説明

電解めっき膜形成微細物の製造方法およびそれに用いる製造装置

【課題】導電性微細物に効率よく電解めっき膜を形成することができる、電解めっき膜形成微細物の製造方法およびそれに用いる製造装置を提供する。
【解決手段】電解めっき液5に導電性微細物6を分散させた混合液を循環流路に流して循環させるとともに、その循環流路の一部に上記混合液の流れる方向に沿って設けられた、対向する陽極31と陰極32の間に電圧を印加することにより、上記導電性微細物6が上記陰極32に接触した際に、その導電性微細物6に電解めっき膜が形成されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方導電性フィルム(ACF)等の形成材料に含有させる電解めっき膜形成微細物、チップコンデンサ,ダイオード,コネクタ等の微細物に電解めっき膜を形成した電解めっき膜形成微細物の製造方法およびそれに用いる製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
異方導電性フィルム,導電性ペースト,導電性接着剤等には、その導電性を発現するために、各形成材料に導電材が含有されている。この導電材として、例えば、導電性微細物に電解めっき膜を形成した電解めっき膜形成微細物があげられる。
【0003】
上記電解めっき膜形成微細物の製造方法として、つぎのような方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、まず、上記電解めっき膜形成微細物の製造装置として、電解めっき液に導電性微細物を分散させた混合液を収容する容器と、その混合液を循環させる循環流路とを備えた装置を準備する。上記容器の底面には、陰極板が横になって配置され、陽極が上記混合液の液面近くに配置されている。また、循環流路は、容器の側壁から上記混合液を吸い込む吸込管と、その吸い込んだ混合液を容器の底面に向けて吐出する吐出管と、上記混合液を循環させるポンプとを備えており、上記吸込管の吸込口は、上記吐出管の吐出口よりも上方に位置決めされている。そして、上記導電性微細物に電解めっき膜を形成する際には、上記ポンプにより混合液を循環させながら、上記陽極と陰極板との間に電圧を印加する。この状態において、導電性微細物が陰極板と衝突した際に、その導電性微細物に電解めっき膜が形成される。
【特許文献1】特開平1−272792号公報(第5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の方法では、上記混合液を吸い込む吸込管の吸込口が、吐出管の吐出口よりも上方に位置決めされているため、上記混合液の流れは、吐出管の吐出口から下方に排出された後、底面の陰極板との衝突を経て、上方に向きを変え、吸込管の吸込口に吸い込まれる。このため、容器の底面近傍では、上記混合液の下向きの流れと上向きの流れとが存在して乱流となり、上記混合液の循環および導電性微細物と陰極板との衝突が効率よく行われず、電解めっき膜形成微細物の生産効率が悪くなっている。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、導電性微細物に効率よく電解めっき膜を形成することができる、電解めっき膜形成微細物の製造方法およびそれに用いる製造装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、電解めっき液に導電性微細物を分散させた混合液を循環流路に流して循環させるとともに、その循環流路の一部に上記混合液の流れる方向に沿って設けられた、対向する陽極と陰極の間に電圧を印加することにより、上記導電性微細物が上記陰極に接触した際に、その導電性微細物に電解めっき膜が形成されるようにした、電解めっき膜形成微細物の製造方法を第1の要旨とする。
【0007】
また、本発明は、電解めっき液に導電性微細物を分散させた混合液を循環させる循環流路と、この循環流路の一部に上記混合液の流れる方向に沿って設けられた、陽極と陰極とからなる対向電極とを備えている、電解めっき膜形成微細物の製造装置を第2の要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の、電解めっき膜形成微細物の製造方法は、電解めっき液に導電性微細物を分散させた混合液を循環流路に流して循環させるため、その混合液の循環中(電解めっき膜形成微細物の製造中)は、その混合液は攪拌され、均一な状態になっている。しかも、対向する陽極と陰極とが循環流路の一部に上記混合液の流れる方向に沿って設けられているため、陰極部分において混合液の乱流がなく、混合液中の導電性微細物が効率よく陰極に接触する。その結果、導電性微細物に効率よく電解めっき膜を形成することができる。
