説明

電解再生処理ユニット及びこれを備えた電解再生処理装置

【課題】小型化が可能で、しかも浴量を少なくすることができる電解再生処理ユニット及び電解再生処理装置を提供する。
【解決手段】アノード配管29は主管部30と副管部34とを含む。アノード配管29はアノードとして機能する内周面29aを有している。主管部30は、第1接続端部41及び第2接続端部42を有している。主管部30は、第1接続端部41から第2接続端部42までつづく処理液Lの流路を形成している。副管部34は、主管部30の途中から筒状に延出している。副管部34の内部は主管部30内の流路と連通している。カソード25は、アノード配管29の内周面29aと離隔している。カソード25は、副管部34内においてカソード取付端部44から主管部30に向かって延びている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板などを製造する製造工程において、デスミア処理に用いられる処理液を電解して再生するための電解再生処理ユニット及びこれを備えた電解再生処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板に用いられる樹脂基板にドリルやレーザーによってスルーホールやビアを形成する際には、ドリルやレーザーと樹脂との摩擦熱によって樹脂カスであるスミアが生成する。プリント配線基板の電気的接続信頼性を維持するためには、スルーホールやビアに生成したスミアを化学的処理方法などにより除去(デスミア処理)する必要がある。
【0003】
一般に、前記化学的処理方法においては、過マンガン酸ナトリウムや過マンガン酸カリウムなどの過マンガン酸塩の溶液が処理液として用いられる。この処理液は、デスミア処理槽に貯留される。前記樹脂基板をデスミア処理槽内の処理液に浸漬してデスミア処理を施すと、スミアが酸化されてスルーホールやビアからスミアが除去される一方で、処理液中の過マンガン酸塩はマンガン酸塩となる。そして、この処理後の処理液をスミア除去に再利用するために、処理液中のマンガン酸塩を過マンガン酸塩にする電解再生処理が行われる。
【0004】
従来の電解再生処理装置は、処理液を貯留する電解再生槽と、この電解再生槽内の処理液中に浸漬された電極と、デスミア処理槽から排出された処理液を電解再生槽に送液する送り側配管と、電解再生処理後の処理液をデスミア処理槽に送液する戻し側配管とを備えている。処理液は、デスミア処理槽と電解再生槽との間を循環する。このような電解再生処理装置では、再生効率を向上させるために、通常、電解再生槽内に複数の電極が配設される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3301341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように電解再生槽内に複数の電極を配設する方式では、電解再生槽の容量を大きくする必要があるので(デスミア処理槽の1〜2倍程度の容量)、電解再生槽を設置するための設置面積の確保が必要になるとともに、浴量が多くなる。
【0007】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、小型化が可能で、しかも浴量を少なくすることができる電解再生処理ユニット及び電解再生処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明は、デスミア処理槽においてデスミア処理に用いられた処理液を電解して再生するための電解再生処理装置に用いられる電解再生処理ユニットに関するものである。前記電解再生処理ユニットは、アノードとして機能する内周面を有するアノード配管と、前記アノード配管の内周面と離隔した状態で前記アノード配管内に配置されるカソードと、を備えている。前記アノード配管は、配管が接続される第1接続端部及び前記配管とは別の配管が接続される第2接続端部を有し、前記第1接続端部から前記第2接続端部までつづく前記処理液の流路を形成する主管部と、前記カソードが取り付けられるカソード取付端部を有し、前記主管部の途中から筒状に延出し、内部が前記主管部内の流路と連通している副管部と、を含む。前記カソードは、前記副管部内において前記カソード取付端部から前記主管部に向かって延びている。
【0009】
この構成では、デスミア処理槽においてデスミア処理に用いられた処理液は、第1接続端部又は第2接続端部を通じてアノード配管に流入し、アノード配管の主管部を通過する。一方、カソードは、副管部内においてカソード取付端部から主管部に向かって延びている。したがって、アノードとして機能するアノード配管の内周面とカソードとの間に電圧が印加されることにより、主管部を通過する処理液を電解再生処理することができる。すなわち、アノード配管は、アノードとしての機能と、処理液の流路としての機能とを兼ね備えている。よって、この構成では、電解再生槽内に処理液を貯留してこの処理液にカソード及びアノードを浸漬するという従来の構成とは違って、前記電解再生槽を必要としないので、電解再生処理装置を小型化することができ、しかも浴量を少なくすることができる。
【0010】
また、この構成では、アノード配管が処理液の流路を形成する主管部を備えていることに加え、さらに副管部を備えているので、カソードをカソード取付端部に取り付けるだけで電解再生処理ユニットを構築することができる。
【0011】
さらに、この構成では、主管部が第1接続端部及び第2接続端部を有しているので、第1接続端部及び/又は第2接続端部を用いて複数の電解再生処理ユニットを連結するだけで、電解再生処理ユニットを複数備えたユニット集合体を構築することもできる。
【0012】
(2) 前記電解再生処理ユニットにおいて、アノード配管は、前記主管部が前記第1接続端部から前記第2接続端部まで直線状に延びる筒形状を有し、前記副管部が前記主管部に交差する方向に延びている形態であるのが好ましい。このようなアノード配管としては、例えばT字形状の配管、十字形状の配管などが挙げられる。
【0013】
(3) 前記(2)に記載の電解再生処理ユニットにおいて、前記アノード配管と電気的に接続され、前記カソードと離隔した状態で前記カソードに対向配置された補助アノードをさらに備えているのが好ましい。
【0014】
この構成では、補助アノードを備えているので、アノードとして機能する部位がアノード配管の内周面だけである場合に比べてアノードの面積を増やすことができる。これにより、電解再生処理ユニットへの通電量を増やすことができるので、電解再生処理の能力を高めることができる。
【0015】
(4) 前記(3)に記載の電解再生処理ユニットにおいて、前記カソードの先端部は、前記副管部を超えて前記主管部内の流路に位置しており、前記補助アノードは、少なくとも前記カソードの先端部に対向する位置に設けられているのが好ましい。
【0016】
この構成では、主管部が直線状に延びる筒形状を有し、副管部が主管部に交差する方向に延びている形態であり、副管部を超えて主管部内の流路に位置しているカソードの先端部は、副管部の内周面には囲まれていないが、補助アノードと対向している。したがって、カソードの先端部とこれに対向する補助アノードとの間の領域においても電解再生処理が効率よく行われる。
【0017】
(5) 前記(4)に記載の電解再生処理ユニットにおいて、前記補助アノードは、前記カソードの周りを囲むように前記カソードに沿って延びる筒形状を有し、前記補助アノードの基端側の部位は、前記副管部の内周面に内接又は近接し、前記補助アノードの先端側の部位は、前記主管部内の流路に位置して前記カソードの先端部を囲んでおり、かつ前記主管部内の流路を流れる処理液が通過可能な複数の貫通孔を有しているのが好ましい。
【0018】
この構成では、主管部内の流路に位置してカソードの先端部を囲む補助アノードの先端側の部位は、複数の貫通孔を有しているので、カソードの先端部と補助アノードの先端側の部位との間の領域において処理液の電解再生処理が効率よく行われ、しかも、主管部内の流路を流れる処理液の流通時の抵抗が大きくなるのが抑制される。
【0019】
また、この構成では、カソード取付端部から副管部内に筒形状の補助アノードを挿入するだけでアノード配管に補助アノードを配置することができる。
【0020】
(6) 前記(1)に記載の電解再生処理ユニットにおいて、アノード配管は、前記主管部が互いに交差する方向にそれぞれ延びる第1主管部及び第2主管部を含む屈曲した形状を有し、前記副管部が、前記副管部と前記第1主管部とが直線状になるように前記主管部の屈曲部分につながっている形態であるのが好ましい。このようなアノード配管としては、例えばT字形状の配管、十字形状の配管などが挙げられる。
【0021】
(7) 前記(6)に記載の電解再生処理ユニットにおいて、前記カソードは、前記副管部を超えて前記第1主管部内の流路まで、又は前記副管部及び前記第1主管部を超えた位置まで延びているのが好ましい。
