説明

電車線路用碍子

【課題】優れた耐汚損性、耐久性、機械的強度および作業性を有し、コスト面に優れる、電車線路用碍子を提供すること。
【解決手段】 電車線路用碍子20が、磁器製の中実状の磁器棒21と、磁器棒21の周りに設けられ、磁器棒21の外周面を間隔を隔てて被覆するゴム製の防護カバー24とを備える。そのため、汚損および湿潤による、電車線路用碍子20の絶縁の低下を有効に抑制することができ、さらに、優れた耐久性、機械的強度および作業性を有し、コスト面に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電車線路用碍子、詳しくは、電車線路に用いられる電車線路用碍子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、長幹碍子は、材質、使用電圧、閃絡保護方式(二重絶縁の有無)などにより数種類のものがあり、用途に適合したものが使用される。電車線路においては、トロリー線のパンタグラフに対する信頼性や位置精度が要求されるため、一般に、磁器製の長幹碍子が使用されている。
【0003】
電車線路における長幹碍子の使用の態様について、以下において、図3を参照して具体的に説明する。なお、図3は、一般的な電車線路を示す概略図である。
【0004】
図3に示されるように、電車線路1においては、鉛直方向に延びる電柱2が、線路11の側方において、線路11に沿って間隔を隔てて複数配置されており、電柱2には、トロリー線などの電線を支持するアーム部3(可動ブラケット)が備えられている。
【0005】
電柱2は、その上部において、長幹碍子5(5a、5b)を取り付けるための取付部材4(4a、4b)を、上下に間隔を隔てて複数(2つ)備えている。
【0006】
アーム部3は、水平主パイプ6と、水平主パイプ6を支持する斜主パイプ7とを備えており、水平主パイプ6および斜主パイプ7は、それぞれ、長幹碍子5(5a、5b)を介して電柱2に絶縁支持されている。
【0007】
長幹碍子5は、水平主パイプ6および斜主パイプ7と、電柱2とを、電気的に絶縁しながら接続する絶縁物であり、笠付きの磁器棒8と、磁器棒8の両端に備えられる金具9(9a、9b)とを備えている。
【0008】
水平主パイプ6は、水平方向に沿って直線状に延びる杆であり、その基端は、上側の長幹碍子5aの先端(一端)の金具9aと接続されている。上側の長幹碍子5aも、水平方向に沿って配置されており、その基端(他端)の金具9bが、上側の取付部材4aと接続されている。
【0009】
上側の取付部材4aは、電柱2の上側において、電柱2の周りに取り付けられている。
【0010】
斜主パイプ7は、基端が下方となり、先端が上方となる、斜め方向に沿って直線状に延びる杆であり、その基端は、下側の長幹碍子5bの先端(一端)の金具9aと接続されている。また、斜主パイプ7の先端は、水平主パイプ6の先端近傍に連結されている。下側の長幹碍子5bも、斜主パイプ7が延びる斜め方向に沿って配置されており、その基端(他端)の金具9bが、下側の取付部材4bと接続されている。
【0011】
下側の取付部材4bは、電柱2の下側において、電柱2の周りに取り付けられている。
【0012】
このようにして、水平主パイプ6が、斜主パイプ7によって支持されるとともに、水平主パイプ6および斜主パイプ7(アーム部3)が、長幹碍子5によって、電柱2に絶縁支持されている。
【0013】
このようなアーム部3は、図示しないが、必要により、曲線引装置などを備え、トロリ線などを支持する。そして、電車線路1においては、アーム部3に支持される図示しないトロリ線、および、電車10に備えられる図示しないパンタグラフを介して、電力が、電車10に供給される。
【0014】
ところで、長幹碍子5が、例えば、海塩、工場により排出される化学合成物、煤煙、塵埃などの汚損物により汚損され、雨や霧などによって湿潤を受けると、長幹碍子5沿面の絶縁が低下する。とりわけ、海塩などの強電解質は、水に溶解し、強い導電性を示すため、長幹碍子5の絶縁を著しく低下させ、様々な悪影響を及ぼす。
【0015】
例えば、海岸付近など、電車線路における長幹碍子5の汚損が激しい箇所では、長幹碍子5が汚損および湿潤することにより、長幹碍子5の絶縁が低下し、漏れ電流が発生し、長幹碍子5の表面に局部アークが発生する場合がある。また、変電所へ流れる電流が大きくなり、リレーが誤動作するなどの、不具合が生じる場合がある。
【0016】
