説明

電解液循環型積層二次電池

【目的】 電極板とセパレータ板を交互に複数積層して成る電池スタック2に電解液を循環して充電、放電を行う亜鉛臭素電池において、放電待機中のマニホールドを通る漏れ電流を防いで電池効率の低下を防ぐ。
【構成】 電池スタック2の各電極板、セパレータ板の枠体の上辺両端部に液入口マニホールド4a、液出口マニホールド4bを設ける。放電待機中ポンプ5の運転を停止した場合、戻り配管3c内の電解液をタンク1内の空気と置換し、該空気を逆止弁6および入口側配管3aを介して液入口マニホールド4aに流し、該空気の圧力によって液入口、液出口マニホールド4a,4b中の電解液をタンク1へ戻す。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電解液循環型積層二次電池に係り、特に亜鉛臭素電池の配管構造に関する。
【0002】
【従来の技術】電解液循環型積層二次電池、例えば亜鉛臭素電池は主に電極をバイポーラ型とし、単電池(単セル)を複数、電気的に直列に積層した電池本体と、電解液貯蔵槽と、これらの間に電解液を循環させるポンプおよび配管系とで構成されている。前記電池本体は図4に示すように構成されている。図4において、51はバイポーラ型の中間電極で、この中間電極51は電極部51aの外周に絶縁性の枠体51bを形成してなる。52はセパレータ板で、このセパレータ板52はセパレータ53の外周に枠体52aが形成されてなる。積層電池は前記中間電極51の間にセパレータ板52および必要に応じてパッキン54,スペーサメッシュ55を重ねて単セルを構成し、この単セルを複数、例えば全体で30セル積層して構成される。積層電池の両端部には集電メッシュ56を有する集電電極57、さらに一対の締付端板63,63とその内側に押さえ部材である積層端板58が配置されている。そして、締付端板63間に図示しないボルトを通し、このボルトを締め付けることにより、一体に構成され、電池本体を構成する。
【0003】上記のように構成した電池本体の各単セル内には各中間電極51およびセパレータ板52の枠体52aの上下2箇所の隅角部に形成した正極マニホールド59と負極マニホールド60より、セパレータ板52の枠体52aに設けられたチャンネル61およびマイクロチャンネル62を介して電解液が夫々流入排出する。このように構成された亜鉛臭素電池は50KW級電池の開発が終了し電池効率として約80%、総合エネルギー効率として約70%が確認されている。そこで行われた自己放電率試験(充電終了後ある一定期間放置した場合と放置しない場合とを比べた放電時電池効率の低下量)は1日放置で5.8%、1週間放置で7.3%の低下があった。この時は電池セル部分から電解液貯蔵槽へ電解液を戻して行っていた。しかし実際の電池適用を考えた場合、電解液がセル部分に無ければ電気は取り出せない。電気を取り出すにはポンプを作動し電解液貯蔵槽内の電解液をセル中に戻さねば成らず、時間として2〜3分かかる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこでセル中に電解液を満たしたまま放置することが考えられる。この場合充電後放置中、電池は開路状態に置かれるが積層電池内部では電解液がセル内からチャンネルを通りマニホールドを経由し、さらに別のチャンネルを通って他のセルに通じている。従って図5の矢印に示されるように電圧の高い方のセルから低い方のセルヘマニホールドを経由し漏れ電流が流れる。このため貯えられた電力は損失してしまう。特に負極において、電着した亜鉛が電圧の高い方で溶解し(亜鉛イオンとなり)、低い方では亜鉛が析出する。これにより積層セル内の電着亜鉛量が各セルで異なり、低い電位のセルではチャンネル方向への亜鉛の析出でチャンネルがふさがれ電解液の循環を妨げてしまう。
【0005】本発明は上記の点に鑑みてなされたものでその目的は、充電待機中のマニホールドを通る漏れ電流を防いで電池効率の低下を防止することができる電解液循環型積層二次電池を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は矩形平板状のセパレータおよび該セパレータの外周縁部に一体に形成された絶縁枠体と、該枠体の上辺の両端部に各々設けられた液入口、液出口マニホールドと、該各マニホールドおよびセパレータの両端を結ぶ部位の枠体に各々設けられた電解液流路とから成るセパレータ板と、矩形平板状の電極および該電極の外周縁部に一体に形成された絶縁枠体と、該枠体の上辺の両端部であって前記各マニホールドと対応する部位に各々設けられた液入口、液出口マニホールドとから成る電極板とを有し、前記電極板の間に前記セパレータ板を挟んで該電極板を複数積層し圧着一体化して電池積層部を構成し、前記電池積層部の液入口マニホールドは入口側配管およびポンプを介して電解液貯蔵槽の電解液内に導入し、前記電池積層部の液出口マニホールドは出口側配管および戻り側配管を介して前記電解液貯蔵槽内の液面より上方に導入し、前記入口側配管と出口側配管の間に逆止弁を配設したことを特徴としている。
【0007】
【作用】通常の運転時(ポンプ運転時)は逆止弁が閉じられて電解液貯蔵槽の電解液は、ポンプ、入口側配管、電池積層部の液入口マニホールド、電解液流路、電極とセパレータと絶縁枠体で囲まれた電池反応室、電解液流路、液出口マニホールド、出口側配管、戻り側配管を順次通って電解液貯蔵槽に戻される。
【0008】自己放電率試験のため充電終了後放置する場合はポンプを停止させる。すると戻り側配管内の電解液が電解液貯蔵槽内の空気と置換され、同時にその空気は逆止弁を通って入口側配管にも侵入する。この空気の圧力によって電池積層部の各マニホールド内の電解液は戻り側配管を介して電解液貯蔵槽へ戻される。このように各マニホールド中の電解液を抜くことができるので、充電後の放置中に電池積層部の電圧の高い側から低い側へマニホールドを経由して漏れ電流が流れることは無い。このため電池積層部の各部位で電着亜鉛量が異なることを防止できる。
