説明

電解めっき方法および電解めっきライン

【課題】電解めっき層の膜厚を均一にできる電解めっき方法と、電解めっきラインを提供する
【解決手段】保持具に被めっき物を保持させる工程と、被めっき物をめっき液に浸漬する工程を行う。また、保持具を介して被めっき物に負電圧を印加し、めっき液内に配置された正電極に正電圧を印加するとともに、保持具を被めっき物とともに所定方向に回転しながら被めっき物の表面に電解めっき層を形成する工程を行う。回転しながら電解めっき処理を施すことにより、均一な膜厚でめっき層を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解めっき方法および電解めっきラインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電解めっき処理を施す場合は、図11Aに示すように、保持具102に被めっき物101を保持してめっき液103に浸漬し、2枚の正電極104の間に被めっき物101を位置させていた(例えば下記特許文献1)。これら2枚の正電極104と、保持具102間に電圧を印加することにより、被めっき物101の表面に電解めっき層を形成する。
【特許文献1】特開平6−88293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記方法を用いると電解めっき層の膜厚が不均一になる問題があった。図11Bに電解めっき層105の膜厚を誇張した図を示す。このように、上記方法を用いると正電極104に近い部分で膜厚が厚くなり、遠い部分で薄くなる傾向がある。この場合、電解めっき層105の最低膜厚を確保しようとすると厚い部分が必然的にできてしまい、めっき材料を余分に必要とするため、コストの上昇を招いていた。そのため、被めっき物101に膜厚の均一な電解めっき層105を形成できるめっき方法が望まれていた。
【0004】
本発明は上述のような事情を背景になされたもので、特に、電解めっき層の膜厚を均一にできる電解めっき方法と、電解めっきラインを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0005】
上記課題を解決するために本第1発明の電解めっき方法は、
保持具に被めっき物を保持させる工程と、
被めっき物をめっき液に浸漬する工程と、
保持具を介して被めっき物に負電圧を印加し、めっき液内に配置された正電極に正電圧を印加し、保持具を被めっき物とともに所定方向に回転しながら被めっき物の表面に電解めっき層を形成する工程と、
電解めっき層が形成された被めっき物を保持具から分離して回収する工程と、
を含むことを主要な特徴とする。
【0006】
電解めっき層の膜厚が不均一になるのは、電解めっき層の原料となる金属イオンの濃度がめっき液中で不均一になっているためである。すなわち、金属イオンは正電極が溶解して運ばれてくるものなので、正電極に近い場所では金属イオン濃度が濃くなり、遠いところでは薄くなる。しかし上記第1発明によると、被めっき物をめっき液中で回転させるので、めっき層が特定の場所で厚くならず、膜厚を均一にすることが可能となる。
【0007】
また、本第2発明の電解めっきラインは、
被めっき物を保持してめっき液に浸漬するための保持具と、
その保持具を搬送して被めっき物に所定の工程を施す搬送ラインと、
被めっき物を保持具に保持させて搬送ラインで搬送できる状態とする被めっき物供給部と、
めっき液を貯留するめっき槽と、
そのめっき槽に設けられた正電極と、
保持具を介して被めっき物に負電圧を印加し、正電極に正電圧を印加して、被めっき物の表面に電解めっき層を形成する電源と、
電解めっき層を形成する時に、保持具を被めっき物ごと所定方向に軸回転する回転機構と、
電解めっき層が形成された被めっき物を回収する回収部と、
を備えることを主要な特徴とする。
【0008】
上記第2発明の電解めっきラインは、保持具を軸回転する回転機構を備えているので、めっき液中で被めっき物を回転でき、めっき膜の膜厚分布を均一にすることができる。この回転機構は例えばラックとピニオンによって構成することができる。