【0022】
この構成では、アノード配管が前記(6)のような形態であり、副管部は第1主管部と直線状に並んでいる。したがって、前記電解再生処理ユニットにおいて、カソードが副管部を超えて第1主管部内の流路まで延びる形態、又はカソードが副管部及び第1主管部を超えた位置まで延びる形態を採用することができる。これにより、カソードと主管部の内周面とが対向する領域をより大きくすることができるので、電解再生処理の効率をより高めることができる。
【0023】
(8) 前記(1)、(6)又は(7)に記載の電解再生処理ユニットにおいて、前記アノード配管と電気的に接続され、前記カソードと離隔した状態で前記カソードに対向配置された補助アノードをさらに備えているのが好ましい。
【0024】
この構成では、補助アノードを備えているので、アノードとして機能する部位がアノード配管の内周面だけである場合に比べてアノードの面積を増やすことができる。これにより、電解再生処理ユニットへの通電量を増やすことができるので、電解再生処理の能力を高めることができる。
【0025】
(9) 前記電解再生処理ユニットにおいて、前記カソードは、前記副管部の前記カソード取付端部に取り付けられる基部と、前記基部から前記主管部に向かって延びる延出部とを含んでいるのが好ましい。
【0026】
この構成では、カソードの延出部を副管部のカソード取付端部から副管部内に挿入し、カソードの基部を副管部のカソード取付端部に取り付けることにより、延出部をアノード配管内の所望の位置に位置決めできる。
【0027】
(10) 前記電解再生処理ユニットにおいて、前記カソードと前記アノード配管の内周面との接触を防止するために前記カソードに取り付けられ、前記カソードから前記アノード配管の内周面に向かう絶縁部材をさらに備えているのが好ましい。
【0028】
この構成では、前記絶縁部材がカソードに取り付けられているので、例えばカソードが撓み変形するなどしてカソードがアノード配管の内周面に近づく方向に移動した場合であっても、カソードがアノード配管の内周面に接触する前に絶縁部材がアノード配管の内周面に接触する。これにより、カソードとアノード配管の内周面との接触を防止することができる。
【0029】
(11) 前記電解再生処理ユニットにおいて、前記アノード配管の温度を調節するための温度調節部をさらに備えているのが好ましい。
【0030】
電解再生処理ユニットにおいては、電解再生処理時に発生する熱により処理液の温度が上昇することがある。この構成では、前記温度調節部を備えているので、処理液の温度上昇に起因する処理液の品質低下などの不具合が生じるのを抑制でき、また、処理液の温度上昇に起因して装置に不具合が生じるのを抑制できる。また、温度調節部がアノード配管を冷却する冷却手段だけでなく、加熱手段も備えている場合には、処理液の温度をより精密に管理することができる。
【0031】
(12) 本発明の電解再生処理装置は、前記電解再生処理ユニットと、前記デスミア処理槽から排出される前記処理液を前記電解再生処理ユニットに導く送り側配管と、前記電解再生処理ユニットから排出される前記処理液を前記デスミア処理槽に導く戻し側配管と、を備えている。
【0032】
この構成では、デスミア処理槽から排出された処理液は、送り側配管を通じて電解再生ユニットに直接流入する。そして、電解再生処理ユニットのアノード配管内に流入した処理液は、アノード配管の主管部を通過する間に電解されて再生処理される。再生処理されて電解再生処理ユニットから排出された処理液は、戻し側配管を通じてデスミア処理槽に導かれる。
【0033】
(13) 前記電解再生処理装置において、前記電解再生処理ユニットを複数備え、これらの電解再生処理ユニットが接続されてユニット集合体を構成しているのが好ましく、この場合において、前記デスミア処理槽から排出される前記処理液は、前記送り側配管を通じて前記ユニット集合体に導かれ、前記ユニット集合体から排出される前記処理液は、前記戻し側配管を通じて前記デスミア処理槽に戻される。
【0034】
前記電解再生処理ユニットにおけるアノード配管の主管部は第1接続端部及び第2接続端部を有しているので、第1接続端部及び/又は第2接続端部を用いて複数の電解再生処理ユニットを連結するだけで、複数の電解再生処理ユニットを備えたユニット集合体を構築できる。このようなユニット集合体を備えた電解再生処理装置では、単一の電解再生処理ユニットのみを備えた電解再生処理装置に比べて処理液の電解再生処理能力を向上させることができる。
【0035】
(14) 前記電解再生処理装置において、前記電解再生処理ユニットにおいて生じる気体を排出するための気体排出バルブをさらに備えているのが好ましい。
【0036】
この構成では、電解再生処理ユニットにおいて処理液が電解されることにより生じる気体を前記気体排出バルブを通じて装置外に排出することができる。
【発明の効果】
【0037】
以上説明したように、本発明によれば、電解再生処理装置を小型化することができ、しかも電解再生処理装置の浴量を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係る電解再生処理ユニットを備えた電解再生処理装置と、この電解再生処理装置が接続されたデスミア処理槽とを示す正面図である。
【図2】前記電解再生処理ユニットを示す断面図である。
【図3】図2の一部を拡大した断面図である。
【図4】前記電解再生処理ユニットの変形例1を示す断面図である。
【図5】前記電解再生処理ユニットの変形例2を示す断面図である。
【図6】前記電解再生処理ユニットの変形例3を示す断面図である。
【図7】(A)は前記変形例3に用いる補助アノードの一例を示す斜視図であり、(B)は前記変形例3に用いる補助アノードの他の例を示す斜視図である。
【図8】前記電解再生処理ユニットの変形例4を示す断面図である。
【図9】前記電解再生処理ユニットの変形例5を示す正面図である。
【図10】前記電解再生処理ユニットの変形例6を示す断面図である。
【図11】前記電解再生処理ユニットの変形例7を示す断面図である。
【図12】前記電解再生処理ユニットの変形例8を示す断面図である。
【図13】前記電解再生処理ユニットの変形例9を示す断面図である。
【図14】前記電解再生処理ユニットの変形例10を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の一実施形態に係る電解再生処理ユニット及びこれを備えた電解再生処理装置について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0040】
<全体構造>
図1は、本実施形態に係る電解再生処理ユニット20を備えた電解再生処理装置11と、この電解再生処理装置11が接続されたデスミア処理槽13とを示す概略図である。図1に示す電解再生処理装置11は、プリント配線基板を製造する工程において、デスミア処理に用いられた処理液Lをスミアの除去に再利用するために、処理液を電解して再生するためのものである。処理液Lとしては、例えば過マンガン酸ナトリウムや過マンガン酸カリウムなどの過マンガン酸塩の溶液が用いられる。この処理液Lは、デスミア処理槽13に貯留されている。
【0041】
プリント配線基板の基板部分を構成する図略の樹脂基板は、デスミア処理槽13内の処理液に浸漬されてデスミア処理が施される。これにより、前記樹脂基板のスルーホールやビアに存在するスミアが処理液Lによって酸化され、スルーホールやビアからスミアが除去される。一方、デスミア処理に用いられた処理液L中では、過マンガン酸塩の一部が還元されてマンガン酸塩となる。したがって、この処理液をスミア除去に再利用するために、処理液Lは、電解再生処理装置11において、マンガン酸塩を過マンガン酸塩に酸化する電解再生処理が施される。
【0042】
<電解再生処理装置>
図1に示すように、電解再生処理装置11は、送り側配管15と、戻し側配管17と、ユニット集合体19と、ポンプ91と、フィルター93とを備えている。ユニット集合体19は、直列に接続された3つの電解再生処理ユニット20(20a,20b,20c)を備えている。以下、電解再生処理ユニット20のことを、単に処理ユニット20ということがある。
【0043】
送り側配管15の上流側端部15aは、デスミア処理槽13の側面に接続されている。送り側配管15の下流側端部15bは、ユニット集合体19の上流側端部(処理ユニット20aの上流側端部)に接続されている。
【0044】
戻し側配管17の上流側端部17aは、ユニット集合体19の下流側端部(処理ユニット20cの下流側端部)に接続されている。戻し側配管17の下流側端部17bは、デスミア処理槽13内に処理液Lを流入させることができる位置に配設されている。具体的には、本実施形態では、戻し側配管17の下流側端部17bは、デスミア処理槽13に貯留された処理液Lの液面の上方又は処理液L内に配置されている。
【0045】
