説明

電解質によるPickeringエマルションのレオロジー制御

【課題】水中油型(O/W)エマルション提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の水中油型(O/W)エマルションは、1種、任意で1種以上の実質的に水不溶性成分を含有する油相(相A)と、アルコ−ル、カルボン酸、又は他の化合物等の有機化合物等の任意で追加の水溶性成分を含有する水相(相B)と、ケイ酸表面1nm当たりのシラノール基が0.9〜1.7個であることに相当する、二酸化ケイ素上の非シリル化表面シラノ−ル基の量が出発二酸化ケイ素の50%〜95%で、表面エネルギーの分散画分γ−s−Dが30〜80mJ/mであり、BET比表面積が30〜500m/gであるように部分的にシリル化され、水相の電解質の量は、溶液のイオン強度Iが10−6mol/L超過するように設定されており、(ここで、イオン強度はI=1/2×Σc×zとして定義され、この場合、cは溶液中のイオンiの濃度であり、zはイオンiの電荷である)、分散相の平均粒子径(すなわち平均液滴直径)はレーザー回析により測定され、0.5μm〜500μmの範囲であり、任意で、顔料又は保存料等の他の物質とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型(O/W)エマルションの流動性の制御に対する電解質の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
水中油型(O/W)の分散体としてのエマルションは、例えば、水性塗料及び仕上げ剤等のコ−ティング材として、水性エポキシ系又はポリウレタン系等の接着剤及びシ−ラントとして、化粧品処方として、食物産業におけるクレンジング剤及び殺菌薬として、固体基板の表面改質のため、あるいはエマルション重合における反応媒体としての適用形態で広く使用される。
【0003】
一般に、分散相の分散及び安定化は、乳化剤により達成される。カチオン性、アニオン性、両性及び非イオン性乳化剤が使用される。乳化剤に共通しているのは、界面活性物質であるということである。つまり、好ましくは、例えば、液体−液体、液体−固体、液体−気体の界面等の界面に集合することにより、界面/表面エネルギーを低減させる。しかしながら、エマルションの塗布に際し、乳化剤は、処理される基板の表面を保護可能でもあり、表面の湿潤性を大きく変える。これは、例えば、コーティング材あるいは接着接合又は接着シールの接着性に悪影響を与えうる。更に、重ね塗り適合性に悪影響を与える可能性もある。更に、有機分子系の乳化剤は、医薬品処方又は化粧品処方、あるいは食物に使用される場合に、有害物質となる可能性がある。
【0004】
1907年に、Pickeringが、塩基性硫酸銅、塩基性硫酸鉄、又は他の金属塩等の様々な固体を付加するだけで安定化されるエマルションの調製について、初めて記載した。このタイプのエマルションは「Pickeringエマルション」とも言われる。基本研究としては、固体粒子が2つの液相間界面に配置され、そこに障壁を形成し、分散相を凝集させるというPickeringエマルションの特性を示した。
【0005】
この場合、例えば、特許文献1に記載されているような固体安定化エマルションは、分散(油)相の凝集体に対して著しく安定しているが、特に分散相の相体積фが0.5以上で高粘度となり、エマルションの塗布性に悪影響を与えうることが示された。分散相の相体積の減少あるいは粒子状乳化剤の使用量を少なくすることによる低粘度達成の試みは、不十分な分離安定性を示すエマルションとなることが多い。関連用途の要求に応じて粘度を正確に設定することは、エマルションを例えばコーティング材としてをうまく利用することに欠かせないものである。
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第DE19842787号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、先行技術の不利点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、1種の実質的に水不溶性の成分、又は任意で複数の実質的に水不溶性の成分を含有する油相(相A)と、
任意で更にアルコール、カルボン酸、又は他の化合物等の有機化合物等の水溶性成分を含有しても良い水相(相B)と、
シリカ表面上の非シリル化表面シラノール基の量が出発シリカの50%〜95%で、シリカ表面1nm当たりのシラノール基が0.9〜1.7個であり、表面エネルギーの分散画分γ−s−Dが30〜80mJ/mであり、BET比表面積が30〜500m/gである様に部分的にシリル化され、油水界面に配置される焼成シリカと、
水相の電解質の量が、溶液のイオン強度Iが10−6mol/L超過するように設定されており、(ここで、イオン強度はI=1/2×Σc×zとして定義され、この場合、cは溶液中のイオンiの濃度であり、zはイオンiの電荷である。)
レーザー回析により測定された分散相の平均粒子径(すなわち平均液滴直径)が、0.5μm〜500μmであり、
任意で、顔料、保存料等の更なる物質と、を含有することを特徴とする水中油型(O/W)エマルションに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
驚くべきことに、また当業者により決して予期されなかったことには、粒子状乳化剤としての焼結凝集した焼成シリカ及び比較的少量の電解質を使用することにより、エマルションのレオロジー特性を用途の要求に応じて設定することができる。
【0010】
ここで、焼結凝集体は、DIN53206に従う二次構造体であり、例えば、溶媒含有又は溶媒非含有接着剤又はコーティング材等の液体媒体中に分散しているフィラーにおいて通常起こるようなせん断条件下において恒久的である、すなわち、これらの一次粒子に分離しない。これは、例えば、硬化シリカ結合剤分散体のTEM像が、凝集構造体のみを有し、単離一次粒子を有さないことから証明できる。
【0011】
さらに、焼結凝集体から成る粒子系は、準弾性光散乱による粒子径決定で得られる流体力学相当直径が、式a=6/ABET・d(ここで、ABETはDIN66131に従う窒素吸収により測定されたBET比表面積、dは一次粒子の密度である)により計算上得られる一次粒子の直径よりも大きく、少なくともファクター2であることを特徴とする。
【0012】
さらに、焼結凝集した系は、凝集体のフラクタル次元dfが好ましくは2.7未満(ここで、フラクタル次元dfは、半径Rのdf乗に比例する凝集体として定義される)であることを特徴とする。凝集体のフラクタル次元は、例えば、小角X線散乱又は中性子散乱により決定できる。
【0013】
本発明のエマルションは、好ましくは、非イオン性、カチオン性、及びアニオン性乳化剤等の従来の液体及び固体の、室温及び環境大気圧にて粒子状でない純粋な有機界面活性物質を、実質的に含有しない。
【0014】
ここで、非粒子状乳化剤とは、「分散体とエマルション」,G.Lagaly,O.Schulz,R.Zindel,Steinkopff,Darmstadt 1997、ISBN3−7985−1087−3,第14頁に与えられた分子、ポリマー、コロイド及び粒子の定義に従う、粒子及びコロイドではなく、分子及びポリマーであることを意味する。一般に、これらの有機乳化剤は、大きさ1nm未満、モル質量<10,000g/mol、元素分析により確定された炭素含有量>50重量%、及びモース硬度1未満である。
【0015】
また、本発明のエマルションには好ましくは実質的に含有されない乳化剤は、一般に20℃及び環境大気圧(すなわち900〜1100hPa)における水への溶解性が均質又はミセル型で1重量%以上である。本発明のエマルションは、水相中のこれらの表面活性物質の臨界ミセル濃度の0.1倍未満、好ましくは0.01倍未満、特に好ましくは0.001倍未満、とりわけ0.0001倍未満を最大濃度として、このような表面活性物質を含有してもよい。これは、本発明のエマルションの全重量に対するこれらの表面活性物質の濃度が、10重量%未満、好ましくは2重量%未満、特に好ましくは1重量%未満、とりわけ0重量%であることに対応する。
【0016】
本発明のエマルションは、油相(相A)を含有する。相Aは、1種の実質的に水不溶性の成分、任意で複数の実質的に水不溶性の成分を含有する。ここで、実質的に水不溶性とは、単独又は混合物としての水への構成成分の溶解性が、20℃及び環境大気圧(すなわち900〜1100hPa)にて測定して、水100gに対して10g未満、好ましくは水100gに対して1g未満、特に好ましくは水100gに対して0.1g未満であることを意味する。
本発明のエマルションでは、20℃及びせん断勾配10s−1にて測定した相Aの粘度は、0.1〜1,000,000mPa・s、好ましくは0.1〜500,000mPa・s、特に好ましくは0.2〜100,000mPa・sである。
本発明のエマルションでは、相Aは、好ましくは複数の構成成分を含有可能である。個々の構成成分は、20℃で液体及び固体のどちらの物質であってもよく、個々の構成成分の混合物全体が上述の粘度を有する。好ましくは、必ずではないが、多構成成分相Aは、真溶液、すなわち、さらに相界面が生じない均一相である。
【0017】
本発明のエマルションの相Aにより形成されてもよい、又はその中に存在してもよい実質的に水不溶性成分としては、任意でスチレン、ポリエーテル、ポリエポキシド等の反応性希釈剤に溶解された、脂肪族炭化水素及び芳香族炭化水素、アルコール、アルデヒド、ケトン、エーテル、エステル、アミン、カルボン酸、及びこれらの誘導体、メルカプタン、チオエーテル、ポリスチレン、ポリプロピレン、又はポリエチレン等のポリオレフィン等のオリゴマー又はポリマー化合物、例えば、フタル酸と1、2−プロパンジオールとのポリ凝縮物、又はフタル酸と1、2−プロパンジオールとマレイン酸とのポリ凝縮物等の飽和又は不飽和ポリエステル、あるいは、
【化1】

