説明

電荷輸送膜、有機電子デバイス、電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置

【課題】可とう性及び靭性に優れた最表面層を持つ電荷輸送膜を提供すること
【解決手段】電荷輸送性骨格を持つエンチオール樹脂を含んで構成され、且つ硫黄原子の含有率が2.0質量%以上15質量%以下である電荷輸送膜である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電荷輸送膜、有機電子デバイス、電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真感光体、有機ELデバイス(有機エレクトロルミネッセンスデバイス)、有機トランジスタ、有機太陽電池など電子デバイスに用いられる、有機化合物を用いた電荷輸送膜が盛んに開発されている。
【0003】
例えば、熱、あるいは光硬化した膜を用いた有機ELデバイスが提案されている(例えば特許文献1参照)。
また、電荷輸送性基を含有するアクリルポリマーを用いた電子写真感光体が提案されている(例えば特許文献2から4参照)。
また、電荷輸送性基と反応性基を含有するアクリルポリマーを膜形成後に架橋した電子写真感光体が提案されている(例えば特許文献5参照)。
光硬化型アクリル系モノマーを含有する液を塗布し硬化した膜が提案されている(例えば特許文献6参照)。
また、炭素−炭素二重結合を有するモノマー、炭素−炭素二重結合を有する電荷移動材及びバインダー樹脂の混合物を熱、あるいは光のエネルギーによって前記モノマーの炭素−炭素二重結合と電荷移動材の炭素−炭素二重結合とを反応させることにより形成された膜が提案され、特に、単官能メタクリル変性した電荷移動材と、電荷輸送性を有さないメタクリルモノマーと、ポリカーボネート樹脂とに有機過酸化物を用いて硬化したものが提案されている(例えば特許文献7参照)。
また、同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を重合した化合物からなる膜が提案されている(例えば特許文献8参照)。
【0004】
ところで、硫黄を含有した電荷輸送膜、またはこれを利用した光電変換デバイスとしては、チオール基を有する正孔輸送性化合物をシロキサンマトリックス中にドーピングし、硬化した膜を用いた電子写真感光体が提案されている(例えば特許文献9参照)。
また、チオール基を有する正孔輸送性化合物をオキセタンマトリックス中にドーピングし、硬化した膜を用いた電子写真感光体が提案されている(例えば特許文献10参照)。
また、電荷輸送性構造を有する化合物と電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性モノマーとチオール基を含有する連鎖移動剤からなり、光エネルギー照射手段によって架橋膜を有する電子写真感光体が提案されている(例えば特許文献11参照)。
【0005】
なお、エンチオール樹脂とは、近年、接着剤、コーティング剤、光学系材料における封止剤などで開発が行なわれており(特許文献12〜13参照)、ポリエン−ポリチオール系重合体などとも呼ばれることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO09733193A2
【特許文献2】特開平5−202135号公報
【特許文献3】特開平6−256428号公報
【特許文献4】特開平9−12630号公報
【特許文献5】特開2005−2291号公報
【特許文献6】特開平5−40360号公報
【特許文献7】特開平5−216249号公報
【特許文献8】特開2000−206715号公報
【特許文献9】特開2000−310870号公報
【特許文献10】特開2006−184803号公報
【特許文献11】特開2007−322483号公報
【特許文献12】特開2003−277505号公報
【特許文献13】特開2009−104087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、可とう性及び靭性に優れた電荷輸送膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
電荷輸送性骨格を持つエンチオール樹脂を含んで構成され、且つ硫黄原子の含有率が2.0質量%以上15質量%以下である電荷輸送膜。
【0009】
請求項2に係る発明は、
前記エンチオール樹脂の架橋物を含んで構成された硬化膜である電荷輸送膜。
【0010】
請求項3に係る発明は、
前記エンチオール樹脂の電荷輸送性骨格が、下記一般式(AAA)で表される電荷輸送性骨格である請求項1に記載の電子写真感光体。
【0011】
【化1】



【0012】
(一般式(AAA)中、Ar〜Arは、それぞれ独立に、置換若しくは未置換のアリール基を表し、
Arは置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を表し、
は、それぞれ独立に、エンチオール樹脂を構成する電荷輸送性骨格以外の部位と連結する連結基であって、「Ar」−(G)a1−(X)a2−Y−S−*、又は「Ar」−(G)a1−(Z)a2−Y’−CH(R)−CH−*を表し(但し、「Ar」はAr〜ArのうちDが連結するものを表し、Gは炭素数1以上5以下の2価の有機基を表し、Xは−CO−O−、または−O−を表し、Yは−SHが置換基として置換されていてもよい炭素数1以上5以下の2価の有機基を表し、Y’は炭素数1以上5以下の2価の有機基を表し、Zは−CO−、−O−、またはフェニレン基を表し、Rは水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、a1又はa2はそれぞれ独立に0又は1を表す。なお、*は電荷輸送性骨格以外の部位との連結部を表す。)、
c1〜c5はそれぞれ独立に0、1又は2を表し、
kは0又は1を表し、Dの総数は2以上である。)
【0013】
請求項4に係る発明は、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電荷輸送膜を有する有機電子デバイス。
【0014】
請求項5に係る発明は、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電荷輸送膜を最表面層として有する電子写真感光体。
【0015】
請求項6に係る発明は、
請求項5に記載の電子写真感光体を少なくとも備え、
画像形成装置に脱着されるプロセスカートリッジ。
【0016】
請求項7に係る発明は、
請求項5に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナーを含む現像剤を収容し、前記現像剤により、前記電子写真感光体に形成された静電潜像をトナー像として現像する現像手段と、
前記トナー像を被転写体に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によれば、電荷輸送性骨格を持つエンチオール樹脂を含んで構成され、且つ硫黄原子の含有率が上記範囲でない場合に比べ、可とう性及び靭性に優れた電荷輸送膜を提供できる。
請求項2に係る発明によれば、機械的強度に優れた硬化膜であっても、可とう性及び靭性に優れた電荷輸送膜を提供できる。
請求項3に係る発明によれば、エンチオール樹脂の電荷輸送性骨格が上記一般式(AA)で表される電荷輸送性骨格でない場合に比べ、電荷輸送性と共に機械的特性に優れた電荷輸送膜を提供できる。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、電荷輸送性骨格を持つエンチオール樹脂を含んで構成され、且つ硫黄原子の含有率が上記範囲である電荷輸送膜を適用しない場合に比べ、可とう性及び靭性に優れた電荷輸送膜を有する有機電子デバイスを提供できる。
【0019】
請求項5に係る発明によれば、電荷輸送性骨格を持つエンチオール樹脂を含んで構成され、且つ硫黄原子の含有率が上記範囲である電荷輸送膜を最表面層として適用しない場合に比べ、可とう性及び靭性に優れた最表面層を有する電子写真感光体を提供できる。
【0020】
請求項6、7に係る発明によれば、電荷輸送性骨格を持つエンチオール樹脂を含んで構成され、且つ硫黄原子の含有率が上記範囲である電荷輸送膜を最表面層として有する電子写真感光体を適用しない場合に比べ、繰り返し使用による画像欠陥の発生が抑制されるプロセスカートリッジ、及び画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係る電子写真感光体を示す概略部分断面図である。
【図2】他の本実施形態に係る電子写真感光体を示す概略部分断面図である。
【図3】他の本実施形態に係る電子写真感光体を示す概略部分断面図である。
【図4】他の本実施形態に係る電子写真感光体を示す概略部分断面図である。
【図5】本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図6】他の本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[電荷輸送膜]
本実施形態に係る電荷輸送膜は、電荷輸送性骨格を持つエンチオール樹脂を含んで構成され、且つ硫黄原子の含有率が2.0質量%以上15質量%以下である電荷輸送膜である。
ここで、硫黄原子の含有率が上記範囲であることは、硫黄原子がエンチオール樹脂を構成する分子内に含まれていることを意味している。つまり、開始剤等の添加剤に由来する硫黄原子(添加剤に含まれる硫黄原子)のみでは、硫黄原子の含有率は上記範囲とはならないことを意味している。
【0023】
本実施形態に係る電荷輸送膜は、上記構成とすることで、可とう性及び靭性に優れた電荷輸送膜となる。
この理由は、定かではないが、以下の理由によるものと考えられる。
まず、電荷輸送膜として機能するために電荷輸送性を付与するためには、電荷輸送性骨格が膜中において規則的な分子配向をなし、分子内および分子間に共役系が広がっていることが必要と考えられる。電荷を輸送する経路(パス)が確保されると考えられるからである。
しかしながら、例えば、樹脂に電荷輸送機能を有する化合物を分散させるなどの方法により形成した電荷輸送膜おいては、溶媒を用いることで、両者の均一分散が実現されるが、製膜するときに溶媒の除去に伴い、樹脂と電荷輸送機能を有する化合物との互いの相溶性が悪化し、結果として樹脂中の電荷輸送速度が低下することが知られている。
この原因は明らかではないが、原因の一つとして、電荷輸送性骨格の希釈によるもの以外に、電荷輸送骨格と樹脂が互いに分散状態を保つことが困難となり、電荷輸送性を発揮しきれないことが挙げられる、
【0024】
これに対して、本実施形態の如く、電荷輸送性骨格をエンチオール樹脂の重合体骨格に取り入れると、その相溶性の悪化を抑制し、さらにエンチオール樹脂特有の構造である炭素―硫黄結合という比較的柔軟な構造によって電荷輸送性骨格が結合されているため、製膜後も電荷輸送性骨格の規則的な分子配向、電荷輸送性骨格の分散化が達せられると考えられる。
そして、電荷輸送性骨格を重合体骨格に取り入れたエンチオール樹脂は、炭素―硫黄結合という比較的柔軟な構造を有すると共に、電荷輸送性骨格の規則的な分子配向、電荷輸送性骨格の分散化が達せられるが故に、当該エンチオール樹脂を含んで構成される電荷輸送膜に対して外力が加わっても、その応力集中が緩和されるものと考えられる。
そして、電荷輸送膜中に硫黄原子が上記含有率の上記範囲で存在することで、これら作用が発揮されるものと考えられる。
【0025】
以上から、本実施形態に係る電荷輸送膜は、可とう性及び靭性に優れた電荷輸送膜となると考えられる。その結果、耐曲げ性、耐折れ性、伸び特性が付与されるものと考えられる。
一方、この可とう性及び靭性の特性は、膜の機械的特性を向上させる目的で、エンチオール樹脂を架橋樹脂としても、炭素―硫黄結合という比較的柔軟な構造を有すると共に、電荷輸送性骨格の規則的な分子配向、電荷輸送性骨格の分散化が達せられるが故に、維持されると考えられる。このため、エンチオール樹脂の架橋物を含んで構成され、機械的強度に優れた硬化膜であっても、可とう性及び靭性に優れた電荷輸送膜となると考えられる。その結果、高い表面硬度、耐摩耗性、耐傷付き性が付与されるものと考えられる。
【0026】
また、本実施形態に係る電荷輸送膜は、電荷輸送性に優れた電荷輸送膜でもある。
これは、上述のように、電荷輸送性骨格の規則的な分子配向、電荷輸送性骨格の分散化が達せられる上、電荷輸送膜中に硫黄原子が上記含粒率の上記範囲で存在すると、電荷輸送性骨格同士の間と共に、電荷輸送性骨格と硫黄との間でも電子的な共役系が見かけ上広がると考えられるためである。
なお、電荷輸送性骨格を有するエンチオール樹脂は、例えば、炭素二重結合を持つ反応性官能基とチオール基の反応によって得られる場合、該反応が速やか、かつ選択的に起こり易いと考えられる。そのため、電荷輸送性骨格の劣化を引きおこす副反応が起き難いことが予想され、電荷輸送性骨格を有するエンチオール樹脂は、電荷輸送機能の劣化が抑えられると考えられる。
【0027】
ここで、本実施形態に係る電荷輸送膜は、硫黄原子の含有率が2.0質量%以上15質量%以下であるが、電荷輸送性及び機械的特性と共に、可とう性及び靭性に優れた膜を得るといった観点から、2.5質量%以上15質量%以下がよく、望ましくは3.0質量%以上15質量%以下であり、より望ましくは4.0質量%以上10質量%以下である。また、電荷輸送膜がエンチオール樹脂の架橋物を含んで構成された硬化膜である場合には、硫黄原子の含有率が2.0質量%以上11質量%以下が好ましい。
硫黄原子の含有率は、使用する原料が明らかな場合は、それぞれの原料の混合比率より計算上求める。使用する原料が明らかでない場合、電荷輸送膜のみを採取し、該膜中の硫黄の含有率を蛍光X線による元素分析法によって求める。
なお、硫黄原子の含有率は、例えば、エンチオール樹脂を合成する際に、チオール基を有する化合物量を調整することで制御される。
【0028】
以下、本実施形態に係る電荷輸送膜を構成する、電荷輸送性骨格を有するエンチオール樹脂(以下、単に「エンチオール樹脂」と称することがある。)について詳細に説明する。
【0029】
(エンチオール樹脂)
エンチオール樹脂は、例えば、炭素二重結合を持つ2つ以上の反応性官能基を有する化合物の1種類以上と、2つ以上のチオール基を有する化合物の1種類以上と、を原料として、水素引き抜き能を有する触媒の共存下、紫外線照射や熱などの外部エネルギーを加えることで重合し得られる樹脂であって、炭素二重結合を持つ反応性官能基を有する化合物、及びチオール基を有する化合物の少なくとも一方に電荷輸送性骨格が導入されたもの用いて得られる樹脂である。
なお、エンチオール樹脂は、その他の製法、原料であっても、結果として、上記方法と同じ構造をとりえるものであれば、特に限定されるものではない。
【0030】
ここで、電荷輸送性骨格としては、公知の電子輸送性または正孔輸送性の構造の少なくとも一方を有する有機化合物骨格であり、特に限定されるものではないが、例えば、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、アゾベンゼン系化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物、キノン系化合物、フルオレノン系化合物に由来する骨格が挙げられる。これらの中も、得られる膜の電荷輸送性、及び機械的特性に優れるといった観点から、トリアリールアミン系化合物の骨格がよい。
【0031】
ここで、特に、電荷輸送性骨格としては、得られる膜の電荷輸送性、及び機械的特性に優れるといった観点から、下記一般式(AAA)で表される骨格が好適に挙げられる。
【0032】
【化2】

