説明

電解水生成装置

【課題】電解水に溶解する気体濃度が低下してしまうのを抑制することのできる電解水生成装置を得る。
【解決手段】電解水生成装置1は、隔膜21で仕切られた陰極室22と陽極室23とを有する電解槽2を備えており、原水供給経路5から電解槽2内に導入された原水を電気分解することで電解水が生成され、電解槽2で生成された電解水が電解水取出経路61を介して吐水口64aから取り出されるようになっている。そして、電解水取出経路61に、電解槽2内の水圧から吐水口64aの大気圧へと水圧を徐々に低下させる圧力低下手段8を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解水生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電解水生成装置として、隔膜で仕切られた陰極室と陽極室とを有する電解槽を備え、電解槽内に導入された水道水等の原水を電気分解することで、陰極側で水素と水酸化物イオンを生成するとともに、陽極側で酸素と水素イオンを生成するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
すなわち、この特許文献1に記載の電解水生成装置によれば、陰極室ではアルカリイオン水が電極水として生成され、陽極室では酸性水が電極水として生成される。
【0004】
このとき、電極表面で生成される気体、例えば、陰極表面で生成される水素は陰極室内を流れている水に溶解するが、電流量に比例した水素量が生成されて水に溶解するため、電極表面の近傍では大気圧における飽和溶解量よりも過剰に溶解することとなり過飽和状態となる。
【0005】
そこで、上述の特許文献1では、電解槽に圧力測定器、電解槽の下流側に調整弁を設置し、圧力測定器で電解槽の内圧をモニタリングしながら調整弁を制御することで電解槽の内圧をコントロールしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006―159072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1のように電解槽の内圧をコントロールした場合であっても、電解槽内の水圧は大気圧よりも高くなっている。そして、この特許文献1に記載の電解水生成装置には、内圧が高くなった電解槽から吐水口に至るまでの経路に関しての制限が設けられていない。そのため、高い内圧の場所から大気圧に放出される時に急激な圧力低下が生じてしまうおそれがある。
【0008】
そして、過飽和水素溶解条件において急激な圧力低下が生じると、瞬間的に水素濃度の揺らぎなどが生じ、それにより、溶解水素分子が集合し、相転移して小さな気泡核が形成されてしまう。その結果、溶解している水素(気体)が気泡として出現して水中から放出されることとなり、溶解水素濃度が低下してしまうおそれがあった。
【0009】
そこで、本発明は、電解水に溶解する気体濃度が低下してしまうのを抑制することのできる電解水生成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にあっては、隔膜で仕切られた陰極室と陽極室とを有する電解槽を備え、原水供給経路から前記電解槽内に導入された原水を電気分解して電解水を生成し、前記電解槽で生成された電解水を電解水取出経路を介して吐水口から取り出すようにした電解水生成装置であって、前記電解水取出経路に、前記電解槽内の水圧から前記吐水口の大気圧へと水圧を徐々に低下させる圧力低下手段を設けたことを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電解水取出経路に、電解槽内の水圧から吐水口の大気圧へと水圧を徐々に低下させる圧力低下手段を設けているため、電解槽で生成されて電解水取出経路を介して吐水口から取り出される電解水の水圧を連続的かつ緩速に低下させることができる。これにより、流水中に気泡核が生成されてしまうのを抑制することができ、過飽和溶解している気体が溶解状態から気泡へと相転移して水中に流出してしまう量を減少させることができる。その結果、吐水口から取り出される電解水の溶解気体濃度が低下してしまうのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態にかかる電解水生成装置を模式的に示す図である。
【図2】図2は、本発明の第2実施形態にかかる電解水生成装置を模式的に示す図である。
