説明

電解水生成装置

【課題】ケース内に有隔膜電解槽および中和槽を収納してなる装置本体を備え、余剰の電解生成酸性水を中和槽内に収容されている中和剤で中和処理して排水する電解水生成装置において、中和槽内への中和剤の補充作業を容易にする。
【解決手段】中和槽25は上側面が前方へ下降傾斜する傾斜面に形成されている筒状のタンク25aを主体とし、タンクの上側傾斜面25a1に中和剤を投入する投入口25bを設ける。かかる構成の中和槽ではケースの前側開口部を開放すると、ケース10内に収納されている中和槽が作業者の正面に表れ、タンクの上側傾斜面が前方へ下降傾斜しているため、上側傾斜面に形成されている投入口は作業者の見易い部位に位置し、投入口の周囲が上側傾斜面に起因してかなりの空間が確保されているため、投入口を覆蓋しているキャップの取外し作業、投入口を通して中和剤をタンク内へ投入する作業を容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解水生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電解水生成装置の一形式として、有隔膜電解式の電解水生成装置がある。当該形式の電解水生成装置は、一般には、ケース内に有隔膜電解槽を収納してなるもので、有隔膜電解槽にて生成される電解生成酸性水を専用の注出管路を通して注出するとともに、有隔膜電解槽にて生成される電解生成アルカリ性水を専用の注出管路を通して注出するように構成されている(特許文献1および特許文献2を参照)。
【0003】
ところで、当該形式の電解水生成装置においては、有隔膜電解槽では、電解生成酸性水と電解生成アルカリ性水とが同期的に略同量生成されることから、これら両電解生成水の消費量に差が生じる場合には、余剰となった方の電解生成水を排水する必要がある。これらの電解生成水のうち、電解生成アルカリ性水を排水する場合には、これを何等処理することなく排水してもさほど問題はないが、電解生成酸性水を排水する場合には、排水に先立って中和処理を施す必要がある。このため、寒水石等の中和剤を収容した中和槽に余剰の電解生成酸性水を導入して中和処理し、中性の処理液として排水するのが一般である。当該中和槽は、通常、有隔膜電解槽を収容しているケースの外に置かれる別置きタイプとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−95225号公報
【特許文献2】特開2004−108356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、当該形式の電解水生成装置においては、別置きタイプの中和槽を設置する専用の設置場所の確保を解消するとともに、電解水生成装置の外観を向上させるために、中和槽を、有隔膜電解槽を収納したケース内に有隔膜電解槽とともに収納することが要請される。しかしながら、中和槽をケース内に収納した場合には、中和剤を中和槽内に補充する作業に問題を生じるおそれがある。
【0006】
中和槽内の中和剤は、電解生成酸性水の中和処理量に応じて漸次消費され、中和剤の消費量が所定の消費量に達した時点で、中和剤を中和槽内に補充する必要がある。中和槽は、通常、槽本体である筒状タンクの上側面に設けた中和剤の投入口を通して補充される。別置きタイプの中和槽では、周囲が大きな空間であることから、中和剤を中和槽内へ補充する作業は、全く問題なく容易に行うことができる。
【0007】
しかしながら、中和槽がケース内に収納されている場合には、ケース本体の前側開口部を閉鎖している開閉扉を開くとともに、中和槽に設けた投入口を閉鎖するキャップを外して、開放された投入口を通して中和剤を中和槽内に投入することになる。この場合、ケース内には、中和槽が設置されている部位には、塩水タンクや軟水器等が設置されており、また、これらの構成部品の回りには互いに接続する水系管路が配管されていることから、中和槽の周囲は極めて限られた空間しか存在しないことになる。このため、中和剤を中和槽内へ補充する作業は極めてしづらくなり、また、中和剤の投入時に投入口からはみ出てケース内に落下する中和剤量が多くなる。従って、本発明の目的はこれらの問題に対処することにあり、併せて、中和剤による中和処理効率を高め、さらには、中和剤の消費効率を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電解水生成装置に関する。本発明が適用対象とする電解水生成装置は、ケース内に有隔膜電解槽および中和槽を収納してなる装置本体を備え、前記有隔膜電解槽にて生成される電解生成酸性水のうちの余剰の電解生成酸性水を前記中和槽内に流入し、前記中和槽内に収容されている中和剤にて中和処理して排水管路を通して排出する電解水生成装置である。
