説明

電解質組成物

【課題】リチウム塩を添加したとしてもイオン伝導性が低下しにくく、かつ優れた難燃性を有する電解質組成物を提供する。
【解決手段】下記成分A及びBを含有する電解質組成物。(A)単官能(メタ)アクリル酸エステル、飽和カルボン酸ビニルエステル又はヒドロキシ基が置換していてもよいアルキルビニルエーテルに由来する繰り返し単位と、多官能(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位とを有する高分子化合物。(B)下記式(1)で表される化合物


〔式(1)中、R1及びR2は、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を示す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン液体を含有する電解質組成物、該電解質組成物の製造方法及び前記電解質組成物を用いた蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオンバッテリー、電気二重層キャパシタ、ハイブリッドキャパシタ及びリチウムイオンキャパシタ)等の蓄電デバイスに使用される電解質として、主に有機系溶剤に支持電解質を溶解させて得られる有機電解液が用いられてきたが、この有機電解液は可燃性があることから、発火性や液漏れ等の点で問題となっていた。また、斯かる液漏れの発生を抑える技術として、溶剤を用いない高分子固体電解質が提案されているが、室温付近でのイオン伝導性が低いため、実用化に至っていない。
【0003】
上述のような背景の下、有機電解液を高分子化合物に含浸させ、ゲル状又は固体状の電解質組成物とすることで、発火や液漏れの発生を抑える技術の開発が進められており、電気化学デバイス用の電解液として、常温で液体の溶融塩であるイオン液体が注目を集めている。このようなイオン液体を用いた電解質組成物として、例えば、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンをアニオン成分として含むイオン液体及びリチウム塩を含有する電解液を、開環重合性官能基を有する架橋性ポリマーを用いて固体化した電解質組成物が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−277413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これまでの電解質組成物は、前記特許文献1の電解質組成物のようにリチウム塩を添加すると、イオン伝導性が低下するという問題があった。
したがって、本発明の課題は、リチウム塩を添加したとしてもイオン伝導性が低下しにくく、かつ優れた難燃性を有する電解質組成物、該電解質組成物の製造方法及び前記電解質組成物を用いた蓄電デバイスの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者らは、鋭意検討した結果、特定のイオン液体に加えて、特定の高分子化合物を用いることにより、リチウム塩を添加したとしてもイオン伝導性が低下しにくく、かつ優れた難燃性を有する電解質組成物が得られることを見出した。
【0007】
すなわち、I)本発明は、下記成分(A)及び(B)を含有する電解質組成物を提供するものである。
【0008】
(A)(a1)単官能(メタ)アクリル酸エステル、飽和カルボン酸ビニルエステル又はヒドロキシ基が置換していてもよいアルキルビニルエーテルに由来する繰り返し単位と、(a2)多官能(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位とを有する高分子化合物(ただし、成分(a1)が単官能アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位のときは、成分(a2)は多官能(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位であり、成分(a1)が単官能メタクリル酸エステルに由来する繰り返し単位のときは、成分(a2)は多官能アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位である)
(B)下記式(1)で表される化合物(以下、化合物(1)とも称する)
【0009】
【化1】

【0010】
〔式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換若しくは非置換の炭素数1〜20のアルキル基を示し、R3及びR4は、それぞれ独立に、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、又はハロゲン原子を示す。〕
【0011】
また、II)本発明は、(a1’)単官能(メタ)アクリル酸エステル、飽和カルボン酸ビニルエステル又はヒドロキシ基が置換していてもよいアルキルビニルエーテルと、(a2’)多官能(メタ)アクリル酸エステル(ただし、成分(a1’)が単官能アクリル酸エステルのときは、成分(a2’)は多官能(メタ)アクリル酸エステルであり、成分(a1’)が単官能メタクリル酸エステルのときは、成分(a2’)は多官能アクリル酸エステルである)とを、成分(B)の存在下で重合させることを特徴とするI)の電解質組成物の製造方法を提供するものである。
【0012】
