説明

電解液

【課題】含フッ素鎖状カーボネートの特性を維持したまま、さらに耐酸化性およびレート特性を向上させ、安全性も高める電解液を提供する。
【解決手段】式:RaCF2−OCOORb(式中、RaはH、F、Clまたは炭素数1〜3のフッ素原子を有していてもよいアルキル基;Rbは炭素数1〜7のフッ素原子を有していてもよいアルキル基)で示される含フッ素鎖状カーボネート(1)を含む電解質塩溶解用溶媒(I)と電解質塩(II)とを含む電解液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐酸化性に優れる含フッ素鎖状カーボネートと電解質塩とを含む電解液に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池や太陽電池、ラジカル電池、キャパシタなどの電気化学デバイスの電解質塩用溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどのカーボネート類が使用されている。しかし、引火点が低く燃焼性が高いために過充電・過加熱による発火爆発の危険性がある、また、粘性が高く低温での伝導率が低くなるために出力が低下するといった問題がある。
【0003】
また、リチウム二次電池では、高容量化のために電解液の耐電圧の向上が求められている。さらには、キャパシタにおいては、負極・正極ともにハードカーボンであることが、特には3V以上で安定して使用できることが望ましいが、プロピレンカーボネートやジメチルカーボネートなどの従来から用いられている電解質塩用の溶媒では、3V以上では電解液の分解が起こってしまうため、使用できない。
【0004】
その解決のため、鎖状カーボネートをフッ素化した含フッ素鎖状カーボネートを用いることが提案されている。たとえば、R1CH2OCOOCH22(R1およびR2は異なり、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基)で示されるカーボネート(特許文献1)に代表される含フッ素鎖状カーボネートが提案されている。
【0005】
また、特許文献2に、難燃性、低温特性、耐電圧に優れ、また電解質塩の溶解性が高く、炭化水素系溶媒との相溶性にも優れた鎖状カーボネートとして、一般式:
(HCX12)−(CF2n−(CH2m−O−COO−
(式中、X1およびX2は同じかまたは異なり、HまたはF;nは0〜10の整数;mは0〜5の整数;ただし、X1=X2=Hのとき、nは0ではない)で示される含フッ素鎖状カーボネートを用いることが提案されているが、m=0の具体的な例示はない。
【0006】
【特許文献1】特開平6−219992号公報
【特許文献2】国際公開第2006/088009号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の含フッ素鎖状カーボネートの特性を維持したまま、さらに耐酸化性およびレート特性を向上させ、かつ安全性を高める電解液を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一般に含フッ素鎖状カーボネートは耐酸化性に劣るとされていたが、本発明者らは、特許文献1および2に代表される従来の含フッ素鎖状カーボネートは、いずれもカーボネート基−OCOO−と結合するフルオロアルキル基がメチレン基−CH2−で連結されており、このメチレン基をジフルオロメチレン基(−CF2−)に置き換えたところ、意外にも耐酸化性が向上し、かつ低粘度であり、しかも、従来の含フッ素鎖状カーボネートが有する優れた難燃性、低温特性、耐電圧というフルオロアルキル基に基づく効果、さらには、電解質塩の溶解性の向上、炭化水素系溶媒との相溶性の改善という効果も維持できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、式(1):
aCF2−OCOORb (1)
(式中、RaはH、F、Clまたは炭素数1〜3のフッ素原子を有していてもよいアルキル基;Rbは炭素数1〜7のフッ素原子を有していてもよいアルキル基)で示される含フッ素鎖状カーボネート(1)を含む電解質塩溶解用溶媒(I)と電解質塩(II)とを含む電解液に関する。
【0010】
また、本発明の電解液を備える電気化学デバイス、および本発明の電解液を備えるリチウム二次電池にも関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、難燃性、低温特性、耐電圧、電解質塩の溶解性および炭化水素系溶媒との相溶性の向上といった従来の含フッ素鎖状カーボネートの特性を維持したまま、さらに耐酸化性およびレート特性を向上させ、かつ安全性を高める電解液を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の電解液は、特定のフルオロアルキル基を含有する含フッ素鎖状カーボネート(1)を含む電解質塩溶解用溶媒(I)と電解質塩(II)とを含む。
【0013】
本発明で用いる電解質塩溶解用溶媒(I)に含ませる含フッ素鎖状カーボネート(1)は、式(1):
aCF2−OCOORb (1)
(式中、RaはH、F、Clまたは炭素数1〜3のフッ素原子を有していてもよいアルキル基;Rbは炭素数1〜7のフッ素原子を有していてもよいアルキル基)で示される。
【0014】
aとしては、式(1a):
(HCX12)− (1a)
