説明

霊長類の胚幹細胞の無血清培養

【課題】霊長類の胚幹細胞を培養する為の方法を提供する。
【解決手段】霊長類の胚幹細胞は、外因的に供給される線維芽細胞成長因子の存在において、且つ、動物の血清を含まないで長期間、安定なベースで培養される。好ましくは、更に、線維芽細胞支持細胞層が存在する。又、線維芽細胞支持細胞層及び線維芽細胞成長因子を含む培地が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、霊長類の胚幹細胞培養を培養する為の方法及びその方法で有用な培地に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
霊長類(例えば、サル及びヒト)の多分化能性胚幹細胞は移植前の胚由来のものである(U.S. Patent 5,843,780及びJ. Thomson et al., 282 Science 1145-1147 (1998)参照)。これらの刊行物及びそこに引用されたその他の刊行物の記述は、全て参照によってここに導入される。長期の培養にも拘わらず、これらの細胞は三つ全ての胚の胚葉の進化した誘導体を形成する為の発生能を安定的に維持する。
【0003】
霊長類(特にヒト)のES培養細胞株は、ヒトの発生生物学、薬剤開発、薬剤試験及び移植医学に関して広範囲の有用性を有する。例えば、移植後のヒトの胚に関する現在の知識は、主に、限られた数の発展の少ない組織学部門によるものである。倫理観の故に、初期のヒト胎児についての発生判定を左右する基本的なメカニズムは本質的に探求されないままに残されている。
マウスは実験的哺乳動物の発生生物学の大黒柱であり、そして、発生を左右する多くの基礎的なメカニズムがマウスとヒトとの間で保存されているが、初期のマウスとヒトの発生の間には著しい相違が存在する。霊長類/ヒトES細胞は、従って、それらの分化と機能に重要な新しい見解を用意すべきである。
【0004】
霊長類のES細胞の分化した誘導体は、新規な化合物の毒性或いは催奇性試験の為に、そして、病気の細胞集団を置換える為の移植の為に使用される新たな薬剤の為の標的遺伝子を同定する為に使用することができる。ES細胞由来の細胞の移植によって治療できる可能性のある状態としては、パーキンソン病、心筋梗塞、若年型糖尿病及び白血病が挙げられる(例えば、J. Rossant et al., 17 Nature Biotechnology 23-4 (1999) 及びJ. Gearhart, 282, Science 1061-2 (1998)参照)。
長期間の増殖能力、長期培養後の発生能力及び核型の安定性は、霊長類の胚幹細胞培地の有用性にとって鍵となる特徴である。その様な細胞の培地(特に線維芽細胞支持細胞層についての)は、一般に、その様な培養中の所望の増殖を可能とする為に、動物の血清(特にウシ胎児血清)で補充される。
【0005】
例えば、米国特許第5,453,357号明細書、第5,670,372号明細書及び第5,690,296号明細書では、塩基性線維芽細胞因子と動物の血清を一緒に使用する事を含めて、様々な培養条件が開示されている。残念ながら、血清は、バッチ毎に変動する性質があり、従って、培地特性に影響を及ぼす。
WO98/30679では、培地において或種の胚幹細胞の成長を助ける為に動物の血清の代替として無血清補給を用意する事が検討された。この血清の代替は、アルブミン又はアルブミン置換体、一種以上のアミノ酸、一種以上のビタミン、一種以上のトランスフェリン又はトランスフェリン置換体、一種以上の耐酸化剤、一種以上のインスリン又はインスリン置換体、一種以上のコラーゲン前駆体及び一種以上の微量元素を含んでいる。この代替は、更に、白血病抑制因子、スチール因子、又は毛様神経因子と共に補給できる点が注目された。残念ながら、霊長類の胚幹細胞培地(特に、線維芽細胞支持細胞層で成長させる培地)の関係では、これらの培地は十分である事を立証しなかった。
【0006】
栄養素血清培地(例えばウシ胎児血清)の関係では、WO99/20741は、霊長類の幹細胞を培養するに当って様々な成長因子、例えばbFGFの使用の利点を述べている。然しながら、栄養素血清の無い培地は開示されていない。
