説明

電解析出方式の表示装置及びその駆動方法

【課題】 良好な階調性が得られる多階調表示の実現が可能な電解析出方式の表示装置を提供する。
【解決手段】 第1の電極2と、第2の電極4と、電解質溶液3と、を有する画素が複数配置され、第1及び第2の電極間に印加される電圧の電圧値が析出過電圧値以上になると電気めっきの析出が開始され、析出が開始されてから電圧値が析出過電圧値未満の所定電圧値になると析出が終了する表示装置であって、電極間に印加される電圧の電圧値を制御する制御部は、第1の電圧値、第2の電圧値、第3の電圧値、のいずれかの電圧値を複数の画素に夫々選択的に与える第1の動作と、第1の動作の後に第2の電圧値を複数の前記画素に一括に与える第2の動作と、を有するサブフィールド動作を少なくとも2回以上繰り返し、且つ第3の電圧値を与えるタイミングによって画素の階調を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気めっきを調光に利用した電解析出方式の表示装置及びその駆動方法に関するものであり、所謂電子ペーパーに適した表示装置及び駆動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、視認性が高く消費電力の少ない表示装置として、電子ペーパーの開発が盛んに行われている。そのような電子ペーパーに適した表示装置として、耐光性の観点から電気めっきを調光に利用した電解析出方式の表示装置が注目されている。このような電解析出方式の表示装置の例が特許文献1や特許文献2に記載されている。
【0003】
特許文献1には、マトリクス状に配した電極により各画素において電圧を印加して電気めっきを析出又は溶解させて画像を表示する表示装置が開示されている。そして特許文献1では、電気めっきを析出させる画素に選択的に析出過電圧(閾値電圧)以上の電圧を加えてアドレス駆動した後、析出過電圧より低い電圧を加える駆動方法が開示されている。具体的には、析出過電圧(閾値電圧)以上の電圧を加えるアドレス駆動により所定の画素に核となる結晶を析出させる。その後、析出過電圧(閾値電圧)より低い電圧を加えることによりアドレス駆動された画素に電気めっきを追加析出又は書き込み状態の保持を行っている。
【0004】
また特許文献2では、画素電極に析出過電圧を加える時間を制御して階調表示を行っている。特許文献2には、析出閾値電圧を印加する時間を複数のサブフィールドに分割し、各サブフィールドにおいて電圧を印加するか否かを選択することで析出閾値電圧を加える時間の制御を行うことが開示されている。これにより特許文献2では多階調表示を実現している。
【特許文献1】特開2003−337350号公報
【特許文献2】特開2004−170850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、2値(白黒)表示は可能であるが、多階調表示を行う開示はない。また複数の画素がマトリクス状に配された電解析出方式の表示装置においては、画素を選択するタイミングを鑑みると、特許文献1の方式では、多階調表示の実現は容易ではない。
【0006】
また、特許文献2では、選択された画素には常に析出閾値電圧以上の電圧が加えられた状態となり、析出された電気めっきの表面状態に影響を与える。そのため、良好な反射特性又は吸収特性を有する電気めっきを形成することが困難であり、良好な階調性が得られない可能性がある。
【0007】
そこで、本願発明では、良好な階調性が得られる多階調表示の実現が可能な電解析出方式の表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明の表示装置は、第1の電極と、第1の電極と対向して配置された第2の電極と、第1及び第2の電極と接して配置された金属イオンを含む電解質溶液と、を有する画素が複数配置されている。そして、第1及び第2の電極間に印加される電圧の電圧値を設定する制御部を有し、電圧値が析出過電圧値以上になると電気めっきの析出が開始され、析出が開始されてから電圧値が析出過電圧値未満の所定電圧値になると析出が終了する。ここで、制御部は、所定電圧値以上の第1の電圧値、第1の電圧値より大きく且つ析出過電圧値未満の第2の電圧値、及び析出過電圧以上の第3の電圧値、のいずれかの電圧値を複数の前記画素に夫々選択的に与える第1の動作を行う。そして、第1の動作の後に第2の電圧値を複数の画素に一括に与える第2の動作を行う。この第1の動作と第2の動作を有するサブフィールド動作を少なくとも2回以上繰り返し行い、且つ第3の電圧値を与えるタイミングによって前記画素の階調を制御する。
【0009】
また、本願発明の表示装置の駆動方法は、第1の電極と、第1の電極と対向して配置された第2の電極と、第1及び第2の電極と接して配置された金属イオンを含む電解質溶液と、を有する画素が複数配置された表示装置に対してなされる。そして、第1及び第2の電極間に印加される電圧の電圧値が析出過電圧値以上になると電気めっきの析出が開始され、析出が開始されてから電圧値が析出過電圧値未満の所定電圧値になると析出が終了する。ここで、所定電圧値以上の第1の電圧値、第1の電圧値より大きく且つ析出過電圧値未満の第2の電圧値、及び析出過電圧以上の第3の電圧値、のいずれかの電圧値が複数の画素に夫々選択的に与えられる第1の動作を行う。そして、第1の動作の後に第2の電圧値が複数の画素に一括に与えられる第2の動作を行う。この第1の動作と第2の動作を有するサブフィールド動作を少なくとも2回以上繰り返し行い、且つ第3の電圧値が与えられるタイミングによって画素の階調の制御がなされる。
【発明の効果】
【0010】
