説明

電解水生成吐出装置及び電解水吐出方法

【課題】電解電極の損傷の可能性を低く抑えつつ、小さい刺激で動物又は人間の敏感な部位に電解水を吐出できる小型の電解水生成吐出装置を提供する。
【解決手段】電解水生成吐出装置11は、ダイヤモンド電極を少なくとも陽極として使用した電解電極を用いて、供給される水又は水溶液を電気分解することにより電解水を生成する電解ユニット25と、電解ユニット25により生成された電解水を吐出するノズル27と、予め定められた流量で水又は水溶液を電解ユニット25に供給し、ノズル27から電解水を吐出させるポンプ23と、電解ユニット25及びポンプ23の作動を制御する制御ユニット41とを備える。制御ユニット41は、電解ユニット25及びポンプ23の作動の開始及び停止を予め定められた時間間隔で繰り返すように制御し、ノズル27から電解水を間欠的に吐出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気分解により生成した電解水を洗浄又は消毒のために動物又は人間の身体部位へ向けて吐出するための電解水生成吐出装置及び電解水吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水や水に電解質等を添加した水溶液を電気分解することにより生成される電解水が洗浄又は殺菌用途に有用であることが知られてきており、動物や人間の身体部位(患部、口腔、耳、目など)の洗浄に用いられている。洗浄又は殺菌用途で使用される電解水には、酸性電解水、アルカリ性電解水、電解次亜水、オゾン水などがある。
【0003】
電解水の中でも、特にオゾン水は、酸化作用で細胞膜を破壊することにより細菌を死滅させるため、耐性菌が発生しないという利点がある。オゾン水の生成方法には、電気分解による方法以外にも、紫外線照射や高電圧による低温放電などにより空気又は酸素からオゾンガスを生成した後、気泡溶解法を用いて、生成したオゾンガスを水に吹き込んでオゾンガスを水に溶解させたり、隔膜溶解法を用いて、多孔質膜に水を流すと共にその外側に生成したオゾンガスを流して多孔質膜を通して水中にオゾンガスを吸収溶解させる方法などがある。しかしながら、紫外線照射や低温放電によりオゾンガスを生成すると装置が大型になってしまう。また、簡単にオゾン水を生成することができず、生成したオゾン水を貯留して使用することになるので、オゾン水が分解しやすいという欠点がある。これに対して、電気分解によりオゾン水を生成する場合、オゾン水を短時間で生成することができるので即応性が高いという利点があり、オゾン水の生成でも電気分解による方法が用いられることが多くなっている。特に、金属又は半金属の表面にダイヤモンド薄膜を形成することにより作成したダイヤモンド電極は、これを少なくとも陽極として用いて電気分解を行うことにより水道水などの水からオゾン水を生成できることに加えて、ダイヤモンド電極を用いると電解反応が進行しやすく、装置を小型にでき、なおかつ高濃度の電解水を生成することができるという利点を有する。
【0004】
このように洗浄作用や消毒作用を有した電解水を生成し噴射することができる装置が、例えば、特許文献1〜3などに開示されている。特許文献1は、電解槽内に対向して配置された板状の陽極板と陰極板とに通電することにより、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどの塩を含む水を電気分解して電解水を生成し、生成した電解水をノズルから噴射又は噴霧するガンタイプの電解水供給装置を開示している。また、特許文献2及び特許文献3は、レバーを押すことをトリガーとして、少なくともその一部を導電性ダイヤモンドで形成したいわゆるダイヤモンド電極(陽極)と金属又はカーボン材料からなる電極(陰極)とを有した電解ユニットで容器に収容した原料水を電解し、生成した電解水を所定量だけ噴霧ノズルから噴霧する霧吹きタイプの電解水噴出装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−47048号公報
【特許文献2】特開2006−346203号公報
【特許文献3】特開2008−127583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献2及び特許文献3に開示されているような霧吹きタイプの電解水噴出装置は、電解水を霧状に拡散させてしまうため、特定の身体部位に絞って洗浄又は消毒する用途には適さず、この用途には、特許文献1に開示されているガンタイプの電解水供給装置のように電解水を直線状に噴射できるものが好ましい。しかしながら、こうしたガンタイプの電解水供給装置を用いて動物や人間の耳や目、傷口などの敏感な身体部位に早い速度で電解水を噴射すると、刺激が強すぎて不快感や苦痛を与えてしまうため、電解水を直線状に噴射するタイプの電解水供給装置を敏感な身体部位への噴射に使用することは困難であった。
【0007】
そのため、従来は、敏感な身体部位を電解水で洗浄又は消毒するときは、生成した電解水をコップなどに入れたものをシリンジに吸入した後に優しく吐出して当該部位に適用していた。しかしながら、この場合、オゾン水などのように分解しやすい電解水はオゾンの分解により溶存オゾン濃度が低下し、殺菌力が低下してしまうという問題があった。
【0008】
また、電解水の噴射速度を遅くする方法も考えられる。しかしながら、電解水の生成では、電解電極が通電による発熱を伴い、電解電極の周囲を流れる原料水が電解電極を冷却させる機能を果たしているため、電解水の噴射速度を低下させると、電解電極の周囲を流れる原料水の流速も低下して冷却作用が弱まり、温度上昇による電解電極の損傷を招きやすくなる。さらに、電解水がオゾン水の場合、電解電極の温度上昇により水温が上昇すると、オゾンの熱分解を促進してオゾン水の溶存オゾン濃度を低下させるので、オゾン水の殺菌性能を低下させてしまう問題を引き起こす。
【0009】
