説明

電解処理および浸漬用セル容器

【要 約】
【課 題】 試験片の水素チャージおよび/または腐食処理対象部分を実使用環境に近い状態として電解質中に簡単にセッティングでき、かつ当該処理中の局部的異常発錆を防止できる電解処理および浸漬用セル容器を提供する。
【解決手段】 水素チャージおよび/または腐食処理される試験片10の処理対象部分10Aを電解質中20に保持する電解処理および浸漬用セル容器1であって、試験片を通す一対の通し孔2と、該通し孔に前記試験片の処理対象部分の外側部分をシールして固定するシール手段3とを有し、電解質中に保持された処理対象部分の最上端が電解質の最上端よりも0.5mm以上、下方に位置するようにした。容器の開口部は、通し孔2あるいはさらにユーティリティ孔4のみとするのが好ましい。また、容器上部側の通し孔2は、容器内側に張出した筒状部5内に形成するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解処理および浸漬用セル容器に関する。電解処理および浸漬用セル容器とは、試験片を電解質(薬液)中に保持し、その所望部分を水素チャージ処理および/または腐食処理するために用いる容器である。試験片は、鉄鋼材料、アルミニウム、チタン等の金属材料からなり、形状は特に制限されず、板、管、棒等のいずれであってもよく、また特定の形状に機械加工されたものでも、実用部材から切出したままの不特定な形状のものでもよい。水素チャージおよび腐食を行う温度は特に制限されず、常温、低温、高温等のいずれであってもよい。
【背景技術】
【0002】
材料は種々の環境で使用される。その使用環境によっては、材料が腐食したり、水素が侵入したりして、材料が早期に破断したりする。そこで、かかる使用環境に適した材料を選定するために、水素チャージ環境下あるいは腐食環境下で定荷重試験したり、変動応力を負荷したり、低歪速度引張試験を行って、材料を評価することが多い。
【0003】
かかる評価を行うために、従来、材料を水素チャージさせる方法や腐食させる方法、および、そうした環境下で材料試験を行う方法として、例えば、U字曲げした試験片(ボルトでU字形に固定した形状の試験片)を、ビーカー等のガラス容器に入れた塩酸等の電解質に浸漬し、耐遅れ破壊特性を調査する方法(非特許文献1)や、縦置きに配置した試験片を筒状のガラス容器内に入れ、該容器の上下部をシールアダプタで試験片に固定し、容器内に電解質を満たして腐食あるいは水素チャージ環境として定荷重試験を行う方法(非特許文献2)や、無底広口ビンを上下逆にした構造のテフロン製セルを使って電気的に水素チャージした後、低歪速度で引張試験する方法(非特許文献3)が知られている。
【非特許文献1】長滝ら:NKK技報、No.145、(1994)、pp.33−39
【非特許文献2】東伸工業株式会社パンフレット9606200「卓上型 応力腐食割れ試験装置」
【非特許文献3】H.Asahi et al:Corrosion,vol.55,No.7,(1999),pp.644−652
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献3に開示された方法では、無底広口ビンを上下逆にした構造の容器を用いるから、装置が簡便になる利点がある。しかし、多くの場合、試験片の気液界面部分に錆が異常に発生し、この局部的異常発錆により水素チャージ条件や腐食条件が想定したものと一致しなくなる問題や、錆が電解質中に落ちてこれを赤茶色に汚染し、試験片の形態変化の目視観察が困難になるという問題がある。
【0005】
また、水素チャージする場合、正確を期すために脱気(電解質中に存在する酸素を追出すこと)する必要があり、そのために窒素等の不活性ガスをバブリングすることが必須である。このバブリングを少ない不活性ガス流量で効率良く行うために電解質中への送気配管の先端に多数の微細な泡を発生するバブラーを設けることが多いが、電解質中に錆が混じるとバブラーが目詰まりを起こして機能不全となるから、バブラーを用いずに不活性ガス流量を増やして脱気せざるをえないという問題や、飛沫が試験片に付着して気液界面部分より上部でも発錆が避け難い問題がある。
【0006】
また、非特許文献1に開示されているような、U字曲げした試験片(U字試験片)を塩酸等に浸漬する方法では、試験片全体が浸漬されて気液界面部分が存在しないから、前記局部的異常発錆はない。しかし、この方法では、試験片の一部のみに水素チャージや腐食処理を施すことはできず、また、U字に変形させた試験片を用いることから、応力がU字底部のみに偏在し、応力自体もU字底部の内側から外側にかけて一様ではなく、かかる応力や歪の分布状態では、実使用環境との違いが大きすぎ、この試験の結果を基に実使用環境への適用可否を推定するのは困難な場合が多いという問題がある。