【0009】
さらに、本第3発明の電解めっきラインは、
袋状の空間を有する袋状ワークの開口部から自身の先端部を挿入して袋状ワークを保持し、開口部が上を向いた姿勢で袋状ワークをめっき液に浸漬するための保持具と、
その保持具を搬送して袋状ワークに所定の工程を施す搬送ラインと、
保持具に袋状ワークを保持させて搬送ラインで搬送できる状態とする袋状ワーク供給部と、
めっき液を貯留するめっき槽と、
そのめっき槽に設けられた正電極と、
保持具を介して袋状ワークに負電圧を印加し、正電極に正電圧を印加して、袋状ワークの表面に電解めっき層を形成する電源と、
電解めっき層を形成する時に、保持具を袋状ワークごと所定方向に軸回転する回転機構と、
めっき槽から袋状ワークを引上げる際に、袋状空間内に溜まっためっき液が自然流下できるように、袋状ワークを傾ける傾斜機構と、
電解めっき層が形成された袋状ワークを回収する回収部と、
を備えることを主要な特徴とする。
【0010】
上記第3発明の電解めっきラインは、袋状ワークに特化したものである。この電解めっきラインでは、袋状ワークの開口から保持具の先端を差し込んで、袋状ワークの内面に保持具が接触するようにして保持している。つまり、保持具が袋状ワークの外面と接触していると、その接触した部分にめっきが付きにくくなるので、内側から接触させているのである。そして、保持具を先端側からめっき液に入れて袋状ワークを浸漬する。つまり、袋状ワークの開口が上になる姿勢で浸漬する。そして、回転機構によって保持具と袋状ワークをめっき液中で回転することにより、袋状ワークの外面にめっき層を均一な厚さで形成することが可能となる。一方、この姿勢のまま袋状ワークを引き上げると袋状空間にめっき液が溜まり、このまま次の工程(例えば水洗工程)に進むと水洗槽にめっき液が入ってしまう。これを防ぐために上記第3発明では、傾斜機構によって袋状ワークを傾け、めっき液をめっき槽に流している。
【0011】
また、本第4発明の電解めっきラインは、上記第2または第3発明におけるもので、
搬送ラインは一定速度で保持具を搬送し、
保持具は搬送ラインによってめっき液内を移動し、
正電極は第一および第二正電極からなり、それら第一および第二正電極はめっき液内を移動する保持具を進行方向側面から挟む位置に配置されていることを特徴とする。
【0012】
上記第4発明によると、保持具を一定速度で搬送しているので、例えば上述のラックとピニオンからなる回転機構を用いて保持具を一定速度で回転させることができる。また、めっき液内で被めっき物を挟むように第一および第二正電極が位置しているので、電解めっき層の原料となる金属イオンを被めっき物に対して供給しやすい配置になっている。
【0013】
また、本第5発明の電解めっきラインは、上記第2〜第4発明におけるもので、
回転機構は、保持具の上部に設けられたピニオンと、そのピニオンに噛み合うラックとから構成され、
ラックはめっき槽の上部にのみ設けられており、他の液槽の上部には設けられていないことを特徴とする。
【0014】
上記第5発明によると、めっき槽以外の液槽、例えば水洗槽にはラックを設けていないため、ラックを設置する費用を削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は被めっき物の例として袋状ワーク(袋ナット)を示すものである。袋状ワーク1はめねじ部4を有する本体2と、本体2のおねじ部材の螺入側(開口部6)とは反対側の部分を塞ぐキャップ部3とを備え、めねじ部4とその奥部の空所(ボルト等のおねじ部材の先端部が進入する部分)とにより袋状の空間(閉鎖空間)5が形成される。このような袋ナット1が、鍛造加工さらに転造もしくは切削等によるねじ加工、キャップ部3の溶接及び熱処理の後、洗浄や防錆、めっき等のために所定の液槽に浸漬される。
【0016】