よって、本発明の目的は、従来技術に存する問題を解決して、電解電極の損傷の可能性を低く抑えつつ、小さい刺激で動物又は人間の敏感な身体部位へ向けて電解水を吐出できる小型の電解水生成吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的に鑑み、本発明の一つの態様によれば、電気分解により生成した電解水を洗浄又は消毒のために動物又は人間の身体部位へ向けて吐出するための電解水生成吐出装置であって、ダイヤモンド電極を少なくとも陽極として使用した電解電極を用いて、供給される水又は水溶液を電気分解することにより電解水を生成する電解ユニットと、前記電解ユニットに接続されているノズルと、予め定められた流量で水又は水溶液を前記電解ユニットに供給し、前記電解ユニットによって生成された電解水を前記ノズルから吐出させるポンプと、前記電解ユニット及び前記ポンプの作動を制御する制御ユニットとを備え、前記制御ユニットが、前記電解ユニット及び前記ポンプの作動の開始及び停止を予め定められた時間間隔で繰り返すように制御し、前記ノズルから電解水を間欠的に吐出させる電解水生成吐出装置が提供される。
【0011】
上記電解水生成吐出装置では、電解ユニットによって電気分解を行って水又は水溶液から電解水を生成するので、電解ユニットに供給される水溶液の種類を変えたりそのpHを調整したりすることによって様々な種類の電解水を生成でき、また、必要なときに即座に電解水の供給が可能になり、即応性が高い。また、少なくとも電解電極の陽極としてダイヤモンド電極を使用しているので、電解反応が進行しやすくなり、電解水生成吐出装置を小型化することができ、なおかつ高濃度の電解水を生成することが可能になる上に、水道水や精製水などの水からオゾン水を生成することも可能となる。また、ポンプを用いて予め定められた流量で水又は水溶液を電解ユニットに供給するので、電解ユニットの電解電極に所定の電流又は電圧を印加している間、予め定められた濃度の電解水を生成でき、生成された電解水は安定した洗浄性能又は殺菌性能を発揮することができる。さらに、電解ユニット及びポンプの動作の開始及び停止を予め定められた時間間隔で繰り返すことにより電解水を間欠的にノズルから吐出するので、連続的に電解水を身体部位に噴射する場合と比較して、電解ユニットの電解電極に電流又は電圧を印加しているときに電解ユニットに供給される水又は水溶液の流量を減らすことなく、ノズルから吐出された電解水が動物又は人間の身体部位に与える刺激を大幅に抑えることができる。加えて、ポンプの作動を停止させるときに電解ユニットの作動も停止させるので、水又は水溶液が供給されない状態で電解ユニットが作動することがなく、電解電極の温度上昇も抑制することができる。
【0012】
上記電解水生成吐出装置では、前記制御ユニットは、前記ポンプの作動の開始より予め定められた時間だけ前に前記電解電極への電流又は電圧の印加を開始させるように制御することが好ましい。電解電極への電流又は電圧の印加を開始してから電解電極の陽極と陰極との電位差が所定の値になって電解ユニットが所定の濃度の電解水を生成できるようになるまでには遅れが生じる。したがって、電解ユニットの作動の開始時には所定の濃度の電解水を生成することができず、電解ユニットの作動の開始時に生成された電解水の洗浄性能や消毒性能が低下してしまう可能性が生じる。しかしながら、このようにポンプの作動の開始よりも早く電解電極への電流又は電圧の印加を開始することで、電解ユニットによって生成される電解水が所定濃度に達するようになった後にノズルから吐出されるようにすることができ、生成される電解水の洗浄性能や消毒性能を安定させることが可能になる。
【0013】
また、前記制御ユニットは、前記ポンプの作動の停止から予め定められた時間だけ経過した後に前記電解電極への電流又は電圧の印加を停止させるように制御することが好ましい。ポンプが停止してもポンプから供給された水又は水溶液は惰性で即座に停止することができず、電解ユニットが作動していない間に水又は水溶液が電解ユニットに供給されるので所定の濃度に達していない電解水が電解ユニットから排出される可能性がある。しかしながら、このように電解ユニットの電解電極に対する電流又は電圧の印加の停止をポンプの作動停止よりも遅らせることで、ポンプから電解ユニットへの水又は水溶液の供給が完全に停止してから電解ユニットの動作を停止させて、所定の濃度に達した電解水のみを電解ユニットから排出させることができ、ノズルから吐出される電解水の洗浄性能や消毒性能を安定させることが可能となる。
【0014】
電解水はオゾン水であることが好ましい。オゾン水による殺菌は酸化作用で細胞膜を破壊することによりなされるので、耐性菌が生じないという利点があり、医療用途として好ましい。また、生成したばかりのオゾン水を吐出することができる本発明の電解水生成吐出装置は、分解しやすいオゾン水の使用に特に適している。
【0015】
前記電解電極は、金属又は半金属の表面にダイヤモンド薄膜を形成することにより作成した電極を陽極とし、帯状又は線状の陰極を隔膜を介して該ダイヤモンド電極の周囲に螺旋状に巻きつけることにより作成されることが好ましい。このようにダイヤモンド電極を陽極とした電解電極を用いれば、水からオゾン水を長期間、高濃度で生成することが可能になり、オゾン水生成のための材料コストを低く抑えることができる。
【0016】
また、本発明の別の態様によれば、電気分解により生成した電解水を洗浄又は消毒のために動物又は人間の身体部位へ向けて吐出するための電解水吐出方法であって、ポンプを用いて、予め定められた流量で水又は水溶液を電解ユニットに供給するステップと、前記電解ユニットにおいて、ダイヤモンド電極を少なくとも陽極として使用した電解電極を用いて、供給された水又は水溶液を電気分解することにより電解水を生成するステップと、前記電解ユニット及び前記ポンプの作動の開始及び停止を予め定められた時間間隔で繰り返すように制御し、前記電解ユニットによって生成された電解水をノズルから間欠的に吐出させるステップとを含む電解水吐出方法が提供される。
【0017】