【0007】
また、水素は、歪が入った部分にチャージされやすい傾向にあるので、この方法では、試験片中に一様に分布した拡散性水素を実現するのは困難である。またU字試験片の内Rを変えることにより応力を変えることが、水素チャージ量の変動に連動するので、材料の評価方法自体も問題がある。さらに、この方法が問題なのは、錆による窪みが無秩序に発生して応力集中位置がばらつき、実使用環境条件との対応が取れないことが多いことである。
【0008】
一方、非特許文献2に開示された方法は、縦置きに配置した試験片を筒状のガラス容器内に挿入し、該容器の上下部をシールアダプタで試験片に固定し、該容器に外部タンクから、該外部タンクと容器とを接続する往/復配管(容器の上蓋に取付けられている)を介して、電解質を循環させるという構造の装置を用いるものであり、上下のシールアダプタ間の容器内に電解質を充満させることで気液界面部分をなくして局部的異常発錆を抑止でき、また、実際の使用環境での応力状態に近い状態で試験することができる。
【0009】
しかし、このような装置構造では、簡便さに欠け、その装置のセッティングに非常に時間がかかる欠点がある。というのは、気液界面部分の生成を回避し、かつ電解質を円滑に循環させるためには、外部タンクや往/復配管も含む全循環系を電解質で満たした状態で循環させる必要があって、セッティング時に全循環系から気泡を追出すのに多大な時間を要するからである。また、このような装置構造では、常に脱気をし続ける方法は採れないので、あらかじめ全循環系を脱気しておく必要があるが、前記セッティングの時間がかかることもあって、多少の溶存酸素の混入は避けられない問題もある。また、この方法では、電気化学手段による、試験片への水素チャージは実質不可能である。試験片を陰極にして、「Fe→Fe2++2e、H+e→H」という反応をもとに、水素原子をチャージしても、一部水素ガス(H)として液中に気泡が混入してしまうからである。
【0010】
また、この装置を、外部タンクからの電解質の供給を止めて、往/復配管を取り外して、独立した容器として転用しようとすると、非常に問題が多い。大気環境で実験すれば、液面低下は避けられず、それにより容器の上蓋下部と接触している試験片の上部に気液界面部分が生じ、局部的異常発錆が促進されてしまう。また、大気中の酸素が電解質に徐々に侵入するのを脱気するために、往/復配管を接続していた配管穴の一方から泡を供給して他方から排出するとき、泡の抜け先が一箇所の配管穴に限られるため、僅かな装置の歪やセット位置のずれにより上蓋直下に泡が溜まりやすく、これによっても試験片の上部に気液界面部分が生じる。
【0011】
上記従来技術の問題に鑑み、本発明は、試験片の水素チャージおよび/または腐食処理対象部分を実使用環境に近い状態として電解質中に簡単にセッティングでき、かつ当該処理中の局部的異常発錆を防止できる電解処理および浸漬用セル容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成した本発明は、以下のとおりである。
【0013】
(1) 水素チャージおよび/または腐食処理される試験片の処理対象部分を電解質中に保持する電解処理および浸漬用セル容器であって、前記試験片を通す一対の通し孔と、該通し孔に前記試験片の処理対象部分の外側部分をシールして固定するシール手段とを有し、前記電解質中に保持された前記処理対象部分の最上端が該電解質の最上端よりも0.5mm以上、下方に位置することを特徴とする電解処理および浸漬用セル容器。
【0014】
(2) 前記一対の通し孔は、それらの一方が容器上部側、他方が容器下部側に位置することを特徴とする(1)記載の電解処理および浸漬用セル容器。
【0015】
(3) 容器の開口部として、前記一対の通し孔のみ、あるいはこれにさらに、一または二以上のユーティリティ孔を加えたもののみを有することを特徴とする(1)または(2)に記載の電解処理および浸漬用セル容器。
【0016】
(4) 前記開口部のうち容器上部側のものの水平断面積は、容器内側の最大水平断面積の95%以下であることを特徴とする(3)記載の電解処理および浸漬用セル容器。
【0017】
(5) 容器上部側の通し孔が、容器内側に張出した筒状部内に形成されていることを特徴とする(2)〜(4)のいずれかに記載の電解処理および浸漬用セル容器。
【0018】
(6) 容器上部側の通し孔に用いるシール手段は、容器内側に張出した凸状部を有することを特徴とする(2)〜(5)のいずれかに記載の電解処理および浸漬用セル容器。
