説明

電話システム

【課題】建物内の部屋を、時間、用途の面から有効に活用する手段の提供。
【解決手段】建物内の部屋の少なくとも一室に備えられIP電話機能を有する通信装置と、利用者の部屋使用時に当該利用者が所有する電話番号での発着信が可能なように前記端末の設定を変更可能な管理装置と、からなる電話システムを提供する。前記部屋を宿泊施設の客室とすることで、当該客室を宿泊者のSOHO施設として活用することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宿泊施設や、貸しオフィス、共有施設の共用スペース、商業施設のテナントなどの建物内の部屋(利用空間)内の電話システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビルなどの建物の所有主やビル内の施設の営業主は、当該建物の建設や購入、貸与等によって投資した費用を早期に回収し、安定した収益を発生させることを目的とすることが一般的である。前記費用の回収及び収益の確保には、当該建物内の空間を有効に活用し、稼働率を高めることが何よりもの早道である。
【0003】
例えば、建物がホテルや旅館などの宿泊施設である場合には、宿泊施設を観光地の近隣に建てたり、客室内の設備を充実させたり、宿泊施設内の客室の他に温泉や娯楽施設などを別途設けることで、宿泊客を呼び込み、客室の稼働率を高めることが一般的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記のような対策を講じても、宿泊施設は時期によって稼働率に差がでることが多い。例えば、観光地に設けられた宿泊施設のシーズンオフは、宿泊客が減少、空室が増加し、客室の稼働率が下がってしまう。
【0005】
また、ビジネスホテルは平日の稼働率は安定しているものの、休日の前日等は、稼働率が顕著に低下することが多い。
【0006】
また、首都圏に頻繁に出張する機会の多い地方の会社員や、個人ベンチャー企業の代表者などは、宿泊先の客室を電話や業務を進めるといった簡易SOHO或いは営業所として使用したい、というニーズもある。
【0007】
また、宿泊施設の客室だけでなく、貸しビル内の空きテナントなどに代表される多用途の空間を有効に活用するための手段の提供も求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本願の第1発明は、建物内の部屋の少なくとも一室に備えられIP電話機能を有する通信装置と、利用者の部屋使用時に当該利用者が所有する電話番号での発着信を可能とする管理装置と、からなる、電話システムを提供することと要旨とするものである。
【0009】
また、本願の第2発明は、前記建物は宿泊施設であり、前記部屋は客室であることを特徴とする、本願の第1発明に記載の電話システムであることを要旨とするものである。
【0010】
また、本願の第3発明は、前記客室内にSOHO設備を更に備えたことを特徴とする、本願の第2発明に記載の電話システムであることを要旨とするものである。
【0011】
また、本願の第4発明は、前記通信装置は、IP電話機、PC、又はターミナルアダプタとFAX機の組み合わせのうち、何れか一つであることを特徴とする、本願の第3発明に記載の電話システムであることを要旨とするものである。
【0012】
前記「建物」には、宿泊施設、貸しオフィス、公共施設、商業施設などが含まれる。
【0013】
前記「建物内の部屋」には、宿泊施設の客室やサロン、貸しオフィスの個室空間、公共施設の共用スペース、商業施設のテナントなどが含まれる。
【0014】
前記「SOHO設備」には、電話機やFAX機を除くその他のOA機器等であって、PCや、プリンタ等が含まれる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下の効果のうち、少なくとも何れか一つを得ることができる。
(1)宿泊施設、レンタルオフィス、公共施設等の建物内の部屋にIP電話機能を有する装置を設けることにより、当該建物内の空き部屋を時間貸し性のSOHOとして使用でき、利用空間の用途を広げ、稼働率を高めることができる。
(2)利用者が宿泊する客室にIP電話機能を有する通信装置を備えることにより、当該客室を利用者専用の電話番号で発着信可能な電話を備えた簡易SOHO施設として使用することができ、宿泊施設に付加価値を付与し、施設内の稼働率をより高めることができる。
(3)客室にその他のSOHO設備を更に備えることにより、利用者が宿泊する客室をより設備の充実したSOHO施設として使用することができる。
(4)IP電話機能を有する通信装置をターミナルアダプタとFAX機の組み合わせによって構成することにより、利用者が宿泊する客室を利用者専用の電話番号で発着信可能な電話及びFAXを備えた簡易SOHO施設として使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の形態について以下に説明する。なお、本実施例はあくまで一実施例であって、本発明の範囲を本実施例に制限することを意図するものではない。
【0017】
(1)概要
本発明の宿泊施設を用いたビジネスモデルの概要は以下の通りである。
・ステップ1:宿泊施設の利用者(宿泊客)は予め専用の電話番号を所有しているか、宿泊施設側が特定の条件を満足する利用者に対し、個別の電話番号を提供・貸与する。その他、当該電話番号が予め設定された通信装置自体の提供・貸与を行っても良い。
・ステップ2:利用者が宿泊する際には、チェックイン時にフロントで自己の所有する電話番号での発着信が可能な通信装置の貸与を受ける。その他、宿泊施設の従業員がチェックイン前に客室内に通信装置を予め接続させておいてもよい。
・ステップ3:利用者は客室内で自己の所有する電話番号で発着信ができ、当該客室をSOHOとして使用することが可能となる。
【0018】
(2)システムの全体構成
図1は、本発明の電話システムの実施例の概略図である。