上記電解水吐出方法では、前記吐出させるステップにおいて、前記ポンプの作動開始より予め定められた時間だけ前に、前記電解電極への電流又は電圧の印加を開始させるように前記電解ユニット及び前記ポンプの作動を制御することが好ましい。また、前記ポンプの作動の停止から予め定められた時間だけ経過した後に前記電解電極への電流又は電圧の印加を停止させるように前記電解ユニット及び前記ポンプの作動を制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ダイヤモンド電極を少なくとも陽極として使用した電解電極を用いた電解ユニットを用いて電解水を生成するので、様々な種類の電解水を生成でき、小型でかつ即応性の高い電解水生成吐出装置が実現できる上に、水道水や精製水などの水からオゾン水を生成することも可能になる。また、ポンプを用いて電解ユニットに予め定められた流量で水又は水溶液を供給するので予め定められた濃度の電解水を安定して生成することができる。さらに、電解ユニット及びポンプの作動の開始及び停止を予め定められた時間間隔で繰り返すことにより、電解水を間欠的にノズルから吐出するので、電解電極の温度上昇を抑制して電解電極の損傷の可能性を低く抑えることができると共に、動物又は人間の身体部位への刺激を抑えることができ、電解水を敏感な部位へ適用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による電解水生成吐出装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明による電解水生成吐出装置の機能ブロック図である。
【図3】ポンプの制御パルス信号と電解ユニットの電解電極に印加する電流又は電圧パルスを示すタイミングチャートである。
【図4】電解水生成吐出装置の電解ユニットの第1の実施例を示す図である。
【図5】電解水生成吐出装置の電解ユニットの第2の実施例を示す図である。
【図6】電解水生成吐出装置の電解ユニットの第3の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明による電解水生成吐出装置の実施の形態を説明する。
最初に、図1及び図2を参照して、電解水生成吐出装置11の全体構成を説明する。図1に示されているように、電解水生成吐出装置11は、水道水や精製水などの水や水に電解質を添加して溶解させた水溶液(以下、まとめて原料水と記載する。)から電解水を生成する電解水生成器13と、チューブ15によって電解水生成器13に接続されているハンドピース17とを備える。原料水には、界面活性剤をさらに添加してもよい。このように原料水に界面活性剤を添加することにより、例えば電解水としてオゾン水を生成するときに溶存オゾンの揮発を低減させる効果を奏する。チューブ15は、シリコーンゴムや軟質ポリエチレンなどの合成樹脂から作製した柔軟で腐食に強いものとすることが好ましい。このような合成樹脂製チューブをチューブ15として用いれば、柔軟なのでチューブ15に接続されるハンドピース17を操作しやすくなると共に、腐食に強いので酸化作用をもつオゾン水又は酸性電解水やアルカリ腐食を招くアルカリ性電解水を生成する場合でもチューブの腐食を防ぐことができる。
【0021】
電解水生成器13は、電源19から電力の供給を受けて、原料水を電気分解することにより電解水を生成する機器である。電解水生成器13は、例えば図2に示されているように、原料水を貯留するための貯留槽21と、ポンプ23と、電解ユニット25とを備え、ポンプ23によって、貯留槽21に貯留された原料水を電解ユニット25へ送り込み、送り込まれた原料水を電解ユニット25によって電気分解して電解水を生成する。なお、原料水は、生成させる電解水の種類、使用する電極の種類、陽極と陰極とを区画する隔膜の使用の有無などに応じて適宜のものが選択される。
【0022】
貯留槽21は、原料水を貯留するためのものであり、キャップ21aによって開閉可能な供給口を備え、供給口を通して貯留槽21へ原料水を補給できるようになっている。また、貯留槽21は、原料水と反応しない適宜の材料、例えばアクリル系樹脂などの熱可塑性樹脂から作製される。なお、貯留槽21は必須の構成要素ではなく、配管を通して外部から電解水生成器13に原料水を供給するように構成されていれば、貯留槽21は設けなくてもよい。しかしながら、外部から電解水生成器13へ原料水を供給するための配管が不要になり、電解水生成器13の携帯性が高まることから、電解水生成器13は貯留槽21を備えていることが好ましい。
【0023】
ポンプ23は、原料水を予め定められた流量で電解ユニット25へ送り込むためのものであり、予め定められた流量で原料水を送ることができれば、任意のタイプのものを使用することができる。しかしながら、電解水は、洗浄又は消毒作用を発揮するためには、予め定められた濃度を維持する必要があることから、ポンプ23には、高い精度で予め定められた流量の原料水を送ることができる定量ポンプを使用することが望ましい。
【0024】
例えば水道管から水道水を原料水として電解水生成器13に供給する場合、ポンプ23を用いなくても水道管からの供給圧力で水道水を電解ユニット25へ供給することができるが、水道管からの供給圧力は使用場所などでバラつきが大きく流量も一定しないため、生成される電解水の濃度にバラつきが生じ、一定の洗浄性能や消毒性能を保つことができない。しかしながら、本発明の電解水生成吐出装置11は、ポンプ23を必須の構成要素として備えているので、原料水を外部から供給するか貯留槽21から供給するかにかかわらず、予め定められた流量の原料水を電解ユニット25に供給でき、所定の濃度の電解水を安定して生成できる。したがって、生成される電解水は洗浄性能や消毒性能を安定して発揮することができる。
【0025】
