説明

電解めっき装置

【課題】
集電子が給電用電極から電解めっき用の電流を安定して取出すことができ、良好な品質の被めっき物を供給できる電解めっき装置を提供すること。
【解決手段】
被めっき物を浸漬するための長尺のめっき槽11と、めっき槽11の長手方向に沿って敷設されて被めっき物に電解めっき用の電流を供給するための帯状の給電用電極12と、被めっき物をめっき槽11内の長手方向の一端側から他端側に向けて搬送しながら移動する搬送キャリア13と、搬送キャリア13に給電用電極12へ向けて付勢された状態で搬送キャリア13との間隔が可変となる様に取着されて搬送キャリア13の移動に伴って給電用電極12上を摺動することにより給電用電極12から電解めっき用の電流を取出す集電子14とを具備して成るめっき装置10であって、集電子14は、集電子14の摺動方向に向けて前傾した平行リンク機構16を介して搬送キャリア13に取着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解めっき装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電解めっき技術は、例えば配線基板の配線形成用途として広く用いられている。
【0003】
ここで、図3に従来の電解めっき装置30を概略図で示す。図3に示す電解めっき装置30においては、被めっき物を浸漬するための長尺のめっき槽31と、めっき槽31の長手方向に沿って敷設されており被めっき物に電解めっき用の電流を供給するための帯状の給電用電極32と、被めっき物をめっき槽31内の長手方向の一端側から他端側に向けて搬送しながら移動する搬送キャリア33と、搬送キャリア33に取着されており、搬送キャリア33の移動に伴って給電用電極32上を摺動することにより給電用電極32から電解めっき用の電流を取り出す集電子34とを備えている。
【0004】
次に、図4に従来の電解めっき装置30における集電子34周辺部の概略拡大図を示す。ここで、図3と同一の箇所には、同じ符号を付して説明する。従来、搬送キャリア33に取着された集電子34は、給電用電極32へ向けて付勢された状態で搬送キャリア33との間隔が可変となるように取着されている。具体的には、集電子34は、例えば集電子34の上面に垂直に固定され、圧縮状態のバネ35を装着した2本の支柱36の他端を、搬送キャリア33に形成された貫通孔に挿入した後に搬送キャリア33の上面でナット37により固定することにより搬送キャリア33に取着されている。そして、搬送キャリア33の移動に伴って、集電子34が給電用電極32上を摺動することによって給電用電極32から電解めっき用の電流を取り出している。このとき、搬送キャリア33と給電用電極32との間隔が、搬送キャリア33の振動や給電用電極32のたわみなどによって変化することがあっても、前述のバネ35が集電子34を上下に伸縮させることで集電子34の下面と給電用電極32の上面とが常に接触した状態で摺動できる機構になっている。
【0005】
しかしながら、給電用電極32や集電子34に、例えば磨耗や傾きなどが生じている場合、搬送キャリア33の移動に伴って集電子34が給電用電極32上を摺動するときに滑らかに摺動することが困難になり、集電子34が給電用電極32から受ける抗力によって前のめり状態となって前述の支柱36と搬送キャリア33の貫通孔とが接触してひっかかってしまうことがある。このため、集電子34が上下に伸縮できなくなり、その結果、集電子34が給電用電極32と接触できず電解めっき用の電流を安定して取り出すことができないために、被めっき物の品質に不具合をきたす場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−248300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、給電用電極上を集電子が摺動するときに、例えば給電用電極や集電子に磨耗や傾きが生じており、集電子が給電用電極上を滑らかに摺動することができない場合でも、集電子が給電用電極から電解めっき用の電流を安定して取り出すことができ、良好な品質の被めっき物を供給できる電解めっき装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電解めっき装置は、被めっき物を浸漬するための長尺のめっき槽と、めっき槽の長手方向に沿って敷設されており、被めっき物に電解めっき用の電流を供給するための帯状の給電用電極と、被めっき物をめっき槽内の長手方向の一端側から他端側に向けて搬送しながら移動する搬送キャリアと、搬送キャリアに給電用電極へ向けて付勢された状態で搬送キャリアとの間隔が可変となるように取着されており、搬送キャリアの移動に伴って給電用電極上を摺動することにより給電用電極から電解めっき用の電流を取り出す集電子と、を具備して成る電解めっき装置であって、集電子は、集電子の摺動方向に向けて前傾した平行リンク機構を介して搬送キャリアに取着されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電解めっき装置によれば、集電子が当該集電子の摺動方向に向けて前傾した平行リンク機構を介して搬送キャリアに取着されていることから、搬送キャリアの移動に伴って集電子が給電用電極上を摺動するときに、例えば給電用電極や集電子に磨耗や傾きが生じて滑らかな摺動が困難なときでも、集電子が給電用電極から受ける抗力を平行リンク機構によって集電子を後方上側に移動させることで解消することが可能となる。これにより、集電子が給電用電極上を滑らかに摺動することが困難な場合でも、集電子が給電用電極と非接触となる状態を回避して給電用電極から電解めっき用の電流を安定して取り出すことができ、その結果、良好な品質の被めっき物を供給することが可能な電解めっき装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本発明の電解めっき装置の実施形態の一例を示す概略図である。