そのため、長幹碍子5の汚損および湿潤を防止し、長幹碍子5の絶縁を確保するため、非特許文献1では、長幹碍子5の表面に、シリコーンコンパウンドなどの撥水性物質を塗布することが記載されている。
【0017】
シリコーンコンパウンドは、シリコーンオイルに微細なシリカ粉末を配合したグリス状の混和物であり、シリコーンコンパウンドを塗布した長幹碍子5に、汚損物が付着すると、シリコーンオイルが滲み出して、汚損物を包み込む、いわゆるアメーバ作用が働く。そのため、長幹碍子5の表面に水が付着した場合にも、シリコーンオイルの撥水性で、汚損物中の電解質が連なることを防止することができ、また、不溶解性の塵埃が水分を保持することを防止することができる。
【非特許文献1】日本鉄道電気技術協会著、「鉄道技術者のための電気概論 電気線路シリーズ4 き電線・帰線路・がいし」、日本鉄道電気技術協会、平成20年3月、P.128−158
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、非特許文献1に示される方法では、シリコーンコンパウンドの劣化に伴って、シリコーンコンパウンドの定期的な塗り替えが、例えば、2年に1度の頻度で、継続的に必要であるため、多大な手間およびコストがかかる。また、シリコーンコンパウンドの塗り替え作業は、電車の運転が停止する時間帯である深夜に行われるため、施工にムラが生じやすい。さらに、シリコーンコンパウンドをふき取ったウエスは産業廃棄物であるため、環境に有害である。
【0019】
また、長幹碍子5の汚損および湿潤を防止し、長幹碍子5の絶縁を確保する別の手段として、長幹碍子5に磁器製のカバーを備え、磁器製のカバーにより、長幹碍子5の表面を被覆することが試案される。この方法によれば、長幹碍子5の表面の汚損および湿潤を、有効に防止することができ、さらに、塗り替え作業などを必要としないため、コスト面に優れる。しかしながら、電車線路1に用いられる長幹碍子5は、比較的低位置に設置されるため、この方法では、長幹碍子5に備えられた磁器製のカバーが、飛来物によって破損する場合がある。また、磁器がいしの製法上においても非常に困難である。
【0020】
本発明の目的は、優れた耐汚損性、耐久性、機械的強度および作業性を有し、コスト面に優れる、電車線路用碍子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の目的を達成するため、本発明の電車線路用碍子は、磁器製の中実状の磁器棒と、前記磁器棒の周りに設けられ、前記磁器棒の外周面を間隔を隔てて被覆するゴム製の防護カバーとを備えることを特徴としている。
【0022】
このような電車線路用碍子によれば、磁器棒が、ゴム製の防護カバーによって被覆されるため、簡易な構成によって、磁器棒の表面の汚損および湿潤を防止することができ、電車線路用碍子の絶縁を良好に確保することができる。
【0023】
また、製法上も、ゴム製の防護カバーを別途製造し、磁器棒に装着すればよく、比較的容易に製造できる。
【0024】
これにより、漏れ電流を抑制し、局部アークの発生を抑えることができる。
【0025】
また、このような電車線路用碍子によれば、シリコーンコンパウンドなどの撥水性物質の塗り替え作業などを必要としないため、手間およびコスト面に非常に優れる。
【0026】
また、このような電車線路用碍子によれば、防護カバーがゴム製であるため、比較的低位置に設置した場合にも、飛来物などによる防護カバーの破損を防止することができ、長期間に渡って、優れた耐久性を確保することができる。
【0027】
また、本発明の電車線路用碍子では、前記磁器棒は、径方向外方に突出する磁器製の磁器笠を一体的に備えており、前記防護カバーは、前記磁器棒の長手方向において、一端が前記磁器棒の外周面に密着され、他方が開放されており、前記磁器笠は、前記防護カバーの開放側において、前記防護カバーに対向配置され、前記磁器笠の前記径方向長さは、前記防護カバーの開放空間の前記径方向長さよりも長いことが好適である。
【0028】
磁器笠が、防護カバーの開放側において、防護カバーに対向配置され、かつ、その径方向長さが、防護カバーの開放空間の径方向長さよりも長く形成されるので、防護カバーの開放側が、磁器笠によって被覆される。その結果、防護カバーの開放側から、雨や霧などの水分が浸入し、磁器棒に付着し、磁器棒が湿潤することを、有効に抑制することができる。
【0029】
