説明

電解用回転治具、電解表面処理方法、及び電解表面処理装置

【課題】 連続的に効率よく均一なめっき可能なめっき治具等の電解用治具を提供すること。
【解決手段】 電解用回転治具10aは、2次元的に区画形成された被処理製品を収容する収容部を複数備えた導電材料から構成される通電フレーム1aと、前記通電フレームの両側を夫々覆う平面を備えた多孔質の絶縁材料からなる蓋部材2aと、前記蓋部材の平面に直交するように設けられた導電材料からなる回転軸5とを備えた治具である。前記回転軸5と前記通電フレーム2aとは電気接続されるとともに、前記治具10aは前記回転軸5の周りに回転可能に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気めっき、陽極酸化、及び電着塗装等を施すために被処理品を保持しながら通電するための電解用回転治具に関するものであり、又、それを用いた電解表面処理方法、及び電解表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被処理品に、めっき、陽極酸化、もしくは電着塗装などの電解表面処理を施すにあたり、小物類は籠やバレルに入れて回転させながら電解することで達成できる。
【0003】
しかし、回転させることによって、傷などが発生するものなどは、治具に吊るして電解することが必要となる。
【0004】
この場合、被処理品と治具との電気接点部は処理が不完全となるので、電解表面処理の途中で、中断し、接点をずらす、いわゆる架け替え操作が必要となる場合が多い。そのために、連続的な自動処理ができない場合が頻発して歩留まりが悪くなるととともに、品質の揃った製品が得られない。
【0005】
ところで、近年、永久磁石として、Nd−Fe−B系焼結型の永久磁石がある。この種の永久磁石は、保磁力が極めて大きいので、各種モータの構成部品として用いられている。しかしながら、この種の永久磁石は、希土類金属元素Ndを用いているために、さびやすく、特性が劣化しやすいので、腐食に強いめっき膜で被覆することが行われている。しかしながら、前述したように、通常の固定用治具を用いた場合では、固定用治具との電気接点部分にめっき膜が形成されず、この部分からさびてしまうという欠点が生じる。また、接点部以外の部分とは電界強度が異なるために表面に均一なめっき膜が得られない。
【0006】
このような欠点を補うために、特許文献1には、被めっき品を回転させて保持するためのめっき治具が提案されている。
【0007】
図9は特許文献1に開示されためっき治具100の概要を示す斜視図である。図10は図9の電気めっき治具100のトレイ50の斜視図である。図11(a)は図10のトレイ50の部分断面図であり、図11(b)は図10(a)の一点鎖線で囲った領域の拡大図である。ここでは、セル30内にリング状の被めっき品(ワーク)70を配置した状態である。図12は、トレイ50の回動と、セル30内のワーク70の動きを示す図である。
【0008】
図9を参照すると、この従来例に示されるめっき治具100は、電気めっき用の治具で、左右のフレーム53a、53bの間に、回動自在な支持体としての2つのトレイ50a、50bを備えている。トレイ50a、50bには、それぞれのワーク70を配置する部屋として複数のセル30が形成されている。このセル30は、トレイ50a、50bに形成された貫通開口の内壁面と、横断線としての陰極線33a、33bとにより規定される。なお、各セル30の周囲には、めっき液誘導部としての堀込部37が設けられている。
【0009】
図10を参照すると、トレイ50には、一列7個のセル30が貫通した開口部として二列に形成されている。セル30は、トレイ50がどの回動位置に変位した状態においても、一の安定位置と他の一の安定位置とを結ぶ線が鉛直方向と重なることがない形状としている。
【0010】
また、セル30の両端部近傍には、開口を狭めるように遮蔽壁39が形成されている。この遮蔽壁39は、セル30の内壁面と、陰極線33とにより画される空間に、ワーク70を配置してめっきを行う場合に、ワーク70を部分的に遮蔽する作用を有する。
【0011】
堀込部37は、開口縁部を基板51a、51b表面より低く形成した段部により構成され、めっき液の流入促進作用を奏する。そして、堀込部37の深さや面積を調整することによって、めっき液流入量を部屋毎に制御できるという作用も持つ。
【0012】
トレイ50の両面には、同じ列のセル30のすべてに渡設した状態で、片面2本ずつのステンレス、鉄、銅、チタン、カーボンなどの導電性材料で構成され、陰極線33が配設されている。つまり、各セル30の開口部には、片側につき1本(両側で合計2本)の陰極線33が横断している。陰極線33は、両端部において同様に導電性の材料で形成された固定具31a、31bまたは固定具32a、32bに接合している。
【0013】
陰極線33は、各セル30の開口部両端、すなわち開口部の天部および底部(但し、これらはトレイ10が反転すると入れ替わる)において露出し、セル30内に配置されるワーク70に接触し、通電させる作用を有する。また、めっき浴中でトレイ50を回動させると、ワーク70がセル30内で浮き上がり、下側の陰極線33から離れることがあるが、両面に陰極線33を配備することによって、浮き上がった状態でも上側の陰極線33に接触してワーク70の通電状態を確保できると述べられている。なお、陰極線33は並行な配置に限らず、格子状に配備してもよい。また、陰極線33に、ワーク70の落下を防止する落下防止手段としての機能を持たせることもできる。
【0014】
固定具31a、31bは、回動軸として作用するシャフト34を備え、このシャフト34は、図示しない係合手段により第2歯車23または第3歯車25と係合できるようになっている。シャフト34は導電性を持つ固定具31a、31bと一体に形成され、第2歯車23または第3歯車25の中心部を介して図示しない配線と電気的に接続可能になっている。また、固定具32a、32bは、シャフト34を有しない以外は固定具31a、31bと略同様の構成である。
【0015】
図11に示すように、トレイ50のセル30付近の断面構造は、重ね合わせた基板51a、51bの外側両面から堀込部37、37が形成され、4箇所の遮蔽壁39、39、39、39がセル30の開口に向けて突設され、さらに基板51a、51bに埋設された一対の陰極線33a、33bが配備されている。
【0016】