米国特許第5,405,772号明細書では、造血細胞及び骨髄間質細胞の為の成長培地が開示されている。そこでは、この目的の為に血清を取除いた培地において線維芽細胞成長因子を使用することが示唆されている。然しながら、霊長類の胚幹細胞の成長の為の条件は開示されていない。
【0007】
従って、今尚、動物の血清の使用の必要性なしに霊長類の胚幹細胞を安定して培養する為の技術の必要性が存在することが明らかである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の開示)
一つの観点では、本発明は、霊長類の胚幹細胞を培養する方法を提供するものである。幹細胞は、哺乳動物の胎児血清を実質的に含まない(好ましくは、如何なる動物の血清をも実質的に含まない)培地において、線維芽細胞支持細胞層以外の源から供給される線維芽細胞成長因子の存在下で培養される。好ましい形態では、又培地は線維芽細胞支持細胞層を有する。
【0009】
線維芽細胞成長因子は、哺乳動物発生の為の必須の分子である。現在、九つの線維芽細胞成長因子リガンドとその為の四つの情報伝達線維芽細胞成長因子受容体(及びそれらのスプライス変異体)が知られている(D. Ornitz et al., 25 J. Biol. Chem. 15292-7 (1996); U.S. Patent 5,453,357参照)。
これらの因子における僅かな変異は、種の間で存在することが予測され、従って、「線維芽細胞成長因子」と言う用語は限定された種ではない。然しながら、本発明者は、ヒト線維芽細胞成長因子、更に好ましくは、組換え遺伝子から産生される塩基性線維芽細胞成長因子と言う用語を使用する。この化合物は、Gibco BRL-Life Technologies及びその他から多量に容易に利用可能である。
【0010】
本発明の目的に対しては、培地は、個々別々の成分(例えば、ウシ血清アルブミン)が血清から単離されたとしても、そして外因的に供給されるとしても、特定の血清を実質的に含まないものである点に注目されるべきである。血清自身が添加されると、変動性の問題が生じる事がポイントである。然しながら、その様な血清の一種以上の十分に特定され精製された成分が添加されると、変動性の問題は生じない。
好ましくは、この方法を使用して培養される霊長類の胚幹細胞は、それらが(i)未分化状態で、in vitroにおいて無制限の増殖ができ、(ii)長期の培養後においても全ての三つの胚の胚葉(内胚葉、中胚葉及び外胚葉)の誘導体に対して分化でき、そして(iii)長期の培養を通して正常な核型が維持される点で真のES培養細胞株であるヒト胚幹細胞である。従って、それらは多能性であると言われる。
【0011】
培地は、1ヶ月以上(好ましくは6ヶ月以上、尚好ましくは12ヶ月以上でも)の間、内胚葉、中胚葉及び外胚葉への幹細胞の分化能力を維持しながら、且つ幹細胞の核型を維持しながら培養において胚幹細胞を安定に増殖させることが出来る。
他の観点では、本発明は霊長類の胚幹細胞を培養する為の別の方法を提供する。この方法は、実質的に哺乳類の胎児血清を含まない(好ましくは、又、実質的に如何なる動物の血清をも含まない)培地において、且つ、線維芽細胞成長因子情報伝達受容体を活性化することのできる成長因子であって線維芽細胞支持細胞層以外の源から供給される該成長因子の存在下で幹細胞を培養する。この成長因子は、好ましくは線維芽細胞成長因子であるが、又、線維芽細胞成長因子受容体を活性化する様に設計されたその他の物質、例えば或種の合成の小さな蛋白質(例えば、組換えDNA変異体から産生された)であっても良い。(一般的に、T. Yamaguchi et al., 152 Dev. Biol. 75-88 (1992)参照)(情報伝達受容体)。
【0012】
尚その他の観点において、本発明は霊長類の胚幹細胞を培養する為の培養系を提供する。培養系は、線維芽細胞支持細胞層と線維芽細胞支持細胞層以外によって供給されるヒト塩基性線維芽細胞成長因子とを有する。この培養系は、本質的に動物の血清を含まない。
本発明の尚その他の観点は、上記方法を使用して誘導される増殖細胞株(好ましくは、クローン化細胞株)を提供する。「誘導される」と言う用語は、直接的に或いは間接的に誘導される細胞株を含む広い意味で使用される。
動物の血清のバッチにおける相違に起因する変動性はこれによって避けられる。更に、動物の血清の使用を回避して線維芽細胞成長因子を使用する事は、クローン化の効率を増加させることができる事が分かった。
