説明

電解めっき用治具及び電解めっき方法

【課題】同一のサイズ及び形状の複数枚のウェーハに電解めっきを施す際には、再使用可能であり、他方、ウェーハのサイズ等が変更されても容易に対応でき、且つウェーハの電解めっきを施す一面側の電流密度を可及的に均一とし得る電解めっき用治具を提案する。
【解決手段】電解めっき用治具が、基板12a,12b,12cが積層されて形成された、両面が金属層から成る多層基板12であって、多層基板12に形成されたウェーハ収容孔14には、ウェーハを収容したとき、前記ウェーハの電解めっき用バスラインが周縁に形成された一面側と当接して前記ウェーハを支承するように、前記ウェーハ収容孔14の内壁面に沿って内方に突出する鍔部16が形成され、且つ鍔部16の一面側に形成された、前記電解めっき用バスラインと当接する複数のパッド18,18・・の各々が、多層基板12の両面を形成する金属層に電気的に接続されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電解めっき用治具及び電解めっき方法に関する。更に詳細には、電解めっきが施される一面側の周縁に電解めっき用バスラインが設けられたウェーハを収容して電解めっきを施す電解めっき用治具及び電解めっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造の際に、複数個の半導体装置をウェーハの一面側に形成し、最終的にウェーハを切断して個々の半導体装置に分離することが行なわれている。
かかる製造工程では、配線パターン等を形成するためにウェーハの一面側の所定箇所に電解めっきを施すことが必要となるため、通常、電解めっきを施すウェーハの一面側の周縁には、その所定箇所に給電する電解めっき用バスラインが設けられている。
この様なウェーハの一面側に電解めっきを施す際には、例えば下記特許文献1に提案されている電解めっき用治具を用いることができる。
かかる電解めっき用治具を図7及び図8に示す。図7及び図8に示す電解めっき用治具100は、樹脂から成るフィルム状の表面被覆材102と裏面被覆材104との間に、ウェーハ106が挟み込まれ、電解めっきを施すウェーハ106の一面側が露出するように、表面被覆材102に開口部103(図8)が形成されている。
更に、表面被覆材102と裏面被覆材104との間に、ウェーハ106の外周縁に沿って導電体108が配設されており、この導電体108には、ウェーハ106の電解めっき用バスラインと接続される電極110,110・・がウェーハ106の外周縁に沿って形成されている。
かかる導電体108は、電解めっき用治具100の一箇所から外方に引出線114として引き出され、電解めっき用電極の一方に接続される。
尚、図7及び図8に示す電解めっき用治具100を構成する矩形状の表面被覆材102及び裏面被覆材104には、四隅に切欠部112,112・・が形成されている。
【0003】
ウェーハ106が収容された図7及び図8に示す電解めっき用治具100を、図9に示す様に、アノード電極206,206が配設されている電解めっき槽200に貯留された電解めっき液202に浸漬し、表面被覆材102の開口部103から露出しているウェーハ106の所定箇所に電解めっきを施すことができる。
この際に、電解めっき用治具100は、その切欠部112,112・・の各々が電解めっき槽200内に設けられた支持バー204と係合して、電解めっき槽200内の所定位置に位置決めされている。かかる電解めっき用治具100から引き出された引出線114は、カソード電極に接続される。
ウェーハ106の一面側の所定箇所に電解めっきを施した後、電解めっき用治具100を取り出して、表面被覆材102及び裏面被覆材104をカッターナイフ等で切り裂くことによって、電解めっきを施したウェーハ106を取り出すことができる。
尚、図9に示す電解めっき槽200では、その底面に設けられた散気管208から気体を噴出し、電解めっき用治具100に対して平行な液流を発生させている。
【特許文献1】特開平8−311689号公報(特許請求の範囲、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図7及び図8に示す電解めっき用治具100によれば、ウェーハ106を電解めっき用治具100内に収容でき、電解めっきを施したウェーハ106を電解めっき用治具100から容易に取り出すことができる。