【0009】
特に、上記陰極が、循環流路の内周面に沿って円筒状に設けられ、上記陽極が、上記円筒状の陰極の中心軸に設けられ、上記円筒状の陰極の中空部が上記混合液の流路になっている場合には、上記混合液が流れる方向において、陽極と陰極との距離が一定となるため、均一な電界が形成され、電解めっき膜の厚みをより簡単に均一に形成することができる。
【0010】
さらに、上記円筒状の陰極の中空部に、上記混合液の渦流を発生させ、その渦流の遠心力により、上記混合液中の導電性微細物を上記円筒状の陰極に接触させる場合には、導電性微細物が陰極に接触する効率がより向上するため、均一な厚みの電解めっき膜をより効率よく形成することができる。
【0011】
本発明の、電解めっき膜形成微細物の製造装置は、電解めっき液に導電性微細物を分散させた混合液を循環させる循環流路と、この循環流路の一部に上記混合液の流れる方向に沿って設けられた、陽極と陰極とからなる対向電極とを備えているため、上記循環流路においては、上記混合液の状態を均一にすることができ、しかも、その混合液の流れを乱すことなく、混合液中の導電性微細物を効率よく陰極に接触させることができる。その結果、導電性微細物に効率よく電解めっき膜を形成することができる。
【0012】
特に、上記対向電極が、円筒状に設けられた陰極と、この円筒状の陰極の中心軸に設けられた陽極とからなり、上記円筒状の陰極の中空部が上記混合液の流路になっている場合には、上記混合液が流れる方向において、陽極と陰極との距離が一定となるため、均一な電界が形成され、電解めっき膜の厚みをより簡単に均一に形成することができる。
【0013】
さらに、上記円筒状の陰極の中空部に至る流路が、その陰極の円筒状と同軸的な鉢状に形成されている場合には、上記混合液の流れに渦流が発生し易くなり、その渦流により、上記混合液中の導電性微細物が陰極に接触する効率がより向上するため、均一な厚みの電解めっき膜をより効率よく形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0015】
図1は、本発明の、電解めっき膜形成微細物の製造装置の一実施の形態を示している。この実施の形態の、電解めっき膜形成微細物の製造装置は、電解めっき液5に導電性微細物6を分散させた混合液を収容する容器1と、この容器1から混合液を吸引して排出するポンプ2と、このポンプ2から排出された混合液に電圧を印加する電極部3とを備えている。そして、混合液は、容器1から、ポンプ2,電極部3をこの順に経て、再度容器1に戻ることにより、循環するようになっており、これが上記混合液の循環流路となっている。
【0016】
より詳しく説明すると、上記容器1は、この実施の形態では、上端面が開口した有底筒状となっている。
【0017】
上記ポンプ2には、吸引管2aと排出管2bとが接続されており、そのうち吸引管2aの先端部は、上記容器1内の混合液中に位置決めされ、排出管2bの先端部は、上記電極部3の上部の下記鉢状部分3a内に位置決めされている。そして、上記ポンプ2が、上記混合液の循環駆動源となっている。
【0018】
上記電極部3は、この実施の形態では、上部が鉢状に形成され、それに連通して、下部が円筒状に形成されている。そして、下部の円筒状部分3bには、内周面に円筒状の陰極32が設けられており、その中心軸に、棒状の陽極31が設けられている。上記陰極32としては、特に限定されないが、例えば銅箔等があげられ、陽極31としては、白金等があげられる。また、上記陽極31と陰極32との間で均一な電界が得られ、均一な厚みのめっき膜が形成されるようにする観点から、陽極31と陰極32の軸方向の長さは同じであることが好ましい。さらに、上記陽極31と陰極32との間に形成される電界に影響を与えないよう、上記電極部3のうち、上記陽極31および陰極32以外の部分(上部の鉢状部分3aおよび下部の円筒状部分3b)は、ポリ塩化ビニル等の絶縁性材料で形成されている。なお、図1において、符号4は、上記陽極31と陰極32との間に印加する電圧の電源である。
【0019】
また、上記電極部3の寸法は、循環させる上記混合液の量等により適宜設定され、特に限定されるものではないが、例えば、上部の鉢状部分3aにより、下部の円筒状部分3b(円筒状の陰極32部分)に、上記混合液の渦流を発生させ、その渦流の遠心力により、混合液中の導電性微細物6を円筒状の陰極32に接触させ易くする観点から、上部の鉢状部分3aの内面の傾斜角度は水平から30〜70°の範囲内、鉢状部分3aの深さと上端開口の内径との比率は、1:(0.5〜1.4)の範囲内、鉢状部分3aの深さと下部の円筒状部分3bの長さ(陽極31および陰極32の長さ)の比率は、1:(0.5〜10)の範囲内、円筒状部分3bの内径は鉢状部分3aの上端開口の内径の1/10〜1/3の範囲内であることが好ましい。
