説明

電解槽及びこれを備えた電解装置

【課題】大形化と重量化を抑制しつつ電解面積を増やすことが可能な電解槽を提供する。
【解決手段】電解槽2は、外槽11と、板状をなす複数の外側電極16と、内槽22と、板状をなす複数の内側電極25と、仕切り40と、第1ポート48と、第2ポート49を具備する。各外側電極16を、外槽11が有した周壁13の内周面に周方向に並べて固定する。外側電極16に対向する処理膜23を内槽22に保持する。各内側電極25を内槽22の内部に配設する。内槽22を外槽11に収容して、周壁13の内周面に沿ってUターンするように曲げられた一方通行の流路Gを形成する。仕切り40によって流路Gの一端部G1と他端部G2を仕切る。流路Gの一端部G1に連通する第1ポート48を外槽11に設ける。流路Gの他端部G2に連通する第2ポート49を、仕切り40を境に第1ポート48と反対側で外槽11に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な用途の溶液の生成や処理対象液の無害化処理・脱塩処理等の処理をする電解槽及びこれを備えた電解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内側電極と、隔膜付きの隔膜支持体と、外側電極が、互に相似形の中空多角形状であり、これらを三重に重ねて構成された電解槽を備えて、水を電気分解する流水式の電解水製造装置が、従来技術として知られている(例えば、特許文献1参照。)。この装置では、外側電極と隔膜支持体との間に水を供給すると共に、内側電極と隔膜支持体との間に電解質水を供給して、電解水を製造する。
【0003】
この電解水製造装置の電解槽は、水供給口と、水出口と、整流面を有している。水供給口は例えば四角い箱形に形成された外側電極の第1側壁部に設けられている。この第1側壁部と平行な他の側壁部に水出口が設けられている。整流面は非透水性で第1面と対向している。これら整流面と第1側壁部の整流空間は、外側電極と隔膜支持体との間の流路に連通されている。又、流路は、隔膜支持体を境に水入口とは反対側にある水出口に連通されている。
【0004】
この電解槽で、水供給口に供給された水は、整流面によりその幅方向に分流されて流路に流れ込み、隔膜支持体を間に置いて平行に流れた上で、水出口側で合流しつつ、水出口を通って電解槽を流出する。こうした流水とともに、隔膜支持体の内側に電解質水が供給される条件下で、内外の各電極に定電圧・定電流装置で電解電圧及び電流を与えることにより、電解水が生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2005/105678号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の電解槽で、水供給口から水出口に至る流路のうちで、整流面に臨んだ部位は電解ができない。これとともに、同流路のうちで、水が合流される水出口側の部位では、合流に伴う水の滞留域が形成され、この滞留域に臨んだ相当する水については、水出口から取出すことが困難である。こうした事情から、従来の電解槽は、電解を担う面積をより多く確保するには適していないとともに、電解槽を小形化するのに適していない。
【0007】
従来の電解槽で、前記流路のうちで、整流面で分流された水を導く互に平行な部位の長さを長く確保すれば、電解を担う面積を多く確保することは可能である。しかし、このようにすると、電解槽及びこれを備える電解装置の大形化と重量の増加を伴う。これとともに、外側電極及び内側電極の使用量が増える。しかし、これらの電極の表面は白金でコーテングされているので、かなりコスト高となることは避けられない。
【0008】
本発明の目的は、大形化と重量の増加を抑制しつつ電解を担う面積を増やすことが可能な電解槽及びこれを備えた電解装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電解槽は、外槽と、板状をなす複数の内側電極と、板状をなす複数の外側電極と、内槽と、仕切りと、第1ポートと、第2ポートを具備する。各外側電極を、外槽が有した周壁の内周面に周方向に並べて固定する。外側電極に対向する処理膜を内槽に保持する。各内側電極を内槽の内部に配設する。内槽を外槽に収容し、周壁の内周面に沿ってUターンするように曲げられた一方通行の流路を形成する。仕切りによって流路の一端部と他端部を仕切る。この流路の一端部に連通する第1ポートを外槽に設ける。流路の他端部に連通する第2ポートを、仕切りを境に第1ポートと反対側で外槽に設ける。
【0010】
本発明の電解槽は、電気透析するため、又は電気分解と電気透析を同時に進行させて、所定の処理をするのに用いられ。ここで、電気透析とは、周知のように電気分解が起きない程度の低電流通電によって、イオン交換膜が陽イオンと陰イオンを選択して通過させる性質を利用して、溶液中のイオン物質を分離させる技術を指している。又、電気分解と電気透析を同時に進行させる技術は、現在のところ、分類されていないので、この技術を、本明細書では「電解透析」と称する。
【0011】
本発明で、内側電極及び外側電極が板状であるとは、平板であることに制約されず、円弧状に曲がった板であってもよい。本発明で、一方通行の流路は、折れ曲がりがなく平面視略Cの字状をなしていてもよく、或いは複数個所で折れ曲がっていてもよい。
【0012】
本発明で、処理膜とは、隔膜又はイオン交換膜を指しており、これらは処理対象液を処理する目的によって使い分けられる。又、本発明で、電解を担う面積とは、電解透析及び電気透析を担う面積を指している。
【0013】
本発明で、仕切りとは、一方通行の流路の一端部と他端部を仕切る構成を指しており、後述の実施形態で説明する構成に制約されない。例えば、外槽の一側壁とこれに対向する内槽の側壁とのうちの一方の側壁に、上下方向に延びる仕切り用の溝を形成するとともに、この溝に嵌入するリブ等の仕切り用の凸部を他方の側壁に形成し、これらを嵌合させることによって、流路の一端部と他端部を仕切っても差し支えない。この場合、溝と凸部との間に、これらで挟まれるシール材を設けることが好ましい。
【0014】
本発明で、第1ポートは流路の入口又は出口として選択的に用いられるとともに、この逆に第2ポートは流路の出口又は入口として選択的に用いられることが好ましい。しかし、第1ポートと第2ポートのうちの一方を入口専用とし、他方を出口専用として使用することも可能である。
【0015】
本発明の電解槽は、内槽の内部に電解室を含んだ液体を溜めて、第1ポート又は第2ポートから流路に処理対象液を流した状態で、外側電極及び内側電極に通電することにより、電解透析又は電気透析をする。それによって、様々な用途の溶液の生成や処理対象液の無害化処理・脱塩処理等が行われる。
【0016】
この場合、処理対象液は、電解槽に形成されたUターン状の流路を、第1ポートから第2ポートに向けて、又は、第2ポートから第1ポートに向けて一方向に流通する。このため、処理対象液が外部電極と処理膜との間を流路の別々の部分を分流して、それらの流れが流路内で向かい合うように合流することがない。
【0017】
したがって、合流に基づく処理対象液の滞留域が形成されず、電解を担う面積を前記滞留域に相当して増やすことが可能である。これに伴い、電解を担う面積を増やすために電解槽の大形化と重量の増加を抑制することが可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、大形化と重量の増加を抑制しつつ電解を担う面積を増やすことが可能な電解槽及びこれを備えた電解装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電解槽を示す斜視図である。
【図2】図1中F2−F2線に沿って示す電解槽の断面図である。
【図3】図1の電解槽を分解して示す斜視図である。
【図4】図1の電解槽の一部を示す断面図である。
【図5】図1の電解槽が備えるカートリッジを示す斜視図である。