(式中、X1およびX2は同じかまたは異なり、HまたはF)で示される部位を末端に有するフルオロアルキル基であることが、電解質塩の溶解性および炭化水素系溶媒との相溶性の向上の面から好ましい。
【0015】
さらに、RaCF2−のフッ素含有率が40質量%以上、82.7質量%(全ての水素原子がフッ素原子に置換されたもの)以下、さらには40.9〜82.7質量%であることが、低温での粘性低下や引火点の向上が良好な点から好ましい。
【0016】
式(1)で示される含フッ素鎖状カーボネート(1)のRa−CF2−の具体例としては、たとえばFCF2−、HCF2−、ClCF2−、CH3CF2−、HCF2CF2−、H2CFCF2−、CH3CHFCF2−、HCF2CHFCF2−、H2CFCH2CF2−、HCFClCF2CF2−、HCF2CFClCF2−、CH3CH2CF2−、CH3CH2CH2CF2−などを好ましくあげることができる。ただし、−CH3や−CF3という分岐を有していると粘性が高くなりやすいため、その数は少ない(1個)かゼロの方がより好ましい。
【0017】
含フッ素鎖状カーボネート(1)のRbとしては、炭素数1〜7のアルキル基またはフルオロアルキル基である。
【0018】
炭素数1〜7のアルキル基としては、CH3−、CH3CH2−、CH3CH2CH2−、CH3CH2CH2CH2−などの直鎖状のアルキル基;CH3CH(CH3)−、(CH32CH−、CH3CH(CH3)CH2−、CH3CH2CH(CH3)−、(CH32CHCH2−、(C252CHCH2−、(C252CH−などの分岐鎖状のアルキル基があげられ、粘性が低いことから直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0019】
炭素数1〜7のフルオロアルキル基としては、RaCF2−で例示したもののほか、H2CF−、CH3CF2CH2−、HCF2CH2CH2−、CH3CHFCH2−、H2CFCH2CH2−、HCF2CHFCH2−、H2CFCF2CH2−、HCFClCF2CH2−、HCF2CFClCH2−、CH3CHFCH2CHFCH2−、CH3CF2CH2CF2CH2−、HCF2CH2CF2CH2CH2−、HCF2CHFCF2CHFCH2−、H2CFCF2CFHCF2CH2−、H2CFCF2CHFCF2CH2−、H2CFCH2CHFCH2CH2−、HCF2CFClCF2CFClCH2−、HCFClCF2CFClCF2CH2−、
【化1】

などを好ましくあげることができる。ただし、−CH3や−CF3という分岐を有していると粘性が高くなりやすいため、その数は少ない(1個)かゼロの方がより好ましい。
【0020】
aとRbの組合せは、Raがフッ素原子または炭素数1〜3のフッ素原子を有していてもよいアルキル基であってRbが炭素数1〜3のアルキル基である場合が、粘性が低い点から好ましい。
【0021】
含フッ素鎖状カーボネート(1)の好適な具体例を以下にあげるが、これらのみに限定されるものではない。
【0022】
【化2】

【化3】

【化4】

【0023】
合成法としては、式(1b):
aCF2−O+ (Mはアルカリ金属原子)
および
b−O−M+ (Mはアルカリ金属原子)
(式中、RaおよびRbは前記と同じ)で示されるフルオロアルコールをつぎの反応に供する方法が例示できる。
【0024】
(1)塩基性条件下、COCl2、COF2、トリホスゲンなどのホスゲンと反応させる。
(2)塩基触媒の存在、または非存在下に式(1c):
1OCOOR2 (1c)
(式中、R1およびR2は同じかまたは異なり、いずれもアルキル基、好ましくはメチル基またはエチル基)で示される化合物と反応させ、副生成するアルコール(メタノールやエタノール)を留去させながら反応を進める。
(3)塩基触媒の存在、または非存在下に式(1d):
3OCOOR4 (1d)
(式中、R3およびR4は同じかまたは異なりアリール基、好ましくはフェニル基)で示される化合物と反応させる。
(4)塩基性または非塩基性条件下に式(Ie):
ClCOOR5 (1e)
(式中、R5はアルキル基、好ましくはメチル基またはエチル基)で示される化合物と反応させ、副生成するアルコール(メタノールやエタノール)を留去させながら反応を進める。
(5)RaCF2−O−M+またはRb−O−M+を当量または過剰量のホスゲンやトリクロロホスゲンの存在下で反応させて式(1e):
ClCOOCF2a
または
ClCOORb
を得た後、それぞれに別種の含フッ素アルコールを反応させるという2段階で合成する。
【0025】
aとRbを別種の基とする場合は、上記(3)の手法を用いるか、または(3)と(4)の方法を用いて2段階で合成すればよい。
【0026】
bがCF3−末端のフルオロアルキル基である鎖状カーボネートは、上記と同様の反応で合成できるが、特に(3)、(4)または(5)の方法で合成することが望ましい。
【0027】
本発明において、電解質塩溶解用溶媒(I)として、特定の含フッ素鎖状カーボネート(1)に加えて、他の電解質塩溶解用溶媒(2)を1種または2種以上混合して使用してもよい。
【0028】
他の電解質塩溶解用溶媒(2)としては炭化水素系カーボネート溶媒やニトリル系溶媒、ラクトン系溶媒、エステル系溶媒などの非フッ素系溶媒、さらには含フッ素鎖状カーボネート(1)以外の含フッ素系溶媒であってもよい。
【0029】
