説明

電飾システム

【課題】フルカラーLEDランプ等の発光素子を立体配置して構成される大規模電飾システムの電飾映像生成を効率化し、イベント会場等において、即応的な表示内容の変更、表示タイミングの変更を可能とする。
【解決手段】多くの発光素子から構成される電飾システムを、相互に協調しつつ複数個の電飾映像を選択表示する機能を備えた複数個のサブシステムで構成し、それらの各サブシステムに対して表示すべき電飾映像とその表示タイミングを指定するコマンドを伝送することにより、それらコマンド内容に応じて全体電飾映像を即応的に編集し、表示タイミングを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルカラーLEDランプ等の発光素子を例えば樹枝状に仕立てる、あるいはそうした一定形状の電飾モジュールを複数個組み合わせ、より規模の大きな電飾システムとして舞台空間に展開させるなど、発光素子そのものの空間展開においても高い装飾効果が得られ、かつ、そうした発光素子の空間展開にふさわしい装飾効果の高い発光色(以下電飾映像という)を素早く作り出すことで、総合的に高度な装飾効果を演出することのできる電飾システムに関するものである。

【背景技術】
【0002】
従来より電飾装置としては、カラー豆電球、LEDランプ、ネオン管等で構成された屋内外の看板装飾装置がよく知られ、建物の外壁、商店街モール等に設置される広告、看板、装飾システムとして広く用いられている。特に多数の豆電球、あるいはLEDランプをひも状に連ねたいわゆるルミチューブは設置場所、設置形状に柔軟性があるため、立木にクリスマスツリー状に絡ませる、ビル、アーケード等の建築物に沿って設置する、あるいは舞台の装飾の一部として設置するなど汎用性のある電飾システムとして知られている。
こうした従来の電飾システムは発光素子を空間内に自由に配置でき、全体を様々な形状に仕立て上げることができる反面、表示内容は、基本的に、定められた一定のスケジュールに従って点滅を繰り返す等の単純な表示内容に限られている。 また、近年、電飾装置用の発光素子として階調表示が可能なフルカラーLEDが実用化されているが、そうした高度な表示機能を発光素子として有効活用した電飾システム向けのカラー動画映像(電飾映像)を作り出すことも従来技術を持ってしては困難であり、その普及を妨げている。 すなわち、従来の各種動画制作システム(例えばセルアニメ制作システム等)は平面映像の制作に限られており、発光素子が空間内に複雑に立体配置されている電飾システムの映像制作に対しては対応することができない。また、近年急速に発展してきた3次元コンピュータ・グラフィックス(以下、CGと略記する)は、発光素子の空間配置設計には比較的有効に機能するものの、多くの発光素子に対して効率的に時系列的な発光色を与え、かつ、そうした発光色データを実際の電飾システムに実装するための機能(例えば発光色のファイル出力機能等)に欠けている。また、ある電飾システムに対して制作された映像をCG画面として確認することは必要不可欠な機能であるが、従来の3次元CGシステムでは、空間内での物体の形状、位置の変化、照明の変化等には対応できるものの、多数の発光体の発光色が時々刻々変化する映像空間のシミュレーションには対応できない。
【0003】
また、従来よりもっぱら屋内外の大型映像表示装置として用いられているフルカラーLEDによる映像表示装置(TV)は看板、装飾目的で用いられるという意味では電飾システムの一種であり、各発光素子を発光させる回路の仕組みとしては本発明による電飾システムもこれらの表示装置とほぼ同様な仕組みを採用している。図1はこの種の表示装置の一例であり、通常、各画素(ピクセル)は、3原色(R、G、B)それぞれを発光する3個の発光素子(LEDランプ)を配することにより実現され、画面全体1aはたとえば1モジュールあたり16(行)x16(列)ピクセル1cを搭載する複数枚のモジュール1bにより分割構成されている。
図2はこのような16x16のマトリックス状に組み上げられたLEDランプモジュールの3原色中の1つの色についての回路のブロックダイヤグラムである。実際には他の2色についても同様の回路が設けられている。
図2の2aは各LEDランプEの輝度データ(通常8ビットのデータであり、0は消灯、255が最大輝度に対応している)1フレーム分を記憶するフレームメモリである。
通常、LEDランプ2cのマトリックス配置(16x16)に対応し、このフレームメモリ2aもマトリックス構造となっている。すなわち、i行、j列のLEDランプに対応する輝度データはフレームメモリ2a内においてもi行、j列に置かれている。
画像表示はあらかじめ定められた速度(フレームレート)でフレームメモリの輝度データが書き換えられ、次に書き換えられるまで、その内容が表示される。 例えばフレームレート30/秒の場合1秒間に30フレームの割合でフレームメモリが書き換えられ表示される。
実際には各LEDランプの階調表示は各LEDランプの点灯時間と非点灯時間の割合を調整することで実現されている、すなわちPWM(Pulse Width Moduration)波により駆動され、また、駆動電力の節減と駆動ドライバの数の節減のためLEDランプの行、列ドライバで時分割駆動されている。 2bはこのための回路ブロックである。 すなわち、駆動回路はそれぞれ1...16のアドレスが付された16個の行、列ドライバ(C1,C2,・・・C16,D1,D2,・・・D16)から構成され、 LEDランプEのi行、j列のランプはi行、j列のドライバCi、Djによりプッシュ・プル方式により駆動されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のフルカラーLEDランプをマトリックス状に配置して映像画面を構成する従来の大型映像表示装置は、動画映像、グラフィックス等を自由に表示することができるものの、表示画面は基本的に平面かつ矩形に限ることを前提に制御装置を含め装置全体が設計されており、映像内容もTV映像をそのまま流用するなど平面矩形映像を前提として制作される。従って、電飾システムが本来備えているべき、発光素子の空間的配置・展開の柔軟性に欠け、また、そこで映し出される映像は、矩形かつマトリックス状に組み上げられたピクセル配置とは何ら関係のない映像である。すなわち、平面、矩形、マトリックス状に配置されたピクセル配置そのものには何らの装飾効果も期待されていない。言い換えるならば、既存のLED大型映像装置は、表示される映像そのものには装飾効果が期待されるものの、発光素子の空間的展開そのものに対しては装飾性を追求することはできず、電飾システムとしての基本的機能に欠けている。