【図6】図1の電解槽を備えた本発明の第1実施形態に係る電解装置の構成を示す概略図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る電解槽の外槽とカートリッジを分離させた状態で示す斜視図である。
【図8】第2実施形態に係る電解槽を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図1〜図6を参照して詳細に説明する。
【0021】
図6に示す電解装置1は電解槽2を備えている。まず、電解槽2について図1〜図5を参照して説明する。
【0022】
電解槽2は、外槽11と、複数の外側電極16と、カートリッジ21と、仕切り40と、複数の連結部材41と、第1ポート48と、第2ポート49を具備している。
【0023】
外槽11は耐食性を有する電気絶縁性の合成樹脂の一体成形品で作られている。この外槽11は、図6等に示すように底壁12と、周壁13と、上部フランジ14を有している。
【0024】
底壁12は水平な板状である。周壁13は、4角形の中空多角形例えば図2に示すように中空な10面体からなる。周壁13の各側壁部を識別する符号13a〜13jを図2に示す。
【0025】
側壁部13a〜13eは周壁13の正面を担っている。これらの側壁部13a〜13eのうち側壁部13aと側壁部13bは、互に連続されて、横断面がV字形状をなす凸部を形成している。同様に、側壁部13dと側壁部13eも、互に連続されて、横断面が断面V字形状をなす凸部を形成している。これらの凸部は、側壁部13cの幅方向両側に夫々連続されかつ周壁13の外側に突出されている。
【0026】
側壁部13hは、周壁13の背面を担っていて、側壁部13cと平行である。側壁部13fと側壁部13gは、互に連続されていて、側壁部13eと側壁部13hとにわたって設けられている。同様に、側壁部13iと側壁部13jは、互に連続されていて、側壁部13aと側壁部13hとにわたって設けられている。
【0027】
尚、側壁部13cと側壁部13fとの間、及び側壁部13cと側壁部13jとの間の凸部は、周壁13の内部を拡大する方向に突出された構成であれば、その横断面の形状は、V字形状に限らず、U字形状、円弧形状、台形状、その他の形状であっても差し支えない。更に、こうした凸部は、周壁13とは別成形して、それを周壁13に連結することも可能である。
【0028】
図3等に示すように上部フランジ14は周壁13の上端部外周面に突設されている。上部フランジ14は、前記V字状をなした部分の内側空間の上端を閉じている。この上部フランジ14は複数の連結溝14aを有している。これら連結溝14aは上部フランジ14の突出端面及び上下面に夫々開放されている。
【0029】
各外側電極16は、チタン製の板に白金をコーテングしてなり、図3に示すように例えば四角形の平板からなる。外側電極16の裏面の略中央部に電極端子16aが突設されている。
【0030】
図2に示すように各外側電極16は周壁13の内周面に固定されている。具体的には、外側電極16の裏面が側壁部13f〜側壁部13jに例えば接着剤を用いて貼付けられている。周壁13の周方向に隣接された外側電極16同士の側縁は、接触若しくは互に至近距離で隔てられている。各外側電極16の電極端子16aは周壁13の側壁部13f〜側壁部13jを夫々貫通している。
【0031】
カートリッジ21は、図3及び図5等に示すように内槽22と、複数の内側電極25と、蓋28と、第2液入口32、手掛け部35と、密接部材36,37等を備えている。
【0032】
内槽22は、処理膜23を有する角筒の下端開口を底板24(図6参照)で閉じて形成されて、この内槽22の上端は開放されている。内槽22の角筒は、平面視四角形以上の角筒、例えば6角筒である。この内槽22の正面を担う側壁部22aは平板からなり非透水性である。
【0033】
この側壁部22aを除いた内槽22の他の全ての側壁部は、いずれも処理膜23を有している(図2参照)。これら処理膜23は前記他の側壁部の周部を除いてこれら側壁部の大部分を占めて設けられている。全ての処理膜23は隔膜又はイオン交換膜である。隔膜には、例えば、ポリ弗化ビニリデンに酸化チタンをコーテングしてなる隔膜、塩素化エチレン製の隔膜、又はポリ塩化ビニール製の隔膜等を使用可能である。イオン交換膜には、陽イオン交換膜又は陰イオン交換膜を使用可能である。
【0034】
内側電極25は、チタン製の板に白金をコーテングしてなり、例えば四角形の平板からなる。上下方向に延びる棒状の電極端子25aが各内側電極25の上部裏面から上向きに突設されている。内側電極25は例えば3枚使用されている。図2に示すように各内側電極25は、平面視コの字形状をなすように組み合わされて、底板24から起立するように内槽22の内部に配設されている。
【0035】
この場合、二枚の内側電極25は、非透水性の側壁部22aの幅方向両端に直角に連続された処理膜23と略平行に配設されている。更に、これら二枚の内側電極25のうちの一方は、側壁部22aの幅方向一端に直角に連続された処理膜23、及びこの処理膜23に対して折れ曲がるように隣接された処理膜23に夫々臨んでいる。
【0036】
同様に、前記二枚の内側電極のうちの他方は、側壁部22aの幅方向他端に連続された処理膜23、及びこの処理膜23に対して折れ曲がるように隣接された処理膜23に夫々臨んでいる。又、残りの一枚の内側電極25は、その裏面を側壁部22aに対向させるとともに、この側壁部22aと平行な処理膜23に臨んでこれらと略平行に配設されている。
【0037】
各内側電極25とこれらに対向した処理膜23との離間距離は、5mm〜35mmが適当である。この離間距離が35mmを超えると、電解槽2が大形になることがあるとともに、電解性能が低下する可能性がある。又、離間距離が5mm未満であると、電解質を含んだ液体の循環に対する抵抗が増える点で好ましくない。
【0038】
蓋28は、耐食性を有する電気絶縁性の合成樹脂の一体成形品で作られている。蓋28は上部フランジ14に上方から重なって外槽11の開放された上端を閉じている。この蓋28の周部に、上部フランジ14の各連結溝14aと同様構成で、これら連結溝14aに連通される連結溝28a(図3参照)が複数形成されている。
【0039】
図4に示すように蓋28の周部裏面(下面)に支持部29が突設されている。支持部29は内槽22の形状に応じた角形をなしている。この支持部29に内槽22の上端部が接着止めなどにより連結されている。図3に示すように蓋28に、電極端子25aと同数の孔30が開けられていて、これらの孔30を通って電極端子25aが蓋28の上方に突出されている。
【0040】
図4に示すように蓋28の周部裏面にシール材31が取付けられている。シール材31は、シリコーンゴム等により環形に形成されていて、その形状は、外槽11の上端開口の縁と略同じ形状と略同じである。このシール材31は、後述のように蓋28が外槽11に連結された状態で、外槽11の上端面に密接される。それにより、外部への液漏れが防止される。
【0041】
第2液入口32は、後述する第2送り管63の先端部を兼ねて、例えば蓋28にこれを貫通して取付けられている。なお、第2液入口32は第2送り管63と一体であっても差し支えない。この第2液入口32の下端は、図6に示すように底板24の近傍に達していて、処理膜23の下端より低く配置されている。
【0042】
オーバーフロー管33は底板24を貫通して内槽22に取付けられている。オーバーフロー管33は、図2に示すように各内側電極25と側壁部22aとで囲まれている。このオーバーフロー管33の上端は蓋28の裏面近傍に達していて、その上端で後述する第2駅の液面の高さを規定する。
【0043】
手掛け部35は例えばハンドルからなる。手掛け部35は図1及び図3に示すように蓋28の上面に固定されている。この手掛け部35は、外槽11にその上方からカートリッジ21を出し入れ操作する際に、オペレータによって例えば握られる。
【0044】
密接部材36は図3に示すように内槽22の上端部外周に装着されている。この密接部材37は周方向に途切れなく連続して環形をなしている。密接部材37は内槽22の下端部外周に装着されている。これら密接部材36,37は、耐食性を有しかつ弾性変形が可能なシール材料例えばシリコーンゴム製である。