非フッ素系溶媒としては、たとえばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、蟻酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、メチルピロリドンなどがあげられ、特に誘電率や耐酸化性、電気化学的安定性の向上の点からエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジオキソラン、アセトニトリルが好ましい。
【0030】
また含フッ素鎖状カーボネート(1)以外の含フッ素系溶媒としては、たとえば特開平6−219992号公報、特開平10−149840号公報、特開2001−256983号公報および特開2000−327634号公報に記載されている含フッ素系カーボネート、特に特開平6−219992号公報および特開2001−256983号公報に記載されている含フッ素系カーボネートや特開平6−176768号公報、特開平8−37024号公報、特開平11−307123号公報および特開2000−294281号公報に記載されている含フッ素エーテルが好ましい。
【0031】
また、特に高耐電圧が必要なキャパシタ用途では、他の電解質塩溶解用溶媒(2)として含フッ素環状カーボネートを用いることが望ましい。さらには、式(3):
【化5】

(式中、Rf5はフッ素含有率が10〜76質量%である含フッ素エーテル基、含フッ素アルコキシ基または炭素数2以上の含フッ素アルキル基;X5およびX6は同じかまたは異なり、いずれもH、F、Cl、CF3またはCH3;X7はH、F、Clまたは水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよく、ヘテロ原子を鎖中に含んでいてもよいアルキル基)で示される環状カーボネートが好ましい。
【0032】
併用可能な特に好ましい環状カーボネートの具体例としては、たとえば式(3)において、X5=X6=X7=HでかつRf5が、CF3−、CF3CF2CH2−、HCF2CF2CH2−、CF3CF(CF3)CH2−、CF3CH(CF3)CH2−、CF3CF2CF2CF2CH2−、CF3CH2OCH2−、H(CF2)2CH2OCH2−、CF3OCH2−、CF3CF2CH2OCH2−、FCH2CF2CH2OCH2−である含フッ素環状カーボネートなどがあげられる。
【0033】
ところで含フッ素エーテルは、不燃性を高める効果に優れており有用であるが、非フッ素系電解質塩溶解用溶媒、特にエチレンカーボネートやジエチレンカーボネートなどの炭化水素系カーボネートと相溶性が低く、非フッ素系電解質塩溶解用溶媒に一定量以上混合すると2層に分離することがあった。しかし、特定の含フッ素鎖状カーボネート(1)を含め含フッ素鎖状カーボネートが共存しているとこれら3成分の均一溶液が容易に形成できる。これは含フッ素鎖状カーボネートが含フッ素エーテルと非フッ素系電解質塩溶解用溶媒とを相溶させる相溶化剤として作用しているものと推定され、したがって、含フッ素鎖状カーボネート(1)と電解質塩(II)と非フッ素系電解質塩溶解用溶媒と含フッ素エーテルとを含む電解液では、さらなる不燃性の向上が期待できる。
【0034】
他の電解質塩溶解用溶媒(2)の混合量は、全電解質塩溶解用溶媒中の1質量%以上、好ましくは10質量%以上、特に20質量%以上とすることが電解質塩の溶解性が良好な点から好ましく、上限は、難燃性や低温特性、耐電圧の点から98質量%、好ましくは90質量%、特に80質量%である。
【0035】
特にキャパシタでは、大きな電流密度に対応し得るため、電解液の電解質塩濃度は高いほど望ましい。この観点から、電解質塩の溶解性に優れた炭化水素系溶媒、特に前記の本発明の含フッ素鎖状カーボネート以外の含フッ素カーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、1,3−ジオキソランなどを併用することが好ましい。
【0036】
さらにキャパシタ用で特に使用電圧を高くする場合、本発明の含フッ素鎖状カーボネート自体は耐酸化電圧が高いので、組み合わせる他の溶媒および電解質塩も耐酸化電圧の高いものが好ましい。この観点から、他の溶媒としては特に前記の本発明の含フッ素鎖状カーボネート以外の含フッ素カーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンが好ましく、電解質塩としては後述するもののうち、アニオンがBF4-、PF6-、AsF6-、SbF6-である塩が好ましい。
【0037】
つぎに本発明の電解液の他方の成分である電解質塩(II)について説明する。
【0038】
本発明で使用可能な電解質塩(II)は従来公知の金属塩、液体状の塩(イオン性液体)、無機高分子型の塩、有機高分子型の塩などがあげられる。
【0039】
これらの電解質塩は電解液の使用目的によって特に好適な化合物がある。つぎに用途別に好適な電解質塩を例示するが、例示した具体例に限定されるものではなく、また、他の用途においては、以下の例示の電解質塩を適宜使用することができる。
【0040】
まず、リチウム二次電池の金属塩としては、ホウ素アニオン型、酸素アニオン型、窒素アニオン型、炭素アニオン型、リンアニオン型などの各種有機金属塩を用いることができ、酸素アニオン型、窒素アニオン型を用いることが好ましい。
【0041】
酸素アニオン型としては、具体的には、CF3SO3Li、C49SO3Li、C817SO3Li、CH3SO3Li、C65SO3Li、LiSO324SO3Li、CF3CO2Li、C65CO2Li、Li244などを用いればよく、特に、CF3SO3Li、C49SO3Li、C817SO3Liを用いることが好ましい。