【図3】図3は、本発明の第3実施形態にかかる電解水生成装置を模式的に示す図である。
【図4】図4は、本発明の第4実施形態にかかる電解水生成装置を模式的に示す図である。
【図5】図5は、本発明の第5実施形態にかかる電解水生成装置を模式的に示す図である。
【図6】図6は、本発明の第6実施形態にかかる電解水生成装置を模式的に示す図である。
【図7】図7は、本発明の第7実施形態にかかる電解水生成装置を模式的に示す図である。
【図8】図8は、本発明の第8実施形態にかかる電解水生成装置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下では、浄化部で浄化された浄水についても原水として説明する。すなわち、本発明では、電解槽に導入される水(電解水が生成される前の水)を原水と定義する。
【0014】
また、以下の複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれている。よって、以下では、それら同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
【0015】
(第1実施形態)
本実施形態にかかる電解水生成装置1は、電解槽2や浄化部3および各種配管がケース4内に収納されて構成されている。電解槽2は、隔膜21で仕切られた陰極室22と陽極室23とを有しており、陰極室22には陰極24が設けられているとともに、陽極室23には陽極25が設けられている。これら陰極24および陽極25は、隔膜21を挟んで相互に対向した位置に設けられている。
【0016】
そして、電解槽2には、原水導入管(原水供給経路)5を介して水道水や井戸水などの飲用に適した原水が導入される。この原水導入管5は、電解槽2の上流側で2つに分岐されており、一方の分岐管51は陰極室22の入口22aに連通して原水を専ら陰極室22に供給するとともに、他方の分岐管52は陽極室23の入口23aに連通して原水を専ら陽極室23に供給している。このとき、各分岐管51、52には、余剰原水を放出するための放出管51a、52aが接続されている。
【0017】
そして、電解槽2内に原水を導入した状態で、陰極24と陽極25との間に一定の電圧を印加することで、原水が電解槽2内で電気分解され、陰極室22内で電解水としてのアルカリイオン水が生成されるとともに、陽極室23内で電解水としての酸性水が生成される。
【0018】
なお、陰極室22内では水の電気分解による水素の生成とOHイオンの生成が行なわれるため、陰極室22内の水はアルカリ性となる。一方、陽極室23内では水の電気分解による酸素の生成とHイオンの生成が行なわれるため、陽極室23内の水は酸性となる。
【0019】
生成された陰極室22内のアルカリイオン水は、陰極室22の出口22bに連通する電解水取出経路としてのアルカリイオン水供給管61および吐水管64を介してケース4の外方に取り出されるとともに、陽極室23内の酸性水は、陽極室23の出口23bに連通する電解水取出経路としての酸性水排水管62を介してケース4の外方に取り出される。アルカリイオン水供給管61から供給されるアルカリイオン水は飲用として用いられる一方、酸性水排水管62から排水される酸性水は他の目的に用いられたり廃棄されたりする。
【0020】
アルカリイオン水供給管61は、ケース4の上面に設置された中継部63を介してケース4の外方に配置した上述の吐水管64に接続されている。この吐水管64はケース4の上方の中継部63から下方に向かって配管されており、アルカリイオン水は吐水管64の下端の吐水口64aから取り出されるようになっている。
【0021】
原水導入管5は、上流側先端がケース4の外方に引き出されており、蛇口7に取り付けられた水切替え器71に接続されている。この水切替え器71のレバー操作で蛇口7から流出する水を電解水生成装置1へと供給できるようになっている。
【0022】
また、原水導入管5の途中には、上述した浄化部3が配設されており、この浄化部3で浄化した浄水が各分岐管51,52へと供給される。本実施形態では、浄化部3は、前段に活性炭収納部31が設けられるとともに、後段に中空糸膜収納部32が設けられた構造をしている。ただし、浄化部はこれに限定されることはなく、原水を浄化する機能を有していれば他の構造をしていてもよい。
【0023】