また、本発明の電車線路用碍子では、前記磁器笠は、前記防護カバーの密着側においても、前記防護カバーに対向配置されていることが好適である。
【0030】
磁器笠が、ゴム製の防護カバーの開放側および密着側に、それぞれ対向配置され、かつ、磁器笠の径方向長さが、防護カバーの開放空間の径方向長さよりも長く形成されていると、電車線路用碍子を、その長手方向が載置面と平行となるように置くことができる。すなわち、電車線路用碍子を、その長手方向が載置面と平行となるように置いた場合(つまり、横向きに置いた場合)には、防護カバーを挟む各磁器笠が載置面と接するため、防護カバーの変形を防止することができ、その結果、電車線路用碍子を設置するにあたって、良好な作業性を確保することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の電車線路用碍子によれば、汚損および湿潤による、電車線路用碍子の絶縁の低下を有効に抑制することができ、さらに、優れた耐久性、機械的強度および作業性を有し、コスト面に優れる。そのため、本発明の電車線路用碍子は、電車線路において、可動ブラケットを絶縁支持するために、好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1は、本発明の電車線路用碍子が使用される電車線路の一実施形態を示す要部正面図であり、図3に示す電車線路の一部を取り出して示している。なお、図3に示す各部に対応する部材については、以降の各図面において、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0033】
図2は、図1に示す電車線路用碍子の一実施形態を拡大して示した図であり、図2(a)は、電車線路用碍子の拡大正面図、図2(b)は、電車線路用碍子の拡大断面図である。
【0034】
図1では、図3に示す電車線路1における長幹碍子5に代えて、本発明の一実施形態の電車線路用碍子20が用いられている。以下において、電車線路用碍子20について詳述する。
【0035】
図1において、電車線路用碍子20は、アーム部3と電柱2とを、電気的に絶縁しながら接続しており、磁器棒21と、磁器棒21の外周面に設けられる防護カバー24と、磁器棒21の長手方向両端部に設けられる金具9とを備えている。
【0036】
磁器棒21は、磁器からなり、図2に示すように、長手方向に延びる中実円柱状に形成される円柱部22と、円柱部22から径方向外方に突出し、円柱部22と一体的に形成される磁器笠23とを備えている。
【0037】
円柱部22は、その長手方向長さが、例えば、700〜1000mm、好ましくは、800〜850mmであり、その径方向長さが、例えば、80〜100mm、好ましくは、87〜93mmとなるように形成される。
【0038】
磁器笠23は、磁器棒21の両端部において複数(磁器棒21の先端部(一端部)に1つ、基端部(他端部)に3つ)形成されており、各磁器笠23は、径方向外側に向かうに従って肉薄となる円盤形状であって、径方向外周端面が、周方向にわたって丸みを帯びた湾曲形状となるように形成されている。
【0039】
磁器棒21の先端部に形成される磁器笠23は、先端側金具9a(後述)と、最先端に配置される防護カバー24との中間部分に配置されている。
【0040】
磁器棒21の基端部に形成される磁器笠23は、基端側金具9b(後述)と、最基端に配置される防護カバー24との中間部分に、互いに間隔を隔てて複数(3つ)配置されている。具体的には、基端側金具9b(後述)に隣接配置される磁器笠23と、最基端に配置される防護カバー24に隣接配置される磁器笠23と、それらの間において、基端側金具9b(後述)に隣接配置する磁器笠23の近傍に配置される磁器笠23とを備えている。
【0041】
このような磁器笠23は、その径方向長さが、防護カバー24の開放空間30(後述)の径方向長さよりも長くなるように形成されており、具体的には、磁器笠23は、その径方向長さが、例えば、160〜200mm、好ましくは、170〜180mmとなり、防護カバー24の開放空間30(後述)の径方向長さよりも、例えば、20〜50mm、好ましくは、30〜40mm長くなるように形成される。
【0042】
防護カバー24は、磁器棒21の外周面を被覆するものであって、磁器棒21の先端部に形成される磁器笠23と、磁器棒21の基端部に形成される磁器笠23との間に挟まれるように、磁器棒21の中央部において、複数(3つ)、等間隔に設けられている。