本実施例に係る建物3は宿泊施設である。建物2内にはLANが組まれ、更にネットワーク4を介して建物3間を互いに情報通信可能に構成することで、利用者が何れかの建物を利用する際にも共通の電話転送サービスを受けることができるように構成しておいてもよい。
【0019】
通信装置1とは、IP電話が可能な通信装置であって、固別に発着信専用の電話番号が付されるように予め設定がなされている。
通信装置1は電話機本体が一般的であるが、PC、PDA、スマートフォン、その他の一般的な情報処理装置なども含まれる。より具体的には、IP電話機や、ターミナルアダプタと既存の電話機、FAX機などの組み合わせ等がある。
【0020】
管理装置2とは、複数の通信装置1を管理する装置であって、利用者が部屋を使用する時に、当該利用者が所有する電話番号での発着信を可能とする装置である。
より具体的には、管理装置2はサーバ装置などの情報処理装置によって構成され、当該管理装置の管理者や、建物内の管理者、設定権限を有する利用者等、適宜利用環境に応じたアクセス管理がなされる。
なお、管理装置2はネットワーク4を介して建物3内の部屋31にある通信装置1と接続されれば足りるため、設置場所について建物3の内外を問うものではない。
また、管理装置2は、前記通信装置1に予め設定されている固有の電話番号をネットワーク4を介して再設定可能に構成しておくこともできる。
【実施例1】
【0021】
本発明の電話システムを宿泊施設間に適用した場合について、図2を参照しながら以下に説明する。
【0022】
(1)電話番号の取得(s100、s200)
本発明では、宿泊施設の宿泊客が宿泊前に予め個別に専用の電話番号を有していることを要する。利用者が専用の電話番号を有するには、利用者個人が前もって電話番号を取得しておき宿泊施設が有する通信装置1へ設定しても良いし、宿泊施設から宿泊時に専用の電話番号の提供(付与、貸与等を含む)をうけることもできる。また、前記電話番号の取得には、当該電話番号での発着信が可能な通信装置そのもを提供・貸与するような場合も含まれる。
【0023】
宿泊施設から宿泊客への電話番号の提供は、数泊以上宿泊する宿泊客に対して行ったり、宿泊施設が提供する各種プランへの申し込み等に応じて、適宜行うことができる。
【0024】
前記プランには、宿泊数の上限を設定した定額制のプランなどがある。定額制のプランとした場合には、上限数未満の宿泊数にとどまった利用客の差分を、他の宿泊客の使用に回すことができるため、宿泊施設の稼働率を100%以上に高めることが期待できる。
【0025】
なお、長期滞在型の利用者や、本社と遠隔地にある営業所などとして使用する宿泊客に対しては、電話番号の提供だけでなく、必要に応じて、住所等を提供してもよい。
【0026】
(2)宿泊予約(図示せず)
宿泊客は、WEBや電話等によって宿泊施設に宿泊予約を行う。
【0027】
(3)チェックイン手続(s300、s400)
宿泊客が宿泊施設にチェックインする際には、フロントから利用者専用の通信装置の提供・貸与をうける。
【0028】
(4)客室の利用(s500)
宿泊客は、宿泊する客室31内のLANに通信装置を接続させることで自由に自己の所有する電話番号での発着信が可能になり、SOHOとしての活用が可能となる。また、適宜FAXや、プリンタなどのSOHO設備をを客室に備えておくことで、より設備の充実したSOHOとしての活用が可能となる。
【0029】
(5)チェックアウト手続(s600)
宿泊客がチェックアウトする際には、客室から通信装置を外してフロントに返却する。
【0030】
(6)まとめ
以上の工程を繰り返すことにより、客室の宿泊客が日々変更しても、それぞれの宿泊客が自己の有する電話番号によって発着信が可能な客室の提供を実現することができる。
【0031】
[その他の実施例]
また、宿泊客が宿泊していない際にも、宿泊客が所有する電話番号への着信を宿泊施設のフロントに備えてあるIP電話機能を有する通信装置で応答可能に設定しておけば、宿泊施設の従業員が受付代行や、利用者が所有する携帯電話等への転送サービスを行うことができる。
【0032】
また、IP電話機能を有する通信装置は、宿泊客のチェックイン前に客室に予め設置しておいてもよいし、宿泊客が自己の通信装置を持ち込むこともできる。。
【0033】
また、本発明のIP電話機能を有する通信装置が、ターミナルアダプタと一般的な電話機との組み合わせの場合には、ターミナルアダプタを宿泊客に予め貸与しておき、宿泊客が客室に備えてある電話機をターミナルアダプタを介してLANに接続することにより、宿泊客が有する電話番号による発着信が可能な構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施例を示す概略図。
【図2】宿泊施設での実施例を示す概略図。
【符号の説明】
【0035】
1 通信装置
2 管理装置
3 建物
31 部屋
4 ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内の部屋の少なくとも一室に備えられIP電話機能を有する通信装置と、
利用者の部屋使用時に当該利用者が所有する電話番号での発着信を可能とする管理装置と、からなる、電話システム。
【請求項2】
前記建物は宿泊施設であり、前記部屋は客室であることを特徴とする、請求項1に記載の電話システム。
【請求項3】
前記客室内にSOHO設備を更に備えたことを特徴とする、請求項2に記載の電話システム。
【請求項4】
前記通信装置は、IP電話機、PC、又はターミナルアダプタとFAX機の組み合わせのうち、何れか一つであることを特徴とする、請求項3に記載の電話システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−87815(P2010−87815A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254213(P2008−254213)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(399006397)マークス株式会社 (1)
【出願人】(508293863)
【Fターム(参考)】