説明

電解めっき装置およびめっき方法

【課題】安定的に貫通孔内にめっきを行うことができる電解めっき装置およびめっき方法を提供すること。
【解決手段】電解めっき装置は、陽極21と、導電層12に接続される陰極(図示略)と、基材1の絶縁層11の他面を、電解めっき液Lを挟んで陽極21と対向させ、貫通孔111から露出する導電層12の一部に電解めっき液Lを接触させながら、陽極21上および電解めっき液L上で基材1を搬送する搬送部20とを備える。搬送部20は、少なくとも基材1の導電層12の周縁部の一部が上方側に反るように、前記基材1を保持しながら基材1を搬送するように構成されている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解めっき装置およびめっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導電層を有する基材等にめっきを行う際、基材を電解めっき液に浸漬させていた。
たとえば、回路基板は次のように製造されている(特許文献1、2参照)。
はじめに、絶縁層と、この絶縁層の一方の面に形成された第一金属膜(導電層)とを有する基材を用意する。そして、基材の前記絶縁層に、レーザ等で孔を形成する。次に、第一金属膜をマスクで被覆する。その後、基材をめっき液に浸し、電解めっきを行う。これにより、第一金属膜のうち孔から露出した第一金属膜表面にめっきが析出し、孔中にビアが形成されることとなる。その後、絶縁層の他方の面側に第二金属膜を形成し、第一金属膜、第二金属膜をそれぞれエッチング等で加工することで、回路層を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−188985号公報
【特許文献2】特開2005−272874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように従来は、基材を電解めっき液に浸漬させていため、第一金属膜(導電層)表面のみならず、導電層側面にめっきが析出することがあった。導電層の側面にめっきが析出することで、導電層表面の所望の領域に安定的にめっきを析出させることが難しい場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、
導電層を有する基材を陽極上および電解めっき液上で搬送しながら前記基材に電解めっきを行うための電解めっき装置であって、
前記陽極と、
前記導電層に接続される陰極と、
前記基材の導電層表面を前記電解めっき液を挟んで前記陽極と対向させ、前記導電層表面を前記電解めっき液に接触させながら、前記陽極上かつ前記電解めっき液上で前記基材を搬送する搬送部とを備え、
前記搬送部は、少なくとも前記基材の導電層の周縁部の一部が前記電解めっき液側とは反対側に反るように、前記基材を保持しながら前記基材を搬送するように構成されている電解めっき装置が提供される。
【0006】
本発明では、基材の導電層表面を陽極と対向させ、導電層表面に電解めっき液を接触させながら、基材を電解めっき液上で搬送する。この際、搬送部は、少なくとも基材の導電層の周縁部の一部が陽極とは反対側、すなわち、電解めっき液とは反対側に反るように、基材を保持しながら基材を搬送するため、少なくとも基材の導電層の周縁部の一部には、電解めっき液が接触しにくくなる。これにより、陽極と反対側に反った導電層の周縁部側面に電解めっき液が付着し、導電層の側面にめっきが析出してしまうことを抑制できる。これにより、導電層表面に安定的にめっきを施すことができる。
【0007】
また、本発明によれば、上述した電解めっき装置を使用しためっき方法も提供できる。
すなわち、本発明によれば、上述した電解めっき装置を使用して電解めっきを行うめっき方法であって、
導電層を有する基材を用意する工程と、
前記基材の導電層表面を電解めっき液を介して前記陽極と対向させ、前記導電層表面を前記電解めっき液に接触させながら、前記陽極上かつ前記電解めっき液上で前記基材を搬送する工程と、を含み、
基材を搬送する前記工程では、少なくとも前記基材の前記導電層の周縁部の一部が前記電解めっき液側とは反対側に反るように、前記基材を保持しながら、前記陽極および電解めっき液上で前記基材を搬送するめっき方法も提供できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、安定的にめっきを行うことができる電解めっき装置およびめっき方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態にかかる電解めっき装置を示す平面図である。