本願発明によると、複数の画素のうち選択された画素の電極間に析出過電圧以上の電圧を与え且つ選択されなかった画素の電極間に析出過電圧未満の電圧を与えて、選択された画素のみに電気めっきの析出核を生成する核生成動作を行う。また、複数の画素の電極間に一括的に析出過電圧未満で且つ析出が終了する電圧以上の電圧を与える核成長動作を行う。そして、核生成動作と核成長動作とを含むサブフィールド動作を複数回行う。更に、要求される階調に応じて、画素毎に核生成動作のタイミングを規定している。このような動作を行うことにより多階調表示が可能となる。また、常に析出過電圧がかかることなく、電気めっきの析出の持続(成長)の時には析出過電圧未満の電圧でなされているため、良好な反射特性又は吸収特性を有する電気めっきを形成することが可能となる。それにより、本願発明によると、良好な階調性が得られる多階調表示の実現が可能な電解析出方式の表示装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、図面を用いて本願発明を実施するための具体的な形態を詳細に説明する。図2(a)は本発明の電解析出方式の表示装置としての一実施形態である反射型の表示装置の断面図であり、これを用いて装置の構造を説明する。また、なお、本実施形態の電解析出方式の表示装置はパッシブマトリックス駆動でもアクティブマトリックス駆動でも適用可能である。図3にパッシブマトリックス駆動をする場合の斜視図を示す。なお、図2(a)はパッシブマトリックス駆動とアクティブマトリックス駆動との共通の構成を示す。
【0012】
図2(a)、(b)に示す電解析出方式の表示装置において、装置の表面を保護するための光透過性の支持基板1の一表面上に、ITO等の光透過性の第1の電極2が配置されている。支持基板1に対向して支持基板6が配置され、支持基板1上には第1の電極2に対向して第2の電極4が配置されている。この第2の電極4は、後述する電解質溶液器3に含まれる、電気めっき法により電解析出され得る金属イオンと同じ金属材料であることが好ましい。支持基板1,6の間には、その間隔を保持するためのスペーサー5が設けられており、第1及び第2の電極2,4の間に形成された領域には、第1及び第2の電極2,4と接して電解質溶液3が配置されている。電解質溶液3には、電気めっき法により電解析出され得る金属イオンが含有されている。この金属イオンは、第1の電極2と第2の電極4の間に与えられる電圧、または第1の電極2と第2の電極4との間に流れる電流の向きにより、第1の電極2又は第2の電極に電気めっきとして析出される。第1の電極2を陰極とし第2の電極4を陽極として電圧を印加し、第1の電極2と第2の電極4との間に電解質溶液3を介して電流を流すと、電解質溶液3に含まれる金属イオンが第1の電極2の表面に還元析出して、第1の電極2に電気めっきが形成される。電気めっきが形成された画素からは電気めっきの色が視認される。この際、析出する電気めっきの色は第1の電極2の組成や電解質溶液3の組成などの影響を受ける。例えば第1の電極2がITOであり、電解質溶液3が銀イオンを含有する溶液である場合、黒色の電気めっきを形成することができ、表面からは黒色が視認される。析出された電気めっきは、電流の向きを逆にすると酸化されて電解質溶液3に溶解する。電気めっきが形成されていない画素は、透明であるかあるいは第2の電極4やその背面に配置される色付反射体による反射光の色が視認される。このように1画素ずつに電気めっきを施していくことにより、マトリクス表示をすることが可能となる。なお、ここでは第1の電極2を陰極とし第2の電極4を陽極として電圧を印加して第1の電極2に電気めっきを形成する例を用いて説明したが、第2の電極4を陰極とし第1の電極2を陽極として電圧を印加してもよい。その場合には第2の電極4に電気めっきが形成されることとなる。なお、電解析出方式の表示装置は、第1の電極2、第2の電極4、及び電解質溶液3を含めて画素を構成し、画素が2次元状に複数配置されている。
【0013】
以上の説明では、電極と電解質溶液の材料により電気めっきの色を規定したが、電気めっきの膜色は、電流密度によっても制御が可能である。例えば第1の電極2をITOで構成し、該ITO表面に亜鉛を電気めっきする場合、30mA/cm程度の低い電流密度で電気めっきをすると白色の膜が析出するが、100mA/cmで電気めっきすると黒色の膜が析出する。これを利用して、第1の電極2を黒色に電気めっきし、第2の電極4を白色に電気めっきすること等ができる。
【0014】
この現象は限界電流密度の概念を用いて、次のように説明される。電気めっき液と接する電極表面の電気二重層に注目すると、電気二重層内の金属イオン濃度は、電析による消費と、溶液内部からの拡散による供給の、バランスによって規定される。イオンの消費速度は電流密度に比例する。充分低い電流密度では、イオンの消費よりも拡散による供給が優っているため、イオンは電極表面近傍に豊富に存在し、電気めっきの表面エネルギーを極小にするサイトから優先的に電析する。結果として、電気めっきの電極と接する側の表面は平滑になり、白色の金属ならば、白色を呈することになる。しかしある電流密度では、イオンの消費速度が供給速度と等しくなる。この電流密度を限界電流密度と称する。限界電流密度では、電気二重層内のイオン濃度はほぼゼロとなり、電気二重層は常にイオン欠乏状態にあるため、拡散によって供給されたイオンは、析出サイトを選択する余地も無く、すぐに電析することになる。結果、電気めっきの電極と接する側の表面は疎になり、黒色を帯びる。このように黒色を帯びる現象は限界電流密度に近い電流密度でも生ずる。このように、電極間に流れる電流の電流密度を制御することにより、電気めっきの電極と接する側の表面の平滑性を制御することが可能となり、電気めっきの色を制御することが可能となる。
【0015】
限界電流密度は色で判断することができ、電流密度を徐々に高めて限界電流に近づくと、膜が粗くなり、結果として黒くなる。色が黒色になった電流密度を限界電流密度又はそれに近い電流密度とすることができる。このように、限界電流密度による色の変化は目視でも明らかに判断できるが、さらに反射率を測定することで定量化することができる。膜が黒くなった電流密度を超えてさらに電流密度を上げていくと電気めっきが起こらなくなり、液中に粉が発生する。したがって、電気めっきを黒色とする場合、電流密度を、限界電流密度と同じ値、又は限界電流密度より低く且つ限界電流密度に近い値に設定することが望ましい。