ポンプ91は、送り側配管15の途中に配設されている。ポンプ91が駆動すると、処理液Lは、デスミア処理槽13から排出され、送り側配管15を通じてユニット集合体19に送液される。処理液Lは、ユニット集合体19において電解処理される。電解処理されて再生された処理液Lは、戻し側配管17を通じてデスミア処理槽13に送液される。
【0046】
フィルター93は、戻し側配管17の途中に配設されている。ユニット集合体19においては、電解再生処理によってカソード25の表面にスラッジ(二酸化マンガン)が生成する。このスラッジは、処理液Lの流れによってカソード25の表面から除去され、処理液Lとともに戻し側配管17に送られる。フィルター93は、処理液L中に含まれるスラッジを捕獲する。フィルター93は定期的に交換されるか、又はフィルター93に付着したスラッジが定期的に除去される。
【0047】
なお、フィルター93は、戻し側配管17に複数設けてもよい。また、戻し側配管17にフィルター93を設けるのに代えて、戻し側配管17に図略のスラッジ除去用の小さな槽を設けてもよい。
【0048】
<電解再生処理ユニット>
図2に示す処理ユニット20は、図1に示すユニット集合体19の3つの処理ユニット20(20a,20b,20c)のうちの中央に位置する処理ユニット20bである。各処理ユニット20は、同様の構造を有している。各処理ユニット20は、アノード配管29とカソード25とを備えている。
【0049】
アノード配管29は、T字形状の配管である。アノード配管29は、主管部30と副管部34とを含む。主管部30は、円筒状の第1主管部31と円筒状の第2主管部32とを含み、直線状に延びる形状を有している。副管部34は、主管部30の長手方向の中央付近から分岐し、主管部30に直交する方向に延びている。副管部34内の空間は、主管部30内の流路と連通している。副管部34は、主管部30から円筒状に延びる円筒部35と、この円筒部35の先端部から半径方向外側に広がる円環状のフランジ部36とを含む。
【0050】
アノード配管29は、第1主管部31の先端に位置する第1接続端部41と、第2主管部32の先端に位置する第2接続端部42と、副管部34の先端に位置するカソード取付端部44とを有している。第1接続端部41及び第2接続端部42には、種々の配管を接続可能である。これらの接続端部41,42は、配管が接続されていない状態では開口している。カソード取付端部44は、カソード25が取り付けられていない状態では開口している。
【0051】
図1及び図2に示すように、処理ユニット20bの第1接続端部41には処理ユニット20aの第2接続端部42が接続されている。処理ユニット20bの第2接続端部42には処理ユニット20cの第1接続端部41が接続されている。処理ユニット20aの第1接続端部41には送り側配管15の下流側端部15bが接続されており、処理ユニット20cの第2接続端部42には戻し側配管17の上流側端部17aが接続されている。
【0052】
アノード配管29同士の接続方法、及びアノード配管29と送り側配管15(又は戻し側配管17)の接続方法としては、例えば端部同士を溶接する方法が挙げられる。また、図略の継ぎ手を介して配管同士を接続してもよい。また、後述するように配管の端部同士が互いに螺合する構造を採用することもできる(図4)。
【0053】
アノード配管29は、導電性を有する材料により形成されており、内周面29aがアノードとして機能する。アノード配管29の内周面29aは、主管部30の内周面30aと副管部34の内周面34aとを含む。導電性を有する材料としては、例えばステンレス鋼、銅などの金属が挙げられるが、これに限定されず、他の金属であってもよく、金属以外の導電性材料であってもよい。ステンレス鋼としては例えば耐アルカリ性などの耐薬品性に優れたSUS316などが例示できる。アノード配管29のうち、主に主管部30内の空間が処理液Lの流路として機能する。処理液Lは、図1において実線で示す方向に流れ、図2において二点鎖線で示す方向に流れる。
【0054】
図2及び図3に示すように、カソード25は、副管部34の先端部であるカソード取付端部44に取り付けられるとともに副管部34の開口を塞ぐ基部26と、この基部26から副管部34の延びる方向に沿って延びる延出部28と、整流器71の配線が接続される配線接続部27とを含む。基部26、延出部28及び配線接続部27は一体成形されている。
【0055】
基部26は、副管部34のフランジ部36と同程度の外径を有する円盤形状を有している。基部26は、基部26と同程度の外径を有する円盤形状の絶縁パッキン59を介してフランジ部36に対向配置されている。
【0056】
基部26には周方向に沿って複数のねじ挿通孔26aが形成されている。フランジ部36には基部26のねじ挿通孔26aに対応する位置に複数のねじ挿通孔36aが形成されている。これらのねじ挿通孔26a,36aの位置を合わせた状態でこれらのねじ挿通孔26a,36aに円筒形状の絶縁スリーブ61が挿入されている。各絶縁スリーブ61にはボルト67が挿入され、その先端部にはナット69が螺合されている。
【0057】
ボルト67と基部26との間には円環状の絶縁ワッシャ63及びワッシャ67aが介在している。ナット69とフランジ部36との間には円環状の絶縁ワッシャ65及びワッシャ69aが介在している。このように副管部34の開口は基部26によって液密な状態で塞がれている。各絶縁部材を構成する材料としては、例えば絶縁性を有する材料を用いることができ、例えば合成樹脂、合成ゴムなどが挙げられる。前記合成樹脂としては、例えばポリテトラフルオロエチレンなどが例示できる。
【0058】
延出部28は、基部26の内面からこの内面に直交する方向に延出している。延出部28は、副管部34のほぼ中心を通るように配置され、アノード配管29の内周面29aと離隔している。延出部28は、副管部34の基端部(分岐する部位)を超えて主管部30内の流路まで延びている。言い換えると、延出部28の先端部は主管部30内の流路に位置している。延出部28は、棒状、板状などの形状を有している。本実施形態の延出部28は、後述する図11に示す処理ユニット20の延出部28に比べると短い。したがって、アノード配管29へカソード25を取り付ける作業及びカソード25を交換する作業がしやすいというメリットがある。
【0059】
ここで、主管部30内の流路とは、図2に示すように第1主管部31と第2主管部32とにより形成される円柱状の内周面30aに囲まれた空間である。言い換えると、主管部30内の流路とは、アノード配管29の内周面29aに囲まれた空間のうち、副管部34の内周面34aに囲まれた空間を除いた領域である。なお、主管部30内の流路は、処理液Lが通過する主な経路であるが、処理液Lの一部は、主管部30内の流路だけではなく、副管部34内にも流れ込み、副管部34の内周面34aとカソード25の延出部28との間の空間を乱流状態で移動し、再び主管部30内の流路に戻って主管部30内の流路の下流側に流れる。
【0060】
配線接続部27は、基部26の外面からこの外面に直交する方向に延出している。図1に示すように、アノード配管29とカソード25との間には整流器71により電圧が印加される。整流器71は、図略の外部電源に接続されている。整流器71の負極は、各カソード25の配線接続部27に接続されており、整流器71の正極は、アノード配管29の外周面に接続されている。アノード配管29は、全体が導電性材料により構成されているので、整流器71の正極がアノード配管29の外周面に接続されることにより、その内周面29aをアノードとして機能させることができる。
【0061】
カソード25は、導電性を有する材料により形成されている。カソード25を構成する材料としては、例えば銅などの金属が挙げられるが、これに限定されず、他の金属や金属以外の導電性材料であってもよい。
【0062】
カソード25は、銅又はその合金により形成されているのが好ましい。その理由は次に通りである。カソード25には電解再生処理中に二酸化マンガンが析出する。この二酸化マンガンが処理液中に不純物として混入することを防ぐために、二酸化マンガンは適宜除去されるのが好ましい。銅は、過酸化水素溶液などの洗浄溶液によって溶解しやすいので、洗浄時にはカソード25の表面に析出した二酸化マンガンとともにエッチングされる。これにより、二酸化マンガンは容易に除去される。複数回の洗浄によりカソード25が小さくなった場合にはカソード25を新しいものに交換すればよい。
【0063】
カソード25の延出部28は、例えばポリテトラフルオロエチレンなどの絶縁体(不導体)により表面の一部を被覆して、カソード25の表面積を調節して用いることもできる。本実施形態では、カソード25は、円柱形状を有しているが、角柱形状などの他の形状であってもよい。
【0064】
カソード25とアノード配管29との距離(極間距離)が近くなるほど、カソード25の表面に生成するマンガン酸塩の堆積に起因する短絡が生じやすくなる一方、前記距離が遠くなるほど電流が流れにくくなり、使用電圧が高くなる傾向になる。したがって、これらの点を考慮して極間距離が調整される。