電解ユニット25は、少なくとも陽極としてダイヤモンド電極を含む電解電極に電流又は電圧を印加することにより、原料水を電気分解して電解水を生成するものであり、原料水を電気分解して電解水を生成できれば陰極には適宜の材料からなる電極を用いることができる。少なくとも陽極としてダイヤモンド電極を使用することにより、電解反応が進行しやすくなって、電解水生成器13を小型にすることができ、なおかつ高濃度の電解水を生成することが可能となる。また、水道水や精製水などの水を電気分解してオゾン水を生成することができるようになる。例えば、電解ユニット25として、陽極のみ又は陽極及び陰極の両方にダイヤモンド電極を用い、陽極と陰極との間に固体高分子電解質膜を挟んで電解槽内で原料水を電気分解するタイプのものを用いることができる。また、陽極及び陰極として板状のダイヤモンド電極を対向して配置し、陽極側と陰極側とをイオン交換膜などの隔膜で区画して原料水を電気分解するタイプのものや、同様の配置で陽極側と陰極側とを隔膜で区画しないで原料水を電気分解するタイプのものも用いることもできる。さらに、電解槽に代えてチューブ状容器内にこれらの電極を配置し、一端から原料水を供給し、反対側の他端から電解水を排出させるようにしてもよい。
【0026】
このように電解ユニット25は、電解電極に電流又は電圧を印加することにより、原料水を電気分解するものであるので、簡単な構造とすることができ、携帯可能な程度まで小型化できるだけでなく、必要とする瞬間に即座に電解水を生成することができるという即応性を備えるという利点を有する。また、分解しやすいオゾン水などを洗浄又は消毒のために使用するときには、生成から使用までの時間が短いほどよく、このような即応性は特に利点となる。さらに、電解ユニット25は、原料水の種類、原料水のpH、イオン交換膜の使用の有無などを変えることにより、様々な種類の電解水を生成することができる利点も有する。例えば、所定条件下で、食塩水を隔膜なしで電気分解することにより、弱アルカリ性の電解次亜水を生成することができ、希塩酸を隔膜なしで電気分解することにより、微酸性の次亜塩素酸を生成することができる。また、所定条件下で、陽極側と陰極側とを隔膜により区画した状態で食塩水を電気分解することにより、陽極側には次亜塩素酸を含む強酸性電解水が、陰極側には、強アルカリ性電解水が生成され、陽極側と陰極側とを隔膜により区画した状態で水を電気分解することにより、陽極側にオゾン水が生成される。
【0027】
なお、電解電極に印加する電流又は電圧は、所望する電解水生成能力、供給される原料水の種類、水質、水温、流量、生成される電解水の濃度などに応じて適宜に定めればよい。
【0028】
電解ユニット25には、チューブ15が接続されており、電解ユニットによって生成された電解水がチューブ15を通してハンドピース17へ供給され、ハンドピース17のノズル27から動物又は人間の身体部位へ向かって吐出されるようになっている。
【0029】
チューブ15の途中に、ワンタッチカップリングのような連結器35を設け、電解水生成器13側のチューブとハンドピース17側のチューブを脱着可能にしてもよい。このようにチューブ15の途中に連結器35を設けることによって、電解水生成器13に接続されるハンドピース17を交換することが容易になる。
【0030】
電解水生成器13は、電源のオンとオフとを又は運転の開始と停止とを切り換えるための運転ボタン29と、電気分解により生成された電解水を吐出する吐出モードになっているときに点灯する吐出モードランプ31と、異常を感知したときなどに点灯又は点滅して異常発生を知らせるモニターランプ33とを備え、電解水生成器13のオンオフの切り換えを行ったり、運転状態を認識したりできるようになっていることが好ましい。
【0031】
さらに、電解水生成器13は、図1及び図2に示されているように、ケーブルによって接続されたフットスイッチ39を備えることが好ましい。このようなフットスイッチ39の操作によって、ハンドピース17のノズル27から電解水が吐出される吐出モードとハンドピース17のノズル27からの電解水の吐出が停止される吐出停止モードとを切り換えることができるようになっていれば、ハンドピース17を手に持って動物又は人間の身体部位へ電解水を吐出しながらフットスイッチ39を操作することによって電解水の吐出の開始及び停止を切り換えることが可能となり、両手を使った作業が可能になる。また、例えばフットスイッチ39を踏む時間などを使い分けることで、運転モードの切り換えを行うも可能となる。具体的には、短い時間の踏み込みを行うと、踏む度に吐出モードと吐出停止モードとを切り換えるオルタネイト動作を行い、予め定められた時間以上踏み続けると踏み続けている間だけ所定の動作モードになるモーメンタリー動作を行うようにすることができる。
【0032】
電解水生成器13は、ポンプ23及び電解ユニット25の作動を制御する制御ユニット41をさらに備える。制御ユニット41は、吐出モードにおいて、図3に示されているように、ポンプ23の作動を制御するためのパルス波状の制御信号と電解ユニット25の作動を制御するためのパルス波状の制御信号とを概ね同期させて予め定められた周期で発することにより、ポンプ23及び電解ユニット25の作動の開始及び停止を予め定められた時間間隔で繰り返すように制御し、電解ユニット25によって生成された電解水をノズルから間欠的に吐出させる。詳細には、制御ユニット41からの制御信号に従って、ポンプ23及び電解ユニット25の作動が開始されると、ポンプ23の作動の開始によって原料水が電解ユニット25に供給されると共に電解ユニット25の電解電極への電流又は電圧の印加の開始によって原料水の電気分解が開始されて電解水が生成され、生成された電解水がハンドピース17のノズル27から吐出される。一方、制御ユニット41からの制御信号に従って、ポンプ23及び電解ユニット25の作動が停止されると、ポンプ23の作動の停止によって電解ユニット25への原料水の供給が停止されると共に電解ユニット25の電解電極への電流又は電圧の印加の停止によって原料水の電気分解が停止され、ハンドピース17のノズル27からの電解水の吐出が停止する。これが繰り返されることにより、電解水がハンドピース17のノズル27から間欠的に吐出される。
【0033】