【0033】
一般式(AAA)中、Ar〜Arは、それぞれ独立に、置換若しくは未置換のアリール基を表す。
Arは置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を表す。
は、それぞれ独立に、エンチオール樹脂を構成する電荷輸送性骨格以外の部位と連結する連結基であって、「Ar」−(G)a1−(X)a2−Y−S−*、又は「Ar」−(G)a1−(Z)a2−Y’−CH(R)−CH−*を表す。
c1〜c5はそれぞれ独立に0、1又は2を表す。
kは0又は1を表し、Dの総数は2以上である。
【0034】
ここで、一般式(AAA)中、Dが表す基において、
「Ar」は、Ar〜ArのうちDが連結するものを表す。
Gは、炭素数1以上5以下の2価の有機基を表し、具体的には、例えば、炭素数1以上5以下のアルキレン基、アルキレンエーテル基、ポリアルキレンエーテル基を表す。
Xは、−CO−O−、または−O−を表す。
Yは、SHが置換基として置換されていてもよい炭素数1以上5以下の2価の有機基を表し、具体的には、例えば、−SHが置換基として置換されていてもよい、炭素数1以上5以下のアルキレン基、アルキレンエーテル基、ポリアルキレンエーテル基を表す。
Y’は、−炭素数1以上5以下の2価の有機基を表し、具体的には、例えば、炭素数1以上5以下のアルキレン基、アルキレンエーテル基、ポリアルキレンエーテル基を表す。
Zは、−CO−、−O−、又はフェニレン基を表す。
Rは、水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。
a1及びa2は、それぞれ独立に0又は1を表す。
*は、エンチオール樹脂の電荷輸送性骨格以外の部位との連結部を表し、具体的には、例えば、ポリエン構造、ポリチオール構造の少なくとも一方の繰り返し単位との連結部である。
【0035】
なお、一般式(AAA)中、Ar〜Ar、c1〜c5、kについては、後述する一般式(A)中のAr〜Ar、c1〜c5、kと同義であるため、説明を省略する。
【0036】
エンチオール樹脂として、具体的には、例えば、以下の組み合わせを原料とした共重合体が挙げられる。
1)(I)炭素二重結合を持つ反応性官能基を2つ以上有し、且つ電荷輸送性骨格を有する化合物(以下(I)の化合物と称することがある)と、(II)チオール基を2つ以上有し、且つ電荷輸送性骨格を有しない化合物(以下(II)の化合物と称することがある)と、の組み合わせ。
2)(III)炭素二重結合を持つ反応性官能基を2つ以上有し、且つ電荷輸送性骨格を有しない化合物(以下(III)の化合物と称することがある)と、(IV)チオール基を2つ以上有し、且つ電荷輸送性骨格を有する化合物(以下(IV)の化合物と称することがある)と、の組み合わせ。
3)(I)の化合物と、(IV)の化合物と、の組み合わせ。
なお、エンチオール樹脂は、これら組み合わせの原料単独の共重合体であってもよし、これら2種類以上の組み合わせの原料を混合して用いた共重合体であってもよい。
また、エンチオール樹脂は、一分子中に、電荷輸送性骨格を有し、且つ炭素二重結合を持つ反応性官能基及びチオール基を合計で2つ以上有する化合物を原料とした重合体であってもよい。
【0037】
ここで、エンチオール樹脂の架橋物を得る、つまり、機械的特性と共に、可とう性及び靭性に優れた膜を得るといった観点から、エンチオール樹脂を得るための炭素二重結合を持つ反応性官能基とチオール基のモル数の関係としては、[(チオール基のモル量)/(炭素二重結合を持つ反応性官能基のモル量)]×100(%)が、例えば20%以上100%がよく、望ましくは35%以上90%以下、より望ましくは45%以上80%以下である。
すなわち、炭素二重結合を持つ反応性官能基とチオール基のモル数の関係を上記範囲となるように、原料の量を調整すると。炭素二重結合を持つ反応性官能基のモル数はチオール基のモル数よりも多くなり、その結果、炭素二重結合を持つ反応性官能基による重合が進行することによって膜の架橋硬化が進むと予想され、エンチオール樹脂が架橋物となり、得られる膜が硬化膜となると考えられる。
【0038】
同様に、エンチオール樹脂の架橋物を得る、つまり、機械的特性と共に、可とう性及び靭性に優れた膜を得るといった観点から、上記(I)から(IV)の化合物から選択する組み合わせの原料において、少なくとも、炭素二重結合を持つ反応性官能基の数、又はチオール基のいずれかが、3つ以上有する化合物を用いることがよい。
つまり、上記(I)から(IV)の化合物から選択する組み合わせの原料において、少なくとも、炭素二重結合を持つ反応性官能基を3つ以上有する化合物、又はチオール基を3つ以上有する化合物を用いることがよい。
これにより、理論上、エンチオール樹脂が架橋物となり、得られる膜が硬化膜となると考えられる。
【0039】
以下、(I)から(IV)の化合物について詳細に説明する。
【0040】
−(I)の化合物−
(I)の化合物は、同一分子内に、炭素二重結合を持つ反応性官能基を2つ以上有し、且つ電荷輸送性骨格を有する化合物である。
【0041】
(I)の化合物における炭素二重結合を持つ反応性官能基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルフェニル基、アリル基、ビニル基、ビニルエーテル基、アリルビニルエーテル基、及びそれらの誘導体から選択される基が挙げられる。これらの中も、その反応性に優れる観点から、連鎖重合性官能基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルフェニル基、ビニル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくも一つが挙げられる。
【0042】
(I)の化合物としては、同一分子内に、炭素二重結合を持つ反応性官能基を4つ以上持つ化合物であることがよい。これにより、電荷輸送性、機械的強度が高い膜が得られ易くなる。
この炭素二重結合を持つ反応性官能基の数は、エンチオール樹脂で構成される膜を得るための原料組成物(塗布液)の安定性、電気特性の点から、20以下の範囲、10以下の範囲が挙げられる。
【0043】
(I)の化合物として具体的には、例えば、得られる膜の電荷輸送性、及び機械的特性に優れるといった観点から、下記一般式(A)で表される化合物が好適に挙げられる。
【0044】
【化3】

【0045】
一般式(A)中、Ar〜Arは、それぞれ独立に、置換若しくは未置換のアリール基を表し、Arは置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を表し、Dは、炭素二重結合を持つ官能基を有する基を表し、c1〜c5はそれぞれ独立に0、1又は2を表し、kは0又は1を表し、Dの総数は2以上である。
【0046】
ここで、一般式(A)で表される化合物としては、得られる膜の機械的強度に優れるといった観点から、Dがアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルフェニル基、アリル基、ビニル基、ビニルエーテル基、アリルビニルエーテル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくも一つを有する基(特に、これら基が末端に有する基)を表す化合物がよい。
また、一般式(A)で表される化合物としては、得られる膜の電荷輸送性及び機械的強度に優れるといった観点から、Dが−(CH−(O−CH−CH−O−CO−C(R’)=CH(但し、R’は水素原子、又はメチル基を表し、dは1以上5以下の整数、eは0又は1を表す)を表す化合物もよい。
そして、特に、Dが−(G)a1−(Z)a2−Y’−C(R)=CH(但し、G、Y’Z、R、a1、a2は、一般式(AAA)中のものと同義である。)を表すことがよい。
【0047】
なお、アクリロイル基、メタクロイル基、ビニルフェニル基は、連鎖移動剤との反応性が高く、得られる膜の機械的強度が高まる傾向がある。一方、アリル基、ビニル基、ビニルエーテル基、アリルビニルエーテル基は、反応性が低く、一般的な重合では反応が進行し難いが、チオール基を有する化合物(そのチオール基)と高反応性を有しており、重合が進行し、得られる膜の機械的強度が高まる。
【0048】
一般式(A)において、Ar〜Arは、それぞれ独立に、置換若しくは未置換のアリール基を表す。Ar〜Arは、それぞれ、同一でもあってもよいし、異なっていてもよい。
ここで、置換アリール基における置換基としては、Dで表される基以外のものとして、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数6以上10以下の置換若しくは未置換のアリール基等が挙げられる。
【0049】
Ar〜Arとして具体的は、下記式(1)〜(7)のうちのいずれか一つであることがよい。なお、下記式(1)〜(7)は、Ar〜Arの各々に連結され得る「−(D)C1」〜「−(D)C4」を総括的に表した「−(D)」と共に表す。
【0050】
【化4】

【0051】
式(1)〜(7)中、Rは、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルキル基若しくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、及び炭素数7以上10以下のアラルキル基からなる群より選ばれる1種を表す。R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表す。Arは置換又は未置換のアリーレン基を表し、Dは一般式(A)におけるDと同様の基を表し、cは1又は2を表し、sは0又は1を表し、tは0以上3以下の整数を表す。
【0052】
ここで、式(7)中のArとしては、下記構造式(8)又は(9)で表されるものがよい。
【0053】
【化5】

【0054】
式(8)及び(9)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、t’は0以上3以下の整数を表す。
【0055】
また、式(7)中、Z’は2価の有機連結基を表すが、下記式(10)〜(17)のうちのいずれか一つで表されるものがよい。
【0056】
【化6】

【0057】
式(10)〜(17)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Wは2価の基を表し、q及びrはそれぞれ独立に1以上10以下の整数を表し、t”は0以上3以下の整数を表す。
【0058】
式(16)〜(17)中のWとしては、下記(18)〜(26)で表される2価の基のうちのいずれか一つであることがよい。但し、式(25)中、uは0以上3以下の整数を表す。
【0059】
【化7】

【0060】
また、一般式(A)中、Arは、kが0の時は置換若しくは未置換のアリール基であり、このアリール基としては、Ar〜Arの説明で例示されたアリール基と同様のものが挙げられる。また、Arは、kが1の時は置換若しくは未置換のアリーレン基であり、このアリーレン基としては、Ar〜Arの説明で例示されたアリール基から目的とする位置の水素原子を1つ除いたアリーレン基が挙げられる。
【0061】
以下、一般式(A)で表される化合物((I)の化合物)の具体例を示す。なお、一般式(A)で表される化合物は、これらにより何ら限定されるものではない。
【0062】
まず、炭素二重結合を持つ反応性官能基を2つ有する化合物の具体例を示すが、これらに限られるものではない。
【0063】
【化8】