等のアルキレンビスグリシジルエーテル、
【化2】

等のビスフェノールA系ジグリシジルエーテル(ここで、nは好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜5である)、
【化3】

等のエポキシノボラック樹脂、
【化4】

等の二官能性エポキシ化合物、
【化5】

等の三官能性エポキシ化合物、
【化6】

等の四官能性エポキシ化合物等の、これらのモノマー又はオリゴマー前駆体、ポリウレタン、あるいは例えば、ポリエーテルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリエステルポリオール等のそのモノマー又はオリゴマー前駆体、ヘキサンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、又はヒドロキシルアミン又はマロン酸エステル誘導体等のブロッキング保護基を備えるイソシアネート等の多官能イソシアネート、合成又は天然医薬品又は化粧品活性物質等の複合有機化合物、染料、有機(ポリ)シラン、有機(ポリ)シロキサン、有機(ポリ)シラザン、及び有機(ポリ)シルカルバン(silcarbanes)等の有機ケイ素化合物等の有機要素化合物、又は遷移金属化合物が例示される。相Aは、顔料、フィラー、又はレオロジー添加剤等の油湿潤性粒子を任意で含有してもよい。
【0018】
本発明のエマルションは、さらに水相(相B)を含有する。加えて、水相Bは、好ましくは、酸、塩基、アルコール、カルボン酸、及びこれらの誘導体等の水溶性有機化合物、アミン又は他の有機化合物、ポリオール又はポリアミン又はポリアミドアミン等のポリマー又はオリゴマー化合物、合成又は天然の医薬品又は化粧品活性物質等の複合水溶性有機化合物、染料、水溶性有機ケイ素化合物等の有機要素化合物、あるいは水溶性遷移金属化合物等の更なる構成成分を含有してもよい。相Bは、顔料、フィラー、又はレオロジー添加剤等の水溶性粒子を任意で含有してもよい。
【0019】
エマルションを所要の粘度に設定するために、更に有機または無機(ポリ)電解質を水相のイオン強度が、好ましくは160mol/L未満、好ましくは10−6〜16mol/L、特に好ましくは10−5〜1.6mol/L、非常に特に好ましくは10−4〜0.8mol/Lとなるように水相Bに添加してもよい。(ここで、イオン強度はI=1/2×Σc×zとして定義され、この場合、cは溶液中のイオンiの濃度であり、zはイオンiの電荷である。)
【0020】
本発明のエマルションは、適切な焼成シリカの焼結凝集体を含有し、この焼結凝集体は油水界面に配列している。本発明にて使用される焼結凝集体は、部分的に水和性(すなわち完全に水和性でもなく、完全に非水和性でもない)の焼結凝集体である。
【0021】
本発明にて使用される焼結凝集体は、室温及び環境大気圧(すなわち900〜1100hPa)において固体の焼結凝集体である。
本発明にて使用される焼結凝集体は、好ましくはpH7.33、電解質バックグラウンド0.11mol、及び温度37℃、環境大気圧(すなわち900〜1100hPa)での水への溶解性が、0.1g/L未満、特に好ましくは0.05g/L未満である。
【0022】
本発明にて使用される焼結凝集体は、いずれの場合にも、好ましくは動的光散乱により測定して、1nm超過、好ましくは1〜5000nm、好ましくは10〜1000nm、特に好ましくは100〜600nm、非常に特に好ましくは200〜500nm、特に210〜450nmから選択される平均流体力学相当直径Dを有する。
【0023】
これは、油水界面の粒子層の形成に関連する焼結凝集体の衝突半径Rが、0.8nm超過、好ましくは0.8〜4000nm、好ましくは8〜850nm、特に好ましくは80〜500nm、非常に特に好ましくは170〜375nmであることを意味する。衝突半径は、凝集体の構成要素をちょうど包含する最小球の半径であり、衝突半径Rは、R.de Rooij,A.A.Potanin,D.van den Ende, J.Mellema、J.Chem.Phys.1993,99,9213に記載された方程式R=[R/0.76+2.63・R/d0.5(ここで、流体力学相当半径Rは、流体力学相当直径を2で割って得られ、凝集体のフラクタル次元dは1.8である)で得られる。
【0024】
さらに、本発明にて使用される焼結凝集体は、好ましくは準弾性光散乱による粒子径決定で得られる流体力学相当直径が、比表面積100m/gの場合(より小さい又はより大きい表面積の場合には、因子は対応して直線状に減少又は増加する)、少なくとも因子2、好ましくは因子5〜50、特に好ましくは因子7〜25、非常に特に好ましくは因子7.5〜16.5であり、式a=6/ABET・d(ここで、ABETはDIN66131に従う窒素吸収により測定されたBET比表面積、dは一次粒子の密度である)により、計算上に得られる一次粒子の直径よりも大きいことを特徴とする。
【0025】
本発明にて使用される焼結凝集体のモル質量は、好ましくはいずれの場合も静的光散乱により測定して、好ましくは10,000g/mol超過、特に好ましくは50,000〜50,000,000g/mol、とりわけ100,000〜10,000,000g/molである。
【0026】
本発明にて使用される焼結凝集体のBET比表面積は、好ましくは30〜500m/g、特に好ましくは80〜300m/gである。BET表面積は、既知の方法で測定されるが、好ましくはドイツ工業基準DIN66131及びDIN66132による。
本発明にて使用される焼結凝集体の炭素含有量は、好ましくは50重量%未満である。
本発明にて使用される焼結凝集体のモース硬度は、好ましくは1超過、特に好ましくは4超過である。
【0027】
温度25℃及び環境大気圧(すなわち900〜1100hPa)における、焼結凝集体の表面エネルギーγは、好ましくは30〜72.5mJ/mである。
温度25℃及び環境大気圧(すなわち900〜1100hPa)における、本発明にて使用されるシリカ焼結凝集体の表面エネルギーの分散画分y−s−Dは、30〜80mJ/m、好ましくは35〜70mJ/m、特に好ましくは40〜70mJ/mである。表面エネルギーy−s−Dの分散画分は、例えば、「逆ガスクロマトグラフィー」−「ポリマー及び他の材料の特性」、391ACS シンポジウムシリーズ,D R Lloyd,Th C Ward,H P Schreiber,18章,第248−261頁,ACS,ワシントンDC,1989,ISBN0−8412−1610−Xに従う。
【0028】
本発明のエマルションで使用され、部分的に水湿潤性であるシリカを調製できる好ましい出発シリカは、四塩化ケイ素等のハロゲン化ケイ素化合物、メチルトリクロロシラン等のメチルクロロシラン等のハロゲン化有機ケイ素化合物、トリ塩化水素シラン等の塩化水素シラン、メチルジ塩化水素シラン等の他のメチル塩化水素シラン、炭化水素との混合物としてのアルキルクロロシラン、又は上述の有機ケイ素化合物のあらゆる所望の噴霧可能な、好ましくは揮発性の混合物、及び水素・酸素炎又は一酸化炭素・酸素炎になることが可能な炭化水素等からの炎色反応等の既知のあらゆる所望の様態で調製可能である。シリカの調製は、例えば、精製工程において更に水を添加して又は添加せずに達成されるが、水を添加しないことが好ましい。
【0029】
本発明のエマルションの調製のためのシリカ焼結凝集体として、好ましくは、部分的に疎水化された、特に好ましくは部分的にシリル化された、シリカ焼結凝集体が使用される。
ここで、部分的シリル化とは、シリカ表面全体がシリル化されていないのでもなく、シリカ表面全体がシリル化されているのでもないことを意味する。
【0030】
シリル化剤ラジカルによるシリカ焼結凝集体の表面被覆率τは、好ましくは粒子表面全体の5〜95%、特に好ましくは10〜90%、とりわけ15〜75%である。
シリル化剤による被覆率は、例えば、炭素含有量等による元素分析手段、又はシリカ焼結凝集体の反応性表面シラノール基の残量の測定により、決定され得る。
【0031】
部分シリル化とは、シリカの炭素含有量が0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、特に好ましくは0.1〜3重量%、とりわけ0.1〜1.5重量%の場合であることを意味する。
部分的シリル化とは、さらに、シリカ表面上の非シリル化表面シラノール基の含有量が、出発シリカの50%〜95%、特に好ましくは60〜90%、とりわけ65〜85%であることを意味する。
これは、好ましくは表面シラノール基(SiOH)の密度が、粒子表面1nm当たり0.9〜1.7個、好ましくは1.1〜1.6個、特に好ましくは1.2〜1.55個であることを意味する。
【0032】