【0065】
本実施形態では、送り側配管15がユニット集合体19に直接接続され、各処理ユニット20における主管部30内の流路と副管部34の内周面34aにより囲まれた空間とを処理液が通過する構成であるので、従来のように電解再生槽を用いる場合に比べて、各流路及び空間を流れる処理液の流速を大きくすることができる。したがって、本実施形態では、カソード25の表面に生成するマンガン酸塩を大きな流速の処理液の流れによってカソード25の表面から除去する効果が従来に比べて高い。よって、本実施形態では、従来に比べて極間距離を小さくすることも可能になる。
【0066】
各流路を流れる処理液Lの流速は、例えば5〜100mm/秒程度に調整されるのが好ましい。流速が5mm/秒以上であることにより、カソード25の表面に生成するスラッジをカソード25の表面から除去する(押し流す)優れた効果を得ることができる。一方、流速が100mm/秒以下であることにより、カソード25と処理液Lとの接触時間が短くなりすぎるのを抑制することができる。これにより、処理液Lを再生する効率が低くなりすぎるのを抑制できる。
【0067】
なお、再生処理中(整流器71からの通電中)は、各流路を流れる処理液Lの流速を小さくし、再生処理が終了(通電停止)した後には、カソード25の表面からスラッジを除去する目的で流速を大きくしてもよい。この制御は、例えば所定時間毎に繰り返してもよい。また、この制御は、図略の制御手段によって自動で実行してもよく、作業者が手動で実行してもよい。
【0068】
本実施形態では、上記のような構成を備えているので、電解再生処理装置11の浴量は、デスミア処理槽13の浴量よりも小さくすることができる。具体的には、電解再生処理装置11の浴量とデスミア処理槽13の浴量の比は、1:2〜1:20程度であるのが好ましく、1:3〜1:10程度であるのがより好ましい。なお、電解再生処理装置11の浴量には、ユニット集合体19の浴量だけでなく、送り側配管15の浴量及び戻し側配管17の浴量も含まれる。なお、電解再生槽を用いた従来の装置では、電解再生処理装置の浴量(電解再生槽の浴量、送り側配管15の浴量及び戻し側配管17の浴量)とデスミア処理槽の浴量の比は、2:1〜1:1程度である。
【0069】
陽極電流密度は、1〜30A/dm程度であるのが好ましい。陽極電流密度が1A/dm以上であることにより、アノード(アノード配管29の内周面29a)とカソード25間の電位を、マンガン酸イオンを過マンガン酸イオンに電解する再生電位(MnO2−→MnO+e)まで十分に到達させることができる。これにより、再生効率が低下するのを抑制できる。一方、陽極電流密度が30A/dm以下であることにより、水素の発生を抑制することができるので、再生効率が低下するのを抑制できる。また、陰極電流密度は、0.3〜30000A/dm程度であるのが好ましい。
【0070】
アノードとカソード25との面積比は、3:1〜1000:1程度であるのが好ましい。この比率は、例えば、上述したようにカソード25の表面の一部を絶縁体で被覆するなどして調節することができる。カソード25の面積が大きくなると、カソード25の表面に生成するスラッジの量が多くなるので、カソード25の面積はアノードの面積に比べて小さくするのが好ましい。
【0071】
ユニット集合体19における電解再生温度(処理液Lの温度)は、処理液Lとして、過マンガン酸ナトリウムや過マンガン酸カリウムなどの過マンガン酸塩の溶液を用いる場合には、30℃〜90℃程度であるのが好ましい。処理液Lの温度は、例えば各処理ユニット20を加熱したり、送り側配管15や戻し側配管17を加熱したりすることにより調整できる。加熱手段としては、例えば蒸気や電熱線などの加熱源を有するジャケットによって各配管29、送り側配管15、戻し側配管17などを被覆する方法が挙げられる。
【0072】
電解により生じたガスは、処理液Lの流れに沿ってユニット集合体19の下流側に移動し、ユニット集合体19から排出されて戻し側配管17を通じて処理液Lとともに下流側に送られる。そして、前記ガスは、戻し側配管17の下流側端部17bから排出され、必要に応じて捕集される。ガスの排出手段については、後述する。
【0073】
<変形例1>
図4は、処理ユニット20の変形例1を示す断面図である。この変形例1の処理ユニット20は、アノード配管29の第1接続端部41及び第2接続端部42と配管との接続構造及びアノード配管29のカソード取付端部44とカソード25との接続構造が図2に示す前記実施形態とは異なっている。
【0074】
この変形例1の処理ユニット20では、第1接続端部41、第2接続端部42及びカソード取付端部44にねじ構造がそれぞれ設けられている。具体的には、例えば処理ユニット20bにおけるアノード配管29の第1接続端部41には、第1主管部31の内面に雌ねじが形成されており、第2接続端部42には、第2主管部32の内面に雌ねじが形成されており、カソード取付端部44には、副管部34の内面に雌ねじが形成されている。一方、処理ユニット20aにおけるアノード配管29の第2接続端部42には、第2主管部32の外面に雄ねじが形成されている。処理ユニット20cにおけるアノード配管29の第1接続端部41には、第1主管部31の外面に雄ねじが形成されている。
【0075】
したがって、処理ユニット20aの第2接続端部42の雄ねじに処理ユニット20bの第1接続端部41の雌ねじを螺合させることにより、処理ユニット20aと処理ユニット20bを接続することができる。また、処理ユニット20bの第2接続端部42の雌ねじに処理ユニット20cの第1接続端部41の雄ねじを螺合させることにより、処理ユニット20bと処理ユニット20cを接続することができる。
【0076】
また、カソード取付端部44には、絶縁部材73を介してカソード25が取り付けられている。カソード25は、基部26と、延出部28と、配線接続部27とを有している。基部26、延出部28及び配線接続部27は、導電性の材料を用いて一体成形されている。カソード取付端部44の開口は、基部26と絶縁部材73とにより塞がれている。
【0077】
絶縁部材73は、円環形状を有しており、外周面に雄ねじが形成されている。この雄ねじは、カソード取付端部44の雌ねじに螺合される。絶縁部材73は、中心部分に貫通孔73aを有している。この貫通孔73aの内周面には雌ねじが形成されている。絶縁部材73の材料としては、上述したような絶縁材料を用いることができる。
【0078】
基部26は、円柱形状の螺合部26bと、この螺合部26bよりも外径が大きな円盤状の拡径部26cとを有している。螺合部26bの外周面には雄ねじが形成されている。この雄ねじは絶縁部材73の貫通孔73aの雌ねじに螺合される。
【0079】
拡径部26cは、図4に示すように絶縁部材73に装着された状態において絶縁部材73の内面73bに当接する当接面74を有している。この当接面74は、カソード25の長手方向に直交する方向に平行な面である。当接面74が絶縁部材73の内面73bに当接することにより、絶縁部材73の貫通孔73aとカソード25の基部26との間の液密の状態をより高めることができる。
【0080】
延出部28は、拡径部26cの主面(図4における右面)からこの主面に直交する方向に延出している。配線接続部27は、螺合部26bの一端(図4における左端)から延出している。
【0081】
この変形例1では、拡径部26cは副管部34の内部に配置される。言い換えると、拡径部26cは絶縁部材73よりも主管部30側に配置される。これにより、アノード配管29内の圧力(液圧)は、拡径部26cが絶縁部材73に対してより密着する方向に作用するので、アノード配管29内の圧力に起因して液密の度合いが低下するのを抑制できる。
【0082】
<変形例2>
図5は、処理ユニット20の変形例2を示す断面図である。この変形例2の処理ユニット20では、カソード25の形状が図2に示す前記実施形態と異なっている。
【0083】
図5に示すように、カソード25は、基部26と、配線接続部27と、延出部28と、屈曲部75とを有している。屈曲部75は、延出部28と同様な棒状、板状などの形状を有している。延出部28の先端部28aは、副管部34の基端部を超えて主管部30内の流路まで延びている。屈曲部75は、延出部28の先端部28aから屈曲し主管部30の延びる方向に延びている。この変形例2では、屈曲部75は、先端部28aから処理液Lの流れ方向の反対の方向に延びているが、処理液Lの流れ方向に延びていてもよい。屈曲部75は、全体が主管部30内の流路に位置している。
【0084】
この変形例2の処理ユニット20は、上記のような屈曲部75を有しているので、カソード25とアノード配管29の内周面29aとが対向する領域がより大きくなり、電解再生処理の効率をより高めることができる。
【0085】