【0016】
このように、電流密度を変えることで、白色、黒色の電気めっきを形成することができる。すなわち、第1の電極2、第2の電極4を共にITOとし、第1の電極2を陰極とし第2の電極4を陽極として、限界電流密度又はそれに近い電流密度の電流を流すことで、第1の電極2が電気めっきされ、表面が黒色となる。一方、第2の電極4を陰極とし第1の電極2を陽極として限界電流密度より十分低く電流を流すと、第2の電極4が電気めっきされ、表面が白色となる。上述の方式を以下に説明する階調表示方式に適宜適用することにより、更なる階調表示が可能となる。
【0017】
第1の電極2及び/又は第2の電極4の表面で形成/消滅される電気めっきは、その膜厚を調整することで、光の透過率または反射率を調節して階調を制御し得る機能を有する。以下に図3を用いてその際の現象を説明する。
【0018】
図2(a)の第1の電極2に図3(a)に示す三角波形の電圧を加えて、第1の電極2の電圧値と第1及び第2の電極間の電流の相関を観察するサイクリックボルタンメトリーによって得られた電流−電圧過渡応答特性を図3(b)に示す。ここで図3(b)のポイントA〜Cは、図3(a)のポイントA〜Cに対応している。なお、本説明において、第1の電極2にはITOを用い、第2の電極4には銀を用い、電解質溶液3には銀イオンが含まれているものとする。
【0019】
図3(b)において、ポイントAでは第1の電極2上にまだ電気めっきが析出されていない状態にある。この状態から第1の電極2を陰極、第2の電極4を陽極として、第1の電極2に負極性の電圧を与え、その電圧値を大きくしていくと、しばらくは電気めっきは析出されない。そして電圧値が「ある閾値」|Vth|を超えると、第1の電極2への電気めっきの析出が始まり、第2の電極4から第1の電極2に電流が流れる。ここで、電気めっきが析出されていない電極に電気めっきの析出が開始される「ある閾値」を析出過電圧の値である「析出過電圧値」と称する。この際、電解質溶液3に接する第2の電極4の表面では、Ag→Ag+eの反応で銀のイオン化が起こり、第1の電極2の表面では、Ag+e→Agの反応で第1の電極2に銀めっきが析出される。電気めっきの析出は、第1の電極2に電気めっきの析出核が生成されることによって開始され、析出核が成長することにより析出される電気めっきの量(厚さ)が増加していく。このような反応が起こるためには、析出過電圧値|Vth|より大きい負極性の電圧値が必要であり、析出過電圧値|Vth|よりも小さな電圧値では、第1の電極2への電気めっきの析出は開始されない。図3(b)においては、析出過電圧値以上の電圧値を与えたところで電流が流れ始めており、上記現象が見受けられる。第1の電極2の電圧値を負極性に析出過電圧値|Vth|より大きくすると電流値が増加し、時間あたりに析出される電気めっき(銀めっき)の量が多くなる。そして、第1の電極2を図3(a)のポイントBに相当する電圧値としたときに最も大きな負方向の電流値が観測される(図3(b)のポイントB)。
【0020】
続いて三角波形に従って第1の電極2の電圧値を小さくしていき、析出過電圧値|Vth|を下回る電圧値になっても析出は継続される。そして図3(b)のポイントAである析出過電圧値未満の所定電圧値になると電気めっきの析出は終了し、それを過ぎると、析出時とは逆方向の正方向の電流が流れ始め、第1の電極2に析出された電気めっきは電解質溶液3中に溶解する。第1の電極2に析出していた電気めっきが全て溶解すると電流は一旦流れなくなるが、さらに第1の電極の電圧値を正方向に大きくすると、電解質溶液3中の銀以外の成分の反応によって多少の電流が流れる。これが図3(b)におけるポイントCに相当する。
【0021】
一方、第1及び第2の電極にいずれも銀を用いた場合の電流−電圧過渡応答特性を図3(c)に示す。図3(c)では電圧値にほぼ比例して電流が流れており、傾きがほぼ一定である。図3(c)の示す重要な知見は、銀電極に同じ金属である銀をめっきする場合は、抵抗値がほぼ変化しないということである。これは、先の例においてITOである第1の電極2に銀めっきが形成された状態と同じであり、第1の電極2に電気めっきが形成された状態では、電圧値に比例して析出される電気めっきの量(厚さ)を制御することができることを示唆している。これら図3(b)、(c)により、第1の電極2と第2の電極4の間で同方向に流れる電流の時間積分である通電電荷量を制御することによって、第1の電極2に析出される電気めっきの厚さを調節され、それによって階調表示を行い得ることがわかる。本発明は、後述の通り、上述の原理を最大限に利用したものである。
【0022】
次に、図1及び図4を用いて、本発明における電解析出方式の表示装置及び駆動方法について具体的に説明する。図4は、本発明におけるパッシブマトリックス駆動方式を採用した電解析出方式の表示装置の概要図であり、図1は図4の表示装置のタイミングチャートである。
【0023】
