説明

電離放射線により励起される発電機

本発明は、逆分極されたダイオードを、逆分極用のバッテリとパルス変圧器との間に並列に設けることにより、又はパルス変圧器のみと一緒に、これに並列にダイオードを設けることにより、電離放射線を感受できる発電機に関するものである。このようにして、宇宙船の内部で、又は大気中において宇宙線を利用して、又は、例えば核現場や医療現場といった電離放射線を含む環境において利用可能な発電機を提供することができる。この発電機は、好ましくは、リモートセンサを搭載したプリント回路板上に直接実装される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然源からの宇宙放射線や核現場や医療現場といった何らかの特殊環境に存在する放射線の区別なく、発電機外部からの電離放射線で励起される発電機を提供するものである。本発明の発電機は、電離放射線から電気エネルギーを生成するダイオードを有している。本発電機は、クーロン効果により生成される電子によって放出されるエネルギーを回収する半導体材料で構成されていることによって、電力の供給が可能となり、また、数十年の寿命が可能となる。
【背景技術】
【0002】
原子力電池というコンセプトは、1951年のPhilip Edwin Ohmartの業績以来、知られているものである。この種の電池は、現在その多くは原子力電池又はベータボルタ電池であって、水素の放射性同位元素であるトリチウムをドープしたダイオードからなり、非熱的変換プロセスを用いる。このドーパントにより、ダイオードそれ自体の中で電離放射線が発生し、ダイオードは、これに見合った電流を生成する。この技術の不都合な点は、これが放射性物質の取り扱いを伴うことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
また、本発明の発電機で使用するダイオードの太陽電池と異なる点は、直射日光の中で太陽光放射にさらす必要がないということである。逆に、それは、典型的には宇宙船又は航空機であるビークル内に配置することができ、これによって、継続的に電力を生成する。
【0004】
本発明は、エネルギー源として、自然放射線環境又は他の何らかの電離放射線環境を利用し、発電機の中に放射性同位元素は存在しないことを特徴としている。
【0005】
宇宙起源の放射線環境は、太陽(太陽風と爆発)や、非常に様々な天然エネルギー粒子即ち宇宙線を恒久的に放出する星間空間および銀河間空間から生じる。これは、主に陽子(85%から90%)とヘリウム原子核(9%から14%)によって荷電された部分を含み、残りは電子、様々な核子(原子核)、さらに少量の軽い反物質(反陽子と陽電子)からなる。中性の部分は、ガンマ線およびニュートリノからなる。
【0006】
地磁界は、このような宇宙線の大部分を逸らしてしまう。陽子と電子は、かなりの割合が磁力線付近で捕獲されて、一般に放射線帯と呼ばれている領域を形成している。その他の部分は、大気中にある、より重い原子核からの破砕過程を通じて、二次又は三次の電離放射線および粒子(中性子、光子、パイオン、ミューオン、電子、アルファイオン...)を生じる。この現象は、大気カスケードと呼ばれる。図1は、地上0kmから35kmの高度で生じる、そのようなカスケードを示している。
【0007】
結果的に、大気圏の上層部と海面位との間で、そのバランスが変化しながら粒子の形成が起こる。しかし、二次荷電粒子束は、大気中の分子との相互作用によって、減衰する。その結果、航空機の飛行高度においては、中性子が優勢となる。
【0008】
大気中に存在する中性子は緯度と高度によって変化し、高度1,500mでは地表面と比べて2倍である。それは、また、太陽活動の変化の影響によっても変化する。
【0009】
宇宙起源の自然放射線環境に加えて、地表面では、ウラン、トリウム、カリウム‐40といった放射性物質により生じる地表の自然活性による放射線がある。これらは、ガンマ線およびベータ線を放出する。電離放射線を伴う他の環境としては、民生用原発、軍事核施設、医療現場がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によると、使用するダイオードは、逆分極されているか、又は非分極のダイオードであり、さらに、パルス変圧器に接続されている。ダイオードの逆分極の目的は、ダイオードの空乏領域を広げることであり、これによって、荷電電離粒子により生じた電子正孔対が、再結合する前に収集されるようにする。