更に、ウェーハ106のサイズやオリエンテーションフラットの形状等が変更されても、対応する電解めっき用治具100を容易に形成できる。
しかし、図7及び図8に示す電解めっき用治具100では、電解めっき終了後に表面被覆材102及び裏面被覆材104をカッターナイフ等で切り裂いてウェーハ106を取り出しているため、同一サイズで且つ同一外形形状の複数枚のウェーハに電解めっきを施す場合でも、電解めっき用治具100を再使用できず、ウェーハごとに電解めっき用治具100を形成することを要する。
また、ウェーハ106の周縁に沿って配設され、ウェーハ106の電解めっき用バスラインに給電する導電体108は、電解めっき用治具100の一箇所から外方に引出線114として引き出されている。
このため、引出線114との接続箇所に近いウェーハ106の所定箇所に電流密度が集中し、電流密度が集中した領域のめっき被膜が、他のめっき領域のめっき被膜に比較して厚くなり、ウェーハ106の一面側に形成されるめっき被膜の厚さ等にバラツキが発生するおそれがある。
そこで、本発明の課題は、同一のサイズ及び形状の複数枚のウェーハに電解めっきを施す際には、再使用可能であり、他方、ウェーハのサイズ等が変更されても容易に対応でき、且つウェーハの電解めっきを施す一面側の電流密度を可及的に均一とし得る電解めっき用治具及び電解めっき方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記課題を解決すべく検討を重ねた結果、樹脂層の両面が金属箔によって形成された複数枚の両面金属箔基板を多層に積層し、両面が金属箔によって形成された多層基板を電解めっき用治具に用いることによって、再使用可能な電解めっき用治具を容易に形成できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、電解めっきが施される一面側の周縁に電解めっき用バスラインが設けられたウェーハを収容して電解めっきを施す電解めっき用治具において、該電解めっき用治具が、複数枚の基板が積層されて形成された、両面が金属層から成る多層基板であって、前記多層基板に形成されたウェーハ収容孔には、前記ウェーハ収容孔内にウェーハを収容したとき、前記ウェーハの電解めっき用バスラインが形成された周縁部の一面側と当接して前記ウェーハを支承するように、前記ウェーハ収容孔の内壁面に沿って内方に突出する鍔部が形成され、且つ前記鍔部の一面側に形成された、前記電解めっき用バスラインと当接する複数のパッドの各々が、前記多層基板の両面を形成する金属層に電気的に接続されていることを特徴とする電解めっき用治具にある。
また、本発明は、前述した電解めっき用治具を用いて、ウェーハの一面側の所定箇所に電解めっきを施す際に、該ウェーハを、その電解めっきを施す一面側の周縁に形成された電解めっき用バスラインが、前記電解めっき用治具のウェーハ収容孔内の鍔部に形成されたパッドの各々に当接するように、前記ウェーハ収容孔内に挿入した後、前記ウェーハの他面側を含む電解めっき用治具の一面側の全面をフィルムによって覆うと共に、前記電解めっき用治具の他面側の全面を樹脂層で覆い、次いで、前記ウェーハの電解めっきを施す一面側の所定箇所を露出するように、前記樹脂層にパターンニングを施し、その後、電解めっき槽内のめっき液に浸漬した前記電解めっき用治具の多層基板の両面を形成する金属層の少なくとも一方に、めっき電極の一方を接続して、前記ウェーハの所定箇所に電解めっきを施すことを特徴とする電解めっき方法でもある。
【0006】
かかる本発明において、多層基板として、樹脂層の両面が金属箔によって形成された複数枚の両面金属箔基板を、接着材層によって多層に積層して形成した多層基板を好適に用いることができる。
更に、鍔部を、多層基板を形成する基板の一枚に形成することにより、ウェーハの電解めっき用バスラインと当接する複数のパッドを鍔部の一面側に容易に形成できる。
かかる鍔部を形成した基板の他の基板との積層面を、前記鍔部の一面側に形成した各パッドに電気的に接続された金属層によって形成することにより、各パッドの電流密度を可及的に均一とすることができる。
この鍔部の一面側に形成した複数のパッドと多層基板の両面を形成する金属層とを、ヴィア及び基板間に形成された金属層によって電気的に接続することにより、各パッドの電流密度を更に均一とすることができ好適である。
