説明

電解装置及び電解方法

【課題】電解反応時に発生する気泡による電解電圧の増大、電解効率の低下を抑制する電解装置を提供する。
【解決手段】電解槽1内に設けられた電気絶縁性の隔膜4と、前記隔膜4から所定の間隙を介して配置された陰極2及び陽極3と、電解槽側部1cと前記陰極2及び陽極3との間にそれぞれ形成された陰極室7及び陽極室8と、電解槽底部1aに設けられ前記間隙に電解液6を供給する電解液入口9aと、電解槽上部1bに設けられ前記間隙から電解液6を排出する電解液上部出口10aと、前記電解槽底部1aに設けられ前記陰極室7及び陽極室8にそれぞれ電解液6を供給する電解液入口9bと、前記電解槽上部1bに設けられ前記陰極室7及び陽極室8からそれぞれ電解液を排出する電解液上部出口10bと、を有する電解装置であって、前記間隙に接する電解槽側部1cと前記陰極室7及び陽極室8に接する電解槽側部1cにそれぞれ少なくとも一つの電解液側部出口11a、11bを設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルカリ水を用いた電解装置及び電解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電や風力発電における発電量は、太陽光や風力に依存することから、発電量が大きくなって電力系統の需要を上回った場合には、発電量が小さくなって電力系統の需要を下回る場合に備えて、貯蔵しておくことが好ましい。
【0003】
このような電力貯蔵システムとしては、小規模から大規模の発電設備に対応可能であり、かつ立地条件を選ばないことから、近年、アルカリ水を用いた電解装置が用いられるようになり、今後さらなる需要の増加が見込まれている。
【0004】
このアルカリ水を用いた電解装置は、上述のように供給電力が電力系統の需要を上回る場合に、水の電気分解を行って得た水素を電力源として貯蔵し、電力が不足している場合に、貯蔵した水素を用いた発電によって電力系統の需要に対する不足分を補償する。
【0005】
電解装置に要求される特性としては、電気分解が行われる陰極及び陽極間の電解電圧が低く、また、水を電解する際に理論的に算出される理論電解電圧を電解電圧で除した電解効率が高いことが挙げられる。
【0006】
従来のアルカリ水を用いた電解装置を図8に示す。図8において、電解槽1内に設置された隔膜4に近接して陰極2及び陽極3が配置され、陰極室7、陽極室8が形成されている。この陰極2及び陽極3間には電源5が接続されている。また、電解槽1には電解液入口9と電解液上部出口10が配置され、電解液6は下から上へ流れる構成となっている。
【0007】
陰極2及び陽極3間に電源5から所定の電圧が印加されると、陰極2及び陽極3ではそれぞれ以下のような電解反応に基づいて、水素及び酸素が発生する。
陰極: 2HO + 2e→ H+ 2OH
陽極: 2OH → 1/2O+ HO + 2e
【0008】
電解反応で発生した酸素及び水素はそれぞれ電解液と共に電解液上部出口10から外部へ排出され、必要に応じて貯蔵される。特に、電解装置を電力貯蔵システムとして用いる場合は、生成した水素を貯蔵し、電力が不足している場合に、貯蔵した水素を用いた発電によって電力系統の需要に対する不足分を補償する。
【0009】
一方、電解液の電気抵抗は温度の上昇に伴って低下することから、電解反応を高温で行うことにより電解電圧を低下させ電解効率を高める試みがなされている。しかしながら、高温で電解反応を行うには、高温の電解液による腐食に耐え得るような電極が必要となる。特許文献1には、このような電極として、ニッケル又はニッケル合金からなるメッシュ状の導電性線材が開示されている。
【0010】
また、電解液の電気抵抗を低下させる別の試みとして、特許文献2には、隔膜の両面に陽極物質及び陰極物質を密着させた電解槽を用いることで電極間隔を短くし、これによって電解液の電気抵抗を低減させる試みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−149932号公報
