説明

電装ボックスのカバー部材、及び画像形成装置

【課題】画像形成装置の電装ボックスのカバー部材として十分な強度並びにシールド性及びアース性を備え、かつ該カバー部材の開閉時の操作性とサービス性に優れるとともに、コストダウンを実現可能なカバー部材を提供する。
【解決手段】金属製であり、平面形状が多角形形状であり、多角形の各角部付近と、各端辺のうち任意の一端辺を除く端辺の中央部とにそれぞれ、電装ボックス2の開口面の枠に対し掛止可能な引掛形状の爪状固定部材5が形成され、爪状固定手段5の無い端辺の中央部にはネジ部材により固定可能なネジ穴4が形成され、少なくとも爪状固定手段5により、電装ボックス2の開口面の枠部に固定されている電装ボックスのカバー部材3。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタやファクシミリ等の画像形成装置に装備された電装部品を収納する電装ボックスのカバー部材に関し、詳しくは該カバー部材の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成装置は、カラー化や高速化の要求にともない、機器本体を電気的に制御する電装基板等の電装部品が急増し続ける一方で、機器本体の小型化を図って設置スペースを小さくすることも要求されている。このため、電装ボックスとして電装部品を機器本体の背面側にまとめ、電装基板等を重ね合わせて配置する等の方法により、そのような電装部品の急増に対応するとともに、省スペース化の要請に応えることが行われている。
【0003】
該電装ボックスには蓋となるカバー部材が設けられ、ユーザやサービスマンは、該カバー部材を着脱することにより電装ボックスの内側に配置される電装基板等の電装部品のメンテナンスを行うことができる(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
特許文献1には、電装基板とオプション用の基板を金属製の筐体に収容してなる画像形成装置が開示され、金属製の筐体とすることで電磁波等の遮断性が良いことが記載されている。特許文献2には、電装部品の電磁シールドとして、電装部品のメンテナンス用の開口部に金属箔とシート状樹脂を接合した可撓性を有する電磁シールドシートを備えることが記載されている。特許文献3には、電装ユニットを覆うカバーを、可撓性を有する樹脂性シート材で形成し、これをスナップフィット方式ではめ込むことが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電装ボックスのカバーとしては、樹脂性のカバー部材では強度及びシールド性、アース性の点で十分ではなく、強度を有する金属製部材とした場合には、アースを強化するためにネジ等の係合部材を多数使用して固定する方法では、部材の増加によるコストアップや、取り外し・取り付け作業の煩雑さによるサービス性や作業効率の低下という問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、画像形成装置の電装ボックスのカバー部材として十分な強度並びにシールド性及びアース性を備え、かつ該カバー部材の開閉時の操作性とサービス性に優れるとともに、コストダウンを実現可能なカバー部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために提供する本発明は、以下の通りである。
〔1〕 電装部品を収容する電装ボックスの外表面を覆うカバー部材において、
前記カバー部材は金属製であり、平面形状が多角形形状であり、
多角形の各角部付近と、各端辺のうち任意の一端辺を除く端辺の中央部とにそれぞれ、前記電装ボックス開口面の枠に対し掛止可能な引掛形状の爪状固定部材が形成され、前記爪状固定手段の無い端辺の中央部にはネジ部材により固定可能なネジ穴が形成され、
少なくとも前記爪状固定手段により、前記電装ボックス開口面の枠部に固定されることを特徴とする電装ボックスのカバー部材である。
〔2〕 前記爪状固定部材の前記電装ボックス開口面の枠部を保持する面の側断面の形状が、先端から基部へ狭くなる傾斜を有することを特徴とする前記〔1〕に記載の電装ボックスのカバー部材である。
〔3〕 前記爪状固定部材が、弾性を有する板ばね形状であり、前記電装ボックス開口面の枠部を挟む方向に付勢することを特徴とする前記〔1〕に記載の電装ボックスのカバー部材である。
