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電解質
説明

電解質

【課題】高EW(又は、低IEC)で、かつ、無加湿条件下においても高いプロトン伝導度を示す電解質を提供すること。
【解決手段】シラノール基又はその前駆体からなる親水性基の縮重合により形成されるシリカ層と、シリカ層の内表面を修飾する有機スルホン酸基とを備え、その内部に界面活性剤の除去に由来する細孔を持たない緻密体からなる電解質。このような電解質は、シラノール基又はその前駆体からなる親水性基と有機スルホン酸基の前駆体からなる疎水性基とを備えた両親媒性分子を含む溶液中に、必要に応じて親水性基を備えたSiO2源を添加し、溶液中において両親媒性分子を自己組織化させ、親水性基を縮重合させることにより得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質に関し、さらに詳しくは、燃料電池、水電解装置、ハロゲン化水素酸電解装置、食塩電解装置、酸素及び/又は水素濃縮器、湿度センサ、ガスセンサ等の各種電気化学デバイスに用いられる電解質として使用することが可能であり、シリカ層間に酸基が高密度に配列している電解質に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池、電解装置などの電気化学デバイスには、イオン伝導性を示す各種の電解質が用いられている。これらの中でも、固体高分子電解質は、相対的に低温において高いイオン伝導性を示すので、燃料電池用の電解質膜や触媒層内電解質としてとして広く使用されている。しかしながら、固体高分子電解質は、耐熱性が低いために、効率の点で有利な高温での使用に限界がある。また、固体高分子電解質は、高いイオン伝導性を発現させるためには適度な含水状態にある必要があるため、低加湿条件下での使用に限界がある。さらに、固体高分子電解質は、イオン伝導性を高めるために酸基密度を増大させると、水に膨潤又は溶解しやすくなるという問題がある。
【0003】
一方、このような問題を解決する電解質として、例えば、シリカなどの無機材料からなるメソ多孔体のメソ細孔内に、パーフルオロアルキルスルホン酸基などの酸基を導入した有機/無機ハイブリッド型の固体電解質が提案されている。
無機/有機ハイブリッド型の固体電解質は、
(1)メソ細孔内に多量の酸基を導入することができるので、良好なプロトン伝導性を示す、
(2)毛管凝縮現象によりメソ細孔内に水分を保持することができるので、低加湿条件下においても高いプロトン伝導度を示す、
(3)無機材料を基体としているので、酸基の比率にかかわらず、形状を維持できる、
と言われている。
【0004】
このような無機/有機ハイブリッド型の固体電解質及びその製造方法については、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、界面活性剤共存下においてテトラメトキシシランと有機スルホン酸とを縮重合させ、シリカ層間にピラーを形成した後、界面活性剤を除去することにより得られるラメラ多孔体電解質が開示されている。
同文献には、有機スルホン酸基の分子長Lに対するシリカ層の層間距離Dの比を所定の範囲にすると、プロトン伝導度が向上する点が記載されている。
【0005】
特許文献2には、3−アミノプロピルトリメトキシシランに塩酸を加えて加水分解及び重合させることにより層状ポリアミノアルキルシロキサン・塩酸塩を合成し、ガラス基板に層状ポリアミノアルキルシロキサン・塩酸塩水溶液を塗布し、乾燥することにより得られる薄膜が開示されている。
同文献には、このような方法により、複数のロッド状ポリマーが平行且つ密に配列している2次元層状化合物が得られる点が記載されている。
【0006】
特許文献3には、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MePTMS)に過酸化水素水を加えて加熱攪拌し、反応溶液をシャーレに移し、乾燥させることにより得られる電解質が開示されている。
同文献には、
(1)このような方法により、EW=175である電解質が得られる点、及び、
(2)得られた電解質は、80℃、5%RHの低湿度下において、10-2S/cmの高いプロトン伝導度を発現する点
が記載されている。
【0007】
特許文献4には、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランとテトラメトキシシランに過酸化水素水を加えて加熱攪拌し、反応溶液をシャーレに移し、乾燥させることにより得られる電解質が開示されている。
同文献には、
(1)このような方法により、EW=175〜313である電解質が得られる点、及び、
(2)EWを250以下にすると、無加湿条件において10-3S/cmオーダーの高いプロトン伝導度を発現する点、及び、
(3)EWを200以下にすると、無加湿条件において10-2S/cmオーダーの非常に高いプロトン伝導度を発現する点
が記載されている。
【0008】