【0042】
窒素アニオン型としては、(CF3SO22NLi(TFSI)、(C25SO22NLi(BETI)、(CF3SO2)(C49SO2)NLi、(CF3SO2)(C817SO2)NLi、(CF3CO)2NLi、(CF3CO)(CF3CO2)NLi、((CF32CHOSO22NLi、(C25CH2OSO22NLiなどを用いればよく、特に、(CF3SO22NLi(TFSI)、(C25SO22NLi(BETI)を用いることが好ましい。
【0043】
無機金属塩としては、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4などを用いることができ、特に、LiPF6、LiBF4を用いることが好ましい。
【0044】
キャパシタ用としては、有機金属塩としては、(Me)x(Et)yN(Meはメチレン、Etはエチレン、xおよびyは同じかまたは異なり0〜4の整数で、かつx+y=4)で示される4級アンモニウム塩、具体的にはEt4NBF4、Et4NClO4、Et4NPF6、Et4NAsF6、Et4NSbF6、Et4NCF3SO3、Et4N(CF3SO22N、Et4NC49SO3、Et3MeBF4、Et3MeClO4、Et3MePF6、Et3MeAsF6、Et3MeSbF6、Et3MeCF3SO3、Et3Me(CF3SO22N、Et3MeC49SO3を用いればよく、特に、Et4NBF4、Et4NPF6、Et4NSbF6、Et4NAsF6を用いることが好ましい。
【0045】
無機金属塩としては、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6、LiClO4、NaPF6、NaBF4、NaAsF6、NaClO4、KPF6、KBF4、KAsF6、KClO4などを用いることができ、特に、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、NaPF6、NaBF4を用いることが好ましい。
【0046】
色素増感太陽電池用としては、R6789NI(R6〜R9は同じかまたは異なり、炭素数1〜3のアルキル基)、LiI、NaI、KI、
【化6】

などが例示できる。
【0047】
電解質塩(II)として液体状の塩を使用するときは、リチウム二次電池やキャパシタ、色素増感太陽電池用として、有機および無機のアニオンとポリアルキルイミダゾリウムカチオン、N−アルキルピリジニウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン、テトラアルキルフォスフォニウムカチオンとの塩があげられ、特に1,3−ジアルキルイミダゾリウム塩が好ましい。
【0048】
ポリアルキルイミダゾリウムカチオンとしては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン(EMI+)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン(BMI+)などの1,3−ジアルキルイミダゾリウムカチオン;1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン(DMPI+)などのトリアルキルイミダゾリウムカチオンなどが好ましい。
【0049】
好ましい無機アニオンとしては、たとえばAlCl4-、BF4-、PF6-、AsF6-、I-などが、有機アニオンとしてはたとえばCH3COO-、CF3COO-、C37COO-、CF3SO3-、C49SO3-、(CF3SO22-、(C25SO22-などがあげられる。
【0050】
具体例としては、EMIAlCl4、EMIBF4、EMIPF6、EMIAsF6、EMII、EMICH3COO、EMICF3COO、EMIC37COO、EMICF3SO3、EMIC49SO3、EMI(CF3SO22N、EMI(C25SO22N、BMIAlCl4、BMIBF4、BMIPF6、BMIAsF6、BMII、BMICH3COO、BMICF3COO、BMIC37COO、BMICF3SO3、BMIC49SO3、BMI(CF3SO22N、BMI(C25SO22N、DMPIAlCl4、DMPIBF4、DMPIPF6、DMPIAsF6、DMPII、DMPICH3COO、DMPICF3COO、DMPIC37COO、DMPICF3SO3、DMPIC49SO3、DMPI(CF3SO22N、DMPI(C25SO22Nなどが例示できる。
【0051】
特に色素増感太陽電池用としては、EMII、BMII、DMPIIなどのヨウ化物が好適である。
【0052】
電解質塩(II)の配合量は要求される電流密度、用途、電解質塩の種類などによって異なるが、特定のフルオロアルキル基含有鎖状カーボネート(1)100質量部に対し0.1質量部以上、さらには1質量部以上、特に5質量部以上で、200質量部以下、さらには100質量部以下、特に50質量部以下とすることが好ましい。
【0053】
本発明の電解液は、電解質塩(II)をフルオロアルキル基含有鎖状カーボネート(1)、またはカーボネート(1)を含む電解質塩溶解用溶媒(I)に溶解させることで調製される。
【0054】
また、本発明の電解液は、本発明の電解液に使用する溶媒に溶解または膨潤する高分子材料と組み合わせてゲル状(可塑化された)のゲル電解液としてもよい。
【0055】
