説明

電話システム、電話制御方法、およびコードレス子機

【課題】電話システム全体を動作させるバックアップ用の二次電池を必要とすることなく、災害時に停電が発生した場合でも、コードレス子機間の通話を実現する。
【解決手段】コードレス子機10で、自己の親機20とのリンクが切断した際に、通常モードから停電モードへ自己の動作モードを切り替えるとともに、停電モードにおける当該親機20からのリンク確立要求に応じて、当該停電モードから通常モードへ自己の動作モードを切り替え、停電モードにおける自己以外のコードレス子機10に対する呼出操作に応じて、当該相手コードレス子機10との間でリンクを確立して直接通話を行い、停電モードから通常モードへの切替時に、相手コードレス子機10とのリンクを切断した後、当該親機20とのリンクを再確立する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電話制御技術に関し、特に電話システムに内線収容されているコードレス子機による災害発生時の通話技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ボタン電話システムやPBXシステムなどの電話システムでは、主装置やPBXなどの電話制御装置に内線収容される電話機としてコードレス電話機を用いる場合がある。このコードレス電話機は、電話制御装置と有線回線を介して接続された親機と、この親機と無線回線を介して接続されたコードレス子機とからなり、無線回線を介して形成した通話パスを用いて、コードレス子機で電話制御装置を介した通話を行うものとなっている。
【0003】
このような電話システムにおいて、地震や集中豪雨などの災害が発生した場合、内線収容されている各電話機間で音声通話を行うことにより、利用者が互いの安否や災害状況を確認するものとなる。
このような災害発生時には、停電が併発するケースも多い。したがって、停電が発生した場合には、電話制御装置や親機への電源供給が停止するため、コードレス子機自体は二次電池で動作可能であるものの、正常時のように通話ができなくなる。
【0004】
このような停電時において通話を実現する公知技術として、親機にバックアップ用の二次電池を搭載して停電時でも動作させる技術(例えば、特許文献1など参照)や、親機に載置されているコードレス子機の二次電池で親機を停電時でも動作させる技術(例えば、特許文献2など参照)が提案されている。
しかしながら、電話制御装置にコードレス電話機が内線収容されている場合には、電話制御装置を経由して内線通話が行われるため、コードレス子機間で内線通話を行う場合でも、電話システム全体を動作させる必要がある。したがって、各コードレス子機の利用者が安否や互いに災害状況を確認するのに十分な通話時間を得るには、規模の大きい二次電池が必要となるため、システム全体としてコストアップの要因となる。
【0005】
従来、複数のコードレス子機が1つの親機に共通して内線収容されているコードレス電話システムにおいて、親子間で確立している無線通信の空きタイムスロットを利用して、親機経由で音声データをやり取りすることによりコードレス子機間で直接通話を行う技術が提案されている(例えば、特許文献3など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−262652号公報
【特許文献2】特開平6−152705号公報
【特許文献3】特開平8−098243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来技術では、親子間で確立している無線通信の空きタイムスロットを利用しているため、親機が停電すると親子間の無線通信が途絶えて、親機経由で音声データをやり取りすることができなくなり、結果としてコードレス子機間の直接通話も途絶えてしまう。したがって、停電時でもコードレス子機間の通話を可能とするためには、前述した公知技術と同様に、電話システム全体を動作させるバックアップ用の二次電池が必要となり、各コードレス子機の利用者が互いに安否や災害状況を確認するのに十分な通話時間を得るには、規模の大きい二次電池が必要となるため、電話システム全体としてコストアップの要因となる。