その際、図2Aに示すような保持具7を用いる。保持具7は中央ピン10と、その中央ピン10に関して対称に配置された左右ピン8,9を備え、これら3本のピンを使って先端部に袋状ワーク1を装着する(図2B)。左右ピン8,9は双方の間隔が変わる程度に弾性変形可能で、かつ先端部が外側に向かって折れ曲がっている。袋状ワーク1を装着する際には、左右ピン8,9に力を加えて双方の間隔を狭め、袋状ワーク1の開口部6に差し込み、力を緩める。すると、左右ピン8,9が外側へ弾性変形する力が袋状ワーク1の内面に加わるとともに先端部が引っかかり、簡単に抜けなくなる。
【0017】
図3に、本発明の電解めっき方法の概略図を示す。このように、めっき槽14にはめっき液11が貯えられ、第一正電極12,第二正電極13が設けられている。袋状ワーク1を保持具7に装着した後、保持具7を先端側からめっき液11に入れ、袋状ワーク1を第一正電極12,第二正電極13の間に位置させる。そして第一,第二正電極12,13に正電圧を印加し、保持具7を介して袋状ワーク1に負電圧を印加して、袋状ワーク1に電解めっき層を形成する。この際、保持具7を所定方向に軸回転することにより、袋状ワーク1に均一な膜厚のめっき層を形成することが可能となる。また、袋状ワーク1は開口部6が上を向く姿勢で保持されているので、めっき液11に浸漬した際に内部にめっき液11が入り込む。そのため、袋状ワーク1の外面のみならず、内面にも所定の処理を施すことができる。
【0018】
次に、本発明の電解めっきライン26の一部を図4に示す。このように、電解めっきライン26には複数のめっき槽14a,14bが配置されている。また、複数(図では3つ)の保持具7a〜7cを板状のベース部22に回動可能に取り付け、一度に複数個の袋状ワーク1を処理できるようにしてある。より詳しくは、ベース部22の上面には歯車17〜19が配置され、各歯車17〜19に保持具7a〜7cがそれぞれ取り付けられ、ベース部22に対して各保持具7a〜7cは回動可能になっている。中央の歯車18には支柱16が取り付けられ、その支柱16に、ラック25と噛み合うピニオン24が取り付けられている。また、支柱16の先端にはカムフォロア23(ローラ)を回動自在に設けてある。
【0019】
一方、ベース部22は揺動部材21によってベース支持具20に揺動自在に取り付けられており、ベース支持具20の上端はチェーン(図示しない)に固定されている。このチェーンが矢印Fの方向に動くことによりベース部22が移動し、また、ラック25とピニオン24が噛み合って支柱16が回転する。その回転力は歯車18を通して歯車17,19に伝わり、これにより保持具7a,7cが回転する。
【0020】
このように、本実施形態では袋状ナット1がめっき槽14内を移動している。そして、袋状ナット1を進行方向側面から挟む位置に第一正電極12と第2正電極13が配置されている。
【0021】
上記チェーンは無限軌道にされていてモータ等の駆動装置により巡回され、これら駆動装置、チェーン、ベース支持具20、ベース部22等により後述の搬送ライン39が構成される。また、ラック25とピニオン24によって本発明の回転機構が構成される。
【0022】
次に、袋状ワーク1がめっき槽14a,14b間の境界を乗り越える際の動きについて説明する。めっき槽14a,14b間の上方には捩れたレール状のカム部材15が配置されている。ピニオン24がラック25の終端部Eへ来ると、カムフォロア23がカム部材15に入る(図5)。その後、搬送に伴ってカムフォロア23はカム部材15内を進み、カム部材15が捩れているためカムフォロア23は揺動部材21を中心として強制的に下方へ回転させられる(図6)。揺動部材21に関してカムフォロア23の反対側に位置する袋状ワーク1は上方へ持ち上げられる。カムフォロア23が進行すると、図7に示すように更に下方へ回され、袋状ワーク1はより上方へ持ち上げられる。この際、袋状ワーク1は90°以上回転しているため、袋状空間5内に溜まっためっき液11が自然流下する。これにより、袋状空間5にめっき液が溜まった状態で次のめっき槽14bへ移動することが無くなる。
【0023】
このように、袋状ワーク1の開口部6を上に向けた姿勢で電解めっき処理をしたとしても、本発明の傾斜機構(カム部材15及びカムフォロア23)により、次のめっき槽14bへ進む際に袋状ワーク1を傾け、内部のめっき液を流下させることが可能になる。