【図2】図1のII-II方向の断面図である。
【図3】図1のIII-III方向の断面図である。
【図4】電解めっき装置の支持部材を示す図である。
【図5】基材を示す断面図である。
【図6】本発明の変形例にかかる陽極を示す平面図である。
【図7】本発明の変形例にかかる電解めっき装置の要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
はじめに、図1〜3を参照して、本実施形態の電解めっき装置の概要について説明する。
図1は、電解めっき装置2の平面図であり、図2は、図1のII-II方向の断面図であり、図3は、図1のIII-III方向の断面図である。
本実施形態の電解めっき装置2は、貫通孔111が形成された絶縁層11と、この絶縁層11の一面に設けられ、貫通孔111の一方の開口を塞ぐ導電層12とを有する基材1を陽極21上で搬送しながら、貫通孔111内に電解めっきを行うための電解めっき装置である。
電解めっき装置2は、陽極21と、導電層12に接続される陰極(図示略)と、基材1の絶縁層11の他面を、電解めっき液Lを挟んで陽極21と対向させ、貫通孔111から露出する導電層12表面の一部に電解めっき液Lを接触させながら、陽極21上および電解めっき液L上で基材1を搬送する搬送部20とを備える。搬送部20は、少なくとも基材1の導電層12の周縁部の一部が上方側に反るように、前記基材を保持しながら基材1を搬送するように構成されている。
【0011】
次に、電解めっき装置2のめっき対象となる基材1について説明する。
この基材1は、図5に示すように、貫通孔111が形成された絶縁層11と、導電層12と備える。
基材1は、たとえば、フレキシブル回路基板となるものである。
絶縁層11は、たとえば、ポリイミドフィルムであり、厚みは10μm〜200μm程度である。
絶縁層11には、表裏面を貫通する複数の貫通孔111が形成されている。この貫通孔111は、絶縁層11の表面(一面)側から裏面(他面)側に向かって径が大きくなるように形成されており、断面テーパ形状である。
絶縁層11の一面側には、複数の貫通孔111の開口を塞ぐ導電層12が設けられている。導電層12は、金属膜であり、たとえば、銅膜である。
導電層12の厚みは、たとえば、5〜50μmである。
本実施形態では、基材1は、平面矩形形状であり、平面視した際に、基材1の全周縁部がめっき槽24の内側に収まる大きさであり、陽極21上で搬送可能な大きさである。
【0012】
次に、電解めっき装置2について詳細に説明する。
この電解めっき装置2は、基材1を1枚づつ電解めっきする枚葉式の装置である。
図1〜4に示すように、本実施形態の電解めっき装置2は、図示しない陰極と、陽極21と、電解めっき液供給部23と、電解めっき液Lが充填されためっき槽24と、搬送部20と、支持部材26とを備える。
【0013】
めっき槽24には、電解めっき液L、たとえば、硫酸銅等の電解めっき液が充填されている。
陽極21は、めっき槽24中の電解めっき液L中に浸漬されておらず、めっき槽24中の電解めっき液Lの液面よりも上方に配置される。
ここで、陽極21は、溶解性の陽極であってもよく、不溶性の陽極であってもよい。
陽極21は、複数の金属板(陽極部)211で構成され、基材1の搬送方向(図1〜3のx方向)および搬送方向と直交する方向(図1〜3のy方向)に配置されている。たとえば、金属板211は、基材1の搬送方向を「行」、搬送方向と直交する方向を「列」とした場合、10行×2列で配置されている。
各金属板211は、図4に示すような支持部材26で支持され、基材1の搬送方向(x方向)に沿って隣り合う金属板211同士、基材1の搬送方向と直交する方向(y方向)に隣り合う金属板211同士は、離間配置されている。
図4(A)は、支持部材26の平面図であり、図4(B)は、図4(A)のIV-IV方向の断面図である。
支持部材26は、たとえば、絶縁性の材料で構成され、金属板211をはめ込むための凹部261が形成されている。この支持部材26には、中央に、基材1の搬送方向に沿って延在する貫通溝262が形成されている。この貫通溝262は、基材1の搬送方向と直交する方向に隣り合う金属板211間に位置し、この貫通溝262を介して電解めっき液Lが基材1側に供給される。
図1および図2に示すように陽極21の幅W1(本実施形態では、基材1の搬送方向に直交する方向に並んだ2枚の金属板211間の隙間および2枚の金属板211の幅の合計値)は、基材1の幅W2(基材1の搬送方向と直交する方向の長さ)よりも小さい。