ここで、本実施形態では、陰極室22側のアルカリイオン水供給管(電解水取出経路)61に、電解槽2内の高い水圧から吐水口64aの大気圧へと水圧を徐々に低下させる圧力低下部(圧力低下手段)8を設けている。なお、水圧を徐々に低下させるとは、流水中で気相の相転移を起こさずに気泡核を生成しにくい範囲での連続的な圧力低下を意味し、急激に圧力を低下させるのではなく緩速に圧力を低下させることを意味するものである。このことは、以下の各実施形態においても同様である。
【0024】
かかる構成の電解水生成装置1を用い、蛇口7に付属の水切替え器71のレバーを切り替えると、蛇口7から流出する水が原水導入管5を通って電解水生成装置1に供給される。
【0025】
そして、電解水生成装置1に供給された原水は、浄水部3に入り、活性炭収納部31にて遊離塩素が除去され、中空糸膜収納部32にて固形不純物の除去等が行なわれて浄水が生成される。
【0026】
そして、浄化部3で浄化された浄水は、各分岐管51,52を通ってそれぞれ電解槽2の陰極室22および陽極室23へと導入されて、陰極24と陽極25との間に一定の電圧を印加することで、浄水(原水)が電解槽2内で電気分解される。
【0027】
こうして、陰極室22内でアルカリイオン水が生成されるとともに、陽極室23内で酸性水が生成され、生成されたアルカリイオン水は、アルカリイオン水供給管61および吐水管64を介して吐水口64aから取り出されるとともに、酸性水は、酸性水排水管62からケース4の外方に排出される。
【0028】
このとき、陰極室22内で生成されたアルカリイオン水の水圧は、アルカリイオン水供給管(電解水取出経路)61に設けられた圧力低下部(圧力低下手段)8を通過することで、電解槽2内における高い水圧から吐水口64aの大気圧へと徐々に低下する。
【0029】
具体的には、電解槽2内における高い水圧状態にあるアルカリイオン水は、圧力低下部(圧力低下手段)8が設けられたアルカリイオン水供給管(電解水取出経路)61を通過して吐水口64aから大気圧中に放出されるまでの間に、水圧が流水中で気相の相転移を起こさずに気泡核が生成されにくい範囲で徐々に(連続的に)低下し、吐水口64a付近では、大気圧に近い水圧となる。そして、大気圧に近い水圧状態のアルカリイオン水が吐水口64aから大気圧中に放出されることとなる。
【0030】
すなわち、本実施形態にかかる電解水生成装置1を用いれば、陰極室22内で生成されたアルカリイオン水が吐水口64aから大気圧中に放出される時に、急激な圧力低下が生じてしまうのを抑制することができる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態では、アルカリイオン水供給管(電解水取出経路)61に、電解槽2内の水圧から吐水口64aの大気圧へと水圧を徐々に低下させる圧力低下部(圧力低下手段)8を設けているため、電解槽2で生成されてアルカリイオン水供給管(電解水取出経路)61を介して吐水口64aから取り出されるアルカリイオン水(電解水)の水圧を連続的かつ緩速に低下させることができる。これにより、アルカリイオン水(電解水)の流水中に気泡核が生成されてしまうのを抑制することができ、過飽和溶解している水素(気体)が溶解状態から気泡へと相転移して水中に流出してしまう量を減少させることができる。その結果、吐水口64aから取り出されるアルカリイオン水(電解水)の溶解気体濃度が低下してしまうのを抑制することができる。すなわち、本実施形態によれば、溶解気体濃度の高いアルカリイオン水(電解水)を吐水口64aから得ることができるため、アルカリイオン水(電解水)としての効能を高めることができる。
【0032】
(第2実施形態)
本実施形態にかかる電解水生成装置1Aは、図2に示すように、基本的に上記第1実施形態と同様の構成を備えている。
【0033】
すなわち、本実施形態の電解水生成装置1Aも、電解槽2や浄化部3および各種配管がケース4内に収納されて構成されている。
【0034】
ここで、本実施形態の電解水生成装置1Aが上記第1実施形態の電解水生成装置1と主に異なる点は、圧力低下部(圧力低下手段)8を、管摩擦抵抗で流水の圧力を低下させる長い流水管路81で形成したことにある。この場合、長い流水管路81は、図2に示すように、蛇行させてコンパクトにまとめておくことが好ましい。
【0035】