〔4〕 複数の前記爪状固定部材のうち、一の爪状固定部材の引掛部の長さが、他の爪状固定部材よりも長いことを特徴とする前記〔1〕に記載の電装ボックスのカバー部材である。
〔5〕 前記〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の電装ボックスのカバー部材を有する電装ボックスを備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の効果として、請求項1の発明によれば、電装部品を収容する電装ボックスの外表面を覆うカバー部材において、前記カバー部材は金属製であり、平面形状が多角形形状であり、多角形の各角部付近と、各端辺のうち任意の一端辺を除く端辺の中央部とにそれぞれ、前記電装ボックス開口面の枠に対し掛止可能な引掛形状の爪状固定部材が形成され、前記爪状固定手段の無い端辺の中央部にはネジ部材により固定可能なネジ穴が形成され、少なくとも前記爪状固定手段により、前記電装ボックス開口面の枠部に固定される電装ボックスのカバー部材であるため、該カバー部材が大きい場合であってもネジ部材の使用を最小限とすることができ、ガスケットを使用することなく前記電装ボックスと前記カバー部材とを浮きなく板金同士を接地させることができ、十分な強度並びにシールド性及びアース性を備え、かつ該カバー部材の開閉時の操作性とサービス性に優れるとともに、コストダウンを実現可能である。
請求項2の発明によれば、請求項1に記載の電装ボックスのカバー部材において、前記爪状固定部材の前記電装ボックス開口面の枠部を保持する面の側断面の形状が、先端から基部へ狭くなる傾斜を有するため、スライドさせて設置した際に、前記カバー部材を前記電装ボックスに対し押さえ付けるように取り付けることができ、ネジを使用しなくても接地性を向上させることができる。
請求項3の発明によれば、請求項1に記載の電装ボックスのカバー部材において、前記爪状固定部材が、弾性を有する板ばね形状であり、前記電装ボックス開口面の枠部を挟む方向に付勢するため、スライドさせて設置した際に、前記カバー部材を前記電装ボックスに対しより強く押さえ付けるように取り付けることができ、ネジを使用しなくても接地性を向上させることができる。
請求項4の発明によれば、請求項1に記載の電装ボックスのカバー部材において、複数の前記爪状固定部材のうち、一の爪状固定部材の引掛部の長さが、他の爪状固定部材よりも長いため、最初に前記引掛部の長さが長い前記爪状固定部材を取り付け、設置位置をある程度確定し、次いで他の前記爪状固定部材を取り付けることにより、取り付けの操作性、組み付けの容易さを向上させることができる。
請求項5の発明によれば、請求項1から4のいずれかに記載の電装ボックスのカバー部材を有する電装ボックスを備える画像形成装置であるため、前記カバー部材の開閉時の操作性とサービス性に優れるとともに、コストダウンを実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の画像形成装置の一例の背面外観図である。
【図2】図1において背面の外装カバーを外した状態の外観図である。
【図3】電装ボックスの外観図である。
【図4】本発明の電装ボックスのカバー部材の外観図である。
【図5】本発明の電装ボックスのカバー部材の第一の実施態様を示す断面図である。
【図6】本発明の電装ボックスのカバー部材の第二の実施態様を示す断面図である。
【図7】本発明の電装ボックスのカバー部材の第三の実施態様を示す断面図である。
【図8】本発明の画像形成装置の一実施態様を示す断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る電装ボックスのカバー部材、及び画像形成装置について図面を参照して説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0011】
図1及び図2は、画像形成装置の一例の背面の外観であり、図2は図1の外装カバーを取り外した状態を示す。
画像形成装置1は、オプション基板の設置やメモリ等の増設など各種部品の着脱のために、電装ボックス2に開口部を設け、該開口部をカバー部材3で覆う構成となっている。
電装ボックス2の内部に収容される基板などが発する電磁波をシールドするために、電装ボックス2及びカバー部材3は金属製とし、かつアースを強化するために互いに固定される。従来は、多数のネジ部材を用いて固定されることが行われてきたが、本発明のカバー部材3は、電装ボックス2に対し、ネジの使用は最低限(具体的には1本)、又はネジを使用せずに固定可能である。