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、電話システム全体を動作させるバックアップ用の二次電池を必要とすることなく、災害時に停電が発生した場合でも、コードレス子機間の通話を実現できる電話システム、電話制御方法、およびコードレス子機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明にかかる電話システムは、親機と、電池で動作するコードレス子機との組からなり、互いの識別情報を用いて両者間で確立したリンクを介して無線通信を行う複数のコードレス電話機と、これらコードレス電話機を内線収容する電話制御装置とを含む電話システムであって、コードレス子機は、自己の親機とのリンクが切断した際、当該親機を経由して通話を行う通常モードから当該親機を経由せず自己以外のコードレス子機との直接通話が可能な停電モードへ自己の動作モードを切り替えるとともに、停電モードにおける当該親機からのリンク確立要求に応じて、当該停電モードから通常モードへ自己の動作モードを切り替える動作モード切替部と、停電モードにおける自己以外のコードレス子機に対する呼出操作に応じて、当該相手コードレス子機との間でリンクを確立して直接通話を行い、停電モードから通常モードへの切替時に、相手コードレス子機とのリンクを切断した後、当該親機とのリンクを再確立する通信制御部とを備えている。
【0010】
この際、動作モード切替部で、自己の親機を介して受信した電話制御装置からの緊急通報に応じて、当該緊急通報に含まれる通報情報を表示部で表示し、当該緊急通報の受信時刻または当該緊急通報で通知された災害発生推定時刻を基準としてリンク切断検出のための検出期間を設定し、当該検出期間内に当該親機とのリンクが切断した際は自己の動作モードを停電モードへ切り替え、検出期間以外でリンクが切断した際は自己の動作モードを通常モードのまま維持し、通信制御部で、通常モードで自己の親機とのリンクが切断した場合は、当該親機からのリンク確立要求に応じて当該リンクを再確立するようにしてもよい。
【0011】
また、本発明にかかる電話制御方法は、親機と、電池で動作するコードレス子機との組からなり、互いの識別情報を用いて両者間で確立したリンクを介して無線通信を行う複数のコードレス電話機と、これらコードレス電話機を内線収容する電話制御装置とを含む電話システムで用いられる電話制御方法であって、コードレス子機が、自己の親機とのリンクが切断した際、当該親機を経由して通話を行う通常モードから当該親機を経由せず自己以外のコードレス子機との直接通話が可能な停電モードへ自己の動作モードを切り替えるとともに、停電モードにおける当該親機からのリンク確立要求に応じて、当該停電モードから通常モードへ自己の動作モードを切り替える動作モード切替ステップと、停電モードにおける自己以外のコードレス子機に対する呼出操作に応じて、当該相手コードレス子機との間でリンクを確立して直接通話を行い、停電モードから通常モードへの切替時に、相手コードレス子機とのリンクを切断した後、当該親機とのリンクを再確立する通信制御ステップとを備えている。
【0012】
この際、動作モード切替ステップで、自己の親機を介して受信した電話制御装置からの緊急通報に応じて、当該緊急通報に含まれる通報情報を表示部で表示し、当該緊急通報の受信時刻または当該緊急通報で通知された災害発生推定時刻を基準としてリンク切断検出のための検出期間を設定し、当該検出期間内に当該親機とのリンクが切断した際は自己の動作モードを停電モードへ切り替え、検出期間以外でリンクが切断した際は自己の動作モードを通常モードのまま維持し、通信制御ステップで、通常モードで自己の親機とのリンクが切断した場合は、当該親機からのリンク確立要求に応じて当該リンクを再確立するようにしてもよい。
【0013】
また、本発明にかかるコードレス子機は、親機と、電池で動作するコードレス子機との組からなり、互いの識別情報を用いて両者間で確立したリンクを介して無線通信を行う複数のコードレス電話機と、これらコードレス電話機を内線収容する電話制御装置とを含む電話システムで用いられるコードレス子機であって、自己の親機とのリンクが切断した際、当該親機を経由して通話を行う通常モードから当該親機を経由せず自己以外のコードレス子機との直接通話が可能な停電モードへ自己の動作モードを切り替えるとともに、停電モードにおける当該親機からのリンク確立要求に応じて、当該停電モードから通常モードへ自己の動作モードを切り替える動作モード切替部と、停電モードにおける自己以外のコードレス子機に対する呼出操作に応じて、当該相手コードレス子機との間でリンクを確立して直接通話を行い、停電モードから通常モードへの切替時に、相手コードレス子機とのリンクを切断した後、当該親機とのリンクを再確立する通信制御部とを備えている。
