説明

電話機

【課題】何等の工具を用いずに組立・分解を行うことができる電話機を得るにある。
【解決手段】電話機本体の上面に樹脂成形される矩形の飾り枠を固定する電話機において、この飾り枠の下面から突起した状態で左右側辺に一体成形された複数対のL字状突起と、これらのL字状突起の頭部を挿入できるように電話機本体の上面対応部に形成されかつ電話機本体に対して飾り枠を前後方向に摺動させることにより対応L字状突起の抜け出しを阻止できる複数対の係止孔と、前記飾り枠の内方に向かって前側辺に一体成形された少なくともひとつの挿入片と、同挿入片を挿入できるように電話機本体の前面に形成される挿入孔と、前記電話機本体の上面及び前記飾り枠との間に形成されて前記電話機本体と飾り枠との関係を固定する係止爪及び係止溝とを備える電話機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電話機に関し、特に後側に設ける起倒可能な表示器及び上面周囲に設ける飾り枠とをもつ電話機に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、卓上電話機などの設計に際しては、卓上電話機上面に配列される機能キーなどの変更などに容易に対応できるように、電話機本体と表面パネルとを別体構成とし、これらの間に係止片や係止孔を形成して、機能キーや局線数の変更に対応している。
【0003】
また、最近では、通話先電話番号や通話者の相手画像などを表示できる液晶表示器を卓上電話機の後側に起倒可能に設ける場合があるが、従来の場合、液晶表示器のヒンジを電話機本体に固定ねじなどの固定手段で固定するのが普通である。
【特許文献1】実願昭60−47449号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の電話機の構造では、固定ねじなどの固定手段を用いるため、特別の工具を用いなければならず、デザイン上の外観変更に容易に応じられない問題があった。
本発明の目的は、以上に述べたような従来の電話機の問題に鑑み、何等の工具を用いずに組立・分解を行うことができる電話機を得るにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するため、本発明は、電話機本体の上面に樹脂成形される矩形の飾り枠を固定する電話機において、この飾り枠の下面から突起した状態で左右側辺に一体成形された複数対のL字状突起と、これらのL字状突起の頭部を挿入できるように電話機本体の上面対応部に形成されかつ電話機本体に対して飾り枠を前後方向に摺動させることにより対応L字状突起の抜け出しを阻止できる複数対の係止孔と、前記飾り枠の内方に向かって前側辺に一体成形された少なくともひとつの挿入片と、同挿入片を挿入できるように電話機本体の前面に形成される挿入孔と、前記電話機本体の上面及び前記飾り枠との間に形成されて前記電話機本体と飾り枠との関係を固定する係止爪及び係止溝とを備える電話機を提案するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のこのような構成によれば、複数のL字状突起を対応係止孔に挿入し、電話機本体に対して飾り枠を前後方向後方に移動させるだけで、電話機本体に飾り枠を固定できる。
また、電話機本体から飾り枠を外すには、前述した組立工程とは逆に、電話機本体に対して飾り枠を前方に押せば、挿入片が挿入孔から自然に抜け出すため、係止爪と係止溝との関係を外すだけで、電話機本体から飾り枠を完全に分解できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
後述する本発明の好ましい実施例の説明においては、
1) 前記電話機本体の後側上面には通話状態や電話番号などを表示できる表示器がヒンジで起倒可能に支持され、前記飾り枠の前側辺には前記ヒンジを覆う半円弧状断面のヒンジ部カバーが一体成形される電話機、
2) 前記係止爪は前記飾り枠の前側辺下面に一体成形される略直角三角形断面の突起した爪部材であり、前記係止溝は同爪部材を受け入れるコ字断面溝である構造
が説明される。
【実施例1】
【0008】
以下、図面について本発明の実施例の詳細を説明する。
図1は本発明による電話機全体を、図2は分解した状態の同電話機の電話機本体10と飾り枠20との関係を示している。
【0009】