【0013】
従って、変動が少なく一層効率的なクローン化を可能とさせる、霊長類の胚幹細胞株の為の培養条件を提供する事が本発明の利点の一つである。本発明のその他の利点は、明細書及び特許請求の範囲の検討後に明らかとなるであろう。
以下の実験において、本発明者は、ヒトES増殖細胞株を培養する為に本発明の方法と培養系を使用した。二つのクローン的に誘導されたヒトES増殖細胞株を、クローン誘導後に8ヶ月以上にわたって増殖し、三つの胚の胚葉全ての進化した誘導体へ分化する為の能力が維持された。
初期誘導の為の方法、培地及びヒトES増殖細胞株H9の特徴は、J. Thomson et al., 282 Science 1145-1147 (1998)に開示されている。本発明者の実験では、ヒトES増殖細胞は、次いで、照射された(35グレイ ガンマ照射)マウスの胚線維芽細胞上に置かれた。この実験の為の培養系は、80%"KnockOut" Dulbeco's modified Eagle's medium (DMEM)(Gibco BRL, Rockville, MD)、1mMのL−グルタミン、0.1mMのβ−メルカプトエタノール、及び1%可欠アミノ酸ストック(Gibco BRL, Rockville, MD)から構成され、20%ウシ胎児血清(HyClone, London, UT)又は20%KnockOut SRの、マウスES細胞(Gibco BRL, Rockville, MD)の為に本来的に最適化されている無血清代替で補充された。KnockOut SRの成分は、WO98/30679の血清代替に対して記載されているそれらである。
【0014】
別の実験では、培地は、血清及び前述の血清代替物のKnockOut SRで、及び、ヒト組換え塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF、4ng/ml)と一緒に又は無しで補充された。培地における好ましいbFGFの濃度範囲は0.1ng/ml〜500ng/mlである。
培養条件を様々に変化させた時のクローン化効率を決定する為に、H−9培地が、7分間、0.05%トリプシン/0.25%EDTAで単独の細胞に分離され、遠心分離で洗浄され、間接核分裂的に不活性化されたマウスの胚線維芽細胞上に被せられた(6−ウエルプレートのウエル当り105ES細胞)。クローンES増殖細胞の誘導の為に単独の細胞からの成長を確認する為に、個々の細胞を、立体顕微鏡下での直接観察によって選択し、マイクロピペットで、マウスの胚線維芽細胞フィーダーを含む96ウエルプレートの個々のウエルに、20%血清代替物及び4ng/mlbFGFを含む培地と共に移した。
【0015】
クローンは、5〜7日毎の通常の経過毎に、1mg/mlのコラゲナーゼタイプIV(Gibco BRL, Rockville, MD)で拡張された。誘導後6ヶ月で、H9細胞は、標準G−分染法(20の染色体スプレッドが分析された)で正常なXX核型を示した。然しながら、誘導7ヶ月後では、単独の核型調製では、16/20の染色体スプレッドが正常なXX核型を示したが、4/20のスプレッドは、ランダムな異常性を示し、染色体13短腕への転座を伴うもの、逆転染色体20を伴うもの、4番短腕への転座を伴うもの及び多重細分化を伴うものを含んでいた。引き続き、誘導後8、10及び12.75ヶ月では、H9細胞は、試験した20の染色体スプレッド全てにおいて正常な核型を示した。
【0016】
本発明者は、動物の血清が含まれていた先述の培養条件におけるヒトES細胞のクローン化効率が低かった(bFGFの有無に拘わらず)事を観察した。又、本発明者は、動物の血清が存在しないとクローン化効率が増加し、なお更にbFGFで増加される事を確認した。
以下に表示されるデータは、プレート化された105の個別化されたES細胞からのコロニーの合計数、平均値の+/−標準誤差(コロニークローン化効率の割合)である。20%の胎児血清とbFGF無しの場合は、240+/−28であった。20%血清とbFGFの場合は、結果は略同じで、260+/−12であった。血清が存在しない場合は(20%の血清代替物が存在する)、bFGFなしの結果は633+/−43であり、bFGFを伴う場合は、826+/−61であった。この様に、血清はクローン化効率に逆に影響を及ぼし、血清の存在しない場合のbFGFの存在は、クローン化効率に関する限り相乗効果を有した。