【0064】
【化9】

【0065】
【化10】

【0066】
【化11】

【0067】
【化12】

【0068】
【化13】

【0069】
【化14】

【0070】
【化15】

【0071】
【化16】

【0072】
【化17】

【0073】
【化18】

【0074】
【化19】

【0075】
【化20】

【0076】
【化21】

【0077】
次に、炭素二重結合を持つ反応性官能基を3つ有する化合物の具体例を示すが、これらに限られるものではない。
【0078】
【化22】

【0079】
【化23】

【0080】
【化24】

【0081】
【化25】

【0082】
【化26】

【0083】
次に、炭素二重結合を持つ反応性官能基を4つから6つ有する化合物の具体例を示すが、これらに限られるものではない。
【0084】
【化27】

【0085】
【化28】

【0086】
【化29】

【0087】
【化30】

【0088】
【化31】

【0089】
【化32】

【0090】
【化33】

【0091】
【化34】

【0092】
【化35】

【0093】
【化36】

【0094】
【化37】

【0095】
【化38】

【0096】
【化39】

【0097】
【化40】

【0098】
【化41】

【0099】
【化42】

【0100】
(I)の化合物は、例えば、以下のようにして合成される。
即ち、(I)の化合物は、例えば、前駆体であるアルコールを、対応するメタクリル酸、又はメタクリル酸ハロゲン化物と縮合させて合成する。特定の電荷輸送性材料は、例えば、前駆体であるアルコールがベンジルアルコール構造の場合、アルコールと、ヒドロキシエチルメタクリレート等の水酸基を有するメタクリル酸誘導体と、の脱水エーテル化などにより合成してもよい。
【0101】
上記例示化合物iv−4及び例示化合物iv−17の合成経路を一例として以下に示す。
【0102】
【化43】

【0103】
【化44】

【0104】
他の(I)の化合物は、例えば、上述した化合物iv−4の合成経路、及び化合物iv−17合成経路と同様にして合成される。
【0105】
(I)の化合物としては、前述のように、得られる膜の機械的強度が向上するといった観点から、炭素二重結合を持つ反応性官能基を4つ以上含む化合物が用いられることがよい。
また、(I)の化合物として、炭素二重結合を持つ反応性官能基を4つ以上である化合物と、炭素二重結合を持つ反応性官能基を1つ以上3つ以下含む化合物と、を併用してもよい。この併用により、電荷輸送性能の低下を抑制しつつ、膜の強度が調整される。
(I)の化合物として、炭素二重結合を持つ反応性官能基を4つ以上である化合物と、炭素二重結合を持つ反応性官能基を1つ以上3つ以下含む化合物と、を併用する場合、(I)の化合物の総含有量に対して、炭素二重結合を持つ反応性官能基を4つ以上である化合物の含有量を5質量%以上とすることがよく、特に20質量%以上とすることがよい。
【0106】
次に、他の(I)の化合物について説明する。
(I)の化合物としては、下記一般式(B)及び(C)によりそれぞれ表される部分構造を含むポリマーであってもよい。
【0107】
【化45】



【0108】
一般式(B)及び(C)中、R、R、Rは、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、X、Yはそれぞれ独立して炭素数1以上20以下の2価の有機基を表し、aは0又は1を表し、CTは電荷輸送性骨格を持つ有機基を表す。
ここで、一般式(B)及び(C)によりそれぞれ表される部分構造を含むポリマーの末端基としては、ラジカル重合反応による停止反応で生じた構造である。
【0109】
一般式(B)中、CTが表す電子輸送性骨格を持つ有機基としては、上述した電荷輸送性骨格が挙げられるが、例えば、トリアリールアミン骨格、ベンジジン骨格、アリールアルカン骨格、アリール置換エチレン骨格、スチルベン骨格、アントラセン骨格、ヒドラゾン骨格を持つものなどが好適に挙げられるが、この中でもトリアリールアミン骨格、ベンジジン骨格、スチルベン骨格を持つものが望ましい。
【0110】
一般式(B)及び(C)中、X、Yが表す2価の有機基としては、例えば、アルキレン基、−C(=O)−、−O−C(=O)−、芳香環、及びこれらを組み合わせてた連結基から選択される一つを含む2価の有機基が挙げられる。なお、X、Yが表す2価の有機基は、水酸基を有さないことが望ましい。
Xが表す2価の有機基として具体的には、例えば、−C(=O)−O−(CH−(但し、nは0又は1以上10以下の整数を表す)。
Yが表す2価の有機基として具体的には、
−(CH)−(但し、nは1以上10以下の整数を表す)、
−(CH−O−C(=O)−(但し、nは0又は1以上10以下の整数を表し、「(CH」の水素原子の一部は水酸基が置換していてもよい。)、
−(CH−Ar−(但し、Arは芳香環数1以上5以下のアリーレン基を表し、nは0又は1以上10以下の整数を表す。)、
−Ar−O−(CH−O−C(=O)−(但し、Arは芳香環数1以上5以下のアリーレン基を表し、nは0又は1以上10以下の整数を表す。)
等が挙げられる。
【0111】
一般式(B)で表される部分構造の具体例としては、以下のものが挙げられるが、これに限られるわけではない。なお、「(X)」の欄において、「−」が示されている場合は、a=0のときを示しており、基が示されている場合は、a=1のときで、CTと共にXが表す基を示している。
【0112】
【化46】

【0113】
【化47】

【0114】
【化48】

【0115】
【化49】

【0116】
【化50】

【0117】
【化51】

【0118】
次に、一般式(C)で表される部分構造の具体例としては、以下のものが挙げられるが、これに限られるわけではない。
【0119】
【化52】

【0120】
【化53】

【0121】
【化54】

【0122】
一般式(B)、(C)で表される部分構造のみからなるものとしては、下記一般式(B’)及び(C’)で表される部分構造を有するものが望ましい。
【0123】
【化55】

【0124】
一般式(B’)及び(C’)中、R、R、Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、Xは、炭素数1以上20以下の2価の有機基を表し、Y’は、−C(=O)−、−O−C(=O)−、アルキレン基、芳香環、及びこれらを組み合わせてた連結基であって水酸基を有しないものを表し、a、bはそれぞれ独立に0又は1を表し、CTは電荷輸送性骨格を持つ有機基を表す。
なお、一般式(B’)及び(C’)中、Xが表す2価の有機基、及びCTは電荷輸送性骨格を持つ有機基としては、一般式(B)及び(C)中のX、CTと同様である。
【0125】
このうち、更に下記構造式(D)で表されるものが溶解性、製膜性に優れ、望ましい。
【0126】
【化56】

【0127】
一般式(D)中、R、R、Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、Xは炭素数1以上20以下の2価の有機基を表し、Y’は−C(=O)−、−O−C(=O)−、アルキレン基、芳香環、及びこれらを組み合わせてた連結基であって水酸基を有しないものを表し、a、bはそれぞれ独立して0又は1を表し、CTは電荷輸送性骨格を持つ有機基を表す。
m、nはそれぞれ5以上の整数を表し、10<m+n<2000、かつ0.2<m/(m+n)<0.95であり、強度、可とう性、電気特性の観点から、15<m+n<2000、かつ0.3<m/(m+n)<0.95が望ましく、20<m+n<2000、かつ0.4<m/(m+n)<0.95がさらに望ましい。
なお、一般式(D)中、Xが表す2価の有機基、及びCTは電荷輸送性骨格を持つ有機基としては、一般式(B)及び(C)中のX、CTと同様である。
【0128】
一般式(B)及び(C)によりそれぞれ表される部分構造を含むポリマーは、例えば、一般式(A)で表される化合物をモノマーとして使用し、メタクリル酸、アクリル酸、グリシジル化合物およびこれらの誘導体との共重合等、公知の方法によって製造される。
【0129】
また、一般式(B)及び(C)によりそれぞれ表される部分構造を含むポリマーは、一般式(B)及び(C)で示されるものに加え、溶解性、可とう性を付与するために1官能のモノマーを共重合してもよい。
1官能のモノマーとしては、例えば、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、ヒドロキシエチルo−フェニルフェノールアクリレート、o−フェニルフェノールグリシジルエーテルアクリレート、などのアクリレート、あるいは、メタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレンなどのスチレン誘導体などが挙げられる。
これらを共重合する際に使用される量(l)は、溶解性及び可とう性を付与する観点から、上記一般式(D)中のmに対してl/m<0.3が望ましく、l/m<0.2がより望ましい。
【0130】
なお、これら(I)の化合物は、1単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0131】
−(II)の化合物−
(II)の化合物は、同一分子内に、チオール基を2つ以上有し、且つ電荷輸送性骨格を有しない化合物である。
【0132】
(II)の化合物は、例えば、第1級チオール基を2つ以上有する化合物及び第2級チオール基を2つ以上有する化合物から選択される少なくとも1種の多官能チオール化合物が挙げられる。
なお、チオール基の数は、例えば、2以上6以下であることがよい。
【0133】
ここで、第1級チオール基とは、構造上、−CH−SHで表されるチオール基である。
一方、第2級チオール基とは、構造上、CR−CH(SH)−CR(ただし、Rは有機基を示す)で表されるチオール基である。
【0134】
第1級チオール基を2つ以上有する化合物としては、電荷輸送性骨格を有さず、第1級チオール基を2つ以上有する化合物であれば、特に制限はないが、例えば、以下のものが挙げられる。
第1級チオール基を2つ化合物としては、例えば、1,10−デカンジチオール、1,2−ベンゼンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1、4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、テトラエチレングリコール−ビス(3−メルカプトプロピオネート)等のオリゴマー化合物等が挙げられる。
第1級チオール基を3つ含有する化合物としては、例えば、トリメチロールプロパン トリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3−メルカブトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H−トリオン)等が挙げられる。
第1級チオール基を4つ含有する化合物としては、例えば、ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトプロピオネート)等が挙げられる。
第1級チオール基を6つ含有する化合物としてはジペンタエリスリトール ヘキサキス (3−メルカプトプロピオネート)等が挙げられる。
第1級チオール基を2つ以上有する化合物としては、得られる膜の機械的強度に優れるといった観点から、第1級チオール基を3つ以上有する化合物がよい。
【0135】
一方、第2級チオール基を2つ以上有する化合物としては、電荷輸送性骨格を有さず、第2級チオール基を2つ以上有する化合物であれば、特に制限はないが、例えば、例えば、1、4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5−トリス(3−メルカブトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H−トリオン)、ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトブチレート)等が挙げられる。
特に、第2級チオール基を2つ以上有する化合物は、エンチオール樹脂で構成される膜を得るための原料組成物(塗布液)の溶液の状態において、その溶液の粘度安定性に優れる点でよい。
【0136】
なお、これら(II)の化合物は、1単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0137】
−(III)の化合物−
(III)の化合物は、同一分子内に、炭素二重結合を持つ反応性官能基を2つ以上有し、且つ電荷輸送性骨格を有しない化合物である。
【0138】
(III)の化合物としては、電荷輸送性骨格を有さず、且つ炭素二重結合を持つ反応性官能基を2つ以上有する化合物であれば、特に制限はないが、例えば、以下のものが挙げられる。
炭素二重結合を持つ反応性官能基を2つ有する化合物としては、例えば、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3‐プロパンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、トリシクロデカンメタノールジアクリレート、トリシクロデカンメタノールジメタクリレート等の2官能の化合物が挙げられる。
炭素二重結合を持つ反応性官能基を3つ有する化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート、トリメチロールプロパンEO付加トリアクリレート、グリセリンPO付加トリアクリレート、トリスアクロイルオキシエチルフォスフェート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化イソシアヌルトリアクリレート等の3官能の化合物が挙げられる。
【0139】
その他、炭素二重結合を持つ反応性官能基を4つ以上有する化合物としては、例えば、イソシアヌル酸骨格を有する多官能アクリレートが挙げられ、具体的には、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリメタクリレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリメタクリレート、ビス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートのカプロラクトン変性アクリレート、ビス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートのカプロラクトン変性メタクリレート、ビス(メタアクリロキシエチル)イソシアヌレートのカプロラクトン変性アクリレート、ビス(メタアクリロキシエチル)イソシアヌレートのカプロラクトン変性メタアクリレート等の4官能以上の化合物が挙げられる。
【0140】
これらの中でも、得られる膜の機械的特性に優れるといった観点及び得られる膜において生じる相分離を抑える観点から、(III)の化合物としては、炭素二重結合を持つ反応性官能基を2つ以上4つ以下で有する化合物がよい。
【0141】
−(IV)の化合物−
(IV)の化合物は、同一分子内に、チオール基を2つ以上有し、且つ電荷輸送性骨格を有する化合物である。
【0142】
(IV)の化合物として具体的には、例えば、下記一般式(AA)で表される化合物が挙げられる。
・一般式(AA): F−[(G)a1−(X)a2−Y−SH]
一般式(AA)中、Fは電荷輸送性化合物から誘導される有機基を表し、Gは炭素数1以上5以下の2価の有機基、Xは−CO−O−、又は−O−を表し、Yは−SHが置換基として置換されていてもよい炭素数1以上5以下の2価の有機基を表し、a1及びa2はそれぞれ独立に0又は1を表し、bは2以上6以下の整数を表す。
【0143】
ここで、一般式(AA)中、Fが表す電荷輸送性化合物から誘導される有機基は、電荷輸送性骨格に相当する。Fが表す電荷輸送性化合物から誘導される有機基における当該電荷輸送性化合物としては、知の電子輸送性または正孔輸送性の少なくとも一方を有する有機化合物であり、特に限定されるものではないが、例えばフタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、アゾベンゼン系化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物、キノン系化合物、フルオレノン系化合物等が挙げられる。これらの中も、得られる膜の電荷輸送性、及び機械的特性に優れるといった観点から、トリアリールアミン系化合物がよい。
また、bは、2以上6以下であるが、得られる膜の電荷輸送性及び機械的強度に優れるといった観点から、4以上6以下であることがよい。
【0144】
なお、一般式(AA)中、G、X、Y、a1、a2は、一般式(AAA)中のDが表す基で説明したものと同義であるとので、説明を省略する。
【0145】
一般式(AA)で表される化合物として具体的には、例えば、得られる膜の電荷輸送性、及び機械的特性に優れるといった観点から、下記一般式(AB)で表される化合物が好適に挙げられる。
【0146】
【化57】