このように、本実施形態では、長い流水管路81の管径を調整することで流水に生じる管摩擦抵抗を調整し、電解槽2の高い内圧から大気圧へと徐々に圧力を低下させるようにしている。具体的には、長い流水管路81においてその管径を維持することで、圧力低下過程における単位時間または単位長さ(流水管路81の長さ)当たりの圧力低下度をコントロールしている。すなわち、本実施形態では、長い流水管路81の管径および長さを調整することで、電解槽2で生成されてアルカリイオン水供給管(電解水取出経路)61を介して吐水口64aから取り出されるアルカリイオン水(電解水)の水圧を連続的かつ緩速に低下させている。なお、大気圧へと徐々に低下させる条件を満足するために、本実施形態では流水管路81の管径(内径)をφ0.1〜10mmかつ流路長を0.1〜10mに設定している。
【0036】
以上の本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【0037】
また、本実施形態によれば、圧力低下部(圧力低下手段)8を、管摩擦抵抗で流水の圧力を低下させる長い流水管路81で形成したため、構造の簡素化を図ることができる。
【0038】
また、上記第1実施形態の電解水生成装置1にあっても本実施形態を適用することが可能である。
【0039】
(第3実施形態)
本実施形態にかかる電解水生成装置1Bは、図3に示すように、基本的に上記第1実施形態と同様の構成を備えている。
【0040】
すなわち、本実施形態の電解水生成装置1Bも、電解槽2や浄化部3および各種配管がケース4内に収納されて構成されている。
【0041】
ここで、本実施形態の電解水生成装置1Bが上記第1実施形態の電解水生成装置1と主に異なる点は、アルカリイオン水供給管(電解水取出経路)61に断面積の小さな箇所を設けるとともに、当該断面積の小さな箇所から吐水口64a側(下流側)に向かって断面積が除々に大きくなる部位を設けたことにある。
【0042】
本実施形態では、圧力低下部(圧力低下手段)8を、開口部の断面積が下流側に向かって滑らかに増大する絞り部82で形成することで、アルカリイオン水供給管(電解水取出経路)61に断面積の小さな箇所を設けている。この絞り部82は、例えばオリフィスとして構成することができる。
【0043】
このように、本実施形態では、アルカリイオン水供給管61に開口部の断面積が下流側に向かって滑らかに増大する絞り部82を設け、電解槽2の高い内圧から大気圧へと徐々に圧力を低下させるようにしている。具体的には、絞り部82の断面積の小さな箇所の管径を調整することで電解槽2の内圧を調整するとともに、絞り部82の開口面積、断面積の大きな箇所における管径および長さを調整することで、圧力低下過程における単位時間または単位長さ当たりの圧力低下度をコントロールしている。また、絞り部82の開口部の断面積を下流側に向かって滑らかに増大させるようにすることで、流水の圧力が瞬間的に減少してしまうのを抑制している。なお、大気圧へと徐々に低下させる条件を満足するために、本実施形態ではオリフィス径(内径)をφ0.1〜10mmに設定している。
【0044】
以上の本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、圧力低下部(圧力低下手段)8を絞り部82で形成したため、構造の簡素化を図ることができる。
【0046】
なお、本実施形態では、絞り部82をアルカリイオン水供給管61に1箇所設けたものを例示したが、絞り部82を複数箇所に設けるようにしてもよい。
【0047】
また、上記第1および第2実施形態の電解水生成装置1,1Aにあっても本実施形態を適用することが可能である。
【0048】
(第4実施形態)
本実施形態にかかる電解水生成装置1Cは、図4に示すように、基本的に上記第1実施形態と同様の構成を備えている。
【0049】
すなわち、本実施形態の電解水生成装置1Cも、電解槽2や浄化部3および各種配管がケース4内に収納されて構成されている。
【0050】
ここで、本実施形態の電解水生成装置1Cが上記第1実施形態の電解水生成装置1と主に異なる点は、圧力低下部(圧力低下手段)8を、上下方向(鉛直方向)に配置して電解水を下方から上方に流水させ、流水の自重で圧力を低下させる流水管路83で形成したことにある。なお、流水管路83は、電解水を下方から上方に流水させることができればよく、鉛直に配置させる必要はない。
【0051】
本実施形態では、流水管路83を、長さがL、管径Dが、アルカリイオン水供給管61の管径dよりも大径となるように形成している。なお、流水管路83の管径Dは、アルカリイオン水供給管61の管径dと同一の径となるようにしてもよい。
【0052】