また、多層基板に、複数個のウェーハ収容孔を形成し、前記ウェーハ収容孔の各々に、内方に突出する鍔部を形成することによって、複数個のウェーハを同時に電解めっきを施すことができる。
かかる多層基板のウェーハ収容孔間に、スリットを形成することによって、多層基板が多少曲折されても、ウェーハ収容孔に収容されているウェーハへの損傷を回避できる。
尚、電解めっき用治具の他面側の全面を覆う樹脂層として、感光性樹脂層から成る樹脂層を用いることによって、電解めっき用治具の他面側の全面を覆う樹脂層に対して、ウェーハの電解めっきを施す一面側の所定箇所を露出するように容易にパターンニングを施すことができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る電解めっき用治具では、複数枚の基板が積層されて形成された、両面が金属層から成る多層基板に、ウェーハを収容するウェーハ収容孔を形成しているものである。このため、同一のサイズで且つ形状のウェーハに電解めっきを施す場合には、電解めっき用治具を再使用可能である。
一方、電解めっきを施すウェーハが、ウェーハ収容孔に収容可能のウェーハのサイズ又は形状と相異する場合には、電解めっきを施すウェーハを収容できるウェーハ収容孔を多層基板に形成することによって、形状等の異なるウェーハに対応する電解めっき用治具を容易に形成できる。
また、多層基板のウェーハ収容孔内に形成された、その内方に突出する鍔部は、ウェーハ収容孔に収容するウェーハを、その周縁に電解めっき用バスラインが形成された一面側と当接して支承する。かかる鍔部の一面側には、ウェーハの電解めっき用バスラインと当接する複数のパッドが形成され、各パッドが多層基板の両面を形成する金属層に電気的に接続されている。
この様に、ウェーハの電解めっき用バスラインと当接する複数のパッドの各々が、多層基板の両面を形成する金属層に電気的に接続されているため、各パッドの電流密度を一定にでき、ウェーハの電解めっきを施す所定箇所の電流密度も一定にできる。
また、この様な本発明に係る電解めっき用治具を用いてウェーハの一面側の所定箇所に電解めっきを施すことによって、ウェーハの電解めっきを施す所定箇所の電流密度も一定にできるため、ウェーハの一面側の所定箇所に形成した電解めっき層の厚さ等を一定にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に係る電解めっき用治具の一例を図1に示す。図1に示す電解めっき用治具10は、樹脂層の両面が金属箔としての銅箔によって形成された三枚の両面金属箔基板12a,12b,12c(以下、単に基板12a,12b,12cと称することがある)を積層して形成した多層基板12から成り、多層基板12の両面は金属層としての銅層で形成されている。
かかる多層基板12の中央部には、電解めっきを施すウェーハを収容するウェーハ収容孔14が形成されている。このウェーハ収容孔14は、図2に示す様に、収容するウェーハの外形形状に倣って形成された第1収容孔14aと、第1収容孔14aよりも開口面積が小さい第2収容孔14bとから成る。この第2収容孔14bは、基板12cに形成されており、ウェーハ収容孔14の内方に突出する鍔部16が、基板12cにより形成されている。
かかるウェーハ収容孔14に形成されたフラット部14fはウェーハのオリエンテーションフラットの形状に倣って形成されている。
ウェーハ収容孔14の内方に突出する鍔部16のウェーハの挿入側面には、挿入されるウェーハの一面側の周縁に形成された電解めっき用バスラインに当接するパッド18,18・・が、鍔部16の周方向に間欠的に形成されている。かかるパッド18,18の間は樹脂が露出した樹脂面20に形成されている。
このパッド18,18・・の各々は、多層基板12の両面を形成する金属層としての銅層に電気的に接続されている。
【0009】
かかるパッド18が形成された電解めっき用治具10の部分断面図を図2(a)に示す。図2(a)に示す様に、電解めっき用治具10を形成する基板12a,12b.12cの各々は、樹脂層11bの両面が銅箔11a,11cによって形成されており、基板12a,12b.12cの各基板の接合はプリプレグ13によってなされている。
かかる基板12cには、鍔部16が形成されており、鍔部16のウェーハの挿入側面(内面)に形成されたパッド18は、基板12cの基板12bとの接合面側の銅箔11aの一部が延出されて形成されている。