【0005】
本発明では、こうした従来の表示装置の欠点を解決し、発光素子の空間配置と表示映像の自由度を兼ね備えた電飾システムの実現を目指している。
さらに 、例えば、ライブコンサート、スポーツイベント会場、モール(商店街)等において電飾システムの大規模化に対するニーズが高まりつつあるが、こうした大規模電飾システムを効率的に構成し、それにふさわしい映像を効率的に作り出すことも従来技術を持ってしては不可能となっている。すなわち、数多くの発光素子を用い、例えば一定区画の街路に沿った全ての建物の壁面を飾るなど、空間的規模は大きくかつ形状も複雑化しているものの、映像的には単一色の発光素子をただ単に点滅させるだけにとどまっている。
本発明ではフルカラー発光素子を用いた大規模電飾システムに対しても効率よくシステムを構成でき、かつ装飾効果の大きな電飾映像を手軽に制作するシステムの提供を目指している。

【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、発光素子を様々な立体形状として構成できるという電飾システム本来の利点を生かすと同時に、基本となる電飾モジュールを組み合わせて複合的電飾システムに仕立て上げる、あるいは同時に、そうした様々な形状の電飾システムに対して、動画映像、アニメーション、グラフィックス等の電飾映像を能率良く、効果的に作り出し、映し出すことを可能とする新技術を総合的に提供するものである。
【0007】
すなわち、本コンピュータシステムはCG画面上で、発光素子をその空間配置に関わる装飾効果に配慮しつつ(マトリックス平面状に限定されない)3次元空間に展開することを可能にすると同時に、その配置状況を再現、確認でき、さらに3次元的映像効果を確認しつつ各発光素子に時系列的な発光色を与え、その総合的映像効果を3次元コンピュータ・アニメーションとして再現確認できる等の機能を有している。
この設計システムは、従来の電飾システムにおいてボトルネックとなっていた電飾システムの発光素子の空間配置の最適化とその空間配置に基づくシステムの回路設計と、その電飾映像の生成とを同時に可能としていることを特徴としている。
【0008】
上記コンピュータシステムで生成された電飾映像を実際に映し出すことのできる電飾システム本体は、上記コンピュータシステムが各発光素子に与えたアドレスに基づき決定する電飾映像出力ファイルのフォーマットに対応した構造の記憶装置を備えていることを特徴としている。
【0009】
上記コンピュータシステムを用いたとしても、極めて多数の発光素子から成る大規模電飾システムの電飾映像を一挙に生成することは大変困難な作業となる。本発明では、いくつかの形状の異なる種類の電飾モジュールを用意し、その組み合わせにより全体のシステムを構成することを特徴としている。そのモジュール化に際しては、全体の発光素子そのものををただ単に分割モジュール化するだけではなく、全体映像そのものも各モジュールの映像の組み合わせとして構成されることを前提とし、そうした映像モジュールを効率よく全体映像に組み上げるため、外部よりの指令信号により各モジュールが再生すべき映像の種類、再生のタイミング等が制御されることを特徴とする。
【0010】
また、通常の電飾システムは、前記ルミチューブを実際の樹木に絡ませることで実現されているが、こうした従来の構成法では、例えば発光素子にフルカラーLEDを用いて電飾システム全体の効果的電飾映像を生成することは非常に困難な作業となる。 本発明では、個別に映像表示機能が与えられ、樹枝状に成形されている電飾モジュールを必要な数だけ積層することで、この樹木状電飾システムを構成することを特徴としている。 この手法により、多数の発光素子を簡単に樹木状に仕立て上げることが可能となると同時に、樹枝モジュール単位で与えられている映像を組み合わせることで、樹木全体としての効果的電飾映像を簡単に作り出すことが可能となる。


【実施例】
【0011】
「実施例1」
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
本発明による電飾システムでは各発光素子はは3次元空間内で自由に配置されることを前提としている。図3はそうした電飾システムの発光素子の空間配置を示す画面表示の一例である。各発光素子は画面上に小立方体として表されている1つのピクセルとして表示され(以下同様CG画面上ではピクセルは小立方体として表示されている)、それらのピクセルが空間内に樹枝状に配置されているのが表示されている。本発明による電飾システムでは、このように各発光素子をを空間内に効果的に配置することで装飾性を追求すると同時に、その空間配置にふさわしい発光色を各発光素子に与えることで、その装飾効果をさらに高めることを特徴としている。
【0012】
以下に述べるように、本実施例ではこのような3次元電飾システムの設計とその映像生成が専用CGシステムにより、次のステップを経て(あるいはそれらの試行錯誤的繰り返しにより)行われる。