シリル化に使用可能な比表面積200m/gの出発シリカにとって、これは、シラノール基が0.3〜0.57mmol/g、好ましくは0.36〜0.54mmol/g、特に好ましくは0.39〜0.51mmol/gであることを意味し;より小さい又はより大きい表面積を有するシリカにとっては、これは、表面シラノール基が、直線的に比例してより多い又はより少ないことを意味する。
【0033】
固体粒子の部分的疎水化又は部分的シリル化の方法は、既知である。
【0034】
出発シリカのBET比表面積は、25〜500m/gであることが好ましい。出発シリカは、好ましくは直径200〜1000nmの範囲の焼結凝集体(DIN53206による定義)を有し、焼結凝集体から成る凝集体(DIN53206による定義)を有するシリカは、外部せん断荷重(即ち、測定条件)に依存して、1〜500μmの大きさである。
【0035】
出発シリカの表面のフラクタル次元は、好ましくは2.3以下であり、表面のフラクタル次元Dは、以下のように定義される:粒子表面Aは粒子半径RのD乗に比例する。出発シリカの利用しやすい、すなわち化学反応しやすい表面シラノール基(SiOH)の密度は、好ましくは比表面積1nm当たり1.5〜2.5個、特に好ましくは1.6〜2.0個である。
【0036】
本発明にて使用されるシリカ焼結凝集体の調製のために、高温(1000℃超過)で調製されたシリカが、出発シリカとして使用可能であり、焼成調製されたシリカが特に好ましい。新たに調製されバーナーから直接入手される、一時的に保存された、又は既に個装された疎水性シリカを使用することが可能である。
【0037】
重装かさ密度又はタップ密度が60g/L未満である非圧縮シリカだけでなく、タップ密度が60g/L超過である圧縮シリカも、出発シリカとして使用可能である。
異なるシリカの混合物、例えば異なるBET表面積のシリカの混合物が、出発シリカとして使用できる。
【0038】
シリカのシリル化のために、例えば、
(i)式
SiY4−d (I)
のオルガノシラン又はオルガノシラザン、及び/又はこれらの部分的加水分解生成物、
(ここで、Rは同一でも異なってもよく、一価の、任意で置換され、任意でモノ又はポリ不飽和であり、任意で酸素原子で中断されてもよい1〜24個の炭素原子を有する芳香族炭化水素ラジカルであり、dは1、2又は3であり、及びYは同一でも異なってもよく、水素原子、更なるシリルラジカルが結合しても良い一価のSi−N−結合窒素ラジカル、−OR、又は−OC(O)ORである(ここで、Rは水素原子、又は一価の、任意で置換され、任意で酸素原子で中断されてもよいモノ又はポリ不飽和の炭化水素ラジカルである));
又は、
(ii)式
(ORSiO(4−e−f)/2 (II)
の単位を含む直鎖状、分岐鎖状、又は環状有機シロキサン、
(ここで、Rは同一でも異なってもよく、Rについて上述した意味を有し、Rは同一でも異なってもよく、Rについて上述した意味を有し、eは0、1、2又は3であり、fは0、1、2又は3、ただしe+fの合計は≦3である);
あるいは、(i)及び(ii)の混合物である有機ケイ素化合物が、好ましくは使用され得る。
【0039】
シリカのシリル化に使用されてもよい有機ケイ素化合物は、例えば、式(I)のシラン又はシラザンの混合物であり、これらは一方でメチルクロロシランを含み、もう一方でアルコキシシラン及び任意でジシラザンを含むことが好ましい。
式(I)におけるRは、上述のラジカルであり、好ましくはメチル、オクチル、フェニル、及びビニルラジカル、特に好ましくはメチルラジカルが例示される。
としては、好ましくはメチル、エチル、プロピル、及びオクチルラジカル、特に好ましくはメチル及びエチルラジカルが例示される。
【0040】
式(I)の有機シランとしては、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、オクチルメチルジクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、オクタデシルメチルジクロロシラン、及びオクタデシルトリクロロシラン等のアルキルクロロシラン;メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、及びトリメチルメトキシシラン等のメチルメトキシシラン;メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、及びトリメチルエトキシシラン等のメチルエトキシシラン;メチルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、及びトリメチルアセトキシシラン等のメチルアセトキシシラン;フェニルトリクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン、フェニルジメチルクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、及びフェニルジメチルエトキシシラン等のフェニルシラン;ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメトキシジエトキシシラン、及びビニルジメチルエトキシシラン等のビニルシラン;ヘキサメチルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、及びビス(3,3−トリフルオロプロピル)テトラメチルジシラザン等のジシラザン;オクタメチルシクロテトラシラザン等のシクロシラザン;並びにトリメチルシラノール等のシラノールが例示される。
メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、及びトリメチルクロロシラン、あるいはヘキサメチルジシラザンが好ましい。
【0041】
式(II)の有機シロキサンとしては、ジアルキルシリロキシ単位の平均数が3以上の直鎖状又は環状ジアルキルシロキサンが例示される。ジアルキルシロキサンは、好ましくはジメチルシロキサンである。トリメチルシリロキシ末端基、ジメチルヒドロキシシリロキシ末端基、ジメチルクロロシリロキシ末端基、メチルジクロロシリロキシ末端基、ジメチルメトキシシリロキシ末端基、メチルジメトキシシリロキシ末端基、ジメチルエトキシシリロキシ末端基、メチルジエトキシシリロキシ末端基、ジメチルアセトキシシリロキシ末端基、メチルジアセトキシシリロキシ末端基、及びジメチルヒドロキシシリロキシ末端基を有する直鎖状ポリジメチルシロキサンが特に好ましく、特にトリメチルシリロキシ末端基、又はジメチルヒドロキシシリロキシ末端基を有する直鎖状ポリジメチルシロキサンが好ましい。
【0042】
前記ポリジメチルシロキサンは、25℃における粘度が2〜100mPa・sであることが好ましい。
有機シロキサンの更なる例は、シリコーン樹脂であり、特にアルキル基としてメチル基を含有するもの、特に好ましくはRSiO1/2単位及びSiO4/2単位を含有するもの、あるいはRSiO3/2単位及び任意でRSiO2/2単位を含有するものである(ここで、Rは上述の意味を有する)。
【0043】
式(II)の単位を含む前記シリコーン樹脂は、25℃における粘度が500〜5000mm/sであることが好ましい。
25℃における粘度が1000mm/s超過である好ましいシリコーン樹脂は、技術的に取り扱いやすい溶媒(好ましくはメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール;ジエチルエーテル等のエーテル;テトラヒドロフラン;ヘキサメチルジシロキサン等のシロキサン;シクロヘキサン又はn−オクタン等のアルカン;トルエン又はキシレン等の芳香族化合物)中に濃度1重量%超過で溶解したものであり、温度25℃及び環境大気圧における混合物の粘度は1000mm/s未満である。
【0044】
固体有機シロキサンの中で好ましいのは、技術的に取り扱いやすい溶媒(上で定義されたもの)中に濃度10重量%超過で溶解したものであり、温度25℃における混合物の粘度は1000mm/s未満である。
好ましくは本発明にて使用されるシリカ焼結凝集体を調製するために行われる疎水化及びシリル化は、回分式反応(すなわちバッチ操作)、又は連続反応として実行されるが、連続反応であることが好ましい。
疎水化及びシリル化は、1工程、あるいは連続する2又は3工程で実現可能である。これは、装填(シリル化剤の物理吸着)が反応の初期に達成され、好ましくは精製工程が反応の後期に達成されることを意味する。(1)装填工程、(2)反応工程、(3)精製工程の連続する3工程が好ましい。
【0045】
装填温度は、好ましくは−30〜350℃、好ましくは20〜120℃である。
反応温度は、好ましくは0〜400℃、特に好ましくは20〜330℃である。
反応時間は、好ましくは1分間〜24時間、好ましくは30分間〜4時間である。
反応圧力は、好ましくは大気圧近辺(すなわち900〜1100hPa)である。
精製温度は、好ましくは80〜400℃の範囲である。
【0046】