【特許文献2】特開2009−242922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図8に示す従来の電解装置においては、電解反応時には水素及び酸素からなる気泡が生じ電解液の見かけ密度が低下し、電解液の実質的な電気抵抗が増大することにより、電解装置の電解電圧が増大し電解効率を低下させるという課題があった。
【0013】
また、基本的に電極の背面から電解液を下から上に流す構成を基本構成としていたので、電解反応により上記陰極と上記陽極で発生した気泡は電極表面に多量に付着して、電極の有効面積を減少させる又は気泡が隔膜に付着する等により、電解電圧が増大し電解効率が低下するという課題があった。
【0014】
また、特許文献1及び2には電解効率を高める提案がなされているが、いずれの方法においても、電解反応時には気泡が生じ、電解液中の気泡密度が増大してその見かけ密度が低下し、電解液の実質的な電気抵抗が増大してしまうことにより、電解電圧が増大し電解効率が低下してしまうという課題があった。
【0015】
さらに、電解液中の気泡は垂直方向へ上昇するため電解槽上部の見かけの電解液密度は下端に比べ低くなる。このため電流量や電解槽の縦方向サイズが大きくなると電解槽上部の気泡量が増え電解電圧が増大し電解効率を低下させてしまうという課題も生じていた。
【0016】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、電解反応時に発生する気泡による電解電圧の増大及び電解効率の低下を抑制することができる電解装置を及び電解方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明に係る電解装置は、電解槽内に設けられた電気絶縁性の隔膜と、前記隔膜から所定の間隙を介して配置された陰極及び陽極と、電解槽側部と前記陰極及び陽極との間にそれぞれ形成された陰極室及び陽極室と、電解槽底部に設けられ前記間隙に電解液を供給する電解液入口と、電解槽上部に設けられ前記間隙から電解液を排出する電解液上部出口と、前記電解槽底部に設けられ前記陰極室及び陽極室にそれぞれ電解液を供給する電解液入口と、前記電解槽上部に設けられ前記陰極室及び陽極室からそれぞれ電解液を排出する電解液上部出口と、を有する電解装置であって、前記間隙に接する電解槽側部と前記陰極室及び陽極室に接する電解槽側部にそれぞれ少なくとも一つの電解液側部出口を設けたことを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る電解方法は、電解槽内に設けられた電気絶縁性の隔膜と、前記隔膜から所定の間隙を介して配置された陰極及び陽極と、電解槽側部と前記陰極及び陽極との間にそれぞれ形成された陰極室及び陽極室と、を有する電解装置の電解方法において、電解槽底部に設けた電解液入口から流入する電解液を、電解槽上部に設けた電解液上部出口及び電解槽側部に設けた電解液側部出口から排出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電解反応時に発生する気泡による電解電圧の増大及び電解効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施形態に係る電解装置の縦断面図。
【図2】図1の電解装置のA−A線平断面図。
【図3】第2の実施形態に係る電解装置の縦断面図。
【図4】第2の実施形態の変形例に係る電解装置の縦断面図。
【図5】第3の実施形態に係る電解装置の縦断面図。
【図6】第4の実施形態に係る電解装置の縦断面図。
【図7】第5の実施形態に係る電解装置の縦断面図。
【図8】従来の電解装置の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る電解装置及び電解方法の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、上記した従来技術と同じ構成については、同一符号を付し重複する説明を省略する。
[第1の実施形態]
第1の実施形態に係る電解装置を、図1及び図2を用いて説明する。
【0022】
(構成)