この基板12bの銅箔11aは、パッド18と多層基板12の外周面との間に設けられたヴィア22によって、多層基板12の両面を形成する銅箔11a、11bに電気的に接続されている。
【0010】
かかる鍔部16の外面側では、銅箔11cが除去されて樹脂層11bが露出しており、鍔部16のパッド18が形成された部分では、その内面側と外面側との構造が異なるため、図2(a)の一点鎖線に示す様に、ウェーハ収容孔14の内方方向への反りが発生することがある。この反りが存在すると、ウェーハ収容孔14にウェーハを収容して、ウェーハをパッド18に押し付けたとき、この押圧力によって鍔部16が反り方向と反対側(外面側)に押し戻され、ウェーハの一面側の周縁に形成された電解めっき用バスラインとパッド18との接続を充分に行なうことができる。
また、パッド18,18の間の樹脂面20が形成された電解めっき用治具10の部分断面図を図2(b)に示す。樹脂面20に形成された鍔部16も基板12cから延出されて形成されており、樹脂面20はプリプレグ13によって形成されている。
【0011】
図1及び図2に示す電解めっき用治具10は、図3に示す工程で製造できる。先ず、図3(a)に示す様に、樹脂層11bの両面が銅箔11a,11cによって形成された両面金属箔基板12a,12b,12cを、プリプレグ13を介して加熱圧着して積層する。
かかる基板12a,12b,12cのうち、基板12cの一面側を形成する銅箔11aには、図4(a)に示す様に、電解めっきを施すウェーハの形状に倣って樹脂層11bの面が露出していると共に、鍔部16を形成する部分(一点鎖線と実線で囲まれた部分)に銅箔11aが延出されたパッド18,18・・が形成されている。
更に、基板12cの他面側を形成する銅箔11cには、図4(b)に示す様に、電解めっきを施すウェーハの形状に倣って樹脂層11bの面が露出している。
かかる基板12cの両面側のパターンニングは、基板12cの両面側に塗布して形成した感光性樹脂層に感光・現像した後、基板12cをエッチング液に浸漬して銅箔11a,11cの所定箇所をエッチングすることによって行なうことができる。
【0012】
図3(a)及び図4に示す基板12a,12b,12cを、プリプレグ13を介して積層して加熱圧着する。加熱圧着した状態を図3(b)に示す。
図3(b)に示す様に、基板12cの銅箔11aをエッチングして除去した部分には、プリプレグ13が充填される。
次いで、図3(c)に示す様に、パッド18と多層基板12の外周面との間にヴィア22を形成する。このヴィア22は、多層基板12の所定箇所にドリル等によって穿設した貫通孔21内に導電性樹脂を充填或いはめっきにより金属を充填することによって形成できる。
その後、図3(d)に示す様に、多層基板12にウェーハ収容孔14を形成すべく、先ず、収容するウェーハの外形形状に倣って基板12a,12bの所定箇所をルータによって研削して第1収容孔14aを形成する。この際に、基板12cに形成したパッド18の表面が露出した時点でルータによる研削加工を終了する。この様に、第1収容孔14aを形成した時点では、基板cの銅箔11aをエッチングによって除去した部分には、プリプレグ13の一部が残っている。
更に、基板12cを銅箔11c側からルータによって研削加工を施し、第2収容孔14bを形成することによって、図1及び図2に示す電解めっき用治具10を得ることができる。
尚、基板12aとしては、両面金属箔基板12aに代えて、銅箔11aのみが形成されている片面金属箔基板を用いることができ、基板12bとしても、両面金属箔基板12bに代えて、樹脂層11bのみから成る樹脂基板を用いることができる。
【0013】
図1及び図2に示す電解めっき用治具10を用いてウェーハの一面側に電解めっきを施す際には、図5(a)に示す様に、多層基板12に形成したウェーハ収容孔14の第1収容孔14a内にウェーハ24を収容する。この際に、ウェーハ24を、その一面側の周縁に形成された電解めっき用バスラインと鍔部16のパッド18とが当接するように、第1収容孔14a内に挿入する。
更に、ウェーハ24の電解めっきを施さない他面側及び多層基板12の一面側の全面を保護フィルム26によって覆うと共に、ウェーハ収容孔14の第2収容孔14bから露出するウェーハ24の一面側及び多層基板12の他面側の全面を感光性のドライフィルム28によって覆う。この保護フィルム26としては、粘着性テープを用いることによって、通常の圧着装置により容易にウェーハ24の他面側及び多層基板12の一面側の全面に圧着できる。感光性のドライフィルム28も、通常の圧着装置によってウェーハ24の一面側及び多層基板12の他面側の全面に圧着できる。
