説明

電解液分解装置及びそれを用いた電解液の分解方法

【課題】電解液が流入して流れる流路の上流側と下流側に各々の電極を配設することによって、電解液を分流して電解液の分解によって各々の電極において生成される生成物、特には酸素と水素とを容易に分離して回収することができる電解液分解装置を提供し、さらには、その電解液分解装置を用いた電解液の分解方法を提供すること。
【解決手段】本発明による電解液分解装置は、電解液が流入して流れる流路を形成する流路形成セルと、その流路形成セルに面して配設される第1電極部と、その流路形成セルに面して配設される第2電極部と、その第1電極部を通過したその電解液が流出する第1流出セルと、その第2電極部を通過したその電解液が流出する第2流出セルとを備え、その第2電極部がその第1電極部の下流側に離間して配設されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解液を分解する電解液分解装置、及びその電解液分解装置を用いた電解液の分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電解液、特には水の電気分解又は光分解(光化学分解とも言う。)により生成する酸素及び水素の需要が高まっている。酸素は、多くの産業上の利用、医療用途等がある。例えば、酸素の用途は、化学工業における安価な酸化剤としての用途、呼吸に不可欠な元素であるため医療分野での酸素吸入としての用途、ガス溶接や鉄鋼の製造工程における助燃剤としての用途等がある。一方、水素は、エネルギー有効利用の観点から注目されている。すなわち、水素は、電力の豊富な地域や時間において、水を電気分解又は光分解して、水素として貯蔵し、電力が必要な地域や時間に供給することが考えられる。具体的には、大都市から離れた大河流域の大型ダムで製造された豊富な電力で、水の電気分解又は光分解により水素を製造し、パイプラインにより工場や大都市に供給したり、化学物質の原料として消費したり、水素自動車や燃料電池の燃料としたりすること等が可能である。
【0003】
例えば、特許文献1には、原水を電気分解して電解水を生成する電解水生成装置であって、原水が供給される陽極および陰極と、陽極及び陰極間に配置される隔膜とを備え、陽極及び陰極のうちの少なくとも一方の表面には、貴金属元素である白金を主体とする白金触媒層が形成されており、白金触媒層には、平均細孔径50μm以下の細孔が形成されていることを特徴とする電解水生成装置が提案されている。特許文献1によると、陰極表面から発生した水素気泡を小さいサイズのまま水中に速やかに分散させることができ、水素溶存水中の溶存水素濃度を効率良く大きくすることができ、さらに、溶存水素濃度を効率良く大きくすることができるので、所望の溶存水素濃度を得るために要する電気分解の電気量を低減することができ、水素溶存水のpH値の上昇を抑制することができると記載されている。また、特許文献2には、固体酸化物を有する電解質と、水素極と、酸素極とを有する電気化学セルを用いて水蒸気を電気分解して水素を生成する水蒸気電解装置において、水素極及び酸素極に水蒸気を含むガスが供給されるガス供給手段を有することを特徴とする水蒸気電解装置が提案されている。特許文献2によると、水素極及び酸素極に水蒸気を含むガスが供給されるガス供給手段を設けることにより、水素極側雰囲気と酸素極側雰囲気との間で生じるガスリークを抑制し、安全性の向上を図り、さらには装置構造の簡易化を図ることができると記載されている。特許文献3には、固体酸化物電解質材料を素材とする電解質と、この電解質を挟んで設けられた水素極と酸素極とから成る電気化学セルを用いて、水蒸気を電気分解し、水素と酸素を生成する水蒸気電解方法において、水素極及び酸素極に供給する供給ガスが、いずれも水蒸気を主な成分とし、水素極及び酸素極を通過した排出ガスの一部をそれぞれの供給ガスの流れの上流側へ循環させるようにしたことを特徴とする水蒸気電解方法が提案されている。特許文献3によると、構造が簡単で、また、水素極側雰囲気と酸素極側雰囲気間で生じるガスリークによる影響を軽減し、できるだけ緩和・簡易・安全な運転が可能な水蒸気電解方法及び水蒸気電解装置を得ることができると記載されている。さらに、特許文献4には、電解液を収容するための第1室と、電解液の電気分解により生成する電解生成物を排出するための第2室と、第1室と前記第2室との間に設けられた作用電極と、電解液を介して作用電極に電流を供給するための対極と、作用電極と対極間に直流電流を印加するための電源とを備え、作用電極は、電解生成物を選択的に第2室に排出することが可能な大きさの細孔を有し、かつ、細孔が一方の面から他方の面に向かって連続的につながっている炭素膜を含む電解装置が提案されている。