かかる高分子材料としては、従来公知のポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシド、それらの変性体(特開平8−222270号公報、特開2002−100405号公報);ポリアクリレート系ポリマー、ポリアクリロニトリルや、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素樹脂(特表平4−506726号公報、特表平8−507407号公報、特開平10−294131号公報);それらフッ素樹脂と炭化水素系樹脂との複合体(特開平11−35765号公報、特開平11−86630号公報)などがあげられる。特に、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体を用いることが望ましい。
【0056】
そのほか、特開2006−114401号公報に記載されているイオン伝導性化合物も使用できる。
【0057】
このイオン伝導性化合物は、式(4):
A−(D)−B (4)
[式中、Dは式(5):
−(D1)n−(FAE)m−(AE)p−(Y)q− (5)
(式中、D1は、式(5a):
【化7】

(式中、Rfは架橋性官能基を有していてもよいフルオロエーテル基;R10はRfと主鎖を結合する基または結合手)で示される側鎖にフルオロエーテル基を有するエーテル単位;
FAEは、式(5b):
【化8】

(式中、Rfaは水素原子、架橋性官能基を有していてもよい含フッ素アルキル基;R11はRfaと主鎖を結合する基または結合手)で示される側鎖に含フッ素アルキル基を有するエーテル単位;
AEは、式(5c):
【化9】

(式中、R13は水素原子、架橋性官能基を有していてもよいアルキル基、架橋性官能基を有していてもよい脂肪族環式炭化水素基または架橋性官能基を有していてもよい芳香族炭化水素基;R12はR13と主鎖を結合する基または結合手)で示されるエーテル単位;
Yは、式(5d−1)〜(5d−3):
【化10】

の少なくとも1種を含む単位;
nは0〜200の整数;mは0〜200の整数;pは0〜10000の整数;qは1〜100の整数;ただしn+mは0ではなく、D1、FAE、AEおよびYの結合順序は特定されない);
AおよびBは同じかまたは異なり、水素原子、フッ素原子および/または架橋性官能基を含んでいてもよいアルキル基、フッ素原子および/または架橋性官能基を含んでいてもよいフェニル基、−COOH基、−OR14(R14は水素原子またはフッ素原子および/または架橋性官能基を含んでいてもよいアルキル基)、エステル基またはカーボネート基(ただし、Dの末端が酸素原子の場合は−COOH基、−OR14、エステル基およびカーボネート基ではない)]で表される側鎖に含フッ素基を有する非晶性含フッ素ポリエーテル化合物である。
【0058】
本発明において必要に応じて界面活性剤を配合することが出来る。界面活性剤の配合量は、充放電サイクル特性を低下させずに電解液の表面張力を低下させるという点から、溶媒(I)全体に対して5質量%以下であり、さらには3質量%以下、特に0.05〜2質量%が好ましい。
【0059】
界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれでもよいが、含フッ素界面活性剤が、サイクル特性、レート特性が良好な点から好ましい。
【0060】
本発明の電解液には必要に応じて、他の添加剤を配合してもよい。他の添加剤としては、たとえば金属酸化物、ガラスなどがあげられる。
【0061】
なお、本発明の電解液は低温(例えば0℃や−20℃)で凍ったり、電解質塩が析出しないことが好ましい。具体的には、0℃での粘度が100mPa・秒以下であることが好ましく、30mPa・秒以下であることがより好ましく、15mPa・秒以下であることが特に好ましい。さらにまた、具体的には、−20℃での粘度が100mPa・秒以下であることが好ましく、40mPa・秒以下であることがより好ましく、15mPa・秒以下であることが特に好ましい。
【0062】
本発明の電解液は、難燃性、低温特性、耐電圧、電解質塩の溶解性および炭化水素系溶媒との相溶性を同時に向上させることができるうえ、さらに耐酸化性を改善してガス発生を低減化し、エネルギー効率を向上させうることができるので、電気化学デバイスの電解液として好適である。
【0063】
すなわち本発明は、上記の電解液を備えた電気化学デバイスにも関する。電気化学デバイスとしては、リチウム二次電池、キャパシタ(電解二重層キャパシタ)、ラジカル電池、太陽電池(特に色素増感型太陽電池)、燃料電池、各種電気化学センサー、エレクトロクロミック素子などがあげられ、特にリチウム二次電池、電解二重層キャパシタに好適である。耐電圧が3.0V以上で安定なことが高容量の電気二重層キャパシタには求められるが、本発明の電気二重層キャパシタは充分にその要求を満たすものである。
【0064】
本発明の電解液は、容量やレート特性を向上させる点から、リチウム二次電池用として好適であり、正極、負極、セパレータと本発明の電解液を備えるリチウム二次電池を提供できる。
【0065】
正極に使用する正極活物質としては特に制限されないが、コバルト系複合酸化物、ニッケル系複合酸化物、マンガン系複合酸化物、鉄系複合酸化物およびバナジウム系複合酸化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を用いるとき、エネルギー密度の高く、高出力のリチウム二次電池となることから好ましい。