【0014】
この際、動作モード切替部で、自己の親機を介して受信した電話制御装置からの緊急通報に応じて、当該緊急通報に含まれる通報情報を表示部で表示し、当該緊急通報の受信時刻または当該緊急通報で通知された災害発生推定時刻を基準としてリンク切断検出のための検出期間を設定し、当該検出期間内に当該親機とのリンクが切断した際は自己の動作モードを停電モードへ切り替え、検出期間以外でリンクが切断した際は自己の動作モードを通常モードのまま維持し、通信制御部で、通常モードで自己の親機とのリンクが切断した場合は、当該親機からのリンク確立要求に応じて当該リンクを再確立するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電話制御装置や親機を経由することなく、電池で動作するコードレス子機間で、直接通話を行うことができる。これにより、電話システム全体を動作させるバックアップ用の二次電池を必要とすることなく、災害時に停電が発生した場合でも、各コードレス子機の利用者が互いに安否や災害状況を確認するのに十分な通話時間を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施の形態にかかる電話システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本実施の形態にかかるコードレス子機の構成を示すブロック図である。
【図3】本実施の形態にかかる親機の構成を示すブロック図である。
【図4】本実施の形態にかかるコードレス子機の停電制御処理を示すフローチャートである。
【図5】本実施の形態にかかる電話システムの停電動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
[本実施の形態の構成]
まず、図1を参照して、本実施の形態にかかる電話システムについて説明する。図1は、本実施の形態にかかる電話システムの構成を示すブロック図である。
【0018】
この電話システム1は、互いの識別情報を用いて相互間で無線通信を行う親機20(20A,20B,〜,20N)と、二次電池を含む電池(以下、電池という)で動作するコードレス子機10(10A,10B,〜,10N)との組からなる複数のコードレス電話機30(30A,30B,〜,30N)と、このコードレス電話機30を内線収容するとともに電話網NWに接続されている電話制御装置40とを含む。
【0019】
電話システム1の具体例としては、ボタン電話システムやPBXシステムがある。例えば、ボタン電話システムの場合にはその主装置や電話サーバが電話制御装置40に相当し、PBXシステムの場合にはそのPBXが電話制御装置40に相当する。
また、電話網NWには、気象庁などの機関が予期した災害発生に関する緊急地震速報や津波速報などの緊急通報を通知する、公知の緊急通報システム50が接続されている。通知が必要な緊急災害が発生した場合には、この緊急通報システム50から電話網NWを介して、予め契約している電話制御装置40などの通信装置へ通知される。
【0020】
本実施の形態にかかる電話システムは、コードレス子機10で、自己の親機20とのリンクが切断した際に、当該親機20を経由して通話を行う通常モードから当該親機20を経由せず自己以外のコードレス子機10との直接通話が可能な停電モードへ自己の動作モードを切り替えるとともに、停電モードにおける当該親機20からのリンク確立要求に応じて、当該停電モードから通常モードへ自己の動作モードを切り替えるものとし、停電モードにおける自己以外のコードレス子機10に対する呼出操作に応じて、当該相手コードレス子機10との間でリンクを確立して直接通話を行い、停電モードから通常モードへの切替時に、相手コードレス子機10とのリンクを切断した後、当該親機20とのリンクを再確立するようにしたものである。
【0021】
[コードレス子機]
次に、図2を参照して、本実施の形態にかかる電話システムのコードレス子機の構成について説明する。図2は、本実施の形態にかかる電話システムのコードレス子機の構成を示すブロック図である。
【0022】
コードレス子機10は、全体として、電池で動作して親機20やコードレス子機10と無線通信を行う無線通信端末からなり、主な機能部として、制御部11、記憶部12、操作入力部13、表示部14、無線インターフェース部(以下、無線I/F部という)15、および音声処理部16が設けられており、これら機能部が共通バスを介して相互に接続されている。