非特許文献1には、電解質ではないが、有機(ビス−トリクロロシラン)のアルコキシ誘導体を加水分解し、加水分解溶液をガラス基板上にキャストし、空気中で乾燥させる方法が開示されている。
同文献には、このような方法により、架橋型ポリシロキサン層とオール・トランスヘキサデカノール層からなるラメラ構造が得られる点が記載されている。
【0009】
非特許文献2には、電解質ではないが、両親媒性のアルキルオリゴシロキサン分子を円柱状又は球状の制限空間内で自己組織化させる方法が開示されている。
非特許文献3には、電解質ではないが、テトラエトキシシランとトリエトキシシリル基を持つクマリン誘導体の加水分解及び縮重合によりラメラ無機−有機ハイブリッドを作製する方法が開示されている。
非特許文献4には、電解質ではないが、アルキルトリエトキシシランとテトラエトキシシランの共加水分解及び重縮合により多層無機−有機ハイブリッドを作製する方法が開示されている。
【0010】
非特許文献5には、電解質ではないが、トリス(トリメトキシシリルオキシ)(アルキル)シラン、水及びHClを含むプリカーサ溶液をガラス基板上にキャストし、室温で2日間乾燥させることにより得られるハイブリッドメソ構造体が開示されている。
さらに、非特許文献6には、電解質ではないが、1−アルキニルトリメトキシシランを自己組織化させることにより得られるラメラ状又は虫食い状のメソ構造体が開示されている。
【0011】
特許文献1に記載されているように、界面活性剤を用いて有機スルホン酸を自己組織化させる方法は、界面活性剤を除去する工程と、界面活性剤を除去した後も自己組織化した構造を維持するための工程(ピラー形成工程)が必要となるため、製造プロセスが煩雑である。また、得られた電解質は、界面活性剤が抜けることにより生成する細孔を備えた多孔体であるため、これを燃料電池に適用し、無加湿条件下で使用すると、ガスのクロスリークの可能性があった。
これに対し、特許文献3、4に記載の方法を用いると、界面活性剤を用いることなく、プロトン伝導度の高い電解質が得られる。しかしながら、特許文献3、4に記載の方法を用いて無加湿又は低加湿条件下においても高いプロトン伝導度を示す電解質を得るには、当量重量(EW)を低く(又は、イオン交換容量(IEC)を高く)する必要がある。
さらに、非特許文献1〜6には、両親媒性分子を自己組織化させることにより得られる材料が開示されている。しかしながら、この方法を高EW(又は、低IEC)で、無加湿条件下においても高いプロトン伝導度を示す電解質の製造に応用した例は、従来にはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2011−129380号公報
【特許文献2】特開2005−120333号公報
【特許文献3】特開2008−066113号公報
【特許文献4】特開2006−114277号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Y.Fujimoto et al., J.Mater.Chem., 2005, 15, 5151-5157.
【非特許文献2】M.Sakurai et al., Langmuir 2008, 24, 13121-13126.
【非特許文献3】S.Nasu et al., J.Mater.Chem., 2010, 20, 6688-6695.
【非特許文献4】A.Shimojima et al., Langmuir 2002, 18, 1144-1149.
【非特許文献5】A.Shimojima et al., J.AM.CHEM.SOC., 2005, 127, 14108-14116.
【非特許文献6】Y.Fujimoto et al., J.Mater.Chem., 2006, 16, 986-994.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、高EW(又は、低IEC)で、かつ、無加湿条件下においても高いプロトン伝導度を示す電解質を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、製造工程の簡略化が可能であり、シリカ層間に酸基が高密度に配列しており、かつ、界面活性剤に由来する細孔を持たない緻密体からなる電解質を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために本発明に係る電解質は、以下の構成を備えていることを要旨とする。
(1)前記電解質は、
シラノール基又はその前駆体からなる親水性基の縮重合により形成されるシリカ層と、
前記シリカ層の内表面を修飾する有機スルホン酸基と
を備えている。
(2)前記電解質は、その内部に界面活性剤の除去に由来する細孔を持たない緻密体からなる。
(3)前記電解質は、前記シラノール基又はその前駆体からなる親水性基と有機スルホン酸基の前駆体からなる疎水性基とを備えた両親媒性分子を含む溶液中に、必要に応じて前記親水性基を備えたSiO2源を添加し、前記溶液中において前記両親媒性分子を自己組織化させ、前記親水性基を縮重合させることにより得られるものからなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る電解質は、界面活性剤を用いることなく両親媒性分子を縮重合させることにより製造されるので、界面活性剤に由来する細孔を持たない緻密体が得られる。また、界面活性剤の除去やシリカ骨格を補強するための工程(ピラー形成工程)が不要であるので、製造工程を簡略化することができる。