【0066】
コバルト系複合酸化物としては、LiCoO2が例示され、ニッケル系複合酸化物としては、LiNiO2が例示され、マンガン系複合酸化物としては、LiMnO2が例示される。また、LiCoxNi1-x2(0<x<1)やLiCoxMn1-x2(0<x<1)、LiNixMn1-x2(0<x<1)、LiNixMn2-x4(0<x<2)、LiNi1-x-yCoxMny2(0<x<1、0<y<1、0<x+y<1)で表されるCoNi、CoMn、NiMn、NiCoMnの複合酸化物でも良い。これらのリチウム含有複合酸化物は、Co、Ni、Mnなどの金属元素の一部が、Mg、Al、Zr、Ti、Crなどの1種以上の金属元素で置換されたものであってもよい。
【0067】
また、鉄系複合酸化物としては、たとえばLiFeO2、LiFePO4が例示され、バナジウム系複合酸化物としては、たとえばV25が例示される。
【0068】
正極活物質として、上記の複合酸化物のなかでも、容量を高くすることができる点から、ニッケル系複合酸化物またはコバルト系複合酸化物が好ましい。特に小型リチウム二次電池では、コバルト系複合酸化物を用いることはエネルギー密度が高い点と安全性の面から望ましい。本発明において特にハイブリッド自動車用や分散電源用の大型リチウム二次電池に使用される場合は、高出力が要求されるため、正極活物質の粒子は二次粒子が主体となり、その二次粒子の平均粒子径が40μm以下で平均一次粒子径1μm以下の微粒子を0.5〜7.0体積%含有することが好ましい。
【0069】
平均一次粒子径が1μm以下の微粒子を含有させることにより電解液との接触面積が大きくなり電極と電解液の間でのリチウムイオンの拡散をより早くすることができ出力性能を向上させることができる。
【0070】
本発明で負極に使用する負極活物質は炭素材料があげられ、リチウムイオンを挿入可能な金属酸化物や金属窒化物などもあげられる。炭素材料としては天然黒鉛、人造黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、メソカーボンマイクロビーズ、炭素ファイバー、活性炭、ピッチ被覆黒鉛などがあげられ、リチウムイオンを挿入可能な金属酸化物としては、スズやケイ素、チタンを含む金属化合物、たとえば酸化スズ、酸化ケイ素、チタン酸リチウムなどがあげられ、金属窒化物としては、Li2.6Co0.4Nなどがあげられる。
【0071】
正極活物質と負極活物質との組合せとしては、正極活物質がコバルト酸リチウムで負極活物質が黒鉛の組合せ、正極活物質がニッケル系複合酸化物で負極活物質が黒鉛の組合せが容量が増大する点から好ましい。
【0072】
本発明に使用できるセパレータは特に制限はなく、微孔性ポリエチレンフィルム、微孔性ポリプロピレンフィルム、微孔性エチレン−プロピレンコポリマーフィルム、微孔性ポリプロピレン/ポリエチレン2層フィルム、微孔性ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン3層フィルムなどがあげられる。また、Liデントライトによって起こる短絡などを防止して安全性の向上を図るために作られたセパレータ上にアラミド樹脂を塗布したフィルム、またはポリアミドイミドおよびアルミナフィラーを含む樹脂をセパレータ上に塗布したフィルムなどもあげられる。
【0073】
また、本発明の電解液は、不燃性であることから、上記のハイブリッド自動車用や分散電源用の大型リチウム二次電池用の電解液として特に有用であるが、そのほか小型のリチウムイオン電池、アルミニウム電解コンデンサ用電解液、電気二重層キャパシタ用電解液、特に耐電圧が3.5V以上である電気二重層キャパシタなどの非水電解液としても有用である。
【0074】
そのほか、本発明の電解液は、たとえば電解コンデンサ、エレクトロルミネッセンスなどの固体表示素子、電流センサーなどのセンサーなどに使用することができる。そのほか、本発明の電解液は、帯電防止用コーティング材のイオン伝導体などとしても使用できる。
【実施例】
【0075】
つぎに本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明はかかる例のみに限定されるものではない。
【0076】
なお、本発明で採用した測定法は以下のとおりである。
NMR:BRUKER社製のAC−300を使用。
【0077】
19F−NMR:
測定条件:282MHz(トリクロロフルオロメタン=0ppm)
1H−NMR:
測定条件:300MHz(テトラメチルシラン=0ppm)
IR:
Perkin Elmer社製フーリエ変換赤外分光光度計1760Xで室温にて測定する。
【0078】
合成例1
撹拌装置を備えた200mlのガラス製3口フラスコの上部にドライアイス・アセトン還流管を取り付け、充分に窒素置換を行なったのち、フラスコをドライアイス・メタノール浴に浸した。そこにジグライム150mlとスプレードライされたフッ化カリウム58gを入れ、撹拌しながらCOF2ガスを66g導入した。導入後、10分間撹拌した後、Cl−COOC25を108g滴下し、撹拌下に徐々に室温にまで戻した。室温で1時間撹拌した後、蒸留して目的生成物を得た(収率62%)。
【0079】
この生成物を19F−NMR、1H−NMR分析により分析して、FCF2OCOOC25(A1)であることを確認した。
19F−NMR:(neat):−82〜−87ppm(3F)