更に、III)本発明は、I)の電解質組成物を用いた蓄電デバイスを提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電解質組成物は、リチウム塩を添加したとしてもイオン伝導性が低下しにくく、液漏れの可能性が少なく、優れた難燃性及び熱安定性を有する。したがって、本発明の電解質組成物は、リチウムイオンバッテリー、電気二重層キャパシタ、ハイブリッドキャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等の蓄電デバイスの電解質、帯電防止剤等として有用である。
また、本発明の製造方法によれば、簡便且つ容易に前記電解質組成物を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】電解質組成物S1〜S4の熱重量分析結果を示す図である。
【図2】電解質組成物S5〜S8の熱重量分析結果を示す図である。
【図3】電解質組成物S1〜S4の示差走査熱量分析結果を示す図である。
【図4】電解質組成物S5〜S8の示差走査熱量分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の電解質組成物は、成分(A)の高分子化合物及び成分(B)の化合物(1)を含有する。まず、本発明の電解質組成物の各構成成分について詳細に説明する。
【0016】
〔(A)高分子化合物〕
成分(A)の高分子化合物は、(a1)単官能(メタ)アクリル酸エステル、飽和カルボン酸ビニルエステル又はヒドロキシ基が置換していてもよいアルキルビニルエーテルに由来する繰り返し単位と、(a2)多官能(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位とを有する高分子化合物(ただし、成分(a1)が単官能アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位のときは、成分(a2)は多官能(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位であり、成分(a1)が単官能メタクリル酸エステルに由来する繰り返し単位のときは、成分(a2)は多官能アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位である)である。なお、成分(A)は、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。ここで、(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルを含む概念である。
【0017】
前記単官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル等の単官能(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の単官能(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸ベンジル等の単官能(メタ)アクリル酸アラルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、単官能(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。斯かるアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、その炭素数としては、自立膜として機能させる観点から、1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4が特に好ましい。
【0018】
前記飽和カルボン酸ビニルエステルの炭素数の下限としては、自立膜として機能させる観点から、3が好ましく、4がより好ましい。一方、上限としては、同様の観点から、12が好ましく、10がより好ましく、8が更に好ましく、6が特に好ましい。
飽和カルボン酸ビニルエステルの好適な具体例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n−酪酸ビニル等の分子内に1つのエステル結合を有するものが挙げられる。この中でも、酢酸ビニルが特に好ましい。
【0019】
前記アルキルビニルエーテルの炭素数としては、3〜12が好ましく、4〜6がより好ましい。このようなアルキルビニルエーテルとしては、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等が挙げられる。なお、ヒドロキシ基が置換していているアルキルビニルエーテルとしては、ヒドロキシブチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0020】
上述のような成分(a1)の中でも、イオン伝導性の点から、単官能(メタ)アクリル酸エステル又は飽和カルボン酸ビニルエステルに由来する繰り返し単位が好ましく、飽和カルボン酸ビニルエステルに由来する繰り返し単位が特に好ましい。
【0021】
前記多官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリル酸エステル;トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の3官能(メタ)アクリル酸エステル;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
