説明

電解めっき方法

【課題】皮膜形成速度を向上させることが可能な電解めっき方法を提供する。
【解決手段】本発明の電解めっき方法は、電子部品10の表面に析出させる金属の金属イオン及び金属粒子31を含むめっき液3を用いて電解めっきを行う。この場合、金属イオンがめっき液3中の電子部品10の表面まで移動する流れに巻き込まれて、金属粒子31が金属イオンと共に電子部品10の表面まで移動する。そして、電子部品10の表面において金属イオンが金属原子となって被めっき物の表面に析出すると共に金属粒子31も電子部品10の表面に付着して皮膜を形成する。これにより、金属イオンと金属粒子31とによって皮膜が形成されるので、金属イオンのみによって皮膜を形成するより皮膜形成速度が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解めっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属イオンを含むめっき液中に被めっき物を浸漬し、めっき液に直流電流を通電することにより、めっき液中の金属イオンによって被めっき物の表面に金属を析出させる電解めっき方法がある(下記特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−160400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
より高速で電解めっきを行うには、めっき液に流す電流を高くする方法がある。しかしながら、電流を高くすると、電解液中の水の電気分解によりガスが発生して一定の膜厚でめっきを行うことが困難となる。また、被めっき物が電子部品である場合、電流を高くするために電圧をかけると電圧ストレスがかかり、製品が破壊されたり特性が劣化する虞がある。そのため、電流を上げるには限界があるため、皮膜形成速度の向上には限界がある。
【0004】
他にも、より高速で電解めっきを行う方法として、電解液中の金属イオンの濃度を高くする方法等があるが、これらの方法にも皮膜形成速度の向上に限界があり、より高速で皮膜を形成することができる電解めっき方法が求められている。
【0005】
そこで本発明は、皮膜形成速度を向上させることが可能な電解めっき方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電解めっき方法は、被めっき物の表面に析出させる金属の金属イオン及び金属粒子を含むめっき液を用いて電解めっきを行うことを特徴とする。
【0007】
本発明の電解めっき方法では、金属イオンがめっき液中の被めっき物の表面まで移動する流れに巻き込まれて、金属粒子が金属イオンと共に被めっき物の表面まで移動する。そして、被めっき物の表面において金属イオンが金属原子となって被めっき物の表面に析出すると共に金属粒子も被めっき物の表面に付着して皮膜を形成する。これにより、金属イオンと金属粒子とによって皮膜が形成されるので、金属イオンのみによって皮膜を形成するより皮膜形成速度が向上する。
【0008】
好ましくは、金属粒子の粒径は、1μm以下である。この場合、金属粒子が効率的に金属イオンと共に被めっき物の表面まで移動し、被めっき物の表面に付着して皮膜を形成することができる。また、平滑性の高いめっき皮膜を形成することができる。
【0009】
好ましくは、めっき液を用いて電解めっきを行う際に、めっき液を攪拌する。この場合、金属粒子が沈降して下方に堆積するのを防止して、被めっき物の表面に十分に金属イオンと金属粒子が供給されることとなる。よって、皮膜形成速度をより向上させることができる。
【0010】
好ましくは、金属粒子は、帯電している。この場合、金属粒子がカソード側の被めっき物に電気的に引き付けられ易くなるので、金属粒子が沈降して下方に堆積することを防止して、効率的に金属粒子を被めっき物の表面に付着させることができる。よって、皮膜形成速度をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電解めっき方法によれば、皮膜形成速度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する
【0013】
図1は、本発明に係る電解めっき方法の一実施形態を実現するためのバレルめっき装置の概略構成図である。図1に示すように、バレルめっき装置1は、めっき槽2を有して、めっき槽2には、めっき液3が貯留されている。バレルめっき装置1は、めっき液3に浸水するようにそれぞれ配置されたアノード電極4と、カソード電極として機能するバレル5を備える。アノード電極4とバレル5との間に電圧をかけられるように、アノード電極4とバレル5とは、めっき液3の外部で制御装置(図示せず)に接続されている。
【0014】
バレル5は、金属性の断面正六角形の筒状に形成されて、めっき槽2の略中央に水平に配置されている。バレル5は、内部に被めっき物である複数の電子部品10を収容している。バレル5の側壁には、メッシュ状の窓部(図示しない)が形成されている。この窓部は、バレル5内に収容された電子部品10等を外部に通さないようにブロックする一方、めっき槽2からバレル5内へのめっき液3が流入するように形成されている。そして、バレル5は、めっき処理を行う際に回転軸6を中心に所定の速度で回転して、電子部品10を攪拌する。
【0015】
被めっき物である電子部品10の一例を図2に示す。電子部品10は、導電パターンが形成されたセラミック層を積層してなる素子部11と、この素子部11の両端にそれぞれ形成された1対の端子電極12,12とによって構成される、いわゆる積層型電子部品である。このような電子部品10としては、チップコンデンサ、チップバリスタ、チップインダクタ、チップビーズなどが挙げられる。
【0016】
本実施形態に係るバレルめっき装置1は、電子部品10の端子電極12,12にめっきを形成する。例えば、NiめっきやSnめっき等である。電子部品10の大きさは、縦0.4mm、横0.2mm、奥行0.2mm〜縦5.7mm、横5.0mm、奥行5.0mm程度である。めっきにより形成する皮膜の厚さは、5μm〜10μm程度である。