(1)必要な数のピクセルを3次元空間内の所定の位置に配置する。
(2)各ピクセルにアドレスを設定する。
(3)各ピクセルに対して時系列的な発光色(R、G、B3原色に対する輝度データ)を与える。(以下、所定のピクセル群に対して生成された時系列的発光色データのことを電飾映像ストリーム、略して映像ストリームと呼ぶ)。
(4)設定されたピクセルの配置、生成された映像ストリームに基づきCG画面上で映像シミレーションを実行する。
(5)各ピクセルに与えられたアドレスを基に、ファイルフォーマットを定め、生成された映像ストリームをファイルとして出力する。
(6)実システムへの移植と必要に応じて(1)・・・(5)の再処理を行う。
【0013】
以下、それぞれのステップの内容について詳細に説明する。
(1)ピクセルの配置
ピクセルの配置作業について説明する。この作業は、電飾システムの3次元形状(発光素子の3次元配置)の詳細設計が既に完了している場合は、たとえば各ピクセルについて、その配置データすなわち3次元座標値をCGに入力することにより作成される。 電飾システムの形状すなわち各ピクセルの3次元配置そのものを初めからCGを用いて設計することも可能である。
この場合、画面上で一つずつ各ピクセルの3次元配置を設定することにより設計を進めることも可能であるが、ピクセルの数が多い場合この作業は大変煩雑なものとなる。そのため、この実施例におけるCGには、指定された空間曲線上に一定間隔でピクセルを自動生成する、あるいは多面体として作られた様々な形状の3次元物体を元にピクセルを自動生成する等の機能が備えられている。 図4は空間内に張られた曲線上に一定間隔で生成されたピクセルの例であり、生成されたピクセルは小立方体として表示されている。また、 図5は多面体を構成する各面の頂点にピクセルを自動生成させた例であり、図中のAは多面体として生成された半球であり、Bはその各面の頂点に生成されたピクセル群を表す。また同様に、多面体の各面に対応させて(例えば面の中央に)ピクセル群を生成させることも可能である。なお、ベースとなる空間曲線、多面体自身は一般CGシステムに標準的に備えられている様々なモデリング機能を用いて生成される。
このようにしてCG上で生成されたピクセル群は、さらに、不要なピクセルを削る、あるいはいくつかのピクセルの位置を移動させる等により修正される。こうした修正も標準的に備えられているCG機能を用いて行われる。
【0014】
(2)アドレスの設定
先に述べたように、 従来のLEDによる大型平面矩形映像システムにおいては、各LEDモジュール上の各ピクセルは平面かつマトリクス上に配置され、かつ、モジュール上でi行j列に位置するピクセルは、フレームメモリ内のi行j列の発光データが読み出され、i行j列のドライバにより駆動されることが暗黙のうちに定められている。
言い換えるならば、モジュール上でのピクセルの物理的な位置を示す(行、列)が自動的にそのピクセルのアドレスとみなされ、対応するドライバ、メモリが同一アドレスとなるよう回路構成されている。
それに対して、本発明が対象としている電飾装置においては各ピクセルは3次元空間内で自由に配置されることを前提とし、先に示した樹枝状電飾システム(図3)の例からも推察されるように、各ピクセルに対して(行、列)等によるアドレスの概念を暗黙的に与えることはできない。そのため、各ピクセルに対して対応する駆動ドライバのアドレスを別途明示的に指定することが必要となってくる。 このアドレス指定作業は、例えば各ピクセルをマウスでピックアップし、そのピックアップされたピクセルに対してキー入力によりアドレス(0,1)、(0、2)、(0,3)....を与えることにより行われる。
【0015】
このピクセルに対するアドレス(m、n)は次の2つの役割を担っている。第1の役割は、先に述べたようにアドレス(m、n)のピクセルはm行、n列のドライバで駆動されるべきことを明示的に指定することである。
従って実際の電飾システムの配線組み立てに際しては、ピクセルに付与されたこのアドレス情報に基づきピクセル、ドライバ間を結線することとなる。
第2の役割は、後述の映像ストリームのファイル出力に際して、ファイルフォーマットを指定することである。すなわち映像ストリームのファイル出力に際しては、アドレス(m、n)のピクセルに対応する発光データはフレームメモリ内のm行、n列に格納されるよう出力ファイルのフォーマットが決められる。
アドレスに関する以上のような仕組みにより、フレームメモリ内のm行、n列に位置する発光データは、m行n列のドライバに送られ、アドレス(m、n)のピクセルを駆動するという整合性が整ったアドレス体系ができあがる。
【0016】
基本的には全てのピクセルに対してこうしたアドレスを付与する必要のあることから、この作業はできるだけ自動化するのが望ましい。
特に、システムの開発段階において、ピクセル、ドライバ間の結線が未着手の場合は、装置側からの制約がないため(CGシステム上で決定されたアドレスに基づき結線すればよいため)、本実施例では次のような手法を用いてアドレス付与の自動化が実現されている。
1.ピクセルを順次自動的にピックアップし、ピックアップされた順番にアドレスを付与する。
2.実施例2で述べる”線構造”、”面構造”等が導入されているピクセル群に対しては、そうした構造導入の際、ピクセルに付されたアドレスをそのまま用いる。例えば、多数のフルカラーLEDをひも状に連ね、チューブに仕立てた電飾システム(以下フルカラー・ルミチューブと呼ぶ)は設置場所、設置形状に柔軟性がありいろいろな形状に組み上げることができる電飾システムであるが、このフルカラー・ルミチューブルは、フレームメモリ、ドライバ、ピクセル間がすでに結線済であり、CG上でも”線構造”が導入され、端から順に1,2,3,・・・のアドレスが与えられている。従って、このフルカラー・ルミチューブに対しては、先に図4に示したようにCG上でフルカラー・ルミチューブの空間敷設に対応する空間曲線を先に描き、曲線の端から一定間隔毎にピクセルを生成し、生成されたピクセルの順にアドレスを自動的に付与していく方法がとられる。この方法では、空間曲線の配置が決まればピクセル配置と同時にアドレス付けも完了することとなる。
