説明

電車線路用セクションインシュレータ及びその絶縁部材の防水カバー

【課題】 降雨時の雨滴の付着を抑制し、電気絶縁性能の低下を低減する電車線用セクションインシュレータを提供する。
【解決手段】 セクションインシュレータ1において、隣接した二つのトロリ線T1,T2の隣接端部間を電気的に絶縁しつつ、引き留める絶縁部材2をFRP製の棒状角材で構成する。絶縁部材2の上部に、幅方向中央の頂部から両側面7b,7bに向かって下方へ傾斜する平坦な一対の脱落誘導斜面7c,7cを設ける。この絶縁部材2の脱落誘導斜面7c,7c上に落ちた雨滴は、当該斜面7cに沿って下方へ伝わり落ち、絶縁部材2上に水滴塊としてとどまり難い。従って、絶縁部材2上の水滴によって生ずる漏れ電流を小さくし、絶縁性能の低下を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電車線路用のトロリ線における隣接する二つの異なる電気区間を互いに電気的に絶縁しつつ引き留めて連結するセクションインシュレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電車線路用のセクションインシュレータとして、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。これは、電気系統の異なる2本のトロリ線の相互間を電気的に絶縁しつつ引き留めて連結するものであり、電車のパンタグラフを連続的に摺動させるためにトロリ線間に渡された棒状の絶縁部材と、それの両端に固着されたトロリ線接続金具とを具備する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-299450号の公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のセクションインシュレータにおいては、絶縁部材はFRP製の断面矩形の棒状体であるため、上面に雨滴が定着し易く、降雨時に漏れ電流が大きくなって絶縁性能が低下し、安全な作業を妨げるおそれがある。この問題を解決した上で、既存のセクションインシュレータに必要な部材を後付けして使用を継続できれば好都合である。
そこで本発明は、降雨時の雨滴の付着を抑制し、電気絶縁性能の低下を低減するセクションインシュレータ及び絶縁カバーを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明においては、電車線路の延線方向に隣接して架設された二つのトロリ線T1,T2の対向する端部を電気的に絶縁しつつ引き留める絶縁部材2と、トロリ線に代わってパンタグラフを連続的に摺動させる延線方向のスライダ4,5とを具備し、トロリ線の隣接端部間に介設される電車線路用セクションインシュレータ1において、絶縁部材2の上部に、側方へ向かって下り、雨滴の落下を促す脱落誘導斜面7cを設けた。
セクションインシュレータにおける絶縁部材9の上面を覆うように装着される絶縁カバー10に、側方へ向かって下り、雨滴の落下を促す脱落誘導斜面10cを設けた。
脱落誘導斜面7c,10cに、側面と角なく緩やかに連続させる円弧状湾曲面を延長して設けた。
【発明の効果】
【0006】
本発明においては、絶縁部材の上面に雨滴が落ちても、傾斜面を滑落させるので、水滴の停滞を低減し、絶縁部材の電気的絶縁性の低下を抑制することができる。また、絶縁部材に絶縁カバーを装着すれば、既存のセクションインシュレータに上記効果を付与し、そのまま使用を継続できるという。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係るセクションインシュレータの斜視図である。
【図2】図1のセクションインシュレータの正面図である。
【図3】図1のセクションインシュレータの平面図である。
【図4】図1のセクションインシュレータの底面図である。
【図5】図1のセクションインシュレータの側面図である。
【図6】(A)は絶縁部材の正面図、(B)は絶縁部材の底面図、(C)は絶縁部材の中央縦断面図、(D)は他の実施形態に係る絶縁部材の中央縦断面図である。
【図7】本発明に係る絶縁カバーの部分斜視図である。
【図8】図7の絶縁カバーの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1ないし図5において、セクションインシュレータ1は、電車線路の延線方向に隣接して架設された二つのトロリ線T1,T2の隣接端部間を絶縁部材2で電気的に絶縁しつつ、絶縁部材2の両端部に固定される接続金具3で引き留め、トロリ線T1,T2に沿うスライダ4,5で給電を途切れさせることなくパンタグラフを摺動させるものである。
【0009】