【0043】
各防護カバー24は、例えば、300〜1000%、好ましくは、500〜800%の伸びと、耐トラッキング性(たとえば、IEC60587−3.5kV以上判定A、Bともに合格以上)とを有する、例えば、シリコーンゴムなどの常温伸縮ゴムからなり、図2(b)に示すように、小径筒状の固定部25と、その固定部25の基端側において固定部25に連続して形成されるカバー部26とを、一体的に備えている。
【0044】
固定部25は、磁器棒21の外周面において、円柱部22に防護カバー24を圧着固定できるよう、円柱部22の外径よりも僅かに小さい内径を有する円環形状として形成されている。
【0045】
カバー部26は、固定部25から拡径する鍔部27と、その鍔部27から連続して長手方向に延び、遊端部において開放される内側カバー28および外側カバー29とを、一体的に備えている。
【0046】
鍔部27は、固定部25の基端側に連続して設けられており、その内径が固定部25の内径と略同一となり、その外径が固定部25の外形よりも大径となる、固定部25よりも肉厚の円環形状として形成されている。
【0047】
内側カバー28は、鍔部27の径方向内側において、基端側へ向かって、円柱部22の外周面と間隔を隔てながら延びる筒状として形成されている。具体的には、内側カバー28は、その先端側に対して、基端側が大径となる略テーパ状に形成されている。
【0048】
外側カバー29は、鍔部27の径方向外側において、基端側へ向かって、内側カバー28の外周面と間隔を隔てながら延びる筒状として形成されている。具体的には、外側カバー29は、その先端側に対して、基端側が大径となる略テーパ状に形成されている。つまり、外側カバー29は、内側カバー28よりも大径に形成されており、外側カバー29は、円柱部22と間に、略円筒形状の開放空間30を形成している。
【0049】
これにより、カバー部26は、固定部25が円柱部22の表面に、シリコーン系の接着剤を用いて圧着固定された状態において、内側カバー28が、円柱部22の外周面を間隔を隔てて被覆し、外側カバー部29が、内側カバー部28の周りを間隔を隔てて被覆するような2重筒構造として形成される。
【0050】
そのため、例えば、台風などによって、様々な角度から吹き付けられる、汚損物を含む雨水の、カバー部26内、すなわち、開放空間30への浸入を有効に防止することができ、かつ、沿面距離を長くすることができ、絶縁性の向上を図ることができる。
【0051】
そして、これら内側カバー28および外側カバー29における磁器棒21の長手方向に沿う長さ(深さ)は、外側カバー29が、内側カバー28よりもやや長く形成されており、ともに30〜100mmの範囲から選択される。
【0052】
カバー部26の深さが浅すぎると、汚損物を含む雨水の、カバー部26の開放空間30内への浸入を、有効に防止することができず、漏れ電流が発生する場合がある。一方、カバー部26の深さが深すぎると、防護カバー24が大型化してしまい、上記したように、磁器棒21の先端側に形成される磁器笠23と、基端側に形成される磁器笠23との間に、複数(3つ)設けることが困難となる場合がある。
【0053】
このように、カバー部26の深さを、30〜100mmの範囲において選択することで、汚損物を含む雨水などの、カバー部26の開放空間30内への浸入を、有効に防止しつつ、磁器棒21における先端側の磁器笠23と、基端側の磁器笠23との間において、良好に複数(3つ)設けることができる。
【0054】
なお、図2においては、内側カバー部28および外側カバー部29の深さを、30〜60mmの範囲において、内側カバー部28の深さに対して、外側カバー部29をより深く形成しているが、例えば、30〜100mmの範囲において、内側カバー部28の深さに対して、外側カバー部29をより浅く形成してもよく、好ましくは、30〜100mmの範囲において、内側カバー部28の深さに対して、外側カバー部29の深さを実質的に等しいか、それより深く形成する。
【0055】
そして、このような防護カバー24は、電車線路用碍子20の磁器笠23の外形よりも、大きな開口径に引き伸ばすことができ、例えば、防護カバー24を、その開口部(固定部25および鍔部27の円周面に囲まれる開口部)が広くなるように引き伸ばした状態において、磁器棒21の長手方向一端部から、その磁器棒21に挿入して、磁器笠23を通過させた後、固定部25の径方向内側面にシリコーン系の接着剤を塗布して、引き伸ばしを解除することにより、その磁器棒21における先端および基端の磁器笠23の間(すなわち、円柱部22)に、圧着固定することができる。