【0017】
(3)映像ストリームの生成
映像ストリームの生成に際しては、まず、各ピクセルの発光色を1秒間あたり何回変化させるか、すなわち1秒間あたりの表示フレーム数(フレームレート)が定められる。 TV、映画等と同様、LED等の発光素子を使用する電飾システムも、滑らかな映像表示を行うためには1秒あたり10フレームから30フレームの割合で画面を連続的に表示させる必要がある。また、制作が必要となるフレームの枚数は、1秒あたりの表示フレーム数と全体の表示時間(秒数)との積となる。 基本的には、これらの全フレームを、いわゆるセルアニメ同様、1枚1枚作成する必要がある。
【0018】
図6は先に図3で示した樹枝状電飾システムに対して映像ストリームを生成させるための画面表示例である。図のB1,B2・・・B8はフレーム画面であり、A1、A2・・・A8は各フレームの表示順序を示すフレーム番号である。一度には全てのフレームは表示できないため、フレーム間を移動させながら表示するスクロール機能、あるいはフレーム番号を指定することによりフレーム画面を選択する仕組みが備えられている。
一枚のフレーム画面上の各ピクセルに対して発光色を指定(この作業は通常のCGシステムに標準的に備えられている着色ツールを用い、画面上のピクセルに実際に所定の色で色塗りすることにより行われる)することにより1枚のフレーム画面が完成し、全てのフレームに対して同様の操作を行うことにより、全フレーム画面が完成される。
【0019】
全フレーム画面を完成させるこの作業は大変手間のかかる作業となるため、本実施例では主要なフレーム(キーフレーム)のみを作成し、その間のフレームは自動生成させるというキーフレーム機能が備えられている。
このキーフレーム機能は、ある1つのピクセルに対して、異なる2つのフレーム上でそれぞれ発光色を与え、その中間フレームの発光色を自動生成させる機能である。
いまあるピクセルのフレームiの輝度データを(Ri、Bi、Gi)、フレームj(i<j)での輝度データを(Rj、Bj、Gj)とすると、中間フレームk(i<k<j)の輝度データ(Rk、Bk、G)を例えば数1で与える。
【0020】
【数1】

【0021】
補間に関する数1は一例であり、例えば、中間フレームの全てに最初のフレームと同じ発光色を与える等様々な方式が存在する。
この時間的補間は、数1を各ピクセルに対して繰り返し適応することにより、同時に複数ピクセル、あるいは全ピクセル(フレーム全体)に対して適応可能である。
図7は全ピクセルに対して発光色が与えられた2つのキーフレームA1,A4の中間フレームA2,A3を上記の時間的補間により自動生成した例である。
【0022】
以上述べたこれらの制作手順は既存のコンピュータによるセルアニメ制作システムにおける制作手順と類似しているが、これら一般のセルアニメ制作システムでは各フレーム画面は単なる平面映像であるのに対して、本システムでは各フレーム画面は、各ピクセルの発光色とその3次元配置を表示しており、発光色の映像効果を3次元的に確かめる、あるいは背後に隠れたピクセルに対しても発光色が設定できるよう回転、拡大等の3次元操作を加えることが可能となっているなど、システムの機能面では大きく異なっている。
【0023】
(4)シミュレーション
このようにして完成された全フレーム画面(映像ストリーム)は予め設定されたフレームレートで再生することが可能であり、任意の角度、距離からみたこの電飾システムの映像ストリームをCGアニメーションとして画面上で確認することを可能としている。
なお、一般の3次元CGシステムにおいても映像シミュレーション機能が備えられていることは良く知られているが、そうした従来のCGシステムでは、物体(オブジェクト)の位置、形状、照明等の変化をアニメの対象としているのであり、本発明が目的としているような多数の物体(発光素子)の発光色がフレーム毎に変化するような映像シミュレーションには対応できていない。
【0024】
(5)ファイル出力
以上の過程で生成された、各ピクセルの空間座標とアドレス、映像ストリームは実際の電飾システムへの移植と後日の再処理に備えてファイル出力され保存される。また、通常のCG景観シミュレーションの場合と同様、シミュレーション結果の動画映像はAVIファイル等として保存でき、後日の再生、再確認、客先へのプレゼンテーション・ツールなどとして用いられる。
【0025】
(6)実システムへの移植と再処理
以上の過程で生成された映像ストリーム・ファイルは、実際の電飾システムのフレーム・メモリに読み込まれ、記憶される。 映像ストリーム・ファイルを読み込み、内容を記憶したフレーム・メモリは、前記(2)アドレス設定の項で述べた機能により、各ピクセル位置とそれを駆動するドライバ、及び、対応する発光データ間で正しく整合がとられている。 また、一旦、CGにより映像ストリーム・ファイル等が生成された電飾システムに対して再度変更を加える(例えば新たにピクセルを追加する等)、あるいは、同じ電飾システムに対して新らたに映像ストリームを作成する場合、CGにアドレス・ファイル等、前作業の結果を読み込ませ、システムを再設定することにより、最初から作業を行う場合と比べ効率化を図ることが可能となっている。
【0026】
以上の(1)・・・(6)の制作ステップは同一コンピュータシステム(例えば一台のパソコン)で全て処理することも可能であり、機能別に複数のコンピュータシステム(例えば複数台のパソコン)を用いて処理することも可能である。