【0045】
尚、下部の密接部材37は省略することが可能である。この省略により、カートリッジ21を外槽11に出し入れする際の抵抗を減らすことが可能となる。このため、外槽11に対するカートリッジ21の出し入れ操作をより容易化する上で好ましい。
【0046】
又、カートリッジ21は、その上部の密接部材36と下部の密接部材37を、外槽11の上下両端部内周面に夫々密接して外槽11に支持される。これにより、外槽11内で、カートリッジ21が安定するとともに、後述の流路Gの一端部G1と他端部G2をより確実に仕切ることができる点で好ましい。
【0047】
図3及び図5に示すように内槽22の側壁部22aの外面に、シリコーンゴム製の仕切りホルダ38が、側壁部22aの幅方向中央に位置して装着されている。仕切りホルダ38の厚みは密接部材36,37の厚みに略等しく、仕切りホルダ38の上下両端は密接部材36,37に連続している。この仕切りホルダ38は上下方向に延びる溝38aを有している。
【0048】
前記構成を備えたカートリッジ21は外槽11に対してその上方から着脱可能である。このカートリッジ21に仕切り40が保持されている。仕切り40は、例えばシリコーンゴム製であって、溝38aに取外し可能に嵌合される棒状をなしている。仕切り40の表面は、この仕切り40が溝38aに保持された状態で、仕切りホルダ38の表面に面一に連続し若しくは仕切りホルダ38の表面から僅かに突出されている。尚、このように仕切り40を着脱できる構成によれば、それが摩耗した場合等に、新たな仕切りと交換して仕切り性能を確保できる点で好ましい。
【0049】
カートリッジ21の内槽22が外槽11に上方から軽圧入された状態で、図6に示されるように密接部材36,37は弾性変形された状態で外槽11の上下両端部の内周面に密接される。これにより、カートリッジ21は外槽11に対して動かないように保持される。これとともに、内槽22外に突出されたオーバーフロー管33の下端部が、外槽11の底壁12に設けられている孔(図示しない)に通されて、図6に示すように底壁12の下方に突出される。更に、蓋28のシール材31が外槽11の上端面に接するとともに、内槽22の仕切りホルダ38及び仕切り40のうち、少なくとも仕切り40が、弾性変形されて図2に示すように外槽11の側壁部13cの内面に密接される。
【0050】
しかも、以上のように内槽22が外槽11に収容された状態で、これらの間に図2に示す流路Gが形成される。この流路Gの一端部G1は、外槽11の側壁部13d,13eと、これらの内面に対向した内槽22の側壁部22aの幅方向一端部とで仕切られた三角形状の空隙で、形成されている。同様に、流路Gの他端部G2は、外槽11の側壁部13a,13bと、これらの内面に対向した内槽22の側壁部22aの幅方向他端部とで仕切られた三角形状の空隙で、形成されている。
【0051】
これら一端部G1と他端部G2は、外槽11の正面の幅方向に離間して並べられている。しかも、これら一端部G1と他端部G2は、仕切り40を境に側壁部22aの幅方向両側に設けられている。これら一端部G1と他端部G2は整流室を担っている。これら整流室の流路断面積は、外側電極16と処理膜23との間の流路断面積よりも広い。
【0052】
流路Gのうちで、一端部G1と他端部G2との間の部位は、内槽22の側壁部22a以外の側壁部と、これらと略平行な外槽11の側壁部13f〜13jとの間に形成されている。この部位は、外側電極16と処理膜23との間で複数個所例えば四箇所折れ曲がっている(図2参照)。このため、流路Gは周壁13の内周面に沿って略Uターン状に形成されている。この流路Gに各外側電極16と各処理膜23が夫々臨んでいる。流路Gを挟んで対向された外側電極16と処理膜23とは略平行である。
【0053】
対向された外側電極16と処理膜23との離間距離は、内側電極25と処理膜23との離間距離より狭く、1.0mm〜3.5mmであることが好ましく、特に、2.0mm〜2.5mmとすることがより好ましい。こうした離間距離は、前記密接部材36,37の厚みによるスペーサ機能によって担保される。
【0054】
各連結部材41は、外槽11にカートリッジ21を保持するために用いられる。これら連結部材41は、工具を用いて取外し可能なボルト・ナット等のねじ部品でも差し支えないが、本実施形態は工具を用いないで簡便に取扱えるクランプを、連結部材41として使用している。
【0055】
これらクランプは、図4等に示すようにカム軸42と、レバー43と、締付け軸44と、ナット45と、リング46とからなる。
【0056】
レバー43の一端部43aはカム軸42に回転可能に嵌合されている。一端部43aの中心はカム軸42の中心に対して偏心している。締付け軸44の上端部は、レバー43の回転を妨げないようにカム軸42に連結されている。ナット45は締付け軸44の下端部に手回しにより回転操作ができるように螺合されている。リング46は、締付け軸44に嵌合されていて、この締付け軸44に沿って上下方向に移動可能である。
【0057】
こうした構成のクランプからなる連結部材41は、以下のように使用されて、外槽11にカートリッジ21を保持する。
【0058】
まず、ナット45の位置を調整した上で、互に連通された状態にある外槽11の連結溝14aとカートリッジ21の連結溝28aに、その側方から締付け軸44を嵌める。これにより、ナット45とリング46が、上部フランジ14と蓋28の周部を、これらの上下から挟むように夫々配設される。このとき、レバー43は図4中二点鎖線で示すように斜めに上がって配置された状態にある。
【0059】
次に、レバー43を実線で示すように押下げる。これに伴い、前記偏心にしたがってレバー43の一端部43aがナット45を押下げて、上部フランジ14及び蓋28の周部がナット45とリング46とで強く締付けられる。それによって、外槽11にカートリッジ21が取付け保持されて、電解槽2が組立てられる。尚、この組立てに伴って、シール材31は上下方向に圧縮される。
【0060】
又、以上説明した手順とは逆に、レバー43を実線位置から二点鎖線で示すように押上げることにより、前記締付けが解除される。このため、この状態から各連結部材41を側方に引出すことで、カートリッジ21が外槽11から上方に取外すことが可能となる。
【0061】
図2に示すように第1ポート48は、流路Gの一端部G1に連通して外槽11に設けられている。具体的には、外槽11の側壁部13dの下端部に第1ポート48が取付けられている。この第1ポート48は外槽11とは別の部品で側壁部13dに連結されているが、これに代えて第1ポート48を側壁部13dに一体に形成することも可能である。
【0062】
同様に、第2ポート49は、仕切り40を境に第1ポート48と反対側で、流路Gの他端部G2に連通して外槽11に設けられている。具体的には、外槽11の側壁部13aの上端部に第2ポート49が取付けられている。第2ポート49は外槽11とは別の部品で側壁部13aに連結されているが、これに代えて第2ポート49を側壁部13aに一体に形成することも可能である。
【0063】
次に、図6を参照して以上説明した電解槽2を含めた電解装置1を説明する。電解装置1は、電解槽2と、第1給液装置51と、第2給液装置61と、排出装置71と、補給装置77と、給電コントローラ81と、切換え器84と、コントローラ86等を具備している。
【0064】
第1給液装置51は好ましくは電解槽2より低い位置に配設され、例えば電極槽2の下方に配設される。この第1給液装置51は、第1タンク52と、第1送り管53と、第1ポンプ54と、第1戻り管55と、第1スイッチ56を備えている。
【0065】
第1タンク52は処理対象液である処理対象の第1液Aを所定量蓄えることができる容積を有している。後述の試験により出願人が現在確認している処理対象の第1液Aとしては、硬水、軟水、重金属汚染液、海水、酸性化した湖及び沼の水、工業用並びに食用の廃油、酸を含んだ液体、アルカリを含んだ液体、及び菌汚染液等を挙げることができる。
【0066】