【0020】
つぎに、上記電解めっき膜形成微細物の製造に用いる混合液(電解めっき液5,導電性微細物6)の材料等について説明する。
【0021】
上記電解めっき液5としては、例えば、銅めっき液,金めっき液,錫−亜鉛めっき液等があげられ、これらは市販品として購入することができる。
【0022】
上記導電性微細物6としては、その表面の少なくとも一部に導電性が付与された微細物であれば、特に限定されるものではなく、例えば、非導電性微細物の表面に、無電解ニッケルめっき膜等を形成する等することにより、導電性を付与したもの、金属粒子等それ自身が導電性を有するもの、チップコンデンサ,ダイオード,コネクタ等の電子部品等があげられる。上記非導電性微細物は市販品として購入することができ、その材質は、特に限定されるものではなく、例えば、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物,ポリメタクリル酸メチル系架橋物,ポリスチレン架橋物等の有機微細物、シリカ,酸化チタン等の無機微細物等があげられる。上記非導電性微細物の外径は、特に限定されないが、微細配線間を接続するという観点から、0.5〜50μmの範囲内が好ましい。
【0023】
つぎに、上記電解めっき膜形成微細物の製造装置および混合液を用いた電解めっき膜形成微細物の製造方法について説明する。
【0024】
まず、上記容器1に、所定量の混合液を入れる。ついで、ポンプ2を作動させるとともに、電極部3の陽極31と陰極32との間に電圧を印加する。これにより、混合液が循環し、混合液中の導電性微細物6が陰極32に接触した際に、その導電性微細物6の表面に電解めっき膜が形成される。そして、所定の時間循環させた後、ポンプ2を止めるとともに、陽極31と陰極32との間の電圧を切る。その後、上記混合液をろ過し、導電性微細物6の表面に電解めっき膜が形成された電解めっき膜形成微細物を回収する。
【0025】
特に、この実施の形態では、上記電極部3の上部に鉢状部分3aが形成されているため、その鉢状部分3aに上記混合液が流れることにより、下部の円筒状部分3b(円筒状の陰極32部分)に、その円筒状部分3b(円筒状の陰極32部分)と同軸的に上記混合液の渦流が発生し、その渦流による遠心力が混合液中の導電性微細物6に作用し、その導電性微細物6が円筒状の陰極32に接触し易くなっている。これにより、電解めっき膜の形成がより効率よくなっている。
【0026】
上記製造方法において、形成する電解めっき膜の厚みは、特に限定されないが、接続信頼性と生産性の観点から、0.5〜3.0μmの範囲内であることが好ましい。また、めっき処理時間は、形成する電解めっき膜の厚みによって決まるが、その厚みが上記範囲内(0.5〜3.0μm)であれば、20分間〜3時間の範囲内である。また、ポンプ2から排出される混合液の流速は、装置の大きさ(流路径等)等によって決まり、特に限定されないが、例えば、好ましくは1〜200m/分の範囲内、より好ましくは30〜120m/分の範囲内に設定される。1m/分を下回ると、混合液の渦流が発生し難く、200m/分を上回ると、鉢状部分3aから溢れるおそれがあるからである。
【0027】
なお、電解めっき膜形成微細物の製造装置は、上記実施の形態のものに限定されるものではない。例えば、上記実施の形態では、陰極32を円筒状、陽極31を棒状としたが、陰極32も陽極31も平板状でもよい。また、電極部3の上部に鉢状部分3aは設けなくてもよい。さらに、ポンプ2に接続されている排出管2bの先端部に直接、電極部3の円筒状部分3b(陰極32および陽極31が設けられている部分)を接続してもよい。
【0028】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。但し、本発明は、実施例に限定されるわけではない。
【実施例1】
【0029】
〔非導電性微細物〕
非導電性微細物として、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物(日本触媒社製、M05:平均粒径5μm)を3g準備した。
【0030】
〔非導電性微細物の導電化〕
上記非導電性微細物に無電解ニッケルめっき膜を形成し、導電性微細物を作製した。
【0031】
〔電解めっき膜形成微細物の製造装置〕
図1に示す製造装置を準備した。この製造装置において、円筒状の陰極(銅箔)および棒状の陽極(白金)の軸方向の長さをいずれも80mm、陰極の内径を10mm、陽極の外径を3mmとした。また、ポンプによる循環流路の流速を67m/分とした。
【0032】
〔電解めっき膜形成微細物の製造方法〕