本実施形態における電解装置は、図1に示すように、箱形の電解槽1内に配置された電気絶縁性の隔膜4と、隔膜4から所定の間隙を介して配置された陰極2及び陽極3と、隔膜4と陰極2及び陽極3との間にそれぞれ形成された空間に電解液6を循環させるために、電解槽底部1aに設けられた電解液入口9aと電解槽上部1bに設けられた電解液上部出口10aと電解槽側部1cに設けられた電解液側部出口11aと、陰極2及び陽極3と電解槽側部1cの間にそれぞれ形成された陰極室7及び陽極室8に電解液6を循環させるために、電解槽底部1aに設けられた電解液入口9bと電解槽上部1bに設けられた電解液上部出口10bと電解槽側部1cに設けられた電解液側部出口11bと、から構成されている。
【0023】
電解液上部出口10a、10bと電解液側部出口11a、11bから排出された電解液6は水素等を抽出処理した後、ポンプによって電解液入口9a、9bに戻される(図示せず)。
なお、電解液入口9a、9b、電解液上部出口10a、10b及び電解液側部出口11a、11bの設置数は、電解槽1のサイズ等に応じて適宜増減することができる。
【0024】
電解槽1は、SUSやテフロン(登録商標)などの耐食性に優れた材料から構成される。隔膜4は陰極2及び陽極3を電気的に隔離し、電解液6を保持する必要があることから、絶縁性であって緻密な材料から構成することが要求される。例えば、汎用のセラミック材料や高分子材料が用いられる。
【0025】
また、陰極2及び陽極3は、白金、ルテニウム、金、銀、銅、ニッケル、チタン、コバルト、SUS、マンガン、亜鉛、カーボン、酸化イリジウム等の汎用の電極材が用いられる。
【0026】
また、陰極2及び陽極3は、多孔質またはメッシュ構造であることが好ましい。この場合、電極の有効面積が増大するので、上述した電解反応を高効率で生ぜしめることができる。多孔質の電極は、汎用の方法によって形成することができる。なお、カーボンから電極を構成する場合は、特にミクロポーラスカーボンからなる多孔質電極が用いられる。
【0027】
電解液6は、酸性水溶液、アルカリ水溶液のいずれをも用いることができるが、材料の腐食、本実施形態では特に陰極2及び陽極3の腐食の観点から、アルカリ水溶液を用いることが好ましい。このようなアルカリ水溶液としては、例えば水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを20質量%〜40質量%添加したものを用いることができる。
【0028】
(作用)
上記のように構成された電解装置の作用を説明する。
本第1の実施形態の電解装置において、隔膜4と陰極2及び陽極3との間に電解液6が流入・流出する空間を設けたことにより、電解反応によって生じる気泡は隔膜4及び陰極2、陽極3に付着することなく電解液6とともに速やかに電解槽1外へ排出される。なお、図1及び図2において矢印は電解液6の流れを示している。
【0029】
これにより、各電極表面や隔膜に気泡が集中してその有効面積を大きく減少させてしまうということがない。同様に、気泡が電解槽1に残留して、陰極2及び陽極3間の実質的な電気抵抗を大きく増大させてしまうことがない。
【0030】
さらに、当該空間において電解反応によって生じる気泡は電解液6とともに電解液上部出口10aと電解液側部出口11aから排出されるので、従来、垂直方向のみであった気泡分布を、本実施形態では多方向に分散させることができるので、電解槽1内の上部の気泡密度が増大するのを抑制し、電解槽1内の電解液密度を均質化することが可能となる。これにより、装置の大型化や電流増に対しても電解装置の電解電圧が増大するのを防ぐとともに電解効率が低下するのを抑制することができる。
【0031】
また、陰極室7及び陽極室8では、電解液6は電解液入口9bから流入し、電解液上部出口10bと電解液側部出口11bから気泡とともに排出される。そして、当該空間においても電解液6の流れ方向は分散化されるので、気泡は各電極に集中して付着することはない。これにより、電解槽1内の上部の気泡密度が増大するのを抑制し、電解槽1内の電解液密度を均質化することができる。
【0032】
なお、図1及び図2では、電解液側部出口11aと電解液側部出口11bは、対向する電解槽側部1cにそれぞれ一つ設けているが、これに限定されず、上下方向及び/又は側面方向に間隔をおいて複数設けてもよい。
【0033】