【0023】
本実施の形態にかかるコードレス子機10は、自己の動作モードとして、通常モードと停電モードの2種類を有している。このうち通常モードは、当該親機を経由して通話を行う動作モードであり、停電モードは、当該親機を経由せず自己以外のコードレス子機10との直接通話が可能な動作モードである。制御部11は、自己の状況に応じて、これら動作モードを切り替えて動作する。
【0024】
制御部11は、CPUとその周辺回路を有し、記憶部12からプログラムを読み込んで実行することにより、コードレス子機10全体を制御する機能を有している。制御部11に設けられた主な処理部としては、通信制御部11Aと動作モード切替部11Bがある。
【0025】
通信制御部11Aは、無線I/F部15を用いた親機20や自己以外のコードレス子機との無線通信を制御する機能と、停電モードにおける自己以外のコードレス子機10に対する呼出操作に応じて、当該相手コードレス子機10との間でリンクを確立して直接通話を行う機能と、停電モードから通常モードへの切替時に、相手コードレス子機10とのリンクを切断した後、当該親機20とのリンクを再確立する機能と、通常モードで自己の親機20とのリンクが切断した場合は、当該親機20からのリンク確立要求に応じて当該リンクを再確立する機能とを有している。
【0026】
動作モード切替部11Bは、自己の親機20を介して受信した電話制御装置40からの緊急通報に応じて、当該緊急通報に含まれる通報情報を表示部14で表示する機能と、当該緊急通報の受信時刻または当該緊急通報で通知された災害発生推定時刻を基準としてリンク切断検出のための検出期間を設定する機能と、当該検出期間内に自己の親機20とのリンクが切断した際は、記憶部12で保持されている自己の動作モードを通常モードから停電モードへ切り替える機能と、検出期間以外でリンクが切断した際は自己の動作モードを通常モードのまま維持する機能と、停電モードにおける親機20からのリンク確立要求に応じて、記憶部12で保持されている自己の動作モードを停電モードから通常モードへ切り替える機能とを有している。
【0027】
記憶部12は、通信制御部11Aや動作モード切替部11Bでの処理に用いるプログラムや各種処理情報を記憶する機能を有している。記憶部12で記憶する主な処理情報としては、自己の動作モード、当該コードレス子機10と組をなす親機20の識別情報、電話システム1で用いるすべてのコードレス子機10の識別情報および内線番号などがある。
操作入力部13は、ダイヤルキーや機能キーなどの各種操作キーからなり、利用者の操作を検出して通信制御部11Aや動作モード切替部11Bへ出力する機能を有している。
表示部14は、LCDやLEDなどの表示回路からなり、通信制御部11Aや動作モード切替部11Bからの指示に応じて、自己の動作モードや緊急通報で通知された通報情報などの各種情報を表示する機能を有している。
【0028】
無線I/F部15は、専用の無線回路からなり、ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)や無線LANなどの無線通信プロトコルに基づいて、親機20や自己以外のコードレス子機10からなる通信相手との間でリンクを確立し、このリンクを介して無線通信を行う機能を有している。
音声処理部16は、専用の音声処理回路からなり、無線I/F部15を介して受信した音声データを音声信号に復号してスピーカから出力するとともに、マイクからの入力音声信号を音声データに符号化して無線I/F部15へ出力する機能と、制御部11からの指示に応じて着信音などの各種信号音をスピーカから出力する機能とを有している。
【0029】
[親機]
次に、図3を参照して、本実施の形態にかかる電話システムの親機の構成について説明する。図3は、本実施の形態にかかる電話システムの親機の構成を示すブロック図である。
親機20は、全体として、電話制御装置40からの給電電源により動作してコードレス子機10と無線通信を行う無線通信端末からなり、主な機能部として、制御部21、記憶部22、操作入力部23、表示部24、無線インターフェース部(以下、無線I/F部という)25、音声処理部26、および通信インターフェース部(以下、通信I/F部という)27が設けられており、これら機能部が共通バスを介して相互に接続されている。