【0017】
血清の存在でのヒトES細胞の長期間培養は、外因的に供給されるbFGFの添加を必要とせず、そして(上述の様な)血清含有培地へのbFGFの添加はヒトES細胞クローン化効率を著しく増加しない。然しながら、無血清培地では、bFGFはヒトES細胞の初期クローン化効率を増加した。
更に、本発明者は、外因的なbFGFの供給は、動物の血清が存在しない場合の霊長類の胚幹細胞の連続した未分化増殖にとって極めて重要である事を発見した。外因的なbFGFを欠く無血清培地では、ヒトES細胞は、二週間の培養で一様に分化した。例えば、LIFの様な他の因子の添加(bFGFの存在しない場合での)は、この分化を妨げなかった。
【0018】
認知された結果は、特に、クローン細胞に適用可能である。この事について、拡張の為のクローンが、直接顕微鏡観察の下で、96ウエルプレートのウエル中に個々に細胞を配置する為に選択された。96ウエルプレートのウエル中に配置された192H−9細胞の内の二つのクローンが順番に拡張された(H−9.1及びH−9.2)。これらのクローンの両方を、血清代替物とbFGFで補充された培地で順番に連続して培養した。
H9.1及びH9.2細胞共に、クローン化後の8ヶ月を超える連続培養後でも正常なXX核型を維持した。H9.1及びH9.2クローンは、無血清培地における長期間培養後でも、三つの胚の胚葉全ての誘導体を形成する能力を維持した。培養6ヶ月後では、H9.1及びH9.2クローンは正常な核型を持つ事が確認され、次いで、SCID−ベージュマウスに注射された。
【0019】
H9.1及びH9.2は共に、腸上皮(内胚葉)胚性腎臓、横紋筋、遊走筋、骨、軟骨(中胚葉)及び神経組織(外胚葉)を含めて、三つの胚の胚葉全ての誘導体を含む奇形を形成した。高い継代H9.1及びH9.2細胞の奇形の内で観察された分化の範囲は、低い継代H9細胞によって形成された奇形において観察されたそれに匹敵するものであった。
上記開示から、動物の血清は成長の支えではあるが、ヒトES細胞培養にとっては有益であると同時に有害な両方の化合物を含み得る複雑な混合物である事が認識されるべきである。更に、異なる血清のバッチは、ヒトES細胞の活気のある未分化増殖を支持するそれらの能力において広範囲に変動する。血清を明確に定義された成分で置換える事は、この血清のバッチ変動の結果の変動性を減少させ、更に慎重に定義される分化の研究を可能とする。
【0020】
更に、血清を含む培地における低いクローン化効率は、通常使用される血清中に、幹細胞の生存にとって有害な、特に、細胞が単独細胞に分散させられる時に幹細胞にとって有害な化合物の存在を示唆する。従って、これらの化合物の使用を回避する事が大いに要求される。
本発明は、その好ましい実施態様について記述された。この概念の別の形態は特許請求の範囲内にある事が意図される。例えば、組換えで産生されたヒト塩基性線維芽細胞成長因子が上記の実験で使用されたが、自然に単離される線維芽細胞成長因子も又適当なものである。更に、これらの方法は、又、サル及びその他の霊長類の細胞培養での使用に適するものである事を証明するものである。
この様に、特許請求の範囲は、発明の完全な範囲を判断する為に見られるべきである。

工業的適用性
本発明は、霊長類の胚幹細胞の培養方法及びその方法で使用する為の培地を提供するものである。
【0021】
本明細書は、以下の発明を開示するものである。
1.霊長類の胚幹細胞の培養方法であって、哺乳類の胎児血清を実質的に含まない培地において、且つ、線維芽細胞支持細胞層以外の源から供給される線維芽細胞成長因子の存在下で該幹細胞を培養する事を特徴とする方法。
2.培地が動物の血清を実質的に含まないものである、前記1に記載の方法。
3.培地が、更に、線維芽細胞支持細胞層を含む、前記2に記載の方法。
4.線維芽細胞成長因子が塩基性線維芽細胞成長因子である、前記2に記載の方法。
5.線維芽細胞成長因子が、組換え遺伝子から造られたヒト塩基性線維芽細胞成長因子である、前記4に記載の方法。
6.霊長類の胚幹細胞がヒト胚幹細胞である、前記2に記載の方法。