第1送り管53は、その一端部を第1タンク52に接続するとともに、他端部を電解槽2の第1ポート48に接続して、第1タンク52と外槽11を連通している。第1送り管53は、第1ポート48に取外し可能であるとともに、第2ポート49にも取外し可能に接続できる。第1送り管53の一端部が第1ポート48に接続された場合、第1ポート48は入口として使用される。同様に、第1送り管53の一端部が第2ポート49に接続された場合、第2ポート49が入口として使用される。
【0067】
第1ポンプ54は、電動ポンプからなり、第1送り管53に配設されている。このため、第1ポンプ54が駆動されるに伴い第1液Aが第1送り管53を通って外槽11内に送込まれる。
【0068】
第1戻り管55は、その両端部を第1タンク52と電解槽2の第2ポート49に接続して、これらを連通している。第1戻り管55は第1液Aに浸らないように設けられている。第1戻り管55は、第2ポート49に取外し可能であるとともに、第1ポート48にも取り外し可能に接続できる。第1戻り管55の一端部が第2ポート49に接続された場合、第2ポート49が出口として使用される。同様に、第1戻り管55の一端部が第1ポート48に接続された場合、第1ポート48は出口として使用される。
【0069】
この第1戻り管55に第1スイッチ56が取付けられている。第1スイッチ56は第1戻り管55に液体が流れたことを検知する。
【0070】
第1タンク52に、発生ガスを導く第1導管57の一端部と、第1ガス管58の一端部が夫々接続されている。第1導管57の他端部は前記流路Gの上端部、好ましくは流路Gの他端部G2の上端部に接続されている。これにより、流路Gで発生されたガスは第1タンク62内に導かれる。第1ガス管58は、第1タンク62内に導かれたガスを、図示しない第1ガス処理設備に導くために設けられている。
【0071】
なお、以上のように第1タンク52を経由させずに、第1導管57で流路Gと第1ガス処理設備を連通させることによって、第1ガス管58を省略してもよい。第1ガス処理設備は、これに導かれるガスを無害化、若しくは資源とするための処理を行う設備である。
【0072】
第2給液装置61は好ましくは電解槽2より低い位置に配設され、例えば電解槽2の下方に配設される。この第2給液装置61は、第2タンク62と、第2送り管63と、第2ポンプ64と、第2戻り管65と、第2スイッチ66を備えている。
【0073】
第2タンク52は電解質を含んだ第2液Bを所定量蓄えることができる容積を有している。後述の試験により出願人が現在確認している第2液Bとしては、塩全般を含む溶液、軟水、酸性電解液、アルカリ性電解液、及び海水等を挙げることができる。
【0074】
第2送り管63は、その一端部を第2タンク62に接続するとともに、他端部を電解槽2の第2液入口32の上端部に接続して、第2タンク62と電解槽2の内槽22とを連通している。第2ポンプ64は、電動ポンプからなり、第2送り管63に配設されている。このため、第2ポンプ64が駆動されるに伴い第2液Bが第2送り管63を通って内槽22内に送込まれる。
【0075】
第2戻り管65は、その一端部を第2タンク62に接続するとともに、他端部を電解槽2が有したオーバーフロー管33の下端部に接続して、第2タンク62と内槽22とを連通している。第1戻り管65は第2液Bに浸らないように設けられている。この第2戻り管65に第2スイッチ66が取付けられている。第2スイッチ66は第2戻り管65に液体が流れたことを検知する。
【0076】
第2タンク62に、発生ガスを導く第2導管67の一端部と、第2ガス管68の一端部が夫々接続されている。第2導管67の他端部は、蓋28を接続されて、内槽22に連通されている。これにより、内槽22内で発生されたガスは第2タンク62内に導かれる。第2ガス管68は、第2タンク62内に導かれたガスを、図示しない第2ガス処理設備に導くために設けられている。
【0077】
なお、以上のように第2タンク62を経由させずに、第2導管67で内槽22内と第2ガス処理設備を連通させることによって、第2ガス管68を省略してもよい。第2ガス処理設備は、これに導かれるガスを無害化、若しくは資源とするための処理を行う設備である。
【0078】
排出装置71は、第1タンク52内の液体を外部に排出するための設備であって、排出管72と、第3ポンプ73と、第1センサ74と、第2センサ75を備えている。
【0079】
排出管72の一端は第1タンク62に接続されている。第3ポンプ73は、電動ポンプであって、排出管72に配設されている。第1センサ74と第2センサ75は、第1タンク52内の第1液Aの液面の高さを検知するセンサであって、いずれも第1タンク52に取付けられている。第1センサ74は、第2センサ75より高い位置に取付けられている。
【0080】
第1タンク52内の第1液Aの液面が第1センサ74の高さ位置より上がった場合、この第1センサ74の出力信号を基に第3ポンプ73が駆動される。第1タンク52内の第1液Aの液面が第2センサ75の高さ位置より下がった場合、この第2センサ75の出力信号を基に第3ポンプ73の駆動が停止されるようになっている。
【0081】
補給装置77は第1タンク52の第1液Aを補給する設備である。この補給装置77は、第1タンク62に接続された補給管78と、これに取付けられた補給弁79を備えている。
【0082】
給電コントローラ81は、電源装置82から受ける電力を自動調整して前記各外側電極16と各内側電極25に供給する設備である。この給電コントローラ81と各外側電極16の電極端子16a、及び各内側電極25の電極端子25aは、図示しない絶縁被覆電線により電気的に接続されている。
【0083】
既述のように電極端子16aは外側電極16毎に設けられているので、これら外側電極16は電気的に並列であり、同様に各内側電極25も電気的に並列である。このため、前記絶縁被覆電線の線径が細くてよく、コストを低減できる。これとともに、細い絶縁被覆電線は軽量で曲がり易い。したがって、絶縁被覆電線が内側電極25に接続されたままで、カートリッジ21を外槽11に着脱する際の作業性を向上することが可能である。
【0084】
給電コントローラ81は、過電流防止機能を担う過電流防止回路と過電圧防止機能を担う過電流防止回路を有した構成であることが好ましい。過電流防止回路は、各電極に通電される電流値を検知するとともに、検知された電流値を予め設定された過電流の閾値と比較して、検知された電流値が閾値を超えた場合に、電圧を自動的に下げて、各電極に通電される電流値を一定化するように構成されている。過電圧防止回路は、電極に印加される電圧値を検知するとともに、検知された電圧値を予め設定された過電圧の閾値と比較して、検知された電圧値が閾値を超えた場合に、電流を自動的に下げて、各電極に印加される電圧値を一定化するように構成されている。
【0085】
したがって、高コストである定電圧・定電流を図る回路を用いることなく、給電コントローラ81により、過電流及び過電圧にならないように自動調整して電極への給電を適正化できる。又、給電コントローラ81が過電流と過電圧とを同時に検出した場合、この給電コントローラ81は各電極への電源供給を遮断する。
【0086】
電源装置82には直流電源が用いられる。この直流電源は、交流を直流に変換する変換器を備えた電源装置、若しくは直流発電装置例えば太陽光発電装置等を使用することができる。電源装置82の最高出力電圧は略15ボルトである。
【0087】
切換え器84は、給電コントローラ81から電解槽2に至る通電経路中に組込まれている。切換え器84は、その切換え動作によって外側電極16と内側電極25の電気的な極性を反転させるように構成されている。
【0088】
切換え器84の切換えは、例えば処理膜23の種類に応じて手動操作で行うことができるが、予め用意されたプログラムに従って自動的に行われるようにすることも可能である。更に、この切換え器84の切換えにより、電解装置1の運転中継続して外側電極16と内側電極25の極性が維持される。或いは、電解装置1の運転中に切換え器84が瞬時に又は所定時期に切換えられることによって、外側電極16と内側電極25の極性が逆転される。
【0089】