【0030】
制御部21は、CPUとその周辺回路を有し、記憶部22からプログラムを読み込んで実行することにより、親機20全体を制御する機能を有している。
記憶部22は、制御部21での処理に用いるプログラムや各種処理情報を記憶する機能を有している。記憶部22で記憶する主な処理情報としては、当該親機20と組をなすコードレス子機10の識別情報や、電話システム1で用いるすべてのコードレス子機10の識別情報がある。
【0031】
操作入力部23は、ダイヤルキーや機能キーなどの各種操作キーからなり、利用者の操作を検出して制御部21へ出力する機能を有している。
表示部24は、LCDやLEDなどの表示回路からなり、制御部21からの指示に応じて各種情報を表示する機能を有している。
【0032】
無線I/F部25は、専用の無線回路からなり、ブルートゥース(Bluetooth)や無線LANなどの無線通信プロトコルに基づいて、コードレス子機10との間でリンクを確立し、このリンクを介してコードレス子機10と無線通信を行う機能を有している。
音声処理部26は、専用の音声処理回路からなり、無線I/F部25を介して受信した音声データを音声信号に復号してスピーカから出力するとともに、マイクからの入力音声信号を音声データに符号化して無線I/F部25へ出力する機能と、制御部21からの指示に応じて着信音などの各種信号音をスピーカから出力する機能とを有している。
通信I/F部27は、専用の通信回路からなり、有線回線からなる内線伝送路を介して電話制御装置40との間でデータ通信を行う機能を有している。
【0033】
本実施の形態にかかる電話システム1のうち、電話制御装置40については、一般的な公知の構成を有しており、ここでの詳細な説明は省略する。また、電話制御装置40には、コードレス電話機30以外の他の電話装置が接続されていてもよい。また、電話網NWは、アナログの公衆電話網であってもよく、デジタルのISDNやIP電話網であってもよい。
【0034】
[本実施の形態の動作]
次に、図4を参照して、本実施の形態にかかる電話システムの動作について説明する。ここでは、コードレス子機10での停電制御動作について説明する。図4は、本実施の形態にかかるコードレス子機の停電制御処理を示すフローチャートである。
【0035】
コードレス子機10の制御部11は、通常モードで動作中に、自己の親機20を介して電話制御装置40から緊急通報を無線I/F部15で受信した場合、動作モード切替部11Bにより、受信した緊急通報で通知された通報情報を表示部14で表示した後、図4の停電制御処理を実行する。この緊急通報には、緊急地震速報や津波警報などの種別があり、気象庁などの機関が予期した災害発生地域、災害内容、災害発生推定時刻などの通報情報が通知される。
【0036】
停電制御処理において、制御部11は、まず、動作モード切替部11Bにより、当該緊急通報の受信時刻または当該緊急通報で通知された災害発生推定時刻を基準時刻として、この基準時刻を含む前後または基準時刻以降に、リンク切断検出のための検出期間を設定し(ステップ100)、CPUのタイマ機能を利用して、検出期間が開始されるまで後続処理の実行を待機する(ステップ101)。
【0037】
検出期間については、緊急通報の種別ごとに、基準時刻として用いる時刻や検出期間の時間位置および時間長を記憶部12へ予め設定しておけばよい。
例えば、緊急地震速報の場合には、当該緊急地震速報の受信時刻と地震発生推定時刻との時間差があまりなく、地震発生推定時刻のばらつきも小さく、さらに停電が起こる場合には地震発生から数分程度で停電が発生する可能性が高い。このため、当該緊急地震速報の受信時刻や当該緊急地震速報で通知された地震発生推定時刻から10分以内を検出期間としてもよい。
また、津波警報の場合には、当該緊急地震速報の受信時刻と津波到達推定時刻との時間差が大きく、津波到達推定時刻のばらつきも大きい。このため、当該津波警報で通知された津波到達推定時刻を含む前後30分間(延べ1時間)を検出期間としてもよい。
【0038】
次に、動作モード切替部11Bは、検出期間開始後、無線I/F部15により、親機20との無線通信のためのリンクの切断有無を確認し(ステップ102)、リンク切断が確認されなかった場合には(ステップ102:NO)、検出期間の終了を確認する(ステップ103)。
ここで、検出期間の終了が確認された場合(ステップ103:YES)、一連の停電制御動作を終了し、検出期間が終了していない場合(ステップ103:NO)、ステップ102へ戻る。