錫−亜鉛電解めっき液800mLに上記導電性微細物を混合し、この混合液を上記製造装置の容器に入れた後、ポンプを作動させるとともに、陽極と陰極との間に電圧5.5V、電流1Aを印加した。この状態で上記混合液を2時間循環させた。その後、上記混合液をろ過し、導電性微細物の表面に錫−亜鉛電解めっき膜が形成された電解めっき膜形成微細物を得た。この電解めっき膜形成微細物の中の任意の50個について、錫−亜鉛電解めっき膜の厚みをレーザ回折/散乱式粒度分布測定機(堀場製作所社製、LA−910)により測定した結果、いずれも厚み1μm程度の均質な錫−亜鉛電解めっき膜が形成されていた。
【実施例2】
【0033】
〔アルミナ微細物の導電化〕
アルミナ微細物〔0.3mm×0.2mm×0.2mm(厚み)〕を準備し、その片側(0.1mm)に銀ペーストを塗布し、導電性アルミナ微細物を作製した。
【0034】
〔電解めっき膜形成アルミナ微細物の製造装置〕
図1に示す製造装置を準備した。この製造装置において、円筒状の陰極(銅箔)および棒状の陽極(白金)の軸方向の長さをいずれも80mm、陰極の内径を18mm、陽極の外径を3mmとした。また、ポンプによる循環流路の流速を100m/分とした。
【0035】
〔電解めっき膜形成アルミナ微細物(チップコンデンサ)の製造方法〕
錫−亜鉛電解めっき液800mLに上記導電性アルミナ微細物を混合し、この混合液を上記製造装置の容器に入れた後、ポンプを作動させるとともに、陽極と陰極との間に電圧6.0V、電流1Aを印加した。この状態で上記混合液を2時間循環させた。その後、上記混合液をろ過し、上記導電性アルミナ微細物の表面に錫−亜鉛電解めっき膜が形成された電解めっき膜形成アルミナ微細物を得た。この電解めっき膜形成アルミナ微細物の中の任意の50個について、錫−亜鉛電解めっき膜の厚みをレーザ回折/散乱式粒度分布測定機(堀場製作所社製、LA−910)により測定した結果、いずれも厚み1μm程度の均質な錫−亜鉛電解めっき膜が形成されており、その錫−亜鉛電解めっき膜は、上記銀ペーストが塗布された部分以外には形成されていなかった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の、電解めっき膜形成微細物の製造装置の一実施の形態を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0037】
5 電解めっき液
6 導電性微細物
31 陽極
32 陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解めっき液に導電性微細物を分散させた混合液を循環流路に流して循環させるとともに、その循環流路の一部に上記混合液の流れる方向に沿って設けられた、対向する陽極と陰極の間に電圧を印加することにより、上記導電性微細物が上記陰極に接触した際に、その導電性微細物に電解めっき膜が形成されるようにしたことを特徴とする、電解めっき膜形成微細物の製造方法。
【請求項2】
上記陰極が、循環流路の内周面に沿って円筒状に設けられ、上記陽極が、上記円筒状の陰極の中心軸に設けられ、上記円筒状の陰極の中空部が上記混合液の流路になっている請求項1記載の、電解めっき膜形成微細物の製造方法。
【請求項3】
上記円筒状の陰極の中空部に、上記混合液の渦流を発生させ、その渦流の遠心力により、上記混合液中の導電性微細物を上記円筒状の陰極に接触させる請求項2記載の、電解めっき膜形成微細物の製造方法。
【請求項4】
電解めっき液に導電性微細物を分散させた混合液を循環させる循環流路と、この循環流路の一部に上記混合液の流れる方向に沿って設けられた、陽極と陰極とからなる対向電極とを備えていることを特徴とする、電解めっき膜形成微細物の製造装置。
【請求項5】
上記対向電極が、円筒状に設けられた陰極と、この円筒状の陰極の中心軸に設けられた陽極とからなり、上記円筒状の陰極の中空部が上記混合液の流路になっている請求項4記載の、電解めっき膜形成微細物の製造装置。
【請求項6】
上記円筒状の陰極の中空部に至る流路が、その陰極の円筒状と同軸的な鉢状に形成され、その鉢状の流路部分により、上記混合液の流れに渦流を発生させるようになっている請求項5記載の、電解めっき膜形成微細物の製造装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−297574(P2008−297574A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−142418(P2007−142418)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【出願人】(597157716)日鉱商事株式会社 (5)
【Fターム(参考)】