このように、本実施形態では、アルカリイオン水供給管61に、上下方向(鉛直方向)に配置して電解水を下方から上方に流水させ、流水の自重で圧力を低下させる流水管路83を設けることで、電解槽2の高い内圧から大気圧へと徐々に圧力を低下させるようにしている。かかる構成とすることで、アルカリイオン水供給管61から流水管路83の入口83aに流入した流水は、流水管路83を下方から上方へとゆっくりと移動し、出口83bから下流側のアルカリ供給管61に流出する。このとき、流水管路83内の流水が下方から上方に流れる際に流水自体に働く重力(自重)により、出口83bから流出する圧力を緩速に低減させることができる。なお、流水管路83の管径Dや長さLを調節することで、圧力低下過程における単位時間または単位長さ(流水管路81の長さ)当たりの圧力低下度をコントロールすることができる。
【0053】
また、本実施形態では、流水管路83よりも下流側のアルカリイオン水供給管61、具体的には、吐水管64に繋がる中継部63に、大気開放口65を設けることで、吐水管64に作用する水の重力によって引き起こされる下方への引力による電解槽2の内圧低下を抑制している。この場合、大気開放口65を完全に解放させることが望ましいが、流水の増大時に大気開放口65から水が流出してしまうおそれがあるため、大気開放口65を水を通さない疎水性を有するガス通過膜などで閉塞するのが好ましい。
【0054】
以上の本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、アルカリイオン水供給管61に、上下方向(鉛直方向)に配置して電解水を下方から上方に流水させ、流水の自重で圧力を低下させる流水管路83を設けたため、構造の簡素化を図ることができる。
【0056】
また、上記第1〜第3実施形態の電解水生成装置1、1A、1Bにあっても、本実施形態を適用することが可能である。
【0057】
例えば、アルカリイオン水供給管61に、長い流水管路81、絞り部82および流水管路83のうち少なくとも2つ以上をアルカリイオン水供給管61に設けることができる。こうすれば、流水の圧力低減効果をより一層向上させることができる。この場合、それぞれを直列に配置するのが好ましい。
【0058】
(第5実施形態)
本実施形態にかかる電解槽2Dは、図5に示すように、基本的に上記第1実施形態の電解槽2と同様の構成を備えている。
【0059】
ここで、本実施形態の電解槽2Dが上記第1実施形態の電解槽2と主に異なる点は、電解槽2Dの内部に、生成した気体を電解槽2D内の流水中に混合促進する気体混合部10を設けたことにある。
【0060】
気体混合部10は、陰極室22内に面した隔膜21の片面21aに突設した複数のフィン10aによって構成されている。フィン10aは、隔膜21の片面21aに流水Wfに沿って間隔をあけて複数配置されており、それぞれのフィン10aは突出側が流水Wfに沿った方向にやや傾斜している。したがって、フィン10aの先端部近傍に沿って流れる流水Wfは、各フィン10aの下流側で渦流Vを生成し、この渦流Vによって隔膜21の片面21a側が撹拌されるようになっている。
【0061】
ところで、電解槽2D内の陰極室22側では、水の電気分解によって、陰極24の表面上で水素の生成が行われる。このとき、水素が水への溶解量よりも過剰に生成された場合、陰極24の表面は過飽和状態となるが、溶液中に次第に拡散するため陰極24の表面から離れるに従って水素の溶解量や過飽和度は減少する。なお、電解槽2D内の流水Wf中では、陰極24表面から離れた領域、特に隔膜21の近傍での溶解量が低くなる。
【0062】
この場合に、本実施形態では、隔膜21にフィン10aを設けているため、内圧の高い電解槽2D内でフィン10aにより流水Wfが撹拌され、生成した水素を混合させることができる。これにより、陰極24の表面で極端に過飽和度が上昇している部分の過飽和度が下げられ、気泡核の生成をより効率的に抑制することができる。このように、溶解度の高い条件下で流水Wf中における水素濃度の均一化を促進することで、すなわち、電解槽2D内におけるアルカリイオン水(電解水)の溶解気体濃度を略均一にすることで、アルカリイオン水供給管61を通ってアルカリイオン水(電解水)の圧力を緩速に低減させる際に、気体が溶解状態から気泡へと相転移してしまうのをより一層抑制することができる。すなわち、本実施形態によれば、吐水口64aから取り出されるアルカリイオン水(電解水)の溶解気体濃度が低下してしまうのをより一層抑制することができる。
【0063】