さらに、両親媒性分子を自己組織化させると、有機スルホン酸基の前駆体がシリカ層間に高密度に配列する。そのため、得られた電解質は、高EW(又は、低IEC)であるにもかかわらず、無加湿条件下において高いプロトン伝導度を示す。特に、ラメラ構造を持つ電解質の無加湿条件下におけるプロトン伝導度は、ラメラ構造を持たない電解質の約2倍となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る電解質及びその製造に用いられる両親媒性分子の模式図である。
【図2】本発明に係る電解質の製造方法を示す工程図である。
【図3】図3(a)は、規則構造(ラメラ構造)を持つ電解質のXRDパターンである。図3(b)は、規則構造を持たない電解質のXRDパターンである。
【図4】実施例1及び比較例2で得られた電解質のKrの吸着等温線である。
【図5】各種電解質の温度と伝導度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 電解質]
図1に、本発明に係る電解質及びその製造に用いられる両親媒性分子の模式図を示す。図1において、電解質は、シリカ層と、有機スルホン酸基とを備えている。このような電解質は、両親媒性分子を含む溶液中に、必要に応じてSiO2源を添加し、溶液中において両親媒性分子を自己組織化させ、親水性基を縮重合させることにより得られる。
【0019】
[1.1. シリカ層]
「シリカ層」とは、両親媒性分子及び必要に応じて添加されるSiO2源に含まれる親水性基(シラノール基又はその前駆体)の縮重合により形成される層をいう。シリカ層は、シリカのみからなるものが好ましいが、不可避的不純物が含まれていても良い。
【0020】
[1.1.1. 構造]
電解質は、製造条件(例えば、溶液中の両親媒性分子の濃度、反応時間など)を制御することにより、
(1)不規則構造、あるいは、
(2)ヘキサゴナル構造、ラメラ構造、キュービック構造などの規則構造
をとることができる。
親水性基の縮重合が完全に進行する前に両親媒性分子を自己組織化させると、規則構造を備えた電解質が得られる。ここで、「規則構造」とは、X線で検出できる程度の長周期構造を備えている構造をいう。
【0021】
特に、ラメラ構造は、他の構造に比べて無加湿条件下におけるプロトン伝導度が高いという特徴がある。
ここで、「ラメラ構造」とは、所定の間隔を隔てて平行に配列しているシリカ層と、シリカ層の内表面を修飾する有機スルホン酸基とを備えた構造をいう(図1の右図参照)。
「シリカ層が平行に配列している」とは、ゼオライトに含まれる空間より大きなナノ空間(1.0〜50nm)が層間に形成されるように、シリカ層が所定の間隔を隔てて配列していることをいう。「平行に配列」とは、X線回折によりシリカ層の層間距離に対応する回折ピークが観測できる程度にシリカ層が配列していることを言う。
【0022】
本発明に係る電解質は、後述するように、両親媒性分子を自己組織化させる際に界面活性剤を使用しない。そのため、両親媒性分子を含む溶液から直接、電解質膜を製造した場合、電解質膜は、界面活性剤の除去に由来する細孔を持たない緻密体となる。
ここで、「緻密体」とは、吸着等温線から測定される比表面積又は細孔容量が検出限界以下(比表面積で1m2/g以下、細孔容量で0cc/g)であることをいう。
一方、両親媒性分子を含む溶液から、粉末状の電解質を作製することもできる。この場合、粉末の吸着等温線を測定すると、粉末の粒径に応じた比表面積及び細孔容量が得られる。しかしながら、粒子内部は、薄膜と同様に、界面活性剤の除去に由来する細孔を持たない緻密体となる。
【0023】
[1.1.2. 厚さ]
シリカ層の厚さは、SiO2源の量により制御することができる。一般に、両親媒性分子に対するSiO2源の割合が高くなるほど、シリカ層の厚さを厚くすることができる。シリカ層の厚さは、SiO2源の量にもよるが、通常、1〜4nm程度となる。
また、シリカ層の層間距離は、使用する両親媒性分子の分子長で制御することができる。シリカ層の層間距離は、有機スルホン酸基の分子長の約2倍程度であり、使用する両親媒性分子の種類にもよるが、通常、1〜5nm程度となる。
「有機スルホン酸基の分子長」とは、有機スルホン酸基が結合しているSi原子からスルホン酸基の先端までの距離をいう。例えば、両親媒性分子が図1の左図に示す構造を備えている場合、有機スルホン酸基の分子長Lは、1.1nmとなる。
【0024】
[1.2. 有機スルホン酸基]
本発明において、「有機スルホン酸基」とは、シリカ層の内表面を修飾する酸基であり、有機基と、有機基に結合しているスルホン酸基とを備えているものをいう。有機スルホン酸基は、図1の中央図に示すように、シリカ層に含まれるSiと結合した状態にある。