コントローラ86は、電源装置82の電力を受けて、所定のプログラムに従って制御動作を営み、それにより、電解装置1の全般の動作を制御する設備である。このコントローラ86に、第1スイッチ56、第2スイッチ66、第1センサ74、及び第2センサ75が電気的に接続されていて、これらの検知情報が供給される。更に、コントローラ86は、第1ポンプ54、第2ポンプ64、第3ポンプ73、補給弁79、及び切換え器84に電気的に接続されていて、これらを遠隔制御する。
【0090】
次に、電解装置1の作動を説明する。
【0091】
まず、コントローラ86が有した図示しないスタートボタンが操作されることで、コントローラ86は第2給液装置61の第2ポンプ64を駆動させる。これにより、第2タンク62内の電解質を含んだ第2液Bが、電解槽2の内槽22内に送込まれる。この送込みの進行により、内槽22内に溜められた第2液Bが、オーバーフロー管33の上端を越えるようになると、このオーバーフロー管33内に溢れた第2液Bが第2戻り管65を通って第2タンク62に戻される。
【0092】
以後、内槽22内に溜められた第2液Bは、オーバーフロー管33により貯留高さを規定された状態を保持されながら、第2ポンプ64が停止するまで、前記経路を通って上下方向に循環する。
【0093】
第2液Bが第2戻り管65を流れたことは、第2スイッチ66で検知されて、その検知情報はコントローラ86に入力される。この入力に基づいてコントローラ86は第1給液装置51の第1ポンプ54を駆動させる。これにより、第1タンク52内に溜められている処理対象液である第1液Aが、電解槽2の第1ポート48に供給される。この供給に伴い、第1液Aは、流路Gの一端部G1から他端部G2に向けて一方向に流れて、第2ポート49から流出する。したがって、第1液Aは第2戻り管65を通って第1タンク52に戻される。
【0094】
以後、第1ポンプ54が停止するまで、第1液Aは前記経路を通って循環する。この場合、電解槽2内で第1液Aは、第2液Bが溜められた内槽22の周りをこれに沿って平面視Uターンするように流路Gを流通する。
【0095】
第1液Bが第1戻り管55を流れたことは、第1スイッチ56で検知されて、その検知情報はコントローラ86に入力される。この入力に基づいてコントローラ86は第1給液装置51の給電コントローラ81をオンする。これにより、各外側電極16が通電されるとともに、これら外側電極16とは異なる極性に内側電極25が通電される。
【0096】
したがって、電解槽2の処理膜23の種類、内外各電極の極性、及び第1液Aと第2液Bとの組み合わせ等に応じて、第1液Aの処理が開始される。この場合、内外の電極間に処理膜23が配設されていることにより、外側電極16と内側電極25との間で電気分解が行われることと並行して電気透析が行われる。これによって、第1液Aの処理目的(例えば、汚染水の無害化、電解水の生成、脱塩処理等)に従って第1液Aが処理される。
【0097】
コントローラ86は図示しないタイマーが有している。給電コントローラ81がオンされた時点でタイマーがオンとなる。これにより、タイマーは、コントローラ86が第3ポンプ73の動作を開始させるまでの時間をカウントする動作を開始する。
【0098】
タイマーに設定された時間が経過して、このタイマーがオフされると、コントローラ86は排出装置71の第3ポンプ73を駆動する。これにより、処理された第1タンク52内の液体が排出管72を通して第1タンク52の外部に送り出される。
【0099】
この排出動作により、第1タンク52内の第1液Aの液面高さは降下する。液面高さが第2センサ75で検知されると、この第2センサ75の検知情報に従ってコントローラ86は第3ポンプ73の駆動を停止させる。
【0100】
この停止後に、コントローラ86により補給装置77の補給弁79が開かれる。これにより、新たな処理対象液である第1液Aが補給管78を通じて第1タンク52に補給されて、第1タンク52内の第1液Aの液面高さが上昇する。第1タンク52内の第1液Aの液面高さが第1センサ74に達すると、第1センサ74の検知情報に従ってコントローラ86は補給弁79を閉じる。
【0101】
こうした第1液Aの第1タンク52に対する排出とこれに引き続く補給は、電源装置82から電源が電解装置1に供給されている限り繰り返し行われる。これとともに、排出とこれに引き続く補給が行われている間中、電解槽2での処理(電気分解透析)はコントローラ86により継続される。
【0102】
コントローラ86に予め定められた処理時間が経過した場合、又はコントローラ86に設けられた停止ボタン(図示しない)がオペレータにより押された場合、電解装置1の運転が停止される。つまり、コントローラ86は、給電コントローラ81をオフさせるとともに、第1ポンプ54、第2ポンプ64、第3ポンプ73の駆動を停止させ、かつ、補給弁79を閉じる制御を行う。
【0103】
これに伴い、流路G内の第1液Aが、第2ポート49より低い位置の第1ポート48を通って電解槽2から流出し、第1送り管53を通って、電解槽2の下方に配置されている第1タンク52内に戻される。これとともに、内槽22内の第2液Bが、サイフォン作用によって、第2液入口32を通って電解槽2から流出し、第2送り管63を通って、電解槽2の下方に配置されている第2タンク62内に戻される。これは、第2タンク62及び第2ポンプ64が電解槽2より低く配設されていて、第2送り管63が第2液入口32を介して内槽22の底部に連通していることにより可能である。
【0104】
こうして電解槽2内に液が残らないようにできるに伴い、外側電極16及び内側電極25全体と処理膜23が残液で浸かって、それらの寿命が短くなることを抑制可能である。
【0105】
これとともに、第2送り管の先端部を兼ねた第2液入口32の下端が、内槽22が有した処理膜23の下端より下側に配置されている。このため、内槽22内の残液に処理膜23が晒されないので、処理膜23を保護することが可能である。
【0106】
既述の通電による電解槽2での第1液Aの処理は、第1液Aを平面視Uターン状の流路Gに、第1ポート48から第2ポート49に向けて一方向に流通させながら実施するので、その流れに乱れを生じ難く円滑に流路Gを流通できる。これとともに、第1液Aの流れが一方通行であることにより、第1液Aが外側電極16と処理膜23との間の互に別の箇所を別々に流れてから、それらの流れが流路G内で向かい合うように合流することがない。
【0107】
これにより、合流に基づく第1液Aの滞留域が流路Gに形成されることがない。よって、第1液Aの処理を担う面積、言い換えれば、電解を担う面積を、前記滞留域に相当して増やすことでき、処理効率を向上可能である。これとともに、電解を担う面積を増やすために、電解槽2及びこれを備えた電解装置1の大形化する必要がないので、これらの重量増加も抑制可能である。更に、大形化下場合のように白金でコーテングされた外側電極16及び内側電極25のコスト上昇がないため、電解槽2及びこれを備えた電解装置1のコストの上昇も抑制可能である。
【0108】
前記電解槽2は、流路Gの一端部G1と他端部G2のうちの少なくとも一端部G1が、外側電極16と処理膜23との間の流路断面積より広い流路断面積を有した整流室をなした構成を備えている。これにより、第1ポンプ54の運転に伴い流路Gに送込まれた第1液Aの乱れが、流路Gの一端部G1で鎮められる。こうして安定化された第1液Aは、層流状態となって外側電極16と処理膜23との間の流路部に通されるので、この流路部での第1液Aの流れの乱れが抑制される。
【0109】
加えて、流路Gの他端部G2も整流室をなしているので、処理された液体も流路Gの他端部G2から第2ポート49へ円滑に流出する。これにより、処理された液体の流出に伴う影響が流路G内に波及して、流れが乱されることを抑制可能である。
【0110】
従って、電解槽2の流路G内での第1液Aの流れが乱れないように適正にコントロールされるに伴い、渦等の発生が抑制されるので、電解槽2での処理効率をより向上することが可能である。
【0111】