シリカとシリル化剤との有効な移動及び完全な混合が、(1)装填工程、(2)反応工程、及び(3)精製工程中に必要である。これは、好ましくは機械的流動化又はガス媒介流動化により達成される。ガス媒介流動化は、二次反応、分解反応、酸化プロセス、並びに引火及び爆発現象を引き起こさない全ての不活性ガスにより、達成され得る。ここで、表面的ガス速度は0.05〜5cm/s、特に好ましくは0.05〜1cm/sである。機械的流動化は、パドルスターラー、アンカースターラー、及び他の適した攪拌部材により、達成され得る。
【0047】
特に好ましい実施形態では、酸素含有量の低い大気を維持するために十分なガスの量のみ(好ましくは5体積%未満)が供給され、その後、流動化が純粋に機械的に達成される。
【0048】
反応は、好ましくはシリル化シリカの酸化を引き起こさない大気中、すなわち好ましくは酸素含有量が10体積%未満、特に好ましくは2.5体積%未満にて実行され、酸素含有量が1体積%未満であるとき、最良の結果が得られる。
【0049】
シリカへのシリル化剤の効果的な導入が起こる。適用温度において、シリル化剤が液状化合物であるならば、好ましくは、効果的な噴霧技術が使用される。圧力(5〜20bar)における単一ノズルでの噴霧、圧力(ガス及び液体、2〜20bar)における2つのノズルでの噴霧、アトマイザーを用いた非常に微細な分配等である。
【0050】
シリル化剤は、好ましくは非常に微細に分離されたエアロゾルとして添加されることが好ましい。前記エアロゾルは、沈降速度が0.1〜20cm/sであり、液滴径が空力相当直径で5〜25μmであることが好ましい。
【0051】
プロトン性溶媒として、液状又は揮発性アルコールあるいは水等を添加してもよい。一般的なアルコールは、イソプロパノール、エタノール及びメタノールである。上述のプロトン性溶媒の混合物を添加することも可能である。プロトン性溶媒を添加しないことが好ましい。
また、酸性又は塩基性触媒を添加してもよい。これらの触媒は、アンモニア等のルイス塩基又はブレンステッド塩基としての塩基性の特徴を有してもよく、あるいは塩化水素等のルイス酸又はブレンステッド酸としての酸性の特徴を有してもよい。触媒が使用されるならば、微量、すなわち1000ppm未満が好ましい。
触媒は無添加であることが特に好ましい。
【0052】
精製工程は、移動を特徴とし、ゆっくりとした移動及びわずかな混合が好ましい。
さらに精製工程は、表面ガス速度0.001〜10cm/sに相当する上昇したガスの導入を特徴とする。
さらに、精製工程は、機械的攪拌部材による混合を含んでもよい。攪拌部材は、好ましくは、完全な渦ではなく、混合及び流動化が起こるように、調整及び移動される。
【0053】
さらに、シリル化工程では、例えば、プレスロール、ボールミル、エッジミル、スクリュー圧縮機、及びブリケッタ等の機械的圧密方法が、使用され得る。
さらに、ピンディスクミル又は粉砕系統の器具等のシリカの凝集を解くプロセス、及び/又は例えばプレスロール、又は適した真空方法により含有空気又はガスを吸い出す圧密、又はプレスロール、ボールミル、エッジミル、スクリュー圧縮機、及びブリケッタ等の他の方法等のシリカの機械的圧密方法が、シリル化工程前、シリル化工程中、又はシリル化工程後において使用可能である。
【0054】
また、シリカ焼結凝集体の調製は、本発明のエマルションの調製中でも達成可能である。
本発明のエマルションは、エマルション全体を100重量部として、好ましくは0.1〜50重量部、特に好ましくは1〜15重量部、とりわけ2〜10重量部のシリカ焼結凝集体を含有する。
【0055】
本発明のエマルションにおいては、油相の体積分率Φは、Φ=油相の体積/(油相の体積+水相の体積)で定義され、0.1〜0.9、好ましくは0.2〜0.8、特に好ましくは0.3〜0.75、とりわけ0.4〜0.7であり得る。
本発明のエマルションにおいては、水相の体積分率Φは、Φ=水相の体積/(油相の体積+水相の体積)で定義され、0.1〜0.9、好ましくは0.2〜0.8、特に好ましくは0.25〜0.7、とりわけ0.3〜0.6であり得る。
【0056】
特に、本発明のエマルションは、流動性を確立するために、無機または有機電解質を含有することを特徴とする。電解質の添加により、粘度が増加する。エマルションに添加される電解質は、好ましくは10−6mol/L超過、好ましくは10−6〜1mol/L、特に好ましくは10−5〜0.1mol/L、非常に特に好ましくは10−4〜0.05mol/Lである。電解質は、粘性を確立するために、乳化工程中又はその後に添加可能である。
【0057】
さらに、本発明のエマルションは、イオン強度IがI=1/2×Σc×zで定義され、エマルションのイオン強度Iが 10−6mol/L以上、好ましくは10−6〜16mol/L、特に好ましくは10−5〜1.6mol/L、非常に特に好ましくは10−4〜0.8mol/Lであることを特徴とする。(ここで、cはイオンiの濃度であり、zはイオンiの電荷である。)
【0058】
電解質は、エマルションの調製中、又はエマルションの調製後に添加してもよいが、調製後の添加が好ましい。
電解質は、低分子有機または無機化合物、あるいは高分子オリゴ電解質すなわちポリ電解質でよい。
【0059】
本発明にて使用される電解質は、純粋な物質の形態、又は様々な電解質の混合物として使用してもよいが、純物質が好ましい。
【0060】
本発明で使用可能な電解質としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、リン酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、リン酸マグネシウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸鉛、塩化鉛等の可溶性ハロゲン化物、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩、第一から第四主族の金属、又は半金属の亜リン酸塩;四塩化チタン、三塩化クロム、二塩化鉄、三塩化鉄、塩化ニッケル、塩化亜鉛、四塩化ジルコニウム、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸鉄等の水溶性ハロゲン化物、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩、第一から第十亜族の金属亜リン酸塩が例示される。
【0061】
使用され得る電解質の更なる例としては、ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、ギ酸カリウム、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、酒石酸カリウム、メタクリル酸カリウム等の有機酸のアルカリ金属、及びアルカリ土類金属塩が挙げられる。
【0062】
更なる例としては、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム等の水溶性テトラアルキルアンモニウム化合物が挙げられる。
ポリ電解質としては、塩化ポリジアリルジメチルアンモニウム、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸等のポリテトラアルキルアンモニウム化合物が挙げられる。
好ましい電解質は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属塩であり、特に好ましいのはナトリウム及びカルシウム塩であり、非常に特に好ましいのは塩化ナトリウム及び塩化カルシウムである。
【0063】
特に、本発明のエマルションは、一例として上述した電解質を添加することで、エマルションの粘度が増加し、相対粘度ηrelが1.005超過の値であることを特徴とする。本発明のエマルションのイオン強度Iが1×10−5〜200mol/Lの範囲で、好ましくはηrel>1.005;本発明のエマルションのイオン強度Iが5×10−5〜100mol/Lの範囲で、好ましくはηrel>1.005、本発明のエマルションのイオン強度Iが1×10−4〜20mol/Lの範囲で、非常に特に好ましくはηrel>1.005であり、相対粘度ηrelは、ηrel=η/ηとして定義され(ここで、ηは本発明のエマルションの絶対粘度であり、ηはイオン強度I1×10−6mol/Lで前記出発エマルションの絶対粘度である。)、いずれの場合もコーン・アンド・プレート測定システム(測定間隔105μm)を使用して、25℃、せん断速度D=10−1にて測定したものである。
【0064】