【0039】
一方、ステップ102で、リンク切断が確認された場合、動作モード切替部11Bは、記憶部12で保持されている自己の動作モードを通常モードから停電モードへ切り替え(ステップ110)、リンク確立待機状態となる。
【0040】
リンク確立待機状態において、操作入力部13により、内線番号を指定した自己以外のコードレス子機10への呼出操作が検出された場合(ステップ111:YES)、制御部11は、通信制御部11Aにより、当該内線番号と対応するコードレス子機の識別情報を記憶部12から取得し、この識別情報に基づいて相手コードレス子機10との間でリンクを確立して呼び出す(ステップ112)。この呼出に対する相手コードレス子機10からの応答に応じて、相手コードレス子機10との間で直接通話を開始する(ステップ113)。
【0041】
この後、操作入力部13により終話操作が検出された場合には、相手コードレス子機10との通話を終了し、操作入力部13で新たなコードレス子機10への呼出操作が検出された場合には、それまでのリンクを切断した後、前述のステップ112,113を繰り返し実行すればよい。
【0042】
一方、リンク確立待機状態において、無線I/F部15により、親機20からのリンク確立要求を受信した場合(ステップ114)、制御部11は、動作モード切替部11Bにより、記憶部12で保持されている自己の動作モードを停電モードから通常モードへ切り替える(ステップ115)。
この後、制御部11は、通信制御部11Aにより、自己以外のコードレス子機10との間でリンクを確立している場合には当該リンクを切断した後、親機20とのリンクを確立し(ステップ116)、一連の停電制御動作を終了する。
【0043】
図5は、本実施の形態にかかる電話システムの停電動作を示すシーケンス図である。
親機20A,20Bがそれぞれ組をなすコードレス子機10A,10Bとリンクを確立している状態で(ステップ200)、緊急通報システム50から電話制御装置40へ緊急通報が通知された場合(ステップ201)、電話制御装置40は、それぞれの親機20A,20Bを経由して各コードレス子機10A,10Bへ、受信した緊急通報を通知する(ステップ202,203)。
【0044】
コードレス子機10A,10Bは、電話制御装置40からの緊急通報を受信して、その通報情報を表示し(ステップ204)、停電による電話システム1の停止に応じて(ステップ205)、検出期間内にそれぞれの親機20A,20Bとのリンクの切断が検出された場合(ステップ206)、通常モードから停電モードへ移行して、リンク確立待機状態となる(ステップ207)。
【0045】
停電モードにおいて、コードレス子機10Aでコードレス子機10Bに対する呼出操作が行われた場合(ステップ210)、コードレス子機10Aは、コードレス子機10Bに対してリンク確立要求を通知し、これに応じたコードレス子機10BからのOK通知に応じて、両者間でリンクを確立する。その後、コードレス子機10Aからの呼出通知に応じて、コードレス子機10Bから応答通知が返送された場合、両者間で親機20A,20Bを経由しない直接通話が開始される。
【0046】
この後、復電により電話システムが再起動した場合(ステップ220)、親機20Aからコードレス子機10Aに対してリンク確立要求221が通知される(ステップ221)。コードレス子機10Aは、これに応じて停電モードから通常モードへ移行し(ステップ222)、コードレス子機10Bとのリンクを切断した後(ステップ223)、親機20Aに対してOK通知を送信する(ステップ224)。これにより、親機20Aとコードレス子機10Aとの間でリンクを再確立する(ステップ225)。
なお、ステップ221〜225については、親機20Bと子機10Bとの間でも並行して実行される。
【0047】
[本実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、コードレス子機10で、自己の親機20とのリンクが切断した際に、当該親機20を経由して通話を行う通常モードから当該親機20を経由せず自己以外のコードレス子機10との直接通話が可能な停電モードへ自己の動作モードを切り替えるとともに、停電モードにおける当該親機20からのリンク確立要求に応じて、当該停電モードから通常モードへ自己の動作モードを切り替えるものとし、停電モードにおける自己以外のコードレス子機10に対する呼出操作に応じて、当該相手コードレス子機10との間でリンクを確立して直接通話を行い、停電モードから通常モードへの切替時に、相手コードレス子機10とのリンクを切断した後、当該親機20とのリンクを再確立している。