なお、上記第1〜第4実施形態の電解水生成装置1、1A、1B、1Cのいずれであっても、本実施形態にかかる電解槽2Dを適用することが可能である。
【0064】
(第6実施形態)
本実施形態にかかる電解水生成装置1Eは、図6に示すように、基本的に上記第1実施形態と同様の構成を備えている。
【0065】
すなわち、本実施形態の電解水生成装置1Eも、電解槽2や浄化部3および各種配管がケース4内に収納されて構成されている。
【0066】
ここで、本実施形態の電解水生成装置1Eが上記第1実施形態の電解水生成装置1と主に異なる点は、電解槽2と圧力低下部(圧力低下手段)8との間のアルカリイオン水供給管61の上部に、流水から気体を分離する気液分離部11を設けたことにある。
【0067】
すなわち、電解槽2から供給されるアルカリイオン水に気泡が混入してしまった場合に、この気泡を気液分離部11で分離して取り除いた状態で圧力低下部8に送ることができるようにしている。
【0068】
このような気液分離部11を設けない場合、過飽和度が高い流水で何らかの刺激によって電解槽2内で気泡核が生成され、圧力低下部8を通過する過程で水素過飽和水中に気泡が漂った際に、水中に溶解している水素がその気泡に取り込まれて水素濃度の低いアルカリイオン水となってしまう。
【0069】
しかしながら、本実施形態のように気液分離部11を設ければ、圧力低下部8に至る前に気液分離部11によって気泡を取り除くことができるため、流水中に溶解された気体が溶解状態から気泡へと相転移してしまうのを効果的に抑制することができる。その結果、流水に溶解している水素が減少してしまうのを効率よく抑制することができるため、溶解気体濃度の高いアルカリイオン水(電解水)を吐水口64aから得ることができ、アルカリイオン水(電解水)としての効能を高めることができる。
【0070】
なお、上記第1〜第4実施形態の電解水生成装置1、1A、1B、1Cのいずれであっても、本実施形態にかかる気液分離部11を適用することが可能である。
【0071】
また、本実施形態にあっても、上記第5実施形態にかかる電解槽2Dを適用することが可能である。
【0072】
(第7実施形態)
本実施形態にかかる電解水生成装置1Fは、図7に示すように、基本的に上記第6実施形態と同様の構成を備えている。
【0073】
すなわち、本実施形態の電解水生成装置1Fも、電解槽2や浄化部3および各種配管がケース4内に収納されて構成されている。
【0074】
ここで、本実施形態の電解水生成装置1Fが上記第6実施形態の電解水生成装置1Eと主に異なる点は、気液分離部11を、流水の流れ方向に沿って配置した気液分離膜12で構成したことにある。
【0075】
気液分離膜12は、疎水性を有する膜または疎水処理を行った膜で形成されており、水を通すことなく気体を通過させる性質を有している。この気液分離膜12は、電解槽2と圧力低下部8との間のアルカリイオン水供給管61内の上部に、所定長さに亘って流水と接触するように配設されている。このときに、流水に接触する気液分離膜12の長さは、電解槽2と圧力低下部8との間で可能な限り長くすることが好ましい。
【0076】
このように、電解槽2と圧力低下部8との間で可能な限り長く気液分離膜12を設けることで、アルカリイオン水供給管61内の流水を長い距離に亘って気液分離膜12に接触させることができるため、気泡の除去効率をより一層高めることができる。その結果、流水中に溶解した気体が溶解状態から気泡へと相転移してしまうのをより効果的に抑制することができる。
【0077】
なお、上記第1〜第4実施形態の電解水生成装置1、1A、1B、1Cのいずれであっても、本実施形態にかかる気液分離部11を適用することが可能である。
【0078】
また、本実施形態にあっても、上記第5実施形態にかかる電解槽2Dを適用することが可能である。
【0079】
(第8実施形態)
本実施形態にかかる電解水生成装置1Gは、図8に示すように、基本的に上記第1実施形態と同様の構成を備えている。
【0080】
すなわち、本実施形態の電解水生成装置1Gも、電解槽2や浄化部3および各種配管がケース4内に収納されて構成されている。
【0081】
ここで、本実施形態の電解水生成装置1Gが上記第1実施形態の電解水生成装置1と主に異なる点は、原水導入管5、特に、本実施形態では陰極室22に原水を供給する一方の分岐管51に、流水中に溶け込んでいる空気を除去する脱気部13を設けたことにある。
【0082】