さらに、本発明のエマルションは、エマルション伝導度が1μS×cm−1以上で、0.001Pa・s超過の粘度を有することを特徴とする。粘度は、エマルションの伝導度が1μS×cm−1〜10μS×cm−1の範囲で、0.05〜1×10Pa・sであることが好ましく、エマルションの伝導度が1μS×cm−1〜10S×cm−1の範囲で、0.1〜5×10Pa・sであることが好ましく、エマルションの伝導度が1μS×cm−1〜5S×cm−1の範囲で、0.1〜1×10Pa・sであることが非常に特に好ましく、特殊形態においては、粘度は、エマルションの伝導度が1μS×cm−1〜0.1S×cm−1の範囲で、0.1〜1×10Pa・sであり、粘度は、コーン・アンド・プレート測定システム(測定間隔105μm)を使用して、25℃、せん断速度D=10s−1で測定したものであり、エマルションの伝導度は、エマルションの伝導度=測定された伝導度/水相の体積分率に従って得られ、エマルションの伝導度は、伝導度測定セル、QCond2400により測定されるものである。
【0065】
さらに、エマルションは、本発明の電解質が添加される際、損失係数tanδが、1未満の値であることを特徴とする。1×10−5〜200mol/Lの範囲のイオン強度Iで、好ましくはtanδ<1であり、5×10−5〜100mol/Lの範囲のイオン強度Iで、好ましくはtanδ<1であり、1×10−4〜20mol/Lの範囲のイオン強度Iで、非常に特に好ましくはtanδ<1である。(ここで、tanδは、損失係数G”及び貯留係数G’の商G“/G‘として定義され、tanδは、線形粘弾性の範囲で、初期プラトー値として得られ、コーン・アンド・プレート測定システム(測定間隔105μm)を使用して、25℃、水相の体積分率Φ0.5にて、定角速度ω=6.28rad/sで、0.05〜10Paにせん断応力振幅を振った振幅実験により決定される。)
【0066】
さらに、これは、本発明のエマルションが、エマルションの伝導度が1μS×cm−1以上で、損失係数tanδが1未満であることを意味する。エマルションの伝導度が5μS×cm−1〜10S×cm−1の範囲で、好ましくはtanδ<1であり、エマルションの伝導度が10μS×cm−1〜0.1S×cm−1の範囲で、特に好ましくはtanδ<1である。(ここで、tanδは、損失係数G”及び貯留係数G’の商G“/G‘として定義され、tanδは、線形粘弾性の範囲で、初期プラトー値として得られ、コーン・アンド・プレート測定システム(測定間隔105μm)を使用して、25℃、水相の体積分率Φ0.5にて、定角速度ω=6.28rad/sで、0.05〜10Paにせん断応力振幅を振った振幅実験により決定され、エマルションの伝導度は、エマルションの伝導度=測定された伝導度/油相の体積分率に従って得られ、エマルションの伝導度は、伝導度測定セル、QCond2400により測定される。)
【0067】
さらに、本発明のエマルションは、例えば、セル測定技術によるレーザー回析装置でのレーザー回析により測定された分散相の平均粒子径(すなわち平均液滴直径)が、好ましくは0.5μm〜500μm、好ましくは0.7μm〜100μm、特に好ましくは0.7μm〜50μm、非常に特に好ましいのは0.7μm〜20μmであることを特徴とする。
【0068】
さらなる主題は、調製するエマルション内に均一相を形成する液体において高濃度シリカ微細分散体を調製する第一工程と;分散相の全量と、第一工程で調製した、本発明に関わるエマルション内に均一相を形成する液体中の高濃度シリカ微細分散体とを含む高粘度プレエマルションを、焼結凝集シリカの全所要量が存在する量の該分散体を用いて調製する第二工程と;残余均一相をゆっくり計り入れる第三工程と;いずれかの前記工程において、電解質を計り入れる工程;というエマルションの調製方法である。
【0069】
高粘度状態(以下「堅相」と称す)での乳化工程が、本発明のエマルションの上述の特性を達成するために重要であることがわかった。
【0070】
具体的には、本発明のエマルションの調製方法は、以下の各工程を含む。
− 本発明のエマルション中で均一相を形成する液体中において、好適なシリカの高濃度微細分散体を調製する工程。
− 分散相の全量と、本発明のエマルション中で均一相を形成する液体中の好適なシリカの高濃度微細分散体とから成る高粘度プレエマルションを調製する工程であって、焼結凝集シリカの全所要量が存在する量の該分散体を使用する工程。
− せん断しながら、残余均一相をゆっくり計り入れる工程。
【0071】
本発明のエマルション中で均一相を形成する液体中における好適なシリカの高濃度微細分散体の調製は、原則として、高速スターラー、高速溶解機、ローター・スターラーシステム、超音波分散機、あるいはボールミル又はビーズミル等の高せん断作用を有する攪拌部材による混和等の、シリカ分散体の調製のための既知の方法に従って達成可能である。
【0072】
分散体中のシリカ焼結凝集体の濃度は、1〜80重量%、好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは10〜40重量%、非常に特に好ましくは12〜30重量%である。
【0073】
高粘度のプレエマルションは、原則として、エマルションの調製のための既知の方法に従って調製可能であるが、下に記載する方法が、本発明のエマルションを得るのに特に適していることが見出された。
【0074】
方法1:
− 初めに、上述の高濃度シリカ分散体を、所要のシリカ焼結凝集体の全量を含有するような初期導入量で導入する。
− 例えば、高速スターラー、高速溶解機又はローター・ステーターシステムにより連続的に均一化しながら、分散相の全容量をゆっくり計り入れる。
− その後、例えば、高速スターラー、高速溶解機、又はローター・ステーターシステムにより任意で連続的に均一化しながら、純粋な均一相の所望の残余体積を、ゆっくり計り入れる。
【0075】
方法2:
− 初めに、分散相の全容量を導入する。
− 例えば、高速スターラー、高速溶解機又はローター・ステーターシステムにより連続的に均一化しながら、上述の高濃度シリカ分散相をゆっくり計り入れる。シリカ焼結凝集体の全所用量を含有する量を計り入れる。
− その後、例えば、高速スターラー、高速溶解機、又はローター・ステーターシステムにより、任意で連続的に均一化しながら、純粋な均一相の所望の残余体積を、ゆっくり計り入れる。
【0076】
記載された方法は、連続式でもバッチ式でも実行可能であるが、連続式が好ましい。
乳化工程中の液相の温度は、0℃〜80℃、好ましくは10℃〜50℃、特に好ましくは20℃〜40℃である。
乳化工程は、大気圧(すなわち900〜1100hPa)、高圧、又は真空で実行可能であるが、大気圧での方法が好ましい。
【0077】
本発明のエマルションは、既にこれまでにエマルションが使用されている全ての目的のために使用できる。これらは、例えば、有機(ポリ)シラン、有機(ポリ)シロキサン、有機(ポリ)シラザン、及び有機(ポリ)シルカルバン(silcarbanes)等の有機ケイ素化合物;シリル終端ポリイソブチレン(例えば、カネカ社(日本)からEpion(R)として入手可能)等のポリオレフィン;ポリウレタン、ヒドロキシル含有ポリエステル、ヒドロキシル含有ポリエーテル、メチルジメトキシシリルプロピル終端ポリプロピレングリコール(例えば、「MSポリマー」としてカネカ社(日本)から入手可能)、ヒドロキシル含有ポリアクリレート等のポリオール;反応性ポリオールと過剰のポリイソシアネートとから調製された、脂肪族及び芳香族ポリイソシアネート、イソシアネート終端ポリウレタンプレポリマー、及びこれらのシリル終端誘導体(例えば、DESMOSEAL(R)の名称でBayer AG(ドイツ)から入手可能)等のポリイソシアネート;ビスフェノールA系エポキシド等の(ポリ)エポキシ化合物、ビスフェノールA系グリシジルエーテル等のグリシジロキシ機能を含有するモノマー、オリゴマー及びポリマー化合物、エポキシノボラック原料及び樹脂、エポキシ化樹脂、エポキシアクリル酸、直鎖状アルキレンビスグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシド、及び3、4−エポキシシクロへキシル3,4−エポキシシクロへキサカルボキシレート等の脂環式グリシジルエーテル、及びp−アミノフェノールのトリグリシジルエーテル及びメチレンジアリニンのトリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシド;ヘキサメチレンジアミン等の環状及び直鎖状アミン、4、4’−メチレンビス(2、6−ジエチルアニリン)等の芳香族アミン、ビス(2−アミノアルキル)ポリアルキレンオキシド、ビス(2−アミノプロピル)ポリプロピレングリコール、及びジェフアミン等の(ポリ)アミン、(ポリ)アミドアミン、(ポリ)メルカプタン、(ポリ)カルボン酸、(ポリ)カルボン酸無水物;グリシジルアクリレート、アルキルアクリレート及びこれらのエステル等のアクリル酸及びこれらのエステル、メタクリレート及びこれらのエステル、チオプラスト(例えば、チオコール(R)(Thiokol)として東レ・チオコール社から入手可能)等の多硫化形成ポリマー及び多硫化物を含有する水系コーティング材、接着剤、及び封止剤である。
【0078】
エポキシ化合物としては、
【化7】