また、屈曲部75の長さは、副管部34の内径(直径)よりも小さいので、L字形状を有するカソード25であっても副管部34のカソード取付端部44からカソード25の屈曲部75及び延出部28を挿入することができる。
【0086】
また、屈曲部75の先端75aは、副管部34の内周面34aよりも副管部34の半径方向の外側に位置しており、屈曲部75の先端部75aは、第1主管部31の内周面30aによって全周が囲まれている。このように屈曲部75の先端部75aの周り全体に第1主管部31の内周面30aが対向している場合には、カソード25とアノード配管29の内周面29aとが対向する領域がさらに大きくなり、電解再生処理の効率をさらに高めることができる。
【0087】
なお、変形例2では、カソード25が単一の屈曲部75のみを備えている場合を例示したが、複数の屈曲部75を備えていてもよい。例えば、複数の屈曲部75がカソード25の延出部28の先端部28aから放射状(例えば十字状)に延びていてもよい。
【0088】
<変形例3>
図6は、処理ユニット20の変形例3を示す断面図である。図7(A)は変形例3に用いる補助アノード51の一例を示す斜視図であり、図7(B)は変形例3に用いる補助アノード51の他の例を示す斜視図である。この変形例3の処理ユニット20は、補助アノード51をさらに備えている点で図2に示す前記実施形態と異なっている。
【0089】
図6及び図7(A),(B)に示すように、カソード25は、副管部34のカソード取付端部44に固定された基部26から副管部34の延びる方向に沿って延びる延出部28を有している。延出部28の先端部28aは、主管部30内の流路に位置している。
【0090】
補助アノード51は、カソード25と離隔した状態でカソード25の延出部28に対向配置されている。補助アノード51は、延出部28の周りを囲むようにカソード25に沿って延びる筒形状を有している。補助アノード51の基端側の部位51aは、副管部34の内周面34aに内接している。これにより、補助アノード51は、アノード配管29と電気的に接続されている。
【0091】
補助アノードの先端側の部位51bは、主管部30内の流路に位置してカソード25の先端部28aを囲んでおり、先端部28aに対向している。補助アノード51は、延出部28の先端部28aを超えて主管部30の内周面30aの近傍まで延びている。
【0092】
補助アノード51は、全体にわたって複数の貫通孔51cが形成されている。このような複数の貫通孔51cが設けられていることにより、主管部30内の流路を流れる処理液Lは、貫通孔51cを通じて補助アノード51の筒内に流入し、電解再生処理された後、貫通孔51cを通じて補助アノード51の筒外に流出することができる。複数の貫通孔51cが設けられた補助アノード51としては、例えば図7(A)に示すような網状の導電性シートを円筒状に丸めたもの、図7(B)に示すように導電性シートに複数の貫通孔51cを形成したもの(パンチング板)などが例示できる。補助アノード51は、導電性の材料により形成されている。導電性材料としては、例えば金属を用いることができる。具体的には、導電性材料としては、例えばSUS316などのステンレス鋼などを用いることができる。
【0093】
導電性シートを構成する材料としては、例えばステンレス鋼、銅などの金属が挙げられるが、これに限定されず、他の金属であってもよく、金属以外の導電性材料であってもよい。ステンレス鋼としては例えばSUS316などが例示できる。
【0094】
補助アノード51は、副管部34にカソード25を取り付ける前に、副管部34のカソード取付端部44から挿入される。その後、カソード25が副管部34のカソード取付端部44に取り付けられる。
【0095】
なお、変形例3では、補助アノード51の全体に複数の貫通孔51cが形成されている場合を例示したが、複数の貫通孔51cは、主管部30内の流路に配置されている補助アノード51の基端側の部位51aのみに形成されていてもよい。
【0096】
<変形例4>
図8は、処理ユニット20の変形例4を示す断面図である。この変形例4の処理ユニット20は、アノード配管29の温度を調節するための温度調節部55をさらに備えている点で、図2に示す前記実施形態とは異なっている。
【0097】
変形例4における温度調節部55は、各アノード配管29に設けられたジャケット55aと、図略の送り機構とを含む。ジャケット55aは、各アノード配管29の外面との間に所定の隙間55bをあけてアノード配管29の外面のほぼ全体を覆っている。隙間55bは、図略の送り機構により送り込まれる温度調節用流体(熱媒体)が流れる流路である。温度調節用流体としては、水などの液体や空気などの気体を用いることができる。これにより、各アノード配管29を冷却及び/又は加熱することができるので、アノード配管29内を流れる処理液Lの温度を所望の範囲に調節することができる。温度調節部55は、温度調節用流体を循環させる経路をさらに備えているのが好ましい。
【0098】
<変形例5>
図9は、処理ユニット20の変形例5を示す断面図である。この変形例5の処理ユニット20は、温度調節部55の構造が図8に示す変形例4とは異なっている。
【0099】
変形例5における温度調節部55は、各アノード配管29に巻き付けられたチューブ55cと、図略の送り機構とを含む。温度調節部55は、温度調節用流体を循環させる経路をさらに備えているのが好ましい。チューブ55cは、各アノード配管29の第1主管部31、第2主管部32及び副管部34にそれぞれ巻き付けられている。各チューブ55cには、図略の送り機構により温度調節用流体が送り込まれる。これにより、各アノード配管29を冷却及び/又は加熱することができる。
【0100】
<変形例6>
図10は、処理ユニット20の変形例6を示す断面図である。この変形例6の処理ユニット20は、温度調節部55の構造が図8に示す変形例4とは異なっている。
【0101】
変形例6における温度調節部55は、各アノード配管29の外面に設けられたフィン55dを含む。フィン55dは、主管部30の外面及び副管部34の外面から半径方向外側に起立する多数の起立片により構成されている。隣り合う起立片は互いに隙間をあけて配置されている。フィン55dは、アノード配管29と一体成形されていてもよく、別体として成形された後にアノード配管29に取り付けられてもよい。
【0102】
このようなフィン55dは大きな表面積を有しているので、アノード配管29の周囲の流体(空気など)との熱交換の効率を高めることができる。これにより、各アノード配管29を冷却することができる。また、フィン55dに温風などを送ることにより、各アノード配管29を加熱することもできる。
【0103】
また、温度調節部55は、フィン55dに空気を送る図略の送風機をさらに備えているのが好ましい。これにより、温度調節の効率をさらに高めることができる。
【0104】
<変形例7>
図11は、処理ユニット20の変形例7を示す断面図である。この変形例7の処理ユニット20では、アノード配管29がT字形状の配管である点では図2に示す前記実施形態と同様であるが、処理液Lの主な流路を形成する主管部30の配置と、カソード25が取り付けられる副管部34の配置とが図2に示す前記実施形態とは異なっている。
【0105】
この変形例7では、主管部30は、L字状に屈曲した形状を有している。具体的には、主管部30は、互いに直交する方向にそれぞれ延びる第1主管部31及び第2主管部32を含む。副管部34は、主管部30の屈曲部分につながり、第1主管部31と直線状に並んでいる。したがって、アノード配管29内を流れる処理液Lは、主に第1主管部31の内周面30a及び第2主管部32の内周面30aにより囲まれるL字形状の空間を流れることになる。ただし、処理液Lは、主管部30内の流路だけではなく、副管部34内にも流れ込み、副管部34の内周面34aとカソード25の延出部28との間の空間を乱流状態で移動し、再び主管部30内の流路に戻って主管部30内の流路の下流側に流れる。
【0106】
カソード25の延出部28は、基部26の内面から副管部34の延びる方向に沿って延びている。延出部28は、副管部34を超え、副管部34と直線状につながる第1主管部31内の流路まで延びている。このように変形例7では、副管部34と第1主管部31とが直線状に並んでいるので、副管部34の長さが図2に示す前記実施形態の副管部34の長さと同じであっても、カソード25の延出部28の長さを図2に示す前記実施形態に比べて大きくすることができる。これにより、変形例7では、図2に示す前記実施形態に比べて、カソード25の延出部28とアノード配管29の内周面29aとが対向する領域をより大きくすることができる。
【0107】
また、延出部28の先端部28aは、処理ユニット20bの上流側に接続された処理ユニット20aの主管部30内の流路に位置している。このように変形例7では、処理ユニット20bの副管部34及び第1主管部31と、処理ユニット20aの主管部30とが直線状に並んでいるので、処理ユニット20bのカソード25の延出部28を、この処理ユニット20bに隣接する処理ユニット20aの主管部30内の流路まで延ばすことができる。これにより、カソード25の延出部28とアノード配管29の内周面29aとが対向する領域をさらに大きくすることができる。また、この場合には、処理ユニット20a用のカソードと処理ユニット20b用のカソードとを一つのカソード25によって共用することもできる。