まず、図4を用いて本発明におけるパッシブマトリックス駆動方式を採用した電解析出方式の表示装置の構成を説明する。図4において、第1の電極2はそれぞれ行単位で分割されており、P行目の第1の電極を2P、Q行目の第1の電極を2Q、R行目の第2の電極を2Rと示している。また、第2の電極4はそれぞれ列単位で分割されており、A列目の第2の電極を4A、B行目の第2の電極を4B、C行目の第2の電極を4Cと示している。第1の電極2P,2Q,2Rには行選択回路7が電気的に接続されており、行選択回路7は行選択電位Vselectと非選択電位(GND)と消去電位Vdelを含む行選択信号を行毎に供給する。ここで、行選択電位Vselectが本願発明の第1の電位に相当し、非選択電位(GND)が本願発明の基準電位に相当し、消去電位Vdelが本願発明の第4の電位に相当する。また、行選択回路7は本願発明の第1の選択回路に相当する。第2の電極4A,4B,4Cには列選択回路8が電気的に接続されており、列選択回路8は析出核生成電位Vsigと析出保持電位Vを含む列選択信号を列毎に供給する。ここで、析出核生成電位Vsigが本願発明の第3の電位に相当し、析出保持電位Vが本願発明の第2の電位に相当する。また、列選択回路8は本願発明の第2の選択回路に相当する。これら行選択回路7、列選択回路8は映像信号に基づいて制御回路9によって制御される。つまり、これら行選択回路7、列選択回路8、及び制御回路9を含む制御部により、第1及び第2の電極間に印加される電圧値が設定される。これらの各電電位は、第1の電極2を陰極とし第2の電極4を陽極として、以下の条件を満たすように選択する。
select>GND>Vdel
−Vdel>GND>V>Vsig
|Vsig−Vselect|>|Vth|>|V−Vselect|>|V
次に、図1を用いて本発明におけるパッシブマトリックス駆動方式を採用した電解析出方式の表示装置の動作を説明する。図1において、V,V,Vは、行選択回路7から第1の電極2P,2Q,2Rにそれぞれ与えられる行選択信号の電位であり、V,V,Vは、列選択回路8から第2の電極4A,4B,4Cにそれぞれ与えられる列選択信号の電位である。また、図1における(P,A)は、第1の電極2Pと第2の電極4Aが交差する交差部において、第1の電極2Pを基準とした第2の電極4Aに係る電位である。同様に(Q,A)は2Qと4Aの交差部(Q,A)において第1の電極2Qを基準とした第2の電極4Aに係る電位で、(Q,B)は2Qと4Bの交差部(Q,B)において第1の電極2Qを基準とした第2の電極4Bに係る電位である。これらは、表示領域となる電極の交差部の代表的な箇所を例示したものである。
【0024】
まず第1の核生成期間において、行選択回路7、列選択回路8、及び制御回路9を含む制御部は、以下に説明するいずれかの電圧値を複数の画素の電極間に夫々選択的に与える動作を行う。この動作は本願発明の第1の動作に相当する。第1の電極2P,2Q,2Rに順次に行選択電位Vselectが与えられ、第2の電極4Aには第1の電極2Qの選択電位Vselectに同期して析出核生成電位Vsigが与えられる。また、第2の電極4B,4Cには析出保持電位Vが与えられている。これにより交差部(P,A)、(Q,B)には、析出保持電位Vと選択電位Vselectの電位差である電圧値|V−Vselect|が与えられる。この電圧値は本願発明の第2の電圧値に相当する。一方、交差部(Q,A)には、析出核生成電位Vsigと選択電位Vselectの電位差である電圧値|Vsig−Vselect|が与えられる。この電圧値は本願発明の第3の電圧値に相当する。この状態では、交差部(Q,A)の電圧値|Vsig−Vselect|は析出過電圧値|Vth|以上であるため、交差部(Q,A)には電流が流れて電気めっきの析出核が生成される。一方、交差部(P,A)、(Q,B)の電圧値|V−Vselect|は析出過電圧値|Vth|未満であるため、交差部(P,A)、(Q,B)には電流は流れず電気めっきの析出核は生成されない。また、行選択電位Vselectが与えられていない行の交差部には、少なくとも所定電圧値以上の第1の電圧値|V|が与えられている。この動作によってなされた状態を図5(a)に示す。
【0025】
続いて第1の核成長期間において、第1の電極2P,2Q,2Rに行選択電位Vselectが与えられ、第2の電極4A,4B,4Cには析出保持電位Vが与えられている。これにより全ての交差部には、析出保持電位Vと選択電位Vselectの電位差である電圧値|V−Vselect|が一括に与えられる。この状態において、交差部(Q,A)では、電気めっきの析出核が存在するため、第1の核成長期間での電圧値|V−Vselect|が析出過電圧値|Vth|未満であるにも関わらず電流が流れて電気めっきが析出される。一方、交差部(P,A)、(Q,B)等の他の交差部では、電気めっきの析出核が存在しないため、第1の核成長期間での電圧値|V−Vselect|が析出過電圧値|Vth|未満であるため電流が流れず、電気めっきは析出されない。この状態を図5(b)に示す。つまり核成長期間において制御部は、先の第1の動作の後に第2の電圧値である|V−Vselect|を複数の画素の電極間に一括に与える動作を行う。この動作は本願発明の第2の動作に相当する。
【0026】
この核生成期間と核成長期間がサブフィールド期間に相当する。この核生成期間は核成長期間に比べて極めて小さく、核生成期間の幅Taは、核成長期間の幅Tbより2〜3桁小さい。そのため、析出される電気めっきの厚さ及びそれに起因する表示特性は、核成長期間によって制御されることとなる。また、サブフィールド期間に行われる動作(サブフィールド動作)には、上述の第1の動作と第2の動作が含まれる。
【0027】
次に第2の核生成期間において、制御部が再び上述の第1の動作を行う。第2の核生成期間においては、第1の電極2P,2Q,2Rに順次に行選択電位Vselectが与えられ、第2の電極4Bには第1の電極2Qの選択電位Vselectに同期して析出核生成電位Vsigが与えられる。また、第2の電極4A,4Cには析出保持電位Vが与えられている。これにより交差部(P,A)、(Q,A)には、第2の電圧値|V−Vselect|が与えられる。一方、交差部(Q,B)には、第3の電圧値|Vsig−Vselect|が与えられる。これにより、交差部(Q,B)には電流が流れて電気めっきの析出核が生成され、交差部(P,A)、(Q,A)には電流は流れず電気めっきの析出核は生成されない。この動作によってなされた状態を図5(c)に示す。
【0028】