【0048】
したがって、電話制御装置40や親機20を経由することなく、電池で動作するコードレス子機間で、直接通話を行うことができる。これにより、電話システム全体を動作させるバックアップ用の二次電池を必要とすることなく、災害時に停電が発生した場合でも、各コードレス子機の利用者が互いに安否や災害状況を確認するのに十分な通話時間を得ることができる。
【0049】
また、本実施の形態では、緊急通報を受信した後、検出期間内に親機20とのリンクが切断された時点で、通常モードから停電モードへ移行するようにしたので、メンテナンスに伴う電話システムの停止など、災害を伴わない予定の停電におけるコードレス子機10間の直接通話を抑止することができ、電話システムを安定して運用することが可能となる。
【0050】
また、本実施の形態では、緊急通報システム50からの緊急通報に基づき、各コードレス子機10で停電制御処理の実行を開始する場合を例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、公知の技術では、電話制御装置40において、停電を検出した場合、システム停止する前に各内線電話機へ停電検出を通知する機能がある。したがって、この停電検出通知に基づき各コードレス子機10で停電制御処理の実行を開始してもよい。この際、メンテナンスに伴って電話システムを停止する際には、電話制御装置40を制御して、停電検出の通知を停止すれば、メンテナンスに伴う電話システムの停止など、災害を伴わない予定の停電におけるコードレス子機10間の直接通話を抑止することができ、電話システムを安定して運用することが可能となる。
また、親機から子機へのリンク開放要求や子機間通話開始要求など、親機からの操作によって子機の動作モードを切り替えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…電話システム、10,10A,10B,〜,10N…コードレス子機、11…制御部、11A…通信制御部、11B…動作モード切替部、12…記憶部、13…操作入力部、14…表示部、15…無線I/F部、16…音声処理部、20,20A,20B,20C,〜,20N…親機、21…制御部、22…記憶部、23…操作入力部、24…表示部、25…無線I/F部、26…音声処理部、27…通信I/F部、30,30A,30B,30C,〜,30N…コードレス電話機、40…電話制御装置、NW…電話網、50…緊急通報システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親機と、電池で動作するコードレス子機との組からなり、互いの識別情報を用いて両者間で確立したリンクを介して無線通信を行う複数のコードレス電話機と、これらコードレス電話機を内線収容する電話制御装置とを含む電話システムであって、
前記コードレス子機は、
自己の親機との前記リンクが切断した際、当該親機を経由して通話を行う通常モードから当該親機を経由せず自己以外の前記コードレス子機との直接通話が可能な停電モードへ自己の動作モードを切り替えるとともに、前記停電モードにおける当該親機からのリンク確立要求に応じて、当該停電モードから前記通常モードへ自己の動作モードを切り替える動作モード切替部と、
前記停電モードにおける自己以外の前記コードレス子機に対する呼出操作に応じて、当該相手コードレス子機との間でリンクを確立して前記直接通話を行い、前記停電モードから前記通常モードへの切替時に、前記相手コードレス子機とのリンクを切断した後、当該親機とのリンクを再確立する通信制御部と
を備えることを特徴とする電話システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電話システムにおいて、
前記動作モード切替部は、自己の親機を介して受信した前記電話制御装置からの緊急通報に応じて、当該緊急通報に含まれる通報情報を表示部で表示し、当該緊急通報の受信時刻または当該緊急通報で通知された災害発生推定時刻を基準としてリンク切断検出のための検出期間を設定し、当該検出期間内に当該親機との前記リンクが切断した際は自己の動作モードを前記停電モードへ切り替え、前記検出期間以外で前記リンクが切断した際は自己の動作モードを前記通常モードのまま維持し、