【0108】
また、変形例7では、カソード25の先端部28aには、カソード25がアノード配管29の内周面29aと接触するのを防止するための絶縁部材53が設けられている。延出部28が長尺である場合には、延出部28が重力や処理液Lの流れに起因する圧力などによって撓み変形しやすくなるので、延出部28の先端部28a又はその近傍に絶縁部材53が設けられているのが好ましい。
【0109】
絶縁部材53は、延出部28の先端部28aから主管部30の半径方向外側に延びている。絶縁部材53の形状としては、主管部30の内周面30aに向かって延出部28から両側に棒状に延びる形状、主管部30の内周面30aに向かって延出部28から放射状(例えば十字状)に延びる形状、円盤形状などが挙げられるが、主管部30における処理液Lの流れを円滑にする点で棒状、放射状の形状であるのが好ましい。
【0110】
この変形例7では、絶縁部材53を延出部28の先端部28aに設けているが、絶縁部材53は、必ずしも延出部28の先端部28aに設けられていなくてもよい。ただし、長尺の延出部28が撓み変形したときには、延出部28の先端部28aの位置が最も大きく変化するので、この点から絶縁部材53は、延出部28の先端部28aに設けられているのが好ましい。
【0111】
<変形例8>
図12は、処理ユニット20の変形例8を示す断面図である。この変形例8の処理ユニット20は、アノード配管29が十字形状の配管である点で変形例7と異なっている。
【0112】
この変形例8では、アノード配管29は、主管部30と副管部34とを有している。主管部30は、第1主管部31及び第2主管部32に加えて、さらに第3主管部33を含む。第1主管部31と副管部34とは直線状に並んでいる。第2主管部32と第3主管部33とは直線状に並んでいる。第1主管部31と副管部34の延びる方向と、第2主管部32と第3主管部33の延びる方向とは直交している。
【0113】
第3主管部33内の空間は、第1主管部31内の空間、第2主管部32内の空間及び副管部34内の空間と連通している。第3主管部33は、その先端に位置する第3接続端部43を有している。この第3接続端部43には、処理ユニット20dの主管部30の端部が接続されている。
【0114】
カソード25の延出部28は、変形例7と同様に、副管部34を超え、副管部34と直線状につながる第1主管部31内の流路まで延びている。延出部28の先端部28aは、処理ユニット20bの上流側に接続された処理ユニット20aの主管部30内の流路に位置している。
【0115】
図12に示す十字形状のアノード配管29では、第1主管部31を流れる処理液Lが第2主管部32と第3主管部33に分流される場合を例示している。処理液Lの一部は、副管部34にも流れ込む。なお、処理液Lの流れる方向は図12に示す方向に限定されない。例えば、処理液Lは、第1〜第3主管部31,32,33のうち、2つの主管部から1つに主管部に流れ込む(合流する)形態であってもよい。
【0116】
<変形例9>
図13は、処理ユニット20の変形例9を示す断面図である。この変形例9は、ユニット集合体19の形態が図1に示す前記実施形態と異なっている。
【0117】
図13に示すように、変形例9では、ユニット集合体19は、多数の処理ユニット20(201〜220)が接続されることにより構成されている。多数の処理ユニット20は、アノード配管29としてT字形状の配管又は十字形状の配管を用いている。図13に示す形態はこれらの配管の接続パターンの一例であり、配管の接続パターンはこれに限定されない。
【0118】
処理液Lがユニット集合体19に流入するユニット集合体19の上流側入口は、T字形配管83の端部であり、処理液Lがユニット集合体19から流出するユニット集合体19の下流側出口は、T字形配管84の端部である。送り側配管15の下流側端部15bは、T字形配管83の端部に接続されている。戻し側配管17の上流側端部17aは、T字形配管84の端部に接続されている。
【0119】
処理液Lは、T字形配管83に流入すると2方向に分流される。具体的には、処理液Lは、T字形配管83に流入すると、処理ユニット201〜210により構成される処理ブロックAと、処理ユニット211〜220により構成される処理ブロックBとに分流される。これらの処理ブロックA,Bは、ユニット集合体19において互いに並列の接続関係にある。
【0120】
処理ブロックAにおいて、処理液Lは、処理ユニット201、L字形配管81及び処理ユニット202をこの順に通過し、処理ユニット202において2方向に分流する。分流した一方の処理液Lは、処理ユニット203,204,205を通過し、他方の処理液Lは、処理ユニット206,207,208を通過し、これらの流れが処理ユニット209において合流する。合流した処理液Lは、処理ユニット210を通過し、T字形配管84に流入する。処理ユニット203〜205は、直列の接続関係にあり、処理ユニット206〜208は、直列の接続関係にある。
【0121】
処理ブロックBにおいて、処理液Lは、処理ブロックAと同様の経路をたどり、T字形配管84に流入し、処理ブロックAを流れてきた処理液LとT字形配管84において合流する。合流した処理液Lは、ユニット集合体19から流出し、戻り側配管17に流入する。各処理ユニット20では、処理液Lが電解再生処理される。
【0122】
以上のように、アノード配管29としてT字形状の配管を用いた複数の処理ユニットと、アノード配管29として十字形状の配管を用いた複数の処理ユニットとを組み合わせることにより、例えば図13に示すように並列接続と直列接続とを混在させた複雑な流路を自由に形成することができる。したがって、電解再生処理装置における余剰空間にフィットするように組み合わせられたユニット集合体19を配置して余剰空間を有効利用することもできる。また、T字形状の配管及び十字形状の配管としては、既製品を採用することもできる。
【0123】
<変形例10>
図14は、処理ユニット20の変形例10を示す断面図である。この変形例10は、気体排出バルブ88及び温度調節部55を備えている点で、変形例9とは異なっている。
【0124】
図14に示すように、変形例10では、図13に示すユニット集合体19における処理ユニット210,220の箇所に処理ユニット210,220に代えてT字形配管85,86を配設している。そして、T字形配管85,86の主管部から分岐した延出部に気体排出バルブ88がそれぞれ設けられている。変形例10のユニット集合体19は、図14に示すようにT字形配管85,86が上部に位置するように配置されている。
【0125】
また、ユニット集合体19の近傍には、温度調節部55として2つの冷却ファン55eが配設されている。一方の冷却ファン55eは、処理ブロックAの近傍に設けられており、処理ブロックAの処理ユニット20に空気を送って処理ユニット20を冷却することができる。他方の冷却ファン55eは、処理ブロックBの近傍に設けられており、処理ブロックBの処理ユニット20に空気を送って処理ユニット20を冷却することができる。
【0126】
各処理ユニット20(201〜209,211〜219)では、処理液Lが電解再生処理されることにより処理液L中のマンガン酸塩が過マンガン酸塩に再生される一方で、二酸化マンガン(MnO)を主成分とするスラッジがカソード25の表面に生成する。このスラッジをカソード25の表面から除去するために、各処理ユニット20に定期的に過酸化水素溶液を流通させてカソード25を洗浄する処理を行うのが好ましい。この洗浄処理を行うと、化学反応により気体が生成する。
【0127】
変形例10では、気体排出バルブ88が設けられているので、洗浄処理によって生じた気体をユニット集合体19の外部に排出することができる。気体排出バルブ88としては、例えばT字形配管85,86内の圧力が所定値を超えると開く圧力弁、自動制御される電磁弁などを用いることができる。
【0128】
特に、この変形例10のユニット集合体19は、図14に示すようにT字形配管85,86が上部に位置するように配置されているので、各処理ユニット20において発生した気体が処理液Lの流れ方向に沿って処理液Lとともに上方に送られ、T字形配管85,86に到達する。したがって、発生した気体がユニット集合体19の一部に滞留するなどの不具合が生じにくい。
【0129】
なお、洗浄処理の具体的な手順としては、例えばデスミア処理槽13内に処理液Lの代わりに過酸化水素溶液を入れ、処理液Lを循環させる場合と同様にして過酸化水素溶液を処理ユニット20に流通させる方法が挙げられる。
【0130】
<実施形態の概要>
以上の実施形態をまとめると次のようになる。