【図2】図2は図1に示す電解めっき装置の要部拡大図である。
【図3】図3は従来の電解めっき装置の実施形態の一例を示す概略図である。
【図4】図4は図3に示す電解めっき装置の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の電解めっき装置の実施形態の一例を図1および図2を基にして詳細に説明する。なお、図1と図2において同一の箇所には、同じ符号を付して説明する。本例の電解めっき装置10は、被めっき物を浸漬するための長尺のめっき槽11と、めっき槽11の長手方向に沿って敷設されており被めっき物に電解めっき用の電流を供給するための帯状の給電用電極12と、被めっき物をめっき槽11内の長手方向の一端側から他端側に向けて搬送しながら移動する搬送キャリア13と搬送キャリア13に給電用電極12へ向けて付勢された状態で搬送キャリア13との間隔が可変となるように取着されており、搬送キャリア13の移動に伴って給電用電極12上を摺動することにより給電用電極12から電解めっき用の電流を取り出す集電子14とを備えている。
【0012】
めっき槽11は、例えば塩化ビニルから成る複数の平板同士を溶接によって接合することで容器状に形成される。めっき槽11内にはめっき液が入れられるとともに、例えばラックに装着された状態の被めっき物が浸漬される。さらに、めつき用電源の陰極と接続された被めっき物と対峙する位置に、めっき用電源の陽極と接続された電極(不図示)が配設される。
【0013】
給電用電極12は、例えば銅などの良導電性の金属から成り、前述のめっき槽11に沿って敷設される。給電用電極12は、めっき用電源の陰極と接続されているとともに、給電用電極12の上面は平滑に研磨されており後述の集電子14が給電用電極12上を摺動することで電解めっき用の電流を取り出している。
【0014】
搬送キャリア13は、例えばめっき液による錆に強いステンレスから成り、被めっき物をめっき槽11内に浸漬するためのアーム構造15を有するとともに、めっき槽11内に浸漬された被めっき物を長手方向に搬送しながら移動するための移動装置を具備している。
【0015】
集電子14は、図2に示すように、例えば銅などの導体金属から成り、平行リンク機構16を介して搬送キャリア13に取着されている。集電子14は、図示しないバネにより給電用電極12に向けて付勢されており、それにより搬送キャリア13の移動に伴い給電用電極12上を良好に密着しながら摺動して電解めっき用の電流を給電用電極12から取り出す機能を有する。なお本発明においては、平行リンク機構16は、集電子14の摺動方向に向けて前傾している。このように、平行リンク機構16を集電子14の摺動方向に向けて前傾させておくことで、集電子14が給電用電極12から抗力を受けた場合でも、前傾した平行リンク機構16によって集電子14を給電用電極12に接触させた状態に保ったままで後方上側に移動させることで抗力を解消させることができる。このように、集電子14が当該集電子14の摺動方向に向けて前傾した平行リンク機構16を介して搬送キャリア13に取着されて給電用電極12上を摺動することから、給電用電極12や集電子14に、例えば磨耗や傾きが生じて滑らかな摺動が困難な場合でも、集電子14が給電用電極12から受ける抗力を平行リンク機構16によって集電子14を後方に移動させることで解消することが可能となる。これにより、集電子14が給電用電極12上を滑らかに摺動することが困難な場合でも、集電子14が給電用電極12と非接触となる状態を回避して給電用電極12から電解めっき用の電流を安定して取り出すことができ、その結果として良好な品質の被めっき物を供給することが可能な電解めっき装置10を提供することができる。
【符号の説明】
【0016】
10 めっき装置
11 めっき槽
12 給電用電極
13 搬送キャリア
14 集電子
16 平行リンク機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被めっき物を浸漬するための長尺のめっき槽と、前記めっき槽の長手方向に沿って敷設されており、前記被めっき物に電解めっき用の電流を供給するための帯状の給電用電極と、被めっき物を前記めっき槽内の長手方向の一端側から他端側に向けて搬送しながら移動する搬送キャリアと、該搬送キャリアに前記給電用電極へ向けて付勢された状態で前記搬送キャリアとの間隔が可変となるように取着されており、前記搬送キャリアの移動に伴って前記給電用電極上を摺動することにより前記給電用電極から前記電解めっき用の電流を取り出す集電子と、を具備して成るめっき装置であって、前記集電子は、該集電子の摺動方向に向けて前傾した平行リンク機構を介して前記搬送キャリアに取着されていることを特徴とするめっき装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−91817(P2013−91817A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233097(P2011−233097)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(304024898)京セラSLCテクノロジー株式会社 (213)