また、電解液上部出口10a、10bと電解液側部出口11a、11bの口径は、電解槽1内で適切な循環流が得られるように、例えば電解液側部出口11a、11bの口径を下方では小さく上方では大きくする等して、各出口の口径を変えることにより各出口からの排出量を適宜調整するようにしてもよい。
【0034】
さらに、電解液上部出口10a、10bを省略し、電解液6の出口を電解液側部出口11a、11bのみから構成してもよい。その際、電解液側部出口11a、11bを上下方向及び/又は側面方向に間隔をおいて複数設け、電解液の流れを水平方向に分散することにより上記と同様な効果を得ることができる。
【0035】
(効果)
本第1の実施形態によれば、隔膜と陰極及び陽極との間に電解液が流入・流出する空間を設けたことにより、電解反応によって生じる気泡は隔膜又は電極に付着することなく電解液とともに速やかに電解槽外へ排出することができる。これにより、各電極表面に気泡が集中してその有効面積を大きく減少させるのを防止し、また、気泡が電解槽に残留し電極間の電気抵抗が増大するのを抑制する。
【0036】
さらに、電解反応によって生じる気泡を電解液とともに電解液上部出口と電解液側部出口から排出することにより気泡分布を多方向に分散させることができるので、電解槽上部の気泡密度が増大するのを抑制し、電解槽内の電解液密度を均質化することが可能となる。これにより、装置の大型化や電流増に対しても電解装置の電解電圧が増大するのを防ぐとともに電解効率が低下するのを抑制することができる。
【0037】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係る電解装置を、図3及び図4を用いて説明する。なお、上記の実施形態と同じ構成については、同一符号を付し重複する説明を省略する。
第2の実施形態では、図3に示すように、陰極室7及び陽極室8の下方及び上方に設けられた電解液入口9b及び電解液上部出口10b(図1)を省略するとともに、左右の電解槽側部1cの上下方向に電解液側部出口11cを間隔をおいて複数設けた構成としている。
【0038】
なお、電解液側部出口11cは側面方向にも間隔をおいて複数設けてもよく、また、左右のみならず前後の電解槽側部1cにも複数の電解液側部出口11cを設けてもよい。要するに、電解液側部出口11cは陰極室7及び陽極室8が接する電解槽側部1cに側面方向及び/又は上下方向に間隔をおいて複数設けることができる。
【0039】
このように構成した電解装置において、電解液入口9aから流入した電解液6は隔膜4と各電極2、3との間に形成された空間を上昇する過程で上昇流と各電極2、3を横切って流れる水平流に分散される。そして、電解反応により発生し隔膜及び電極に付着した気泡は電解液上部出口10a及び電解液側部出口11cから電解液6とともに排出されるが、電解液6の流出方向は特に水平方向において多方向に分散されるので、気泡量が垂直方向で増大することがなく、これにより電極間の電気抵抗の増大を抑制することができるので、電解装置の電解電圧が増大し電解効率が低下するのを抑制することができる。
【0040】
さらに、電解槽1内上部の気泡密度が増大するのを抑制し、電解槽1内の電解液密度を均質化することができるため、装置の大型化や電流増に対しても電解装置の電解電圧が増大するのを防ぐとともに電解効率が低下するのを抑制することができる。
【0041】
図4は本実施形態の変形例で、隔膜3に対向する陰極2と陽極3の側面に電解液6を整流するための整流用薄膜12を設置している。整流用薄膜12は多数の孔が設けられたメッシュ状部材からなる。これにより、電解液6の水平方向の流れの分散化及び均質化をさらに促進させることができるので、電解槽1内の電解液6の流れを最適化することができる。
【0042】
なお、電解液上部出口10aを省略し、電解液の出口を電解液側部出口11cのみから構成してもよい。また、電解液側部出口11cの設置数、配置箇所、及び口径は電解槽1のサイズ及び電解液6の流れ分布に応じて適宜調整可能である。
【0043】
[第3の実施形態]
第3の実施形態に係る電解装置を、図5を用いて説明する。なお、上記の実施形態と同じ構成については、同一符号を付し重複する説明を省略する。
【0044】