【0011】
パルス変圧器は、例えば高変圧比で高周波数の磁気変圧器であり、電流パルスを下流で利用される高電圧パルスに変換する。
【0012】
よって、本発明は、電離放射線により励起される発電機を目的とするものであり、これは、非分極であるか、又は逆分極された半導体接合部をもち、パルス変圧器に接続された電子デバイスを備えることを特徴としている。
【0013】
従って、本発明の目的は、シリコン又はその他のあらゆる半導体材料のダイオード、即ちp‐n接合部がオーミック接触により2つの電極に接続しているダイオードと、電子回路即ち変圧器と、からなる蓄電池である。発電機は、低レベル電離放射線を、ダイオードにおける電流生成により電気に変換する。
【0014】
半導体検出器の効率は、多くの要素によって決まり、それらは、入射放射線の種類およびエネルギー、検出器の形状、使用している材料の密度および原子番号、キャリアの輸送特性および信号誘導のメカニズムによって生じる何らかのデッドゾーンなどである。半導体材料の選択には、単位長さあたりで付与されるエネルギーおよび収集されるエネルギーの割合の最大化、即ち効率の最大化を目的として、キャリアの移動度、固有抵抗、電離エネルギーなど多くのパラメータが関与する。
【0015】
本発明は、以下の説明と添付の図面を分析することで、よりよく理解されるであろう。これらは、単なる例示目的で提示されるもので、本発明を限定するものではない。図面は以下のものを示している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、上述した陽子により生じる大気カスケードの概略図である。
【図2】図2は、本発明の発電機の概略図である。
【図3】図3は、大気中に見られる粒子の全束を高度の関数として、考えられる高度について示す研究結果である。
【図4】図4は、直接電離と間接電離の違いを示す概略図である。
【図5】図5は、1g/cm2のアルミニウム遮蔽に相当するビークルの内部と外部での、宇宙環境における陽子流束についての調査結果である。
【図6】図6は、半導体接合部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図2は、本発明の発電機1の概略図である。発電機1は、半導体接合部を有する電子デバイス2からなり、これはパルス変圧器3に接続されている。デバイス2は、電気的な等価回路5で示されている半導体接合部4からなる。この回路5において、接合部4は、接合部の静電容量を表すコンデンサ7と並列な漏れ電流発生器6と、接合部の抵抗を表す抵抗とからなる。標準的には、コンデンサ7はいくらかのpF値、例えば80pFをもち、抵抗は非常に高い値、例えば数MΩ(メガオーム)をもつ。この等価回路は、さらに低値のベース抵抗9を加えて完成される。このデバイス2は宇宙放射線10にさらされて、低振幅の、ここでは負の、電流パルス12を生成する。
【0018】
変圧器3は、好ましくはコンデンサ13を介して、デバイス2に接続されており、コンデンサは、DC成分が変圧器3に流れて無駄なエネルギー損を生み出し、また場合によっては変圧器3のコアを飽和させる一因となることを防止するために用いられる。変圧器3は、一次巻線14と二次巻線15とを有する磁気変圧器であり、それらの巻線は、選択された正極性のパルス16を生成するように正確に巻かれている。好ましくは、変圧器3は、二次巻線15と並列に共振コンデンサ17を備えており、これによって、変圧器3をパルス16の発振周波数に合わせて調整している。一式の23に示すような整流ダイオードによって、パルス16は整流され、コンデンサ17の助けによりDC成分に変換されることが可能である。変圧器は、整流器としての役目を果たすと共に、電流パルスを電圧に変換する変換器としても機能する。
【0019】