「有機基」とは、パーフルオロアルキレン基、アルキレン基、芳香環、複素環などの少なくとも1つの炭素原子を備えた基をいう。
【0025】
有機スルホン酸基としては、例えば、パーフルオロスルホン酸基、アルキルスルホン酸基、フェニルスルホン酸基などがある。有機スルホン酸基は、特に(1)式で表される構造を備えたパーフルオロスルホン酸基が好ましい。
−[C(H、F)2]n−X−(CF2)m−SO3H ・・・(1)
但し、
Xは、O又は直接結合、
n、mは、それぞれ、1以上3以下の整数。
【0026】
(1)式中、「−[C(H、F)2]n−」は、アルキレン基を表す。アルキレン基は、C−H結合のみを含むものでも良く、あるいは、Hの全部又は一部がFに置換されていても良い。また、アルキレン基は、直鎖状又は分岐状のいずれであっても良い。
(1)式中、「−(CF2)m−」は、パーフルオロアルキレン基を表す。パーフルオロアルキレン基の末端にSO3H基を結合させると、電気陰性度の大きいF原子によって、末端のSO3H基の酸強度が増大する。
アルキレン基とパーフルオロアルキレン基は、直接結合していても良く、あるいは、O原子を介して結合していても良い。
アルキレン基及びパーフルオロアルキレン基のいずれも、炭素数が多くなりすぎると、ラメラ構造を形成するのが困難となる。従って、ラメラ構造を備えた電解質を製造する場合、これらの炭素数は、それぞれ、3以下が好ましい。
【0027】
[1.3. イオン交換容量及びプロトン伝導度]
一般に、電解質は、イオン交換容量(IEC)が高くなるほど、プロトン伝導度が高くなる。しかしながら、本発明に係る電解質は、界面活性剤を用いることなく製造されるので、相対的に少量のスルホン酸基を狭い空間内(シリカ層間)に高密度に配列させることができる。特に、ラメラ構造を備えた電解質は、平行に配列したシリカ層間に相対的に少量のスルホン酸基が高密度に配列する。
そのため、本発明に係る電解質は、従来の電解質に比べてEWが大きい(IECが小さい)にもかかわらず、従来の電解質よりも高いプロトン伝導度を示す。
具体的には、製造条件を最適化することによって、
(a)IECが3.0mmol/g以下であり、かつ、
(b)温度150℃、無水環境下における伝導度が1×10-3S/cm以上である
電解質が得られる。
【0028】
本発明に係る電解質において、IECは、SiO2源の量に依存する。両親媒性分子に対するSiO2源の量が多くなるほど、シリカ層が厚くなり、IECが低下する。そのため、SiO2量が過剰になると、電解質全体に含まれるプロトン伝導パスが減少し、伝導度が低下する。従って、IECは、1.0mmol/g以上が好ましい。IECは、さらに好ましくは、1.5mmol/g以上、さらに好ましくは、1.7mmol/g以上である。
【0029】
[1.4. 形状]
本発明に係る電解質は、製造方法に応じて、膜状又は粉末状の形態を取る。膜状の電解質は、そのまま各種電気化学デバイスの電解質膜として使用することができる。また、粉末状の電解質は、そのまま各種電気化学デバイスの触媒層内電解質として使用することができる。
一方、粉末状の電解質を各種電気化学デバイスの電解質膜として使用するためには、粉末状の電解質を膜化する必要がある。
粉末状の電解質を膜化する方法としては、
(1)電解質の粉末のみをプレス成形する方法、
(2)電解質の粉末と、高分子化合物(例えば、ポリテトラフルオロエチレンなど)とを混合し、膜化する方法、
(3)電解質の粉末と、高分子電解質(例えば、ポリパーフルオロカーボンスルホン酸など)とを混合し、膜化する方法、
などがある。
【0030】
[2. 電解質の製造方法]
図2に、本発明に係る電解質の製造方法の工程図を示す。図2において、本発明に係る電解質は、複合体製造工程と、スルホン化工程とを備えている。
【0031】
[2.1. 複合体製造工程]
複合体製造工程は、シラノール基又はその前駆体からなる親水性基と有機スルホン酸基の前駆体からなる疎水性基とを備えた両親媒性分子を含む溶液中に、必要に応じて前記親水性基を備えたSiO2源を添加し、前記溶液中において前記両親媒性分子を自己組織化させ、前記親水性基を縮重合させる工程である。
【0032】
[2.1. 両親媒性分子]
「両親媒性分子」とは、シラノール基又はその前駆体からなる親水性基と有機スルホン酸基の前駆体からなる疎水性基(疎水性有機基)とを備えた分子をいう。両親媒性分子は、分子の両末端に、それぞれ親水性基及び疎水性基が結合しているものが好ましい。
「シラノール基の前駆体」とは、加水分解により容易にシラノール基(−Si−OH)となる官能基をいう。シラノール基の前駆体としては、具体的には、−Si−OR(Rは、Me、Etなどのアルキル基)、−Si−X'(X'は、ハロゲン)などがある。
「有機スルホン酸基の前駆体」とは、有機基と、有機基に結合しているスルホニルフロリド基とを備えた官能基をいう。「有機基」の詳細は、上述した通りである。
【0033】
両親媒性分子は、特に、次の(2)式で表されるもの(スルホン酸有機シラン)が好ましい。(2)式で表される両親媒性分子は、後述するSiO2源との共縮重合が容易であり、しかも、シリカ層の層間に多量の酸基を導入するのが容易であるという利点がある。