さらに、制御ユニット41は、図3に示されているように、ポンプ23の作動の開始よりも予め定められた時間だけ前に電解電極への電流又は電圧の印加を開始させるようにポンプ23及び電解ユニット25の作動を制御することが好ましい。一般に、電解電極に対する電流又は電圧の印加が開始されてから電解電極間(すなわち陽極と陰極との間)の電位差が所定の値になるまでに遅れが生じるので、電解ユニット25の作動開始を指示する制御信号が届いて電解電極に対する電流又は電圧の印加を開始しても電解ユニット25がすぐに所定の電解水生成能力に達するわけではない。他方で、原料水の供給はポンプ23の作動開始によりすぐに開始される。したがって、ポンプ23と電解ユニット25の作動を同時に開始させると、原料水供給の開始のタイミングと電解水生成能力が所定のレベルに達するタイミングとにズレが生じ、電解ユニット25の電解水生成能力が所定のレベルに達する前に電解ユニット25に対する原料水の供給が開始されて、所定の濃度に達していない電解水がノズル27から吐出されてしまい、吐出された電解水は十分な洗浄性能又は消毒性能を発揮できない可能性がある。また、電解ユニット25の作動の開始時に大きな電流又は電圧を印加することによって、電解ユニット25の電解水生成能力の立ち上がり時間を短くすることも可能であるが、過電流により電解電極の寿命を短くする危険性を伴う。そこで、制御ユニット41は、ポンプ23の作動開始よりも予め定められた時間Δt1だけ前に電解ユニット25の電解電極への電流又は電圧の印加を開始させるように制御することが好ましい。時間Δt1は、電解ユニット25の電解水生成能力が所定レベルまで達した後にポンプ23の作動が開始されるように定められることがさらに好ましい。
【0034】
また、制御ユニット41は、図3に示されているように、ポンプの作動停止から予め定められた時間だけ経過した後に電解電極への電流又は電圧の印加を停止させるようにポンプ23及び電解ユニット25の作動を制御することが好ましい。一般に、ポンプ23の作動が停止しても慣性により原料水はしばらくの間流動を続けてしまうので、ポンプ23の作動停止を指示する制御信号が届いてポンプ23の作動を停止させてもすぐに電解ユニット25に対する原料水の供給が停止されるわけではない。他方で、電解ユニット25では、電解電極に対する電流又は電圧の印加を停止すれば、ほぼ同時に電解水の生成が停止される。したがって、ポンプ23と電解ユニット25の作動を同時に停止させると、電解水生成の停止のタイミングと原料水供給の停止のタイミングとにズレが生じ、電解水の生成が停止された電解ユニット25に原料水が供給されて、所定の濃度に達していない電解水又は原料水が吐出されてしまい、吐出された電解水は十分な洗浄性能又は消毒性能を発揮できない可能性がある。そこで、制御ユニット41は、ポンプの作動の停止から予め定められた時間Δt2だけ経過した後に電解ユニット25の電解電極への電流又は電圧の印加を停止させるように制御することが好ましい。時間Δt2は、ポンプ23の作動が停止した後の慣性による原料水の流動が停止した後に電解ユニット25の作動及び電解電極への電流又は電圧の印加が停止されるように定められることがさらに好ましい。
【0035】
次に、本実施の形態の電解水生成吐出装置11の使用方法について説明する。
電解水生成吐出装置11の使用の際には、最初に、電解水生成器13に接続されているチューブ15の連結器35に、使用するハンドピース17のノズル27に接続されているチューブ15を接続する。次に、電解水生成器13の貯留槽21に原料水が十分に貯留されているかを確認し、貯留槽21に貯留されている原料水が不足している場合には、キャップ21aを開けて、貯留槽21に原料水を補充する。外部から原料水を供給する場合には、外部の原料水源からの配管が電解水生成器13に接続されていることを確認する。
【0036】
次に、電解水生成器13の運転ボタン29を押して電解水生成器13の運転を開始させる。電解水生成器13には、電解水の生成及び吐出を行う吐出モードと電解水の生成及び吐出を停止させる吐出停止モードとがあるので、吐出停止モードでハンドビース17のノズル27を動物又は人間の所望の身体部位へ向けた後、フットスイッチ39を操作して、吐出停止モードから吐出モードへ切り換え、電解水生成器13による電解水の生成と生成した電解水のハンドピース17のノズル27からの吐出とを開始させる。フットスイッチ39による吐出モードと吐出停止モードとの切り換えは、例えば、フットスイッチ39の短い踏み込みを一回行う度に吐出モードと吐出停止モードとが切り換わるようにすればよい。吐出モードに切り換えられたことは、吐出モードランプ31の点灯により確認することができる。また、モニタランプ33が点灯又は点滅している場合には、電解水生成器13に異常があるので、使用を停止する。
【0037】
図1及び図2に示されている電解水生成吐出装置11は、二つの吐出モード、すなわち電解水を連続的に吐出する連続吐出モードと電解水を間欠的に吐出する間欠吐出モードとを有していてもよい。連続吐出モードと間欠吐出モードとの切り換えは、例えば吐出停止モードから吐出モードに切り換えるときに、短い時間だけフットスイッチ39を踏み込むと電解水を連続的に吐出する連続吐出モードに切り換えられる一方、予め定められた時間以上踏み続けると踏み続けている間だけ電解水を間欠的に吐出する間欠吐出モードに切り換えられるようにすればよい。
【0038】
連続吐出モードでは、制御ユニット41は、ポンプ23及び電解ユニット25を連続的に作動させ、従来の電解水生成吐出装置と同じように電解ユニット25によって生成された電解水をハンドピース27のノズル27から連続的に吐出させる。
【0039】
他方、間欠吐出モードでは、制御ユニット41が、図3に示されているように、ポンプ23の作動を制御するためのパルス波状の制御信号と電解ユニット25の作動を制御するためのパルス波状の制御信号とを概ね同期させて予め定められた周期でポンプ23及び電解ユニット25へ向けて発する。この結果、ポンプ23及び電解ユニット25の作動時に、ポンプ23により原料水を電解ユニット25に供給しつつ電解ユニット25の電解電極へ電流又は電圧を印加して原料水の電気分解を行って電解水を生成させ、ポンプ23及び電解ユニット25の作動停止時に、ポンプ23による電解ユニット25への原料水の供給を停止すると共に電解ユニット25の電解電極への電流又は電圧の印加を停止させて原料水の電気分解を停止させることになり、このようなポンプ23及び電解ユニット25の作動の開始及び停止を予め定められた時間間隔で交互に繰り返させることで、電解ユニット25によって生成された電解水がハンドピース17のノズル27から間欠的に吐出される。吐出量は一回の吐出当たり1cc程度とすることが好ましい。