これらの中でも、2官能(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートがより好ましい。斯かるアルキレン基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、その炭素数としては、自立膜として機能させる観点から、1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4が特に好ましい。また、前記化合物中のオキシアルキレン単位の重合度としては、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。
【0022】
また、前記成分(a1)と成分(a2)とのモル比〔(a1)/(a2)〕としては、イオン伝導性及び難燃性の点から、1〜20が好ましく、2〜15がより好ましく、2〜10が特に好ましい。
【0023】
なお、前記成分(A)は、前記成分(a1)及び(a2)以外のエチレン性不飽和基を有する化合物に由来する繰り返し単位を有していてもよい。該エチレン性不飽和基を有する化合物としては、例えば、安息香酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリル酸アミド又はその誘導体、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、酢酸アリル、安息香酸アリル、アジピン酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、フタル酸ジアリル等が挙げられる。このようなエチレン性不飽和基を有する化合物に由来する繰り返し単位の含有量は、成分(A)の全量に対して、90モル%以下が好ましく、80モル%以下がより好ましく、50モル%以下が更に好ましい。
【0024】
〔(B)化合物(1)〕
成分(B)の前記化合物(1)は、イオン液体である。ここで、イオン液体は、イオンから構成される常温で液体の塩(常温溶融塩)を意味する。なお、成分(B)は、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0025】
前記式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換若しくは非置換の炭素数1〜20のアルキル基を示す。この中でも、置換又は非置換の炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。なお、該アルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
前記アルキル基の炭素数としては、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4が特に好ましい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。この中でも、メチル基、エチル基が特に好ましい。
【0026】
また、前記アルキル基に置換し得る基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;ヒドロキシ基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;アリール基;アラルキル基等が挙げられる。これら置換基の位置及び数は任意であり、置換基を2個以上有する場合、該置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0027】
また、式(1)中、R3及びR4は、それぞれ独立に、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、又はハロゲン原子を示す。
【0028】
前記アルキル基の炭素数としては、1〜3が好ましい。このようなアルキル基としては、前記R1と同様のものが挙げられるが、メチル基が特に好ましい。
前記式(1)中のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。この中でも、フッ素原子が好ましい。なお、アルキル基に置換しているハロゲン原子の位置及び数は任意であり、ハロゲン原子を2以上有する場合、当該ハロゲン原子は同一でも異なっていてもよい。
【0029】
また、前記R3及びR4としては、イオン伝導性及び難燃性の点から、ハロゲン原子が好ましい。
【0030】
また、化合物(1)の具体例としては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが挙げられる。
【0031】
また、電解質組成物中の成分(A)と成分(B)との質量比〔(A)/(B)〕の下限としては、イオン伝導性及び難燃性の点から、0.1が好ましい。一方、上限としては、同様の点から、5が好ましく、2がより好ましく、0.5が特に好ましい。
【0032】
また、本発明の電解質組成物は、前記成分(A)及び成分(B)に加えて、(C)リチウム塩を含有していてもよい。前記電解質組成物は、(C)リチウム塩を添加したとしても、優れたイオン伝導性を維持することができる。
〔(C)リチウム塩〕
成分(C)のリチウム塩は、特に限定されず、リチウムイオンとその対アニオンとからなるものであればよく、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