【0009】
【実施例】以下図面を参照しながら本発明の一実施例を説明する。図1において1は電解液貯蔵タンク、2は図4R>4のように電極およびセパレータを複数積層して成る電池スタックである。3aは一端が後述の液入口マニホールド4aに連結された入口側配管である。この入口側配管3aの他端はポンプ5を介して電解液貯蔵タンク1の電解液中に導入されている。3bは一端が後述の液出口マニホールド4bに連結された出口側配管である。この出口側配管3bの他端と入口側配管3aは逆止弁6によって3aから3bに液が流れないように連結されている。3cは一端が前記出口側配管3bに連結され、他端が電解液貯蔵タンク1内の液面上部の空気1a中に導入された戻り側配管である。
【0010】前記液入口マニホールド4a、液出口マニホールド4bは電池スタック2の各電極板、セパレータ板の絶縁枠体に図2、図3のようにして設けられている。図2は電解液流路であるマイクロチャンネル11、12が電極の左右端に設けられた場合のセパレータ板(電極板)の構成を示し、図3はマイクロチャンネル11、12が電極の上下端に設けられた場合のセパレータ板(電極板)の構成を示している。図2、図3のどちらの場合もセパレータ板(電極板)の絶縁枠体の上辺の両端部に、正極液入口マニホールド4a,正極液出口マニホールド4b,負極液入口マニホールド4aa,負極液出口マニホールド4bbが設けられている。尚図中13は電極表面、14は電解液流路であるチャンネルを示している。また図中の矢印は電解液の流れる方向を示し、破線は背面のチャンネルを示している。
【0011】上記のように構成された装置において、通常の運転時(ポンプ運転時)は逆止弁6が閉じられて電解液貯蔵タンク1の電解液は、ポンプ5、入口側配管3a、電池スタック2の液入口マニホールド4a、チャンネル14(マイクロチャンネル)、電極とセパレータと絶縁枠体で囲まれた電池反応室、チャンネル14(マイクロチャンネル)、液出口マニホールド4b、出口側配管3b、戻り側配管3cを順次通って電解液貯蔵タンク1に戻される。
【0012】自己放電率試験のため充電終了後放置する場合はポンプ5を停止させる。すると戻り側配管3c内の電解液が電解液貯蔵タンク1内の空気と置換され、同時にその空気は逆止弁6を通って入口側配管3aにも侵入する。この空気の圧力によってスタック2の各マニホールド4a,4b内の電解液は戻り側配管3cを介して電解液貯蔵タンク1へ戻される。このように各マニホールド4a,4b中の電解液を抜くことができるので、充電後の放置中にスタック2の電圧の高い側から低い側へマニホールド4a,4bを経由して漏れ電流が流れることは無い。このためスタック2の各部位で電着亜鉛量が異なることを防止できる。
【0013】
【発明の効果】以上のように本発明によれば液入口、液出口マニホールドを電極板、セパレータ板の上側に配設するとともに、入口側配管と出口側配管との間に逆止弁を設け、且つ戻り側配管の端部を電解液貯蔵槽内の液面より上部に導入したので、放電待機中のマニホールドを通る漏れ電流を防ぐことができ、セル間の電着亜鉛のアンバランスを防いで電池効率の低下を防ぐことができる。また特願平2−213534号の装置に比べて電池背面の配管が不要となって配管の簡素化が図れるとともに、逆止弁の個数も半分で済む。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す概略構成図。
【図2】本発明の一実施例を示す要部構成図。
【図3】本発明の他の実施例を示す要部構成図。
【図4】従来の亜鉛臭素電池の電池本体を示す要部分解斜視図。
【図5】電池の放電待機中に漏れ電流が流れる様子を示す説明図。
【符号の説明】
1…電解液貯蔵タンク、2…電池スタック、3a,3b,3c…配管、4a,4aa,4b,4bb…マニホールド、5…ポンプ、6…逆止弁、11,12…マイクロチャンネル、13…電極表面、14…チャンネル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 矩形平板状のセパレータおよび該セパレータの外周縁部に一体に形成された絶縁枠体と、該枠体の上辺の両端部に各々設けられた液入口、液出口マニホールドと、該各マニホールドおよびセパレータの両端を結ぶ部位の枠体に各々設けられた電解液流路とから成るセパレータ板と、矩形平板状の電極および該電極の外周縁部に一体に形成された絶縁枠体と、該枠体の上辺の両端部であって前記各マニホールドと対応する部位に各々設けられた液入口、液出口マニホールドとから成る電極板とを有し、前記電極板の間に前記セパレータ板を挟んで該電極板を複数積層し圧着一体化して電池積層部を構成し、前記電池積層部の液入口マニホールドは入口側配管およびポンプを介して電解液貯蔵槽の電解液内に導入し、前記電池積層部の液出口マニホールドは出口側配管および戻り側配管を介して前記電解液貯蔵槽内の液面より上方に導入し、前記入口側配管と出口側配管の間に逆止弁を配設したことを特徴とする電解液循環型積層二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平5−166550
【公開日】平成5年(1993)7月2日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−330314
【出願日】平成3年(1991)12月13日
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)