【0019】
(7) 容器上部側に通し孔およびユーティリティ孔を有する容器上部の内面は、該通し孔からユーティリティ孔に近づくほど上方に位置することを特徴とする(3)〜(6)のいずれかに記載の電解処理および浸漬用セル容器。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、試験片の処理対象部分の最上端が電解質の最上端よりも0.5mm以上、下方に位置するようにしたことにより、処理対象部分の全体を確実に電解質中に保持することができ、気液界面部分が生じない。よって、局部的異常発錆は起らない。また、試験片と電解質液面との相対位置が限定されるだけなので、試験片のセッティングも簡単にできる。また、試験片の形状に格別の制約がないから、実使用環境に近い状態で水素チャージおよび/または腐食処理の実験ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、試験片を実使用環境に近い状態で水素チャージし、あるいは腐食させ、あるいはこれらの両方を行い、定荷重試験、変動応力負荷試験、低歪速度引張試験等の機械試験を行って、材料の使用適否を推定するための一連の実験手法の根幹をなす。
【0022】
水素チャージ処理では、通常、試験片と電極(例えば白金電極)を電解質中に配置し、試験片を陰極、電極を陽極として電気化学的に水素をチャージさせる方法が採られる。このとき、電解質中の水素イオンが陰極からの電子と反応し、生成した水素原子が試験片に侵入し、試験片自体の激しい腐食を伴わない。一方、試験片を電解質の一種である酸などに浸漬する方法もある。このとき、点状、あるいは全面に腐食(錆び)が見られる。腐食により、試験片の金属成分がイオンとして溶出し、その際に発生する電子と、電解質中の水素イオンが反応して、生成した水素原子が試験片に侵入する。したがって、浸漬することによって、「腐食→水素チャージ」が起こり、腐食ピットが形成されるとともに、水素チャージされた状態になる。しかしながら、チャージされた水素は、容易に抜けるため、常に、チャージされる水素量と、放出される水素量が釣合った状態でないと、試験片には水素が保持されえないため、場合によっては、単に腐食ピットが形成されただけという状況に近いこともある。
【0023】
これらの処理の反応条件を実使用環境に近づけるように制御して実験するには、試験片の処理対象部分が電解質の気液界面に接することがないようにする必要がある。気液界面部分が生じると、この部分で局部的異常発錆が起り、チャージされる水素量が増大し、しかも腐食による切欠が導入されるため、処理の反応条件を実使用環境に近づけるのが困難となる。
【0024】
本発明者は、鋭意検討した結果、気液界面部分が生じるのを防止するためには、電解質中の試験片の処理対象部分の最上端を該電解質の最上端よりも0.5mm以上、下方に位置させる必要があることを見出した。電解質中の試験片の処理対象部分の最上端が、該電解質の最上端より下方に位置しても、電解質最上端からの鉛直方向距離(HLSと記す)が0.5mmに満たない場合は、大気環境での電解質の液面低下や、荷重負荷実験中の液面変動などにより、気液界面部分が生じやすく、局所的異常発錆を防止することができない。なお、HLSは大きいほど好ましい。
【0025】
試験片の配置は横置き、縦置きのいずれであってもよい。図1、図2は本発明例を示す断面図であり、図1は横置き配置、図2は縦置き配置の場合である。容器(電解処理および浸漬用セル容器)1は、その本体に試験片10を通す一対の通し孔2が設けられており、これらの通し孔2に試験片10の処理対象部分10Aの外側部分をシール手段3でシールし固定する。電解質20中に保持された処理対象部分10Aの外側部分はシール手段3でシールされており、電解質20には接触しない。図1、図2のいずれにおいても、電解質20の最上端(液面20A)からその下方の処理対象部分10Aの最上端までの鉛直方向距離HLSは0.5mm以上としている。
【0026】
容器1本体の材質は、特に限定されず、ガラス、テフロン(テトラフルオロエチレンC24の重合体)、耐薬品塩化ビニルなどを用いうる。ただし、処理中の試験片観察には、不透明なものは適さない。シール手段3の材質は、特に限定されず、一般ゴム栓、シリコーンゴム栓などを用いうる。シール手段3には試験片挿入用孔が設けられている。状況により、シールテープを巻いたり、シリコーンゴムを塗って、電解質が漏れないように工夫してもよい。なお、シール手段3から容器外側に突き出た試験片部分は、処理中または処理後に行う各種機械試験の試験機にチャッキングさせる掴み部になる。かかる試験機は、試験片配置を縦置き仕様としたものが多いので、これに適合させるために、本発明では、図2のように、一対の通し孔2の一方は容器上部側、他方は容器下部側に設けるのが好ましい。