さらに、本実施形態では、支持部材26の幅W3(基材搬送方向と直交する方向の長さ)は、基材1の幅W2よりも小さい。
また、めっき槽24上部側からの平面視において、基材搬送方向と直交する方向に並んだ金属板211間の隙間、すなわち、貫通溝262は、基材1の搬送方向と直交する方向の幅W2の略中央に位置する。
ここで、図2に示すように、基材1を陽極21上に搬送し、基材1と陽極21とを対向させた状態において、金属板211の直上に位置する基材1の導電層12と、金属板211との間の距離Hは、0.1mm以上であることが好ましい。
0.1mm以上とすることで、基材1と陽極21との物理的な接触が避けられ、電流集中によるめっき焼けの現象が防止されるという効果がある。
なお、距離Hの上限値は特に限定されないが、たとえば、1000mm以下であることが好ましい。
【0014】
搬送部20は、基材1の絶縁層11の他面を陽極21と対向させた状態で、基材1を陽極21上で搬送するものである。
搬送部20は、図3に示すように、基材1を吸着保持する保持部201と、保持部201に接続された接続部202と、接続部202に接続されたローラ203とを備える。保持部201、接続部202、ローラ203はいずれも導電材料、たとえば金属で構成される。
保持部201は図3に示すように、断面台形形状であり、基材1の導電層12に真空吸着する。保持部201は、陽極21に対向する平面矩形形状の対向面201Aと、対向面201Aの搬送方向先端部から上方に向かって延在する延在面201Bと、対向面201Aの搬送方向後端部から上方に向かって延在する延在面201Cとを備える。
基材1の導電層12が搬送部20の対向面201Aおよび一対の延在面201B,201Cに沿って吸着保持される。すなわち、搬送部20は、基材1の搬送方向先端側部分および搬送方向後端側部分が上方(陽極21と反対側)に反るように基材1を保持することとなる。
【0015】
接続部202は、ローラ203と保持部201とを接続するものである。
ローラ203は、図3に示すように、陰極に接続されたレール29上を転がり、ローラ203がレール29上を転がることで、基材1が陽極21上で搬送されることとなる。また、レール29、ローラ203、接続部202、保持部201を介して、基材1の導電層12が図示しない陰極に電気的に接続されることとなる。
【0016】
図2に示すように、電解めっき液供給部23は、めっき槽24中の電解めっき液Lをめっき槽24上部に配置される基材1に向かって供給するものである。電解めっき液供給部23は、たとえば、ポンプPおよびポンプPに接続された配管Mで構成される。
電解めっき液供給部23から排出された電解めっき液Lは、金属板211間の隙間(すなわち、貫通溝262)を介して、基材1に向かって供給される。
そして、図2に示すように、電解めっき液Lは、基材1の絶縁層11と、各金属板211との間を流れ、各金属板211の外側の端部(基材1の搬送方向と直交する方向の端部)側から下方に向かって、自重により落下することとなる。
なお、電解めっき液供給部23の配管Mを複数設け、貫通溝262の長手方向全体にわたって、電解めっき液Lが供給される構造としてもよく、また、図7に示すように、貫通溝262の下方に、貫通溝262の長手方向に沿って配置される複数の貫通穴281が形成された板材28を配置し、複数の貫通穴281および貫通溝262を介して、貫通溝262の長手方向全体にわたって、電解めっき液Lが供給される構造としてもよい。
なお、図7は、支持部材26の断面図に板材28を追加した断面図である。また、図7の矢印は、電解めっき液Lの流れを示す。
【0017】
図3に示す制御部27は、各金属板(陽極部)211と、陰極(図示略)との間に流れる電流を制御するためのものである。本実施形態では、制御部27は、金属板211と、陰極(図示略)との間に配置された抵抗である。
なお、本実施形態では、基材1搬送方向と直交する方向にならぶ2枚の金属板211のうち、一方の金属板211と陰極(図示略)との間に流れる電流値、他方の金属板211と陰極(図示略)との間に流れる電流値は同じものとする。
本実施形態では、貫通孔111は、一方の開口側(導電層12側の開口)から他方の開口側に向かって拡径するテーパ状である。従って、貫通孔111内部へのめっきが進むにつれて、めっき面積は、大きくなる。そのため、たとえば、基材搬送方向先端側に向かって、各金属板211と陰極との間に流れる電流量を大きくするように制御部27により制御すれば、被めっき面における電流密度を略均一なものとすることができる。すなわち、貫通孔111は、順次各金属板211と対向するが、貫通孔111がそれぞれの金属板211と対向した各状態において貫通孔111の被めっき面の電流密度が略同じとなる。