続いて第2の核成長期間において、制御部が再び上述の第2の動作を行う。第1の電極2P,2Q,2Rに行選択電位Vselectが与えられ、第2の電極4A,4B,4Cには析出保持電位Vが与えられている。これにより全ての交差部には、一括に第2の電圧値|V−Vselect|が与えられる。この状態において、交差部(Q,B)では、電気めっきの析出核が存在するため、第2の電圧値|V−Vselect|が析出過電圧値|Vth|未満であるにも関わらず電流が流れて電気めっきが析出される。加えて、先の第1のサブフィールド期間において電気めっきが形成された交差部(Q,A)においても、交差部(Q,B)と同様に電気めっきが析出される。一方、交差部(P,A)等の他の交差部では、電気めっき又はその析出核が存在しないため、電気めっきは析出されない。この状態を図5(d)に示す。ここで図3(c)の知見により、交差部(Q,A)と交差部(Q,B)に抵抗値の差は無く電流は一様に流れるため、特定の画素に電流が集中することが無く均一な電気めっきの析出ができる。この状態において、交差部(Q,A)は交差部(Q,B)の約2倍の時間電気めっきが析出されているため、交差部(Q,A)の電気めっきの厚さは、交差部(Q,B)の電気めっきの厚さの約2倍となっている。
【0029】
上述のサブフィールド動作を少なくとも2回以上繰り返すことにより、階調表示が実現される。ここで、本実施形態において、交差部(Q,B)を含む画素を第1の画素と、交差部(Q,A)を含む画素を第1の画素よりも高い階調が要求される第2の画素とする。その場合に、制御部は、第1の画素に第3の電圧値を与える2回目のサブフィールド動作よりも前の1回目のサブフィールド動作において、第2の画素に前記第3の電圧値を与えるように制御する。即ち制御部が、画素の階調に応じて第3の電圧値を与えるタイミング、言い換えると第3の電圧値を与えるサブフィールド動作を規定することによって、電解析出方式の表示装置における各画素の階調を制御することが可能となる。ここで、階調数はサブフィールド動作を繰り返す回数によって規定される。
【0030】
上述のサブフィールド動作が所望の回数繰り返されて所望の階調表示がなされた後、表示保持期間に移行する。表示保持期間において制御部は、第1の電極2P,2Q,2Rに非選択電位(GND)を与え、第2の電極4A,4B,4Cに析出保持電位Vを与える表示保持動作を行う。この表示保持動作は本願発明の第3の動作に相当する。これにより全ての交差部には一括に電圧値|V|が与えられ、全ての画素の表示が保持される。この電圧値は本願発明の第1の電圧値に相当する。この第1の電圧値は、析出した電気めっきの再溶解反応とほぼ等しなるように電気めっきをわずかに成長させるものである。そのため、第1の電圧値によって成長された電気めっきは再溶解反応によって相殺されるため、画素の表示が保持される。
【0031】
その後、画像を消去する際には消去期間に移行する。消去期間において制御部は、第1の電極2P,2Q,2Rに消去電位Vdelを与え、第2の電極4A,4B,4Cに析出保持電位Vを与える消去動作を行う。この消去動作は本願発明の第4の動作に相当する。これにより全ての交差部には、全ての画素に析出していた電気めっきを酸化しイオン化して電解質溶液3に溶解させるための電圧値|V−Vdel|が与えられ、表示が消去される。この電圧値は本願発明の第4の電圧値に相当する。
【0032】
本実施形態によれば、繰り返されるサブフィールド動作の回数を規定することにより、所望の時間で所望の階調表示が可能となる。例えば、3階調の場合はサブフィールド動作を3回繰り返し、5階調の場合はサブフィールド動作を5回繰り返す。第1の動作は第2の動作に比べて非常に短い期間で行われるため、サブフィールド動作の時間は実質的に第2の動作の時間で規定される。3階調の場合と5階調の場合とでは、サブフィールド動作の回数は異なるが、5階調における第2の動作の期間を3階調における第2の動作の3/5にすることができるため、3諧調表示と5諧調表示は実質的にほぼ同じ時間で表示することができる。なお、図1において、各サブフィールド期間における第2の動作の期間(核成長期間)をほぼ等しく設定しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、各サブフィールド期間の核成長期間の時間比率を1:2:4:8という2(nは自然数)に設定して異ならせることにより、4回のサブフィールド動作を行うことで16階調の表示が可能である。
【0033】
また、本実施形態においてパッシブマトリックス駆動方式を採用した電解析出方式の表示装置の動作を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、アクティブマトリクス駆動方式を採用した電解析出方式の表示装置にも適用可能である。以下に図6を用いてアクティブマトリクス駆動方式を採用した電解析出方式の表示装置を説明する。なお、図2において説明したものと同様のものは同じ番号を付与し、説明は割愛する。
【0034】
図6において、10及び11は薄膜トランジスタからなる第1及び第2のスイッチ、12は保持容量、13は走査線、14はデータ線、15はグランド線、16は共通線である。第2のスイッチ11のソース端子が第2の電極4に接続され、ドレイン端子が共通線16に接続されている。また第1のスイッチ10は、ゲート端子が走査線13に、ソース端子がデータ線14に、ドレイン端子が第2のスイッチ11のゲート端子に接続されており、第2のスイッチ11の導通を制御する。17は行選択回路であり、走査線13に駆動信号を与えることにより第1のスイッチ10の導通を行単位で制御する。18は列選択回路であり、データ線16にデータ信号を与える。19は第2の電極用電源であり、20は第1の電極用電源である。9’は制御回路であり、行選択回路7、列選択回路8は映像信号に基づいて制御する。つまり、これら行選択回路17、列選択回路18、第2の電極用電源19、第1の電極用電源20及び制御回路9’を含む制御部により、第1及び第2の電極間に印加される電圧値が設定される。第1のスイッチ10の導通/非導通の制御によりデータ線14からデータ信号が第2のスイッチ11のゲート端子及び保持容量12に印加され、そのデータ信号は保持容量22に蓄積される。この動作により第2のスイッチ11が導通状態とされ、設定された電圧が第2の電極用電源19により第2の電極4に印加されることで、電気めっきを析出する動作の制御が可能になる。