【0027】
「実施例2」
「実施例1」に示された各フレームにおいてピクセルの一つずつに発光色を設定し、全フレームを完成することは大変手間のかかる作業である。第2実施例ではこうした手間をできるだけ省き、効率よく発光データを生成させるため、対象としているピクセル群に対してピクセル相互間の空間的隣接関係を別途設定することにより、複数のピクセルに対して一括して発光色を与える仕組みが提供されている。設定されるピクセル相互間の空間的隣接関係はピクセルの実際の空間座標、あるいは、実システムにおけるピクセル間の結線とは独立に設定され、以下述べるように1次元的隣接関係(”線構造”)、2次元的隣接関係(”面構造”)、3次元的隣接関係等に分けられる。
【0028】
”線構造”
ピクセル相互間で設定される空間的隣接関係の中で、最も単純なものは一次元的隣接関係すなわち”線構造”である。”線構造”は対象となる各ピクセルに順序関係を導入すること、すなわち、各ピクセルに番号1,2,3,・・・・を与えることで設定される。CGシステムの画面上では、この”線構造”は、各ピクセルを与えられた番号順に辺で結び、ピクセル相互間の一次元的隣接関係を指定することで設定される。 図8は先に図5に示された半球上に自動生成されたピクセル群に対して”線構造”を設定した例を示すCG画面であり、ピクセルAからピクセルBまでが一筆書で接続されている。 ”線構造”は、また、図9に示されるように、一次元(直線)の格子点に置かれたピクセルp1,p2,p3,・・・をピクセル間の相互隣接関係を保ちつつ変形させたものとしてとらえることもできる。
【0029】
このようにして”線構造”が導入されたピクセル群に対しては、基本的に、両端のピクセルを指定するだけで、所定のピクセルグループを”線分”として選択できることを利用して、複数ピクセルに対して簡単な操作で一括して発光色を与えることのできる様々なマクロ機能が実現できる。以下本実施例において、”線構造”を設定することで実現されている代表的な2つのマクロ機能について述べる。
【0030】
(1)空間的補間機能
”線構造”が導入されているピクセル群において、2つのピクセルに発光色を与え、それらの間に挟まれたピクセル・グループ(”線分”)の発光色を自動生成する機能である。
すなわち、”線構造”が設定されているピクセル群において、番号iが与えられているピクセルをpで表し、2つのピクセルp、p (i<j)の3原色の輝度データをそれぞれ(Ri、Bi、Gi)、(Rj、Bj、Gj)で表すと、ピクセルpi 、p を端点とする線分上のピクセルp (i<k<j)の輝度データ(Rk、Bk、G)を数2により自動生成する。
【0031】
【数2】

【0032】
この補間方式では線分の両端点の発光色が異なる場合にはそれらの2色間でのいわゆるグラデーション効果が施され、発光色が同一の場合には、その発光色による”線分”の塗り潰しとなる。先に述べた時間的補間の場合と同様、2つの発光色の間の補間方法は数2以外にも種々の方式が存在する。図10は先に図9として示した”線構造”が設定されているピクセル群に対してこの空間的補間機能を適応した画面例であり、両端のピクセルA、Bに同一色を与え全ピクセルをその同一色で塗りつぶした後、ピクセルC、D間にグラデーション効果を伴った着色が施されている。
【0033】
(2)コピー、貼付機能
元絵(”線構造”が導入され、全てのピクセルに予め発光色が与えらられているピクセル群)を所定の位置からコピーする、あるいは所定の位置に張り付ける機能である。コピーの対象となるピクセル群はその両端点のピクセルを指定することにより、またその貼付位置は一端に位置するピクセルを指定することで行われる。
【0034】
以上述べた”線構造”はピクセル群に対して 複数個設定することも可能であり、図11は図5に示された半球状のピクセル群に対して、各緯線上のピクセルをA1,A2・・・A7で示されるようにグループ化し複数の”線構造”を設定した例を示すCG画面である。以下このように”線構造が”設定されているピクセルグループをピクセル・チェーン(以下PCと略記する)と呼ぶこととする。図11に示される例では全体のピクセル群はA1、A2・・・A7の7本のPCから構成されていることになる。
【0035】
異なる2つのPCは1つのピクセルを共有する、すなわち一点で”交叉”させることもできる。図12は図11に示した緯線に対応するPCと同時に経線に対応するPC(図中では点線で示される);B1,B2・・・B9を設定した画面例である。経線に対応するPCと緯線に対応するPCは、それぞれ1つのピクセルを共有しているが、2つのピクセルを指定したとき選択されるPC(とその”線分”)は一意的に定まることから、これらの全てのPCに対して先述のマクロ機能の適応が可能である。すなわち、このように互いに直交するPC群を設定することにより、例えば緯線方向、経線方向でのグラデーション着色が可能となる。
【0036】
ピクセル群に対して”線構造”を設定するため、各ピクセル間をCG画面上で辺で結ぶ作業も煩雑な作業であり、本実施例では先に述べたピクセルの自動生成機能と関連させて”線構造”設定の自動化機能が備えられている。
まず、フルカラールミチューブの場合のように、空間に張られた一本の曲線に沿ってピクセルを自動配置する場合には、ピクセルを曲線の端から順に自動的に番号付けすることにより”線構造”の設定が自動化されている。
また多面体の各平面の頂点に自動生成されたピクセル群に対しては次の手順により”線構造”設定の自動化が実現されている。
【0037】
まず、各面の頂点に接続されている面の辺の数をその頂点の線度とし、次の2つルールにより、頂点の線度に応じて、頂点に接続する辺相互間での”繋がり”関係を設定する。