しかも、第1ポート48から流路Gの一端部G1に供給された第1液Aは、外側電極16と処理膜23との間の流路部に、斜めの側壁部13eにより導かれる。これにより、一端部G1から前記流路部に向けての第1液Aの流れが急激に曲がることがない。この点でも、電解槽2の流路G内での第1液Aの流れをより適正にコントロールされるので、電解槽2での処理効率をより向上することが可能である。
【0112】
加えて、既述のように内槽22に第2液Bの液面高さを規定するオーバーフロー管33が取付けられていて、このオーバーフロー管33に第2給液装置61の第2戻り管65が接続されている。このため、第2液Bはオーバーフローにより内槽22内に一定量溜められる。このように電解質を含んだ第2液Bを所定の液面高さに溜めた状態で、第1液Aが処理されることにより、第2液Bについてはその流れの滞留域ができないような層流状態にコントロールすることを要しない。このため、第2液Bのコントロールが簡単であり、それに伴って電解槽2の構成を簡単にできる。
【0113】
更に、第1送り管53は第1ポート48又は第2ポート49のいずれかに接続可能である。同様に、第2戻り管55も第2ポート49又は第1ポート48のいずれかに接続可能である。これにより、流路Gに対して既述の説明とは逆方向に第1液Aを流すことが可能である。
【0114】
これとともに、既述のように流路Gの他端部G2も整流室をなしていて、斜めの側壁部13aを有している。したがって、電解槽2の第1液Aが通る入口と出口を切換えても、既述の整流作用を得られるとともに、外側電極16と処理膜23との間の流路部に、斜めの側壁部13aにより第1液Aを円滑に導入させることが可能である。
【0115】
前記電解槽2の流路Gは、外側電極16とこれに対向された処理膜23との間で、二箇所以上、具体的には四箇所折れ曲がっている。このため、流路Gが折れ曲がっていない構成に比較して、折れ曲がった角部が、流路Gを通る第1液Aに対する抵抗となる。これにより、第1液Aが流路Gを通過する時間が長くなることに応じて、外側電極16及び処理膜23に第1液Aが接触する時間が増える。したがって、電解槽2での処理効率をより向上することが可能である。
【0116】
前記電解槽2の第1ポート48の高さ位置と第2ポート49の高さ位置は異なっている。このため、既述のように流路Gを流れる第1液Aは、例えば第1ポート48から第2ポート49に向けて次第に高さを変えながら、流路Gを一方通行してUターン状に流れる。これにより、外側電極16及び処理膜23に第1液Aが接触する時間が増える。加えて、既述のように第1液Aが次第に高さを変えながら流路Gを流れることで、流路Gでの第1液Aの滞留域の発生が抑制される。したがって、電解槽2での処理効率をより向上することが可能である。
【0117】
これに対して、第1ポート48と第2ポート49の高さが同じである構成は、流路Gの上部と下部とを流れる第1液に速度差を生じ易く、それに基づいて渦が流路G中に発生することがある。よって、電解槽2での処理効率をより向上する上では不利である。
【0118】
電解槽2の外槽11に固定された外側電極16と内槽22の処理膜23との離間距離は、1.0mm〜3.5mmである。離間距離が1.0mm未満であると、第1液Aに対する流路Gの抵抗が大きくなり過ぎて、流路Gに対して第1液Aが層流状態で流れ難くなって、処理効率が低下する場合がある。離間距離が3.5mmを超えると、流路Gの各部を通る第1液Aに速度差を生じ易くなる。これにより、速度差に基づく渦等を原因として流路G内に滞留域が形成されて、処理効率が低下する場合がある。したがって、前記離間距離を1.0mm〜3.5mmとしたことで、電解槽2での処理効率をより向上することが可能である。
【0119】
又、電解槽2はカートリッジ21を備えている。このカートリッジ21は、外槽11の開放された外槽11の上端を閉じるとともに内槽22を支持する蓋28と、内槽22と、内側電極25を有して形成されている。このカートリッジ21は外槽11に着脱可能に連結されている。
【0120】
このため、カートリッジ21を外槽11から外すことにより、外槽11の内面及び外側電極16、内槽22の外面及び処理膜23等に夫々付着した汚れを除去する等のメンテナンスを容易に行うことができる。これとともに、異なる処理膜23を有したカートリッジ21を予め用意しておくことで、処理対象の第1液Aの種類等に適合する処理膜23を有したカートリッジに交換して、電解装置1を使用できる。
【0121】
ここに異なる処理膜を有したカートリッジとは、隔膜からなる処理膜23を有した内槽22を備えるカートリッジと、イオン交換膜からなる処理膜23を有した内槽22を備えるカートリッジを指している。
【0122】
更に、電解槽2のカートリッジ21は、耐食性を有しかつ弾性変形が可能で外槽11の周壁13に密接される密接部材36,37と、蓋28に設けられた手掛け部35とを備えている。このため、オペレータが手掛け部35に手を掛けて、内槽22を密接部材36,37の弾性変形を伴って外槽11内に圧入気味に押込むという簡便な操作で、カートリッジ21を外槽11に取付けることができる。この逆に、オペレータが手掛け部35を掴んで、密接部材36,37による保持力に抗して外槽11外にカートリッジ21を引出すという簡便な操作で、カートリッジ21を外槽11から外すことができる。
【0123】
このように工具を使用することなく、ワンタッチ操作で、外槽11に対してカートリッジ21を着脱できるので、メンテナンス又はカートリッジ21を交換する際、カートリッジ21をより容易に取扱うことができる。
【0124】
前記電解槽2を備えた電解装置1は、電解槽2の外側電極16と内側電極25に電気的に接続された給電コントローラ81を備え、この給電コントローラ81は過電流防止機能及び過電圧防止機能を有している。
【0125】
第2液Bの電解質濃度が低い場合、第2液Bには電流が流れ難い。この場合、給電コントローラ81は、最大電圧を印加するように電極への給電を自動的に制御する。処理膜23がイオン交換膜である場合、イオン交換の進行に伴って電流が流れ易くなるので、それに応じて電圧を次第に下げながら電流を最大電流まで次第に上げるように、給電コントローラ81は電極への給電を自動的に制御する。これとともに、給電コントローラ81は、過電流及び過電圧とならないように自動的に電極への給電を制御する。
【0126】
これにより、外側電極16と内側電極25との間に過電流が流れないので、過電流が流れることによる弊害を抑制可能である。つまり、電気エネルギーが熱になって無駄に消費されることを抑制できる。これとともに、電極への給電の最適化を図ることができる、更に、給電コントローラ81が自ら保護されて、その寿命が短くなることを抑制可能である。
【0127】
前記電解装置1は、外側電極16と内側電極25の極性を逆転させる切換え器84を備えている。この切換え器84で電極の極性を逆転させることは、外側電極16及び内側電極25がいずれも白金でコーテングされていることにより、支障なく行うことが可能である。そして、この極性逆転によって、電解装置1の用途の多様性を得ることが可能である。これについて本発明者が行った試験例を後述の別表に示す。
【0128】
更に、電解装置1の運転中に切換え器84を手動又は自動により操作して、内外の電極の極性を、瞬間的に逆転させて再び元に戻すことにより、第1液A中の分子を分解することが可能である。つまり、第1液A中にはイオン結合、共有結合、金属結合等様々な形態で結合している分子が存在し、その結合が強固であると、内外の電極への給電に伴う電気分解で分解し切れないことがある。このような分子であっても、既述の極性逆転操作により、イオン結合等を解除して前記分子を分解可能であり、この分解に伴って生じた物質はイオン化される。
【0129】
このように内外の電極への給電に伴う電気分解で分解し切れなかった第1液A中の分子を、内外の電極2の極性を反転することで、イオン化した物質に分解することが可能である。こうしてイオン化された物質は、電気分解と並行して行われる電気透析によって、外側電極16又は内側電極25へ移動される。したがって、電解槽2での処理性能を更に向上させることが可能である。この試験例についても、後述の別表に示す。
【0130】