【0040】
電解ユニット25の電解電極は、電気分解時に、通電により発熱するが、電解ユニット25へ供給される原料水が電解電極の周囲を流動することによって冷却される。したがって、原料水の冷却作用が不十分であると、電気分解時に電解電極の温度が上昇して電解電極の破損を招く可能性があり、原料水は、所定の値以上の流量で電解ユニット25に供給される必要がある。このことは、所定の値以上の速度で電解水を吐出する必要があることにつながり、従来の電解水生成吐出装置のように動物又は人間の敏感な身体部位に電解水を連続的に吐出すると、刺激が強くて不快感を与えることがあった。これに対して、本発明の電解水生成吐出装置11の間欠吐出モードでは、電解水の吐出を間欠的に行うことにより、連続的に吐出される場合と比較して、動物又は人間が感じる刺激を低減させることができ、動物又は人間の敏感な身体部位への電解水の適用が可能となる。
【0041】
また、間欠吐出時に電解ユニット25の作動を継続したままポンプ23の作動のみを停止させると、電解電極が冷却されず、電解電極及び原料水の温度が上昇してしまう。このような電解電極の温度上昇は電解電極の破損につながる恐れがある。さらに、一般的に液体の温度が高くなるほど液体に対する気体の飽和溶解濃度(飽和溶存濃度)が低くなることから、電解水がオゾン水や過酸化水素水のように気体が溶存したものである場合には、原料水の温度上昇はオゾンや過酸化水素のような気体を分解させてオゾンや過酸化水素の溶存濃度を低下させる恐れがある。これに対して、本発明による電解水生成吐出装置11の間欠吐出モードでは、電解水の間欠吐出時に、ポンプ23の作動が停止して電解ユニット25への原料水の供給が停止すると、電解ユニット25の電解電極への電圧又は電流の印加も停止されるので、電解ユニット25を連続的に作動させながらポンプ23のみの作動の開始及び停止を繰り返す場合と異なり、電解電極及び電解水の温度上昇が抑制され、上記のような問題の発生が防止される。
【0042】
さらに、制御ユニット41は、間欠吐出モードにおいて、図3に示されているように、ポンプの作動の開始よりも予め定められた時間Δt1だけ前に電解電極への電流又は電圧の印加を開始させるようにポンプ23及び電解ユニット25の作動を制御してもよい。この場合、時間Δt1は、電解ユニット25の作動が開始され電解ユニット25の電解水生成能力が所定レベルまで達した後にポンプ23の作動が開始されるように定められることが好ましい。
【0043】
これに加えて又はこれに代えて、制御ユニット41は、図3に示されているように、ポンプの作動の停止から予め定められた時間Δt2だけ経過した後に電解ユニット25の電解電極への電流又は電圧の印加を停止させるようにポンプ23及び電解ユニット25の作動を制御してもよい。この場合、時間Δt2は、ポンプ23の作動が停止して慣性による原料水の流動が停止した後に電解ユニット25の作動及び電解電極への電流又は電圧の印加が停止されるように定められることが好ましい。
【0044】
このようにポンプ23の作動開始前に電解ユニット25の作動及び電解電極に対する電流又は電圧の印加を開始させることにより、ポンプ23による電解ユニット25への原料水の供給及びノズル27からの電解水の吐出の開始時に電解ユニット25の電解水生成能力が所定レベルに達しているようにすることができる。また、ポンプ23の作動停止後に電解ユニット25の作動及び電解電極に対する電流又は電圧の印加を停止させることにより、電解ユニット25の作動及び電解電極への電流又は電圧の印加の停止時に電解ユニット25に対する原料水の流入が停止しているようにすることができる。この結果、所定濃度に達した電解水を安定して供給することができるようになり、所定レベルの洗浄性能又は消毒性能を保証することが可能になる。
【0045】
電解水生成吐出装置11からの電解水の吐出を停止させるときには、例えば間欠吐出モードの場合にはフットスイッチ39から足を離せばよく、連続吐出モードの場合にはフットスイッチ39をもう一度踏み込めばよい。
【0046】
なお、図1及び図2に示されている構成は本発明の電解水生成吐出装置11の構成の一例であり、本発明の電解水生成吐出装置11は上記構成に限定されるものではない。例えば、フットスイッチ39に代えて、ハンドピース17や電解水生成器13の本体上に切り換えスイッチを設け、この切り換えスイッチを用いて、吐出モードと吐出停止モードとの切り換えや連続吐出モードと間欠吐出モードとの切り換えを行ってもよい。
【実施例1】
【0047】
図4は、第1の実施例の電解ユニット125を示している。
本実施例の電解ユニット125は、棒状のダイヤモンド電極からなる陽極の周囲に隔膜を介して帯状又は線状の陰極を螺旋状に巻きつけたタイプの電解電極を使用している。
【0048】
電解ユニット125は、陽極127と、陰極129と、陽極127と陰極129との間に配置された隔膜131と、陽極127、陰極129及び隔膜131を収容するハウジング133とを備え、陽極127及び陰極129にはそれぞれ電流又は電圧を印加するための配線135、137が接続されている。
【0049】
陽極127は、棒形状を有したいわゆるダイヤモンド電極であり、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモンなどの金属(特に弁金属)やシリコンなどの半金属を基材として、その表面に導電性ダイヤモンド薄膜を形成することにより、または導電性ダイヤモンド単体で作製される。導電性ダイヤモンド薄膜は基材の全体を覆っていることが好ましいが、基材の一部が露出していてもよい。