(1)線度3,及び線度4の頂点に接続するそれぞれの辺について、同一平面を共有しない2辺は互いに”繋がっている”とする。図13は線度4及び線度3の頂点に接続する辺の例を示すCG画面である。図中のAは線度4の頂点であり、辺a1と辺a2は共有する平面がなく相互に”繋がり、同様に辺a3と辺a4
とが”繋がっている”。またBは線度3の頂点であり辺b1と辺b2が”繋がっている”。
(2)線度2及び線度5以上の頂点に接続する辺に関しては、相互に”繋がっている”辺は存在しないとする。
次に、上記のルールにより、各頂点に関して、それと接続する1つの辺に”繋がっている”他の辺は2つ以上は存在しないため、任意の辺から出発し、その辺と”繋がっている”辺を順次結合してできる辺の系列(”繋がっている”辺が見つからない場合はそこで途切れる)は一意的に定まる。この辺系列に対応する頂点の系列(各辺に接続している頂点の系列)も一次元的であり、この頂点の系列に対応するピクセル系列に”線構造”を自動的に設定することができる。すなわち、相互に”繋がっている”辺どうしを結合して得られるピクセル系列を1本のPCとすることができる。 また異なる2つのPCが1つのピクセル上で”交叉”していても、それらのPCは同一の辺を共有することはない(以下、2つのPCが交叉し同一の辺を共有しないときそれらのPCは直交しているという)。
【0038】
以上述べた手順を例えば図13に示した半球に適応すると、同じ緯線あるいは同じ経線に対応する辺が繋がり合い直交する先に図12で示したPC群を自動生成することができる。なお、ピクセルを多面体の頂点ではなく、面に対応させて自動生成した場合にも、対応する面相互間で頂点を共有するか否かで、”繋がり”を設定することができ、同様にPCを自動生成することが可能となる。
【0039】
”面構造”
”線構造”が1次元(直線)の格子点に並べられたピクセル群をピクセル相互間の隣接関係を保ちつつ変形させたものであったのに対応し、”面構造”は図14に示されるように縦線横線が直交する1枚の格子状面の各格子点上に置かれたピクセル群をピクセル相互間の2次元的(縦、横の)隣接関係を保ちつつ変形し、元の格子状面の縦線、横線に対応する変形後の縦線、横線に対して”線構造”を設定したものである。
【0040】
別の定義では、3次元空間に配置済みのmxn個のピクセル群が次の3条件を満たすとき、そのピクセル群に対して”面構造”が設定されているという。
1.ピクセル群の各ピクセルに対して2次元アドレス(0,0)、(0,1)・・・(m、n)を適当に割りふり、各ピクセルをそのアドレスによりp00,p01,p02・・・pmnのように表せることができ、
2.ピクセル系列(pi0,pi1,pi2・・・pin)、i=0,1・・・m
が全てPCである。
3.同様に、ピクセル系列(p0j,p1j,p2j・・・pmj)、j=0,1・・・nが全てPCである。
以下、”面構造”が設定されているピクセル群をピクセル・メッシュ(PMと略記する)と呼ぶ。
【0041】
”面構造”が設定可能なピクセル群に対しては、先述の”線構造”の自動設定手法を用いると、対応する格子面の縦線、横線に相当する全てのPCが自動生成される。従って、図15に示されるように原点となるピクセル15dにアドレス(0,0)を与え、このピクセルで直交する2つのPC(15a、15b)に沿ってを原点からそれぞれアドレス(0,1)、(0,2)・・・、(1,0)、(2,0)・・・を与え、さらにアドレス(0,1)のピクセルでPC15aと直交するPC15cに沿ってアドレス(1,1)、(2,1)・・・を与える等々の手続きにより、全てのピクセルに対して2次元アドレスを自動的に付与できる。本実施例においてはこの手法により、先述の”線構造”同様”面構造”の設定も自動化されている。
【0042】
先に述べたPCの場合と同様、PMに対して、面に関する種々のマクロ機能を設定することができ、映像ストリームのさらなる効率的生成を実現することができる。
以下に述べる空間的補間、コピー貼付機能はそうしたPMに対して実現されたマクロ機能の代表例であり、いずれもPCに対する同様の機能を面に拡張することで実現されている。
【0043】
空間的補間機能
所定の面を囲い込む4個のPCの交点上にあるピクセルに発光色を与え、その面内のピクセルに対して発光色を自動生成する機能である。
図16に示すように面を囲い込む4個のPCを16a、16b、16c、16dとし、それらの交点にある4個のピクセル16f、16g、16h、16eをそれぞれpij、psj、pst、pit(i<s、j<t)で表し、その発光色(3原色)をそれぞれ(Rij、Bij、Gij)、(Rsj、Bsj、Gsj)、(Rst、Bst、Gst)、(Rit、Bit、Git) とすると16f、16g、16h、16eの4個のPCで囲まれる面のピクセルはpuw 、 i≦u≦s、j≦w≦t で表せ、その発光色を(Ruw、Buw、Guw)とすると、Ruwを数3で与える。
【0044】
【数3】

【0045】
uw、Guw についても数3と同様の式で計算すると与えられた4ピクセルによる面的グラデーション着色効化が得られる。
”線構造”における空間的補間機能と同様、数3による補間以外にも例えば単色で塗りつぶす等、様々な方式が存在する。
【0046】
コピー張付機能
先に述べた”線構造”におけるコピー貼付機能を面に拡張した機能である。張り付ける元絵、張り付けられる側、共にPMであり、各ピクセルには2次元アドレスが与えられている。元絵と張り付けられる側のそれぞれのPMにおいて、対応するピクセル(基準ピクセル)を(マウス)等で指定し、残りのピクセルはそれぞれのPMにおいて基準ピクセルからの相対アドレスが等しくなるよう自動的に対応付けされ貼付が実行される。 なお、基準ピクセルのアドレスが(x、y)であるとき、アドレス(i、j)のピクセルの相対アドレスは(i−x、j−y)で与えられる。