特許文献4によると、炭素膜を電解用の作用電極として使用すれば、電解生成物を効率よく分離することができ、しかも、炭素膜は、電解生成物が透過する際に膨張・収縮がないので、これを作用電極に用いることによって電解装置の耐久性が向上し、さらに、第2室に強制排出手段を設けた場合には、電解生成物の分離効率がさらに向上すると記載されている。さらにまた、特許文献5には、電解液が流液する液体流路と、液体流路で流液する電解液と気液界面を形成するための気体流路と、電解液の電気分解を起こすための一対の電極であって、少なくとも一部が電解液と接触し、且つ前記電解液との接触領域全域が液体流路及び気体流路の境界から100μm以内に位置する一対の電極と、を具備することを特徴とする電気分解セルが提案されている。特許文献5によると、電気分解により生じた気体を電極表面から速やかに取り除くことが可能な電気分解セル、及びそれを用いた電気分解方法を提供することができると記載されている。
【0004】
しかしながら、電解液、特には水を、更に安価、かつ、効率的に電気分解又は光分解をして酸素及び水素を生成させて、そして酸素及び水素を別々に容易に回収することができる電解液分解装置が求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−195884号公報
【特許文献2】特開2007−063619号公報
【特許文献3】特開2007−031784号公報
【特許文献4】特開2007−197765号公報
【特許文献5】特開2007−154217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電解液が流入して流れる流路の上流側と下流側に各々の電極を配設することによって、電解液を分流し、電解液、特には水の電気分解又は光分解によって各々の電極において生成される生成物、特には酸素及び水素のガスを容易に分離して回収することができる電解液分解装置を提供することを目的とする。さらには、本発明は、その電解液分解装置を用いた電解液の分解方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための手段は、以下の第(1)項〜第(5)項である。
(1)電解液が流入して流れる流路を形成する流路形成セルと、その流路形成セルに面して配設される第1電極部と、その流路形成セルに面して配設される第2電極部と、その第1電極部を通過したその電解液が流出する第1流出セルと、その第2電極部を通過したその電解液が流出する第2流出セルとを備え、その第2電極部がその第1電極部の下流側に離間して配設されることを特徴とする、電解液分解装置。
(2)その流路形成セル内に参照電極を備えることを特徴とする、第(1)項に記載の電解液分解装置。
(3)その流路形成セル内のその電解液の圧力が、その第1流出セル内のその電解液の圧力よりも高いことを特徴とする、第(1)項又は第(2)項に記載の電解液分解装置。
(4)その第1電極部が圧力損失部とその圧力損失部に対して下流に配設されるガス発生部とを備えることを特徴とする、第(3)項に記載の電解液分解装置。
(5)第(1)項から第(4)項のいずれか1項に記載の電解液分解装置を用いてその電解液の分解を行うことを特徴とする、電解液分解方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電解液を分流して、電解液、特には水の電気分解又は光分解によって各々の電極において生成される生成物、特には酸素及び水素のガスを容易に分離して回収することができる電解液分解装置が提供され、また、その電解液分解装置を用いた電解液の分解方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の電解液分解装置の1つの態様を示す側面断面図である。
【図2】図2は、図1に示す本発明の電解液分解装置に参照電極を配設した、本発明の電解液分解装置の1つの態様を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)電解液分解装置
本発明の電解液分解装置は、電解液が流入して流れる流路を形成する流路形成セルと、流路形成セルに面して配設される第1電極部と、流路形成セルに面して配設される第2電極部と、第1電極部を通過したその電解液が流出する第1流出セルと、第2電極部を通過したその電解液が流出する第2流出セルとを備え、第2電極部が第1電極部の下流側に離間して配設されることを特徴とする。第2電極部が第1電極部の下流側に離間して配設されることにより、電解液を容易に分流して、電解液の分解によって各々の電極において生成される生成物を容易に分離して回収することができる。本発明による電解液分解装置において用いられる電解液は、イオン性物質を水等の極性溶媒に溶解させて作製した電気伝導性を有する溶液であれば、特に限定されることはなく、例えば、水(H2O)、重金属等の金属含有水溶液(金属廃液)が挙げられるが、水(H2O)であることが好ましい。また、本発明の電解液分解装置は、電解液の分解として電気分解を実施する場合に用いられてもよいし、光分解を実施する場合に用いられてもよい。