7.前記培養工程が、内胚葉、中胚葉及び外胚葉組織の誘導体に分化させる為の幹細胞の能力を維持しながら、且つ、幹細胞の核型を維持しながら1ヶ月以上にわたって培地中で増殖する胚幹細胞を含む、前記2に記載の方法。
8.ヒト塩基性線維芽細胞成長因子が、該方法の少なくとも一部に対して少なくとも0.1ng/mlの濃度で培地中に存在する、前記2に記載の方法。
9.霊長類の胚幹細胞を培養する方法であって、哺乳類の胎児血清を実質的に含まない培地において、且つ、線維芽細胞成長因子情報伝達受容体を活性化する事のできる、線維芽細胞支持細胞層以外の源から供給される線維芽細胞成長因子の存在下で幹細胞を培養する事を特徴とする方法。
10.培地が動物の血清を実質的に含まないものである、前記9に記載の方法。
11.培地が、更に、線維芽細胞支持細胞層を含む、前記10に記載の方法。
12.霊長類の胚幹細胞がヒト胚幹細胞である、前記10に記載の方法。
13.前記培養工程が、内胚葉、中胚葉及び外胚葉組織の誘導体に分化させる為の幹細胞の能力を維持しながら、且つ、幹細胞の核型を維持しながら1ヶ月以上にわたって培地中で増殖する胚幹細胞を含む、前記10に記載の方法。
14.霊長類の胚幹細胞を培養する為の培養系であって、線維芽細胞支持細胞層と線維芽細胞支持細胞層以外によって供給される線維芽細胞成長因子とを含み、該培養系が動物の血清を実質的に含まないものである事を特徴とする培養系。
15.前記1の方法を使用して誘導された培養細胞株。
16.前記9の方法を使用して誘導された培養細胞株。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長期のインビトロ培養後に正常な胚幹細胞の表現型を維持することができる、クローンヒト胚幹細胞系を確立する方法であって、
未分化ヒト胚幹細胞の培養物を提供する工程、
個々の未分化ヒト胚幹細胞を別々の培地に移す工程であって、該培地が少なくとも約4ng/mlの外因的に供給されたヒト線維芽細胞成長因子を含むが、哺乳類の血清は実質的に含まないものである、工程、及び
個々の未分化ヒト胚幹細胞を、少なくとも約4ng/mlの外因的に供給されたヒト線維芽細胞成長因子を含む無血清培地中で培養して、該細胞を、少なくとも6ヶ月間の培養後に内胚葉、中胚葉及び外胚葉へと分化する能力を維持している未分化ヒト胚幹細胞のクローン培養物へと拡張する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
ヒト胚幹細胞のクローン培養物が12ヶ月間をこえて維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
培養工程において、無血清培地がコラゲナーゼを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
コラゲナーゼがコラゲナーゼタイプIVである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
コラゲナーゼの濃度が1mg/mlである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
長期のインビトロ培養後に正常な胚幹細胞の表現型を維持することができる、クローンヒト胚幹細胞系を確立する方法であって、
未分化ヒト胚幹細胞の培養物を提供する工程、
個々の未分化ヒト胚幹細胞を培養物から取り出して、別々の培地中に置く工程であって、該培地が少なくとも約4ng/mlの塩基性ヒト線維芽細胞成長因子及びマウス胚支持細胞を含むが、哺乳類の血清は実質的に含まないものである、工程、及び
細胞を別々の培地中で培養して、該細胞を、少なくとも8ヶ月間の培養後に内胚葉、中胚葉及び外胚葉へと分化する能力を維持することができる未分化ヒト胚幹細胞のクローン培養物へと拡張する工程
を含むことを特徴とする方法。

【公開番号】特開2012−5489(P2012−5489A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164419(P2011−164419)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【分割の表示】特願2001−565854(P2001−565854)の分割
【原出願日】平成13年3月2日(2001.3.2)
【出願人】(591013274)
【Fターム(参考)】