1H−NMR:(neat):4.1〜4.5ppm(2H)、1.6〜1.9ppm(3H)
得られたFCF2OCOOC25(A1)に電解質塩としてLiPF6を1モル/リットルの濃度になるように配合し、電解液を調製した。この電解液について、耐電圧を調べたところ、耐電圧は6.4Vであった。
【0080】
(耐電圧の測定法)
3電極式電圧測定セル(作用極、対極:白金(なお、対極と作用極の面積比を5:1とする)、参照極:Ag。宝泉(株)製のHSセル)に電解液を入れ、ポテンシオスタットで3mV/secで電位走引し、分解電流が0.1mA以上流れなかった範囲を耐電圧(V)とする。
【0081】
また、FCF2OCOOC25(A1)にLiPF6、LiN(SO2252および4フッ化ホウ酸4エチルアンモニウム[(C254NBF4]をそれぞれ室温で1モル/リットルになるように加え、充分に撹拌し、目視で溶解性を観察したところ、いずれも均一に溶解した。
【0082】
合成例2
撹拌装置を備えた200mlのガラス製3口フラスコの上部にドライアイス・アセトン還流管を取り付け、充分に窒素置換を行なったのち、フラスコをドライアイス・メタノール浴に浸した。そこにジグライム150mlとスプレードライされたフッ化カリウム58gを入れ、撹拌しながらC25COClを39g導入した。導入後、2時間撹拌した後、Cl−COOC25を54g滴下し、撹拌下に徐々に室温にまで戻した。室温で2時間撹拌した後、蒸留して目的生成物を得た(収率54%)。
【0083】
この生成物を19F−NMR、1H−NMR分析により分析して、CH3CF2OCOOC25(A2)であることを確認した。
19F−NMR:(neat):−124〜−128ppm(2F)
1H−NMR:(neat):4.1〜4.5ppm(2H)、1.6〜2.2ppm(3H)、1.1〜1.4ppm(3H)
得られたCH3CF2OCOOC25(A2)に電解質塩としてLiPF6を1モル/リットルの濃度になるように配合し、電解液を調製した。この電解液について、合成例1と同様にして耐電圧を調べたところ、耐電圧は6.3Vであった。
【0084】
また、CH3CF2OCOOC25(A2)にLiPF6、LiN(SO2252および4フッ化ホウ酸4エチルアンモニウム[(C254NBF4]をそれぞれ室温で1モル/リットルになるように加え、充分に撹拌し、目視で溶解性を観察したところ、いずれも均一に溶解した。
【0085】
実施例1
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)および合成例1で得たFCF2OCOOC25(A1)を30/50/20(体積比)で混合して得られた溶媒に電解質塩としてLiPF6を1モル/リットルの濃度になるように配合し、電解液を調製した。この電解液について、充放電試験(放電容量、レート特性、過充電特性)を調べた。結果を表1に示す。
【0086】
実施例2
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、合成例1で得たFCF2OCOOC25(A1)およびHCF2CF2CH2OCF2CF2Hを20/40/10/30(体積比)で混合して得られた溶媒に電解質塩としてLiPF6を1モル/リットルの濃度になるように配合し、電解液を調製した。この電解液について、充放電試験(放電容量、レート特性、過充電特性)を調べた。結果を表1に示す。
【0087】
実施例3
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)および合成例2で得たCH3CF2OCOOC25(A2)を30/50/20(体積比)で混合して得られた溶媒に電解質塩としてLiPF6を1モル/リットルの濃度になるように配合し、電解液を調製した。この電解液について、充放電試験(放電容量、レート特性、過充電特性)を調べた。結果を表1に示す。
【0088】
実施例4
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、合成例2で得たCH3CF2OCOOC25(A2)およびHCF2CF2CH2OCF2CF2Hを20/40/10/30(体積比)で混合して得られた溶媒に電解質塩としてLiPF6を1モル/リットルの濃度になるように配合し、電解液を調製した。この電解液について、充放電試験(放電容量、レート特性、過充電特性)を調べた。結果を表1に示す。
【0089】
比較例1
エチレンカーボネート(EC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)を30/70(体積比)で混合して得られた溶媒に電解質塩としてLiPF6を1モル/リットルの濃度になるように配合し、電解液を調製した。この電解液について、充放電試験(放電容量、レート特性、過充電特性)を調べた。結果を表1に示す。
【0090】
[充放電試験]
実際にコイン電池を作成し電池特性を評価した。
【0091】
(正極の作製)
LiCoO2とカーボンブラックとポリフッ化ビニリデン(呉羽化学(株)製。商品名KF−1000)を90/3/7(質量%比)で混合した正極活物質をN−メチル−2−ピロリドンに分散してスラリー状としたものを正極集電体(厚さ15μmのアルミニウム箔)上に均一に塗布し、乾燥後、直径13.0mmの円盤に打ち抜いて正極を作製した。
【0092】
(負極の作製)