【0035】
また、本実施形態において第2の電極4を電気めっき法により電解析出され得る金属イオンと同じ金属材料としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、ITOなどの光を透過する導電性材料で構成することも可能である。その場合、支持基板6の裏側にバックライトを配置する構成や、支持基板6の裏側(図7)又は第2の電極4と支持基板6の間に反射特性を有するカラーフィルタを配置する構成によるカラー表示も可能である。また、光透過性材料を用いなくとも、図8(a)、(b)、(c)、(d)に示すような、細線状、ストライプ状、網目状、櫛歯状等の形状を第2の電極4に採用することで光を透過することができる。図8(a)〜(d)において、21〜23は反射特性を有するカラーフィルタを示し、ベイヤー配列の場合、21は赤色の、22は青色の、23は緑色のカラーフィルタとなる。
【0036】
また、本実施形態において、1つの画素に第1及び第2の電極を有する形態を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、図9のように更に第3の電極24を有し、第3の電極24に電気めっきが析出される電位を与えるように制御していてもよい。
【0037】
また、本実施形態において、第1の電極を陰極とし第2の電極を陽極として説明したが、本願発明はそれに限定されるものではなく、図9のような形態において第1及び第2の電極を陽極とし第3の電極を陰極としても良い。また、それらを適宜切り換えることができる形態を採用することも可能である。
【0038】
また、本実施形態に加えて、第1及び第2の電極間に流れる電流の電流密度を制御することにより、生成される電気めっきの色を制御し、階調表示に利用しても良い。この場合には、本実施形態の制御部に、電流密度を制御可能な構成を加えることにより達成され得る。
【実施例1】
【0039】
図1〜5を用いて、本発明の具体的な電解析出方式の表示装置の構造及び駆動方法の実施例を説明する。本実施例は、白表示から透明表示までの段階を3階調に切り替える具体的な実施例である。
【0040】
支持基板1には厚さ0.7mmのガラスを用い、第1の電極2としてスパッタリング法により成膜した厚さ150nmのITOを用いる。電解質溶液3として炭酸プロピレンを溶媒とし、硫酸銀を0.033mol/L、テトラエチルアンモニウムブロマイドを0.267mol/Lと光沢剤を含む溶液を用いる。画素サイズは0.7mm×0.7mmとし、電解質層3の厚さは0.1mmとする。第2の電極4として厚さ3μmの銀を用い、フォトリソグラフィーとエッチングにより櫛歯状にパターニングする。支持基板6にはシリコンウェーハを用いる。図1に従い、析出過電圧Vthは−0.9Vである。析出核生成電位Vsigを−0.5V、析出保持電位Vを−0.01V、行選択電位Vselectを0.5V、非選択電位(GND)を0V、消去電位Vdelを−1.5Vに設定する。また、核生成期間を0.1秒間、核成長期間を10秒間、表示保持期間を10秒間、消去期間を4秒間に設定した。
【0041】
本実施例の動作の開始前には第1の電極2には電気めっきが析出されておらず、第2の電極4は櫛歯状にパターニングされているため、入射光は第2の電極4に遮られる分以外は、支持基板1の表面から支持基板6の背面まで透過する状態である。
【0042】
図1の第1の核生成期間において、画素(交点)(Q,A)には−1.0Vの電圧が印加され、10mA/cmの電流が流れ、ごく薄く光沢色が付く。走査型電子顕微鏡で観察すると、電気めっきの析出核である直径数nmの銀の微粒子が離散的に析出していることが観察される。他の画素には銀が析出していない。
【0043】
第1の核成長期間において、全ての画素に−0.501Vの電圧が印加され、画素(Q,A)には5mA/cmの電流が流れ、銀の電気めっきが成長する。第1の核成長期間の終了時には、画素(Q,A)に白色の金属光沢が視認され、反射率10%である。他の画素には電気めっきが析出していない。
【0044】
次に、第2の核形成期間において、画素(Q,B)には10mA/cmの電流が流れ、電気めっきの析出核が形成されてごく薄く光沢色が付く。この間、画素(Q,A)にも5mA/cmの電流が流れているが、短時間であるため影響は無視できる。
【0045】
第2の核成長期間において、全ての画素に−0.501Vの電圧がかかり、画素(Q,A)及び画素(Q,B)には5mA/cmの電流が流れ、電気めっきが成長する。第2の核成長期間の終了時には、画素(Q,B)に白色の金属光沢が視認され、反射率10%である。画素(Q,A)はさらに膜厚が増えるため、反射率は増加して60%になる。他の画素には銀が析出していない。これにより電解析出方式の表示装置は、透明、中間、白の3階調表示が実現される。
【0046】
次に、表示保持期間において、全ての画素に−0.01Vの電圧がかかり、画素(Q,A)及び画素(Q,B)には0.1mA/cmの電流が流れ、電気めっきがわずかに成長するが、析出した銀の再溶解反応と相殺されるため、表示が保持された状態となる。
【0047】
そして、消去期間において、全ての画素に1.49Vの電圧がかかり、画素(Q,A)及び画素(Q,B)には、核生成期間及び核成長期間に電流が流れる方向と逆方向に15mA/cmの電流が流れ、電気めっきが酸化されて溶解する。他の画素は銀が析出していないため反応が起こらず電流は流れない。これにより、電解析出方式の表示装置は、本実施例の動作前の状態に戻る。