3Si−[C(H、F)2]n−X−(CF2)m−SO2F ・・・(2)
但し、
Zは、−OCH3、−OC25、又は、ハロゲン、
Xは、O又は直接結合、
n、mは、それぞれ、1以上3以下の整数。
(2)式中、Zは、互いに同一であっても良く、あるいは、異なっていても良い。
【0034】
次の(2a)式に、両親媒性分子の一種であるフルオロ(1,1,2,2−テトラフルオロ−2−(4,4,4−トリエトキシ−4−シラブトキシ)エチル)スルホン)(FTFTESBS)の構造式を示す。
【0035】
【化1】

【0036】
(2)式で表される両親媒性分子は、市販されているか、あるいは、類似の分子構造を持つ化合物を出発原料に用いて、公知の方法により合成することができる。
例えば、FTFTESBSは、白金触媒を用いて、CH2=CHCH2O(CF2)2SO2FをHSi(OEt)3で、脱水トルエン下でハイドロシリル化することにより、室温下で合成することができる。
【0037】
[2.2. SiO2源]
「SiO2源」とは、シリカ層の骨格を形成するための原料であって、シラノール基又はその前駆体からなる親水性基を備えているものをいう。SiO2源は、シリカ層の骨格を形成することができ、かつ、両親媒性分子と共重合可能なものであれば良い。SiO2源は、必ずしも必要ではないが、SiO2源を用いると、耐熱性や化学安定性が向上するという利点がある。
【0038】
SiO2源としては、具体的には、以下のようなものがある。これらは、いずれか1種を用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
(1)テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシランなどのテトラアルコキシシラン。
(2)トリメトキシシラノール、トリエトキシシラノール、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリエトキシ−3−グリシドキシプロピルシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのトリアルコキシシラン。
(3)ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシ−3−グリシドキシプロピルメチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシランなどのジアルコキシシラン。
【0039】
(4)メタケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)、オルトケイ酸ナトリウム(Na4SiO4)、二ケイ酸ナトリウム(Na2Si25)、四ケイ酸ナトリウム(Na2Si49)、水ガラス(Na2O・nSiO2、n=2〜4)などのケイ酸ナトリウム。
(5)カネマイト(NaHSi25・3H2O)、二ケイ酸ナトリウム結晶(α、β、γ、δ−Na2Si25)、マカタイト(Na2Si49)、アイアライト(Na2Si817・xH2O)、マガディアイト(Na2Si1417・xH2O)、ケニヤイト(Na2Si2041・xH2O)などの層状シリケート。
(6)Ultrasil(Ultrasil社)、Cab-O-Sil(Cabot社)、HiSil(Pittsburgh Plate Glass社)等の沈降性シリカ、コロイダルシリカ、Aerosil(Degussa-Huls社)等のフュームドシリカ。
【0040】
(7)テトラキス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、テトラキス(3−ヒドロキシプロポキシ)シラン、テトラキス(2−ヒドロキシプロキシ)シラン、テトラキス(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)シランなどのテトラキス(ヒドロキシアルコキシ)シラン。
(8)メチルトリス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、エチルトリス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、フェニルトリス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、3−メルカプトプロピルトリス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、3−アミノプロピルトリス(2−ヒドロキシエトキシ)シラン、3−クロロプロピルトリス(2−ヒドロキシエトキシ)シランなどのトリス(ヒドロキシアルコキシ)シラン。
これらの中でも、テトラメトキシシラン(Si(OCH3)4)、及び、テトラエトキシシラン(Si(OC25)4)は、結晶性の良好な電解質が得られるので、SiO2源として特に好適である。
【0041】