前記電解装置1が備えた第1給液装置51は、第1液Aを溜める第1タンク52と、この第1タンク52と電解槽2の第1ポート48を連通した第1送り管53と、この第1送り管53に第1タンク52内の第1液Aを送込む第1ポンプ54と、電解槽2の第2ポート49と第1タンク52を連通した第1戻り管55とを備えている。
【0131】
このため、第1ポンプ54の駆動によって、第1液Aは、第1タンク52と電解槽2の流路Gにわたって繰り返し循環される。これにより、第1液Aに対する電気分解と電気透析が繰り替えされるので、処理された第1液Aの濃度が高められる。
【0132】
これとともに、前記電解装置1が備えた第2給液装置61は、第2液Bを溜める第2タンク62と、この第2タンク62と内槽22とを連通した第2送り管63と、この第2送り管63に第2タンク62内の第2液Bを送込む第2ポンプ64と、内槽22と第2タンク62を連通した第2戻り管65とを備えている。
【0133】
このため、第2ポンプ64の駆動によって、第2液Bが、第2タンク52と電解槽2の内槽22にわたって繰り返し循環される。これにより、第1液Aに対する電気分解と電気透析により内側電極25に引き付けられた例えば金属イオン等の第2液B中のイオン濃度が高められる。
【0134】
又、前記電解装置1の運転中での電気分解により、外側電極16と内側電極25のうちで、電源装置82の陽極に接続された電極側では酸素ガスが発生し、電源装置82の陰極に接続された電極側では水素ガスが発生する。前記電解装置1は既に説明したようにその処理効率が高いので、その処理に伴い多量のガスを発生させることが可能であり、例えば、水素ガスについては1気圧にも及ぶ圧力で多量に発生できることが試験により確かめられた。
【0135】
外側電極16側で発生したガスは、第1導管57を通って第1タンク52に戻された上で、この第1タンク52から第1ガス管58を通って図示しない第1ガス処理設備に導かれる。これとともに、内側電極25側で発生したガスは、第2導管67を通って第2タンク62に戻された上で、この第2タンク62から第2ガス管68を通って図示しない第2ガス処理設備に導かれる。
【0136】
なお、前記電解装置1の運転により生成される水素を含む水は、アルカリ性で、界面活性効果を有しているので、この水をエマルジョン溶液の原料に用いる場合は、エマルジョン溶液による例えば油の分解や除去、又は汚れの除去等の効率が格段に上がることを期待できる。同様に、前記電解装置1の運転中による得ることができる酸素を多く含む水は、殺菌効果が高いので、殺菌水としての用途に適している。
【0137】
又、前記電解装置1の運転中、電源装置82の電圧変動等で、第2ポンプ64による内槽22への送液量と第2タンク62への還流量とのバランスが崩れて、内槽22に第2液Bが満ちるようになることが考えられる。このような事態に至った場合、内槽22から溢れようとする第2液Bは、第2ガス管67を通って第2タンク62に戻されるので。第2液Bが電解槽2から外部に漏れることがない。これとともに、第2ガス管68は、発生ガスの排出とともに、満液対策時のオーボーフロー管として共用されているので、配管構成が単純である。なお、内槽22の満液対策用の排出管は第2ガス管68とは別に設けることも可能である。
【0138】
前記構成の電解装置1は、既述のように処理能力が高いので、第1液Aと第2液Bの種類の選択、処理膜23の種類、外側電極16と内側電極25の極性、及び極性の瞬時逆転の有無、処理時間の長さ等を選択することによって、多種多様な溶液の処理をすることが可能である。本出願人が試験した結果を以下の表に示す。
【表1】

【0139】
【表2】

【0140】
表1,2で、(極性逆転)の文字が付された試験は、切換え器84での操作により内外各電極の極性を瞬時に切換えることを伴って処理した試験である示している。表1,2で、(一次)(二次)の文字が付された試験は、極性切換えを伴って処理した試験であることを示している。表1,2で、(直接吐水)とは、第2液Bを循環させることなく内槽22に溜めた状態で、第1液Aを流路Gに一回のみ流通させた試験であることを示している。表1,2で(循環)とは、第1液A及び第2液Bをともに循環させた条件で処理した試験であることを示している。表1,2で、海水とは濃度調整をしていない海水である。
【0141】
なお、表1に示した試験1、つまり、第1液Aを軟水とし、第2液Bを無調整の海水として、第1液を処理した試験を代表して説明する。この処理は、電源装置82の正極に接続された電極(陽極)を外側電極16とし、電源装置82の負極に接続された電極(陰極)を内側電極25として、電解槽2に第1液Aと第2液Bを循環させた状態で、電解透析に必要な電源電圧を外側電極16と内側電極25に印加することで行った。この際の電気化学的な反応は以下の通りである。
【0142】
電圧が掛かることで、電気分解(電解)が行われて、陽極である外側電極16と処理膜23との間の流路Gでは、水から酸素と水素イオン(H)が生成される。これとともに、陰極である内側電極25と処理膜23との間に供給された塩水中の塩素イオン(Cl)は、電気透析作用で処理膜23を通って流路G内に移動されて、ここで塩素(Cl)を介して塩素ガス(Cl)となる。この塩素ガスは流路G内で水と反応して次塩素酸(HClO)及び塩酸(HCl)となる。
【0143】
このため、電解槽2の第2ポート49から、殺菌効果の高い次塩素酸を含んで殺菌に好適な生成液が流出する。この生成液は、高濃度の水素イオンを含んでいるため、pHの低い強酸性を有し、医療分野又は食品分野等での殺菌に用いられる殺菌水として適している。
【0144】
なお、第1実施形態は、単一の電解槽を備えた電解装置として説明したが、電解装置は、複数の電解槽を備え、これら電解槽の流路が互に連通されるとともに、各電解槽に対して第1給液装置を共用させた構成とすることもできる。
【0145】
この場合、第1液の流れを基準に相対的に上流側に配置された上流側電解槽と相対的に下流側に配置された下流側電解槽と、第1給液装置との関係は、以下の通りである。つまり、上流側電解槽の流路を通った第1液が吐き出されるポートと、下流側電解槽の流路に第1液を導入するポートとを、これらに両端を接続した配管で連通する。第1送り管を、最も上流側に配置された電解槽の流路に第1液を導くポートに接続する。更に、第1戻り管を、最も下流側に配置された電解槽の流路を通った第1液が吐き出されるポートに接続する。
【0146】
又、このように複数の電解槽の流路を直列に連通させるのではなく、各電解槽の流路が並列となるように電解装置を構成することもできる。この場合、第1送り管を、電解槽の数に合わせて分岐して、夫々の分岐管の先端を各電解槽の一方のポートに接続するとともに、第1戻り管も、電解槽の数に合わせて分岐して、夫々の分岐管の先端を各電解槽の他方のポートに接続する。また、いずれの場合でも、第2給液装置は各電解槽ごとに用意する。
【0147】
図7及び図8は本発明の第2実施形態を示している。第2実施形態で、第1実施形態と同一又は同じ機能を発揮する構成については、第1実施形態と同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0148】
第2実施形態で、電解槽2の外槽11は平面視四角形である。この外槽11の正面をなす側壁部11a以外の側壁部11b〜11dの各内面の夫々に外側電極16が固定されている。外槽11の側壁部11aの下隅部に第1ポート48が設けられ、側壁部11aの上隅部に第2ポート49が設けられている。これら第1ポート48と第2ポート49は側壁部11aの対角線上に配設されている。
【0149】
カートリッジ21の内槽22及び蓋28は、外槽11に適合して平面視四角形である。そのため、このカートリッジ21が外槽11に取付けられた電解槽2が組立てられた状態で形成される流路Gは、二箇所で折れ曲がってコの字形をなしている。この流路Gの一端部は、整流室を形成しておらず、図8に示すように第1ポート48に直接的に連通されている。同様に、流路Gの他端部G2も、整流室を形成しておらず、第2ポート49に直接的に連通されている。
【0150】