等のアルキレンビスグリシジルエーテル、
【化8】

等のビスフェノールA系ジグリシジルエーテル(nは好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜5である)が例示される。
エポキシノボラック樹脂としては、式
【化9】

のもの、
【化10】

等の二官能性エポキシ化合物、
【化11】

等の三官能性エポキシ化合物、
【化12】

等の四官能性エポキシ化合物が例示される。
【0079】
さらに、本発明のエマルションは、化粧品及び医薬品用途、洗浄剤及びクレンジング剤、又は固体物質及び液体物質の界面特性を変化するための用途(例えば、撥水剤、接着促進剤、離型剤、紙加工剤、又は泡制御剤)に使用可能である。さらに、本発明のエマルションは、例えば制御遊離系としてW/O/W又はO/W/O多重エマルションの調製のために、又は反応性物質の分離のために使用可能である。
【実施例】
【0080】
実施例1:
固体粒子の調製
DIN66131及びDIN66132に従うBET比表面積200m/gを有する焼成シリカ100g(ワッカー・ケミー社(ドイツ、ミュンヘン)から、ワッカーHDK(R)N20の名称で入手可能)を直径12.5cmの攪拌ブレードにて1000rpmで攪拌しながら流動化させ、窒素ガスで15分間処理後、窒素流をオフにする。その後、温度約25℃、周囲圧力約1013hPaにおいて、ジメチルジクロロシラン2gを2つのノズルにてエアロゾルとして流動化シリカ中に噴霧する。さらに30分間攪拌後、処理されたシリカを1000L/hの穏やかな窒素流の下で、容量100Lのオーブン中で300℃にて2時間加熱する。
下記の特性を有する白色粉体シリカが得られた。
シリカは完全な水湿潤性ではない。これは、Ultraturraxを用いて、シリカ18重量%のみが水中に取り込まれ、1日間安定な流動性を有する物質を生じることから明らかである。完全に水湿潤性である出発シリカ(ワッカーHDK(R)N20)は、同一条件及び同一粘度において、24重量%が水中に取り込まれる。
【0081】
シリカのさらなる特性を表1にまとめる。
【表1】