人造黒鉛粉末(日立化成(株)製。商品名MAG−D)に、蒸留水で分散させたスチレン−ブタジエンゴムを固形分で6質量%となるように加え、ディスパーザーで混合してスラリー状としたものを負極集電体(厚さ10μmの銅箔)上に均一に塗布し、乾燥後、直径13.0mmの円盤に打ち抜いて負極を作製した。
【0093】
(コイン型リチウム二次電池の作製)
正極集電体を兼ねるステンレススチール製の缶体に上記正極を収容し、その上に直径17mmのポリエチレン製のセパレータ(セルガード(株)製。商品名セルガード3501)を重ねさらに上記負極を載置し、電解液を含浸させる。この缶体と負極集電体を兼ねる封口板とを絶縁用ガスケットを介してかしめて密封し、コイン型リチウム二次電池を作製した。
【0094】
(放電容量)
充放電電流をCで表示した場合、3.5mAを1Cとして下記の充放電測定条件で測定を行う。評価は、比較例1の放電容量の結果を100とした指数で行う。
充放電条件
充電:0.5C、4.2Vにて充電電流が1/10Cになるまでを保持(CC・CV充電)
放電:1C 2.5Vcut(CC放電)
【0095】
(レート特性)
充電については上記の条件で0.5C、4.2Vで充電電流が1/10Cになるまで充電し0.3C相当の電流で2.5Vまで放電し、放電容量を求めた。引き続き、0.5C、4.2Vで充電電流が1/10Cになるまで充電し、5C相当の電流で2.5Vになるまで放電し、放電容量を求めた。この5Cでの放電容量と、上記の0.3Cでの放電容量との比から、レート特性を評価した。レート特性は下記の計算式で求められた値をレート特性として記載する。
レート特性(%)=5C放電容量(mAh)/0.3C放電容量(mAh)×100
【0096】
(過充電特性)
実施例および比較例の電解液を用いて円筒型電池をつぎの要領で作製した。
【0097】
LiCoO2とカーボンブラックとポリフッ化ビニリデン(呉羽化学(株)製。商品名KF−1000)を90/3/7(質量%比)で混合した正極活物質をN−メチル−2−ピロリドンに分散してスラリー状としたものを正極集電体(厚さ15μmのアルミニウム箔)上に均一に塗布し、乾燥して正極合剤層を形成し、その後、ローラプレス機により圧縮成形した後、切断し、リード体を溶接して、帯状の正極を作製した。
【0098】
別途、人造黒鉛粉末(日立化成(株)製。商品名MAG−D)に、蒸留水で分散させたスチレン−ブタジエンゴムを固形分で6質量%となるように加え、ディスパーザーで混合してスラリー状としたものを負極集電体(厚さ10μmの銅箔)上に均一に塗布し、乾燥し、負極合剤層を形成し、その後、ローラプレス機により圧縮成形し、切断した後、乾燥し、リード体を溶接して、帯状の負極を作製した。
【0099】
ついで、帯状の正極を厚さ20μmの微孔性ポリエチレンフィルム(セパレータ)を介して帯状の負極に重ね、渦巻状に巻回して渦巻状巻回構造の積層電極体とした。その際、正極集電材の粗面側が外周側になるようにして巻回した。その後、この電極体を外径18mmの有底円筒状の電池ケース内に充填し、正極および負極のリード体の溶接を行った。
【0100】
ついで、実施例および比較例で調製した電解液を電池ケース内に注入し、電解液がセパレータなどに充分に浸透した後、封口し、予備充電、エージングを行い、筒形のリチウム二次電池を作製した。
【0101】
この円筒型リチウム二次電池について、それぞれ1CmA相当の電流値で3.0Vまで放電し12Vを上限電圧として1CmA相当の電流値での過充電を行い、発火・破裂の有無を調べる。
【0102】
評価は、いずれの試験においても、発火(破裂)がない場合を○、発火(破裂)した場合を×とする。
【0103】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
aCF2−OCOORb (1)
(式中、RaはH、F、Clまたは炭素数1〜3のフッ素原子を有していてもよいアルキル基;Rbは炭素数1〜7のフッ素原子を有していてもよいアルキル基)で示される含フッ素鎖状カーボネート(1)を含む電解質塩溶解用溶媒(I)と電解質塩(II)とを含む電解液。
【請求項2】
前記含フッ素鎖状カーボネート(1)において、Raが、式(1a):
(HCX12)− (1a)
(式中、X1およびX2は同じかまたは異なり、HまたはF)で示される部位を末端に有するフルオロアルキル基である請求項1記載の電解液。
【請求項3】
前記含フッ素鎖状カーボネート(1)において、RaCF2−が、フッ素含有率が40〜82.7質量%のフルオロアルキル基である請求項1または2記載の電解液。
【請求項4】
電解質塩溶解用溶媒(I)が、環状カーボネートおよび非フッ素鎖状カーボネートよりなる群れから選ばれる少なくとも1種のカーボネートを含む請求項1〜3のいずれかに記載の電解液。
【請求項5】
電解質塩溶解用溶媒(I)が、含フッ素エーテルを含む請求項1〜4のいずれかに記載の電解液。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の電解液を備える電気化学デバイス。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の電解液を備えるリチウム二次電池。

【公開番号】特開2010−97802(P2010−97802A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267203(P2008−267203)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】