【0147】
一般式(AB)中、Ar〜Arは、それぞれ独立に、置換若しくは未置換のアリール基を表し、Arは置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を表し、Dは、(G)a1−(X)a2−Y−SHを表し、c1〜c5はそれぞれ独立に0、1又は2を表し、kは0又は1を表し、Dの総数は2以上である。
【0148】
一般式(AB)中、Dの総数は、例えば、得られる膜の電荷輸送性、及び機械的特性に優れるといった観点から、4以上6以下であることがよい。
【0149】
なお、一般式(AB)中、Ar〜Arは一般式(A)中のものと同義であるため説明を省略する。
また、Dが表す基におけるG、X、Y、a1、a2は、一般式(AA)中のもの同義であるため説明を省略する。
【0150】
以下、一般式(AA)で表される化合物((IV)の化合物)の具体例を示す。なお、一般式(AA)で表される化合物は、これらにより何ら限定されるものではない。
【0151】
【化58】

【0152】
【化59】

【0153】
【化60】

【0154】
【化61】

【0155】
【化62】

【0156】
【化63】

【0157】
次に、一般式(AA)で表される化合物の合成方法について説明する。
一般式(AA)で表される化合物は、例えば、通常のエステル化反応で合成し得る。
例えば、一般式(AA)で表される化合物の合成方法としては、以下に示す合成方法が挙げられるが、これに限られるわけではない。
1)下記一般式(AC)で示されるアルコールと下記一般式(AD)で示されるカルボン酸との組み合わせ、又は下記一般式(AE)で示されるカルボン酸と下記一般式(AF)で示されるアルコールとの組み合わせを、酸触媒(例えば硫酸、p−トルエンスルホン酸等)を用いてエステル化することにより合成する方法(但し、カルボン酸の代わりに対応するカルボン酸クロライドを用いてもよい。)
・一般式(AC):F−[(G)a1−OH]
・一般式(AD):HOOC−Y−SH
・一般式(AE):F−[(G)a1−COOH]
・一般式(AF):HO−Y−SH
【0158】
一般式(AC)、(AD)、(AE)、(AF)中、Fは電荷輸送性化合物から誘導される有機基を表し、Gは炭素数1以上5以下の2価の有機基を表し、Yは炭素数1以上5以下の2価の有機基を表し、a1は0又は1を表し、bは1〜6の整数を表す。
ここで、一般式(AC)、(AD)、(AE)、(AF)中、F、G、Y、a1、bは、一般式(AA)中のF、G、Y、a1、bと同義である。
なお、上記合成法では、a2が1を表し、Xが−CO−O−を表す一般式(AA)で表される化合物が合成される。
【0159】
2)下記一般式(AC)で示されるアルコールと下記一般式(AG)で示されるアルコール若しくはハロゲン化物との組み合わせ、又は下記一般式(AH)で表されるアルコール若しくはハロゲン化物と下記一般式(AF)で示されるアルコールとの組み合わせを、反応させることにより合成する方法。
・一般式(AC):F−[(G)a1−OH]
・一般式(AG):J−Y−SH
・一般式(AH):F−[(G)a1−J]
・一般式(AF):HO−Y−SH
【0160】
一般式(AC)、(AF)、(AG)、(AH)中、Fは電荷輸送性化合物から誘導される有機基を表し、Gは炭素数1以上5以下の2価の有機基を表し、Yは炭素数1以上5以下の2価の有機基を表し、a1は0又は1を表し、bは1〜6の整数を表し、Jは水酸基、あるいは、塩素、臭素、ヨウ素を表す。)
ここで、一般式(AC)、(AF)、(AG)、(AH)中、F、G、Y、a1、bは、一般式(AA)中のF、G、Y、a1、bと同義である。
なお、上記合成法では、a2が1を表し、Xが−O−を表す一般式(AA)で表される化合物が合成される。
【0161】
ここで、一般式(AA)で表される化合物の合成方法としてより具体的には、例えば、原料としてアリールアミン化合物を用いる場合、特開平9−31039号公報等に記載されたエステル基を含有する電荷輸送性化合物を含チオールアルコールとエステル交換反応を行って合成する方法、エステル基を含有する電荷輸送性化合物を加水分解によりフリーのカルボン酸とした後に、含チオールアルコール又は含チオール炭化水素の塩素化物、臭素化物、又はヨウ素化物等でエステル化して合成する方法が挙げられる。
一方。一般式(AA)で表される化合物の合成方法として具体的には、例えば、エステル基を含有するアリールアミン化合物のエステル基を、たとえば、実験化学講座、第4版、20巻、P.10などに記載されたように、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素ナトリウムなどを用いて対応するアルコールに還元し、含チオールカルボン酸とエステル化して合成する方法も挙げられる。
【0162】
エステル交換は、例えば、実験化学講座、第4版、28巻、P.217などに記載されたように、過剰量の含チオールアルコールと、有機金属化合物(チタン、スズ、亜鉛等の有機金属化合物)を用いて加熱することで行う。
【0163】
含チオールアルコールは、アリールアミン化合物のエステル基に対し1当量以上、好ましくは1.2当量以上、より好ましくは1.5当量以上加えることがよい。
無機酸(例えば硫酸、リン酸等)、酢酸塩(例えばチタンアルコキシド、カルシウム、コバルトなど酢酸塩)、炭酸塩(例えばチタンアルコキシド、カルシウム、コバルトなど炭酸塩)、酸化物(例えば亜鉛や鉛の酸化物)を触媒として加えてもよい。
触媒は、アリールアミン化合物の1質量部に対して、例えば。1/10000質量部以上1質量部以下、好ましくは1/1000質量部以上1/2質量部以下で用いることがよい。
反応は、例えば、反応温度100℃以上300℃以下で行い、好ましくは脱離するアルコールの沸点以上で行うことがよい。
【0164】
アリールアミン化合物のエステル基としては、エステル交換反応を促進するため、メタノール、エタノールなどの低沸点アルコールとのエステルがよい。反応は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中で行うことがよく、また、p−シメン、1ークロロナフタレンなどの高沸点溶剤を用いて反応させてもよい。
【0165】
アリールアミン化合物カルボン酸は、アリールアミン化合物のエステル基を、例えば、実験化学講座、第4版、20巻、P.51などに記載されたように、塩基性触媒(NaOH、KCO等)、酸性触媒(例えばリン酸、硫酸等)を用いる加水分解により得られる。
この際、溶剤としては、種々のものが挙げられるが、メタノール、エタノール、エチレングリコールなどのアルコール系を用いるか、これに水を混合して用いることがよい。
さらに、アリールアミン化合物の溶解性が低い場合には、塩化メチレン、クロロホルム、トルエン、ジメチルスルホキシド、エーテル、テトラヒドロフランなどを加えてもよい。
溶剤の量は、特に制限はないが、例えば、エステル基を含有するアリールアミン化合物1質量部に対して1質量部以上100質量部以下、好ましくは2質量部以上50質量部以下で用いることがよい。
反応温度は、例えば、室温(例えば25℃)以上溶剤の沸点以下の範囲で設定され、反応速度の問題上、50度以上が望ましい。
触媒の量については、特に制限はないが、例えば、エステル基を含有する電荷電荷輸送化合物1質量部に対して0.001質量部以上1質量部以下、好ましくは0.01質量部以上0.5質量部以下で用いることがよい。
加水分解反応後、塩基性触媒で加水分解を行った場合には、生成した塩を酸(例えば塩酸等)で中和し、遊離させる。さらに、十分に水洗した後、乾燥して使用するか、必要によっては、メタノール、エタノール、トルエン、酢酸エチル、アセトンなど、適当な溶剤により、再結晶精製を行った後、乾燥して使用してもよい。
【0166】
アリールアミン化合物カルボン酸に対し、例えば、含チオールアルコールを1当量以上、好ましくは、1.2当量以上、より好ましくは1.5当量以上加えることがよい。
無機酸(例えば硫酸、リン酸等)、有機酸(例えばp−トルエンスルホン酸等)を触媒として加えてもよい。
触媒は、アリールアミン化合物の1重量部に対して、例えば、1/10000質量部以上1質量部以下、好ましくは1/1000質量部以上1/2質量部以下で用いることがよい。
溶媒は、例えば、重合中に生成する水を除去するために、水と共沸可能な溶剤を用いることがよい。溶媒としては、例えば。トルエン、クロロベンゼン、1ークロロナフタレンなどが有効である。
溶媒の量は、アリールアミン化合物カルボン酸の1質量部に対して、1質量部以上100質量部以下、好ましくは2質量部以上50質量部以下の範囲で用いることがよい。
反応温度は任意に設定できるが、重合中に生成する水を除去するために、溶剤の沸点で反応させることがよい。
反応終了後、反応液を水にあけ、トルエン、ヘキサン、酢酸エチルなどの溶剤で抽出、水洗し、さらに、必要により活性炭、シリカゲル、多孔質アルミナ、活性白土などの吸着剤を用いて精製を行ってもよい。
【0167】
また、含チオール炭化水素の塩素化物、臭素化物、又はヨウ素化物等でエステル化して合成する方法の場合、ハロゲン基(Cl,Br,I等)を有する含チオール炭化水素を、アリールアミン化合物カルボン酸の酸基に対し、例えば1等量以上5等量以下、好ましくは1.1等量以上3等量以下と、塩基(例えばピリジン、ピペリジン、トリエチルアミン、ジメチルアミノピリジン、トリメチルアミン、DBU、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)と、を有機溶剤(N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶剤;、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;等)中で反応させ合成する。
塩基は、アリールアミン化合物カルボン酸に対し、1等量以上3等量以下、好ましくは1等量以上2等量以下で用いることがよい。
使用する非プロトン性の有機溶媒は、カルボン酸誘導体に対し、例えば1質量部以上50質量部以下、好ましくは1.5質量部以上30質量部以下で用いることがよい。
反応温度は、例えば、0℃以上溶剤の沸点以下の間で設定され、0℃以上150℃以下がよい。
反応終了後、反応液を水にあけ、トルエン、ヘキサン、酢酸エチルなどの溶剤で抽出、水洗し、さらに、必要により活性炭、シリカゲル、多孔質アルミナ、活性白土などの吸着剤を用いて精製を行ってもよい。
【0168】
−電荷輸送膜の形成方法(エンチオール樹脂の形成方法)−
本実施形態に係る電荷輸送膜は、特に制限されないが、上述したエンチオール樹脂を形成するための原料を溶媒よって溶液化した塗布液を、被塗布物(例えば基板、金型等)に、周知の塗布方法(例えばブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等)により塗布し、その後、電子線照射、光照射、熱によって、原料を重合し、エンチオール樹脂を形成することにより得られる。
このとき、必要に応じて、上記塗布液には、公知の添加剤を混合、添加してもよい。この添加剤としては、例えば、硬化剤(例えばエポキシ化合物、イソシアネート化合物等)や、バインダー樹脂(例えばポリカーボネート樹脂、エステル樹脂、スチレン樹脂等)、その他、カップリング剤、ハードコート剤、含フッ素化合物、酸化防止剤、シリコーンオイル、無機フィラーが挙げられる。
【0169】
ここで、本実施形態に係る電荷輸送膜(それを構成するエンチオール樹脂)を形成するための、原料の重合方法について具体的に説明する。
本実施形態に係る電荷輸送膜(それを構成するエンチオール樹脂)を形成するための原料の重合方法は、電子線照射、光照射、熱による各処理が挙げられる。
【0170】
電子線照射処理を行う場合、その際の加速電圧は、例えば300KV以下が好ましく、最適には150KV以下である。また、線量は好ましくは1Mrad以上10Mrad以下の範囲、より好ましくは3Mrad以上50Mrad以下の範囲である。加速電圧が300KVを超えると電荷輸送膜の電荷輸送性に対する電子線照射の損傷が増加する傾向にある。また、線量が1Mradよりも少ない場合には架橋が不十分となり易く、100Mradを超えると電荷輸送膜の劣化が起こり易い傾向となる。
【0171】
電子線照射は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下、酸素濃度が1000ppm、好ましくは、500ppm以下で行い、さらに照射中、あるいは、照射後に50℃以上150℃以下に加熱してもよい。
【0172】
また、光照射処理を行う場合、光源としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプなどが用いられ、バンドパスフィルター等のフィルターを用いて照射する光の好適な波長を選択してもよい。照射時間、光強度は特に制限されないが、例えば照度(365nm)は300mW/cm以上1000mW/cm以下が好ましく、例えば600mW/cmのUV光を照射する場合、5秒以上360秒以下程度照射すればよい。
【0173】
光照射は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下、酸素濃度が1000ppm以下、好ましくは、500ppm以下で行い、さらに照射中、又は照射後に50℃以上150℃以下に加熱してもよい。
【0174】
この際、より重合を進めて、より機械的強度の高い電荷輸送膜を得る目的で、光重合触媒を用いてもよい。光重合触媒の使用量は、特に限定されるものではないが、好ましくは上記原料の総量に対して0.01質量%以上10質量%以下、さらに好ましくは0.03質量%以上8質量%以下、最も好ましくは0.05質量%以上5質量%以下の範囲である。
【0175】
ここで、光重合触媒として、分子内開裂型としては、ベンジルケタール系、アルキルフェノン系、アミノアルキルフェノン系、ホスフィンオキサイド系、チタノセン系、オキシム系などが挙げられる。
より具体的には、ベンジルケタール系として、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンが挙げられる。
また、アルキルフェノン系としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、アセトフェノン、2−フェニル−2−(p−トルエンスルフォニルオキシ)アセトフェノンが挙げられる。
アミノアルキルフェノン系としては、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モリホニル)フェニル]−1−ブタノンなどが挙げられる。
ホスフィノキサイド系としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンキサイドなどが挙げられる。
チタノセン系としては、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムなどが挙げられる。
オキシム系としては、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)などが挙げられる。
水素引抜型としては、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンジル系、ミヒラーケトン系などが挙げられる。より具体的には、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンジル系、ミヒラーケトン系などが挙げられる。
より具体的には、ベンゾフェノン系としては、2−ベンゾイル安息香酸、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、p,p’−ビスジエチルアミノベンゾフェノンなどが挙げられる。