【0047】
図17及び図18はピクセル群に対して”面構造”を自動設定し、先述の空間的補間機能、コピー貼付機能を用いて着色を施したCG画面例である。
ここに示される電飾システムは舞台装飾の一部として、先に述べたフルカラール・ミチューブ複数本を左右に開けたカーテン状(図17,18は片側のみを示す)に天井から垂らして構成することを前提に設計されている。図17に示されるように、まずCG画面上でカーテン形状の多面体が制作され、その頂点にピクセルが自動生成され、”面構造”が自動設定されている。結果として、CG画面上ではルミチューブの実際の配線構造には存在しない水平方向の接続が施され、複数個のルミチューブによる仮想的な面が形成されることになる。図18はこの仮想面に対して図19に示されるピクセル群の着色模様を先述のコピー貼付機能により複数個貼付着色したCG画面例である。
【0048】
以上述べた、”線構造”、”面構造”は3次元構造へも拡張可能である。その場合各ピクセルには(0,0,0)、(0,0,1)、(0,0,2)・・・・の3次元アドレスが付され、3次元空間領域での補間、貼付機能等を実現することができる。
また、”線構造”、”面構造”等が導入されているピクセル群に対しては、例えば、予め用意された複数枚のフレーム(または、フレームの一部分)を対応するフレーム毎に張り付けていくなど、時間領域においても、効率的な操作機能を実現することが可能となる。
【0049】
「実施例3」
図20は屋外に設置されるクリスマスツリー状の電飾システムの例である。この電飾システムのように全体としての発光素子の数が多く、配置も複雑な場合は、CG画面上での表示、および映像生成のための各種操作も困難を伴い、実施例1、あるいは実施例2の手法を用いても全体の映像データを一度に生成することは困難な作業となる。またこの種の電飾システムで、ビルの壁面に取り付けられるような大きな規模のものになると全ピクセルに対する発光データ(映像ストリーム)を一カ所のフレームメモリから全ピクセルに電送することは、必要とされる伝送量、伝送速度、伝送距離、信号線の数等の面で困難となる。以下に述べる実施例3はこのような大規模電飾システムを部分部分の小システムに分割した上で、個別に映像データを生成し、全体を統合することで全体として調和のとれた映像ストリームを完成させることを特徴とする。
以下、図20に示された大型クリスマスツリー状電飾システムを例として本実施例を説明する。
【0050】
この大型クリスマスツリー型電飾システム全体は図3のCG画面内で表示されている樹枝状の電飾サブシステムを複数個組み合わせて構成されている。図21はその回路ブロックである。 各樹枝状電飾サブシステム21fは、複数個の映像ストリームを記憶でき、かつそのうちのどの映像ストリームを選択表示するかをそのタイミングも含めて外部から指定できる機能が備えられている。フレームメモリ21aは複数の映像ストリームを記憶し、それらを個別に呼び出し表示できるよう、複数の区画a1,a2,a3・・・に区分されている(各区画は1つの映像ストリームを格納している)。
21dは指令信号線であり、表示すべき映像ストリームを例えばその映像ストリームが格納されているフレームメモリ区画の先頭アドレスを指定することで、そのLEDランプモジュール21cにより表示すべき映像ストリームとその開始タイミングとを指示する。
すべての樹枝状電飾サブシステムは、こうした指令信号に基づき指定された映像ストリームを定められたタイミングで表示することになる。
21eはこのような樹枝状電飾サブシステムへ伝えられる表示コマンドが記憶されているメモリ(コマンドメモリ)であり、あらかじめ定められたタイミングによりコマンドe1,e2,・・・が読み出され、指令信号線21dを介して各樹枝状電飾サブシステムに伝えられる仕組みとなっている。
【0051】
各樹枝状電飾サブシステムにあらかじめ記憶される映像ストリームは基本的には先に述べた実施例1,あるいは実施例2の手法により生成される。
クリスマスツリー状電飾システム全体の映像は、どのサブシステムがどのようなタイミングで内蔵している映像ストリームを表示するかで決定される。
例えば、全ての電飾サブシステムに同じ映像ストリームを表示させるとしてもその表示開始タイミングを少しずつずらすことにより、全体としての流動、膨張感等を表現することができる。
【0052】
以上述べたように本実施例に示される電飾システムにおいては映像ストリームはサブシステム側に個別に保持されているため、通常の電飾システムで必要とされるフレームメモリ、表示素子間での大量のデータ電送を必要としない。従って、例えば街路区画全体に渡ってサブシステムを分散配置した場合のように、サブシステム間の距離が離れている場合でも、全体として調和のとれた多様な電飾ストリーム映像を表示させることが可能となる。なお、樹枝状電飾サブシステムはルミチューブと同様に構造に柔軟性を持たせることにより、立木に絡ませる、あるいは複数個を並べて生垣状の電飾システム(図22)に仕立てることも可能である。また、例えばスポーツイベント会場におけるマスゲーム等、多数の演技者が電飾サブシステムを身につけ演技する場合などのように、複数のサブシステムが相互に移動しながら全体として統一のある映像ストリームを表示させるような電飾システムにおいては、指令信号として無線を使用する、あるいは音楽に合わせての演技者の手による手動信号を用いることも有効に機能する。
【0053】
なお、複数の映像ストリームを端末(サブシステム)に予め記憶させ、その編集データを通信回線で伝送することにより多彩な映像表現を実現させているシステムがいわゆる通信カラオケとして実用化されている。しかしながらそうしたシステムは映像表示の実時間的タイミングを通信回線を介して指令するものでもなく、複数端末(サブシステム)間での映像表示に協調性を求めているものでもない。