セル30内のワーク70は、めっき中にセル30を構成する非導電性の基板51a、51bにより遮蔽される。特に、ワーク70の外周面70aがセル30の壁面に当接もしくは近接した状態になると、非導電性のセル30の壁により外周面70aにおける当接部位もしくは近接部位には被膜が形成されにくくなる。
【0017】
図11に示すように、十分な遮蔽効果を得るために、この従来例ではリング状をしたワーク70の幅L1よりも、非導電性の基板51a、51bの合計厚さLを大きくしている(L1<L)。
【0018】
また、陰極線33a、33bをしっかりと固定し、撓みや歪み、ずれ等を防止するために、陰極線33a、33bは、基板51a、51bに食い込むように配設されている。
【0019】
なお、図11(a)に示すように、ワーク70が遮蔽壁39の頂部に当接して移動できなくなる事態(引っ掛かり)を防止するため、陰極線33a、33bは、遮蔽壁39のセル側の壁面よりも僅かに内側に突出するように配備されている。すなわち、遮蔽壁39の内側の壁面間の距離L3は、陰極線33a、33b間の距離L2よりも長くなるように構成されている。また、この従来例では、二本の陰極線33a、33b間の距離L2とワーク70の幅L1との差を1mm程度に設定している。このL2とL1の差が大きくなり過ぎると、トレイ10の動作とは無関係にワーク70がセル30内で反転したり、縦横が入れ替わったりして、一方向の回転を制御できなくなることがあるので、ワーク70の形状に応じて上下の陰極線33a、33b間の距離L2を調整することが好ましい。また、遮蔽壁39の内側の壁面間の距離L3とワーク70の幅L1との関係についても、基板11a、11bの接合部に段差がある場合、そこでワーク70が引っ掛からないようにするため、L3がL1の2倍を超えないようにしている。
【0020】
また、遮蔽壁39の高さhは、遮蔽作用を奏する上で充分な高さを確保することが好ましい。具体的には図11(b)に示すように、ワーク70がリング状である場合、遮蔽壁39の高さh(セル30の内壁面から立ち上がる壁の高さ)を、ワーク70周部の厚みL4よりも大きくする。
【0021】
まず、トレイ50が図12(a)に示すA位置からB位置まで、図中細い矢印で示す方向に回転する場合、A位置では、セル30内のワーク70は、最も端部よりの位置、つまり、セル30の内壁面に当接した位置にあり、トレイ10がB位置まで回転するに従って、セル30内のワーク70は、太い矢印で示す方向に向け、少しずつ基端側にセル30内を、陰極線33に摺接しながら移動していく。
【0022】
トレイ50がC位置まで回転すると、セル30内のワーク70は完全に基端側よりの位置、つまりセル30における先の壁面とは対向する壁面に当接した状態になる。
【0023】
トレイ50が、図12(b)に示すD位置になるとワーク70は反転し、セル30の反対側の陰極線33に当接した状態になる。D位置から、さらにトレイ50が細い矢印方向に回転しE位置までくると、反転したワーク70は再びトレイ50の端部側へ向けセル30内を太い矢印で示す方向に移動していく。トレイ50がさらに回転してF位置までくると、ワーク70はセル30の内壁に当接した状態となり、やがて再び反転して図12(a)のA位置の状態まで戻る。このように、トレイ50の回転により、ワーク70はセル30内を移動するとともに、トレイ30が反転するとワーク70も反転する。なお図12(a)、(b)における太い矢印は、セル30内におけるワーク70の動きの方向を示すものであるが、この動きは重力によって与えられる。
【0024】
しかしながら、特許文献1によるめっき治具100は、セル30を備えた基板51a,51b平面を長さ方向に沿う中心軸の回りに回転する構成であるので、そのめっき液から受ける抵抗が大きく、均等に回転させるには大きな動力を必要とした。また、セル10と呼ばれる枠の内部で回転させる構成であるので、ワーク70が丸い形状の場合は、問題ないが、ワーク70に角があるような角形のものは、その角が回転の際に欠けやすかったり、傷ができ安かったりするという欠点を有した。
【0025】
また、特許文献1に示したセルを横断する陰極線33は、回転方向の表裏でワーク70に接触する構成であるために、基板が最上部もしくは最下部に位置した際には、その接点が両側から離れてしまい、実質的に水平に近い位置しかめっきされず、効率のよいものではなかった。
【0026】
また、回転の外周寄りに配置された品物と、内側に配置された品物との対極との間の距離が異なり、したがって、個々の品物のめっき厚にばらつきが生じるとともに、一つの品物においても、外周寄りの部分が内側の部分よりも厚くめっきされていまい、均一なものが得られないという欠点を有した。
【0027】
【特許文献1】特開2005−48282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
そこで、本発明の一技術的課題は、連続的に効率よく均一な電解表面処理が可能な電解用回転治具を提供することにある。
【0029】
また、本発明のもう一つの技術的課題は、被処理品にかけや傷の発生がない電解用回転治具を提供することにある。
【0030】
また、本発明のさらに、もう一つの技術的課題は、連続的に接点を移動することが可能であり、被表面処理品に治具跡を残すことがない電解用回転治具を提供することにある。
【0031】
さらに、本発明の別の技術的課題は、前述した電解用回転治具を使用した電解表面処理方法と電解表面処理装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明によれば、2次元的に区画形成された被処理品を収容する収容部を複数備えた導電材料から構成される通電フレームと、前記通電フレームの両側を夫々覆う平面を備えた落下防止部材と、前記落下防止部材の平面に直交するように設けられた導電材料からなる回転軸とを備えた治具であって、前記回転軸と前記通電フレームとは電気接続されるとともに、前記治具は前記回転軸の回りに回転可能に設けられていることを特徴とする電解用回転治具が得られる。
【0033】
また、本発明によれば、前記電解用回転治具において、前記通電フレームは、格子状、互いに外接した円もしくは多角形状、及び同心円状で周方向に区画された形状の内のいずれかの一つの形状に配置されていることを特徴とする電解用回転治具が得られる。
【0034】