前記対アニオンとしては、有機スルホニルイミド;六フッ化リン酸、四フッ化ホウ素酸等の無機酸;カルボン酸に由来するものが挙げられる。この中でも、有機スルホニルイミドに由来するものが好ましく、下記式(2)で表されるものがより好ましい。
【0033】
【化2】

【0034】
〔式(2)中、R3及びR4は、前記と同義である。〕
【0035】
また、前記リチウム塩としては、例えば、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0036】
また、電解質組成物が成分(C)を含有する場合、成分(B)と成分(C)との質量比〔(C)/(B)〕の下限は、例えば、0.05程度である。一方、上限としては、イオン伝導性及び難燃性の点から、5が好ましく、3がより好ましく、0.5が特に好ましい。
【0037】
なお、本発明の電解質組成物は、前記成分(A)〜(C)の他に、例えば、前記成分(B)以外のイオン液体、前記成分(C)以外の支持電解質、無機フィラー、密着助剤、高分子添加剤、反応性希釈剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、帯電防止剤、無機充填剤、防カビ剤、調湿剤、難燃剤等を含んでいてもよい。
前記成分(B)以外のイオン液体としては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−1メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチルN−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0038】
次に、本発明の電解質組成物の性状等について説明する。
本発明の電解質組成物としては、イオン伝導性の向上と液漏れの抑制とを両立する観点及び広い電位窓を持つ電気化学的に安定な化合物を用いる観点から、非水系電解質組成物が好ましく、ゲル状電解質組成物がより好ましい。また、前記電解質組成物の形態としては、液漏れの抑制等の観点及び電極間に挟んで使用する場合の性能や利便性を向上させる観点から、フィルム状が好ましい。
【0039】
次に、本発明の電解質組成物の製造方法について説明する。
本発明の電解質組成物の製造方法は、特に限定されないが、(a1’)単官能(メタ)アクリル酸エステル、飽和カルボン酸ビニルエステル又はヒドロキシ基が置換していてもよいアルキルビニルエーテルと、(a2’)多官能(メタ)アクリル酸エステル(ただし、成分(a1’)が単官能アクリル酸エステルのときは、成分(a2’)は多官能(メタ)アクリル酸エステルであり、成分(a1’)が単官能メタクリル酸エステルのときは、成分(a2’)は多官能アクリル酸エステルである)とを、成分(B)の存在下で重合させる方法が好ましい。斯かる方法によれば、成分(a1’)及び成分(a2’)からワンポットで電解質組成物を得ることができるため、バッテリーセルを組み立てた後に、斯かるセル内部でモノマーから電解質組成物を得ることも可能である。
【0040】
前記重合反応には、重合開始剤を用いるのが好ましい。斯かる重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤が挙げられる。
前記熱重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物(アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等)、ジアシルパーオキサイド(アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド等)、ケトンパーオキサイド(メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等)、ハイドロパーオキサイド(過酸化水素、tert−ブチルハイドパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等)、ジアルキルパーオキサイド(ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等)、パーオキシエステル類(tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート等)、過硫酸塩類(過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等)等が挙げられる。なお、これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0041】
また、前記光重合開始剤は、光ラジカル重合を活性化するものであれば特に限定されず、活性エネルギー線の種類(紫外線、可視光、電子線等)に応じて適宜選択することができる。該光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン(Irgacure−907)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(Irgacure−369)、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)―フェニル(2−ヒドロキシ)プロピルケトン等のアセトフェノン類;ベンゾフェノン類;t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド等の過酸化物類;ベンゾイン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類;キサントン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類; 1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジニル類;芳香族ヨードニウム塩類;芳香族スルホニウム塩類等が挙げられる。なお、これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