【0024】
次に、電解めっき工程の一例を説明する。図8における工程27〜38が巡回的に行われることにより、袋状ワーク1に電解めっきを施こす。いま、ロード/アンロード工程38では、図2等に示す保持具7の先端部に、鍛造加工された後に熱処理がされた袋状ワーク1が、開口部6が上方を向くように取り付けられる。そして、このように袋状ワーク1が装着された保持具7は、搬送ライン39のベース部22に取り付けられ、その搬送ライン39によって一定速度で搬送されつつ、必要な液槽に袋状ワーク1が浸漬される。
【0025】
搬送ライン39は上述したように、モータ等の駆動装置により巡回するチェーンと、そのチェーンに固定されたベース支持具20,ベース部22等から構成され、各保持具7はこの搬送ライン39によって巡回する。図9にその概念図を示す。各ベース部22は一定の間隔を空けて電解めっきライン26内を巡回しており、それぞれのベース部22に、図4に示すように複数個の保持具7が装着される。搬送ライン39は保持具7を一定速度で巡回させており、特定の場所で停止したりせず、連続して巡回するようになっている。このため、各工程27〜38の処理時間に合わせて液槽14,40〜43の長さを変えている。つまり、処理時間の長い工程では液槽の長さを長くし、処理時間が短い工程では液槽を短くしてある。
【0026】
ある保持具7は脱脂槽40に浸漬されて脱脂工程が実施され、別の保持具7は陰極酸電解槽41に浸漬されてスケール除去が行われ、さらに別の保持具7は陽極電解槽42に浸漬されて袋状ワーク1の活性化が図られ、また別の保持具7はめっき槽14に浸漬されてめっき工程が実施され、さらにまた別の保持具7は防錆油槽43に浸漬されて防錆油が付着される。このように全体的にみると、脱脂、スケール除去、活性化、めっき、防錆等の工程が並列的に実施される。
【0027】
ここで、一つの保持具7に着目し、それに保持された袋状ワーク1に対する各工程を順を追って図8,9に従い説明する。まず、ロード/アンロードステーション38(本発明の被めっき物供給部、袋状ワーク供給部)において、袋状ワーク1を装着した保持具7は搬送ライン39のベース部22に取り付けられ、そのステーション38から一定速度で搬送されて、アルカリ脱脂工程27において袋状ワーク1が所定のアルカリ溶液(脱脂槽40)に浸漬されてアルカリ脱脂が行われる。次に、ここから引き上げられ、水洗槽に浸漬されて、アルカリ溶液(脱脂液)を洗う水洗工程28が実施される。この引き上げと浸漬の動作は、カム部材15およびカムフォロア23(図5〜図7)によって行われ、袋状ワーク1の袋状空間に入っているアルカリ溶液を水洗槽へ持ち込まないようになっている。水洗の後、袋状ワーク1は硫酸溶液等に浸漬されて、熱処理により袋状ワーク1に生じているスケールを除去する(スケールとばし)陰極酸電解工程29が実施される。
【0028】
それから、上記と同様の水洗工程30で上記硫酸溶液等が洗われた後、袋状ワーク1は所定のアルカリ溶液(陽極電解脱脂槽42)に浸漬され、後工程で予定されているめっきの付きを良くするために、表面を活性化する陽極電解脱脂工程31が施される。さらに、上記と同様の水洗工程32を経て、電解めっき工程(めっき1)33に至る。ここで、袋状ワーク1の外面に例えばニッケル等の電解めっき層が形成される。ここでの電解めっき層は、例えば半光沢ニッケルめっき又は光沢ニッケルめっき等であり、それらのいずれか一方を施すこと又は相前後して半光沢及び光沢のめっきを別々のめっき槽で順番に行うこともできる。電解めっき工程33を行う際には、本発明の回転機構(ラック25およびピニオン24)によって、袋状ワーク1はめっき液の中で回転しており、これにより、袋状ワーク1の外面に均一な膜厚の電解めっき層を形成している。なお、ラック25は、めっき槽14の上部にのみ取り付けられており、他の液槽(水洗槽、脱脂槽40、陰極酸電解槽41など)には取り付けられていない。水洗槽などでは袋状ワーク1を回転させなくても、所望の効果を得られるからである。
【0029】