また、本発明によれば、前記いずれか一つの電解用回転治具において、前記落下防止部材は、回転中心を備えた円形,矩形,または多角形の板形状を備えていることを特徴とする電解用回転治具が得られる。
【0035】
また、本発明によれば、前記いずれか一つの電解用回転治具において、前記落下防止部材は、多孔質又はメッシュ形状の蓋部材からなり、前記蓋部材に設けられた孔及びメッシュ形状の間隔は、前記収容部に収容される製品よりも小さな寸法を備えていることを特徴とする電解用回転治具が得られる。
【0036】
また、本発明によれば、前記いずれか一つの電解用回転治具において、前記蓋部材は合成樹脂製又は金属メッシュ製であることを特徴とする電解用回転治具が得られる。
【0037】
また、本発明によれば、前記いずれか一つの電解用回転治具において、前記落下防止部材は、互いに離して配置された線材群もしくは前記収容部の内側に向かって突出した突起群を備え、前記線材群の間隔は、前記収容部に収容される製品よりも小さな寸法を備え、前記突起群は収容される製品の外形よりも、内側に延在していることを特徴とする電解用回転治具が得られる。
【0038】
また、本発明によれば、前記電解用回転治具において、前記線材及び突起群は導体又は絶縁材からなることを特徴とする電解用回転治具が得られる。
【0039】
また、本発明によれば、前記いずれか一つの電解用回転治具を用いた電解表面処理方法であって、前記収容部に製品を収容し、電解液中で、前記回転軸を水平にして、前記電解液中で、前記治具を前記回転軸の回りに回転させるとともに、当該回転軸を介して前記通電フレームに通電して、前記被処理品と、前記フレームとの接触点を移動させながら前記被処理品に電解表面処理を施すことを特徴とする電解表面処理方法が得られる。
【0040】
また、本発明によれば、前記電解表面処理方法において、前記落下防止部材が導体からなる場合には、前記落下防止部材にも通電して前記被処理品に電解表面処理を施すことを特徴とする電解表面処理方法が得られる。
【0041】
さらに、本発明によれば、電解液を収容する容器と、請求項1乃至7の内のいずれか一つに記載された電解用回転治具と、前記電解用回転治具の両側の落下防止部材の内の少なくとも一方に対して間隔をおいて配置された対極を備え、前記電解用回転治具は前記回転軸の周りに回転可能で且つ前記回転軸を介して前記通電フレームに通電可能に設けられるとともに、前記回転軸が前記対極に対して垂直となり、且つ前記通電フレーム面が前記対極に対して略平行になるようにように配置されていることを特徴とする電解表面処理装置が得られる。
【発明の効果】
【0042】
本発明においては、連続的に効率よく均一な電解表面処理が可能な電解用回転治具を提供することができる。
【0043】
また、本発明においては、被表面処理品にかけや傷の発生がない電解用回転治具を提供することができる。
【0044】
また、本発明においては、連続的に接点を移動することが可能であり、被処理品に治具跡を残すことがない電解用回転治具を提供することができる。
【0045】
さらに、本発明においては、前述した電解用回転治具を使用し電解表面処理方法と電解表面処理装置とを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら、説明する。
【0047】
図1は本発明の第1の実施の形態による電解用回転治具を示す正面図である。図2は図1の電解用回転治具を示す側面図である。図3は図1及び図2の電解用回転治具を用いた電解表面処理装置の構成を示す図である。
【0048】
図1及び図2を参照すると、本発明の第1の実施の形態による電解用回転治具は、電気めっき用治具(以下、めっき治具と呼ぶ)として用いられる。具体的には、Nd−Fe−B等の焼結型希土類磁石のめっきに用いられる。めっき治具10aは、格子状に配置された帯状の金属板材からなる通電フレーム1aとその前面及び裏面を覆う落下防止部材としての多孔質の絶縁材料からなる蓋部材2aとを備え、更に、蓋部材2a及び通電フレーム1aの形成する平面に直交するように、めっき治具10aをその回りに回転可能とする回転軸5が設けられている。通電フレーム1aは、格子に規定される空間が、角型の被めっき品3aの収容区画となっている。この四角の区画の寸法は、品物よりも若干大きく、品物が回転軸に平行な軸の周りで若干移動可能である。
【0049】
図示の例においては、数十個の区画しか示されていないが、品物と治具の大きさにより、実際は数百個の区画が形成されている。
【0050】
通電フレーム1aは、この例においては、帯状の金属板から形成されているが、勿論金属線材や細い金属棒材を用いてもよい。
【0051】
また、蓋部材2a,2aの内壁間の距離は、被めっき品3aの厚さよりは大きいが、この品物の厚み2倍よりも小さくなるように設計されている。また、蓋部材2a,2aに設けられる複数の孔は、品物が蓋部材2a,2aよりも外にはみ出さない大きさであるならばどのような大きさであってもよく、また,強度を低下させないものであるならば、多数形成されていても良い。蓋部材2a,2aの固定は、蓋部材2a,2a自身が互いに嵌合する構成であっても、蓋部材2a,2aの直交する方向に、両側を貫通するように、ボルトを通すとともに、蓋部材2a,2a間にスペーサを介して固定してもよく、また、両側からクリップ等で固定してもよくその固定手段には限定されない。
【0052】
回転軸5の外端は、外部の駆動源からベルトを介して回転軸5を回転させるためのトルク伝達手段として、内部にベルトを備えたアーム9と、その中の別の位置に配置された給電線6とを備えている。給電線6は、アーム9の先端の動力及び電気接続部7の部分で回転軸5に電気接続され、また、一方回転軸5はフレーム1aに電気接続されている。したがって、給電線6に図示しない電源から電流が供給されると、通電フレーム1aに通電されることになる。なお、給電線6とアーム9とを別体に設けてもよいことは勿論である。
【0053】
図3を参照すると、電解表面処理装置の一例として電気めっき装置101が示されている。電気めっき装置101は、Ni,Cr等のめっき膜を得るためのめっき液12が充填された電解槽13と、電解槽13の中央部で、めっき液に浸されためっき治具10aと、めっき治具10aを介して対向配置された対極11a,11bとを備えている。なお、図3の例においては、めっき治具10aの両側に対極11a,11bが配置されているが、一つ対極11a又は11bだけでも良いことは勿論である。