なお、SiO2源として、アルコキシシラン、ヒドロキシアルコキシシラン等のシラン化合物を用いる場合には、これをそのまま出発原料として用いる。
一方、SiO2源としてシラン化合物以外の化合物を用いる場合には、予め、水(又は、必要に応じてアルコールが添加されたアルコール水溶液)にSiO2源を加えて、水酸化ナトリウム等の塩基性物質を加える。塩基性物質の添加量は、SiO2源中のケイ素原子と等モル程度の量とするのが好ましい。シラン化合物以外のSiO2源を含む溶液に塩基性物質を加えると、SiO2源中に既に形成されているSi−(O−Si)4結合の一部が切断され、均一な溶液が得られる。溶液中に含まれる塩基性物質の量は、複合体の収量や気孔率に影響を及ぼすので、均一な溶液が得られた後、溶液に希薄酸溶液を加え、溶液中に存在する過剰の塩基性物質を中和させる。希薄酸溶液の添加量は、SiO2源中のケイ素原子に対して1/2〜3/4倍モルに相当する量が好ましい。
【0042】
[2.1.3. 溶媒]
原料を溶解させる溶媒は、両親媒性分子(及びSiO2源)の種類に応じて最適なものを選択する。溶媒には、通常、水、アルコール、水とアルコールの混合溶媒などを用いる。アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール等の1価のアルコール、エチレングリコール等の2価のアルコール、グリセリン等の3価のアルコールのいずれでも良い。
【0043】
[2.1.4. 触媒]
両親媒性分子(及びSiO2源)を縮重合させ、シリカ層を得るためには、一般に、両親媒性分子(及びSiO2源)を含む溶液に触媒を加える。触媒は、両親媒性分子(及びSiO2源)の種類に応じて、最適なものを選択する。
例えば、粒子状の電解質を合成する場合、触媒には、水酸化ナトリウム、アンモニア水等のアルカリを用いるのが好ましい。
また、例えば、膜状の電解質を合成する場合、触媒には、塩酸、硝酸、ホウ酸、臭素酸、フッ素酸、硫酸、リン酸などの酸を用いるのが好ましい。
【0044】
[2.1.5. 溶液組成]
溶媒の種類、両親媒性分子(及びSiO2源)の濃度及び比率、触媒の種類及び濃度などの溶液組成は、出発原料の種類や電解質に要求される特性に応じて、最適なものを選択するのが好ましい。
例えば、両親媒性分子の濃度は、電解質の構造に影響を与える。一般に、溶液中の両親媒性分子の濃度が高くなるほど、ラメラ構造が形成されやすくなる。一方、溶液中の両親媒性分子の濃度が低くなるほど、ヘキサゴナル構造が形成されやすくなる。
【0045】
また、例えば、薄膜を合成する場合において、溶液中の両親媒性分子(及びSiO2源)の濃度が低すぎると、溶液の粘度が低下し、均一な膜が得られない。また、粒子を合成する場合において、溶液中の両親媒性分子(及びSiO2源)の濃度が低すぎると、粒子の収率が低下し、あるいは、粒子の粒径や粒度分布の制御が困難となる。
一方、薄膜を合成する場合において、溶液中の両親媒性分子(及びSiO2源)の濃度が高すぎると、両親媒性分子(及びSiO2源)を鎖状に縮重合させるのが困難となる。また、粒子を合成する場合にいて、溶液中の両親媒性分子(及びSiO2源)の濃度が高すぎると、粒径及び粒度分布の制御が困難となり、粒径の均一性が低下する。
例えば、薄膜を形成する場合、溶媒は、両親媒性分子0.01molに対して0.2〜10molが好ましい。
【0046】
また、例えば、薄膜を合成する場合において、溶液中の触媒濃度が低すぎると、加水分解速度及び重縮合速度が遅くなり、薄膜の作製が困難となる。また、粒子を合成する場合において、溶液中の触媒濃度が低すぎると、粒子の収率が極端に低下する。
一方、薄膜を合成する場合において、溶液中の触媒濃度が高すぎると、加水分解速度及び重縮合速度が速くなり過ぎ、均質な重合体が得られない。また、薄膜の結晶性、表面の平滑性、及び、シリカ層の規則性が不十分となる。また、粒子を合成する場合において、溶液中の触媒濃度が高すぎると、規則構造の形成が困難となる場合がある。
例えば、薄膜を合成する場合、触媒は、前駆体0.01molに対して、1.0〜8.0×10-5molが好ましく、さらに好ましくは、3.0〜6.0×10-5molである。
【0047】
[2.1.6. 複合体の作製]
粉末状の複合体は、
(1)両親媒性分子及び必要に応じてSiO2源を含む溶液に触媒(例えば、アルカリ水溶液)を加えてこれらを反応させ、
(2)生成した粒子を混合液から分離する、
ることにより得られる。
【0048】
また、膜状の複合体は、図2の左上図、右上図及び右下図に示すように、
(1)両親媒性分子(スルホン酸有機シラン)及び必要に応じてSiO2源(例えば、TEOS)を含む溶液に触媒(例えば、酸水溶液)を加えて、両親媒性分子及びSiO2源の加水分解及び部分重合を生じさせ、
(2)加水分解された両親媒性分子及びSiO2源の部分重合体を含むゾル溶液とし、
(3)ゾル溶液を基板(例えば、ガラス基板)表面に塗布し、溶媒を揮発させる、
ことにより得られる。
【0049】
両親媒性分子(及びSiO2源)を含む溶液に触媒として酸又はアルカリを添加すると、両親媒性分子(及びSiO2源)の加水分解及び部分重合が起こる。この時、溶液中の両親媒性分子の濃度や反応時間などの反応条件を最適化すると、両親媒性分子は、溶液中でミセルを形成する。