【0050】
棒形状の陽極127の周囲には、帯状の隔膜131が螺旋状に巻きつけられ、隔膜131の周囲には、帯状又は線状の陰極129が陽極127と直接接触しないように隔膜131に沿って螺旋状に巻きつけられている。隔膜131は、陽極及び陰極で生成された物質が他方の電極で消費されることを防ぐために設けられたものであり、イオン交換膜や中性膜などを使用することができる。また、隔膜131は、原料水が陽極127に接触できるようにするために、陽極127の長手軸線方向に隣接する隔膜131の間に隙間ができるように陽極127の周囲に巻きつけられる。
【0051】
陰極129は、白金、ニッケル、ステンレス、チタン、ジルコニウム、金、銀、カーボンなどから作製してもよく、陽極と同じように、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモンなどの金属(特に弁金属)やシリコンなどの半金属を基材として、その表面に導電性ダイヤモンド薄膜を形成することによって作製してもよい。また、陰極129の幅又は太さは、棒状の陽極127に接触しないように隔膜131の幅よりも小さくすることが好ましい。
【0052】
本実施例の電解ユニット125では、水からオゾン水を生成できるという利点がある一方で、螺旋状に巻かれた陰極129がコイルとして機能するので、陽極127及び陰極129への電流又は電圧の印加時に誘導リアクタンスにより電位差の拡大を妨げて、陽極127と陰極129との電位差が所定の値に達して所定の濃度の電解水を生成できるようになるまでの立ち上がり時間が長くなりやすい。したがって、安定した濃度の電解水を吐出できるようにするためには、制御ユニット41が、ポンプの作動の開始よりも予め定められた時間Δt1だけ前に電解電極への電流又は電圧の印加を開始させるように、ポンプ23及び電解ユニット25の作動を制御することが好ましい。
【0053】
また、電解ユニット125の電解水生成能力を高めるためには、螺旋状に巻かれた陰極129の陽極127の長手方向のピッチを狭くすればよいが、上述したように陰極129はコイルとして機能することから、陰極129のピッチを狭くすると誘導リアクタンスも大きくなって電流又は電圧の印加開始時の陽極127と陰極129の電位差の拡大を妨げる作用も強くなり、電位差が所定の値に達して所定の濃度の電解水を生成できるようになるまでの立ち上がり時間が長くなる。したがって、陰極129の巻きのピッチは、所望される電解水生成能力と立ち上がり時間とのバランスを考慮して決定する必要がある。
【0054】
このように陽極127、陰極129及び隔膜131から構成された電解電極は、概略管形状のハウジング133内に収容されており、ハウジング133の一端139には、外部原料水源又は貯留槽21から原料水を供給するための配管が接続され、ハウジング133の他端141には、生成した電解水をハンドピース17のノズル27に供給するための配管が接続される。概略管形状のハウジング133は、少なくとも、陽極127、陰極129及び隔膜131から構成された電解電極が収容できるような太さであればよいが、太さによってハウジング133内の原料水の流速が変化し、電解水の濃度に影響を与えるので、所望する電解水の濃度に応じて適宜にハウジング133の太さを定めることが好ましい。また、ハウジング133は、電解水と反応しない材料から作製されていればよく、例えばポリプロピレン、ポリエチレンなどの炭化水素系樹脂、フッ素系樹脂、金属などから作製することができる。
【0055】
なお、洗浄又は消毒用途でオゾン水を生成する場合、消毒対象などに応じて、0.3〜5.0mg/l(又はppm)とすることが好ましい。オゾン水の溶存オゾン濃度は、例えば電解ユニット25に供給する水の流量又はダイヤモンド電極に印加する電流又は電圧、陽極127の太さを変化させることによって調整することができる。
【実施例2】
【0056】
図5は、第2の実施例の電解ユニット225を示している。
本実施例の電解ユニット225は、実施例1の電解ユニット125の電解電極に代えて、板形状を有した陽極板227と陰極板229とを対向してハウジング133内に配置し、陽極板227及び陰極板229にそれぞれ電流又は電圧を印加するための配線235、237を接続したものである。
【0057】
陽極板227は、板形状を有したダイヤモンド電極であり、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモンなどの金属(特に弁金属)やシリコンなどの半金属を基材として、その表面に導電性ダイヤモンド薄膜を形成することにより、または導電性ダイヤモンド単体で作製される。一方、陰極板229は、生成物質と反応しない適宜の材料から作製することができ、例えば板形状のニッケルに白金をコーティングすることにより作製することができるが、陽極板227と同じように板形状を有したダイヤモンド電極としてもよい。
【0058】
ハウジング233は、第1の実施例と同様の概略管形状を有しており、ハウジング233の一端239には、外部原料水源又は貯留槽21から原料水を供給するための配管が接続され、ハウジング233の他端241には、生成した電解水をハンドピース17のノズル27に供給するための配管が接続される。ハウジング133の太さ、材料などは実施例1と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0059】
このようなタイプの電解ユニット225を用いれば、例えば、食塩水を電気分解することにより、弱アルカリ性の電解次亜水を生成することができる。また、希塩酸を電気分解することにより、微酸性の次亜塩素酸を生成することができる。
【実施例3】
【0060】
図6は、第3の実施例の電解ユニット325を示している。
本実施例の電解ユニット325は、第2の実施例の電解ユニット225と比較して、板形状を有した陽極板327と陰極板329とが対向してハウジング333内に配置されていると共に陽極板327及び陰極板329にそれぞれ電流又は電圧を印加するための配線335、337を接続している点において類似しているが、ハウジング333の陽極側と陰極側とがイオン交換膜などの隔膜231で区画されている点において異なっている。