【0054】
このような構成の電気めっき装置101を使用する際には、通電フレーム1aの各区画に被処理品3aを収容し、両側から蓋部材2a,2aで覆い、電解槽13中に浸して通電しながら、図1及び図2の矢印8に示すように、回転させればよい。なお、逆方向の回転も可能である。また、1区画に収容する品物も、著しく揺れず、落下防止部材から落下しないものであるならば、一つの区画に複数製品を入れることも可能である。
【0055】
このような、本発明の第1の実施の形態によるめっき治具10aを用いた場合、フレームの形成する区画内で回転させるために、被めっき品3aはその自重によって、常にフレームの一部に接触する(4面接触)ので、接触不良がなく、その接触点が回転とともに移動するので、めっき治具10aの架け替えの必要がないとともにめっき治具10aの接点跡が残らず、また、均一なめっき膜を形成することができる。また、めっき治具10aを電解液(電気めっき液)12内で回転させることによって、その電解表面処理速度、例えば、電気めっきの場合、そのめっき膜形成速度を早くかつ均一にすることができる。
【0056】
また、本発明の実施の形態によるめっき治具10aの場合、電解液に浸して回転させる場合に、めっき治具10aの形成する平面に沿って回転するので、電解液との抵抗を減らすことができ、回転に要するエネルギー量を減少させることができる。
【0057】
また、本発明の第1の実施の形態によるめっき治具10aの場合、回転する場合に被めっき品3aとのガタツキが少なく形成されているので、品物の角部の欠けや傷を防止することができる。
【0058】
さらに、本発明の第1の実施の形態によるめっき治具10aは、簡単な構成であるので、安価に製造でき量産することができる。
【0059】
また、本発明の第1の実施の形態によるめっき治具10aは、品物と治具の大きさにより、被めっき品を一度に数3百個処理することができるので、歩留まりよく量産することができる。
【0060】
なお、本発明の第1の実施の形態においては、めっき治具10aとして四角板形状のものを用いたが、通電フレーム1aは四角形の格子状に限らず、また、電解用回転治具の形状も三角、円、円筒形であっても良いことは勿論である。さらに、上記第1の実施の形態においては、品物に電解表面処理として、めっきを施す場合についてのみ述べたが、本発明の電解用回転治具は、電着塗装や、陽極酸化などのそのほかの電解表面処理に用いることができることは勿論である。
【0061】
図4は本発明の第2の実施の形態による電解用回転治具を示す正面図である。図4を参照すると、本発明の第2の実施の形態による電解用回転治具は、図1及び2に示したものと同様に、めっき治具として用いられる。具体的には、Nd−Fe−B等の焼結型希土類磁石のめっきに用いられる。第2の実施の形態によるめっき治具10bは、第1の実施の形態によるもの同様に格子状に配置された帯状の金属板材からなる通電フレーム1aを備えている。しかし、本発明の第2の実施の形態によるめっき治具10bが、通電フレーム1aの前面及び裏面を覆う多孔質の絶縁材料からなる蓋部材2aの代わりに、通電フレーム1aの収容部の前面及び後面を縦断するように設けられた帯状又は棒状の線材群を備えている落下部材2bである点で異なっている他は、第1の実施の形態と同様の構成を備えている。
【0062】
即ち、第2の実施の形態によるめっき治具は、第1の実施の形態によるものと同様に、落下部材2b及び通電フレーム1aの形成する平面に直交するように、めっき治具10bをその回りに回転可能とする回転軸5が設けられている。通電フレーム1は、格子に規定される空間が、角型の被めっき品3の収容区画となっている。この四角の区画の寸法は、品物よりも若干大きく、品物が回転軸に平行な軸の周りで若干移動可能である。
【0063】
図示の例においては、数十個の区画しか示されていないが、品物と治具の大きさにより、実際は数百個の区画が形成されている。また、1区画に多数個収容することも可能である。
【0064】
通電フレーム1aは、この例においても、帯状の金属板から形成されているが、勿論金属線材や細い金属棒材を用いてもよい。
【0065】
また、一対の落下防止部材2b,2bの収容空間内の距離は、被めっき品の厚さよりは大きいが、この品物の厚み2倍よりも小さくなるように設計されている。また、片側の落下防止部材2bの各線材の位置は、品物が落下防止部材2b,2bよりも外にはみ出さない大きさであるならばどのような大きさであってもよく、また,強度を低下させないものであるならば、多数形成されていても良い。落下防止部材2b,2bの固定は、落下防止材2b,2b自身が互いに嵌合する構成であっても、落下防止部材2b,2bの縁部でも中央部でも、落下防止部材2b,2bがなす平面と直交する方向にボルトを通して、落下防止部材2b,2b間にスペーサを介して固定してもよく、また、両側からクリップ等で固定してもよくその固定手段には限定されない。
【0066】
第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、回転軸5の外端は、外部の駆動源からベルトを介して回転軸5を回転させるためのトルク伝達手段としてのアーム9と、その中のベルトとは、別の位置に配置された給電線6とを備えている。また、給電線6は、アーム9の先端の動力及び電気接続部7の部分で回転軸5に電気接続され、また、一方回転軸5はフレーム1aに電気接続されている。したがって、給電線6に図示しない電源から電流が供給されると、通電フレーム1aに通電されることになる。なお、給電線6とアーム9とを別体に設けてもよいことは勿論である。
【0067】
本発明の第2の実施の形態によるめっき治具10bは第1の実施の形態と同様に、図3に示す電解表面処理装置に用いることができる。
【0068】
このような、本発明の第2の実施の形態によるめっき治具10bを用いた場合、フレームの形成する区画内で回転させるために、被めっき品3aはその自重によって、常にフレームの一部に接触する(4面接触)ので、接触不良がなく、その接触点が回転とともに移動するので、めっき治具10bの架け替えの必要がないとともにめっき治具10bの接点跡が残らず、また、均一なめっき膜を形成することができる。また、めっき治具10bを電解液(電気めっき液)12内で回転させることによって、その電解表面処理速度、例えば、電気めっきの場合、そのめっき膜形成速度を早くかつ均一にすることができる。