また、光重合開始剤を使用する場合、必要に応じて光増感剤、光促進剤等の光触媒化合物を用いてもよい。
【0042】
前記重合開始剤の使用量としては、モノマー全質量に対し、通常、0.5〜10質量%程度であるが、硬化性及び成分(A)の高分子化合物の物性の点から、0.8〜5質量%が好ましく、0.8〜3質量%がより好ましい。
【0043】
前記重合反応の反応温度としては、常温〜200℃が好ましく、常温〜120℃がより好ましい。
また、前記重合反応の反応時間は、例えば、0.25〜48時間であり、好ましくは0.25〜24時間である。
また、重合反応は、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスは、特に限定されないが、例えば、アルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガス等が挙げられる。
【0044】
前記製造方法によって得られる本発明の電解質組成物は、下記実施例に示すとおり、リチウム塩を添加したとしてもイオン伝導性が低下しにくく、液漏れの可能性が少なく、優れた難燃性及び熱安定性を有する。
したがって、本発明の電解質組成物は、キャパシタや電池等の充放電に耐え得ると推測できるので、バッテリー(リチウムイオンバッテリー等)やキャパシタ(電気二重層キャパシタ、ハイブリッドキャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等)等の蓄電デバイスの電解質、帯電防止剤;その他の電解質フィルム(帯電防止フィルム、耐熱フィルム、難燃フィルム、接着フィルム、イオン伝導性フィルム、導電性フィルム等)等の成形体等として有用である。
【実施例】
【0045】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0046】
実施例で使用した試薬は以下に示すとおりである。
メタクリル酸メチル(以下、MMAと称す)及びアクリル酸メチル(以下、MAと称す)は、和光純薬工業から購入し、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液、純水及び食塩水でそれぞれ3回ずつ洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、水素化ナトリウム上から蒸留して使用した。
酢酸ビニル(以下、VAcと称す)は、和光純薬工業から購入し、5wt%亜硫酸水素水溶液で洗浄後、純水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥して、水素化カルシウム上から蒸留して使用した。
【0047】
ジメタクリル酸エチレングリコール(以下、EGDMAと称す)は、和光純薬工業から購入し、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液、純水及び食塩水でそれぞれ3回ずつ洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して使用した。
ジアクリル酸エチレングリコール(以下、EGDAと称す)は、ジエチルエーテル中でアクリル酸クロリド、エチレングリコール及びトリエチルアミンを作用させて合成し、これを濃縮、蒸留して使用した。
【0048】
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(以下、EMImTFSIと称す)及び1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(以下、EMImFSIと称す)は、関東化学から購入し真空乾燥して使用した。
リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(以下、LiTFSIと称す)は、和光純薬工業から購入し、真空乾燥して使用した。
【0049】
アゾイソブチロニトリル(以下、AIBNと称す)は、和光純薬工業から購入し、エタノールを用いて再結晶して使用した。
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(以下、HCPKと称す)は、和光純薬工業から購入してそのまま使用した。
プロピレンカーボネート(以下、PCと称す)は、東京化成工業から購入し、水素化カルシウム上から蒸留して使用した。
【0050】
実施例で使用したモールドは以下に示すとおりである。
熱開始重合用のモールドは、表面にPTFEテープ(Permacel P422)を貼り付けた2枚のスライドガラスに、18mm×55mmの凹型のPTFEシート(厚さ500μm)をスペーサーとして挟み、これをクリップで固定して作製した。
光開始重合用のモールドは、2枚のスライドガラス(MATSUNAMI 65mm×50mm×1.2mm)に切り込みを入れた凹型のPTFEシート(厚さ100μm)をスペーサーとして挟み作製した。
