ化合物と上記構造式(6)で示される化合物とを単に質量比1:0.1で混合した混合物の示差熱曲線である。
【符号の説明】
【0208】
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 クリーニング手段
8 定着手段
9 プロセスカートリッジ
10 案内手段
P 転写材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒中で、アゾニウム塩とカプラー成分とをカップリング反応させることによりアゾ顔料を合成する方法において、該溶媒中に、該アゾニウム塩と反応しない電荷輸送物質を存在させることを特徴とする、電荷輸送物質含有アゾ顔料の合成方法。
【請求項2】
前記電荷輸送物質の仕込み量が前記アゾニウム塩の仕込み量に対して5mol%以上50mol%以下である請求項1に記載の電荷輸送物質含有アゾ顔料の合成方法。
【請求項3】
前記電荷輸送物質が正孔輸送物質である請求項1または2に記載の電荷輸送物質含有アゾ顔料の合成方法。
【請求項4】
前記正孔輸送物質の酸化電位が0.6V以上1.0V以下である請求項3に記載の電荷輸送物質含有アゾ顔料の合成方法。
【請求項5】
前記正孔輸送物質が下記構造式(5)で示される化合物または下記構造式(6)で示される化合物である請求項3に記載の電荷輸送物質含有アゾ顔料の合成方法。
【化1】

【化2】

【請求項6】
前記電荷輸送物質が電子輸送物質である請求項1または2に記載の電荷輸送物質含有アゾ顔料の合成方法。
【請求項7】
前記電子輸送物質の還元電位が−1.0V以上−0.3V以下である請求項6に記載の電荷輸送物質含有アゾ顔料の合成方法。
【請求項8】
前記電子輸送物質が下記構造式(10)で示される化合物または下記構造式(11)で示される化合物である請求項4に記載の電荷輸送物質含有アゾ顔料の合成方法。
【化3】

【化4】

【請求項9】
支持体および該支持体上に形成された感光層を有する電子写真感光体において、該感光層が請求項1〜8のいずれかに記載の合成方法によって合成された電荷輸送物質含有アゾ顔料を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【請求項10】
支持体、該支持体上に形成された中間層および該中間層上に形成された感光層を有する電子写真感光体において、該中間層が請求項1〜8のいずれかに記載の合成方法によって合成された電荷輸送物質含有アゾ顔料を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【請求項11】
請求項9または10に記載の電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段および転写手段を有することを特徴とする電子写真装置。
【請求項12】
請求項9または10に記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段およびクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−145834(P2010−145834A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324174(P2008−324174)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】