【0069】
また、本発明の第2の実施の形態によるめっき治具10bの場合、電解液に浸して回転させる場合に、めっき治具10bの形成する平面に沿って回転するので、電解液との抵抗を減らすことができ、回転に要するエネルギー量を減少させることができる。
【0070】
また、本発明の第2の実施の形態によるめっき治具10bの場合、回転する場合に被めっき品3aとのガタツキが少なく形成されているので、品物の角部の欠けや傷を防止することができる。
【0071】
さらに、本発明の第2の実施の形態によるめっき治具10bは、簡単な構成であるので、安価に製造でき量産することができる。
【0072】
また、本発明の第2実施の形態によるめっき治具10bは、被めっき品を品物と治具の大きさにより、実際は数百個処理することができるので、歩留まりよく量産することができる。
【0073】
なお、本発明の第2の施の形態においては、めっき治具10bとて四角板形状のものを用いたが、通電フレーム1aは四角形の格子状に限らず、また、電解用回転治具の形状も三角、円、円筒形であっても良いことは勿論である。さらに、上記第1の実施の形態においては、品物に電解表面処理として、めっきを施す場合についてのみ述べたが、本発明の電解用回転治具は、電着塗装や、陽極酸化などのそのほかの電解表面処理に用いることができることは勿論である。
【0074】
図5は本発明の第3の実施の形態による電解用回転治具を示す正面図である。
【0075】
図5を参照すると、本発明の第3の実施の形態による電解用回転治具は、第1及び第2の実施の形態と同様に磁石めっき用のめっき治具として用いられる。めっき治具10cは、複数の円形の枠が複数互いに外接するように、平面的に配置された円形で且つ帯状の金属枠体からなる通電フレーム1bとその前面及び裏面を覆う落下防止部材としての多孔質の円板形状の絶縁材料からなる蓋部材2cとを備え、更に、蓋部材2c及び通電フレーム1bの形成する平面に直交するように、めっき治具10cをその回りに回転可能とする回転軸5が設けられている。
【0076】
通電フレーム1cは、各円形枠に規定される空間が、円形の被めっき品3bの収容区画となっている。この円形枠による区画の寸法は、品物よりも若干大きく、品物が回転軸に平行な軸の周りで、回転可能な大きさとなっている。また、蓋部材2cには、通電フレーム1bの各枠に対応する中心に品物よりも径の小さな孔が設けられている。
【0077】
図5に示す例においては、数十個の区画しか示されていないが、品物と治具の大きさにより、実際は数百個の区画が形成されている。
【0078】
通電フレーム1bは、この例においては、帯状の金属板から形成されているが、勿論金属線材や細い金属棒材をリング形状にしたものを用いてもよい。
【0079】
また、蓋部材2c,2cの内壁間の距離は、被めっき品3bの厚さよりは大きいが、この品物の厚み2倍よりも小さくなるように設計されている。また、蓋部材2c,2cに設けられる複数の孔14は、品物が蓋部材2c,2cよりも外にはみ出さない大きさであるならばどのような大きさであってもよく、また,強度を低下させないものであるならば、多数形成されていても良い。蓋部材2c,2cの固定は、蓋部材2c,2c自身が互いに嵌合する構成であっても、蓋部材2c,2cの直交する方向に、両側を貫通するように、ボルトを通すとともに、蓋部材2c,2c間にスペーサを介して固定してもよく、また、両側からクリップ等で固定してもよくその固定手段には限定されない。
【0080】
第1及び第2の実施の形態と同様に、第3の実施の形態によるめっき治具10cにおいては、回転軸5の外端は、外部の駆動源からベルトを介して回転軸5を回転させるためのトルク伝達手段として、内部にベルトを備えたアーム9と、その中の別の位置に配置された給電線6とを備えている。給電線6は、アーム9の先端の動力及び電気接続部7の部分で回転軸5に電気接続され、また、一方回転軸5はフレーム1bに電気接続されている。したがって、給電線6に図示しない電源から電流が供給されると、通電フレーム1bに通電されることになる。なお、給電線6とアーム9とを別体に設けてもよいことは勿論である。
【0081】
本発明の第3の実施の形態によるめっき治具10c第1及び第2の実施の形態と同様に、図3に示す電解表面処理装置に用いることができる。
【0082】
このような、本発明の第3の実施の形態によるめっき治具10cを用いた場合、フレームの形成する区画内で回転させるために、被めっき品3bはその自重と円形の外形によって、常にフレームの一部に接触する(4面接触)ので、接触不良がなく、その接触点が回転とともに移動するので、めっき治具10cの架け替えの必要がないとともにめっき治具10bの接点跡が残らず、また、均一なめっき膜を形成することができる。また、めっき治具2cを電解液(電気めっき液)12内で回転させることによって、その電解表面処理速度、例えば、電気めっきの場合、そのめっき膜形成速度を早くかつ均一にすることができる。
【0083】
また、本発明の第3の実施の形態によるめっき治具10cの場合、電解液に浸して回転させる場合に、めっき治具10cの形成する平面に沿って回転するので、電解液との抵抗を減らすことができ、回転に要するエネルギー量を減少させることができる。
【0084】
また、本発明の第3の実施の形態によるめっき治具10cの場合、回転する場合に被めっき品3bとのガタツキが少なく形成されているので、品物の角部の欠けや傷を防止することができる。
【0085】
さらに、本発明の第3の実施の形態によるめっき治具10cは、簡単な構成であるので、安価に製造でき量産することができる。
【0086】
また、本発明の第3実施の形態によるめっき治具10cは、被めっき品3cを一度に数百個処理することができるので、歩留まりよく量産することができる。
【0087】
なお、本発明の第3の実施の形態においては、めっき治具10cとして円板形状のものを用いたが、収容される品物が円滑に回転できるものであるならば、通電フレーム1bは円形の格子状に限らず、また、電解用回転治具の形状も三角、角型形状であっても良いことは勿論である。さらに、上記第3の実施の形態においては、品物に電解表面処理として、めっきを施す場合についてのみ述べたが、本発明の電解用回転治具は、電着塗装や、陽極酸化などのそのほかの電解表面処理に用いることができることは勿論である。
【0088】