前記通信制御部は、前記通常モードで自己の親機との前記リンクが切断した場合は、当該親機からのリンク確立要求に応じて当該リンクを再確立する
ことを特徴とする電話システム。
【請求項3】
親機と、電池で動作するコードレス子機との組からなり、互いの識別情報を用いて両者間で確立したリンクを介して無線通信を行う複数のコードレス電話機と、これらコードレス電話機を内線収容する電話制御装置とを含む電話システムで用いられる電話制御方法であって、
前記コードレス子機が、
自己の親機との前記リンクが切断した際、当該親機を経由して通話を行う通常モードから当該親機を経由せず自己以外の前記コードレス子機との直接通話が可能な停電モードへ自己の動作モードを切り替えるとともに、前記停電モードにおける当該親機からのリンク確立要求に応じて、当該停電モードから前記通常モードへ自己の動作モードを切り替える動作モード切替ステップと、
前記停電モードにおける自己以外の前記コードレス子機に対する呼出操作に応じて、当該相手コードレス子機との間でリンクを確立して前記直接通話を行い、前記停電モードから前記通常モードへの切替時に、前記相手コードレス子機とのリンクを切断した後、当該親機とのリンクを再確立する通信制御ステップと
を備えることを特徴とする電話制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載の電話制御方法において、
前記動作モード切替ステップは、自己の親機を介して受信した前記電話制御装置からの緊急通報に応じて、当該緊急通報に含まれる通報情報を表示部で表示し、当該緊急通報の受信時刻または当該緊急通報で通知された災害発生推定時刻を基準としてリンク切断検出のための検出期間を設定し、当該検出期間内に当該親機との前記リンクが切断した際は自己の動作モードを前記停電モードへ切り替え、前記検出期間以外で前記リンクが切断した際は自己の動作モードを前記通常モードのまま維持し、
前記通信制御ステップは、前記通常モードで自己の親機との前記リンクが切断した場合は、当該親機からのリンク確立要求に応じて当該リンクを再確立する
ことを特徴とする電話制御方法。
【請求項5】
親機と、電池で動作するコードレス子機との組からなり、互いの識別情報を用いて両者間で確立したリンクを介して無線通信を行う複数のコードレス電話機と、これらコードレス電話機を内線収容する電話制御装置とを含む電話システムで用いられるコードレス子機であって、
自己の親機との前記リンクが切断した際、当該親機を経由して通話を行う通常モードから当該親機を経由せず自己以外の前記コードレス子機との直接通話が可能な停電モードへ自己の動作モードを切り替えるとともに、前記停電モードにおける当該親機からのリンク確立要求に応じて、当該停電モードから前記通常モードへ自己の動作モードを切り替える動作モード切替部と、
前記停電モードにおける自己以外の前記コードレス子機に対する呼出操作に応じて、当該相手コードレス子機との間でリンクを確立して前記直接通話を行い、前記停電モードから前記通常モードへの切替時に、前記相手コードレス子機とのリンクを切断した後、当該親機とのリンクを再確立する通信制御部と
を備えることを特徴とするコードレス子機。
【請求項6】
請求項5に記載のコードレス子機において、
前記動作モード切替部は、自己の親機を介して受信した前記電話制御装置からの緊急通報に応じて、当該緊急通報に含まれる通報情報を表示部で表示し、当該緊急通報の受信時刻または当該緊急通報で通知された災害発生推定時刻を基準としてリンク切断検出のための検出期間を設定し、当該検出期間内に当該親機との前記リンクが切断した際は自己の動作モードを前記停電モードへ切り替え、前記検出期間以外で前記リンクが切断した際は自己の動作モードを前記通常モードのまま維持し、
前記通信制御部は、前記通常モードで自己の親機との前記リンクが切断した場合は、当該親機からのリンク確立要求に応じて当該リンクを再確立する
ことを特徴とするコードレス子機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−239388(P2010−239388A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85035(P2009−85035)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】