チオキサントン系としては、2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。
ベンジル系としては、ベンジル、(±)−カンファーキノン、p−アニシルなどが挙げられる。
これらの光重合開始剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0176】
また、熱処理(加熱処理)を行う場合、製造の効率、副反応の制御、組成物の劣化抑制の観点から、望ましい反応温度としては30℃以上180℃以下であり、さらに望ましい80℃以上170℃以下であり、最も好ましくは100℃以上160℃以下である。
また、反応時間としては、反応温度によって選択されるが、好ましくは5分以上1000分以下であり、より好ましくは15分以上500分以下であり、最も好ましくは30分以上120分以下である。
なお、熱処理は、真空又は不活性ガス雰囲気下(例えば酸素濃度が1ppm以上5%以下であり、さらに好ましくは5ppm以上3%以下であり、最も好ましくは10ppm以上500ppm以下の雰囲気下)で行うことがよい。
【0177】
この際、より重合を進めて、より機械的強度の高い膜を得る目的で、熱重合触媒を用いることができる。該使用量は、特に限定されるものではないが、好ましくは上記原料の総量に対して0.01質量%以上10質量%以下、さらに好ましくは0.03質量%以上8質量%以下、最も好ましくは0.03質量%以上5質量%以下の範囲である。
【0178】
ここで、熱重合開始剤としては、例えば、V−30(10時間半減期温度:104℃)、V−40(同:88℃)、V−59(同:67℃)、V−601(同:66℃)、V−65(同:51℃)、V−70(同:30℃)、VF−096(同:96℃)、Vam−110(同:111℃)、Vam−111(同:111℃)(以上、和光純薬工業(株)製)、OTazo−15(同:61℃)、OTazo−30、AIBM(同:65℃)、AMBN(同:67℃)、ADVN(同:52℃)、ACVA(同:68℃)(以上、大塚化学(株)製)等のアゾ系開始剤;、パーテトラA、パーヘキサHC、パーヘキサC、パーヘキサV、パーヘキサ22、パーヘキサMC、パーブチルH,パークミルH、パークミルP、パーメンタH、パーオクタH、パーブチルC、パーブチルD、パーヘキシルD、パーロイル IB、パーロイル 355、パーロイル L、パーロイル SA、ナイパー BW、ナイパー BMT−K40/M、パーロイル IPP、パーロイル NPP、パーロイル TCP、パーロイル OPP、パーロイル SBP、パークミル ND、パーオクタ ND、パーヘキシル ND、パーブチル ND、パーブチル NHP、パーヘキシル PV、パーブチル PV、パーヘキサ 250、パーオクタ O、パーヘキシル O、パーブチル O、パーブチル L、パーブチル 355、パーヘキシル I、パーブチル I、パーブチル E、パーヘキサ 25Z、パーブチル A、パーへヘキシル Z、パーブチル ZT、パーブチル Z(以上、日油化学(株)製)、カヤケタール AM−C55、トリゴノックス 36−C75、ラウロックス、パーカドックス L−W75、パーカドックス CH−50L、トリゴノックス TMBH、カヤクメン H、カヤブチル H−70、ペルカドックス BC−FF、カヤヘキサ AD、パーカドックス 14、カヤブチル C、カヤブチル D、カヤヘキサ YD−E85、パーカドックス 12−XL25、パーカドックス 12−EB20、トリゴノックス 22−N70、トリゴノックス 22−70E、トリゴノックス D−T50、トリゴノックス 423−C70、カヤエステル CND−C70、カヤエステル CND−W50、トリゴノックス 23−C70、トリゴノックス 23−W50N、トリゴノックス 257−C70、カヤエステル P−70、カヤエステル TMPO−70、トリゴノックス 121、カヤエステル O、カヤエステル HTP−65W、カヤエステル AN、トリゴノックス 42、トリゴノックス F−C50、カヤブチル B、カヤカルボン EH−C70、カヤカルボン EH−W60、カヤカルボン I−20、カヤカルボン BIC−75、トリゴノックス 117、カヤレン 6−70(以上、化薬アクゾ(株)製)、ルペロックスLP(同:64℃)、ルペロックス610(同:37℃)、ルペロックス188(同:38℃)、ルペロックス844(同:44℃)、ルペロックス259(同:46℃)、ルペロックス10(同:48℃)、ルペロックス701(同:53℃)、ルペロックス11(同:58℃)、ルペロックス26(同:77℃)、ルペロックス80(同:82℃)、ルペロックス7(同:102℃)、ルペロックス270(同:102℃)、ルペロックスP(同:104℃)、ルペロックス546(同:46℃)、ルペロックス554(同:55℃)、ルペロックス575(同:75℃)、ルペロックスTANPO(同:96℃)、ルペロックス555(同:100℃)、ルペロックス570(同:96℃)、ルペロックスTAP(同:100℃)、ルペロックスTBIC(同:99℃)、ルペロックスTBEC(同:100℃)、ルペロックスJW(同:100℃)、ルペロックスTAIC(同:96℃)、ルペロックスTAEC(同:99℃)、ルペロックスDC(同:117℃)、ルペロックス101(同:120℃)、ルペロックスF(同:116℃)、ルペロックスDI(同:129℃)、ルペロックス130(同:131℃)、ルペロックス220(同:107℃)、ルペロックス230(同:109℃)、ルペロックス233(同:114℃)、ルペロックス531(同:93℃)(以上、アルケマ吉富(株)製)等が挙げられる。
熱重合開始剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0179】
なお、上記電子線照射、光照射、熱による各処理のうち、副反応等により電荷輸送骨格を劣化させず電荷輸送性に優れる電荷輸送膜を得る目的、さらにはより効率的に膜を得るといった観点から、好ましくは熱処理が好ましい。
【0180】
[有機電子デバイス]
本実施形態に係る有機電子デバイスは、上記本実施形態に係る電荷輸送膜を有するものである。上記本実施形態に係る電荷輸送膜は、上記特性を有することから、有機電子デバイスの電荷輸送膜として有用である。
【0181】
本実施形態に係る有機電子デバイスとしては、例えば、電子写真感光体、有機エレクトロルミネッセンス、電子ペーパー等ディスプレイ材料、太陽電池用に用いられる有機デバイス、その他メモリー素子、波長変換素子等が挙げられる。
具体的には、例えば、有機エレクトロルミネッセンスの場合、一対の電極と発光層との間に介在させる電荷輸送層(正孔輸送層又は電子輸送層)に電荷輸送膜を適用する。
また、例えば、電子ペーパーの場合、例えば、一対の電極と表示層との間に介在させる電荷輸送層(正孔輸送層又は電子輸送層)に電荷輸送膜を適用する。
また、例えば、太陽電池の場合、例えば、一対の電極と光電変換層との間に介在させる電荷輸送層(正孔輸送層又は電子輸送層)に電荷輸送膜を適用する。
【0182】
以下、代表して、電子写真感光体(以下、本実施形態に係る電子写真感光体と称する)の詳細について説明する。
【0183】
本実施形態に係る電子写真感光体は、最表面層として上記本実施形態に係る電荷輸送膜を有する。
具体的には、本実施形態に係る電子写真感光体は、例えば、導電性基体と、該導電性基体上に設けられた感光層と、必要に応じて感光層上に設けられた保護層と、を有し、導電性基体上に設けられた層のうち、導電性基体から外側へ最も遠い位置に設けられる最表面層として、上記本実施形態に係る電荷輸送膜で構成された最表面層を持つ電子写真感光体である。
そして、最表面層は、特に保護層として機能する層、又は、電荷輸送層として機能する層として設けることがよい。
【0184】
最表面層が保護層として機能する層の場合、導電性基体上に、感光層、及び最表面層として保護層を有し、該保護層が上本実施形態に係る電荷輸送膜で構成される形態が挙げられる。
一方、最表面層が電荷輸送層として機能する層の場合、導電性基体上に、電荷発生層、及び最表面層として電荷輸送層を有し、該電荷輸送層が上記本実施形態に係る電荷輸送膜で構成される形態が挙げられる。
【0185】
以下、本実施形態に係る電子写真感光体について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。
図1は、本実施形態に係る電子写真感光体を示す概略部分断面図である。図2〜図4はそれぞれ他の本実施形態に係る電子写真感光体を示す概略部分断面図である。
【0186】
図1に示す電子写真感光体7Aは、いわゆる機能分離型感光体(又は積層型感光体)であり、導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に電荷発生層2、及び電荷輸送層3が順次形成された構造を有するものである。電子写真感光体7Aにおいては、電荷発生層2及び電荷輸送層3により感光層が構成されている。
【0187】
図2に示す電子写真感光体7Bは、導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に単層型感光層6が形成された構造を有するものである。つまり、図2に示す電子写真感光体7Cは、電荷発生材料と電荷輸送性材料とを同一の層(単層型感光層6(電荷発生/電荷輸送層))に含有するものである。
【0188】
図3に示す電子写真感光体7Cは、図1に示す電子写真感光体7Aに保護層5を設けたもの、つまり、導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に電荷発生層2、電荷輸送層3、及び保護層5が順次形成された構造を有するものである。
【0189】
図4に示す電子写真感光体7Dは、図2に示す電子写真感光体7Bに保護層5を設けたもの、つまり、導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に単層型感光層6、及び保護層5が順次形成された構造を有するものである。
【0190】
そして、図1に示す電子写真感光体7Aにおいては、電荷輸送層3が、導電性基体4から最も遠い側に配置される最表面層となっており、当該最表面層が、上記本実施形態に係る電荷輸送膜で構成された構成となっている。
図2に示す電子写真感光体7Bにおいては、単層型感光層6が、導電性基体4から最も遠い側に配置される最表面層となっており、当該最表面層が、上記本実施形態に係る電荷輸送膜で構成された構成となっている。
図3〜図4に示す電子写真感光体7C〜7Dにおいては、保護層5が、導電性基体4から最も遠い側に配置される最表面層となっており、当該最表面層が、上記本実施形態に係る電荷輸送膜で構成された構成となっている。
なお、図1〜図4に示す電子写真感光体において、下引層1は設けてもよいし、設けなくてもよい。
【0191】
以下、代表例として図1に示す電子写真感光体7Aに基づいて、各要素について説明する。
【0192】
(導電性基体)
導電性基体としては、特に制限はなく、例えば、金属製の円筒状の基体が代表的なものとして挙げられるが、その他、例えば、導電性膜(例えばアルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼等の金属類、及びアルミニウム、チタニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼、金、バナジウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)等の膜)を設けた樹脂フィルム、導電性付与剤を塗布若しくは含浸させた紙、又は導電性付与剤を塗布若しくは含浸させた樹脂フィルム等も挙げられる。基体の形状は円筒状に限られず、シート状、プレート状としてもよい。
なお、導電性基体は、その導電部が例えば体積抵抗率が10Ω・cm未満の導電性を持つものがよい。
【0193】
導電性基体として金属製の筒状体を用いる場合、表面は素管のままであってもよいし、予め鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニングなどの処理が行われていてもよい。
【0194】
(下引層)
下引層は、導電性基体の表面における光反射の防止、導電性基体から感光層への不要なキャリアの流入の防止などの目的で、必要に応じて設けられる。
【0195】
下引層は、例えば、結着樹脂と、必要に応じてその他添加物とを含んで構成される。
下引層に含まれる結着樹脂としては、例えば、公知の樹脂(例えばポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等)、導電性樹脂(例えば電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等)などが挙げられる。これらの中でも、結着樹脂としては、上層の塗布溶剤に不溶な樹脂がよく、具体的には、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などがよい。
なお、導電性樹脂は、例えば体積抵抗率が10Ω・cm未満の導電性を持つものがよい。
【0196】
下引層には、例えば、珪素化合物、有機ジルコニウム化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物等の金属化合物等を含有してもよい。
【0197】
金属化合物と結着樹脂との比率は、特に制限されず、目的とする電子写真感光体特性を得られる範囲で設定される。
【0198】
下引層には、例えば、表面粗さ調整のために下引層中に樹脂粒子を添加してもよい。樹脂粒子としては、例えば、シリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂粒子等が挙げられる。なお、表面粗さ調整のために下引層を形成後、その表面を研磨してもよい。研磨方法としては、例えば、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウエットホーニング、研削処理等が用いられる。
【0199】
ここで、下引層の構成として、例えば、結着樹脂と導電性粒子とを少なくとも含有する構成が挙げられる。
なお、導電性粒子は、例えば体積抵抗率が10Ω・cm未満の導電性を有するものがよい。
【0200】
導電性粒子としては、例えば、金属粒子(アルミニウム、銅、ニッケル、銀などの粒子)、導電性金属酸化物粒子(酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛などの粒子)、導電性物質粒子(カーボンファイバ、カーボンブラック、グラファイト粉末の粒子)等が挙げられる。これらの中でも、導電性金属酸化物粒子がよい。導電性粒子は、2種以上混合して用いてもよい。
また、導電性粒子は、例えば、疎水化処理剤(例えばカップリング剤)等により表面処理を施して、抵抗調整して用いてもよい。
導電性粒子の含有量は、例えば、結着樹脂の質量に対して、10質量%以上80質量%以下の範囲、40質量%以上80質量%以下の範囲が挙げられる。
【0201】
下引層の形成の際には、例えば、上記成分を溶媒に加えた下引層形成用塗布液が使用される。
また、下引層形成用塗布液中に粒子を分散させる方法としては、例えば、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。ここで、高圧ホモジナイザーとしては、例えば、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
【0202】
下引層形成用塗布液を導電性基体上に塗布する方法としては、例えば、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