具体的には、基材搬送方向先端側の制御部27である抵抗の値を、基材搬送方向基端側の制御部27である抵抗の値よりも小さくする。
これにより、所望のめっき膜を得ることができる。
【0018】
なお、各陽極部211と陰極との間に流れる電流値は、基材搬送方向先端側に向かって大きくなるように設定されるとしたが、これに限られず、めっき膜の成長段階に応じて、所望の電流密度となるように、制御部27としての抵抗の値を制御してもよい。
【0019】
次に、以上のような電解めっき装置2を使用しためっき方法について説明する。
はじめに、本実施形態のめっき方法の概要について説明する。
本実施形態のめっき方法は、基材1を用意する工程と、陽極21および電解めっき液L上で基材1を搬送するとともに、絶縁層11の他面と陽極21とを対向させ、貫通孔111から露出する導電層12の一部に電解めっき液Lを接触させながら、前記貫通孔111内にめっき膜を形成する工程とを含む。
基材1を搬送する前記工程では、少なくとも基材1の導電層12の周縁部の一部が陽極21と反対側に反るように、前記基材1を保持しながら、陽極21および電解めっき液L上で基材1を搬送する。
【0020】
次に、本実施形態のめっき方法について詳細に説明する。
はじめに、基材1を用意する。なお、電解めっきの前段では、基材1の脱脂が行われる。
基材1がめっき槽24上に供給される前段において、制御部27により、各陽極部211と陰極との間に流れる電流値を調整しておく。たとえば、基材搬送方向基端側から先端側に向かって陰極と陽極部211との間に流れる電流値が大きくなるように制御部27で電流値を調整しておく。
【0021】
次に、基材1を搬送部20に保持させる。
具体的には、基材1の導電層12を保持部201に吸着させ、基材1の搬送方向先端部および搬送方向後端部を上方に反らせる。
その後、搬送部20により基材をめっき槽24上で搬送する。このとき、めっき槽24中の電解めっき液Lを、陽極21側から、基材1に向かって上方に供給する。電解めっき液Lは、陽極21の基材搬送方向と直交する方向に並ぶ金属板211間に形成された隙間(本実施形態では、貫通溝262)を介して、基材1の絶縁層11の他面と金属板211との間に供給される。この電解めっき液Lは、絶縁層11の貫通孔111内にも供給される。これにより、金属板211と絶縁層11との間の隙間および貫通孔111内は、電解めっき液Lで充填され、電解めっき液Lは、金属板211と、貫通孔111から露出する導電層12とに接触し、貫通孔111内部にめっきが析出することとなる。
なお、基材1がめっき槽24上部を通過する間、貫通溝262からは、連続的に電解めっき液Lが供給される。そのため、基材1は電解めっき液L上を移動することとなる。また、基材1がめっき槽24の上部を通過する間は、金属板211と絶縁層11との間の隙間および貫通孔111内が電解めっき液Lで満たされた状態が維持されることとなる。
【0022】
基材1の絶縁層11の他面と金属板211との間に供給された電解めっき液Lは、図2に示すように、金属板211の外側の端部(貫通溝262側と反対側の端部)側から、絶縁層11の他面よりも下方に、自重により落下することとなる。
ここで、前述したように、陽極21の幅W1は、基材1の幅W2よりも小さく、めっき槽24上方からの平面視において、基材1の端部が、陽極21の端部よりも、基材搬送方向と直交する方向(外方)に突出している。さらに、本実施形態では、陽極21を支持する支持部材26の幅W3も、基材1の幅W2よりも小さく、基材1の端部が支持部材26からも外方に突出している。
そのため、基材1の絶縁層11の他面と金属板211との間に供給された電解めっき液Lは、絶縁層11上の導電層12の端部や側面に接触することなく、めっき槽24側に落下し、めっき槽24で回収される。これにより、導電層12に、めっきが析出してしまうことを抑制することができる。
【0023】
なお、めっき槽24で回収した電解めっき液Lは、再度、電解めっき液供給部23により、貫通溝262から、基材1側に向かって流されることとなる。
めっき槽24では、図示しないが、調整手段により、定期的に電解めっき液Lを分析し、電解めっき液L中の各成分の濃度を調整してもよい。
【0024】