【0009】
しかして、本発明に係る電解水生成装置においては、前記中和槽は、上側面が前方へ下降傾斜する傾斜面に形成されている筒状のタンクを主体とし、前記タンクの上側傾斜面には中和剤を投入する中和剤投入口を備え、前記タンクの一側面における上方の部位には前記排水管路が接続される流出口部を備え、前記タンクの他側面における上下中間の部位には余剰の電解生成酸性水を排水する排水管路が接続される流入口部を備え、前記タンク内には前記中和剤投入口より後方の部位にて起立する上下両端部が開口する導入パイプを備え、前記導入パイプの中間の部位が前記導入口部に接続されていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係る電解水生成装置においては、前記中和槽を構成する前記タンクの底部を、前記ケース内に設置した状態で、断面V字形状のV形底部になるように形成して、前記導入パイプの下端部が前記タンクのV形底部の底部近傍に延びる構成とすることができる。また、本発明に係る電解水生成装置においては、前記導入パイプに余剰の電解生成アルカリ性水を排水する排水管路を接続して、前記タンク内に電解生成酸性水と電解生成アルカリ性水とが選択的に導入されるように構成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る電解水生成装置においては、余剰の電解生成酸性水は中和槽のタンク内に収容されている中和剤にて中和処理されて、中性に処理液として排水される。従って、中和槽のタンク内の中和剤は、電解生成酸性水の中和処理量に応じて漸次消費され、中和剤の消費量が所定量に達した時点で、中和剤をタンク内に補充する必要がある。中和剤のタンク内への補充は、ケース本体の前側開口部を閉鎖している開閉扉を開放して行う。
【0012】
開閉扉を開放すると、ケース内に収納されている中和槽が作業者の正面に表れる。表れた中和槽では、中和槽の主体であるタンクの上側傾斜面が前方へ下降傾斜しているため、上側傾斜面に形成されている投入口は、作業者の見易い部位に位置していることから、また、投入口の周囲が上側傾斜面に起因してかなりの空間が確保されていることから、投入口を覆蓋しているキャップの取外し作業、投入口を通して中和剤をタンク内へ投入する作業を容易に行うことができる。
【0013】
また、当該中和槽においては、電解生成酸性水を導入する導入パイプの下端をタンクのV形底部の底部近傍に臨ませている。このため、導入パイプの下端部は、タンク内に収容されている中和剤層の最も深い部位に位置していることになり、導入パイプの下端開口部から流出する電解生成酸性水は、中和剤層内で均等に中和処理されるとともに、中和剤は斑なく消費されて片減りするようなことはない。さらには、中和剤は、導入パイプの下端開口部に対して安定した高さを維持していることになり、少ない量の中和剤で電解生成酸性水を効率良く中和することができる。
【0014】
また、当該導入パイプはその上端が開口していることから、オーバーフローパイプとしても機能し、導入パイプの下端開口部が中和剤で詰まって閉塞された場合には、導入パイプに導入された電解生成酸性水を導入パイプの上端開口部からタンク内にオーバーフローさせ、電解生成酸性水の導入パイプから排水管路側への逆流を防止することができる。
【0015】
また、当該中和槽においては、電解生成アルカリ性水を排水する排水管路を導入パイプに接続する構成を採って、電解生成酸性水と電解生成アルカリ性水を選択的にタンク内に導入するようにしている。このため、中和槽のタンク内に導入された電解生成アルカリ性水を、電解生成酸性水を中和処理するための中和用液として機能させることができて、本来使用すべき中和剤の消費を軽減することができる。
【0016】
なお、当該中和槽においては、タンクの底部をV形底部の構成を採用した場合には、V字形状の受承部を有する支持台に支持してケース内に収納すれば、中和槽を安定した状態に支持することができる。また、V形底部に形成したタンクを主体とする中和槽において、タンク内のV形底部に排水口を設ければ、タンク内に残留する水は効率よく排水することができ、中和槽のメンテナンス時の作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】電解水生成装置の正面図である。
【図2】同電解水生成装置の左側の側面図(a)および右側の側面図(b)である。
【図3】同電解水生成装置の一部を省略した縦断側面図である。
【図4】同電解水生成装置の構成を示す概略構成図である。
【図5】同電解水生成装置が装備する制御装置を示すブロック図である。