【0082】
− BET比表面積は、DIN66131及びDIN66132に従って測定される。
− 非シリル化シリカシラノール基の残量は、上述のように調製されたシリカのシリカシラノール基の量を、未処理出発シリカ(ワッカーHDK(R)N20)のシリカシラノール基の量で割ることにより得られる。シリカシラノール基の量は、酸塩基滴定(G.W.Sears、Anal.Chem.28(12)、(1950)、1981に類似)により決定される。
方法:水/メタノール=50:50中に懸濁するシリカの酸塩基滴定;等電点のpH範囲以上及びシリカの溶解のpH範囲以下の範囲での滴定;100%SiOH(シリカ表面シラノール基)を有する未処理シリカ:SiOH−phil=1.8SiOH/nm;シリル化シリカ:SiOH−silyl;非シリル化シリカシラノール基の残量;%SiOH=SiOH−silyl/SiOH−phil×100%。
【0083】
− 炭素含有量%Cは、炭素の元素分析により決定される。O流中1000℃以上でのサンプルの燃焼、得られたCOのIRを使用した同定及び定量化;LECO244装置。
− メタノール数は、以下のように測定される:水メタノール混合物への湿潤性(水中のメタノールの体積%)=メタノール数(MN):等体積のシリカと等体積の水メタノール混合物とを振とうする;メタノール0%からスタートする;湿潤しない場合、シリカは浮く;メタノール含有量が5体積%よりも高い混合物を使用すべきである;湿潤すると、シリカは沈む:水中のメタノール(%)の割合から、メタノール数(MN)が得られる。
【0084】
− 方法1の水に対する接触角θは、以下のように測定される。シリカのペレットを従来の方法にて注意深く調製し、水に対する接触角を決定することにより、粒子の接触角が得られる。この場合、空気中の二回蒸留水(bidistilled water)を含む付着水滴をデジタル像により評価する。
【0085】
− 接触角θは、気層(g)中の液体(l)及び固体(s)の表面張力及び表面エネルギーγの比を以下のように規定する:
cosθ=(γ(sl)−γ(sg))/γ(lg)
[J]=[N・m]なので、固体の表面エネルギー(mJ/m)は、液体の表面張力(mN/m)と次元的に同一である。
【0086】
− 方法2の水に対する接触角θは、確定した堆積、この場合、0.25以上の開放気泡率及び孔半径rを有するわずかに圧密されたシリカのペレットについて、既知の表面張力を有する既知の及び規定された液体の吸引に基づいて、ルーカス−ウォッシュバーン方程式を使用した吸収方法により測定される。吸引速度dh/dt及び吸引された液体カラムの高さhは、時間tの関数としての粒子堆積により、液体の質量吸収mから計算され、吸引された液体の粘度η及び吸引された液体の表面張力γから、既知の粒子半径rの場合、余弦値θ(cos(θ))が計算でき、それゆえ、ルーカス−ウォッシュバーンの方程式(Washburn,E.W.,Phys.Rev.17,273(1921)及びR.Lucas,Kolloid s.23,15(1918))により粒子表面に対する液体の接触角θが計算できる。J.Schoelkopfら、J.Colloid.Interf.Sci.227,119−131(2000)参照。
【0087】
公知の表面張力を有する液体として、0:100、5:95、10:90、15:85、20:80、25:75、30:70、35:65、40:60、45:55、50:50、55:45、60:40、65:35、70:30、75:25、80:20、85:15、90:10、95:5、100:0の混合比(メタノールの体積:水の体積)のメタノール水混合物を使用する。
【0088】
dh/dt=r・γ・cos(θ)/(4・η)
及び、
=r・γ・t・cos(θ)/(2・η)
t=A・m : ウォッシュバーン方程式
(t:時間、m:吸引された液体の質量)

(η:液体の粘度、ρ:液体の密度、γ:液体の表面張力、θ:液体−粉体の接触角、C:粉体及びサンプル管の幾何学的特性のみに依存するファクター)
【0089】
測定方法を図5に図示する。
− 粒子の表面エネルギーγは、図6に見られるように、各液体の接触角に対する吸収方法により上記で決定されたように、規定の液体に対するシリカの各接触角θのプロットするZismanプロットにより、臨界表面エネルギーγ−critとして決定できる。
【0090】
− しかしながら、物質密度dMD>1g/mLの一次粒子から成り、かさ密度dSD<<1g/mLの凝集体を形成する焼成シリカ等の粒子に関しては、様々な表面張力の液体への振とう方法が使用可能である。湿潤しない時、粒子凝集体は浮く。湿潤する時、凝集体中の空気は置換され、粒子凝集体は沈む。
様々な液体及び様々な表面張力を使用することにより、粒子凝集体が沈む時点の液体の表面張力が正確に決定できる。これにより、粒子の表面エネルギーγの指標としての臨界表面エネルギーγcritが得られる。
【0091】
また、この方法は、水の表面張力(72.5mN/m)をメタノール、エタノール、又はイソプロパノールの添加により低下することで、単純化できる。
一般には、初めに水を入れ、水面上に一定量の粒子凝集体を置き(浮遊している)、攪拌しながら滴定によりアルコールを加える。粒子凝集体が沈む時点の水とアルコールとの比を記録し、この水とアルコールとの比においての表面張力が、標準方法(リング脱離法、ウィルヘルミー法)を使用した別個の試験にて、正確に決定される。
【0092】
より効果的には、ここで行われるように、水とメタノールの規定の混合物を調製し、これらの混合物の表面張力を決定する。別個の試験として、これらの水メタノール混合物を規定量(例えば、体積比1:1)の粒子凝集体の層で被い、規定の条件下にて振とうする(例えば、手又はタンブルミキサーを用いた約1分間の穏やかな振とう)。
【0093】
粒子凝集体がちょうど沈まない水メタノール混合物、及び粒子凝集体がちょうど沈むメタノール含有量がより高い水メタノール混合物が決定される。表1に見られるように、後者のメタノール水混合物の表面張力により、粒子の表面エネルギーγの指標としての臨界表面エネルギーγcritが得られる。
【0094】
− 表面エネルギーの分散画分γ−s−Dは、「逆ガスクロマトグラフィー」−「ポリマー及び他の物質の特徴」、391ACSシンポジウムシリーズ、D R Lloyd、Th C Ward,H P Schreiber,18章、第248−261頁,ACS,ワシントンDC1989、ISBN0−8412−1610−Xに従って、プローブとしてアルカンを使用した逆ガスクロマトグラフィーにより決定される。
水性分散体の調製(本発明に関わらない)
上述の部分的疎水化シリカ18gを、500mLのステンレス鋼ビーカー内で、歯状円盤を有する溶解機により、脱塩水82gに予め分散させる。得られた高粘度であるが流動性を有する物質を、流速10mL/分、振幅力300ワットにて超音波セルを通す。得られた分散体の分析データを表2にまとめる。
【0095】
【表2】