【0011】
以下、図1を参照しながら、本発明による電解液分解装置について更に詳細に説明をする。なお、本発明の電解液分解装置は、本発明の目的及び主旨を逸脱しない範囲で、図1及び図2の本発明の実施の形態に限定されるものではない。図1は、本発明の実施の形態に係る電解液分解装置の1態様(電解液分解装置(100))を示す側面断面図である。本発明の実施の形態に係る電解液分解装置(100)は、筐体(200)内に配設された、電解液(水:H2O)(1)が流入して流れる流路を形成する流路形成セル(10)と、その流路形成セルに面して配設された第1電極部(20)と、その流路形成セルに面して配設された第2電極部(30)と、その第1電極部(20)を通過した電解液(水:H2O)(1)が流出する第1流出セル(40)と、その第2電極部(30)を通過した電解液(水:H2O)(1)が流出する第2流出セル(50)と、透明窓部(300)と、セパレータ(400)と、を備えて、第2電極部(30)が第1電極部(20)に対して電解液(水:H2O)(1)の流れの下流側に離間して配設される。
【0012】
図1による本発明の実施の形態に係る電解液分解装置において、電解液(水:H2O)(1)が電解液流入口(60)から流入して流路形成セル(10)中を流れて第1電極部(20)を通過すると、光(500)照射による光化学反応によって酸素(O2)(2)が生成される。一方、電解液(水:H2O)(1)が電解液流入口(60)から流入して流路形成セル(10)中を流れて第2電極部(30)を通過すると水素(H2)(3)が生成される。生成された酸素(O2)(2)の気泡は、第1電極部の下部から上部へ向かう電解液(水:H2O)(1)の流れによって第1電極部から脱離して電解液(水:H2O)(1)の流れと同伴して、第1流出セル(40)の電解液流出口(70)から流出される。一方、水素(H2)(3)の気泡は、逆流をすることなく、電解液(水:H2O)(1)の流れと同伴して第2流出セル(50)の電解液流出口(80)から流出される。酸素(O2)(2)の気泡及び水素(H2)(3)の気泡は、電解液流出口(70)及び電解液流出口(80)からそれぞれ流出されるので、酸素(O2)(2)及び水素(H2)(3)はセパレータ(400)を介して容易に分離して回収され得る。
【0013】
本発明による電解液分解装置において、電解液分解装置に備えられる流路形成セル内の電解液の圧力が、電解液分解装置に備えられる第1流出セル内の電解液の圧力よりも高いことが好ましく、さらに、電解液分解装置に備えられる第1電極部が圧力損失部とその圧力損失部に対して下流に配設されるガス発生部とを備えることが好ましい。この好ましい本発明の電解液分解装置の実施の形態により、電解液を容易に分流して、電解液、特には水の分解によって第1電極部において生成される生成物、特には酸素を容易に分離して回収することができる。圧力損失部とは、液体又は気体の圧力が圧力損失により低くなるところであり、例えば、圧力損失部は特に限定されることはないが、多孔質膜、電極基板等が挙げられる。ガス発生部とは、酸素、水素等のガス(気体)が発生するところであり、例えば、ガス発生部は特に限定されることはないが、電極基板、光触媒膜等が挙げられる。
【0014】
図1に示される、本発明の実施の形態に係る電解液分解装置(100)が備える第1電極部(20)は、光触媒電極(90)と、多孔質膜(93)とから構成され、光触媒電極(90)は、光触媒膜(91)と、電極基板(92)とから構成される。光触媒電極と多孔質膜とは、図1に示すとおり積層されて配設されてもよいし、離間して配設されてもよい。光触媒膜(91)は、特に限定されることはないが、例えば、二酸化チタン、酸化タングステン、三酸化二鉄等が挙げられるが、バイアスを与えることにより酸素を選択的に生成可能な光触媒が好ましい。電極基板(92)は、電流(電子)が電解液等の媒体に流れ込んだり、電解液等の媒体から流れ出たりするために通過可能な構造の導体であれば、特に限定されることはないが、例えば、パンチングメタル、金属製メッシュ、金属製不織布、発泡金属板等が挙げられ、パンチングメタルが好ましい。電極基板(92)が、電解液(水:H2O)(1)の流れを阻害して圧損が生じることにより酸素(O2)(2)の気泡が逆流することはない。多孔質膜は特に限定されることはないが、例えば、ポリエチレン不織布、ポリオレフィン不織布、ガラス繊維不織布等が挙げられ、ポリオレフィン不織布が好ましい。多孔質膜(93)を、電極基板(92)よりも上流に配置することにより、ガス発生箇所である電極基板(92)より上流の多孔質膜(93)で圧力差が発生し、ガスの逆流を防止できる。第1電極部の形状は図1に示される第1電極部(30)の形状に限定されるものではなく、本発明の目的及び主旨を逸脱しない範囲で、任意の形状でよい。なお、図1に示される第1電極部(20)は、光分解を実施するので光触媒電極(90)であるが、電気分解を実施する場合は、第1電極部は導電性の電極でよい。