【図6】同電解水生成装置が装備する中和槽の正面図(a)、同図(a)の左側の側面図(b)である。
【図7】同中和槽をケース本体内に設置した状態の正面側からの透視図(a)、同図(a)の右側からの透視図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、電解水生成装置に関する。図1〜図4には、本発明に係る電解水生成装置の一実施形態を示している。当該電解水生成装置は、装置の構成部品を収納されている装置本体Aと、電解生成酸性水を貯溜する第1の貯溜タンクBと、電解生成アルカリ性水を貯溜する第2の貯溜タンクCを備えている。装置本体Aは、装置の主たる構成部品をケース10内に配置して収納されているもので、支持台Dの中央部に設置されて取付けられている。また、第1の貯溜タンクBは支持台Dにおける装置本体Aの右側に設置されて取付けられ、第2の貯溜タンクCは支持台Dにおける装置本体Aの左側に設置されて取付けられている。
【0019】
装置本体Aを構成するケース10は、左右の側部、後側部および上側部が閉鎖状態にあるケース本体11と、ケース本体11の前側開口部を開閉する開閉扉12からなり、ケース本体11内には、図3および図4に示すように、軟水器21、塩水タンク22、一対の電解槽23,24、および、中和槽25が配置されて収納されていて、これらの各構成部品は水系管路によって適宜接続されている。
【0020】
装置本体Aの主たる構成部品である各電解槽23,24は有隔膜電解槽であって、槽本体は隔膜にて区画された一対の電解室を備えている。各電解室は、電解運転が所定時間経過した時点で、その極性を正負反転するように制御され、陽極側電解室が陰極側電解室に切換えられるとともに、陰極側電解室が陽極側電解室に切換えられるように構成されている。
【0021】
電解槽23,24を構成する各電解室の上流側には、被電解水の供給管路31a,31bが接続されており、各電解室の下流側には、各電解室にて生成される電解生成水を流出する流出管路32a,32b、33a,33bがそれぞれ接続されている。各流出管路32a,32bは切換弁41aを介して導入管路32c,32dに接続されており、各流出管路33a,33bは切換弁41bを介して導入管路33c,33dにそれぞれ接続されている。
【0022】
電解槽23側に接続されている導入管路32cは、第1の貯溜タンクBの側部上方に接続されていて、導入管路32cには、電解槽24側に接続されている導入管路33cが接続されている。また、電解槽23側に接続されている導入管路32dは、第2電解生成水槽24側に接続されている導入管路33dに接続されていて、導入管路33dは第2の貯溜タンクCの側部上方に接続されている。
【0023】
電解槽23側の導入管路32cは、電解生成酸性水の専用の導入管路であって、各電解槽23,24の陽極側電解室にて生成される電解生成酸性水を、第1の貯溜タンクB内に導入すべく機能する。また、電解槽24側の導入管路33dは、電解生成アルカリ性水の専用の導入管路であって、各電解槽23,24の陰極側電解室にて生成される電解生成アルカリ性水を、第2の貯溜タンクC内に導入すべく機能する。
【0024】
各電解槽23,24においては、電解運転時、電解運転が設定された所定の時間継続された時点で、各電解室の極性が正負逆に反転される制御がなされるが、これと同期して、各切換弁41a,41bが切換動作して、電解槽23側の各流出管路32a,32bと各導入管路32c,32dとの接続関係が変更されるとともに、電解槽24側の各流出管路33a,33bと各導入管路33c,33dとの接続関係が変更される。
【0025】
これにより、各電解槽23,24の各陽極側電解室にて生成される電解生成酸性水は、常に、導入管路32cを通って第1の貯溜タンクB内に導入され、また、各電解槽23,24の各陰極側電解室にて生成される電解生成アルカリ性水は、常に、導入管路33dを通って第2の貯溜タンクC内に導入されることになる。
【0026】
各電解槽23,24に供給される被電解水は、軟水器21を通って軟水化された原水に塩水タンク22から設定された量の塩水を、パルスポンプ42aにより供給することにより調製される。水道管等の給水源に接続されている給水管路34には、減圧弁43aおよび軟水器21が介装されていて、給水管路34の分岐管路部が塩水タンク22に接続されている。分岐管路部には、開閉弁43bが介装されている。また、塩水タンク22は、塩水供給管路35を介して給水管路34の途中に接続されていて、塩水供給管路34にはパルスポンプ42aが介装されている。
【0027】