【0027】
容器上部側にはユーティリティ孔を設けることが好ましい。電解質注入、電極挿入、脱気配管挿入、コンデンサー(蒸発防止器)装着などを行うためである。図2では、このようなユーティリティ孔4を1つ設けているが、このようなユーティリティ孔4は1つに限られず、必要に応じて2つ以上設けてもよい。図3には、ユーティリティ孔4を2つ設けた例を示した。また、ユーティリティ孔4は、図2、図3のように、容器外側に筒状に張出させるのが、電解質20の漏出防止の観点から好ましい。
【0028】
また、電解質の大気中への蒸発による液面低下を極力抑える観点から、容器1は、通し孔2とユーティリティ孔4以外は開口部をもたない構造とするのが好ましい。この点は、試験片配置が縦置きの場合に限らず、横置きの場合でも同様である。
【0029】
もっとも、容器上部側の開口部が大きすぎると、これに栓をしていても電解質が大気に触れて蒸発して液面が低下し、試験片の処理対象部分に気液界面部分が生じるのを防ぐのは困難であるから、例えば図4に示すように、容器上部側の開口部の水平断面積Sは、容器1内側の最大水平断面積Smaxの95%以下とするのが好ましい。なお、図4では、容器上部側の開孔部が通し孔2のみからなる場合を示したが、これにユーティリティ孔が加わった場合は、通し孔とユーティリティ孔の水平断面積の合計をSmaxの95%以下とするのが好ましい。
【0030】
また、試験片が縦置き配置の場合、図5に示すように、容器上部側の通し孔2は、容器内側に張出した筒状部5を設けてその筒状部内に形成するのが好ましい。これにより、容器上部側のシール手段3の容器内側への張出し部分が、前記筒状部5内面との摩擦力により拘束されるので、同シール手段3の下端を液面20A下に深く沈めてHLSを大きくしようとするとき、シール手段3の容器1への固定状態がよりいっそう安定化するとともに、電解質の液面低下に対しても、気液界面部分が生成しにくい構造になる。
【0031】
また、試験片が縦置き配置の場合、図6に示すように、容器上部側のシール手段3の容器内側に、同側に張出した凸状部6を設けると、同シール手段3の容器1への固定状態を維持しながらHLSを大きくすることができて好ましい。場合によっては、該シール手段自体にユーティリティ用の孔を設けてもよい。
【0032】
また、容器上部側に通し孔およびユーティリティ孔を有する容器の場合、例えば図7に示すように、容器上部側の通し孔2からユーティリティ孔4に近づくほど容器上部の内面を上方に位置させる(より高い位置とする)と、バブリングを行うとき、脱気用配管7から電解質20中に放出され容器上部の内面に到達した泡を、泡の流れを示す矢印8の方向に円滑に誘導しユーティリティ孔4から逃がすことができるから、泡が容器1内で停留・合体・肥大化して処理対象部分10Aに気液界面部分を形成しないよう、有効に抑止することができて好ましい。また、試験片中にチャージしきれなかった余剰の水素原子が、水素分子(ガス)となって放出される泡も、同様に、ユーティリティ孔4へ逃がすよう、機能する。なお、図7において、21は定電流電源、22は白金電極であり、図示のように、試験片10を陰極、白金電極22を陽極として水素チャージ処理が行われる。
【0033】
なお、容器の孔の内面は、容器内側に向かって孔径が小さくなるテーパ面とすることが望ましい。孔にゴム栓を取付ける場合に、取付けたゴム栓がより安定な状態で孔に保持されるからである。
【実施例】
【0034】
実施例では、図5に示した本発明例において容器上部側にユーティリティ孔4を図5の1個からさらに2個増設した形態の容器をガラスにて作製した。試験片10の処理対象部分10Aの長さは36mm、容器1の最大水平断面積Smaxは7850mm2、容器上部側の1個の通し孔2の水平断面積は314mm2、3個のユーティリティ孔4の水平断面積はいずれも177mm2とした。すなわち、容器上部側の開口部の水平断面積は合計で、314+177×3=845mm2であり、これはSmaxの11%(95%以下)である。また、筒状部5の容器内側への張出し長さは15mmとし、ユーティリティ孔4の容器外側への張出し長さは50mmとした。シール手段3としては一般ゴム栓の中央部に試験片の挿入穴を開けたものを用いた。上部は該挿入穴に入れて固定した(サンプルとゴム栓の摩擦で固定)だけのものであるが、下部は、該挿入穴に通したあと、シリコーンゴムでシールした。
【0035】