【0203】
下引層の膜厚は、例えば、15μm以上の範囲、20μm以上50μm以下の範囲が挙げられる。
【0204】
ここで、図示は省略するが、例えば、下引層と感光層との間に中間層をさらに設けてもよい。中間層に用いられる結着樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物が挙げられ、その他に、例えば、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、ケイ素原子などを含有する有機金属化合物なども挙げられる。これらの化合物は、単独に、又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。中でも、ジルコニウム又はケイ素を含有する有機金属化合物を用いると、その他の結着樹脂を用いる場合に比べて、残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ない感光体が得られ易くなる。
【0205】
中間層の形成の際には、例えば、上記成分を溶媒に加えた中間層形成用塗布液が使用される。
中間層を形成する塗布方法としては、例えば、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0206】
なお、中間層は上層の塗布性改善の他に、例えば、電気的なブロッキング層の役割も果たすが、膜厚が大きすぎる場合には電気的な障壁が強くなりすぎて減感や繰り返しによる電位の上昇を引き起こすことがある。
したがって、中間層を形成する場合には、例えば、厚みを0.1μm以上3μm以下の範囲にすることがよい。また、この場合の中間層を下引層として使用してもよい。
【0207】
(電荷発生層)
電荷発生層は、例えば、電荷発生材料と結着樹脂中とを含んで構成される。
電荷発生層を構成する電荷発生材料としては、例えば、無金属フタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、チタニルフタロシアニン等のフタロシアニン顔料が挙げられ、特に、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.7゜、9.3゜、16.9゜、17.5゜、22.4゜及び28.8゜に強い回折ピークを有する無金属フタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.5゜、9.9゜、12.5゜、16.3゜、18.6゜、25.1゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも9.6゜、24.1゜及び27.2゜に強い回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶が挙げられる。その他、電荷発生材料としては、例えば、キノン顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、ビスベンゾイミダゾール顔料、アントロン顔料、キナクリドン顔料等が挙げられる。また、これらの電荷発生材料は、単独又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0208】
電荷発生層を構成する結着樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂(例えばビスフェノールAタイプ、ビスフェノールZタイプ等)、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。これらの結着樹脂は、単独又は2種以上混合して用いてもよい。
なお、電荷発生材料と結着樹脂の配合比(電荷発生材料:結着樹脂)は、例えば、質量基準で10:1乃至1:10の範囲が挙げられる。
【0209】
電荷発生層の形成の際には、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷発生層形成用塗布液が使用される。
【0210】
電荷発生層形成用塗布液中に粒子(例えば電荷発生材料)を分散させる方法としては、例えば、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、例えば、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
【0211】
電荷発生層形成用塗布液を下引層上に塗布する方法としては、例えば、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
【0212】
電荷発生層の膜厚は、例えば、0.01μm以上5μm以下の範囲、0.05μm以上2.0μm以下の範囲が挙げられる。
【0213】
(電荷輸送層)
電荷輸送層は、本実施形態に係る電荷輸送膜が適用される。
なお、電荷輸送層の膜厚は、例えば、5μm以上50μm以下の範囲、10μm以上40μm以下の範囲が挙げられる。
【0214】
以上、本実施形態に係る電子写真感光体として機能分離型の例を説明したが、図2に示す電子写真感光体の層構成の場合、その層構成において最表面に位置する単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)が該最表面層となり、この単層型感光層に上記本実施形態に係る電荷輸送膜が適用される。この場合、上記本実施形態に係る電荷輸送膜には、電荷発生材料が含まれ、その含有量は、全固形分質量に対して、例えば、10質量%以上85質量%以下の範囲、20質量%以上50質量%以下の範囲が挙げられる。単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)の膜厚は、例えば、5μm以上50μm以下の範囲、10μm以上40μm以下の範囲が挙げられる。
【0215】
また、本実施形態では、上記本実施形態に係る電荷輸送膜からなる最表面層が電荷輸送層である形態を説明したが、図3及び図4に示す電子写真感光体の如く保護層を有する層構成の場合には、その層構成において最表面に位置する保護層が該最表面層となり、この保護層に上記本実施形態に係る電荷輸送膜が適用される。保護層の膜厚は、例えば、1μm以上15μm以下の範囲、3μm以上10μm以下の範囲が挙げられる。
なお、保護層を有する場合の電荷輸送層、単層型感光層の構成は、周知の構成が採用される。
【0216】
[画像形成装置/プロセスカートリッジ]
図5は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置101は、図5に示すように、例えば、矢印aで示すように、時計回り方向に回転する電子写真感光体10(上記本実施形態に係る電子写真感光体)と、電子写真感光体10の上方に、電子写真感光体10に相対して設けられ、電子写真感光体10の表面を帯電する帯電装置20(帯電手段の一例)と、帯電装置20により帯電した電子写真感光体10の表面に露光して、静電潜像を形成する露光装置30(静電潜像形成手段の一例)と、トナーを含む現像剤を収容し、現像剤により、電子写真感光体10に形成された静電潜像をトナー像として現像する現像装置40(現像手段の一例)と、電子写真感光体10に接触しつつ矢印bで示す方向に走行するとともに、電子写真感光体10の表面に形成されたトナー像を転写するベルト状の中間転写体50と、電子写真感光体10の表面をクリーニングするクリーニング装置70(クリーニング手段の一例)とを備える。
【0217】
帯電装置20、露光装置30、現像装置40、中間転写体50、潤滑剤供給装置60及びクリーニング装置70は、電子写真感光体10を囲む円周上に、時計周り方向に配設されている。なお、本実施形態では、クリーニング装置70内部に、潤滑剤供給装置60が配置された形態を説明するが、これに限られるわけではなく、クリーニング装置70とは別途、潤滑剤供給装置60を配置した形態であってもよい。無論、潤滑剤供給装置60を設けない形態であってもよい。
【0218】
中間転写体50は、内側から、支持ロール50A、50B、背面ロール50C、及び駆動ロール50Dによって張力を付与されつつ保持されるとともに、駆動ロール50Dの回転に伴い矢印bの方向に駆動される。中間転写体50の内側における電子写真感光体10に相対する位置には、中間転写体50をトナーの帯電極性とは異なる極性に帯電させて中間転写体50の外側の面に電子写真感光体10上のトナーを吸着させる一次転写装置51が設けられている。中間転写体50の下方における外側には、記録紙P(被転写体の一例)をトナーの帯電極性とは異なる極性に帯電させて、中間転写体50に形成されたトナー像を記録紙P上に転写する二次転写装置52が背面ロール50Cに対向して設けられている。なお、これら、電子写真感光体10に形成されたトナー像を記録紙Pへ転写するための部材が転写手段の一例に相当する。
【0219】
中間転写体50の下方には、さらに、二次転写装置52に記録紙Pを供給する記録紙供給装置53と、二次転写装置52においてトナー像が形成された記録紙Pを搬送しつつ、トナー像を定着させる定着装置80とが設けられている。
【0220】
記録紙供給装置53は、1対の搬送ロール53Aと、搬送ロール53Aで搬送される記録紙Pを二次転写装置52に向かって誘導する誘導板53Bと、を備える。一方、定着装置80は、二次転写装置52によってトナー像が転写された記録紙Pを加熱・押圧することにより、トナー像の定着を行う1対の熱ロールである定着ロール81と、定着ロール81に向かって記録紙Pを搬送する搬送回転体82とを有する。
【0221】
記録紙Pは、記録紙供給装置53と二次転写装置52と定着装置80とにより、矢印cで示す方向に搬送される。
【0222】
中間転写体50には、さらに、二次転写装置52において記録紙Pにトナー像を転写した後に中間転写体50に残ったトナーを除去するクリーニングブレードを有する中間転写体クリーニング装置54が設けられている。
【0223】
以下、本実施形態に係る画像形成装置101における主な構成部材の詳細について説明する。
【0224】
−帯電装置−
帯電装置20としては、例えば、導電性の帯電ロール、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が挙げられる。また、帯電装置20としては、例えば、非接触方式のロール帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も挙げられる。帯電装置20としては、接触型帯電器がよい。
【0225】
−露光装置−
露光装置30としては、例えば、電子写真感光体10表面に、半導体レーザー光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は電子写真感光体10の分光感度領域にあるものがよい。半導体レーザー光の波長としては、例えば、780nm前後に発振波長を有する近赤外がよい。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザー光や青色レーザー光として400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザー光も利用してもよい。また、露光装置30としては、例えばカラー画像形成のためにはマルチビーム出力するタイプの面発光型のレーザー光源も有効である。
【0226】
−現像装置−
現像装置40は、例えば、現像領域で電子写真感光体10に対向して配置されており、例えば、トナー及びキャリアからなる2成分現像剤を収容する現像容器41(現像装置本体)と、補給用現像剤収納容器(トナーカートリッジ)47と、を有している。現像容器41は、現像容器本体41Aとその上端を塞ぐ現像容器カバー41Bとを有している。
【0227】
現像容器本体41Aは、例えば、その内側に、現像ロール42を収容する現像ロール室42Aを有しており、現像ロール室42Aに隣接して、第1攪拌室43Aと第1攪拌室43Aに隣接する第2攪拌室44Aとを有している。また、現像ロール室42A内には、例えば、現像容器カバー41Bが現像容器本体41Aに装着された時に現像ロール42表面の現像剤の層厚を規制するための層厚規制部材45が設けられている。
【0228】
第1攪拌室43Aと第2攪拌室44Aとの間は例えば仕切り壁41Cにより仕切られており、図示しないが、第1攪拌室43A及び第2攪拌室44Aは仕切り壁41Cの長手方向(現像装置長手方向)両端部に開口部が設けられて通じており、第1攪拌室43A及び第2攪拌室44Aによって循環攪拌室(43A+44A)を構成している。
【0229】
そして、現像ロール室42Aには、電子写真感光体10と対向するように現像ロール42が配置されている。現像ロール42は、図示しないが磁性を有する磁性ロール(固定磁石)の外側にスリーブを設けたものである。第1攪拌室43Aの現像剤は磁性ロールの磁力によって現像ロール42の表面上に吸着されて、現像領域に搬送される。また、現像ロール42はそのロール軸が現像容器本体41Aに回転自由に支持されている。ここで、現像ロール42と電子写真感光体10とは、逆方向に回転し、対向部において、現像ロール42の表面上に吸着された現像剤は、電子写真感光体10の進行方向と同方向から現像領域に搬送するようにしている。
【0230】
また、現像ロール42のスリーブには、不図示のバイアス電源が接続され、現像バイアスが印加されるようになっている(本実施形態では、現像領域に交番電界が印加されるように、直流成分(AC)に交流成分(DC)を重畳したバイアスを印加)。
【0231】
第1攪拌室43A及び第2攪拌室44Aには現像剤を攪拌しながら搬送する第1攪拌部材43(攪拌・搬送部材)及び第2攪拌部材44(攪拌・搬送部材)が配置されている。第1攪拌部材43は、現像ロール42の軸方向に伸びる第1回転軸と、回転軸の外周に螺旋状に固定された攪拌搬送羽根(突起部)とで構成されている。また、第2攪拌部材44も、同様に、第2回転軸及び攪拌搬送羽根(突起部)とで構成されている。なお、攪拌部材は現像容器本体41Aに回転自由に支持されている。そして、第1攪拌部材43及び第2攪拌部材44は、その回転によって、第1攪拌室43A及び第2攪拌室44Aの中の現像剤は互いに逆方向に搬送されるように配設されている。
【0232】
そして、第2攪拌室44Aの長手方向一端側には、補給用トナー及び補給用キャリアを含む補給用現像剤を第2攪拌室44Aへ供給するための補給搬送路46の一端が連結されており、補給搬送路46の他端には、補給用現像剤を収容している補給用現像剤収納容器47が連結されている。
【0233】
このように現像装置40は、補給用現像剤収納容器(トナーカートリッジ)47から補給搬送路46を経て補給用現像剤を現像装置40(第2攪拌室44A)へ供給する。
【0234】
ここで、現像装置40に使用される現像剤について説明する。
現像剤は、例えば、トナーとキャリアを含む二成分系現像剤が採用される。
【0235】
−転写装置−
一次転写装置51、及び二次転写装置52としては、例えば、ベルト、ロール、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0236】
中間転写体50としては、導電剤を含んだポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等のベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体の形態としては、ベルト状以外に円筒状のものが用いられる。
【0237】
−クリーニング装置−
クリーニング装置70は、筐体71と、筐体71から突出するように配設されるクリーニングブレード72と、クリーニングブレード72の電子写真感光体10回転方向下流側に配置される潤滑剤供給装置60と、を含んで構成されている。