当該水系回路においては、給水管路34には軟水化された原水が設定された所定の流量で流動し、流動する原水に塩水タンク22にて調製された所定の高濃度の塩水がパルスポンプ42aにて設定された所定量継続して供給される。これにより、給水管路34内にて被電解水(設定された所定濃度の希薄塩水)が調製され、調製された被電解水は、被電解水の供給管路31a,31bを通って各電解槽23,24に供給される。各電解槽23,24に供給された被電解水は、各電解槽23,24を流動する間に、各電解槽23,24の電解室内にて有隔膜電解される。
【0028】
なお、当該電解水生成装置においては、各電解槽23,24を同時に電解運転することができるとともに、各電解槽23,24のいずれか一方を選択して電解運転することができる。このため、被電解水の供給管路31a,31bには、開閉弁43c,43dがそれぞれ介装されていて、各電解槽23,24を同時に電解に供する場合には、各開閉弁43c,43dを開いた状態として、各電解槽23,24に被電解水を同時に供給し得るようにする。また、各電解槽23,24のいずれか一方の電解槽を電解に供する場合には、各開閉弁43c,43dのいずれか一方の開閉弁を開いた状態として、一方の電解槽にのみ被電解水を供給し得るようにする。
【0029】
当該電解水生成装置が有する中和槽25は、寒水石等の中和剤を収容されているもので、余剰の電解生成酸性水を中和処理して、塩素ガスが発生しない中性の処理液として排水すべく機能する。中和槽25には、各貯溜タンクB,Cが有するオーバーフローパイプB1,C1に接続する流出管路36a,36bが接続されている。これにより、第1の貯溜タンクB内にてオーバーフローパイプB1を通ってオーバーフローする電解生成酸性水は流出管路36aを通って中和槽25内に流入し、中和槽25内の中和剤にて中和処理されて、中性の処理液として排水管路36cを通って排水される。
【0030】
また、第2の貯溜タンクC内にて、オーバーフローパイプC1を通ってオーバーフローする電解生成アルカリ性水は、流出管路36bを通って中和槽25内に流入するが、中和槽25内では中和剤とは反応することなく、そのままの状態で排水管路36cを通って排水されることになる。
【0031】
当該電解水生成装置においては、第1の貯溜タンクB内に貯溜されている電解生成酸性水は第1注出管路37aを通して注出されて、消費者に供される。また、第2の貯溜タンクC内に貯溜されている電解生成アルカリ性水は第2注出管路37bを通して注出されて、消費者に供される。
【0032】
第1注出管路37aは、第1の貯溜タンクBの下方の前側部にて接続されていて、ケース本体11の下方の前側部に沿って延びてケース本体11の下方の前側部を貫通し、ケース本体11の底部に沿って後方に延び、後方にて、ケース本体11内を上方に延びてケース本体11の上方の右側部に設けた吐出口部11aに接続されている。吐出口部11aには、当該電解水生成装置の設置時に、図示しない第2の注出管路が接続される。当該第2の注出管路は、消費者が使用する場所に延びていて、当該場所にて電解生成酸性水を注出する。
【0033】
一方、第2注出管路37bは、第2の貯溜タンクCの下方の前側部に接続されていて、ケース本体11の下方の前側部に沿って延びてケース本体11の下方の前側部を貫通し、ケース本体11の底部に沿って後方に延び、後方にて、ケース本体11内を上方に延びてケース本体11の上方の左側部に設けた吐出口部11bに接続されている。吐出口部11bには、当該電解水生成装置の設置時に、図示しない第2の注出管路が接続される。当該第2の注出管路は、消費者が使用する場所に延びていて、当該場所にて電解生成アルカリ性水を注出する。
【0034】
なお、ケース本体11の上方の右側部には通気口部11cが設けられている。通気口部11cには、電解生成酸性水の導入管路32cに接続されている図示しない排気管路が接続されていて、導入管路32cで発生するガスを排気すべく機能する。また、ケース本体11の上方の左側部には通気口部11d,11eが設けられている。通気口部11dには、電解生成アルカリ性水の導入管路33dに接続されている図示しない排気管路が接続されていて、導入管路33dで発生するガスを排気すべく機能する。また、通気口部11eには、中和槽25の上方部に接続されている図示しない排気管路が接続されていて、中和槽25で発生するガスを排気すべく機能する。
【0035】
しかして、第1注出管路37aには、注出ポンプ42bと開閉弁43eが介装されており、また、第2注出管路37bには、注出ポンプ42cと開閉弁43fが介装されている。当該電解水生成装置においては、第1注出管路37aの開閉弁43eを開いた状態で、注出ポンプ42bを駆動すれば、第1の貯溜タンクB内に貯溜する電解生成酸性水が第1注出管路37aを通して注出されて消費者に供される。また、第2注出管路37bの開閉弁43fを開いた状態で、注出ポンプ42cを駆動すれば、第2の貯溜タンクC内に貯溜する電解生成アルカリ性水が第2注出管路37bを通して注出されて消費者に供される。