第3の実施形態は、陰極室7と陽極室8に複数の電解液排出口13aを有する電解液排出配管13を設けた構成としている。
【0045】
このように構成した電解装置において、電解液入口9aから流入した電解液6は隔膜4と各電極2、3との間に形成された空間を上昇する過程で上昇流と各電極2、3を横切って流れる水平流に分散される。そして、電解反応により発生し隔膜及び電極に付着した気泡は電解液上部出口10a及び電解液排出口13aを介して電解液排出配管13から電解液6とともに排出される。
【0046】
電解液排出配管13の設置本数、設置箇所及びその口径、並びに電解液排出口13aの数及び大きさは電解槽1のサイズに応じて、及び電解槽1内の電解液の流れが最適になるように適宜調整される。
【0047】
本第3の実施形態によれば、上記第2の実施形態と同等な作用効果を奏するほか、電解装置の設計及び製造が簡単になり、設計の自由度を高め、製造コストを低減することができる。
【0048】
なお、本実施形態では、電解液排出配管13は上下から電解液を排出する構造としているが、上方または下方のみから排出するように構成してもよく、また、電解液排出配管13を水平方向に配置してもよい。
【0049】
[第4の実施形態]
第4の実施形態に係る電解装置を、図6を用いて説明する。なお、上記した実施形態と同じ構成については、同一符号を付し重複する説明を省略する。
第4の実施形態の電解装置は、陰極2及び陽極3の内部に複数の電解液排出口13aを有する電解液排出配管13を設けた構成としている。
【0050】
このように構成した電解装置1において、電解液入口9aから流入した電解液6は隔膜4と各電極2、3との間に形成された空間を上昇する過程で上昇流と水平流に分散される。そして、電解反応により発生し隔膜4及び電極に付着した気泡は電解液上部出口10a及び陰極2及び陽極3の内部に配置された電解液排出配管13の電解液排出口13aから電解液6とともに排出される。
【0051】
なお、電解液排出配管13の設置本数、設置箇所及びその口径、並びに電解液排出口13aの数及び大きさは電解槽1のサイズに応じて、及び電解液1内の流れが最適になるように適宜調整される。また、電解液排出配管13を電極の側面に設けてもよい。
【0052】
本実施形態によれば、上記実施形態と同等な作用効果を奏するほか、電極に付着した気泡を陰極2及び陽極3の内部に配置された電解液排出配管13から効率的に排出することができる。
【0053】
なお、本実施形態では、電解液排出配管13は上下から電解液を排出する構造としているが、上方または下方から排出するように構成してもよく、また、電解液排出配管13を水平方向に配置してもよい。
【0054】
[第5の実施形態]
第5の実施形態に係る電解装置を、図7を用いて説明する。なお、上記した実施形態と同じ構成については、同一符号を付し重複する説明を省略する。
第5の実施形態の電解装置は、隔膜16の内部に電解液6が流入・流出する空間を設けるとともに、隔膜16の両側面に複数の電解液出口16aを設けた構成としている。
【0055】
このように構成した電解装置1において、電解液入口17から流入した電解液6は隔膜4内の空間を上昇する過程で上昇流と隔膜16の電解液側部出口16aを通る水平流に分散される。そして、電解反応により発生し隔膜16に付着した気泡は電解液上部出口18から電解液6とともに排出される。一方、電解液出口16aから流出した水平流は各電極2、3を横切って流れ、隔膜16及び各電極2、3に付着した気泡を電解液とともに電解液側部出口11cから外部へ排出する。
【0056】
本実施形態によれば、上記実施形態と同等な作用効果を奏するほか、電解液6が隔膜内を流れるため、特に、隔膜に付着した気泡を効率的に排出することができる。
なお、電解液側部出口11cの代わりに図5の電解液排出配管13を用いてもよい。また、電解液上部出口18は省略可能である。さらに、電解液6を隔膜16内の空間に水平方向から供給しても上記同様の作用効果を得ることができる。また、電解液6は下からだけではなく上又は上下から供給してもよい。