なお、クリーニングブレード72は、筐体71の端部で支持された形態であってもよし、別途、支持部材(ホルダー)により支持される形態であってもよいが、本実施形態では、筐体71の端部で支持された形態を示している。
【0238】
まず、クリーニングブレード72について説明する。
クリーニングブレード72を構成する材料としては、ウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、プロロピレンゴム、ブタジエンゴム等が挙げられる。これらの中で、ウレタンゴムがよい。
ウレタンゴム(ポリウレタン)は、例えば、通常、ポリウレタンの形成に用いられるものであれば特に限定されない。例えば、ポリオール(例えばポリエチレンアジペート、ポリカプロラクトンなどのポリエステルポリオール等)とイソシアネート(例えばジフェニルメタンジイソシアネート等)とからなるウレタンプレポリマーが挙げられる。また、ウレタンゴム(ポリウレタン)は、例えば、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、エチレングリコールやこれらの混合物などの架橋剤を原料とするものよい。
【0239】
次に、潤滑剤供給装置60について説明する。
潤滑剤供給装置60は、例えば、クリーニング装置70の内部であって、クリーニングブレード72よりも電子写真感光体10の回転方向上流側に設けられている。
【0240】
潤滑剤供給装置60としては、例えば、電子写真感光体10と接触して配置される回転ブラシ61と、回転ブラシ61に接触して配置される固形状の潤滑剤62と、で構成されている。潤滑剤供給装置60では、固形状の潤滑剤62と接触した状態で回転ブラシ61を回転させることで、回転ブラシ61に潤滑剤62が付着すると共に、その付着した潤滑剤62が電子写真感光体10の表面に供給され、当該潤滑剤62の皮膜が形成される。
【0241】
なお、潤滑剤供給装置60は、上記形態に限られず、例えば、回転ブラシ61に代わりにゴムロールを採用した形態であってもよい。
【0242】
次に、本実施形態に係る画像形成装置101の動作について説明する。まず、電子写真感光体10が矢印aで示される方向に沿って回転すると同時に、帯電装置20により負に帯電する。
【0243】
帯電装置20によって表面が負に帯電した電子写真感光体10は、露光装置30により露光され、表面に潜像が形成される。
【0244】
電子写真感光体10における潜像の形成された部分が現像装置40に近づくと、現像装置40(現像ロール42)により、潜像にトナーが付着し、トナー像が形成される。
【0245】
トナー像が形成された電子写真感光体10が矢印aに方向にさらに回転すると、トナー像は中間転写体50の外側の面に転写する。
【0246】
トナー像が中間転写体50に転写されたら、記録紙供給装置53により、二次転写装置52に記録紙Pが供給され、中間転写体50に転写されたトナー像が二次転写装置52により、記録紙P上に転写される。これにより、記録紙Pにトナー像が形成される。
【0247】
画像が形成された記録紙Pは、定着装置80でトナー像が定着される。
【0248】
ここで、トナー像が中間転写体50に転写された後、電子写真感光体10は、転写後、潤滑剤供給装置60により潤滑剤62が電子写真感光体10の表面へ供給されて、当該電子写真感光体10の表面に潤滑剤62の皮膜が形成される。その後、クリーニング装置70のクリーニングブレード72により、表面に残ったトナーや放電生成物が除去される。そして、クリーニング装置70において、転写残のトナーや放電生成物が除去された電子写真感光体10は、帯電装置20により、再び帯電せられ、露光装置30において露光されて潜像が形成される。
【0249】
また、本実施形態に係る画像形成装置101は、例えば、図6に示すように、筐体11内に、電子写真感光体10、帯電装置20、現像装置40、潤滑剤供給装置60、及びクリーニング装置70を一体に収容させたプロセスカートリッジ101Aを備えた形態であってもよい。このプロセスカートリッジ101Aは、複数の部材を一体的に収容し、画像形成装置101に脱着させるものである。なお、図6に示す画像形成装置101では、現像装置40には、補給用現像剤収納容器47を設けない形態が示されている。
プロセスカートリッジ101Aの構成は、これに限られず、例えば、少なくとも、電子写真感光体10を備えていればよく、その他、例えば、帯電装置20、露光装置30、現像装置40、一次転写装置51、潤滑剤供給装置60及びクリーング装置70から選択される少なくとも一つを備えていてもよい。
【0250】
また、本実施形態に係る画像形成装置101は、上記構成に限られず、例えば、電子写真感光体10の周囲であって、一次転写装置51よりも電子写真感光体10の回転方向下流側でクリーニング装置70よりも電子写真感光体の回転方向上流側に、残留したトナーの極性を揃え、クリーニングブラシで除去しやすくするための第1除電装置を設けた形態であってもよいし、クリーニング装置70よりも電子写真感光体の回転方向下流側で帯電装置20よりも電子写真感光体の回転方向上流側に、電子写真感光体10の表面を除電する第2除電装置を設けた形態であってもよい。
【0251】
また、本実施形態に係る画像形成装置101は、上記構成に限れず、周知の構成、例えば、電子写真感光体10に形成したトナー像を直接、記録紙Pに転写する方式を採用してもよいし、タンデム方式の画像形成装置を採用してもよい。
【実施例】
【0252】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0253】
[実施例1]
(電荷輸送性の評価用および摩擦磨耗試験の評価用サンプルの作製)
−下引き層の作製−
酸化亜鉛:(平均粒子径70nm:テイカ社製:比表面積値15m2/g)100質量部をトルエン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBM503:信越化学社製)1.3質量部を添加し、2時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間)焼き付けを行い、シランカップリング剤表面処理酸化亜鉛を得た。
表面処理を施した酸化亜鉛110質量部を500質量部のテトラヒドロフランと攪拌混合し、アリザリン0.6質量部を50質量部のテトラヒドロフランに溶解させた溶液を添加し、50℃にて5時間攪拌した。その後、減圧ろ過にてアリザリンを付与させた酸化亜鉛をろ別し、さらに60℃で減圧乾燥を行いアリザリン付与酸化亜鉛を得た。
このアリザリン付与酸化亜鉛60質量部と硬化剤 (ブロック化イソシアネート スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製) :13.5質量部とブチラール樹脂 (エスレックBM−1 、積水化学社製) 15質量部をメチルエチルケトン85質量部に溶解した溶液38質量部とメチルエチルケトン :25質量部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い分散液を得た。
得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート:0.005質量部、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製):40質量部を添加し、下引層形成用塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて板状のアルミニウム基材上に塗布し、170℃、40分の乾燥硬化を行い厚さ18μmの下引層を得た。
【0254】
−電荷発生層の作製−
電荷発生物質としてのCukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9゜,28.0゜の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン15質量部、結着樹脂としての塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)10質量部、n−酢酸ブチル200質量部からなる混合物を、直径1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散した。得られた分散液にn−酢酸ブチル175質量部、メチルエチルケトン180質量部を添加し、攪拌して電荷発生層形成用塗布液を得た。この電荷発生層用塗布液を下引層上に浸漬塗布し、常温で乾燥して、膜厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0255】
−電荷輸送層の作製−
炭素二重結合を持つ反応性官能基を有し、かつ電荷輸送性骨格を有する化合物である(ii−18)で表される化合物[(a−1)]0.801g、及びオール基を有し、且つ電荷輸送性骨格を有しない化合物であるカレンズMT PE1(ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトブチレート)、昭和電工(株)製)[(b−1)]0.381gをTHF(テトラヒドロフラン:安定剤不含有、和光純薬工業(株)製)/トルエン(脱水、和光純薬工業(株)製)=50質量部/50質量部の混合溶媒1.410gに溶解させた。その後、重合開始剤であるVE−70(和光純薬工業(株)製)を(a−1)および(b−1)の化合物の合計量の2質量%に相当する0.024gを加えて溶解させた。これを電荷輸送層形成用塗布液(電荷輸送性組成物)とした。
そして、電荷発生層上に、ギャップ0.15mmでブレード法によって塗布し、その後、酸素濃度300ppm以下の状態で、温度150±5℃、時間60分で加熱処理して、電荷輸送膜を形成し、これを電荷輸送層とした。このとき電荷輸送層の膜厚は32μmであった。
【0256】
以上の操作を経て、電荷輸送性の評価用および摩擦磨耗試験の評価用サンプルの作製した。
【0257】
(折れ曲げ試験の評価用サンプルの作製)
上記電荷輸送層形成用塗布液を、ガラス基板上にギャップ0.30mmでブレード法によって塗布し、同様に加熱処理して得られた電荷輸送膜を形成した。このとき電荷輸送膜の膜厚は69μmであった。
以上の操作を経て、折れ曲げ試験の評価用サンプルを作製した。
【0258】
(電子写真感光体の作製)
電荷輸送性の評価用および摩擦磨耗試験の評価用サンプルと同様して、板状のアルミニウム基材上に、下引き層、電荷発生層、及び電荷輸送層を形成し、この各層が形成されたアルミニウム基材を電荷輸送層が外側を向くようにして、円筒状のアルミニウム基材に巻き付けて接着した。
以上の操作を経て、電子写真感光体を作製した。
【0259】
[実施例2〜27、比較例1〜11]
表1〜表3に従って、電荷輸送層形成用塗布液(電荷輸送性組成物)の組成を変更し、この電荷輸送層形成用塗布液(電荷輸送性組成物)を用いた以外は、実施例1と同様にして、各評価用サンプル、及び電子写真感光体を作製した。
【0260】
[評価]
各例で作製した各評価用サンプル、及び電子写真感光体について、以下の評価を行った。結果を表4〜表6に示す。
【0261】
−電荷輸送層(電荷輸送膜)の硫黄原子含有率の測定−
作製した電子写真感光体より、電荷輸送層(電荷輸送膜)をカッターナイフにより削りだし、サンプルを採取し、蛍光X線による元素分析法によって硫黄原子の含有率を測定した。
【0262】
−電荷輸送層(電荷輸送膜)を構成する樹脂が架橋樹脂である否かの確認−
作製した電子写真感光体の電荷輸送層(電荷輸送膜)を、テトラヒドロフランを含浸させた綿棒を用いて表面を最低10回、ストロークで約1cm擦り、膜が溶解し、綿棒で擦った跡が目視で観察された場合は架橋樹脂ではない、擦った跡が観測されなかった場合は架橋樹脂であるとした。
【0263】
−電荷輸送性の評価−
作製した電荷輸送性の評価用サンプルに対して、20mmφの小面積マスクを使用し、25±3℃、50±10%RHの環境下において、静電気帯電試験装置(EPA8200、川口電機製作所社製)を用いて光減衰率を測定した。条件を以下に示す。
・初期表面電位=−550.0(V)
・帯電直後から露光までの暗減衰時間=1.0s、そのときの表面電位をV(V)とし、露光後、0.2s後の表面電位をV(V)とし、光減衰率=(V−V)/V×100(%)とした。
・露光後、1.0s後の残留表面電位をV(V)とした。
上記評価において、光減衰率が大きく、残留電位が0に近いことは、光電変換速度に優れ、かつ電気的トラップが少ないことを表し、電荷輸送機能に優れる膜であることを表す。
【0264】
−摩擦磨耗試験の評価−
作製した摩擦磨耗試験の評価用サンプルに対して、トライボギア荷重変動型摩擦摩耗試験機HHS−2000(新東科学社製)を用いて、摩擦磨耗試験を実施し、1往復目、100往復目の摩擦力(gf)を測定し、摩擦力(gf)(100往復目)―摩擦力(gf)(1往復目)の値によって評価した。該数値は、周期的な運動に対して摩擦力の変化を表す指標である。さらに、100往復後の磨耗深さを走査型共焦点レーザー顕微鏡OLS1100OLS(オリンパス社製)にて測定した。
条件を以下に示す。
・25±3℃、50±10%RH
・ダイヤモンド製針R=0.2mm
・荷重20g
・往復速度15mm/sec.
・往復回数100回
上記評価において、磨耗力の変動が小さく、磨耗深さが小さいことは、機械的強度が高く、摩擦磨耗特性として長期的に安定して膜を摺動部位に用いることができることを表す。
【0265】
−折れ曲げ試験の評価−
作製した折れ曲げ試験の評価用サンプルの電荷輸送層(電荷輸送膜)に対して、カッターナイフを用いて、縦×横=25±1mm×10±1mmの短冊試験片を切り出し、折れ曲げ試験の評価を以下の基準により実施した。
◎:短冊試験片を切り出すことができ、より曲げることができ、さらに膜に靭性があった。
○:短冊試験片を切り出すことができ、より曲げることができた。
△:短冊試験片を切り出すことができ、ある程度曲げると膜が割れた。
×:短冊試験片を切り出すことができず、膜が割れた。
上記評価において、短冊試験片をより曲げることができることは、膜に可とう性があることを表し、靭性があることは、膜に対して外力がかかった場合にその耐性に優れることを表し、また屈曲した状態での膜の利用において有利であることを示す。
【0266】
−画像評価−
作製した電子写真感光体をプロセスカートリッジに取り付け、本プロセスカートリッジを富士ゼロックス社製DocuCentre Color 450改造機に装着し、20±3℃、40±5%RHの環境下において、A4紙に、100%ベタ塗りおよび画像濃度20%ハーフトーン画像の印刷画像を10枚印刷し、初期画像評価を実施した。
その後、28±3℃、85±5%RHの環境下で連続して5000枚印刷し、さらに10±3℃、15±5%RHの環境下で連続して5000枚印刷し、その後、20±3℃、40±5%RHの環境下で10枚印刷して経時後画像評価を実施した。
そして、初期画像評価は、10枚目の印刷画像の画像濃度20%ハーフトーン画像部分を用いて、光学顕微鏡(倍率100倍)用いて任意の1mm角(以下観察部位)、5箇所を観察し、以下の基準で評価した。
同様に、経時後画像評価も10000枚印刷後、10枚目の印刷画像を用いて、初期画像評価と同様にして評価した。
なお、画像評価には、富士ゼロックスオフィスサプライ製P紙(A4サイズ、短手方向送り)を用いた。
A:観察部位全体において、網点が観察され、画像流れが発生していない。
B:観察部位一部において、網点が現像されていない、又は画像流れが発生した。
C:観察部位の半分以上の領域において、網点が現像されていない、又は画像流れが発生した。
【0267】
【表1】