【0015】
本発明による電解液分解装置において、電解液分解装置に備えられる流路形成セル内の電解液の圧力が、電解液分解装置に備えられる第2流出セル内の電解液の圧力よりも高いことが好ましく、電解液分解装置に備えられる第2電極部が圧力損失部とその圧力損失部に対して下流に配設されるガス発生部とを備えることが好ましい。この好ましい本発明の電解液分解装置の実施の形態により、電解液を容易に分流して、電解液、特には水の分解によって第2電極部において生成される生成物、特には水素を容易に分離して回収することができる。圧力損失部とは、液体又は気体の圧力が圧力損失により低くなるところであり、圧力損失部は例えば、特に限定されることはないが、多孔質膜、電極基板等が挙げられる。圧力損失部に対して下流に配設されるガス発生部とは、酸素、水素等のガス(気体)が発生するところであり、ガス発生部は例えば、特に限定されることはないが、電極基板、光触媒膜等が挙げられる。
【0016】
図1に示される、本発明の実施の形態に係る電解液分解装置(100)が備える第2電極部(30)は、カウンター電極(95)と、多孔質膜(94)とから構成され、図1に示されているとおり、カウンター電極(95)と多孔質膜(94)とは互いに離間して配設されているが、積層されて配設されてもよい。カウンター電極(95)は、特に限定されることはないが、例えば、メッシュ状のもの、発泡材、棒状のもの、不織布状のもの、金属製の織物状のもの、Pt、Ni、貴金属をめっきしたもの等が挙げられ、Ptが好ましい。上記で述べたとおり、多孔質膜(94)は特に限定されることはないが、例えば、ポリエチレン不織布、ポリオレフィン不織布、ガラス繊維不織布等が挙げられ、ポリオレフィン不織布が好ましい。多孔質膜(94)を、カウンター電極(95)よりも上流に配置することにより、ガス発生箇所であるカウンター電極(95)より上流の多孔質膜(94)で圧力差が発生し、ガスの逆流を防止できる。第2電極部の形状は図1に示される第2電極部(30)の形状に限定されるものではなく、本発明の目的及び主旨を逸脱しない範囲で、任意の形状でよい。なお、図1には示されていないが、第2電極部は、光触媒電極と、多孔質膜とから構成されてもよい。
【0017】
図1に示す本発明の実施の形態に係る電解液分解装置(100)においては、本発明の実施の形態に係る電解液分解装置(100)が備える透明窓部(300)を通して第1電極部(20)に照射される光(500)によって電解液(水:H2O)(1)を分解して、第1電極部(20)では、酸素(O2)(2)が発生し、第2電極部(30)では、水素(H2)(3)が発生する。なお、図1には示されていないが、第2電極部(30)側にも透明窓部を設けて、第2電極部(30)に光触媒電極を設けて光を照射して電解液(水:H2O)(1)を分解してもよい。透明窓部(300)の材料は、光を透過すれば任意のものでよく、例えば、特に限定されることはないが、ガラス状のもの、プラスチック状のもの等が挙げられる。また、透明窓部の形状は図1に示される透明窓部(300)の形状に限定されるものではなく、本発明の目的及び主旨を逸脱しない範囲で、任意の形状でよい。
【0018】
酸素(O2)及び水素(H2)の発生機構は、第1電極部及び第2電極部における、電気化学反応又は光化学反応によって、第1電極部に正孔(+)が提供されて、電解液分子(H2O)から酸素(O2)及び水素イオン(H+)が生成されて、一方で第2電極部に電子(−)が提供されて、水素イオン(H+)から水素(H2)が生成される。図1に示されるように、分解する電解液(水:H2O)(1)の中に水素イオン(H+)よりも水酸化物イオン(OH-)(4)が多く含まれる場合には、第1電極部に正孔(+)が提供されて、水酸化物イオン(OH-)(4)から水分子(H2O)(1)及び酸素(O2)(2)が生成されて、一方で第2電極部に電子(−)が提供されて、分解する電解液(水:H2O)(1)から水素(H2)(3)及び水酸化物イオン(OH-)(4)が生成される。
【0019】
本発明の電解液分解装置は、本発明の電解液分解装置に備えられる流路形成セル内に参照電極を備えることが好ましい。図2に示すとおり、参照電極(600)を流路形成セル(10)内に備えることによって第1電極部(20)及び第2電極部(30)にバイアス電圧を印加して3極方式で電解液(水:H2O)を分解することができるので、本発明の実施の形態に係る電解液分解装置(100)における電解液(水:H2O)(1)の分解反応を促進することが可能である。図2に示すとおり、参照電極(600)は流路形成セル(10)内であれば任意の位置に備えてよいが、電解液(水:H2O)(1)の流れを阻害しないように多孔質膜(93、94)の上流側の位置に備えることが好ましい。