【0051】
実施例1 電解質組成物S1の製造
MA(103mg,1.20mmol)、EGDA(51mg,0.30mmol)、EMImTFSI(620mg,1.59mmol)及びAIBN(1.5mg,9.0μmol)の混合物を熱開始重合用のモールドに入れ、このモールドを1Lのガラス容器内に入れて容器内部を窒素置換した。次いで、ガラス容器を70℃で4時間加熱して自立性のネットワークポリマーMA/EGDA−EMImTFSIフィルム(電解質組成物S1)を得た。
【0052】
実施例2 電解質組成物S2の製造
MA(103mg,1.20mmol)、EGDA(51mg,0.30mmol)、EMImTFSI(620mg,1.59mmol)、LiTFSI(99mg,0.34mmol)及びAIBN(1.5mg,9.0μmol)の混合物を熱開始重合用のモールドに入れ、このモールドを1Lのガラス容器内に入れて容器内部を窒素置換した。次いで、ガラス容器を70℃で4時間加熱して自立性のネットワークポリマーMA/EGDA−EMImTFSI−LiTFSIフィルム(電解質組成物S2)を得た。
【0053】
実施例3 電解質組成物S3の製造
MA(103mg,1.20mmol)、EGDA(51mg,0.30mmol)、EMImFSI(620mg,2.13mmol)及びAIBN(1.5mg,9.0μmol)の混合物を熱開始重合用のモールドに入れ、このモールドを1Lのガラス容器内に入れて容器内部を窒素置換した。次いで、ガラス容器を70℃で4時間加熱して自立性のネットワークポリマーMA/EGDA−EMImFSIフィルム(電解質組成物S3)を得た。
【0054】
実施例4 電解質組成物S4の製造
MA(103mg,1.20mmol)、EGDA(51mg,0.30mmol)、EMImFSI(620mg,2.13mmol)、LiTFSI(99mg,0.34mmol)及びAIBN(1.5mg,9.0μmol)の混合物を熱開始重合用のモールドに入れ、このモールドを1Lのガラス容器内に入れて容器内部を窒素置換した。次いで、ガラス容器を70℃で4時間加熱して自立性のネットワークポリマーMA/EGDA−EMImFSI−LiTFSIフィルム(電解質組成物S4)を得た。
【0055】
実施例5 電解質組成物S5の製造
MA(103mg,1.20mmol)、EGDMA(50mg,0.25mmol)、EMImFSI(620mg,2.13mmol)及びAIBN(1.5mg,9.0μmol)の混合物を熱開始重合用のモールドに入れ、このモールドを1Lのガラス容器内に入れて容器内部を窒素置換した。次いで、ガラス容器を70℃で4時間加熱して自立性のネットワークポリマーMA/EGDMA−EMImFSIフィルム(電解質組成物S5)を得た。
【0056】
実施例6 電解質組成物S6の製造
MA(103mg,1.20mmol)、EGDMA(50mg,0.25mmol)、EMImFSI(620mg,2.13mmol)、LiTFSI(99mg,0.34mmol)及びAIBN(1.5mg,9.0μmol)の混合物を熱開始重合用のモールドに入れ、このモールドを1Lのガラス容器内に入れて容器内部を窒素置換した。次いで、ガラス容器を70℃で4時間加熱して自立性のネットワークポリマーMA/EGDMA−EMImFSI−LiTFSIフィルム(電解質組成物S6)を得た。
【0057】
実施例7 電解質組成物S7の製造
MA(103mg,1.20mmol)、EGDMA(50mg,0.25mmol)、EMImTFSI(620mg,1.59mmol)及びAIBN(1.5mg,9.0μmol)の混合物を熱開始重合用のモールドに入れ、このモールドを1Lのガラス容器内に入れて容器内部を窒素置換した。次いで、ガラス容器を70℃で4時間加熱して自立性のネットワークポリマーMA/EGDMA−EMImTFSIフィルム(電解質組成物S7)を得た。
【0058】
実施例8 電解質組成物S8の製造
MA(103mg,1.20mmol)、EGDMA(50mg,0.25mmol)、EMImTFSI(620mg,1.59mmol)、LiTFSI(99mg,0.34mmol)及びAIBN(1.5mg,9.0μmol)の混合物を熱開始重合用のモールドに入れ、このモールドを1Lのガラス容器内に入れて容器内部を窒素置換した。次いで、ガラス容器を70℃で4時間加熱して自立性のネットワークポリマーMA/EGDMA−EMImTFSI−LiTFSIフィルム(電解質組成物S8)を得た。
【0059】
実施例9 電解質組成物S9の製造
MA(103mg,1.20mmol)、EGDA(51mg,0.30mmol)、EMImFSI(620mg,2.13mmol)及びHCPK(1.5mg,7.0μmol)の混合物を光開始重合用のモールドに入れ、UV照射装置(MORITEX UV Light source MUV−202U,320w maximum,Lamp:L−2570)を使用して30分UV照射し、自立性のネットワークポリマーMA/EGDA−EMImFSIフィルム(電解質組成物S9)を得た。
【0060】
実施例10 電解質組成物S10の製造