例えば、一般に、両親媒性分子の濃度が低いときには球状のミセルが形成されやすく、両親媒性分子の濃度が高いときにはパイプ状のミセルが形成されやすい。両親媒性分子の濃度がさらに高くなると、平板状ミセルが形成される。
また、反応時間が長くなるほど、ミセルが形成されやすくなる。
さらに、溶液中にSiO2源が含まれている場合には、両親媒性分子の親水性基側にSiO2源が自己集合する。
【0050】
生成したミセルは、やがて互いに安定な方向に配列(自己組織化)する。
例えば、溶液中に平板状ミセルが生成した場合、平板状ミセルは、互いに平行な方向に配列する。これを基板に塗布して乾燥させ又は溶液中でさらに反応させると、図2の右下図に示すように、配列した平板状ミセル間において両親媒性分子及びSiO2源が縮重合し、層状シロキサンが得られる。
【0051】
[2.2. スルホン化工程]
スルホン化工程は、シリカ層の内表面を修飾する有機スルホニルフロリド基を有機スルホン酸基に変換する工程である。
有機スルホニルフロリド基をスルホン化する方法としては、具体的には、有機スルホニルフロリド基を備えた電解質を酸で処理する方法がある。
例えば、平板状ミセルから層状シロキサンを製造し、これをスルホン化すると、図2の左下図に示すように、ラメラ構造を備えた電解質が得られる。
【0052】
[3. 電解質の作用]
電解質の無水環境下におけるプロトン伝導度を向上させる方法としては、
(1)低EW化(又は、高IEC化)する第1の方法、
(2)電解質と低分子塩基、リン酸、無機固体酸、イオン液体等のプロトン伝導性物質とを複合化させる第2の方法
などが知られている。
しかしながら、第1の方法は、電解質が水に溶解しやすくなるという問題がある。また、第2の方法は、プロトン伝導性物質の溶出、プロトン伝導性物質による触媒の被毒、プロトン伝導性物質による製膜性の低下などの問題がある。
【0053】
一方、有機/無機ハイブリッド型の電解質は、このような問題を生じさせることなく、低EW化させることができる。しかしながら、従来の有機/無機ハイブリッド型電解質は、スルホン酸基を高密度に配列させるために界面活性剤の自己組織化を利用している。そのため、製造プロセスが煩雑になるという問題がある。また、界面活性剤の除去に由来する細孔を有しているので、特に無加湿状態ではガスのクロスリークの可能性があった。さらに、自己組織化に際して界面活性剤を利用しているので、酸基の高配列密度化には限界があった。
【0054】
これに対し、本発明に係る電解質は、界面活性剤を用いることなく両親媒性分子を縮重合させることにより製造されるので、界面活性剤に由来する細孔を持たない緻密体が得られる。また、界面活性剤の除去やシリカ骨格を補強するための工程(ピラー形成工程)が不要であるので、製造工程を簡略化することができる。
さらに、両親媒性分子を自己組織化させると、有機スルホン酸基の前駆体がシリカ層間に高密度に配列する。すなわち、少量のスルホン酸基をシリカ層間に高密度に配列させることができる。そのため、得られた電解質は、高EW(又は、低IEC)であるにもかかわらず、無加湿条件下において高いプロトン伝導度を示す。
特に、ラメラ構造を持つ電解質の無加湿条件下におけるプロトン伝導度は、ラメラ構造を持たない電解質の約2倍となる。具体的には、IEC=1.7mmol/g(EW=588)であっても、有機スルホン酸基を規則配列させることにより、従来の低EW膜(EW=214)と同等以上の伝導度を示す。
【実施例】
【0055】
(実施例1、比較例1〜3)
[1. 試料の合成]
[1.1.実施例1、比較例1]
[1.1.1. 自己組織化]
テトラメトキシシラン(TMOS)(0.99g)と、FTFTESBS(1.6g)にエタノール(5.0mL)を添加した後、H2O(993μL)と2N−HCl(7μL)を混合し、室温下で攪拌(300rpm)した。攪拌時間は、6hr(実施例1)又は2hr(比較例1)とした。上記ゾル溶液を、2端子電極基板上にコートした。
【0056】
[1.1.2. スルホン化]
上記薄膜を50mLビーカーに入れ、さらに1N−HCl(30mL)を投入し、室温下で2hr浸漬した。上記薄膜をさらに110℃−3hr乾燥させた。
[1.1.3. 薄膜洗浄]
上記方法で得られた薄膜を、0.1N−HCl水溶液(RT−2hr)による洗浄、及び、純粋による洗浄(80℃−2hr)を施し、60℃−1hr乾燥させた。
【0057】
[1.2. 比較例2]
[1.2.1. ゾル溶液調製]
特許文献1に記載の方法を用いて、界面活性剤を用いた自己組織化膜を作製した。
すなわち、TMOS(0.99g)と、FTFTESBS(1.6g)にエタノール(5.0mL)を添加した。これにH2O(993μL)と2N−HCl(7μL)を加え、室温下、1hr攪拌(200rpm)した。さらに、界面活性剤であるアルキルトリメチルアンモニウムクロリド(CnTMA+Cl-。以下、単に「Cn」とも言う。)(0.91g)、エタノール(10mL)、H2O(0.1mL)、2N−HCl(10μL)の混合物をTMOS/FTFTESBSゾル溶液に添加し、2hr攪拌(300rpm)した。界面活性剤には、n=14であるものを用いた。