図6は本発明の第4の実施の形態による電解用回転治具を示す正面図である。図6を参照すると、本発明の第4の実施の形態による電解用回転治具は、第1乃至第3の実施の形態と同様に、磁石めっき用のめっき治具として用いられる。めっき治具10dは、複数の円形の枠が複数互いに外接するように、平面的に配置された円形で且つ帯状の金属枠体からなる通電フレーム1bとその前面及び裏面を覆う落下防止部材としての金属のメッシュからなる蓋部材2dとを備え、更に、蓋部材2d及び通電フレーム1bの形成する平面に直交するように、めっき治具10dをその回りに回転可能とする回転軸5が設けられている。
【0089】
通電フレーム1bは、各円形枠に規定される空間が、円形の被めっき品3bの収容区画となっている。この円形枠による区画の寸法は、品物よりも若干大きく、品物が回転軸に平行な軸の周りで、回転可能な大きさとなっている。また、蓋部材2dには、通電フレーム1bの各枠に対応する中心に品物3bよりも寸法の小さな隙間が設けられている。
【0090】
図6に示す例においては、数十個の区画しか示されていないが、実際は数百個の区画が形成されている。
【0091】
第4の実施の形態によるめっき治具10dの通電フレーム1bは、第3の実施の形態と同様に、帯状の金属板から形成されているが、勿論金属線材や細い金属棒材をリング形状にしたものを用いてもよい。
【0092】
また、蓋部材2d,2dの内壁間の距離は、被めっき品3bの厚さよりは大きいが、この品物の厚み2倍よりも小さくなるように設計されている。また、蓋部材2c,2cに設けられる複数の孔14は、品物が蓋部材2c,2cよりも外にはみ出さない大きさであるならばどのような大きさであってもよく、また,強度を低下させないものであるならば、多数形成されていても良い。蓋部材2c,2cの固定は、蓋部材2c,2c自身が互いに嵌合する構成であっても、蓋部材2c,2cの直交する方向に、両側を貫通するように、ボルトを通すとともに、蓋部材2c,2c間にスペーサを介して固定してもよく、また、両側からクリップ等で固定してもよくその固定手段には限定されない。
【0093】
第1及び第2の実施の形態と同様に、第3の実施の形態によるめっき治具10cにおいては、回転軸5の外端は、外部の駆動源からベルトを介して回転軸5を回転させるためのトルク伝達手段として、内部にベルトを備えたアーム9と、その中の別の位置に配置された給電線6とを備えている。給電線6は、アーム9の先端の動力及び電気接続部7の部分で回転軸5に電気接続され、また、一方回転軸5はフレーム1bに電気接続されている。したがって、給電線6に図示しない電源から電流が供給されると、通電フレーム1bに通電されることになる。なお、給電線6とアーム9とを別体に設けてもよいことは勿論である。
【0094】
本発明の第4の実施の形態によるめっき治具10bは第1の実施の形態と同様に、図3に示す電解表面処理装置に用いることができる。
【0095】
このような、本発明の第4の実施の形態によるめっき治具10dを用いた場合、フレームの形成する区画内で回転させるために、被めっき品3bはその自重によって、常にフレームの一部に接触する(4面接触)ので、接触不良がなく、その接触点が回転とともに移動するので、めっき治具10dの架け替えの必要がないとともにめっき治具10dの接点跡が残らず、また、均一なめっき膜を形成することができる。また、めっき治具10dを電解液(電気めっき液)12内で回転させることによって、その電解表面処理速度、例えば、電気めっきの場合、そのめっき膜形成速度を早くかつ均一にすることができる。
【0096】
また、本発明の第4の実施の形態によるめっき治具10dの場合、電解液に浸して回転させる場合に、めっき治具10dの形成する平面に沿って回転するので、電解液との抵抗を減らすことができ、回転に要するエネルギー量を減少させることができる。
【0097】
また、本発明の第4の実施の形態によるめっき治具10dの場合、回転する場合に被めっき品3bとのガタツキが少なく形成されているので、品物の角部の欠けや傷を防止することができる。
【0098】
さらに、本発明の第4の実施の形態によるめっき治具10dは、簡単な構成であるので、安価に製造でき量産することができる。
【0099】
また、本発明の第4実施の形態によるめっき治具10dは、被めっき品を一度に数百個処理することができるので、歩留まりよく量産することができる。
【0100】
さらに、本発明の第4の実施の形態において、落下防止部材として金属製メッシュの蓋部材を使用しているので、この部分にも通電することで、さらに、接点の接触を安定させることができ、均一なめっき膜を形成することができる。
【0101】
なお、本発明の第4の施の形態においては、めっき治具10dとして円板形状のものを用いたが、通電フレーム1bは円形の枠形状に限らず、また、電解用回転治具の形状も三角、角型、円筒形であっても良いことは勿論である。さらに、上記第4の実施の形態においては、品物に電解表面処理として、めっきを施す場合についてのみ述べたが、本発明の電解用回転治具は、電着塗装や、陽極酸化などのそのほかの電解表面処理に用いることができることは勿論である。
【0102】
図7は本発明の第5の実施の形態による電解用回転治具を示す正面図である。図7を参照すると、本発明の第5の実施の形態による電解用回転治具は、第1乃至第4の実施の形態と同様に、磁石めっき用のめっき治具として用いられる。
【0103】
具体的には、めっき治具10eは、格子状に配置された帯状の金属板材からなる外側が円形状の通電フレーム1cとその前面及び裏面を覆う落下防止部材としての円板形状の多孔質の絶縁材料からなる蓋部材2e,2eとを備え、更に、蓋部材2e,2e及び通電フレーム1aの形成する平面に直交するように、めっき治具10aをその回りに回転可能とする回転軸5が設けられている。通電フレーム1cは、格子に規定される空間が、角型の被めっき品3eの収容区画となっている。この四角の区画の寸法は、品物よりも若干大きく、品物が回転軸に平行な軸の周りで若干移動可能である。なお、品物が円板等の形状であれば、勿論、なめらかに回転可能な大きさであれば良い。
【0104】
図7に示される例においては、数十個の区画しか示されていないが、実際は数百個の区画が形成されている。
【0105】
通電フレーム1cは、この例においては、帯状の金属板から形成されているが、勿論金属線材や細い金属棒材を用いてもよい。
【0106】