システムに数十ボルトの供給があると考えられ、最終的なエネルギー収支が正である場合には、発電機1の半導体接合部4を逆分極させることができる。一例では、この逆分極は、ダイオード4に並列接続されたバッテリ18により模造することができる。バッテリ18の正極はダイオード4のカソードに接続され、負極はアノードに接続される。このように逆分極させることで、接合部の幅が広がる。逆漏れ電流およびバッテリ18の放電を防ぐため、バッテリ18をダイオードと直列に設けて、ダイオードを直接分極させるようにしてもよい。つまり、ダイオードのカソードをバッテリ18の負極に接続し、アノードを間接的にバッテリ18の正極に接続する。ほとんどの場合には、バッテリ18による供給が行われないので、接合部4は分極されず、それほど拡張されていない空乏領域をもつことになる。効率については、空乏領域全体に対応して、およそ15%の効率が示される。バッテリ18は、抵抗22を介してダイオード4に接続されており、これによって、電流パルス12のバッテリ18への影響を最小限とすることができる。
【0020】
分極させるか、分極させないかは、所望の用途によって決まる。
【0021】
本発明の発電機は、好ましくは、ダイオード23、24の下流の端子26および27において当該発電機1による電力供給を受ける、電子回路ボード25上にダイオード4が実装されて、用いられる。電子ボード25は、光子放射を遮るケース28の中に収納することができる。例えば、それは、宇宙船又は航空機の内部に搭載される。ボード25は、ビークル内に遠隔配置される振動センサ、温度センサ、放射線センサ、慣性センサ、又はその他のセンサを有する、及び特に、電力供給するための電線を引き回す必要なく、これらに電力を供給する。
【0022】
電離放射線は、荷電粒子(陽子、重イオン、ミューオン、パイオン)の場合のように直接電離によるか、又は間接電離、即ち核反応(主に陽子、中性子の場合)における二次イオンの生成によるかにかかわらず、その運動エネルギーを自身の軌跡に沿って付与する。
【0023】
荷電粒子は、半導体の電子とのクーロン相互作用により、自身のエネルギーを失う。付与されたエネルギーに比例する量の電子正孔対が生成される。
【0024】
逆分極電圧がp‐n接合部に印加されると、少数の電荷が接合部の一方の側から他方の側に移動して、空間電荷領域とも呼ばれる空乏領域が広くなる。電界が空乏領域の深さ全体に分布する。空乏領域で生成された電子正孔対は、この電界によって分離される。電子はカソード19に達し、正孔はアノード20に達する。1つの対が移動することによって、ダイオードの電極で素電荷が生成される。空乏領域の外側即ち中性領域において電子正孔対が生成される場合、生成されたキャリアは両極性拡散メカニズムにより空乏領域の境界まで拡散する。このプロセスの持続時間は、電子正孔対が空乏領域で生成された場合に比較して長いが、それでも、再結合のメカニズムよりは速く、これによって、いずれの場合も電流パルスが生成される。ダイオードは、電子回路である変圧器3に接続されており、これによって、生成された電荷の回収が可能である。空乏領域がより多く拡張されるほど、ダイオードはより効率的になる。空乏領域の幅は、ドーパントの濃度およびダイオードに印加される逆分極電圧によって決まる。n型領域とp型領域の間に真性領域を挿入することによって、それを人工的に広げることが可能である。これは別のタイプのダイオード、即ちPINダイオードとなる。この構造の逆分極が十分である場合、真性領域の全体に電界が存在する。
【0025】
逆分極電圧が印加されないときには、収集される電荷は生成される電荷よりも少ないが、それでもダイオードの端子に電流パルスを生成するのには十分である。
【0026】
この種の発電機は、アクセスが困難で、かつ消費電力が少ない装置に用いると便利である。これは低電力しか供給しないが、そのエネルギー源は無尽蔵であるので、従来のバッテリに比較して寿命がはるかに長い。バッテリと異なるのは、ダイオードがその分極のためにバッテリを用いることなく機能する場合、これは環境に有害である有毒要素を全く含まない、つまり、無害の発電機であるということである。
【0027】
宇宙環境、航空電子機器環境、核環境、および医療環境に存在する電離放射線を、トリチウムの代わりにエネルギー源として使用することは、安全性およびコンディショニングに関する利点を有する。この発電機は、放射性同位元素を全く含んでいない。また、トリチウム・ベースのダイオードと比較して、材料内部で損傷を引き起こすエネルギー電子を生成しないという利点も有する。太陽電池と比較すると、本発電機はシステムの中のどこにでも配置することができ、電力供給を受ける電気部品の近くに配置することで、配線を簡単にすることができる。