【0036】
当該電解水生成装置においては、各注出ポンプ42b,42cは、第1注出管路37a,37bにおけるケース本体11内の部位に介装されており、各開閉弁43e,43fは、各注出管路37a,37bにおけるケース本体11の下方の前側部に沿って延びる部位の中間部に介装されている。各開閉弁43e,43fは、レバーの回動操作により開閉するレバー回動式の開閉弁であって、レバーが管路部の頂部に位置するように介装されている。
【0037】
このため、開閉弁43e,43fのレバーを管路部の頂部にて水平に回動操作すれば、開閉弁43e,43fを開閉することができる。当該電解水生成装置では、当該レバーが管路部に沿う平行位置にある状態が開閉弁43e,43fが開いている状態に設定されていて、当該レバーを回動して管路部に対して略直交する交差状態にした状態で開閉弁43e,43fが閉じるようになっている。ケース本体11における下方の前側部には、アンダカバー13が嵌合して脱着可能に取付けられている。
【0038】
アンダカバー13は、各注出管路37a,37bにおけるケース本体11の下方の前側部に露呈している管路部、および、同管路部に介装されている開閉弁43e,43fをカバーして保護すべく機能するとともに、当該電解水生成装置の外観を向上すべく機能する。アンダカバー13は脱着容易であって、開閉弁43e,43fはアンダカバー13を取外した状態で開閉操作でき、開閉弁43e,43fが閉じた状態では、レバーが管路部に対して略直交状に前方に突出していることから、アンダカバー13をケース本体11に取付けることができない。アンダカバー13をケース本体11に取付けるには、レバーを回動操作して管路部に対して平行にした開閉弁43e,43fが開いた状態にする必要がある。
【0039】
当該電解水生成装置は制御装置50を装備し、制御装置50は当該電解水生成装置の電解運転、各貯溜タンクB,C内への各電解生成水の導入、各貯溜タンクB,Cからの各電解生成水の注出、および、中和槽25における中和処理を制御する。図5には、当該制御装置50の制御回路を概略的に示している。
【0040】
制御装置50はマイクロコンピュータであって、CPUおよび駆動回路を備えている。制御装置50は、電解運転時には、パルスポンプ42aを駆動して給水管路34内を流動する軟水化された原水に設定された濃度の塩水を設定された量だけ継続して供給して、設定された濃度の希薄塩水(被電解水)を調製する。また、制御装置50は、電解運転時、運転者の電解モードの選択の指令に基づき開閉弁43c,43dを開閉動作して、各電解槽23,24の同時の電解運転と、各電解槽23,24のいずれか一方の電解運転との電解モードを選択する。
【0041】
制御装置50は、電解運転時、電解槽23,24の各電解室の極性の正負反転の指令に基づき、各電解室のうち、陽極側電解室を陰極側電解室に、陰極側電解室を陽極側電解室に変更し、これに同期して、切換弁41a,41bを切換動作させる。これにより、制御装置50は、電解槽23,24の陽極側電解室にて生成された電解生成酸性水を、常に導入管路32cを通して第1の貯溜タンクB内に導入させ、また、電解槽23,24の陰極側電解室にて生成された電解生成アルカリ性水を、常に導入管路33dを通して第2の貯溜タンクC内に導入させる。
【0042】
各貯溜タンクB,C内にはフロートスイッチB2,C2が配設されていて、オーバーフローパイプB1,C1と共働して、各貯溜タンクB,C内の電解生成水を設定された一定量に維持する。電解生成酸性水と電解生成アルカリ性水は、電解運転時には同期的に生成されて、各貯溜タンクB,C内には略同量導入される。制御装置50は、各貯溜タンクB,C内に貯溜された各電解生成水が同量となって、両フロートスイッチB2,C2が満タンに達したことを検知した場合には、電解槽23,24の電解運転を停止する。また、制御装置50は、各貯溜タンクB,Cの少なくとも一方の貯溜タンク内の電解生成水が設定された所定量消費された場合、これを検知したフロートスイッチの検出信号に基づき電解運転を再開して、両貯溜タンクB,C内に各電解生成水を導入して補充する。
【0043】