【0057】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として掲示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1…電解槽、1a…電解槽底部、1b…電解槽上部、1c…電解槽側部、2…陰極、3…陽極、4…隔膜、5…電源、6…電解液、7…陰極室、8…陽極室、9,9a,9b…電解液入口、10,10a,10b…電解液上部出口、11a,11b…電解液側部出口、12…整流用博膜、13…電解液排出配管、13a…電解液排出口、16…隔膜、16a…電解液出口、17…電解液入口、18…電解液上部出口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解槽内に設けられた電気絶縁性の隔膜と、前記隔膜から所定の間隙を介して配置された陰極及び陽極と、電解槽側部と前記陰極及び陽極との間にそれぞれ形成された陰極室及び陽極室と、電解槽底部に設けられ前記間隙に電解液を供給する電解液入口と、電解槽上部に設けられ前記間隙から電解液を排出する電解液上部出口と、前記電解槽底部に設けられ前記陰極室及び陽極室にそれぞれ電解液を供給する電解液入口と、前記電解槽上部に設けられ前記陰極室及び陽極室からそれぞれ電解液を排出する電解液上部出口と、を有する電解装置であって、
前記間隙に接する電解槽側部と前記陰極室及び陽極室に接する電解槽側部にそれぞれ少なくとも一つの電解液側部出口を設けたことを特徴とする電解装置。
【請求項2】
電解槽内に設けられた電気絶縁性の隔膜と、前記隔膜から所定の間隙を介して配置された陰極及び陽極と、電解槽側部と前記陰極及び陽極との間にそれぞれ形成された陰極室及び陽極室と、電解槽底部に設けられ前記間隙に電解液を供給する電解液入口と、電解槽上部に設けられ前記間隙から電解液を排出する電解液上部出口と、を有する電解装置であって、
前記陰極室及び陽極室に接する電解槽側部にそれぞれ少なくとも一つの電解液側部出口を設けたことを特徴とする電解装置。
【請求項3】
電解槽内に設けられた電気絶縁性の隔膜と、前記隔膜から所定の間隙を介して配置された陰極及び陽極と、電解槽側部と前記陰極及び陽極との間にそれぞれ形成された陰極室及び陽極室と、電解槽底部に設けられ前記間隙に電解液を供給する電解液入口と、電解槽上部に設けられ前記間隙から電解液を排出する電解液上部出口と、を有する電解装置であって、
前記陰極室及び陽極室又は前記陰極及び陽極の内部に複数の電解液排出口を有する電解液排出配管を少なくとも一つ設けたことを特徴とする電解装置。
【請求項4】
前記隔膜に対向する前記陰極及び陽極の側面に整流用薄膜を設けたことを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の電解装置。
【請求項5】
電解槽内に設けられた電気絶縁性の隔膜と、前記隔膜から所定の間隙を介して配置された陰極及び陽極と、電解槽側部と前記陰極及び陽極との間にそれぞれ形成された陰極室及び陽極室と、電解槽底部に設けられ前記隔膜の内部に電解液を供給する電解液入口と、電解槽上部に設けられ前記隔膜の内部から電解液を排出する電解液上部出口と、前記陰極室及び陽極室に接する電解槽の側部に設けられた少なくとも一つの電解液側部出口と、を有する電解装置であって、
前記隔膜の両側面にそれぞれ少なくとも一つの電解液出口を設けたことを特徴とする電解装置。
【請求項6】
前記陰極室及び陽極室に接する電解槽側部に設けられた電解液側部出口は、当該電解槽側部の上下方向及び/又は側面方向に複数配置されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電解装置。
【請求項7】
電解槽内に設けられた電気絶縁性の隔膜と、前記隔膜から所定の間隙を介して配置された陰極及び陽極と、電解槽側部と前記陰極及び陽極との間にそれぞれ形成された陰極室及び陽極室と、を有する電解装置の電解方法において、
電解槽底部に設けた電解液入口から流入する電解液を、電解槽上部に設けた電解液上部出口及び電解槽側部に設けた電解液側部出口から排出することを特徴とする電解方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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