【0268】
【表2】

【0269】
【表3】

【0270】
【表4】

【0271】
【表5】

【0272】
【表6】

【0273】
上記評価の結果から、本実施例は、比較例に比べ、電荷輸送性の評価、摩擦磨耗試験評価、折れ曲げ試験評価、画像評価につき、良好な結果が得られたことがわかる。
【0274】
以下、表中に示す各材料の詳細について示す。なお、表中の「一分子当たりの官能基数」は、使用する化合物における、炭素二重結合を有する反応性官能基、又はチオール基の数を意味している。
[炭素二重結合を有する反応性官能基を有し、且つ電荷輸送性骨格を有する化合物」
・(a−1):(ii−18)で示される化合物
・(a−2):(ii−19)で示される化合物
・(a−3):(iv−16)で示される化合物
・(a−4):(iv−28)で示される化合物
・(a−5):(iv−55)で示される化合物
[チオール基を有し、且つ電荷輸送性骨格を有しない化合物]
・(b−1):カレンズMT PE1(ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトブチレート)、昭和電工(株)製、第2級チオール基を4つ含有する化合物)
・(b−2):PEMP(ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、SC有機化学(株)製、第1級チオール基を4つ含有する化合物)
・(b−3):カレンズMT NR1(1,3,5−トリス(3−メルカブトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H−トリオン)、昭和電工(株)製、第2級チオール基を3つ含有する化合物)
・(b−4)カレンズMT BD1(1、4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、昭和電工(株)製、第2級チオール基を2つ含有する化合物)
・(b−5)1−ドデカンチオール(和光純薬工業(株)製、第1級チオール基を1つ含有する化合物)
[炭素二重結合を持つ反応性官能基を有し、且つ電荷輸送性骨格を有しない化合物]
・(c−1):ABE−300(エトキシ化ビスフェノールジアクリレート、新中村化学工業(株)製)
[チオール基を有し、且つ電荷輸送性骨格を有する化合物]
・(d−1):(AA−6)で示される化合物
・(d−2):(AA−22)で示される化合物
【符号の説明】
【0275】
1 下引層。2 電荷発生層、3 電荷輸送層、4 導電性基体、5 保護層、6 単層型感光層、7A、7B、7C、7D、7 電子写真感光体、10 電子写真感光体、20 帯電装置、30 露光装置、40 現像装置、41 現像容器、41A 現像容器本体、41B 現像容器カバー、41C 仕切り壁、42 現像ロール、42A 現像ロール室、43 攪拌部材、43A 攪拌室、44 攪拌部材、44A 攪拌室、45 層厚規制部材、46 補給搬送路、47 補給用現像剤収納容器、50 中間転写体、50A 支持ロール、50B 支持ロール、50C 背面ロール、50D 駆動ロール、51 一次転写装置、52 二次転写装置、53 記録紙供給装置、53A 搬送ロール、53B 誘導板、54 中間転写体クリーニング装置、70 クリーニング装置、71 筐体、72 クリーニングブレード、80 定着装置、81 定着ロール、82 搬送回転体、101 画像形成装置、101A プロセスカートリッジ、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電荷輸送性骨格を持つエンチオール樹脂を含んで構成され、且つ硫黄原子の含有率が2.0質量%以上15質量%以下である電荷輸送膜。
【請求項2】
前記エンチオール樹脂の架橋物を含んで構成された硬化膜である電荷輸送膜。
【請求項3】
前記エンチオール樹脂の電荷輸送性骨格が、下記一般式(AAA)で表される電荷輸送性骨格である請求項1に記載の電子写真感光体。
【化1】




(一般式(AAA)中、Ar〜Arは、それぞれ独立に、置換若しくは未置換のアリール基を表し、
Arは置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を表し、
は、それぞれ独立に、エンチオール樹脂を構成する電荷輸送性骨格以外の部位と連結する連結基であって、「Ar」−(G)a1−(X)a2−Y−S−*、又は「Ar」−(G)a1−(Z)a2−Y’−CH(R)−CH−*を表し(但し、「Ar」はAr〜ArのうちDが連結するものを表し、Gは炭素数1以上5以下の2価の有機基を表し、Xは−CO−O−、または−O−を表し、Yは−SHが置換基として置換されていてもよい炭素数1以上5以下の2価の有機基を表し、Y’は炭素数1以上5以下の2価の有機基を表し、Zは−CO−、−O−、またはフェニレン基を表し、Rは水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、a1又はa2はそれぞれ独立に0又は1を表す。なお、*は電荷輸送性骨格以外の部位との連結部を表す。)、
c1〜c5はそれぞれ独立に0、1又は2を表し、
kは0又は1を表し、Dの総数は2以上である。)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電荷輸送膜を有する有機電子デバイス。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電荷輸送膜を最表面層として有する電子写真感光体。
【請求項6】
請求項5に記載の電子写真感光体を少なくとも備え、
画像形成装置に脱着されるプロセスカートリッジ。
【請求項7】
請求項5に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナーを含む現像剤を収容し、前記現像剤により、前記電子写真感光体に形成された静電潜像をトナー像として現像する現像手段と、
前記トナー像を被転写体に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置。

【図2】
image rotate

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−154956(P2012−154956A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11019(P2011−11019)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】