【0028】
生成される電気量は、発電機の放射線環境によって、即ち電離粒子の流束量と種類によって決まる。このような放射線は大気中にも少量存在するが、宇宙にはそれよりずっと多く存在する。図3は、大気中に見られる電離粒子の全束を高度の関数として、考えられる高度、および様々な種類の関連する粒子について示す研究結果である。図4は、ダイオードそれ自体の中で核反応が生じて二次イオンを生成することがあり、これが、電流パルスを成す電子正孔対の生成につながる、ということを示している。
【0029】
半導体の電離は、多かれ少なかれ、粒子の種類に依存する。その軌跡に沿って生成される電子正孔対の量は、単位長さあたりで放出されるエネルギー、即ちC/mで推定されるLET(Linear Energy Transfer: 線エネルギー付与)に依存し、これはイオンの性質、半導体の材料およびそのエネルギーに依存する。
【0030】
以下のパラグラフでは、表面積が1cm2、非分極で、深さが500μmのシリコンダイオードの場合に生成される電荷量を、様々な放射線環境について試算する。
【0031】
宇宙環境では、一次近似として、陽子による影響のみを考慮に入れる。仮定を簡単化して接合部の平面に垂直入射するとした場合、その行程が500μm未満である陽子はそのエネルギーのすべてをダイオードに付与する。これらの陽子は、9MeV(メガ電子ボルト)未満のエネルギーに相当している。一方、これより高いエネルギーの陽子は、そのエネルギーの一部しか付与しない。計算すると、9MeV未満のエネルギーの各陽子による付与は、6fCと60fCの間であることが分かる。図5は、いくつかの異なる宇宙環境について、即ち、中軌道(MEO)、静止軌道(GTO)、および高度3000km環境について、陽子の流束量をエネルギーの関数として示している。図5は、宇宙船の外部と、宇宙船の内部即ち宇宙船の1g/cm2の構造体を横断した後での流束量を示している。例えば、1MeVから10MeVの粒子の流束が、MEO環境における外部の流束に対応する26500p/cm2/sである場合、(低エネルギーの陽子による)直接電離を通じて、それらの陽子により1時間に付与される総電荷量は、2.5μC/hである。
【0032】
10MeVより高いエネルギーの陽子によって生じる間接電離は、この計算では考慮していないが、なぜなら、関わる陽子の流束が20倍高くなっても、陽子あたりの電荷の付与は3000倍低くなるからである。
【0033】
端子26および27に1Vが供給されると仮定した場合、蓄積されるエネルギーは2.5μWh、即ち9mJである。生成される電力は、2.5μW/cm2である。この電力は、センサに一時的に供給するものとして十分であり、これによって、例えば、7分毎に、1Vの電圧で、1msに渡って1mWを生成することが可能である。このような生成は、無線周波数からのエネルギー回収(< 1μW/cm2)又は音響信号からのエネルギー回収(0.003〜0.96μW/cm3)の場合と、その大きさにおいて同程度である。
【0034】
以下の表1は、逆分極により完全に空乏化されたダイオードの場合と、分極されていないダイオードの場合について、宇宙環境に関して調べた予想電荷量を示している。
【0035】
分極されたダイオードの場合(約40Vの電圧で、当該ダイオードは完全に空乏化されている)、その効率は7倍に向上する。標準的な漏れ電流は、50nA程度である。従って、その消費電力は毎時5μWである。生成される電力は17μW/cm2であり、利得は12μW/cm2となる。
【0036】
【表1】

【0037】
ビークルの外部では、曇りの天気のときに太陽電池により生成される電力に匹敵する電力レベルが得られる(150μW/cm2)。
【0038】
航空機の場合に当てはまる高度12kmの大気環境では、非分極ダイオードの場合に、高エネルギー中性子、陽子、ミューオンによる作用、および熱中性子のホウ素‐10に対する作用を考慮に入れることができる。
【0039】
10MeVを超える高エネルギー中性子により付与される平均エネルギーは、その流束量が5000中性子/cm2/h(1時間あたりの中性子密度)であるときに、0.03fCである。付与されるエネルギーは、0.15pC/hとなる。