この容器1を試験片10に取付け、シール手段3にて固定後、ユーティリティ孔4から電解質20を、液面20Aが容器上部側のシール手段3の下端から5mm上方の位置にくるまで満たし、ユーティリティ孔の1つから白金電極、もう1つから脱気用配管を挿入し、試験片10を陰極、白金電極を陽極として、水素チャージ処理を行いながら定荷重試験する実験を行った。試験中はバブリングを続行した。
【0036】
その結果、連続300時間の試験中、液面20Aは初期位置から2mm低下したが、HLSは0.5mm以上に保たれ、処理対象部分10Aに気液界面部分は生じず、局所的異常発錆を起こさずに、所望の条件どおりの実験を遂行できた。なお、試験前のセッティングは極めて容易で、セッティング作業の所要時間は4分程度であった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、水素侵入環境や腐食環境に対する材料の適合性を評価する試験に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】試験片配置が横置きの場合の本発明例を示す断面図である。
【図2】試験片配置が縦置きの場合の本発明例を示す断面図である。
【図3】複数のユーティリティ孔を有する本発明例を示す断面図である。
【図4】容器上部側の開口部の水平断面積を容器内側の最大水平断面積の95%以下とした本発明例を示す断面図である。
【図5】容器上部の通し孔が容器内側に張出した筒状部内に形成されている本発明例を示す断面図である。
【図6】容器内面側に張出した凸状部を設けたシール手段を用いた本発明例を示す断面図である。
【図7】容器上部側の内面を同側の通し孔からユーティリティ孔に近づくほど上方に位置させた本発明例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 容器(電解処理および浸漬用セル容器)
2 通し孔
3 シール手段
4 ユーティリティ孔
5 容器内側に張出した筒状部
6 シール手段の容器内面側の凸状部
7 脱気用配管
8 泡の流れを示す矢印
10 試験片
10A 処理対象部分
20 電解質(薬液)
20A 液面
21 定電流源
22 白金電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素チャージおよび/または腐食処理される試験片の処理対象部分を電解質中に保持する電解処理および浸漬用セル容器であって、前記試験片を通す一対の通し孔と、該通し孔に前記試験片の処理対象部分の外側部分をシールして固定するシール手段とを有し、前記電解質中に保持された前記処理対象部分の最上端が該電解質の最上端よりも0.5mm以上、下方に位置することを特徴とする電解処理および浸漬用セル容器。
【請求項2】
前記一対の通し孔は、それらの一方が容器上部側、他方が容器下部側に位置することを特徴とする請求項1記載の電解処理および浸漬用セル容器。
【請求項3】
容器の開口部として、前記一対の通し孔のみ、あるいはこれにさらに、一または二以上のユーティリティ孔を加えたもののみを有することを特徴とする請求項1または2に記載の電解処理および浸漬用セル容器。
【請求項4】
前記開口部のうち容器上部側のものの水平断面積は、容器内側の最大水平断面積の95%以下であることを特徴とする請求項3記載の電解処理および浸漬用セル容器。
【請求項5】
容器上部側の通し孔が、容器内側に張出した筒状部内に形成されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の電解処理および浸漬用セル容器。
【請求項6】
容器上部側の通し孔に用いるシール手段は、容器内側に張出した凸状部を有することを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の電解処理および浸漬用セル容器。
【請求項7】
容器上部側に通し孔およびユーティリティ孔を有する容器上部の内面は、該通し孔からユーティリティ孔に近づくほど上方に位置することを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の電解処理および浸漬用セル容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−71315(P2006−71315A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−251908(P2004−251908)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】