【0012】
図3に電装ボックス2の外観図、図4に本発明の電装ボックスのカバー部材の外観図を示す。
本発明のカバー部材3は金属製であり、平面形状が多角形形状であり、多角形の各角部付近と、各端辺のうち任意の一端辺を除く端辺の中央部とにそれぞれ、電装ボックス2の開口面の枠に対し掛止可能な引掛形状の爪状固定部材5が形成され、爪状固定手段5の無い端辺の中央部にはネジ部材により固定可能なネジ穴4が形成され、少なくとも爪状固定手段5により、電装ボックス2の開口面の枠部に固定される。
【0013】
図3及び図4に示すように、例えば、四角形形状のカバー部材3において、4つの角部付近に4箇所、4つの端辺のうち、上部の端辺を除く3辺の中央に3箇所の爪状固定部材5が設けられ、上部端辺の中央にはネジにより固定可能なネジ穴4が設けられている。
爪状固定部材5は、電装ボックス2の開口部の枠に対し、スナップフィット方式で固定することができる。ネジ穴4の部位をネジ部材により固定することで、より強固に電装ボックス2とカバー部材3とを接地させることができる。
このような固定方法とすることで、カバー部材3のサイズが大きい場合であってもネジ部材の使用を最小限にすることができ、カバー部材3の取り付け及び取り外しの容易さ、サービス性の向上を図る事が出来る。さらに、ガスケットを使用することなく電装ボックス2とカバー部材3とを接地させることができるため、コストの削減を実現できる。
【0014】
図5に、カバー部材3が電装ボックス2に取り付けられた状態における、爪状固定部材5の断面図を示す。
爪状固定部材5の引掛部6の長さは、適宜設定することができ、例えば、一の爪状固定部材5の引掛部6の長さを、他の爪状固定部材5の引掛部6よりも長くすることができる。
引掛部6を長くした一の爪状固定部材5を最初に固定することにより、カバー部材3の取り付け位置をある程度決定することができ、次いで、それ以外の爪状固定部材5を固定していくことにより、組み付け性が向上する。
【0015】
図6に、他の実施態様として、カバー部材3が電装ボックス2に取り付けられた状態における、爪状固定部材5の断面図を示す。
本実施態様では、図6に示すように、爪状固定部材5の電装ボックス2の開口面の枠部を保持する面7の側断面の形状が、先端から基部へ狭くなる傾斜を有している。
このように、引掛部の基部に向かってギャップが小さくなる形状としたことで、カバー部材3をスライドして設置した際に、カバー部材3を電装ボックス2に対して押さえつける力を加えながら固定することができ、ネジ部材による固定に依存しなくても、接地性を向上させることができる。
【0016】
図7に、さらに他の実施態様として、カバー部材3が電装ボックス2に取り付けられた状態における、爪状固定部材5の断面図を示す。
本発明実施態様では、図7に示すように、爪状固定部材5が、弾性を有する板ばね形状8であり、該板ばね形状8であることにより電装ボックス2の開口面の枠部を挟む方向に付勢する。
板ばね形状8とすることにより、カバー部材3をスライドして設置した際に、図6に示した態様よりも、より強くカバー部材3を電装ボックス2に対し押さえつける力を加えながら固定することができ、ネジ部材による固定に依存しなくても、接地性を向上させることができる。
【0017】
次に、本発明に係る画像形成装置について説明する。
図8に、本発明に係る画像形成装置の一実施態様として、タンデム型のカラー複写機の構成を示す。
本発明の画像形成装置(カラー複写機)200は、装置本体中央部に位置する画像形成部200Aと、該画像形成部200Aの下方に位置する給紙部200Bと、画像形成部200Aの上方に位置する図示しない画像読取部を有する高速機であり、画像形成部200Aに、図示しない本発明の電装ボックスのカバー部材3を有する電装ボックス2を組み込んでいる。
【0018】
画像形成部200Aには、水平方向に延びる転写面を有する定着ベルト202が配置されており、該定着ベルト202の上面には、色分解色と補色関係にある色の画像を形成するための構成が設けられている。すなわち、補色関係にある色のトナー(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)による像を担持可能な像担持体としての感光体203Y、203M、203C、203Kが定着ベルト202の転写面に沿って並置されている。
【0019】