制御装置50は、消費者による電解生成水の注出指令に基づき、消費者が選択した電解生成水側の注出ポンプを駆動して、選択された電解生成水を専用の注出管路を通して注出させる。制御装置50は、消費者が電解生成酸性水を選択した場合には、第1の貯溜タンクB内の電解生成酸性水を注出管路37aを通して注出し、また、消費者が電解生成アルカリ性水を選択した場合には、第2の貯溜タンクC内の電解生成アルカリ性水を注出管路37bを通して注出する。電解生成水の注出については、所定時間経過した時点で自動的に停止させることができるとともに、消費者の手動による停止操作によっても停止させることができる。
【0044】
ところで、当該電解水生成装置においては、第1の貯溜タンクB内に貯溜されている電解生成酸性水の消費量と、第2の貯溜タンクC内に貯溜されている電解生成アルカリ性水の消費量とに差が生じて、両貯溜タンクB,Cの一方のみの電解生成水が設定された所定の消費量に達する場合がある。本発明では、当該貯溜タンクを便宜上空タン状態にある貯溜タンクと称する。この場合には、空タン状態になったことをフロートスイッチが検出すると、制御装置50はその検出信号に基づき電解運転を開始して、両貯溜タンクB,C内に各電解生成水を導入する。
【0045】
このため、各貯溜タンクB,C内には各電解生成水が導入されて貯溜タンクB,C内が満タン状態となるが、空タンク状態を呈していなかった貯溜タンクの方が空タンク状態を呈していた貯溜タンクよりも先に満タン状態となる。この結果、先に満タン状態となった貯溜タンクからは、その後に導入される電解生成水に応じて、余剰の電解生成水がオーバーフローパイプからオーバーフローして排水管路を通して中和槽25内に流入することになる。
【0046】
例えば、第1の貯溜タンクB内が早く満タン状態となった場合には、第1の貯溜タンクB内の電解生成酸性水が排水管路36aを通して中和槽25内に流入し、中和槽25内に収容されている寒水石等の中和剤にて中和処理されて、中性の処理液として排水管路36cを通して排水される。また、第2の貯溜タンクC内が早く満タン状態となった場合には、第2の貯溜タンクC内の電解生成アルカリ性水が排水管路36bを通して中和槽25内に流入し、中和槽25内では何等処理されることなく、そのまま排水管路36cを通して排水される。
【0047】
従って、電解生成酸性水が第1の貯溜タンクB内から流入して中和槽25内に流入する場合には、中和槽25内に収容されている中和剤は、第1の貯溜タンクB内から流入する電解生成酸性水の量に応じて消費されることになり、中和剤が所定量消費された時点では、中和剤を中和槽25内に補充する必要がある。しかしながら、当該電解水生成装置においては、中和槽25が開閉扉12に閉鎖されているケース本体11内に配設されていることから、中和槽25内の中和剤の量を外部から視認することは困難であり、中和剤の補充タイミングを失することが起こり得る。
【0048】
本発明はかかる問題に対処するもので、本発明では、当該電解水生成装置が装備する制御装置50を、中和剤の消費量を中和槽25内に流入された電解生成酸性水の量から算出する機能と、中和剤が設定量消費されたことを認知させる認知手段を駆動する機能を有する構成としている。さらには、本発明では、当該電解水生成装置が装備する制御装置50を、中和槽25内の中和剤が設定量消費されたことを認知させる認知手段を駆動し、かつ、中和剤が設定された消費量限界に達したときには有隔膜電解槽23,24の電解運転を停止する機能を有する構成としている。
【0049】
本実施形態では、制御装置50は、第1の貯溜タンクB内が満水になったことを検出したフロートスイッチB2からの検出信号に基づき、満水時点からの電解運転の継続時間と電解生成水の生成流量から中和槽25内に流入した余剰の電解生成酸性水の水量を算出するとともに、余剰の電解生成酸性水量から中和槽25内の中和剤の消費量を算出する。刻々算出される中和剤の消費量が設定された消費量に達した時点で、制御装置50は操作盤に設置されている認知手段、例えば警告ランプEを点灯して、当該電解水生成装置の管理者に、中和剤を補充すべきタイミングを認知させる。
【0050】
このため、当該管理者は、警告ランプEの点灯により中和剤の補充タイミングを認知して、中和槽25に所定量の中和剤を補充する。これにより、中和槽25内に中和剤が存在しない状態での電解運転を回避することができる。なお、本実施形態では、認知手段として警告ランプEを使用しているが、認知手段としては公知の適宜の警告手段を採ることができ、例えば、警告ブザー等は認知手段としては極めて有効である。
【0051】
また、当該管理者が警告ランプEの点灯に気付かず、または、警告ランプEの点灯を認知したにも関わらず中和剤の補充を忘れる場合があり、この場合には、制御装置50は以下のように機能する。制御装置50は、中和槽25内の中和剤が設定された所定の消費量に達した後に、中和剤が消費量限界に達したときには、有隔膜電解槽23,24の電解運転を緊急停止させる。これにより、中和槽25内に中和剤が存在しない状態での電解運転を確実に回避することができる。