このように、陰極室22に原水を供給する一方の分岐管51に脱気部13を設けることで、電解槽2の陰極室22に供給する原水に溶け込んでいる空気を効率よく除去することができる。すなわち、本実施形態のように、脱気部13を設けることで、陰極室22に導入される原水を脱気水とすることができ、陰極24で生成した水素を流水に溶解させ易くすることができる。その結果、陰極24で生成された水素の過飽和度を減少させることができ、気泡核の生成をより効率的に抑制することができるようになる。また、流水中に溶解した水素が気泡化してしまうのを抑制することで、水素の溶解濃度が低下してしまうのを抑制することができ、アルカリイオン水(電解水)としての効能を高めることができる。
【0083】
なお、上記第1〜第4、第6および第7実施形態の電解水生成装置1、1A、1B、1C、1E、1Fのいずれであっても、本実施形態にかかる脱気部13を適用することが可能である。
【0084】
また、本実施形態にあっても、上記第5実施形態にかかる電解槽2Dを適用することが可能である。
【0085】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。
【0086】
例えば、上記各実施形態では、アルカリイオン水を生成する電解槽の陰極室側に本発明を適用した場合を例示したが、陽極室側に本発明を適用することも可能である。
【0087】
また、電解槽や浄化部、その他細部のスペック(形状、大きさ、レイアウト等)も適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0088】
1,1A,1B,1C,1E,1F,1G 電解水生成装置
2,2D 電解槽
5 原水導入管(原水供給経路)
8 圧力低下部(圧力低下手段)
10 気体混合部
11 気液分離部
12 気液分離膜
13 脱気部
21 隔膜
22 陰極室
23 陽極室
24 陰極
25 陽極
61 アルカリイオン水供給管(電解水取出経路)
64 吐水管
64a 吐水口
81 流水管路
82 絞り部
83 流水管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔膜で仕切られた陰極室と陽極室とを有する電解槽を備え、原水供給経路から前記電解槽内に導入された原水を電気分解して電解水を生成し、前記電解槽で生成された電解水を電解水取出経路を介して吐水口から取り出すようにした電解水生成装置であって、
前記電解水取出経路に、前記電解槽内の水圧から前記吐水口の大気圧へと水圧を徐々に低下させる圧力低下手段を設けたことを特徴とする電解水生成装置。
【請求項2】
前記圧力低下手段は、管摩擦抵抗で流水の圧力を低下させる流水管路であることを特徴とする請求項1に記載の電解水生成装置。
【請求項3】
前記圧力低下手段は、開口部の断面積が下流側に向かって徐々に増大する絞り部であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電解水生成装置。
【請求項4】
前記圧力低下手段は、上下方向に配置されて電解水を下方から上方に流水させる流水管路であることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の電解水生成装置。
【請求項5】
前記電解槽内部に、生成した気体を電解槽内の流水中に混合する気体混合部を設けたことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の電解水生成装置。
【請求項6】
前記電解水取出経路における前記電解槽と前記圧力低下手段との間に、流水から気体を分離する気液分離部を設けたことを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の電解水生成装置。
【請求項7】
前記気液分離部が気液分離膜であることを特徴とする請求項6に記載の電解水生成装置。
【請求項8】
前記原水供給経路に、流水中に溶け込んでいる空気を除去する脱気部を設けたことを特徴とする請求項1〜7のうちいずれか1項に記載の電解水生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−157800(P2012−157800A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18151(P2011−18151)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】