絶縁部材2はFRP製の棒状角材で構成される。絶縁部材2は、図6(A)ないし(C)に示すように、接続金具3を取り付けるための両端部の取付部6が断面矩形をなし、中間部7が断面略山形をなす。絶縁部材2の中間部7は、取付部6の底面から凹んだ平坦な底面7aと、この底面7aの両側から垂直に立ち上がる側面7bと、幅方向中央の頂部から両側面7b,7bに向かって下方へ傾斜する平坦な一対の脱落誘導斜面7c,7cで構成される。この絶縁部材2の脱落誘導斜面7c,7c上に落ちた雨滴は、当該斜面7cに沿って下方へ伝わり落ち、絶縁部材2上に水滴塊としてとどまり難い。絶縁部材2には耐候性、電気絶縁性、はっ水性の特性を持つシリコンワニスによる表面処理が施される。
なお、絶縁部材2の脱落誘導斜面7cは、図6(D)に示すように、側面7bから円弧状に湾曲させて連続させるように形成してもよく、この場合も雨滴の落下を促進させる作用を行う。
【0010】
接続金具3は、トロリ線T1,T2の端部を引き留める引留め部3aと、絶縁部材2の両端部を間に受け入れてボルト止めすると共に、長スライダ4及び短スライダ5をボルト止めして支持する二股状の結合部3bとを備える。トロリ線T1,T2は、押しボルト8で接続金具3の引留め部3aに結合される。接続金具3の引留め部3aは、トロリ線T1,T2の上方へ湾曲した端部を挿通させ、外側からほぼ直交方向に押しボルト8を螺合させてトロリ線T1(T2)を横方向に押圧する。
【0011】
接続金具3の一方の側部には、トロリ線T1(T2)に代わってパンタグラフが摺接する長スライダ4が、他方の側部には同じくパンタグラフが摺接する短スライダ5が絶縁部材2に沿って、両接続金具3,3について左右互い違いに固定される。一方の接続金具3に固定された長スライダ4は、他方の接続金具3に固定された短スライダ5を回避するように屈曲しつつ伸び、トロリー線T1(T2)の下面とほぼ同一平面となる下端面を有し、パンタグラフとの衝突を緩和するために先端部が側方へ湾曲しつつ上方に反っている。短スライダ5は直線状を成し、トロリー線T1(T2)の下面とほぼ同一平面となる下端面を有し、先端部がパンタグラフとの衝突を緩和するために上方へ収束するように先細りに形成されている。
【0012】
他の実施形態のインシュレータの絶縁部材9を図7,図8に示す。この絶縁部材9は従来のものと同様に矩形棒状をなす。接続金具3が取り付けられる絶縁部材9の両端部を除き、絶縁部材9の中間部上には、断面山形の絶縁カバー10が装着される。絶縁カバー10は、絶縁部材9の中間部の全長にわたり上方から嵌合するように下方に開放した凹部10aと、凹部10aの開口周縁部両側から垂直に立ち上がる側面10bと、幅方向中央の頂部から両側面7b,7bに向かって下方へ傾斜する平坦な一対の脱落誘導斜面10c,10cで構成される。絶縁カバー10が既存の絶縁部材9に装着され、雨滴が脱落誘導斜面14cに沿って伝わり落ち、絶縁部材2上に水滴塊としてとどまり難い。
【符号の説明】
【0013】
1 セクションインシュレータ
2 絶縁部材
3 接続金具
3a 引留め部
3b 結合部
4 長スライダ
5 短スライダ
7c 脱落誘導斜面
9 絶縁部材
10 絶縁カバー
10a 凹部
10c 脱落誘導斜面
T1 トロリ線
T2 トロリ線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電車線路の延線方向に隣接して架設された二つのトロリ線の対向する端部を電気的に絶縁しつつ引き留める絶縁部材と、トロリ線に代わってパンタグラフを連続的に摺動させる延線方向のスライダとを具備し、トロリ線の隣接端部間に介設される電車線路用セクションインシュレータにおいて、
前記絶縁部材の上部には、側方へ向かって下り、雨滴が伝わり落ちる脱落誘導斜面を具備することを特徴とする電車線路用セクションインシュレータ。
【請求項2】
電車線路の延線方向に隣接して架設された二つのトロリ線の対向する端部を電気的に絶縁しつつ引き留める絶縁部材と、トロリ線に代わってパンタグラフを連続的に摺動させる延線方向のスライダとを具備し、トロリ線の隣接端部間に介設される電車線路用セクションインシュレータにおける前記絶縁部材の上面を覆うように装着されるものであって、
側方へ向かって下り、雨滴の落下を促す脱落誘導斜面を具備することを特徴とするセクションインシュレータの絶縁カバー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の前記脱落誘導斜面には、側面に緩やかに連続させる円弧状の湾曲面が延長することを特徴とする電車線路用セクションインシュレータ又は絶縁カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−86628(P2013−86628A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228137(P2011−228137)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000001890)三和テッキ株式会社 (134)