【0014】
次いで、感光性のドライフィルム28に感光・現像を行ない、図5(b)に示す様に、ウェーハ24の電解めっきを施す所定箇所を含む電解めっき面24aのみを露出する。
残ったドライフィルム28は、ウェーハ24の周縁に形成された電解めっき用バスライン等の給電部分を保護する保護フィルムの役割を果たす。
その後、ウェーハ24を図5(a)に示すようにウェーハ収容孔14内に収容した電解めっき用治具10を、図9に示す電解めっき槽200の電解めっき液に浸漬して電解めっきを施す。この電解めっきでは、ウェーハ24の電解めっき面24aのみが露出しているため、電解めっき面24の所定箇所のみに電解めっきを施すことができ、保護フィルム26及びドライフィルム28で覆われている電解めっき用治具10やウェーハ24の周縁には電解めっきが施されることを防止できる。
【0015】
所定の電解めっきを終了した後、電解めっき槽200から電解めっき用治具10を取り出し、保護フィルム26及びドライフィルム28を物理的又は化学的に剥離することによって、所定箇所に電解めっきが施されたウェーハ24を取り出すことができる。
ウェーハ24を取り出した電解めっき用治具10は、簡単な洗浄を施した後、再度、ウェーハ24をウェーハ収容孔14に収容して再使用できる。
また、電解めっき用治具10に収容されたウェーハ24の電解めっき用バスラインには、電解めっき用治具10を形成する金属箔11a,11c及びヴィア22を介して鍔部16に形成されたパッド18,18・・から給電される。このパッド18,18・・は、基板12cを形成する金属箔11aから延出されているため、平均した電流密度で電解めっき用バスラインに当接できる。その結果、ウェーハ24の電解めっきを施す箇所を均一な電流密度とすることができ、均一な電解めっき被膜を形成できる。
ところで、サイズや形状等が異なるウェーハ24に電解めっきを施す場合には、新たな電解めっき用治具10を形成することを要するが、電解めっき用治具10は三枚の両面金属箔基板12a,12b,12cを積層して形成した構造が極めてシンプルなものである。このため、サイズや形状等が異なるウェーハ24を収容し得る電解めっき用治具10を容易に形成できる。
ここで、電解めっき用治具10を構成する多層基板12の側面は露出しており、電解めっきの際に、銅箔11a,11cの端面にめっき金属が付着するものの、銅箔11a,11cの厚さは極めて薄いため、付着めっき金属量も極めて少なく問題とはならない。
但し、多層基板12の側面を樹脂膜等の絶縁膜によって覆い、この側面へのめっき金属の付着を防止してもよい。
【0016】
図1〜図5に示す電解めっき用治具10には、多層基板12に単一のウェーハ収容孔14が形成されていたが、図6に示す様に、多層基板12に複数個のウェーハ収容孔14,14・・を形成してもよい。図6に示す電解めっき用治具10によれば、複数個のウェーハ24に電解めっきを同時に施すことができ、電解めっきを効率化できる。
この様に、複数個のウェーハ収容孔14,14・・が形成された多層基板12は大型化すると、曲折され易くなる。かかる多層基板12の曲折による歪は、ウェーハ収容孔14に収容されているウェーハ24に加えられ、脆いウェーハ24を破損するおそれがある。
このため、図6に示す様に、ウェーハ収容孔14,14間に、直線状のスリット30を形成することが有効である。すなわち、図6に示す多層基板12では、その曲折に因る歪をスリット30の変形によって吸収できるため、ウェーハ収容孔14に収容されているウェーハ24に加えられる歪を可及的に小さくでき、ウェーハ24の破損のおそれを解消できる。
尚、スリット30としては、直線状のスリットの他に、波線状のスリットであってもよく、破線状のスリットであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る電解めっき用治具の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す電解めっき用治具の部分断面図である。
【図3】図1に示す電解めっき用治具の製造工程を説明する説明図である。
【図4】図3(a)に示す基板12cを説明する正面図及び背面図である。