前述したように、制御部27により、各陽極部211と陰極との間に流れる電流値は、調整されている。たとえば、基材搬送方向基端側に最も近い位置に配置された陽極部211と陰極との間には、0.1iの電流が流れるように制御部27で制御されている。基材搬送方向基端側に2番目に近い位置に配置された陽極部211と陰極との間には、0.2iの電流が流れるように制御部27により制御する。そして、基材搬送方向先端側にむかって0.1iづつ電流値が多くなるように制御部27で制御する。
【0025】
本実施形態では、基材1は、停止することなく、陽極21上を通過する。基材1が陽極21上を通過する間に貫通孔111内にめっきが施される。ただし、基材1は、陽極21上で一時停止しながら、複数の陽極部211上を通過してもよい。
貫通孔111内部にめっきが施された基材1は、水洗され、基材1が完成する。
その後、必要に応じて、基材1を切断し、基材1の絶縁層11の他面側に金属膜を貼り付ける。その後、導電層12および前記金属膜を選択的に除去して回路層を形成し、回路基板を得る。この回路基板はフレキシブル回路基板である。
【0026】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態では、基材1をめっきする際に、基材1の搬送方向先端側部分および搬送方向後端側部分が上方(陽極21および電解めっき液と反対側)に反るように基材1が搬送部20に保持され、電解めっき液L上を移動する。
そのため、基材1の導電層12の搬送方向先端側部分および搬送方向後端側部分、すなわち、基材搬送方向と対向する一対の側面に電解めっき液Lが接触することが抑制できる。
【0027】
これに加え、本実施形態では、めっきを行う際、絶縁層11の他面と陽極21との間の電解めっき液Lを、基材1の搬送方向と直交する側から、絶縁層11の他面よりも下側に流しているので、導電層12の基材搬送方向に沿った側面に電解めっき液Lが付着し、導電層12の基材搬送方向に沿った側面にめっきが析出してしまうことを抑制できる。
すなわち、本実施形態では、導電層12の全側面にめっきが析出してしまうことを防止できるので、貫通孔111内部に安定的にめっきを施すことができる。
特に、本実施形態では、基材1と陽極21とを対向させた際に、陽極21の幅W1は、基材1の幅W2よりも小さく、めっき槽24上方からの平面視において、基材1の端部が、陽極21の端部よりも、基材搬送方向と直交する方向(外方)に突出している。さらに、本実施形態では、陽極21を支持する支持部材26の幅W3も、基材1の幅W2よりも小さく、基材1の端部が支持部材26からも外方に突出している。
従って、陽極21と、絶縁層11との間の電解めっき液Lが、絶縁層11の端部に接触せずに、めっき槽24側に排出されることとなるので、導電層12の側面にめっきが析出してしまうことを確実に抑制できる。
従来の製造方法では、絶縁層の孔内にめっき法により、ビアを形成する際、第一金属膜の側面が露出していると第一金属膜の側面にめっきが析出してしまっていた。この場合には、第一金属膜側面の面積が本来めっきを析出させるべき孔面積に比較して非常に大きいためめっきの析出が優先的に進行し、孔内部にめっきがつきにくくなる。特に孔の径が非常に小さいような場合には、このような現象は顕著であった。
これに対し、本実施形態では、上述したように、導電層12の側面にめっきが析出してしまうことを確実に抑制できるので、貫通孔111内部に確実にめっきを施すことが可能となる。
【0028】
また、前述したような従来の製造方法では、第一金属膜側面にめっきが析出してしまうという課題があった。この課題を解決するために、例えば、基材が非連続状形状の場合には、第一金属膜側に樹脂などの絶縁体板を当てたうえで、回路基板の外周を絶縁体の粘着テープなどで封止することにより第一金属膜側面をめっき液から隔離をしてめっきをおこなう方法が考えられる。
しかしながら、この方法は、めっき前に粘着テープの貼り付け、さらにめっき後の引き剥がし作業に多くの手間がかかり生産性が向上しない問題があった。
これに対し、本実施形態では、基材1の絶縁層11の他面(導電層が設けられた面と反対側の面)と、陽極21との間に電解めっき液Lを流し、貫通孔111内にめっき膜を形成している。そして、電解めっき液Lを絶縁層11の他面よりも下方に排出している。さらに、基材1をめっきする際に、基材1の搬送方向先端側部分および搬送方向後端側部分が上方(陽極21と反対側)に反るように基材1が搬送部20に保持されている。
これにより、絶縁層11の一面に設けられた導電層12の側面や導電層12の絶縁層11と反対側の面には、電解めっき液Lが接触しないので、導電層12をマスク等で被覆しなくてもよい。そのため、絶縁層11の貫通孔111内へのめっき処理にかかる手間を省くことができ、効率よくめっきを行うことができる。