【0048】
各期間における各電極の電位、各画素の電圧、電流密度、通電電荷量を表1に示す。
【0049】
【表1】

【実施例2】
【0050】
図1〜5を用いて、本発明の具体的な電解析出方式の表示装置の構造及び駆動方法の実施例を説明する。本実施例は、本実施例では黒表示から透明表示までの段階を3階調に切り替える具体的な実施例である。
【0051】
本実施例と実施例1との相違点は第1の電極2の材料だけであり、第1の電極2として厚さ150nmの酸化スズを用いる。駆動方法は実施例1と同じである。銀の電気めっきを酸化スズ上に析出させることで、析出する銀の膜が粒子が粗く凹凸の大きいものになるため、光を吸収し、黒い色の電気めっきとして視認される。第1の核成長期間の終了時における画素(Q,A)の透過率は15%であり、第2の核成長期間の終了時における画素(Q,A)の透過率は2%である。
【実施例3】
【0052】
図9、図10を用いて、白〜透明及び黒〜透明の諧調表示行う本発明の具体的な電解析出方式の表示装置の構造及び駆動方法の実施例を説明する。本実施例は実施例1と異なり、第1の電極2と対向して第2の電極4と第3の電極24を有する。第2の電極4として厚さ3μmの銀を用い、第3の電極24として厚さ150nmの酸化スズを用いる。また、図10において第3の電極に与える電位をVzと示す。他の構成要素は実施例1と同じである。
【0053】
まず、第1の電極2を陰極とし第2の電極4を陽極として電流を流し、第2の電極4の銀を酸化してイオン化すると共に、第1の電極2の表面に銀の電気めっきを析出する。第1の電極2はITOであるため、電気めっきは白色を呈する。この場合、銀の供給源は素材自体が銀の第2の電極4であり、十分な膜厚になるまで銀を供給することができる。析出される電気めっきが厚いほど散乱性が高くなり、電気めっきの無い透明状態から電気めっきが十分厚い白色状態への諧調制御が可能である。第2の電極4は透明であるため、透明状態では入射光の一部は支持基板1の表面から支持基板6の背面まで透過する。各画素の電気めっきの厚さを制御する方法は実施例1と同様にサブフィールド動作を行う。
【0054】
次に、画素に透明から黒までの諧調表示をするために、上記方法で第1の電極2に白色の電気めっきが形成された後、全画素の第3の電極24に転写電位Vtraを与えて陰極とし第1の電極2を陽極として電流を流す。この転写電位は本発明の第5の電位に相当する。これにより、第1の電極2と第3の電極24との間に転写電圧値|Vtra|が与えられ、第1の電極2上に析出していた銀を酸化してイオン化すると共に、第3の電極24の表面に還元析出させて電気めっきが形成される。第3の電極24は酸化スズであるため、電気めっきは黒色を呈する。この場合、第3の電極24に析出される銀の供給源は第1の電極2に析出していた電気めっきであり、予め第1の電極2に析出しておく電気めっきの厚さが、その後の第3の電極24に形成される電気めっきの厚さを規定する。電気めっきが厚いほど吸収率が高くなり、電気めっきのない透明状態から、電気めっきが十分厚い黒色状態への諧調制御が可能である。この第3の電極24に第5の電位を与えている期間を転写期間とし、その動作を転写動作と称する。このように、複数回のサブフィールド動作による階調制御と転写動作とをあわせて黒フィールド動作と称する。また、黒フィールド動作を行う期間を黒フィールド期間と称する。
【0055】
黒フィールド動作の後に、再度、第1の電極2を陰極とし第2の電極4を陽極として電流を流し、第2の電極4の銀を酸化してイオン化すると共に、第1の電極2の表面に銀の電気めっきを析出する。第1の電極2はITOであるため、電気めっきは白色を呈する。この場合、銀の供給源は素材自体が銀の第2の電極4であり、十分な膜厚になるまで銀を供給することができる。析出される電気めっきが厚いほど散乱性が高くなり、電気めっきの無い透明状態から電気めっきが十分厚い白色状態への諧調制御が可能である。第2の電極4は透明であるため、透明状態では入射光の一部は支持基板1の表面から支持基板6の背面まで透過する。各画素の電気めっきの厚さを制御する方法は実施例1と同様にサブフィールド動作を行う。これにより画素に透明から白までの諧調表示をすることができる。
【0056】
そして、第2の電極4を陰極とし第1の電極2及び第3の電極24を陽極として電流を流すと、第1の電極2及び第3の電極24の表面に析出している電気めっきが溶解し、透明状態に戻る。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の電解析出方式の表示装置は、広告装置、デジタルカメラ等の写真を表示する画像表示装置、メッセージボード、電子ペーパー等に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明における電解析出方式の表示装置のタイミングチャートである。
【図2】本発明における電解析出方式の表示装置の概略図である。
【図3】本発明における現象を説明するための特性を示す図である。
【図4】本発明におけるパッシブマトリックス駆動方式を採用した電解析出方式の表示装置の概要図である。
【図5】本発明における電解析出方式の表示装置の各動作状態における概略図である。
【図6】本発明におけるアクティブマトリクス駆動方式を採用した電解析出方式の表示装置の概略図である。
【図7】本発明の他の実施態様における電解析出方式の表示装置の概略図である。
【図8】本発明における第2の電極の形状例を説明する概略図である。
【図9】本発明におけるアクティブマトリクス駆動方式を採用した電解析出方式の表示装置の概略図である。
【図10】本発明の実施例3における電解析出方式の表示装置のタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0059】