また、蓋部材2a,2aの内壁間の距離は、被めっき品3eの厚さよりは大きいが、この品物3eの厚み2倍よりも小さくなるように設計されている。また、蓋部材には、小さな円形孔15が多数設けられている点で、図5に示す例とは異なっている。
【0107】
蓋部材2e,2eの固定は、前述した第3の実施の形態による蓋部材2e,2e自身が互いに嵌合する構成であっても、蓋部材2e,2eの直交する方向に、両側を貫通するように、ボルトを通すとともに、蓋部材2e,2e間にスペーサを介して固定してもよく、また、両側からクリップ等で固定してもよくその固定手段には限定されない。
【0108】
前述した第1乃至第4の実施の形態と同様に、第5の実施の形態においては、回転軸5の外端は、外部の駆動源からベルトを介して回転軸5を回転させるためのトルク伝達手段として、内部にベルトを備えたアーム9と、その中の別の位置に配置された給電線6とを備えている。給電線6は、アーム9の先端の動力及び電気接続部7の部分で回転軸5に電気接続され、また、一方回転軸5はフレーム1cに電気接続されている。したがって、給電線6に図示しない電源から電流が供給されると、通電フレーム1cに通電されることになる。なお、給電線6とアーム9とを別体に設けてもよいことは勿論である。
【0109】
本発明の第5の実施の形態によるめっき治具10eは第1の実施の形態と同様に、図3に示す電解表面処理装置に用いることができる。
【0110】
このような、本発明の第5の実施の形態によるめっき治具10eを用いた場合、フレームの形成する区画内で回転させるために、被めっき品3eはその自重によって、常にフレームの一部に接触する(4面接触)ので、接触不良がなく、その接触点が回転とともに移動するので、めっき治具10eの架け替えの必要がないとともにめっき治具10eの接点跡が残らず、また、各被めっき品と対極との間の距離が一定であるため、均一なめっき膜を形成することができる。また、めっき治具10eを電解液(電気めっき液)12内で回転させることによって、その電解表面処理速度、例えば、電気めっきの場合、そのめっき膜形成速度を早くかつ均一にすることができる。
【0111】
また、本発明の第5の実施の形態によるめっき治具10eの場合、電解液に浸して回転させる場合に、めっき治具10eの形成する平面に沿って回転するので、電解液との抵抗を減らすことができ、回転に要するエネルギー量を減少させることができる。
【0112】
また、本発明の第5の実施の形態によるめっき治具10eの場合、回転する場合に被めっき品3eとのガタツキが少なく形成されているので、品物の角部の欠けや傷を防止することができる。
【0113】
さらに、本発明の第5の実施の形態によるめっき治具10eは、簡単な構成であるので、安価に製造でき量産することができる。
【0114】
また、本発明の第5実施の形態によるめっき治具10eは、被めっき品3eを一度に数百個処理することができるので、歩留まりよく量産することができる。
【0115】
なお、本発明の第5の施の形態においては、めっき治具10eとして四角の格子状の通電フレーム1cを用いたが、通電フレーム1cは四角形の格子状に限らず、また、電解用回転治具の形状も三角、角型であっても良いことは勿論である。さらに、上記第1の実施の形態においては、品物に電解表面処理として、めっきを施す場合についてのみ述べたが、本発明の電解用回転治具は、電着塗装や、陽極酸化などのそのほかの電解表面処理に用いることができることは勿論である。
【0116】
図8は本発明の第6の実施の形態による電解用回転治具の一部を拡大した部分拡大正面図である。図8を参照すると、本発明の第6の実施の形態による電解用回転治具は、第1乃至第6の実施の形態と同様に、磁石めっき用のめっき治具として用いられる。
【0117】
第6の実施の形態によるめっき治具は、第5の実施の形態によるものとは、落下防止部材の構造が異なってい他は、通電フレーム1cの構造等と同様な構造を有している。リング状の被めっき品3bが収容される収容区画内の前面及び後面に沿うように内側に向かって、枠部2gから複数の突出部2fを持つように落下防止枠2hが形成されている。この突出部2fによって、被めっき品の落下が防止される。
【0118】
本発明の第6の実施の形態によるめっき治具は、第1の実施の形態と同様に、図3に示す電解表面処理装置に用いることができる。
【0119】
このような、本発明の第7の実施の形態によるめっき治具を用いた場合、フレームの形成する区画内で回転させるために、被めっき品3bはその自重によって、常にフレームの一部に接触する(4面接触)ので、接触不良がなく、その接触点が回転とともに移動するので、めっき治具の架け替えの必要がないとともにめっき治具の接点跡が残らず、また、均一なめっき膜を形成することができる。また、めっき治具を電解液(電気めっき液)12内で回転させることによって、その電解表面処理速度、例えば、電気めっきの場合、そのめっき膜形成速度を早くかつ均一にすることができる。
【0120】
また、本発明の第6の実施の形態によるめっき治具の場合、電解液に浸して回転させる場合に、めっき治具の形成する平面に沿って回転するので、電解液との抵抗を減らすことができ、回転に要するエネルギー量を減少させることができる。
【0121】
また、本発明の第6の実施の形態によるめっき治具の場合、回転する場合に被めっき品3aとのガタツキが少なく形成されているので、品物の角部の欠けや傷を防止することができる。
【0122】
また、本発明の第6の実施の形態によるめっき治具の場合、落下防止部材として突出部2fを用いたが、これに通電フレーム1cと同様に、通電することで、更に、均一なめっき膜を品物全体に得ることができる。
【0123】
さらに、本発明の第6の実施の形態によるめっき治具は、簡単な構成であるので、安価に製造でき量産することができる。
【0124】
また、本発明の第6実施の形態によるめっき治具は、被めっき品を一度に数百個処理することができるので、歩留まりよく量産することができる。
【0125】
なお、本発明の第6の施の形態においては、めっき治具として円板形状のものを用いたが、通電フレーム11cは四角形の格子状に限らず、また、電解用回転治具の形状も三角、四角形であっても良いことは勿論である。また、1区画に1個の品物を収容していたが、1区画に複数個収容することも可能である。
【0126】