【0029】
また、本実施形態では、制御部27により、各陽極部211と陰極との間に流れる電流値を調整している。本実施形態では、基材搬送方向先端側に向かって、各陽極部211と陰極との間に流れる電流量を大きくするように制御部27により制御している。
ここで、基材1の貫通孔111は、一方の開口側(導電層12側の開口)から他方の開口側に向かって拡径するテーパ状である。従って、貫通孔111内部へのめっきが進むにつれて、めっき面積は、大きくなる。そのため、基材搬送方向先端側に向かって、各陽極部211と陰極との間に流れる電流量を大きくするように制御部27により制御すれば、被めっき面における電流密度を略均一なものとすることができる。これにより、所望のめっき膜を得ることができる。
【0030】
さらに、本実施形態では、電解めっき液Lを、陽極21を構成する金属板211間の隙間(本実施形態では貫通溝262)から、基材1側に向かって上方に流している。このようにすることで、基材1の絶縁層11と陽極21との間に電解めっき液Lを安定的に流すことができる。
【0031】
さらに、本実施形態では、陽極21の基材搬送方向と直交する方向に隣り合う金属板211間の隙間の位置(本実施形態では、貫通溝262)が、基材1の幅W2方向の略中心位置にあるので、電解めっき液Lを貫通溝262から、基材1の端部側(基材搬送方向に沿った端部側)に略均等に流すことができ、めっきを安定的に実施することができる。
【0032】
また、本実施形態では、陽極部211を絶縁性の支持部材26にはめ込んでいる。これにより、基材搬送方向に隣接する陽極部211同士が絶縁されることとなるので、各陽極部211と陰極との間に流れる電流値を所望の電流値とすることができる。
【0033】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
たとえば、前記実施形態では、陽極21を複数枚の金属板211で構成していたが、これに限られるものではない。たとえば、図6に示すように、陽極210を一枚の金属板212で構成してもよい。このようにすることで、めっき装置の構成を簡略化することができる。この場合には、金属板212に貫通孔212Aを形成して、貫通孔212Aから電解めっき液Lを基材1側に供給すればよい。
【0034】
また、前記実施形態では、貫通孔111は断面テーパ状であるとしたが、これに限られず、貫通孔111の一方の開口から、他方の開口に向かって径が均等である形状、たとえば、円柱状としてもよい。
【0035】
さらに、前記実施形態では、各陽極部211と陰極との間に流れる電流値は、基材搬送方向先端側に向かって大きくなるように設定されるとしたが、これに限られない。
たとえば、絶縁層の厚みが非常に厚く、貫通孔の開口径に比べ、貫通孔の深さ寸法が非常に大きい場合、めっき初期においては、めっき液中の金属イオンが貫通孔内部にまで到達しにくくなる。そのため、電流密度が高い場合には、水素等のガスにより、めっき膜中にボイドが形成されてしまうことがある。そこで、めっき初期においては、電流密度を低くする。
貫通孔の開口付近まで、めっき膜が形成されためっき後期においては、被めっき面への金属イオンの供給が円滑になるので、めっき速度をあげるために、電流密度を高くする。
このようにめっき膜の成長段階に応じて、各陽極部211、陰極間に流れる電流値を制御してもよい。
【0036】
また、前記実施形態では、めっき槽24から電解めっき液Lを基材1へ向けて、噴出させていたたが、これに限らず、たとえば、めっき槽24中の電解めっき液L表面上で、基材1を搬送してもよい。この場合には、基材1の全周縁部を電解めっき液Lと反対側、すなわち上方側にむけて反らせることが好ましい。
さらに、前記実施形態では、各陽極部211、陰極間に流れる電流値を制御するとしたが、制御しなくてもよい。
また、前記実施形態では、貫通孔11内部にめっきを施したが、これに限られるものではない。たとえば、絶縁層に貫通孔が形成されておらず、導電層表面を陽極21と対向させ、導電層表面(絶縁層と反対側の面)をめっき液Lに接触させて導電層表面めっきを施してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 基材
2 電解めっき装置
11 絶縁層
12 導電層
20 搬送部
21 陽極
23 電解めっき液供給部
24 めっき槽
26 支持部材
27 制御部
28 板材
29 レール
111 貫通孔
201 保持部
201A 対向面
201B 延在面
201C 延在面
202 接続部
203 ローラ
210 陽極