MA(103mg,1.20mmol)、EGDA(51mg,0.30mmol)、EMImFSI(620mg,2.13mmol)、LiTFSI(99mg,0.34mmol)及びHCPK(1.5mg,7.0μmol)の混合物を光開始重合用のモールドに入れ、UV照射装置(MORITEX UV Light source MUV−202U,320w maximum,Lamp:L−2570)を使用して30分UV照射し、自立性のネットワークポリマーMA/EGDA−EMImFSI−LiTFSIフィルム(電解質組成物S10)を得た。
【0061】
実施例11 電解質組成物S11の製造
VAc(103mg,1.20mmol)、EGDA(51mg,0.30mmol)、EMImFSI(620mg,2.13mmol)及びAIBN(1.5mg,9.0μmol)の混合物を熱開始重合用のモールドに入れ、このモールドを1Lのガラス容器内に入れて容器内部を窒素置換した。次いで、ガラス容器を70℃で4時間加熱して自立性のネットワークポリマーVAc/EGDA−EMImFSIフィルム(電解質組成物S11)を得た。
【0062】
実施例12 電解質組成物S12の製造
VAc(103mg,1.20mmol)、EGDA(51mg,0.30mmol)、EMImFSI(620mg,2.13mmol)、LiTFSI(99mg,0.34mmol)及びAIBN(1.5mg,9.0μmol)の混合物を熱開始重合用のモールドに入れ、このモールドを1Lのガラス容器内に入れて容器内部を窒素置換した。次いで、ガラス容器を70℃で4時間加熱して自立性のネットワークポリマーVAc/EGDA−EMImFSI−LiTFSIフィルム(電解質組成物S12)を得た。
【0063】
実施例13 電解質組成物S13の製造
VAc(103mg,1.20mmol)、EGDA(51mg,0.30mmol)、EMImFSI(620mg,2.13mmol)及びHCPK(1.5mg,7.0μmol)の混合物を光開始重合用のモールドに入れ、UV照射装置(MORITEX UV Light source MUV−202U,320w maximum,Lamp:L−2570)を使用して30分UV照射し、自立性のネットワークポリマーVAc/EGDA−EMImFSIフィルム(電解質組成物S13)を得た。
【0064】
実施例14 電解質組成物S14の製造
VAc(103mg,1.20mmol)、EGDA(51mg,0.30mmol)、EMImFSI(620mg,2.13mmol)、LiTFSI(99mg,0.34mmol)及びHCPK(1.5mg,7.0μmol)の混合物を光開始重合用のモールドに入れ、UV照射装置(MORITEX UV Light source MUV−202U,320w maximum,Lamp:L−2570)を使用して30分UV照射し、自立性のネットワークポリマーVAc/EGDA−EMImFSI−LiTFSIフィルム(電解質組成物S14)を得た。
【0065】
比較例1 電解質組成物C1の製造
MMA(100mg,1.00mmol)、EGDMA(50mg,0.25mmol)、EMImTFSI(605mg,1.55mmol)及びAIBN(1.2mg,7.5μmol)の混合物を熱開始重合用のモールドに入れ、このモールドを1Lのガラス容器内に入れて容器内部を窒素置換した。次いで、ガラス容器を70℃で4時間加熱して自立性のネットワークポリマーMMA/EGDMA−EMImTFSIフィルム(電解質組成物C1)を得た。
【0066】
比較例2 電解質組成物C2の製造
MMA(80mg,0.80mmol)、EGDMA(40mg,0.20mmol)、EMImTFSI(482mg,1.23mmol)、LiTFSI(77mg,0.27mmol)及びAIBN(1.0mg,6.0μmol)の混合物を熱開始重合用のモールドに入れ、このモールドを1Lのガラス容器内に入れて容器内部を窒素置換した。次いで、ガラス容器を70℃で4時間加熱して自立性のネットワークポリマーMMA/EGDMA−EMImTFSI−LiTFSIフィルム(電解質組成物C2)を得た。
【0067】
比較例3 電解質組成物C3の製造
MMA(100mg,1.00mmol)、EGDMA(50mg,0.25mmol)、EMImFSI(605mg,2.08mmol)及びAIBN(1.2mg,7.5μmol)の混合物を熱開始重合用のモールドに入れ、このモールドを1Lのガラス容器内に入れて容器内部を窒素置換した。次いで、ガラス容器を70℃で4時間加熱して自立性のネットワークポリマーMMA/EGDMA−EMImFSIフィルム(電解質組成物C3)を得た。
【0068】
比較例4 電解質組成物C4の製造
MMA(80mg,0.80mmol)、EGDMA(40mg,0.20mmol)、EMImFSI(482mg,1.65mmol)、LiTFSI(77mg,0.27mmol)及びAIBN(1.0mg,6.0μmol)の混合物を熱開始重合用のモールドに入れ、このモールドを1Lのガラス容器内に入れて容器内部を窒素置換した。次いで、ガラス容器を70℃で4時間加熱して自立性のネットワークポリマーMMA/EGDMA−EMImFSI−LiTFSIフィルム(電解質組成物C4)を得た。
【0069】
比較例5 電解質組成物C5の製造
MA(103mg,1.20mmol)、EGDA(51mg,0.30mmol)、PC(620mg,6.08mmol)、LiTFSI(99mg,0.34mmol)及びAIBN(1.5mg,9.0μmol)の混合物を熱開始重合用のモールドに入れ、このモールドを1Lのガラス容器内に入れて容器内部を窒素置換した。次いで、ガラス容器を70℃で4時間加熱して自立性のネットワークポリマーMA/EGDA−PC−LiTFSIフィルム(電解質組成物C5)を得た。