第2実施形態は、以上説明した以外の構成は、図示されない構成を含めて第1実施形態と同じである。このため、第2実施形態においても、第1実施形態で既に説明した理由によって、大形化と重量化を抑制しつつ電解面積をより多く確保することが可能な電解槽2、及びこの電解槽2を備えた電解装置を提供することができる。
【0151】
この第2実施形態の電解槽2を備えた電解装置でメッキ廃液を無害化する試験の結果を次に示す。
【0152】
この試験で用いた外側電極16は縦横各98mmの大きさであり、循環される処理対象の第1液Aは、銅イオン濃度が75ppm、pHが9.18のメッキ廃液で、5.0リットル用いた。又、循環される第2液Bには塩化カリウム(KCL)を20%含んだ溶液を用いた。更に、電解装置の電源電圧は15ボルトであり、電解装置の使用中切換え器により電極の極性逆転を3回行った。
【0153】
この結果は次の通りであった。銅イオン濃度が75ppm、pHが9.18のメッキ廃液が、電解透析作用を受けてpHが12.5のアルカリ液となった時点で、1回目の極性逆転を行った。
【0154】
そのため、これ以後の電解透析作用によりメッキ廃液は酸性を示すようになり、そのpHは9.0に変化した。このとき、銅イオン濃度は0.1ppmにまで下がった。
【0155】
次に、以上のようにメッキ廃液のpHが9.0の酸性液となった時点で、2回目の極性逆転を行った。そのため、これ以後の電解透析作用でメッキ廃液はアルカリ性を示すようになり、そのpHは12.5に変化した。このとき、銅イオン濃度は0.00ppmにまで下がった。
【0156】
更に、以上のようにメッキ廃液のpHが12.5のアルカリ液となった時点で、3回目の極性逆転を行った。そのため、これ以後の電解透析作用によりメッキ廃液は酸性を示すようになり、そのpHは9.0に変化した。このとき、銅イオン濃度は0.00ppmであった。
【0157】
この試験結果により、本発明の第2実施形態の電解槽2を備えた電解装置で、メッキ廃液中の銅イオンを除去できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明の電解槽及びこれを備えた電解装置は、大形化と重量化を抑制しつつ電解面積を増やすことできるので有用である。又、本発明の電解槽及びこれを備えた電解装置は、酸性水やアルカリ性水などの電解液を生成できるので、工業用等の洗浄分野及び殺菌分野などに有用である。それだけではなく、本発明の電解槽及びこれを備えた電解装置は、海水等から資源として利用可能な水素ガスや酸素ガス及び塩素ガス等を大量に生成可能であるので、資源ガス生成のために有用である。更に、発明の電解槽及びこれを備えた電解装置は、高濃度の酸溶液やアルカリ溶液を中和することができ、或いは重金属汚染液から重金属を除去することができ、廃油を還元することもでき、若しくは、硬水を軟水に変換することもできるので、様々な用途のニーズに有用である。
【符号の説明】
【0159】
1…電解装置、2…電解槽、11…外槽、13…周壁、16…外側電極、21…カートリッジ、22…内槽、23…処理膜、25…内側電極、28…蓋、33…オーバーフロー管、35…手掛け部、36,37…密接部材、40…仕切り、41…連結部材、G…流路、G1…流路の一端部(整流室)、G2…流路の他端部、48…第1ポート、49…第2ポート、51…第1給液装置、52…第1タンク、53…第1送り管、54…第1ポンプ、55…第1戻り管、A…第1液、61…第2給液装置、62…第2タンク、63…第2送り管、64…第2ポンプ、65…第2戻り管、B…第2液、81…給電コントローラ、84…切換え器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外槽と;
この外槽が有した周壁の内周面に周方向に並べて固定された板状をなす複数の外側電極と;
これら外側電極に対向する処理膜を有し、前記周壁の内周面に沿ってUターンするように曲げられた一方通行の流路を形成して前記外槽に収容された内槽と;
この内槽の内部に配設された板状をなす複数の内側電極と;
前記流路の一端部と他端部を仕切る仕切りと;
前記流路の一端部に連通して前記外槽に設けられた第1ポートと;
前記仕切りを境に前記第1ポートと反対側で前記流路の他端部に連通して前記外槽に設けられた第2ポートと;
を具備する電解槽。
【請求項2】
前記流路の一端部と他端部のうちの少なくとも前記流路の一端部が、前記外側電極と前記処理膜との間の流路断面積より広い流路断面積を有した整流室である請求項1に記載の電解槽。
【請求項3】
前記流路が前記外側電極と前記処理膜との間で二箇所以上折れ曲がっている請求項1又は2に記載の電解槽。
【請求項4】
前記第1ポートの高さ位置と前記第2ポートの高さ位置が異なっている請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の電解槽。
【請求項5】
前記外側電極と前記処理膜との離間距離が、1.0mm〜3.5mmである請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の電解槽。
【請求項6】
前記外槽の上端が開放されていて、この開放された上端を閉じるとともに前記内槽を支持する蓋と、前記外槽に着脱可能に連結されたカートリッジを更に備え、前記カートリッジが、前記蓋と前記内槽と前記内側電極とを有している請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の電解槽。
【請求項7】
前記カートリッジが、弾性変形可能で前記周壁に密接される密接部材と、前記蓋に設けられた手掛け部とを、更に有している請求項6に記載の電解槽。
【請求項8】
前記処理膜が隔膜である請求項1から7のうちのいずれか一項に記載の電解槽。
【請求項9】
前記処理膜がイオン交換膜である請求項1から7のうちのいずれか一項に記載の電解槽。
【請求項10】
請求項1から9のうちのいずれか一項に記載の電解槽と;
この電解槽が備えた第1ポートに処理対象の第1液を供給する第1給液装置と;
前記電解槽が備えた内槽の内部に電解質を含んだ第2液を供給する第2給液装置と;
を具備する電解装置。
【請求項11】
前記電解槽が備えた外側電極と内側電極に電気的に接続された給電コントローラを更に備え、このコントローラが過電流防止機能及び過電圧防止機能を有している請求項10に記載の電解装置。
【請求項12】
前記外側電極と内側電極の極性を逆転させる切換え器を更に備えた請求項10又は11に記載の電解装置。
【請求項13】
前記第1給液装置が、前記第1液を溜める第1タンクと、このタンクと前記第1ポート又は前記電解槽が備えた第2ポートを連通した第1送り管と、この第1送り管に第1タンク内の第1液を送込む第1ポンプと、前記第2ポート又は第1ポートと前記第1タンクを連通した第1戻り管とを備えており、
前記第2給液装置が、前記第2液を溜める第2タンクと、このタンクと前記内槽とを連通した第2送り管と、この第2送り管に第2タンク内の第2液を送込む第2ポンプと、前記内槽と前記第2タンクを連通した第2戻り管とを備えている請求項10から12のうちのいずれか一項に記載の電解装置。
【請求項14】
前記第2タンク、第2ポンプ、及び第2送り管が前記電解槽より低く配設されているとともに、前記第2送り管の先端部が、前記電解槽が備えた処理膜の下端よりも下側に配置されている請求項13に記載の電解装置。
【請求項15】
前記内槽に前記第2液の液面高さを規定するオーバーフロー管が取付けられていて、この管に前記第2戻り管が接続されている請求項13又は14に記載の電解装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−19036(P2013−19036A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155095(P2011−155095)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(504174054)JWSテクニカ株式会社 (4)
【Fターム(参考)】