【0052】
しかして、本発明においては、当該電解水生成装置が装備する中和槽25の構成に最大の特徴が有り、図6および図7には当該中和槽25を示している。中和槽25は、ケース本体11内に立設されている支持台26の受承部26aに受承されて、ケース本体11内に収納されるものである。支持台26のタンク25aを受承する受承部26aは、側断面がV字形状に形成されている。このため、当該中和槽25は、支持台26のV形受承部26aに受承された状態(図7を参照)で機能することから、以下では、支持台26のV形受承部26aに受承された状態を、中和槽25の基本の形態であるとして、当該中和槽25の形状、構造および機能について説明する。
【0053】
中和槽25は、平断面が方形筒状で頂部および底部が閉塞されているタンク25aを主体とするもので、タンク25aの上側面25a1が前方へ下降傾斜する傾斜面に形成されているとともに、下側面25a2が水平面に形成されている。従って、当該タンク25aにおいては、支持台26にV形受承部26aに受承された状態では、タンク25aの下側面25a2と前側面25a3とによりV字形状の底部を形成する。このため、以下では、当該底部をV形底部25Aと称する。
【0054】
当該タンク25aにおいては、その上側面(以下上側傾斜面25a1と称する)に、中和剤を投入する中和剤の投入口25bが設けられていて、投入口25bは大径口であって、大径のキャップ25b1にて覆蓋されている。また、当該タンク25aにおいては、その向かって左側面25a4に、余剰の電解生成酸性水を排水する排水管路36aが接続される導入口部25c1が設けられ、その向かって右側面25a5には、タンク25a内で中和処理された処理液を排水する排水管路36cが接続される流出口部25c2が設けられている。なお、導入口部25c1には、余剰の電解生成アルカリ性水を排水する排水管路36bも接続される。
【0055】
当該中和槽25においては、タンク25aの内部に、中和剤の投入口部25bより後方の部位にて起立する導入パイプ25dを備えている。導入パイプ25dは、その上端および下端が開口しているもので、その上下の略中央部が導入口部25c1に接続されている。当該導入パイプ25dは、かかる接続状態でタンク25a内にて投入口部25bより後方の部位に偏倚して起立し、下方パイプ部をV形底部25Aの底部近傍に臨ませている。従って、タンク25a内に所定量の中和剤Fが収容されている状態では、下方パイプ部は、中和剤Fの層の最深部に突入した状態となる。
【0056】
当該電解水生成装置においては、中和槽25のタンク25a内に収容されている中和剤Fは、余剰の電解生成酸性水の中和処理に応じて漸次消費されることから、中和剤Fの消費量が所定量に達した時点で、中和剤Fをタンク25a内に補充する必要がある。中和剤Fのタンク25a内への補充作業は、開閉扉12を開いて、ケース本体11の前側開口部を開放した状態で行う。
【0057】
当該電解水生成装置においては、ケース本体11の前側開口部を開放すると、ケース本体11内に収納されている中和槽25が作業者の正面に表れる。表れた中和槽25においては、中和槽25の主体であるタンク25aの上側傾斜面25a1が前方へ下降傾斜していて、上側傾斜面25a1に形成されている投入口25bは、作業者の見易い部位に位置していることから、また、投入口25bの周囲が上側傾斜面25a1に起因してかなりの空間が確保されていることから、投入口25bを覆蓋しているキャップ25b1の取外し作業、投入口25bを通して中和剤Fをタンク25a内へ投入する作業を容易に行うことができる。
【0058】
また、当該中和槽25aにおいては、電解生成酸性水を導入する導入パイプ25dの下端をV形底部25Aの底部近傍に臨ませている。このため、導入パイプ25dの下端部は、タンク25a内に収容されている中和剤Fの層の最も深い部位に位置していることになり、導入パイプ25dの下端開口部から流出する電解生成酸性水は、中和剤F層内にて均等に中和処理されるとともに、中和剤Fは斑なく消費されて片減りするようなことはない。
【0059】
さらには、中和剤Fは、導入パイプ25dの下端開口部に対して安定した高さを維持していることになり、少ない量の中和剤Fで電解生成酸性水を効率良く中和することができる。
【0060】
また、当該導入パイプ25dは、その上端が開口していていることから、オーバーフローパイプとしても機能し、導入パイプ25dの下端開口部が中和剤Fで詰まって閉塞された場合には、導入パイプ25dに導入された電解生成酸性水を導入パイプ24dの上端開口部からタンク25a内にオーバーフローさせ、電解生成酸性水の導入パイプ25dからの排水管路36a,36b側への逆流を防止することができる。