【0061】
陽極板327及び陰極板329については、実施例2と同様であり、ここでは説明を省略する。隔膜331は、陽極及び陰極で生成された物質が他方の電極で消費されることを防ぐために設けられたものであり、イオン交換膜を使用することができる。イオン交換膜は、フッ素樹脂系、炭化水素樹脂系のものなどを用いることができるが、オゾンや過酸化物などに対する耐食性を有することからフッ素樹脂系のものを用いることが好ましい。
【0062】
また、ハウジング333は、概略管形状を有しており、入口側端部339は実施例2と同様でよいが、少なくとも出口側端部341では、陽極板327で生成された電解水と陰極板329で生成された電解水とをそれぞれ別個に取り出せるようにするために、ハウジング333内の陽極板327側の空間とハウジング333内の陰極板329側の空間とにそれぞれ連通するように配管を接続できるようになっており、所望の側の電解水がハンドピース17のノズル27から吐出されるために使用される。
【0063】
このようなタイプの電解ユニット325を用いれば、水道水や精製水などの水からオゾン水を生成できるほか、例えば、食塩水を電気分解することにより、陽極板327側で次亜塩素酸を含む強酸性電解水を生成することができ、陰極板329側で強アルカリ性電解水を生成することができる。
【0064】
以上、図示された実施形態を参照して、本発明の電解水生成吐出装置を説明したが、図示された実施形態は例に過ぎず、本発明の電解水生成吐出装置は図示される実施形態に限定されるものではない。例えば、電解ユニット25として、図4から図6に示される電解ユニット125,225,325を例示しているが、他のタイプの電解ユニットを用いることも可能である。
【符号の説明】
【0065】
11 電解水生成吐出装置
13 電解水生成器
17 ハンドピース
23 ポンプ
25 電解ユニット
27 ノズル
41 制御ユニット
125 電解ユニット
127 陽極
129 陰極
225 電解ユニット
227 陽極板
229 陰極板
325 電解ユニット
327 陽極板
329 陰極板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気分解により生成した電解水を洗浄又は消毒のために動物又は人間の身体部位へ向けて吐出するための電解水生成吐出装置であって、
ダイヤモンド電極を少なくとも陽極として使用した電解電極を用いて、供給される水又は水溶液を電気分解することにより電解水を生成する電解ユニットと、
前記電解ユニットに接続されているノズルと、
予め定められた流量で水又は水溶液を前記電解ユニットに供給し、前記電解ユニットによって生成された電解水を前記ノズルから吐出させるポンプと、
前記電解ユニット及び前記ポンプの作動を制御する制御ユニットと、
を備え、前記制御ユニットが、前記電解ユニット及び前記ポンプの作動の開始及び停止を予め定められた時間間隔で繰り返すように制御し、前記ノズルから電解水を間欠的に吐出させることを特徴とした電解水生成吐出装置。
【請求項2】
前記制御ユニットは、前記ポンプの作動の開始より予め定められた時間だけ前に前記電解電極への電流又は電圧の印加を開始させるように制御する、請求項1に記載の電解水生成吐出装置。
【請求項3】
前記制御ユニットは、前記ポンプの作動の停止から予め定められた時間だけ経過した後に前記電解電極への電流又は電圧の印加を停止させるように制御する、請求項1又は請求項2に記載の電解水生成吐出装置。
【請求項4】
電解水がオゾン水である、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の電解水生成吐出装置。
【請求項5】
前記電解電極は、金属又は半金属の表面にダイヤモンド薄膜を形成することにより作成した棒状のダイヤモンド電極を陽極とし、帯状又は線状の陰極を隔膜を介して該ダイヤモンド電極の周囲に螺旋状に巻きつけることにより作成される、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の電解水生成吐出装置。
【請求項6】
電気分解により生成した電解水を洗浄又は消毒のために動物又は人間の身体部位へ向けて吐出するための電解水吐出方法であって、
ポンプを用いて、予め定められた流量で水又は水溶液を電解ユニットに供給するステップと、
前記電解ユニットにおいて、ダイヤモンド電極を少なくとも陽極として使用した電解電極を用いて、供給された水又は水溶液を電気分解することにより電解水を生成するステップと、
前記電解ユニット及び前記ポンプの作動の開始及び停止を予め定められた時間間隔で繰り返すように制御し、前記電解ユニットによって生成された電解水をノズルから間欠的に吐出させるステップと、
を含むことを特徴とした電解水吐出方法。
【請求項7】
前記吐出させるステップにおいて、前記ポンプの作動開始より予め定められた時間だけ前に、前記電解電極への電流又は電圧の印加を開始させるように前記電解ユニット及び前記ポンプの作動を制御する、請求項6に記載の電解水吐出方法。
【請求項8】
前記吐出させるステップにおいて、前記ポンプの作動停止から予め定められた時間だけ経過した後に前記電解電極への電流又は電圧の印加を停止させるように前記電解ユニット及び前記ポンプの作動を制御する、請求項6又は請求項7に記載の電解水吐出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−161762(P2012−161762A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25066(P2011−25066)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000120401)荏原実業株式会社 (31)
【Fターム(参考)】