【図5】図1及び図2に示す電解めっき用治具にウェーハを収容する工程を説明する説明図である。
【図6】本発明に係る電解めっき用治具の他の例を示す正面図である。
【図7】従来の電解めっき用治具を説明する斜視図である。
【図8】図8に示す電解めっき用治具の部分断面図である。
【図9】図7に示す電解めっき用治具に収容されたウェーハに電解めっきを施す電解めっき装置の概略を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0018】
10 電解めっき用治具
11a,11c 銅箔
11b 樹脂槽
12 多層基板
12a,12b,12c 両面金属箔基板(基板)
13 プリプレグ
14 ウェーハ収容孔
14f フラット部
16 鍔部
18 パッド
20 樹脂面
21 貫通孔
22 ヴィア
24 ウェーハ
26 保護フィルム
28 ドライフィルム
30 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解めっきが施される一面側の周縁に電解めっき用バスラインが設けられたウェーハを収容して電解めっきを施す電解めっき用治具において、
該電解めっき用治具が、複数枚の基板が積層されて形成された、両面が金属層から成る多層基板であって、
前記多層基板に形成されたウェーハ収容孔には、前記ウェーハ収容孔内にウェーハを収容したとき、前記ウェーハの電解めっき用バスラインが形成された周縁部の一面側と当接して前記ウェーハを支承するように、前記ウェーハ収容孔の内壁面に沿って内方に突出する鍔部が形成され、
且つ前記鍔部の一面側に形成された、前記電解めっき用バスラインと当接する複数のパッドの各々が、前記多層基板の両面を形成する金属層に電気的に接続されていることを特徴とする電解めっき用治具。
【請求項2】
多層基板が、樹脂層の両面が金属箔によって形成された複数枚の両面金属箔基板を、接着材層によって多層に積層して形成されている請求項1記載の電解めっき用治具。
【請求項3】
鍔部が、多層基板を形成する基板の一枚に形成されている請求項1又は請求項2記載の電解めっき用治具。
【請求項4】
鍔部が形成された基板の他の基板との積層面が、前記鍔部の一面側に形成された各パッドに電気的に接続された金属層によって形成されている請求項1〜3のいずれか一項記載の電解めっき用治具。
【請求項5】
鍔部の一面側に形成された複数のパッドと多層基板の両面を形成する金属層とが、ヴィア及び基板間に形成された金属層によって電気的に接続されている請求項1〜4のいずれか一項記載の電解めっき用治具。
【請求項6】
多層基板には、複数個のウェーハ収容孔が形成され、前記ウェーハ収容孔の各々には、内方に突出する鍔部が形成されている請求項1〜5のいずれか一項記載の電解めっき用治具。
【請求項7】
多層基板のウェーハ収容孔間には、スリットが形成されている請求項6記載の電解めっき用治具。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項記載の電解めっき用治具を用いて、ウェーハの一面側の所定箇所に電解めっきを施す際に、
該ウェーハを、その電解めっきを施す一面側の周縁に形成された電解めっき用バスラインが、前記電解めっき用治具のウェーハ収容孔内の鍔部に形成されたパッドの各々に当接するように、前記ウェーハ収容孔内に挿入した後、
前記ウェーハの他面側を含む電解めっき用治具の一面側の全面をフィルムによって覆うと共に、前記電解めっき用治具の他面側の全面を樹脂層で覆い、
次いで、前記ウェーハの電解めっきを施す一面側の所定箇所を露出するように、前記樹脂層にパターンニングを施し、
その後、電解めっき槽内のめっき液に浸漬した前記電解めっき用治具の多層基板の両面を形成する金属層の少なくとも一方に、めっき電極の一方を接続して、前記ウェーハの所定箇所に電解めっきを施すことを特徴とする電解めっき方法。
【請求項9】
樹脂層として、感光性樹脂層から成る樹脂層を用いる請求項8記載の電解めっき方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−307253(P2006−307253A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−128873(P2005−128873)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】