図3から図6の拡大図から理解されるように、ABS樹脂などで射出成形される電話機本体10は、矩形容器状に成形された下部ケース11と、この下部ケース11の上面を覆う上部ケース15とからなり、これらの下部ケース11と上部ケース15の内部空間中には各種機能素子類を搭載したプリント配線基板(図示せず)が収納されると共に、上部ケース15の表面にはダイヤルキー16、局線キー17、各種機能キー18が配置される。
【0010】
また、上部ケース15の後部には、相手先電話番号、記憶された電話番号などを表示する液晶等の表示器30がヒンジ40を介して起倒可能に取り付けてあり、機能キー18の一部であるメニューキーで選択された画像や文字が表示器30に表示される。
【0011】
前記上部ケース15の外周囲には矩形枠状に合成樹脂材料で射出成形された飾り枠20が固定される。前記上部ケース15の外周面及び上面周囲を覆うように倒立した“L”字状断面に作られる飾り枠20の左右側辺20L,20Rの底面には、図7に示すように、対応左右側辺20L,20Rの長さ方向に隣り合った3対のL字状突起21,22が突出成形される。
そして、前記上部ケース15の上面左右には、これらの対応L字状突起21,22の頭部を受け入れる3対の係止孔51,52が形成され、これらの係止孔51,52に対応L字状突起21,22を係止できる。
【0012】
前記飾り枠20の後側辺20Bには前記ヒンジ40の取付部を覆うように“C”字状断面形状に成形されたヒンジ部カバー20aが一体され、電話機本体10に対して飾り枠20が完全に固定状態におかれたとき、同ヒンジ部カバー20aは、図1に示すように、表示器30のヒンジ40を完全に覆った状態となる。
【0013】
したがって、図4に拡大して示すように、上部ケース15に対して飾り枠20を組み付けるには、2点鎖線で示すように、上部ケース15の上方に飾り枠20を対向状態におき、同飾り枠20を上部ケース15の上面に当てがい、同図1点鎖線示のようにL字状突起21,22の頭部を対応係止孔51,52の内部に挿入すればよい。
この後、電話機本体10の後側向きに、上部ケース15の上面に沿って飾り枠20をスライドさせれば、図4に実線で示すように、係止孔51,52の内部にL字状突起21,22の頭部が係合して上部ケース15から飾り枠20が外れなくなる。
【0014】
一方、前述した飾り枠20の前側辺20Fには左右に離間された1対の挿入片61が飾り枠20の内方に向かって一体成形され、上部ケース15の前面にはこれらの挿入片61を挿入される挿入孔62が形成され、対応挿入孔62に対する挿入片61の係合により、組立状態での上部ケース15からの前側辺20Fの浮き上りが防止される。
【0015】
図8から理解されるように、飾り枠20の前側辺20Fの長さ方向中央には小さな係止爪71が一体成形され、図5に示すように、この係止爪71は上部ケース15の前縁部上面に形成する係止溝72に落ち込むことができる。
図示実施例の場合、前記係止爪71は直角三角形の断面形状に作られるから、電話機本体10に対する飾り枠20の組立の場合、上部ケース15の上面に沿った飾り枠20のスライドの際、挿入孔62に対する挿入片61の挿入に伴って、係止爪71の先端が上部ケース15の表面に沿って摺動し、係止溝72に対する同係止爪71の落ち込みにより、飾り枠20は上部ケース15から外れなくなる。
【0016】
図示実施例による電話機は、以上のような構造であるから、図2に示すように、表示器30を組み付けた状態の電話機本体10の上方に飾り枠20を対向状態において、飾り枠20のL字状突起21,22を上部ケース15の係止孔51,52に挿入することで組立てることができる。
即ち、図4の2点鎖線示の状態からL字状突起21,22を係止孔51,52の内部に挿入し、これらのL字状突起21,22を実線示の位置に移動させることにより、飾り枠20の左右側辺20L,20Rが上部ケース15に固定され、上部ケース15から外れなくなる。
【0017】
電話機本体10に対する飾り枠20の同後方への移動に伴い、飾り枠20のヒンジ部カバー20aも上部ケース15の後方へ移動するから、ヒンジ部カバー20aにより表示器30のヒンジ40が完全に覆われ、特別にヒンジ40の目隠し部材を施す必要はなくなる。