【0040】
宇宙環境における場合と同様に計算すると、1MeVから10MeVのエネルギーの各陽子は、0.04pCから0.4pCを15%の効率で、即ち0.006pCから0.06pCを付与する。陽子の流束量は、7陽子/cm2/h(1時間あたりの陽子密度)であり、これは0.4pC/hの電荷付与に相当する。
【0041】
ミューオンは、線エネルギー付与(LET)が低く、これは一定であると考えられ、0.017fC/μmに等しく、そして無限行程をたどる。これがダイオードにおいて付与する平均電荷量は、1.3fCである。12kmにおけるミューオンの流束量は、300ミューオン/cm2/h(1時間あたりのミューオン密度)である。これらのミューオンにより付与される電荷量は、0.4pC/hである。
【0042】
電流の生成を増幅するため、ホウ素をドープしたシリコンといったドープ半導体を用いることができる。熱中性子は、0.625eV未満の運動エネルギーをもつ中性子であり、大気環境において自然に存在する。これらの中性子は、巨視的な核相互作用に有効な部分を含み、その核相互作用は、天然ホウ素の20%であるホウ素‐10との間で非常に高い(3,838バーン)。ホウ素‐10は、熱中性子にさらされると、1.47MeVのアルファ粒子(5.21μmの行程で、LET=12fC/μm)と、0.84MeVのリチウム(2.5μmの行程で、LET=23fC/μm)とを放出することができる。核反応により付与される平均エネルギーは、0.015pCであり、12kmにおける熱中性子の流束量は、約5,000中性子/cm2/h(1時間あたりの中性子密度)である。ホウ素‐10との核反応の確率は、ホウ素濃度が1exp21原子/cm3で、厚さが500μmの場合に、0.04である。結果的に熱中性子により付与される電荷量は、3pC/hとなる。そして、ダイオードにおいて付与される総電荷量は、分極されたダイオードの場合、約4pC/hであり、これは4pW/cm2の電力に相当する。最も大きく貢献しているのは、熱中性子とホウ素‐10との反応に関連するものである。
【0043】
この電力によって、70時間毎に、1Vの電圧で、1msに渡って1mWを生成することが可能である。電力を増やすために、いくつかのバッテリを直列につなぐか、又は、表面積のより大きいダイオードを用いることができる。
【0044】
ここで説明した電子的効果は光電効果とは異なる。この後者の効果は、材料による電子の放出を示すもので、材料は光にさらされるか、又はその材料に応じて十分に高い周波数の電磁放射にさらされる。
【0045】
本発明のセルは半導体で構成されており、それは主にはシリコン(Si)ベースのものであり、又は他の半導体ベースのものであり、それは、硫化カドミウム(CdS)、インジウムアンチモン(InSb)、テルル化カドミウム(CdTe)、ゲルマニウム(Ge)、シリコンカーバイド(SiC)などである。それらは、微小プラークの形状をしていて、寸法が1センチメートル又は数十センチメートルの円形又は方形であり、1ミリメートル程度又はそれ以上の厚さを有して、2つの金属端子の間に挟まれている。図6は、そのようなセルを示している。セルの上層30は、ドープされたn型シリコンで構成されている。この層には、純シリコン層の上方に多数の自由電子が存在している。セルの下層31は、ドープされたp型シリコンで構成されている。この層は、平均して、多数の自由電子を純シリコン層の下方に有しており、それらの電子は結晶格子に拘束されて、結果的にそれを負に帯電させている。p‐n接合が形成されるときに、n領域の自由電子はp層に入ってp領域の正孔と再結合する。このため、接合が形成されている間ずっと、n領域には、(電子が去ったことにより)その接合端に正電荷が存在し、p領域には、(正孔が失われたことにより)その接合端に負電荷が存在する。これら全体で空間電荷領域(SCZ: Space Charge Zone)を形成し、両者の間にはnからpへの電界が存在する。
【0046】