【0131】
前記実施形態及び各変形例では、デスミア処理槽においてデスミア処理に用いられた処理液は、第1接続端部又は第2接続端部を通じてアノード配管に流入し、アノード配管の主管部を通過する。一方、カソードは、副管部内においてカソード取付端部から主管部に向かって延びている。したがって、アノードとして機能するアノード配管の内周面とカソードとの間に電圧が印加されることにより、主管部を通過する処理液を電解再生処理することができる。すなわち、アノード配管は、アノードとしての機能と、処理液の流路としての機能とを兼ね備えている。よって、この構成では、電解再生槽内に処理液を貯留してこの処理液にカソード及びアノードを浸漬するという従来の構成とは違って、前記電解再生槽を必要としないので、電解再生処理装置を小型化することができ、しかも浴量を少なくすることができる。
【0132】
また、この構成では、アノード配管が処理液の流路を形成する主管部を備えていることに加え、さらに副管部を備えているので、カソードをカソード取付端部に取り付けるだけで電解再生処理ユニットを構築することができる。
【0133】
さらに、この構成では、主管部が第1接続端部及び第2接続端部を有しているので、第1接続端部及び/又は第2接続端部を用いて複数の電解再生処理ユニットを連結するだけで、電解再生処理ユニットを複数備えたユニット集合体を構築することもできる。
【0134】
前記実施形態及び変形例1〜6,9,10では、アノード配管は、前記主管部が前記第1接続端部から前記第2接続端部まで直線状に延びる筒形状を有し、前記副管部が前記主管部に直交する方向に延びている形態である。このようなアノード配管としては、例えばT字形状の配管、十字形状の配管などが挙げられる。ただし、副管部は主管部に交差する方向に延びていればよく、必ずしも直交する方向に延びていなくてもよい。すなわち、副管部は、主管部に対して傾斜する方向に延びていてもよい。
【0135】
変形例3では、前記アノード配管と電気的に接続され、前記カソードと離隔した状態で前記カソードに対向配置された補助アノードをさらに備えている。この構成では、補助アノードを備えているので、アノードとして機能する部位がアノード配管の内周面だけである場合に比べてアノードの面積を増やすことができる。これにより、電解再生処理ユニットへの通電量を増やすことができるので、電解再生処理の能力を高めることができる。
【0136】
また、変形例3では、前記カソードの先端部は、前記副管部を超えて前記主管部内の流路に位置しており、前記補助アノードは、少なくとも前記カソードの先端部に対向する位置に設けられている。この構成では、主管部が直線状に延びる筒形状を有し、副管部が主管部に直交する方向に延びている形態であり、副管部を超えて主管部内の流路に位置しているカソードの先端部は、副管部の内周面には囲まれていないが、補助アノードと対向している。したがって、カソードの先端部とこれに対向する補助アノードとの間の領域においても電解再生処理が効率よく行われる。
【0137】
さらに、変形例3では、前記補助アノードは、前記カソードの周りを囲むように前記カソードに沿って延びる筒形状を有し、前記補助アノードの基端側の部位は、前記副管部の内周面に内接又は近接し、前記補助アノードの先端側の部位は、前記主管部内の流路に位置して前記カソードの先端部を囲んでおり、かつ前記主管部内の流路を流れる処理液が通過可能な複数の貫通孔を有している。この構成では、主管部内の流路に位置してカソードの先端部を囲む補助アノードの先端側の部位は、複数の貫通孔を有しているので、カソードの先端部と補助アノードの先端側の部位との間の領域において処理液の電解再生処理が効率よく行われ、しかも、主管部内の流路を流れる処理液の流通時の抵抗が大きくなるのが抑制される。また、この構成では、カソード取付端部から副管部内に筒形状の補助アノードを挿入するだけでアノード配管に補助アノードを配置することができる。
【0138】
また、変形例3では、副管部の内周面に内接又は近接する補助アノードの基端側の部位には、基端側の部位全体にわたって複数の貫通孔が形成されているので、補助アノードの基端側の部位に貫通孔が形成されておらず副管部の内周面が補助アノードによって全体が覆われる場合に比べて、アノードの面積を増やすことができる。
【0139】
具体的には、変形例3では、補助アノードとして網状の導電性シートを円筒状に丸めたもの(図7(A))、及び導電性を有するパンチング板を円筒状に丸めたもの(図7(B))を例示している。これらの補助アノードには、ほぼ全体にわたって複数の貫通孔が形成されている。したがって、補助アノードの先端側の部位において主管部内の流路を流れる処理液の流通時の抵抗が大きくなるのが効果的に抑制される。しかも、補助アノードの基端側の部位にも複数の貫通孔が形成されているので、基端側の部位が内接又は近接する副管部の内周面にも貫通孔を通じて処理液が到達する。したがって、副管部の内周面も依然としてアノードとして機能するので、実質的には、補助アノードの表面積の分だけアノードとしての機能が付加されることになり、全体としてアノードの面積を大幅に増やすことができる。
【0140】
変形例7,8では、アノード配管は、前記主管部が互いに直交する方向にそれぞれ延びる第1主管部及び第2主管部を含む屈曲した形状を有し、前記副管部が前記主管部の屈曲部分につながり、前記第1主管部と直線状に並んでいる形態である。このようなアノード配管としては、例えばT字形状の配管、十字形状の配管などが挙げられる。ただし、第1主管部と第2主管部は互いに交差する方向に延びていればよく、必ずしも直交する方向に延びていなくてもよい。すなわち、第1主管部は、第2主管部に対して傾斜する方向に延びていてもよい。
【0141】
変形例7,8では、前記カソードは、前記副管部を超えて前記第1主管部内の流路まで、又は前記副管部及び前記第1主管部を超えた位置まで延びている。この構成のように副管部が第1主管部と直線状に並んでいる場合には、前記電解再生処理ユニットにおいて、カソードが副管部を超えて第1主管部内の流路まで延びる形態、又はカソードが副管部及び第1主管部を超えた位置まで延びる形態を採用することができる。これにより、カソードと主管部の内周面とが対向する領域をより大きくすることができるので、電解再生処理の効率をより高めることができる。
【0142】
変形例7,8において、前記アノード配管と電気的に接続され、前記カソードと離隔した状態で前記カソードに対向配置された補助アノードをさらに備えていてもよい。この構成の場合、補助アノードを備えているので、アノードとして機能する部位がアノード配管の内周面だけである場合に比べてアノードの面積を増やすことができる。これにより、電解再生処理ユニットへの通電量を増やすことができるので、電解再生処理の能力を高めることができる。
【0143】
前記実施形態及び各変形例では、前記カソードは、前記副管部の前記カソード取付端部に取り付けられる基部と、前記基部から前記主管部に向かって延びる延出部とを含んでいる。この構成では、カソードの延出部を副管部のカソード取付端部から副管部内に挿入し、カソードの基部を副管部のカソード取付端部に取り付けることにより、延出部をアノード配管内の所望の位置に位置決めできる。また、基部と副管部のフランジ部との間に絶縁パッキンが介在した状態で基部と副管部のフランジ部とがボルトとナットにより固定される構造であるので、これらの間の絶縁性を維持するとともにこれらの間から液漏れするのが効果的に防止される。なお、カソードは、アノード配管の内周面と対向する部位を少なくとも有していればよく、必ずしも前記基部と前記延出部とを含む構成でなくてもよい。
【0144】
変形例7,8では、前記カソードと前記アノード配管の内周面との接触を防止するために前記カソードに取り付けられ、前記カソードから前記アノード配管の内周面に向かう絶縁部材をさらに備えている。この構成では、前記絶縁部材がカソードに取り付けられているので、例えばカソードが撓み変形するなどしてカソードがアノード配管の内周面に近づく方向に移動した場合であっても、カソードがアノード配管の内周面に接触する前に絶縁部材がアノード配管の内周面に接触する。これにより、カソードとアノード配管の内周面との接触を防止することができる。なお、変形例7,8以外の実施形態において前記絶縁部材を設けることもできる。
【0145】
変形例4〜6,10では、前記アノード配管の温度を調節するための温度調節部をさらに備えている。電解再生処理ユニットにおいては、電解再生処理時に発生する熱により処理液の温度が上昇することがある。この構成では、前記温度調節部を備えているので、処理液の温度上昇に起因する処理液の品質低下などの不具合が生じるのを抑制でき、また、処理液の温度上昇に起因する装置の不具合が生じるのを抑制できる。また、温度調節部がアノード配管を冷却する冷却手段だけでなく、加熱手段も備えている場合には、処理液の温度をより精密に管理することができる。なお、変形例4〜6,10以外の実施形態において前記温度調節部を設けることもできる。