【0017】
図1に戻って、バレルめっき装置1は、めっき槽2の外側に設けられたポンプPを備えて、ポンプPを駆動することにより、めっき槽2内のめっき液3を攪拌する。めっき液3は、被めっき物の表面に析出させる金属の金属イオン及び金属粒子31、その他金属イオンをイオン状態に保つための安定剤等を含んでいる。
【0018】
例えば、Niめっきを行う場合、めっき液3は、NiイオンとNi粒子とを含む。Snめっきを行う場合、めっき液3は、SnイオンとSn粒子とを含む。Ni粒子、Sn粒子等の金属粒子31の粒径は、1μm以下である。より好ましくは、金属粒子31の粒径は、1〜100nm程度のコロイド粒子である。この金属粒子31は、プラスに帯電している。
【0019】
続いて、上述したバレルめっき装置1及びめっき液3を用いた電解めっき方法について説明する。電子部品10が収容されたバレル5をめっき液3に浸漬した後、アノード電極4及びバレル5に通電を行う。そして、回転軸6を中心としてバレル5を所定の速度で回転させて電子部品10を攪拌し、ポンプPを駆動してめっき液3を攪拌しながら電解めっき処理を行う。電子部品10の端子電極12には、NiイオンとNi粒子を含むめっき液を用いてNiめっきを施した後、SnイオンとSu粒子を含むめっき液を用いてSnめっきを施す。
【0020】
金属イオンとなるイオン源と、安定剤等を含むめっき液3には、帯電した金属粒子31が投入されている。金属粒子31を帯電させるには、例えば、カチオン性界面活性剤を金属粒子に吸着させる。金属粒子31が、粒径1〜100nm程度のコロイド粒子である場合には、加水分解等により金属粒子を帯電させてもよい。
【0021】
図3に示すように、Snめっきを行う場合、めっき液3には、帯電したSn粒子31とSnイオン32とが含まれる。通電が開始されると、Snイオン32は、従来技術と同様に、電子部品10の端子電極12へ電気的に引き付けられて、端子電極12の表面まで移動する。そして、Snイオン32がSn原子33となりSn皮膜を形成する。
【0022】
それに加えて、本実施形態では、Sn粒子31が、Snイオン32の流れに巻き込まれてSnイオン32と共に端子電極12の表面まで移動する。また、Sn粒子31は帯電しているので、電気的に端子電極12に引き付けられて、その表面まで移動する。そして、Snイオン32がSn原子33となりめっき皮膜を形成すると共にSn粒子31も端子電極12の表面に付着してSn皮膜を形成する。
【0023】
このように本実施形態の電解めっき方法では、めっき液3が、被めっき物に析出させる金属の金属イオン及び金属粒子31を含むので、金属イオンと金属粒子31とによって皮膜が形成される。よって、金属イオンのみによって皮膜を形成するより皮膜形成速度が向上する。
【0024】
金属粒子31の粒径は、1μm以下であるので、金属粒子が効率的に金属イオンと共に被めっき物の表面まで移動し、被めっき物の表面に付着して皮膜を形成することができる。また、平滑性の高いめっき皮膜を形成することができる。金属粒子31が粒径1〜100nm程度のコロイド粒子である場合には、更に皮膜形成速度を向上させることができる。
【0025】
本実施形態の電解めっき方法では、電解めっきを行う際に、めっき液3を攪拌するので、金属粒子31が沈降して下方に堆積するのを防止して、被めっき物の表面に十分に金属イオンと金属粒子31が供給されることとなる。よって、皮膜形成速度をより向上させることができる。
【0026】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、めっき液3に含まれる金属イオンと金属粒子との組み合わせは、目的とするめっき物に合わせて任意に選択できる。また、金属イオンと金属粒子との組み合わせにより、合金を被めっき物に析出させるようにしてもよい。例えば、金属イオンとしてNiイオンを用い、金属粒子としてCo粒子、W粒子等を用いてもよい。金属イオンとしてSnイオンを用いて、金属粒子としてAg粒子、Zn粒子、Cu粒子、In粒子、Bi粒子を用いても良い。このようにすることにより、はんだ濡れ性の良い合金めっき等の機能的な合金めっきを簡易に行うことができる。
【0027】
また、上記実施形態では、めっき液3を攪拌するためにポンプPを用いたが、これに限られず、攪拌棒等でめっき液3を攪拌するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る電解めっき方法の一実施形態を実現するためのバレルめっき装置の概略構成図である。
【図2】被めっき物の例を示す斜視図である。
【図3】本実施形態に係る電解めっき方法の原理を説明するための図である。
【符号の説明】
【0029】
1…バレルめっき装置、3…めっき液、10…電子部品(被めっき物)、31…金属粒子、32…金属イオン、P…ポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被めっき物の表面に析出させる金属の金属イオン及び金属粒子を含むめっき液を用いて電解めっきを行うことを特徴とする電解めっき方法。
【請求項2】
前記金属粒子の粒径は、1μm以下であること特徴とする請求項1記載の電解めっき方法。
【請求項3】
前記めっき液を用いて電解めっきを行う際に、前記めっき液を攪拌することを特徴とする請求項1又は2に記載の電解めっき方法。
【請求項4】
前記金属粒子は、帯電していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解めっき方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−248286(P2008−248286A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88962(P2007−88962)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)