この電界は、ダイオードの空間電荷領域において、電流が一方向にのみ流れることを可能にしている。即ち、電子はp領域からn領域に移動することができるが、これと逆には移動しない。一方、正孔はnからpへのみ移動する。本発明では、層30をバッテリ18の正極に接続し、層31をバッテリ18の負極に接続することで、逆分極を加え、これによって空間電荷領域の厚さを広げている。従って、この領域をその平面に垂直に横切る粒子は、その分、行程の距離が長くなって、より多くの電子正孔対を生成することが可能となる。
【0047】
作動の際には、この電界の影響下で、粒子がマトリクスから電子を奪って、自由電子と正孔を生成し、これらは互いに反対向きに離れていく。電子はn領域に蓄積し、一方、正孔はp型ドープ層に蓄積して、パルス12を生じる。この現象は、空間電荷領域においてより効果的に生じ、そこでは、実際には、対消滅していることによって電荷キャリア(電子又は正孔)はほとんど存在しない。又は、空間電荷領域のすぐ近くでは、荷電粒子により電子正孔対が生成されると、それらは離れていき、逆の相手に出会う可能性はほとんどない。一方、接合部から遠くはなれたところで生成された場合は、新しい電子(又は正孔)は、n領域(正孔の場合はp領域)に達する前に再結合する可能性が高い。本発明では、電気端子32および33は、光を透過させるものである必要はない。本発明では、バッテリ18により感応領域の大きさを拡張して、再結合のリスクがないようにしている。
【0048】
セル4は、単結晶シリコン、又は他の何らかの半導体材料からなり、好ましくは、真性半導体からなる中間領域34を有してPINダイオードを形成している。
【0049】
このように、本発明では、逆分極されたダイオードを、逆分極用のバッテリとパルス変圧器との間に並列に設けることにより、又はパルス変圧器のみと一緒に、これに並列にダイオードを設けることにより、宇宙線粒子を感受できる発電機を実現している。このようにして、好ましくはリモートセンサを搭載したプリント回路板上に直接実装される、発電機を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から発生する電離放射線により励起される発電機であって、
逆分極された、又は非分極の半導体接合部を有する電子デバイスと、
前記電子デバイスの前記半導体接合部に接続されているパルス変圧器と、を備えることを特徴とする発電機。
【請求項2】
用途に応じて、前記半導体接合部を逆分極させるか、又は非分極とするための、付属装置を備えることを特徴とする、請求項1に記載の発電機。
【請求項3】
前記パルス変圧器は、電流パルスを電圧に変換する変換器を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の発電機。
【請求項4】
前記電子デバイスと前記変圧器との間に直列に設けられたコンデンサを備えることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の発電機。
【請求項5】
前記半導体接合部を有する前記電子デバイスは、前記発電機による供給を受けるセンサの電子回路ボード上に実装されていることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の発電機。
【請求項6】
前記半導体接合部を有する前記電子デバイスは、ダイオードであり、特にPINダイオードであることを特徴とする、請求項5に記載の発電機。
【請求項7】
前記半導体接合部を有する前記電子デバイスは、光子放射を遮るケースの中に収納されていることを特徴とする、請求項5又は6に記載の発電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−512410(P2012−512410A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541546(P2011−541546)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【国際出願番号】PCT/FR2009/052379
【国際公開番号】WO2010/076449
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(510022510)ヨーロピアン・アエロノーティック・ディフェンス・アンド・スペース・カンパニー・イーデス・フランス (7)