各感光体203Y、203M、203C、203Kはそれぞれ同じ方向(反時計回り方向)に回転可能なドラムで構成されており、その周りには、回転過程において画像形成処理を実行する帯電装置、光書き込み装置、1次転写装置、現像装置及びクリーニング装置が配置されている。また、各現像装置には、それぞれのカラートナーが収容されている。
【0020】
転写ベルト202は、駆動ローラと従動ローラに掛け回されて感光体203Y、203M、203C、203Kとの対峙位置において同方向に移動可能な構成を有している。また、従動ローラの1つであるローラ210に対向する位置に転写ローラ211が設けられている。また、転写ローラ211から転写装置100までのシートPの搬送経路は横パスとなっている。
【0021】
給紙部200Bは、記録媒体としてのシートPを積載収容する給紙トレイ215と、該給紙トレイ215内のシートを最上のものから順に1枚ずつ分離して、転写ローラ211の位置まで搬送する搬送機構を有している。
【0022】
本発明の画像形成装置200における画像形成に当たっては、感光体203Yの表面が帯電装置により一様に帯電され、画像読取部からの画像情報に基づいて感光体203Y上に静電潜像が形成される。該静電潜像はイエローのトナーを収容した現像装置によりトナー像として可視像化され、該トナー像は所定のバイアスが印加される1次転写装置により転写ベルト202上に1次転写される。他の感光体203M、203C、203Kでもトナーの色が異なるだけで同様の画像形成がなされ、それぞれの色のトナー像が定着ベルト202上に静電気力で順に転写されて重ね合わせられる。
【0023】
つぎに、感光体203Y、203M、203C、203Kから定着ベルト202上に1次転写されたトナー像は、ローラ210、転写ローラ211により搬送されてきたシートに転写される。トナー像が転写されたシートは、さらに定着装置100まで搬送され、定着ベルトと加圧ローラとのニップ部にて定着が行なわれる。
【0024】
ついで、ニップ部から排出されたシートは排出経路に沿って送り出される。このとき、定着ベルトに巻き付いたままでてきたシートは定着分離爪の先端にて定着ベルトから分離されて排出経路に戻される。
【符号の説明】
【0025】
1 画像形成装置
2 電装ボックス
3 カバー部材
4 ネジ穴
5 爪状固定部材
6 引掛部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特開2004−249633号公報
【特許文献2】特開平11−26974号公報
【特許文献3】特開2004−63593号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電装部品を収容する電装ボックスの外表面を覆うカバー部材において、
前記カバー部材は金属製であり、平面形状が多角形形状であり、
多角形の各角部付近と、各端辺のうち任意の一端辺を除く端辺の中央部とにそれぞれ、前記電装ボックス開口面の枠に対し掛止可能な引掛形状の爪状固定部材が形成され、前記爪状固定手段の無い端辺の中央部にはネジ部材により固定可能なネジ穴が形成され、
少なくとも前記爪状固定手段により、前記電装ボックス開口面の枠部に固定されることを特徴とする電装ボックスのカバー部材。
【請求項2】
前記爪状固定部材の前記電装ボックス開口面の枠部を保持する面の側断面の形状が、先端から基部へ狭くなる傾斜を有することを特徴とする請求項1に記載の電装ボックスのカバー部材。
【請求項3】
前記爪状固定部材が、弾性を有する板ばね形状であり、前記電装ボックス開口面の枠部を挟む方向に付勢することを特徴とする請求項1に記載の電装ボックスのカバー部材。
【請求項4】
複数の前記爪状固定部材のうち、一の爪状固定部材の引掛部の長さが、他の爪状固定部材よりも長いことを特徴とする請求項1に記載の電装ボックスのカバー部材。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の電装ボックスのカバー部材を有する電装ボックスを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−40796(P2012−40796A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184886(P2010−184886)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】