【0096】
− 分散体の固体含有量は以下の方法で決定される:磁性皿内で水性分散体10gと同量のエタノールとを混合し、150℃のN流乾燥炉にて、恒量まで蒸発させる。乾燥残渣の質量mから、固体含有量/%=m×100/10gによって固体含有量が得られる。
【0097】
− pHは、pH連結電極により測定される。
− 焼結凝集体の平均直径は、光相関スペクトロスコピーによる以下の方法により測定される。適量の出発分散体を脱塩水中で磁気攪拌機にて攪拌することにより、シリカ含有量が1重量%、0.75重量%、0.5重量%、及び0.25重量%である4つの分散体を調製する。サンプルは、PCS装置コールターN4プラス(コールターより)を用いて、検出角30.1°、62.6°、及び90°にて測定される。焼結凝集体の平均直径は、シリカ含有量0%で得られる角度依存測定値を外挿し、その後、3つの測定角度において平均することにより得られる。
− 分散体の粘度は、コーン−アンド−プレートセンサーシステム(測定間隔105μm)を有するレオメーターMCR600(ハッケより)を使用して、25℃、せん断速度D=10s−1にて決定される。
【0098】
比較例:エマルションの調製(本発明に関わらない)
初めに、固体含有量18重量%の上述のシリカ分散体69.5gを、500mLのステンレス鋼ビーカー中に導入する。Ultraturraxを用いて10,000rpmで攪拌し、水で冷却しながら、粘度100mPasのポリジメチルシロキサン150g(ワッカー・ケミー社(ドイツ、ミュンヘン)から「AK100」の名称で入手可能)を15分間でゆっくり計り入れる。混合物の温度は、60℃を超えてはならない。その後、同様に10,000rpmで攪拌しながら、脱塩水93gを15分間で高粘度安定物質にゆっくり添加する。混合物の温度は、60℃を超えてはならない。低粘度白色O/Wエマルションが生じた。この分析データを表3にまとめる。
【0099】
本発明の実施例2:
初めに、固体含有量18重量%の実施例1のシリカ分散体69.5gを500mLのステンレス鋼ビーカーに入れる。Ultraturraxを用いて10,000rpmで攪拌し、水で冷却しながら、粘度100mPasを有するポリジメチルシロキサン(「AK100」の名称でワッカー・ケミー社(ドイツ、ミュンヘン)から入手可能)150gを15分間でゆっくり計り入れる。混合物の温度は、60℃を超えてはならない。その後、同様に10,000rpmで攪拌しながら、脱塩水93gを15分間で高粘度安定物質にゆっくり添加する。混合物の温度は、60℃を超えてはならない。その後、攪拌しながら、塩化ナトリウム0.0035gをエマルションに添加する。白色O/Wエマルションが生じた。この分析データを表3にまとめる。
【0100】
本発明の実施例3:
初めに、固体含有量18重量%の実施例1のシリカ分散体69.5gを500mLのステンレス鋼ビーカーに入れる。Ultraturraxを用いて10,000rpmで攪拌し、水で冷却しながら、粘度100mPasを有するポリジメチルシロキサン(「AK100」の名称でワッカー・ケミー社(ドイツ、ミュンヘン)から入手可能)150gを15分間でゆっくり計り入れる。混合物の温度は、60℃を超えてはならない。その後、同様に10,000rpmで攪拌しながら、脱塩水93gを15分間で高粘度安定物質にゆっくり添加する。混合物の温度は、60℃を超えてはならない。その後、攪拌しながら、塩化ナトリウム0.022gをエマルションに添加する。白色O/Wエマルションが生じた。この分析データを表3にまとめる。
【0101】
本発明の実施例4:
初めに、固体含有量18重量%の実施例1のシリカ分散体69.5gを500mLのステンレス鋼ビーカーに入れる。Ultraturraxを用いて10,000rpmで攪拌し、水で冷却しながら、粘度350mPasを有するポリジメチルシロキサン(「AK100」の名称でワッカー・ケミー社(ドイツ、ミュンヘン)から入手可能)150gを15分間でゆっくり計り入れる。混合物の温度は、60℃を超えてはならない。その後、同様に10,000rpmで攪拌しながら、脱塩水93gを15分間で高粘度安定物質にゆっくり添加する。混合物の温度は、60℃を超えてはならない。その後、攪拌しながら、塩化ナトリウム0.088gをエマルションに添加する。白色O/Wエマルションが生じた。この分析データを表3にまとめる。
【0102】
本発明の実施例5:
初めに、固体含有量18重量%の実施例1のシリカ分散体69.5gを500mLのステンレス鋼ビーカーに入れる。Ultraturraxを用いて10,000rpmで攪拌し、水で冷却しながら、平均モル質量<700g/molであるビスフェノールA系エポキシ樹脂(「Araldite GY 776 BD」の名称でVantico GmbH & Co KG社から入手可能)150gを15分間でゆっくり計り入れる。混合物の温度は、60℃を超えてはならない。その後、同様に10,000rpmで攪拌しながら、脱塩水93gを15分間で高粘度安定物質にゆっくり添加する。混合物の温度は、60℃を超えてはならない。その後、攪拌しながら、塩化ナトリウム0.088gをエマルションに添加する。白色O/Wエマルションが生じた。この分析データを表3にまとめる。
【0103】
本発明の実施例6:
初めに、固体含有量18重量%の実施例1のシリカ分散体69.5gを500mLのステンレス鋼ビーカーに入れる。Ultraturraxを用いて10,000rpmで攪拌し、水で冷却しながら、粘度100mPasを有するポリジメチルシロキサン(「AK100」の名称でワッカー・ケミー社(ドイツ、ミュンヘン)から入手可能)150gを15分間でゆっくり計り入れる。混合物の温度は、60℃を超えてはならない。その後、同様に10,000rpmで攪拌しながら、脱塩水93gを15分間で高粘度安定物質にゆっくり添加する。混合物の温度は、60℃を超えてはならない。その後、攪拌しながら、塩化カルシウム0.0416gをエマルションに添加する。白色O/Wエマルションが生じた。この分析データを表3にまとめる。
【0104】
【表3】

【0105】
伝導度:伝導度測定セル、QCond2400により測定。Ωcorr=Ωmeas/Ωにより、測定値をΩ=1に補正。
分散体の粘度:コーン・アンド・プレートセンサーシステム(測定間隔105μm)を備えたレオメーターMCR600(ハッケより)を使用して、25℃、せん断速度D=10s−1にて測定。
分散体の損失係数tanδ:コーン・アンド・プレートセンサーシステム(測定間隔105μm)を備えたレオメーターMCR600(ハッケより)を使用して、25℃にて、水相の体積分率F0.5、定角速度ω=6.28rad/sで、0.05〜10Paにせん断応力振幅を振った振幅実験により測定。
前記相対粘度ηrelは、ηrel=η/η,として定義する。(ここで、ηは本発明のエマルションの絶対粘度であり、ηはイオン強度I1×10−6mol/Lにおける前記出発エマルションの絶対粘度である。)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種の実質的に水不溶性の成分、又は任意で複数の実質的に水不溶性の成分を含有する油相(相A)と、
任意で更にあるいはアルコ−ル、カルボン酸、又は他の化合物等の有機化合物等の水溶性成分を含有してもよい水相(相B)と、
焼成シリカであって、シリカ表面上の非シリル化表面シラノ−ル基の量が、シリカ表面1nm当たりのシラノール基が0.9〜1.7個であることに相当する、出発シリカの50%〜95%となり、表面エネルギーの分散画分y−s−Dが30〜80mJ/mとなり、及びBET比表面積が30〜500m/gとなるように部分的にシリル化され且つ油水界面に配置される焼成シリカと、
水相の電解質の含有量が、溶液のイオン強度Iが10−6mol/Lより大きくなるように設定され、(ここで、イオン強度はI=1/2×Σc×zとして定義され、cは溶液中のイオンiの濃度であり、zはイオンiの電荷である。)、
レーザー回析による分散相の平均粒子径(すなわち平均液滴直径)が0.5μm〜500μmであり、
任意で、顔料又は保存料等の更なる物質と、を含有することを特徴とする水中油型(O/W)エマルション。
【請求項2】
電解質濃度が10−6mol/Lより大きい請求項1に記載のエマルション。
【請求項3】
伝導度が1μs・cm−1より大きい請求項1又は2に記載のエマルション。
【請求項4】
電解質がアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である請求項1から3いずれかに記載のエマルション。
【請求項5】
電解質がナトリウム塩またはカルシウム塩である請求項4に記載のエマルション。
【請求項6】
エマルションの調製方法であって、
エマルション内に均一相を形成する液体において、シリカの高濃度微細分散体を調製する第一工程と、
分散相の全量と、第一工程で調製した、エマルション内に均一相を形成する液体中の高濃度シリカ微細分散体とを含む高粘度プレエマルションを、焼結凝集シリカの全所要量が存在する量の該分散体を用いて調製する第二工程と、
残りの均一相をゆっくり計り入れる第三工程と、
前記工程のいずれかにおいて、電解質を計り入れる工程と
を有することを特徴とするエマルションの調製方法。
【請求項7】
コ−ティング材、接着剤、封止剤、化粧品や医薬品用途のエマルション、洗浄剤及びクレンジング剤、撥水剤、接着促進剤、離型剤、紙加工剤又は泡制御剤等の固体物質及び液体物質の界面特性を変化するための用途、W/O/W又はO/W/O多重エマルションを調製するための制御遊離系としての用途、並びに不活性物質と反応性物質とを分離するための用途としての請求項1から5のいずれかに記載のエマルションの使用。
【請求項8】
請求項1から5のいずれかに記載のエマルションを含有するコ−ティング材、接着剤、又は封止剤。
【請求項9】
請求項1から5のいずれかに記載のエマルションを含有する洗浄剤又はクレンジング剤。
【請求項10】
請求項1から5のいずれかに記載のエマルションを含有する撥水剤、接着促進剤、離型剤、紙加工剤、又は泡制御剤。
【請求項11】
請求項1から5のいずれかに記載のエマルションを含有するW/O/W又はO/W/O多重エマルション。

【公表番号】特表2008−509801(P2008−509801A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525213(P2007−525213)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【国際出願番号】PCT/EP2005/008248
【国際公開番号】WO2006/018112
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】