【0056】
金具9は、電車線路用碍子20の先端部に設けられる先端側金具9aと、基端部に設けられる基端側金具9bとを備えている。
【0057】
先端側金具9aは、キャップ部31と、突起部32とを一体的に備えている。
【0058】
キャップ部31は、一方が閉塞され他方が開放された断面視略コ字状の円筒形状として、その内径が円柱部22の先端部の外径と略同一となるように形成されている。
【0059】
突起部32は、キャップ部31に連続し、キャップ部31の閉塞された側から、開放された側と反対方向へ向かって延びる、平帯状の突起として形成されており、その幅方向中央には、孔33が形成されている。
【0060】
先端側金具9aは、キャップ部31が円柱部22の先端部において、セメントなどを用いて、磁器棒21に装着されている。
【0061】
基端側金具9bは、キャップ部34と、突起部35とを一体的に備えている。
【0062】
キャップ部34は、一方が閉塞され他方が開放された断面視略コ字状の円筒形状として、その内径が円柱部22の基端部の外径と略同一となるように形成されている。
【0063】
突起部35は、キャップ部34に連続し、キャップ部34の閉塞された側から、開放された側と反対方向へ向かって延びる、先端が丸みを帯びた略三角平板形状の突起として形成されており、その幅方向中央には、孔36が形成されている。
【0064】
基端側金具9bは、キャップ部34が円柱部22の基端部において、セメントなどを用いて、磁器棒21に装着されている。
【0065】
そして、電車線路用碍子20は、図1に示されるように、水平主パイプ6と取付部材4aと連結し、水平主パイプ6を、電柱2に対して絶縁支持するために用いられている。
【0066】
より具体的には、図1における上側の電車線路用碍子20では、先端側金属9aの突起部32が、水平主パイプ6に、図示しないボルトにより固定される。これにより、電車線路用碍子20と水平主パイプ6とが、水平方向に沿って接続される。また、基端側金属9bの突起部35が、取付部材4aに、図示しないボルトにより固定される。これにより、電車線路用碍子20と取付部材4aとが、水平方向に沿って接続される。
【0067】
その結果、電車線路用碍子20を介して、水平主パイプ6と取付部材4aとを、水平方向に沿って連結させることができる。
【0068】
また、図1における下側の電車線路用碍子20では、先端側金属9aの突起部32が、斜主パイプ7に、図示しないボルトにより固定される。これにより、電車線路用碍子20と斜主パイプ7とが、電車線路用碍子20の基端が下方となり、先端が上方となる斜め方向に沿って接続される。また、基端側金属9bの突起部35が、取付部材4bに、図示しないボルトにより固定される。これにより、電車線路用碍子20と取付部材4bとが、電車線路用碍子20の基端が下方となり、先端が上方となる斜め方向に沿って接続される。
【0069】
その結果、電車線路用碍子20を介して、斜主パイプ7と取付部材4bとを、斜主パイプ7の基端が下方となり、先端が上方となる斜め方向に沿って連結させることができる。
【0070】
これにより、電車線路用碍子20を介して、アーム部3を、電柱2に絶縁支持させることができる。
【0071】
電車線路用碍子20においては、防護カバー24が、磁器棒21の長手方向において、一端(磁器棒21における先端側の端部)が磁器棒21の外周面に密着され、他端(磁器棒21における基端側の端部)が、磁器棒21の外周面と隔てて磁器棒21の基端側に向かって延びており、これにより、防護カバー24の他端が、磁器棒21の基端側へ向かって開放されている。
【0072】
そのため、このような電車線路用碍子20によれば、磁器棒21が、ゴム製の防護カバー24によって被覆されるため、簡易な構成によって、磁器棒21の表面の汚損および湿潤を防止することができ、電車線路用碍子20の絶縁を良好に確保することができる。
【0073】
また、製法上も、ゴム製の防護カバー24を別途製造し、磁器棒21に装着すればよく、比較的容易に製造できる。
【0074】
これにより、漏れ電流を抑制し、局部アークの発生を抑えることができる。
【0075】
また、このような電車線路用碍子20によれば、シリコーンコンパウンドなどの撥水性物質の塗り替え作業などを必要としないため、手間およびコスト面に非常に優れる。