さらに、上記第1乃至第6の実施の形態においては、品物に電解表面処理として、めっきを施す場合についてのみ述べたが、本発明の電解用回転治具は、電着塗装や、陽極酸化などのそのほかの電解表面処理に用いることができることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0127】
以上説明したように、本発明によれば、品物を搭載して電解表面処理を行う電解用回転治具に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明の実施の形態による電解用回転治具を示す正面図である。
【図2】図1の電解用回転治具を示す側面図である。
【図3】図1及び図2の電解用回転治具を用いた電解表面処理装置の構成を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態による電解用回転治具を示す正面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態による電解用回転治具を示す正面図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態による電解用回転治具を示す斜視図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態による電解用回転治具を示す正面図である。
【図8】本発明の第6の実施の形態による電解用回転治具の一部を拡大した部分拡大正面図である。
【図9】特許文献1に開示されためっき治具100の概要を示す斜視図である。
【図10】図9の電気めっき治具100のトレイ50の斜視図である。
【図11】(a)は図10のトレイ50の部分断面図であり、(b)は(a)の一点鎖線で囲った領域の拡大図である。
【図12】トレイ50の回動と、セル30内のワーク70の動きを示す図である。
【符号の説明】
【0129】
1a,1b,1c 通電フレーム
2a,2b,2c,2d,2g 落下防止部材
2f 突出部
3a,3b,3e 品物(被めっき品)
5 回転軸
6 給電線
7 動力及び電気接続部
8 矢印
9 アーム
10a,10b,10c,10d,10e めっき用治具
11a,11b 対極
12 電解液(電気めっき液)
13 電解槽
14 孔
15 孔
23 第2歯車
25 第3歯車
30 セル
31a,32a 固定具
33,33a,33b 陰極線
34 シャフト
37 堀込部
39 遮蔽壁
50,50a,50b トレイ
51a,51b 基板
53a,53b フレーム
70 被めっき品(ワーク)
70a 外周面
100 めっき治具
101 電気めっき装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元的に区画形成された被処理品を収容する収容部を複数備えた導電材料から構成される通電フレームと、前記通電フレームの両側を夫々覆う平面を備えた落下防止部材と、前記落下防止部材の平面に直交するように設けられた導電材料からなる回転軸とを備えた治具であって、前記回転軸と前記通電フレームとは電気接続されるとともに、前記治具は前記回転軸の回りに回転可能に設けられていることを特徴とする電解用回転治具。
【請求項2】
請求項1に記載された電解用回転治具において、前記通電フレームは、格子状、互いに外接した円もしくは多角形状、及び同心円状で周方向に区画された形状の内のいずれかの一つの形状に配置されていることを特徴とする電解用回転治具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電解用回転治具において、前記落下防止部材は、回転中心を備えた円形,矩形,または多角形の板形状を備えていることを特徴とする電解用回転治具。
【請求項4】
請求項1乃至3の内のいずれか一つに記載の電解用回転治具において、前記落下防止部材は、多孔質又はメッシュ形状の蓋部材からなり、前記蓋部材に設けられた孔及びメッシュ形状の間隔は、前記収容部に収容される製品よりも小さな寸法を備えていることを特徴とする電解用回転治具。
【請求項5】
請求項1乃至4の内のいずれか一つに記載の電解用回転治具において、前記蓋部材は合成樹脂製又は金属メッシュ製であることを特徴とする電解用回転治具。
【請求項6】
請求項1乃至3の内のいずれか一つに記載の電解用回転治具において、前記落下防止部材は、互いに離して配置された線材群もしくは前記収容部の内側に向かって突出した突起群を備え、前記線材群の間隔は、前記収容部に収容される製品よりも小さな寸法を備え、前記突起群は収容される製品の外形よりも、内側に延在していることを特徴とする電解用回転治具。
【請求項7】
請求項6に記載の電解用回転治具において、前記線材群又は突起群は導体又は絶縁材からなることを特徴とする電解用回転治具。
【請求項8】
請求項1乃至7の内のいずれか一つに記載の電解用回転治具を用いた電解表面処理方法であって、前記収容部に製品を収容し、電解液中で、前記回転軸を水平にして、前記電解液中で、前記治具を前記回転軸の回りに回転させるとともに、当該回転軸を介して前記通電フレームに通電して、前記被処理品と、前記フレームとの接触点を移動させながら前記被処理品に電解表面処理を施すことを特徴とする電解表面処理方法。
【請求項9】
請求項8に記載の電解表面処理方法において、前記落下防止部材が導体からなる場合には、前記落下防止部材にも通電して前記被処理品に電解表面処理を施すことを特徴とする電解表面処理方法。
【請求項10】
電解液を収容する容器と、請求項1乃至7の内のいずれか一つに記載された電解用回転治具と、前記電解用回転治具の両側の落下防止部材の内の少なくとも一方に対して間隔をおいて配置された対極を備え、前記電解用回転治具は前記回転軸の周りに回転可能で且つ前記回転軸を介して前記通電フレームに通電可能に設けられるとともに、前記回転軸が前記対極に対して垂直となり、且つ前記通電フレーム面が前記対極に対して略平行になるようにように配置されていることを特徴とする電解表面処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2006−291274(P2006−291274A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−112427(P2005−112427)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(393017100)株式会社トーテック (1)