【0070】
前記の電解質組成物S1〜S14及び電解質組成物C1〜C5について、以下のイオン伝導度測定及び燃焼性試験を行った。
【0071】
試験例1 イオン伝導度測定
電解質組成物の小片(10mm×5mm)を切り出し、これを2枚のステンレス製電極に挟み込み、交流4端子法により、ケミカルインピーダンスメータ3532−80(HIOKI)及び4端子プローブ9140を用いて、電圧50mV、周波数4Hz〜100KHzでインピーダンスを測定し、ナイキストプロットによりイオン伝導度(σ)を求めた。結果を下記の表1に示す。
【0072】
試験例2 燃焼性試験
電解質組成物の小片(約15mm×5mm)を切り出し、これにライターの炎を3秒間接炎し、目視により観察し、以下の基準にしたがって燃焼性を評価した。結果を下記の表1に示す。
◎:接炎終了後、すぐに炎が消え、繰り返し接炎しても接炎終了後、すぐに(1秒以下)炎が消える
○:接炎終了後、炎が消えるが、繰り返し接炎すると炎が消えるのに2〜3秒要する
×:激しく燃える
【0073】
【表1】

【0074】
イオン伝導度測定の結果、電解質組成物S1、S3、S5、S7、S9、S11及びS13は、いずれも高いイオン伝導度を示し、更に、リチウム塩(LiTFSI)を添加した場合(電解質組成物S2、S4、S6、S8、S10、S12及びS14)にも、高いイオン伝導度を維持できた。
これに対し、電解質組成物C1及びC3は、リチウム塩(LiTFSI)を添加した場合(電解質組成物C2及びC4)に、イオン伝導度を維持することができなかった。また、電解質組成物C5は、高いイオン伝導度を示さなかった。
【0075】
また、前記の電解質組成物S1〜S8について、以下の熱重量分析及び示差走査熱量分析を行った。
【0076】
試験例3 熱重量分析(TGA)
電解質組成物4mgをアルミ製パン内に秤取封入し、セイコーインスツルメント社製TG−DTA6200を用いて、50mL/minの窒素気流中、10℃/minで昇温させて測定した。結果を図1及び2に示す。
【0077】
試験例4 示差走査熱量分析(DSC)
電解質組成物4mgをアルミ製パン内に秤取封入し、測定前に70℃で数分熱処理し、液体窒素を用いて−100℃まで急冷した後、セイコーインスツルメント社製DSC6200を用いて、20mL/minの窒素気流中10℃/minで昇温させて測定した。結果を図3及び4に示す。
【0078】
前記TGAの結果、電解質組成物S1〜S8は優れた熱安定性を有することがわかった。
また、前記TGA及びDSCの結果から、電解質組成物S1〜S8は少なくとも−20〜200℃程度の広い温度範囲でゲル状態を保つことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)及び(B)を含有する電解質組成物。
(A)(a1)単官能(メタ)アクリル酸エステル、飽和カルボン酸ビニルエステル又はヒドロキシ基が置換していてもよいアルキルビニルエーテルに由来する繰り返し単位と、(a2)多官能(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位とを有する高分子化合物(ただし、成分(a1)が単官能アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位のときは、成分(a2)は多官能(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位であり、成分(a1)が単官能メタクリル酸エステルに由来する繰り返し単位のときは、成分(a2)は多官能アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位である)
(B)下記式(1)で表される化合物
【化1】

〔式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換若しくは非置換の炭素数1〜20のアルキル基を示し、R3及びR4は、それぞれ独立に、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、又はハロゲン原子を示す。〕
【請求項2】
更に、(C)リチウム塩を含有する請求項1記載の電解質組成物。
【請求項3】
フィルム状である請求項1又は2記載の電解質組成物。
【請求項4】
(a1’)単官能(メタ)アクリル酸エステル、飽和カルボン酸ビニルエステル又はヒドロキシ基が置換していてもよいアルキルビニルエーテルと、(a2’)多官能(メタ)アクリル酸エステル(ただし、成分(a1’)が単官能アクリル酸エステルのときは、成分(a2’)は多官能(メタ)アクリル酸エステルであり、成分(a1’)が単官能メタクリル酸エステルのときは、成分(a2’)は多官能アクリル酸エステルである)とを、成分(B)の存在下で重合させることを特徴とする請求項1記載の電解質組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解質組成物を用いた蓄電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−156054(P2012−156054A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15264(P2011−15264)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】