このめっき工程が終われば、袋状ワーク1は保持具7ごと引き上げられ、水洗槽に浸漬されて水洗(34)される。ここで、さらに第2めっき工程35(別材質)を実施する場合は、上記水洗後、袋状ワーク1を保持具7とともに、例えばクロムめっきのためのめっき槽に浸漬される。そのめっき工程35が終了すれば、めっき後の袋状ワーク1がめっき槽から引き上げられ、水洗工程36に至り、そこで上述と同様にめっき液が洗われる。
【0030】
なお、脱脂槽40、水槽、陽極電解脱脂槽42、めっき槽14から袋状ワーク1を引き上げて次の液槽へ移す際には、カム部材15とカムフォロア23からなる傾斜機構によって、引き上げ・浸漬の動作が行われ、袋状ワーク内部に溜まった溶液を次の液槽に持ち込まないようになっている。
【0031】
水洗工程36の後、防錆工程37に続く。すなわち、袋状ワーク1を保持する保持具7は、傾斜機構によって水洗槽から引き上げられ、防錆油槽に浸漬される。この浸漬の過程で、袋状ワーク1は開口部6が上を向いた姿勢で浸漬けされるので、袋状空間に防錆油がスムーズに入り、袋状ワーク1の内部まで防錆油を付着させることができる。その後、保持具7を傾斜機構(カム部材15およびカムフォロア23)で引き上げれば、袋状ワーク1の袋状空間に入り込んでいる防錆油は袋状ワーク1の開口部6より流下するため、余分な防錆油を内部に残すことなく袋状ワークを引き上げることができる。
【0032】
このような防錆工程37が終了すれば、めっき及び防錆油付着が完了した袋状ワーク1は、保持具7に保持されたまま、前述のロード/アンロードステーション38(本発明の回収部)に戻り、ここで保持具7が搬送ライン39から取り外され、さらにその保持具7に保持されている袋状ワーク1が保持具7から離脱させられて、一連の工程が完了し、出荷等となる。
【0033】
なお、従来の保持具102では図11に示すように、被めっき物101を開口部が下を向く姿勢で保持していたので、内部に空気が閉じ込められ、水やめっき液、防錆油などが入り込めなかった。従って内部にめっき層が形成されなかったり、防錆油が付かなかったりして、ここから錆びやすくなっていた。これに対して本発明では、袋状ワーク1を開口部6が上を向く姿勢で保持して各種溶液(水やめっき液、防錆油など)に浸漬するため、袋状ワーク1の内側に溶液がスムーズに入り、内部にめっき層を形成したり防錆油を付着したりできる。
【0034】
以上説明した実施形態では、搬送ライン39が一定の速度で保持具7および袋状ワーク1を搬送したが、本発明は別の形態を採用することもできる。例えば図10に示すように、チェーン44に複数個の連結具45を設け、袋状ワーク1を装着した保持具7を連結具45に取り付けた構成としてもよい。チェーン44によって保持具7を袋状ワーク1とともに搬送し、図示しない上昇・下降機構によって各保持具7を個別に上昇・下降させてめっき液に浸漬する。そして、回転機構(図示しない)によって保持具7をめっき液中で静止回転する。
【0035】
さらに別の実施形態として、例えば図4のようにラック25とピニオン24からなる回転機構を有し、めっき槽14内で往復運動をさせることにより、袋状ワーク1を回転させてもよい。このようにすると、めっき槽の長さが短い場合であっても、袋状ワーク1を所望の時間、回転しながら処理できる。
【0036】
以上、袋状ワーク1に電解めっき処理を施す方法について主に説明したが、袋状ワーク1以外の被めっき物に対して、この電解めっきを行ってもよい。例えばボルト等に電解めっき処理を施す場合であっても、所定の保持具に保持させて、めっき液中で所定方向に軸回転させることにより、ボルトの表面に均一な電解めっき層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】被めっき物である袋状ワークの(A)表面図(B)断面図
【図2】保持具の一例
【図3】本発明の電解めっき方法の概念図
【図4】本発明の電解めっきラインの一部
【図5】傾斜機構の動きを説明する図
【図6】図5に続く図
【図7】図6に続く図
【図8】本発明の工程の一例を示す工程図
【図9】本発明を実施する設備を概念的に示す平面図