【0076】
また、このような電車線路用碍子20によれば、防護カバー24がゴム製であるため、弾性に優れており、そのため、電車線路用碍子20を、比較的低位置に設置した場合にも、飛来物(例えば、砂利、ゴミ、建築材など)などの衝突による応力を吸収して、防護カバー24の破損を防止することができ、長期間に渡って、優れた耐久性を確保することができる。
【0077】
また、このような電車線路用碍子20では、磁器笠23(磁器棒21の基端側に設けられた磁器笠23)が、防護カバー24(磁器棒21の基端側に設けられた防護カバー24)の開放側において、防護カバー24に対向配置され、かつ、その径方向長さが、防護カバー24の開放空間30の径方向長さよりも長く形成されるので、防護カバ24ーの開放側が、磁器笠23によって被覆される。その結果、防護カバー24の開放側から、雨や霧などの水分が浸入し、磁器棒21に付着し、磁器棒21が湿潤することを、有効に抑制することができる。
【0078】
また、このような電車線路用碍子20では、磁器棒21の先端側に設けられた磁器笠23が、最先端に設けられた防護カバー24の固定部25に隣接配置しており、かつ、磁器棒21の基端側に設けられた磁器笠23が、最基端に設けられた防護カバー24に隣接配置している。すなわち、すべての防護カバー24が、磁器棒21の先端側に設けられた磁器笠23と、磁器棒21の基端側に設けられた磁器笠23との間において、それらに挟まれるように配置されている。また、防護カバー24の外径は、磁器笠23の外径よりも、小さく形成されている。
【0079】
そのため、図2(a)に示されるように、仮想線で示される載置面Fに、電車線路用碍子20を、その長手方向が載置面Fと平行となるように置いた場合(つまり、横向きに置いた場合)には、磁器棒21の両側端部に形成され、防護カバー24を挟む磁器笠23の径方向外周端面が載置面Fと接触し、かつ、防護カバー24が載置面Fと接触しないため、防護カバー24の変形を防止しながら、電車線路用碍子20を載置面Fに定置することができる。その結果、電車線路用碍子20を設置するにあたって、良好な作業性を確保することができる。
【0080】
その結果、電車線路用碍子20によれば、汚損および湿潤による、電車線路用碍子の絶縁の低下を有効に抑制することができ、さらに、優れた耐久性、機械的強度および作業性を有し、コスト面に優れる。そのため、電車線路用碍子20は、電車線路において、アーム部(可動ブラケット)を絶縁支持するために、好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の電車線路用碍子が使用される電車線路の一実施形態を示す要部正面図であり、図3に示す電車線路の一部を取り出して示している。
【図2】図1に示す電車線路用碍子の一実施形態を拡大して示した図であり、図2(a)は、電車線路用碍子の拡大正面図、図2(b)は、電車線路用碍子の拡大断面図である。
【図3】一般的な電車線路を示す概略図である。
【符号の説明】
【0082】
2 電柱
3 アーム部
4 取付部材
6 水平主パイプ
7 斜主パイプ
9 金具
20 電車線路用碍子
21 磁器棒
22 円柱部
23 磁器笠
24 防護カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁器製の中実状の磁器棒と、
前記磁器棒の周りに設けられ、前記磁器棒の外周面を間隔を隔てて被覆するゴム製の防護カバーと
を備えることを特徴とする、電車線路用碍子。
【請求項2】
前記磁器棒は、径方向外方に突出する磁器製の磁器笠を一体的に備えており、
前記防護カバーは、前記磁器棒の長手方向において、一端が前記磁器棒の外周面に密着され、他方が開放されており、
前記磁器笠は、前記防護カバーの開放側において、前記防護カバーに対向配置され、
前記磁器笠の前記径方向長さは、前記防護カバーの開放空間の前記径方向長さよりも長いことを特徴とする、請求項1に記載の電車線路用碍子。
【請求項3】
前記磁器笠は、前記防護カバーの密着側においても、前記防護カバーに対向配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の電車線路用碍子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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