【0061】
また、当該中和槽25においては、導入パイプ25dに、電解生成アルカリ性水の排水管路36bを接続する構成を採って、電解生成酸性水と電解生成アルカリ性水を選択的にタンク25a内に導入するようにしている。このため、当該中和槽25においては、タンク25a内に導入された電解生成アルカリ性水を、電解生成酸性水を中和処理するための中和用液として機能させることができて、本来使用すべき中和剤Fの消費を軽減することができる。
【0062】
なお、当該中和槽25においては、タンク25aの底部をV形底部25Aに形成しているので、支持台26のV形受承部26aに支持させれば、中和槽25を安定した状態に支持させることができる。また、V形底部25Aに排水口25eを設けてあるため、タンク25a内に残留する水等を効率よく排水することができ、中和槽25のメンテナンス時の作業効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0063】
A…装置本体、B…第1の貯溜タンク、C…第2の貯溜タンク、B1,C1…オーバーフローパイプ、B2,C2…フロートスイッチ、D…支持台、E…警告ランプ、F…中和剤、10…ケース、11…ケース本体、11a,11b…吐出口部、11c,11d,11e…通気口部、12…開閉扉、13…アンダカバー、21…軟水器、22…塩水タンク、23,24…電解槽、25…中和槽、25a…タンク、25A…V形底部(断面V字形状)、25a1…上側傾斜面(前方へ下降傾斜する傾斜面)、25a2…下側面、25a3…前側面、25a4…左側面、25a5…右側面、25b…投入口、25b1…キャップ、25c1…導入口部、25c2…排水口部、25d…導入パイプ、25e…排水口、26…支持台、26a…V形の受承部、31a,31b…被電解水の供給管路、32a,32b,33a,33b…電解生成水の流出管路、32c,32d,33c,33d…導入管路、34…給水管路、35…塩水供給管路、36a,36b,36c…排水管路、37a…第1注出管路、37b…第2注出管路、41a,41b…切換弁、42a…パルスポンプ、42b,42c…注出ポンプ、43a…減圧弁、43b,43c,43d…開閉弁、開閉弁43e,43f…開閉弁、50…制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に有隔膜電解槽および中和槽を収納してなる装置本体を備え、前記有隔膜電解槽にて生成される電解生成酸性水のうちの余剰の電解生成酸性水を前記中和槽内に流入し、前記中和槽内に収容されている中和剤にて中和処理して排水管路を通して排出する電解水生成装置であり、前記中和槽は、上側面が前方へ下降傾斜する傾斜面に形成されている筒状のタンクを主体とし、前記タンクの上側傾斜面には中和剤を投入する中和剤投入口を備え、前記タンクの一側面における上方の部位には前記排水管路が接続される流出口部を備え、前記タンクの他側面における上下中間の部位には余剰の電解生成酸性水を排水する排水管路が接続される流入口部を備え、前記タンク内には前記中和剤投入口より後方の部位にて起立する上下両端部が開口する導入パイプを備え、前記導入パイプの中間の部位が前記導入口部に接続されていることを特徴とする電解水生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電解水生成装置において、前記中和槽を構成する前記タンクの底部は前記ケース内に設置された状態では断面V字形状のV形底部となっていて、前記導入パイプの下端部が前記タンクのV形底部の底部近傍に延びていることを特徴とする電解水生成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電解水生成装置において、前記導入パイプには余剰の電解生成アルカリ性水を排水する排水管路が接続されていて、前記タンク内には電解生成酸性水と電解生成アルカリ性水とが選択的に導入されることを特徴とする電解水生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−188308(P2010−188308A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36841(P2009−36841)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000194893)ホシザキ電機株式会社 (989)
【Fターム(参考)】