【0058】
[1.2.2. 薄膜作製]
[1.2.1]で作製したゾル溶液を、2端子電極基板にコートした。薄膜をコートした電極基板をオートクレーブに入れ、TMOS(150μL)を添加し、120℃−2hr処理した。次いで、28%NH3水(100μL)を添加し、100℃−2hr処理した。処理後、薄膜を100℃−1h乾燥させた。さらに、薄膜に含まれる界面活性剤を60℃で抽出(1wt%塩酸溶液:エタノール希釈)した。
【0059】
[1.2.3. 薄膜洗浄]
上記方法で得られた薄膜に対して、0.1N−HCl水溶液(RT−2hr)、純水による洗浄(80℃−2hr)を施し、60℃−1hr乾燥させ、ラメラ多孔体電解質膜を得た。
【0060】
[1.3. 比較例3]
市販のポリスルホン化スチレンを試験に供した。
【0061】
[2. 試験方法]
[2.1. X線回折]
電解質膜のX線回折パターンを測定した。
[2.2. 吸着等温線]
電解質膜のKr吸着等温線を測定した。
[2.3. プロトン伝導度]
電解質膜がコートされた2端子電極基板を、無加湿(相対湿度0%)に調整された雰囲気内に挿入し、2端子による交流法でプロトン伝導度を測定した。
【0062】
[3. 結果]
[2.1. X線回折パターン]
図3(a)及び図3(b)に、それぞれ、実施例1及び比較例1で得られた電解質のXRDパターンを示す。図3より、ゾル溶液の反応時間が短い比較例1は、規則構造を持たないのに対し、反応時間が長い実施例1は、規則構造(ラメラ)を示すことがわかる。なお、両者は、いずれもIEC=1.7mmol/gであった。
【0063】
[2.2. Kr吸着等温線]
図4に、実施例1及び比較例2で得られた電解質のKr吸着等温線を示す。図4より、以下のことがわかる。
(1)界面活性剤による自己組織化膜(比較例2)の場合、比表面積は200m2/g以上であり、細孔(1.5nm)も有していた。
(2)実施例1の場合、比表面積は測定不能であり、細孔も存在していない。すなわち、実施例1で得られた電解質は、細孔を持たない緻密体であった。
【0064】
[2.3. プロトン伝導度]
図5に、実施例1、比較例1、3で得られた電解質の温度と伝導度の関係を示す。図5より、以下のことがわかる。
(1)ポリスチレンスルホン酸(比較例3)は、IECが高い(IEC=5.4mmol/g)にもかかわらず、実施例1及び比較例1よりプロトン伝導度が低い。
(2)実施例1の無加湿下におけるプロトン伝導度は、比較例1の約2倍になる。すなわち、IECが同一であっても、ラメラ構造を取る電解質の無加湿下におけるプロトン伝導度は、規則構造を取らない電解質より高い。
【0065】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係る電解質は、燃料電池、水電解装置、ハロゲン化水素酸電解装置、食塩電解装置、酸素及び/又は水素濃縮器、湿度センサ、ガスセンサ等の各種電気化学デバイスに用いられる電解質として使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構成を備えた電解質。
(1)前記電解質は、
シラノール基又はその前駆体からなる親水性基の縮重合により形成されるシリカ層と、
前記シリカ層の内表面を修飾する有機スルホン酸基と
を備えている。
(2)前記電解質は、その内部に界面活性剤の除去に由来する細孔を持たない緻密体からなる。
(3)前記電解質は、前記シラノール基又はその前駆体からなる親水性基と有機スルホン酸基の前駆体からなる疎水性基とを備えた両親媒性分子を含む溶液中に、必要に応じて前記親水性基を備えたSiO2源を添加し、前記溶液中において前記両親媒性分子を自己組織化させ、前記親水性基を縮重合させることにより得られるものからなる。
【請求項2】
所定の間隔を隔てて平行に配列している前記シリカ層と、前記シリカ層の内表面を修飾する前記有機スルホン酸基とを備えたラメラ構造を備えている請求項1に記載の電解質。
【請求項3】
前記有機スルホン酸基は、次の(1)式で表されるパーフルオロスルホン酸基である請求項1又は2に記載の電解質。
−[C(H、F)2]n−X−(CF2)m−SO3H ・・・(1)
但し、
Xは、O又は直接結合、
n、mは、それぞれ、1以上3以下の整数。
【請求項4】
イオン交換容量(IEC)が3.0mmol/g以下であり、
温度150℃、無水環境下における伝導度が1×10-3S/cm以上である請求項1から3までのいずれか1項に記載の電解質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−110006(P2013−110006A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254939(P2011−254939)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】