これと同時に、飾り枠20の前側辺20Fの挿入片61が挿入孔62に自然に挿入されるので、飾り枠20の前側辺20Fも上部ケース15の前部に固定されるけれども、上部ケース15の係止溝72に対する係止爪71の落ち込みにより、係止溝72からの係止爪71の抜け出しや区からのL字状突起21,22の脱落が阻止され、その結果、電話機本体10に飾り枠20が完全に組み立てられる。
【0018】
修理やメンテナンスの際に飾り枠20を電話機本体10から外すには、ヒンジ部カバー20aなどに指先を当てがって、飾り枠20を図2の手前向きに押せばよい。
つまり、この手前方向の力により飾り枠20の前側辺20Fが変形し、図5の2点鎖線示のように前側辺20Fが移動し、同前側辺20Fの挿入片61が挿入孔62から抜け出すと同時に、L字状突起21,22も係止孔51,52の内部で移動して対応係止孔51,52から抜け出せる状態となる。
【0019】
したがって、図5の下側から飾り枠20の前側辺20Fに力を加えると、係止爪71が係止溝72から外れ、1点鎖線示の状態に飾り枠20を外すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
前述した本発明の実施例の説明においては、電話機本体10に表示器30をヒンジ40でヒンジ接手した構造を説明したが、本発明は必ずしも表示器30を用いる電話機でなくともよい。
また、前記実施例においては、直角三角形断面の係止爪71と係止溝72を例示したけれども、本発明においては、半球状係止爪及び半球面係止溝で実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による電話機の全体斜視図である。
【図2】飾り枠を外して示した同電話機の分解斜視図である。
【図3】図2の3−3線に沿う要部拡大断面図である。
【図4】図3の4−4線に沿う要部拡大断面図である。
【図5】図2の5−5線に沿う要部拡大断面図である。
【図6】図2の6−6線に沿う要部拡大断面図である。
【図7】裏返して示した前記飾り枠の斜視図である。
【図8】角度を変えて示した同飾り枠の斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
10 電話機本体
15 上部ケース
20 飾り枠
20a ヒンジ部カバー
20B 後側辺
20F 前側辺
20L,20R 左右側辺
21,22 L字状突起
30 表示器
40 ヒンジ
51,52 係止孔
61 挿入片
62 挿入孔
71 係止爪
72 係止溝


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電話機本体の上面に樹脂成形される矩形の飾り枠を固定する電話機において、この飾り枠の下面から突起した状態で左右側辺に一体成形された複数対のL字状突起と、これらのL字状突起の頭部を挿入できるように電話機本体の上面対応部に形成されかつ電話機本体に対して飾り枠を前後方向に摺動させることにより対応L字状突起の抜け出しを阻止できる複数対の係止孔と、前記飾り枠の内方に向かって前側辺に一体成形された少なくともひとつの挿入片と、同挿入片を挿入できるように電話機本体の前面に形成される挿入孔と、前記電話機本体の上面及び前記飾り枠との間に形成されて前記電話機本体と飾り枠との関係を固定する係止爪及び係止溝とを備えることを特徴とする電話機。
【請求項2】
前記電話機本体の後側上面には通話状態や電話番号などを表示できる表示器がヒンジで起倒可能に支持され、前記飾り枠の前側辺には前記ヒンジを覆う半円弧状断面のヒンジ部カバーが一体成形されることを特徴とする請求項1記載の電話機。
【請求項3】
前記係止爪は前記飾り枠の前側辺下面に一体成形される略直角三角形断面の突起した爪部材であり、前記係止溝は同爪部材を受け入れるコ字断面溝であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の電話機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−174347(P2006−174347A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−367553(P2004−367553)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000000181)岩崎通信機株式会社 (133)
【Fターム(参考)】