【0146】
変形例10では、前記電解再生処理ユニットにおいて生じる気体を排出するための気体排出バルブをさらに備えている。この構成では、電解再生処理ユニットにおいて処理液が電解されることにより生じる気体を前記気体排出バルブを通じて装置外に排出することができる。変形例10では、ユニット集合体に気体排出バルブを設けているが、これに限定されない。気体排出バルブは、ユニット集合体以外の場所に設けてもよい。例えば、気体排出バルブは、戻し側配管に設けてもよい。なお、変形例10以外の実施形態において前記気体排出バルブを設けることもできる。
【0147】
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施形態に係る表面処理装置について説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。
【0148】
例えば、前記実施形態では、処理液として過マンガン酸塩の溶液を用いる場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。
【0149】
前記実施形態では、アノード配管がT字形状又は十字形状の配管である場合を例示したが、これに限定されない。アノード配管としては、中心から異なる3つの方向にそれぞれ延びる第1主管部、第2主管部及び副管部を有するY字形状の配管などであってもよい。
【0150】
前記実施形態の変形例3では、補助アノード51がカソード25の延出部28の周囲全体を覆うような筒形状である場合を例示したが、これに限定されない。補助アノード51は、カソード25の延出部28の全周ではなく、例えば主管部30内の流路に位置する延出部28の一部分にのみ対向している形態などであってもよい。
【0151】
また、補助アノード51の基端側の部位51aが副管部34の内周面34aに内接している場合を例示したが、補助アノード51をアノード配管29と電気的に接続する他の手段が施されていれば、必ずしも内接している必要はない。
【0152】
また、前記実施形態では、アノードの表面積を増やすために補助アノードを設ける場合を例示したが、例えばアノード配管の内周面に複数の凹凸を設けることによりアノードの表面積を増やすこともできる。また、表面に複数の凹凸が設けられた補助アノードを用いてもよい。
【0153】
また、前記実施形態では、基部26と延出部28と配線接続部27とが一体成形されているカソード25を例示したが、これに限定されない。例えば、基部26と延出部28とが別体で形成されていてもよい。さらに、基部26を絶縁性の材料により形成する場合には、前述の絶縁パッキン59を省略することができる。
【0154】
また、カソード25としては、単なる棒状又は板状の部材であってもよい。この場合、例えばカソード25を絶縁パッキンの貫通孔に挿入し、この絶縁パッキンを副管部34のカソード取付端部に嵌め込むことにより処理ユニット20を構築できる。
【符号の説明】
【0155】
11 電解再生処理装置
13 デスミア処理槽
15 送り側配管
17 戻し側配管
19 ユニット集合体
20 電解再生処理ユニット
20a〜20d 電解再生処理ユニット
201〜220 電解再生処理ユニット
25 カソード
26 基部
27 配線接続部
28 延出部
28a 延出部の先端部(カソードの先端部)
29 アノード配管
29a アノード配管の内周面
30 主管部
30a 主管部の内周面
31 第1主管部
32 第2主管部
33 第3主管部
34 副管部
34a 副管部の内周面
41 第1接続端部
42 第2接続端部
43 第3接続端部
44 カソード取付端部
51 補助アノード
53 絶縁部材
55 温度調節部
57 気体排出バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デスミア処理槽においてデスミア処理に用いられた処理液を電解して再生するための電解再生処理装置に用いられる電解再生処理ユニットであって、
アノードとして機能する内周面を有するアノード配管と、
前記アノード配管の内周面と離隔した状態で前記アノード配管内に配置されるカソードと、を備え、
前記アノード配管は、
配管が接続される第1接続端部及び前記配管とは別の配管が接続される第2接続端部を有し、前記第1接続端部から前記第2接続端部までつづく前記処理液の流路を形成する主管部と、
前記カソードが取り付けられるカソード取付端部を有し、前記主管部の途中から筒状に延出し、内部が前記主管部内の流路と連通している副管部と、を含み、
前記カソードは、前記副管部内において前記カソード取付端部から前記主管部に向かって延びている、電解再生処理ユニット。
【請求項2】
前記主管部は、前記第1接続端部から前記第2接続端部まで直線状に延びる筒形状を有し、
前記副管部は、前記主管部に交差する方向に延びている、請求項1に記載の電解再生処理ユニット。
【請求項3】
前記アノード配管と電気的に接続され、前記カソードと離隔した状態で前記カソードに対向配置された補助アノードをさらに備えている、請求項2に記載の電解再生処理ユニット。
【請求項4】
前記カソードの先端部は、前記副管部を超えて前記主管部内の流路に位置しており、
前記補助アノードは、少なくとも前記カソードの先端部に対向する位置に設けられている、請求項3に記載の電解再生処理ユニット。
【請求項5】
前記補助アノードは、前記カソードの周りを囲むように前記カソードに沿って延びる筒形状を有し、
前記補助アノードの基端側の部位は、前記副管部の内周面に内接又は近接し、
前記補助アノードの先端側の部位は、前記主管部内の流路に位置して前記カソードの先端部を囲んでおり、かつ前記主管部内の流路を流れる処理液が通過可能な複数の貫通孔を有している、請求項4に記載の電解再生処理ユニット。
【請求項6】
前記主管部は、互いに交差する方向にそれぞれ延びる第1主管部及び第2主管部を含む屈曲した形状を有し、
前記副管部は、前記副管部と前記第1主管部とが直線状になるように前記主管部の屈曲部分につながっている、請求項1に記載の電解再生処理ユニット。
【請求項7】
前記カソードは、前記副管部を超えて前記第1主管部内の流路まで、又は前記副管部及び前記第1主管部を超えた位置まで延びている、請求項6に記載の電解再生処理ユニット。
【請求項8】
前記アノード配管と電気的に接続され、前記カソードと離隔した状態で前記カソードに対向配置された補助アノードをさらに備えている、請求項1,6又は7に記載の電解再生処理ユニット。
【請求項9】
前記カソードは、
前記副管部の前記カソード取付端部に取り付けられる基部と、
前記基部から前記主管部に向かって延びる延出部とを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の電解再生処理ユニット。
【請求項10】
前記カソードと前記アノード配管の内周面との接触を防止するために前記カソードに取り付けられ、前記カソードから前記アノード配管の内周面に向かう絶縁部材をさらに備えている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の電解再生処理ユニット。
【請求項11】
前記アノード配管の温度を調節するための温度調節部をさらに備えている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の電解再生処理ユニット。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の電解再生処理ユニットと、
前記デスミア処理槽から排出される前記処理液を前記電解再生処理ユニットに導く送り側配管と、
前記電解再生処理ユニットから排出される前記処理液を前記デスミア処理槽に導く戻し側配管と、を備えている電解再生処理装置。
【請求項13】
前記電解再生処理ユニットを複数備え、これらの電解再生処理ユニットが接続されてユニット集合体を構成しており、
前記デスミア処理槽から排出される前記処理液は、前記送り側配管を通じて前記ユニット集合体に導かれ、前記ユニット集合体から排出される前記処理液は、前記戻し側配管を通じて前記デスミア処理槽に戻される、請求項12に記載の電解再生処理装置。
【請求項14】
前記電解再生処理ユニットにおいて生じる気体を排出するための気体排出バルブをさらに備えている、請求項12又は13に記載の電解再生処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−244103(P2012−244103A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115689(P2011−115689)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000189327)上村工業株式会社 (101)
【Fターム(参考)】