1 支持基板
2 第1の電極
3 電解質溶液
4 第2の電極
5 スペーサー
6 支持基板
7 行選択回路
8 列選択回路
9 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、該第1の電極と対向して配置された第2の電極と、前記第1及び第2の電極と接して配置された金属イオンを含む電解質溶液と、を有する画素が複数配置され、前記第1及び第2の電極間に印加される電圧の電圧値を設定する制御部を有し、前記電圧値が析出過電圧値以上になると電気めっきの析出が開始され、前記析出が開始されてから前記電圧値が前記析出過電圧値未満の所定電圧値になると前記析出が終了する表示装置であって、
前記制御部は、前記所定電圧値以上の第1の電圧値、前記第1の電圧値より大きく且つ前記析出過電圧値未満の第2の電圧値、及び前記析出過電圧値以上の第3の電圧値、のいずれかの電圧値を複数の前記画素に夫々選択的に与える第1の動作と、前記第1の動作の後に前記第2の電圧値を複数の前記画素に与える第2の動作と、を有するサブフィールド動作を少なくとも2回以上繰り返し行い、且つ前記第3の電圧値を与えるタイミングによって前記画素の階調を制御することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記制御部は、複数の前記画素のうち第1の画素よりも高い階調が要求される第2の画素に対して、前記第1の画素に前記第3の電圧値を与えるサブフィールド動作よりも前のサブフィールド動作において、前記第2の画素に前記第3の電圧値を与えるように制御することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記サブフィールド動作を繰り返した後に、複数の前記画素に前記第1の電圧値を与える第3の動作を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記電気めっきを酸化しイオン化して電解質溶液に溶解させるための第4の電圧値を複数の前記画素に与える第4の動作を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1の電極に第1の電位又は基準電位を与えるための第1の選択回路と、前記第2の電極に第2又は第3の電位を与えるための第2の選択回路と、前記第1及び第2の選択回路を制御するための制御回路と、を有し、
前記第1の電圧値は前記基準電位と前記第2の電位の電位差であり、前記第2の電圧値は前記第1の電位と前記第2の電位の電位差であり、前記第3の電圧値は前記第1の電位と前記第3の電位の電位差であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1及び第2の電極の間に流れる電流の電流密度を制御可能な構成を有し、前記電気めっきの電極と接する側の表面の平滑性を制御することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記画素は、第3の電極を更に有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
第1の電極と、該第1の電極と対向して配置された第2の電極と、前記第1及び第2の電極と接して配置された金属イオンを含む電解質溶液と、を有する画素が複数配置され、前記第1及び第2の電極間に印加される電圧の電圧値が析出過電圧値以上になると電気めっきの析出が開始され、前記析出が開始されてから前記電圧値が前記析出過電圧値未満の所定電圧値になると前記析出が終了する表示装置の駆動方法であって、
前記所定電圧値以上の第1の電圧値、前記第1の電圧値より大きく且つ前記析出過電圧値未満の第2の電圧値、及び前記析出過電圧値以上の第3の電圧値、のいずれかの電圧値が複数の前記画素に夫々選択的に与えられる第1の動作と、前記第1の動作の後に前記第2の電圧値が複数の前記画素に与えられる第2の動作と、を有するサブフィールド動作を少なくとも2回以上繰り返し行い、且つ前記第3の電圧値が与えられるタイミングによって前記画素の階調の制御がなされることを特徴とする駆動方法。
【請求項9】
前記階調の制御は、複数の前記画素のうち第1の画素よりも高い階調が要求される第2の画素に対して、前記第1の画素に前記第3の電圧値が与えられるサブフィールド動作よりも前のサブフィールド動作において、前記第2の画素に前記第3の電圧値が与えられることによりなされることを特徴とする請求項8に記載の駆動方法。
【請求項10】
前記サブフィールド動作を繰り返した後に、複数の前記画素に前記第1の電圧値が与えられる第3の動作を行うことを特徴とする請求項8又は9に記載の駆動方法。
【請求項11】
前記電気めっきを酸化しイオン化して電解質溶液に溶解させるための第4の電圧値が複数の前記画素に与えられる第4の動作を行うことを特徴とする請求項8から10のいずれか1項に記載の駆動方法。
【請求項12】
前記表示装置は、前記第1の電極に第1の電位又は基準電位を与えるための第1の選択回路と、前記第2の電極に第2又は第3の電位を与えるための第2の選択回路と、前記第1及び第2の選択回路を制御するための選択回路と、を有し、
前記第1の電圧値は前記基準電位と前記第2の電位の電位差であり、前記第2の電圧値は前記第1の電位と前記第2の電位の電位差であり、前記第3の電圧値は前記第1の電位と前記第3の電位の電位差であることを特徴とする請求項8から11のいずれか1項に記載の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−78837(P2010−78837A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246338(P2008−246338)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】