【0020】
本発明の電解液分解装置で光化学反応により電解液を分解する場合、第1電極部及び第2電極部の両方が光照射を受けるようにされている必要はなく、第1電極部又は第2電極部のどちらか一方のみが、光照射を受けるようにされていてもよい。図1においては、透明窓部(300)を通して第1電極部(20)のみに光(500)が照射される。
【0021】
なお、電解液が水の場合であって、第1電極部及び第2電極部の一方のみが光照射を受けるようにされている場合、酸素を発生させる第1電極部が光照射を受けるようにされていることが好ましい。これは、電解液(水)の分解では、酸素と水素との発生量の比が1:2であり、酸素のほうが少ないので、酸素を発生させる第1電極部では、気泡によって反射される光の割合が比較的少なく、また気泡の存在によって第1電極部と電解液(水)との接触面積が減少する割合が比較的少ないことによる。
【0022】
筐体及びセパレータは、図1に示される筐体(200)及びセパレータ(400)の形状に限定されるものではなく、本発明の目的及び主旨を逸脱しない範囲で、任意の形状でよい。また、図1に示される筐体(200)及びセパレータ(400)の材料も、本発明の目的及び主旨を逸脱しない範囲で、任意の材料でよい。
【0023】
(2)電解液分解方法
本発明の電解液分解方法は、本発明の電解液分解装置を用いて電解液の分解を行うことを特徴とする。本発明の電解液分解方法において用いられる電解液はイオン性物質を水等の極性溶媒に溶解させて作製した電気伝導性を有する溶液であれば、特に限定されることはなく、例えば、水(H2O)、重金属等の金属含有水溶液(金属廃液)が挙げられるが、水(H2O)であることが好ましい。また、本発明の電解液分解方法は、電解液の分解として、電気分解を実施する場合に用いられてもよいし、光分解を実施する場合に用いられてもよい。
【0024】
本発明の電解液分解方法は本発明の電解液分解装置を用いればよく、本発明の電解液分解方法を実施する上で、任意の公知の工程、任意の公知の装置等を更に追加してよい。例えば、水循環の工程、気液分離の工程等、ポンプ等の装置等を、本発明の電解液分解方法を実施する上で、更に追加してもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 電解液(水:H2O)
2 酸素(O2
3 水素(H2
4 水酸化物イオン(OH-
10 流路形成セル
20 第1電極部
30 第2電極部
40 第1流出セル
50 第2流出セル
60 電解液流入口
70 第1流出セルの電解液流出口
80 第2流出セルの電解液流出口
30 水素生成セル
90 光触媒電極
91 光触媒膜
92 電極基板
93 第1電極部の多孔質膜
94 第2電極部の多孔質膜
95 カウンター電極
100 本発明の電解液分解装置
200 筐体
300 透明窓部
400 セパレータ
500 光
600 参照電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液が流入して流れる流路を形成する流路形成セルと、該流路形成セルに面して配設される第1電極部と、該流路形成セルに面して配設される第2電極部と、該第1電極部を通過した該電解液が流出する第1流出セルと、該第2電極部を通過した該電解液が流出する第2流出セルとを備え、該第2電極部が該第1電極部の下流側に離間して配設されることを特徴とする、電解液分解装置。
【請求項2】
前記流路形成セル内に参照電極を備えることを特徴とする、請求項1に記載の電解液分解装置。
【請求項3】
前記流路形成セル内の前記電解液の圧力が、前記第1流出セル内の前記電解液の圧力よりも高いことを特徴とする、請求項1又は2に記載の電解液分解装置。
【請求項4】
前記第1電極部が圧力損失部と該圧力損失部に対して下流に配設されるガス発生部とを備えることを特徴とする、請求項3に記載の電解液分解装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の電解液分解装置を用いて前記電解液の分解を行うことを特徴とする、電解液分解方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−193429(P2012−193429A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59325(P2011−59325)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】