【0054】
また、各種イベント会場等において、複数個の大型TVシステム(サブシステム)を同時に用いて音楽等のタイミングに合わせて各種の映像を表示することも、演出効果を高める手段としてよく知られている。しかしながら、そうしたビデオシステムにおいては、映像ストリームは予め編集され、ビデオテープ等のフレームメモリに集中的に記憶され、大容量伝送路の一種であるビデオ映像回線を介して各大型TVシステム(サブシステム)に分配される。こうした映像信号分配方式では、サブシステムの数と同数のビデオ映像回線を必要とするため、サブシステムの数、配置範囲は(例えば4、5台、イベント会場舞台周辺の配置などと)限定されたものとなっている。
【0055】
さらに、前記映像信号分配方式、あるいは「特許文献1」記載のイルミネーション制御データ作成装置においても、各サブシステムに表示させる電飾映像は予めそれぞれの編集システムにより映像データとして編集しておくことが前提となるシステムである。従って、例えばイベント会場において、舞台進行に合わせ各サブシステムの表示内容、表示タイミングを臨機応変に変更する等のきめ細かな演出には対応できない。
【0056】
本発明による電飾システムでの伝送路は、コマンドのみの伝送となるため、例えば、一本の電話線(ペア線)をRS485規格等によりサブシステム間で分岐させて共用させることが可能となるなど、前記映像信号分配方式と比べ大幅に簡略化でき、多数の電飾サブシステムを街路、アーケードなどに沿って広範囲に配置することを可能とする。かつ、個々の電飾サブシステムは独立したフレームメモリを備えているため完全に独立した個別電飾映像を表示させることが可能であり、それら独立した個々の電飾映像の組み合わせにより、臨機応変、かつ、全体として非常に多彩な電飾映像表現を可能とする。
【特許文献1】特開2001−166738
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】フルカラーLEDによる大型映像表示装置の構成を示したものである。
【図2】図1を構成するLEDランプモジュールの回路構成を示したものである。
【図3】発光素子の空間配置を例示する「表示画面の写真」である。
【図4】曲線上に一定間隔で自動生成されたピクセル群を例示する「表示画面の写真」である。
【図5】多面体の頂点に自動生成されたピクセル群を例示する「表示画面の写真」である。
【図6】映像ストリームを生成させるプロセスを例示する「表示画面の写真」である。
【図7】発光色の時間的補間効果を例示する「表示画面の写真」である。
【図8】半球上に自動生成されたピクセル群の”線構造”設定を例示する「表示画面の写真」である。
【図9】”線構造”と直線上の格子点に生成されるピクセル群の関係を示す「表示画面の写真」である。
【図10】”線構造”が設定されたピクセル群に対しての空間的補間効果を例示する「表示画面の写真」である。
【図11】ピクセル群に対して設定された複数個の”線構造”を例示する「表示画面の写真」である。
【図12】ピクセル群に対して設定された相互に交叉する複数個の”線構造を例示する「表示画面の写真」である。
【図13】”線構造”の自動設定の手順を例示する「表示画面の写真」である。
【図14】”面構造”と格子面上の格子点に生成されたピクセル群の関係を示す「表示画面の写真」である。
【図15】”面構造”自動設定の手順を図示すものである。
【図16】”面構造”が設定されたピクセル群に対しての空間的補間の手順を図示するものである。
【図17】”面構造”が自動設定されているピクセル群を例示する「表示画面の写真」である。
【図18】図17のピクセル群に対しての空間的補間効果、及びコピー貼付効果を例示する「表示画面の写真」である。
【図19】図18の映像の元絵である模様を示す「表示画面の写真」である。
【図20】クリスマスツリー状の電飾システムを示す「表示画面の写真」である。
【図21】電飾サブシステムの構成図である。
【図22】生垣状電飾システムを示す「表示画面の写真」である。
【符号の説明】
【0058】
1a LED表示パネル
1b LEDモジュール
1c ピクセル
2a フレームメモリ
2b PWM駆動回路
2c LEDランプ
21a フレームメモリ
21b 駆動回路
21c LEDランプモジュール
21d 指令信号
21e コマンドメモリ
21f 電飾サブシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の映像ストリームを記憶する機能と、伝送路を介して外部から選択信号とタイミング信号を受け付ける機能と、上記選択信号に基づき上記複数個の映像ストリームの1つを選択し、上記タイミング信号により指定された時刻で上記選択された映像ストリームを表示する機能を備えた電飾サブシステムの複数個と、
上記複数個の電飾サブシステムに対する上記選択信号と上記タイミング信号を生成し、上記伝送路を介して上記選択信号と上記タイミング信号を上記複数個の電飾サブシステムに伝送する指令システムとから構成される電飾システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2008−15540(P2008−15540A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203839(P2007−203839)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【分割の表示】特願2002−205(P2002−205)の分割
【原出願日】平成14年1月4日(2002.1.4)
【出願人】(301072395)
【Fターム(参考)】