【図10】他の実施形態
【図11】従来例の説明図
【符号の説明】
【0038】
1 袋状ワーク(被めっき物)
6 袋状ワークの開口部
7 保持具
11 めっき液
12 第一正電極
13 第二正電極
14 めっき槽
15 カム部材
23 カムフォロア(ローラ)
24 ピニオン
25 ラック
26 電解メッキライン
38 ロード/アンロードステーション(被めっき物供給部、袋状ワーク供給部、回収部)
39 搬送ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持具に被めっき物を保持させる工程と、
前記被めっき物を前記めっき液に浸漬する工程と、
前記保持具を介して前記被めっき物に負電圧を印加し、前記めっき液内に配置された正電極に正電圧を印加し、前記保持具を前記被めっき物とともに所定方向に回転しながら前記被めっき物の表面に電解めっき層を形成する工程と、
前記電解めっき層が形成された前記被めっき物を前記保持具から分離して回収する工程と、
を含むことを特徴とする電解めっき方法。
【請求項2】
被めっき物を保持してめっき液に浸漬するための保持具と、
その保持具を搬送して前記被めっき物に所定の工程を施す搬送ラインと、
前記被めっき物を前記保持具に保持させて前記搬送ラインで搬送できる状態とする被めっき物供給部と、
前記めっき液を貯留するめっき槽と、
そのめっき槽に設けられた正電極と、
前記保持具を介して前記被めっき物に負電圧を印加し、前記正電極に正電圧を印加して、前記被めっき物の表面に電解めっき層を形成する電源と、
前記電解めっき層を形成する時に、前記保持具を前記被めっき物ごと所定方向に軸回転する回転機構と、
前記電解めっき層が形成された前記被めっき物を回収する回収部と、
を備えることを特徴とする電解めっきライン。
【請求項3】
袋状の空間を有する袋状ワークの開口部から自身の先端部を挿入して前記袋状ワークを保持し、前記開口部が上を向いた姿勢で前記袋状ワークをめっき液に浸漬するための保持具と、
その保持具を搬送して前記袋状ワークに所定の工程を施す搬送ラインと、
前記保持具に前記袋状ワークを保持させて前記搬送ラインで搬送できる状態とする袋状ワーク供給部と、
前記めっき液を貯留するめっき槽と、
そのめっき槽に設けられた正電極と、
前記保持具を介して前記袋状ワークに負電圧を印加し、前記正電極に正電圧を印加して、前記袋状ワークの表面に電解めっき層を形成する電源と、
前記電解めっき層を形成する時に、前記保持具を前記袋状ワークごと所定方向に軸回転する回転機構と、
前記めっき槽から前記袋状ワークを引上げる際に、前記袋状空間内に溜まった前記めっき液が自然流下できるように、前記袋状ワークを傾ける傾斜機構と、
前記電解めっき層が形成された前記袋状ワークを回収する回収部と、
を備えることを特徴とする電解めっきライン。
【請求項4】
前記搬送ラインは一定速度で前記保持具を搬送し、
前記保持具は前記搬送ラインによって前記めっき液内を移動し、
前記正電極は第一および第二正電極からなり、それら第一および第二正電極は前記めっき液内を移動する前記保持具を進行方向側面から挟む位置に配置されている請求項2または3記載の電解めっきライン。
【請求項5】
前記回転機構は、前記保持具の上部に設けられたピニオンと、そのピニオンに噛み合うラックとから構成され、
前記ラックは前記めっき槽の上部にのみ設けられており、他の液槽の上部には設けられていない請求項2ないし4のいずれか1項に記載の電解めっきライン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−299306(P2006−299306A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−118961(P2005−118961)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(592190486)木田精工株式会社 (26)
【出願人】(000147109)株式会社杉浦製作所 (11)
【Fターム(参考)】