211 金属板(陽極部)
212 金属板
212A 貫通孔
261 凹部
262 貫通溝
281 貫通穴
H 距離
L めっき液
M 配管
P ポンプ
W1 幅
W2 幅
W3 幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電層を有する基材を陽極上および電解めっき液上で搬送しながら前記基材に電解めっきを行うための電解めっき装置であって、
前記陽極と、
前記導電層に接続される陰極と、
前記基材の導電層表面を前記電解めっき液を挟んで前記陽極と対向させ、前記導電層表面を前記電解めっき液に接触させながら、前記陽極上かつ前記電解めっき液上で前記基材を搬送する搬送部とを備え、
前記搬送部は、少なくとも前記基材の導電層の周縁部の一部が前記電解めっき液側とは反対側に反るように、前記基材を保持しながら前記基材を搬送するように構成されている電解めっき装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電解めっき装置において、
前記基材は、貫通孔が形成された絶縁層と、この絶縁層の一面に設けられ、前記貫通孔の一方の開口を塞ぐ前記導電層とを有し、
前記搬送部は、前記基材の前記絶縁層の他面を、前記電解めっき液を挟んで前記陽極と対向させることで、前記貫通孔から露出する前記導電層表面と前記陽極とを対向させ、前記導電層表面に電解めっき液を接触させながら、前記陽極上および前記電解めっき液上で前記基材を搬送する電解めっき装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電解めっき装置において、
前記基材と、前記陽極との間に電解めっきを流す電解めっき液供給部とを備え、
前記搬送部は、前記基材の導電層の搬送方向先端側部分および搬送方向後端側部分が上方に反るように前記基材を保持し、
当該電解めっき装置は、前記電解めっき液供給部により、前記基材の絶縁層と前記陽極との間に電解めっき液を流すとともに、前記基材と前記陽極との間の前記電解めっき液が、基材搬送方向と直交する方向から前記基材の絶縁層よりも下方に排出されるように、構成される電解めっき装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電解めっき装置において、
前記搬送部は、前記陽極に対向する対向面と、
前記対向面の搬送方向先端部から上方に向かって延在する延在面と、
前記対向面の搬送方向後端部から上方に向かって延在する延在面と、
を備え、
前記搬送部は、前記基材の前記導電層を吸着し、前記基材が前記搬送部の対向面および一対の延在面に沿って吸着保持され、
前記搬送部は、前記基材の導電層の搬送方向先端側部分および搬送方向後端側部分が上方に反るように前記基材を保持する電解めっき装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか一項に記載の電解めっき装置において、
前記陽極は、前記基材の搬送方向に沿って配置される複数の陽極部で構成され、
前記各陽極部と、前記陰極との間に流れる電流量を制御する制御部を備える電解めっき装置。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれか一項に記載の電解めっき装置において、
前記搬送部は、前記基材の前記導電層を吸着し、
前記搬送部を介して、前記基材の導電層に前記陰極を電気的に接続する電解めっき装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電解めっき装置において、
前記搬送部は、前記陰極に接続されたレール上を移動する電解めっき装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の電解めっき装置を使用して電解めっきを行うめっき方法であって、
導電層を有する基材を用意する工程と、
前記基材の導電層表面を電解めっき液を介して前記陽極と対向させ、前記導電層表面を前記電解めっき液に接触させながら、前記陽極上かつ前記電解めっき液上で前記基材を搬送する工程と、を含み、
基材を搬送する前記工程では、少なくとも前記基材の前記導電層の周縁部の一部が前記電解めっき液側とは反対側に反るように、前記基材を保持しながら、前記陽極および電解めっき液上で前記基材を搬送するめっき方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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