説明

霧と靄(もや)の消散方法と装置

本件発明は、とくに、自動車道路、公道、迂回道路および鉄道上の霧を凝結し消散させる方法と装置に関する。この方法は、強力なレベルの音波、超音波、電磁波を発生させて、これを選択されたオープンスペースに放射して形成した音場を利用して霧や靄の粒子の凝結物を作り出す。波動は、粒子に作用してこれらを移動し、凝結物を作り出し、これらが更に成長して新たな凝結物を作り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
この発明は、霧を消散し凝結する方法と設備、特に、自動車道路、公道、一般道、鉄道上空に亘って存在する霧を消散させるためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】US特許第5,655,383号明細書
【特許文献2】US特許第4,781,326号明細書
【特許文献3】US特許第6,152,378号明細書
【特許文献4】US特許第5,085,783号明細書
【特許文献5】US特許第4,462,483号明細書
【非特許文献1】Kundt und Lehmann ("Longitudinal vibrations and acoustic figures in cylindrical columns of liquid,"Annalen der Physik und Chemie(Poggendorf's Annalen),vol.153,pp.1,1874)
【非特許文献2】L.A.Crum,"Acoustic force on a liquid droplet in an acoustic stationary wave ,"J.Acoust.Soc.Am.,vol.50,pp.157-163,1971.
【非特許文献3】T.L.Tolt and D.L.Feke,"Separation of dispersed phases from liquids in acoustically driven chambers,"Chem.Eng.Sci.,vol.48,pp.527-540,1993.
【非特許文献4】E.Riera-Franco de Sarabia,J.A. Gallego-Juarez,G.Rodriguez-Corral,L.Elvira-Segura,and I.Gonzales-Gomez,"Applicacation of high-power ultrasound to enhance fluid/solid particle separation processes,"Ultrasonics,vol.38,pp.642-646,2000
【非特許文献5】L.P.Gor'kov,"On the forces acting on a small particles in an acoustical field in an ideal fluid,"Sov.Phys.Dokl.,vol,6,pp.773-775,1962.
【非特許文献6】S.M.Woodside,J.M.Piret,M.Groschl,E.Benes,and B.D.Bowen,"Acoustic force distribution in resonators for ultrasonic particle separation,"AIChE Journal,vol.44,pp.1976-1984,1998.(背景技術) 霧は、大気中の(直径が数ミクロン単位の)多数の微小な変動する水の微粒子または氷の結晶、或いはしばしば非水生の粒子が、道路、ハイウエー等の上方で混ざって形成される懸濁物である。これらの非水生粒子の性質は、燃焼、タイヤ、化学製品、等々、自動車システムの相互作用に起因して発生する粉末である。霧は、大気の透視性を制限する。霧は、透視可能距離に応じて、次のように分けられる。
【0003】
・透視可能距離50〜200mの濃霧
・透視可能距離200〜500mの通常の霧
・透視可能距離500〜1000mの薄霧
霧は、湿度と温度の一定のレベルにおいて大気中で発生し、消散し、または、移動する。霧から生じる役柄は常に大気中に存在するエアゾル微粒子とともに演じられる。空気中に存在するこれらの微粒子は、霧から凝結核の水滴として形成されることができる。霧は、この核に凝結する。
【0004】
大気を包囲する温度にしたがって、霧は、暖かい霧と冷たい霧とに分けられる。冷たい霧は、摂氏零度近くの温度の水滴で構成される。そのような霧は、最も容易に消散させることができる。それがたとえ安定したコロイド状であっても、その熱力学的な状態は、潜在的な準安定状況にある。そのような状況の下では、圧力の僅かな変動が温度の小変動を条件付けたり、粒子集団が容易に発生したりする。
【0005】
そのメカニズムは文献において知られている。なぜならば、(固体状態)の氷の存在下における飽和水蒸気(すなわち霧)の圧力は、同一温度では、液体面に存在する飽和水蒸気の圧力よりも小さいからである。氷の結晶の相をなす氷結面すなわち、道路の一様な氷結状態に接すると、水滴は気化する。気化した水蒸気は、凝結して氷の結晶面および氷結面で更に氷結する。氷の結晶は、限界質量に到達して落下を始めるので、その寸法が更に成長する。このシステムは、液体窒素や純粋の二酸化炭素(ドライアイス)の噴霧に応用することができる。
【0006】
暖かい霧は、一様なコロイドであるが、熱力学的には安定である。暖かい霧を消散させる実際的な研究は文献に多くは記載されていない。
【0007】
US特許第5,655,383号明細書においては、空気を冷却する熱場(thermal field)が作り出される。このシステムは、空気を乾燥し、この空気は、所定のエリア内に噴霧されて、存在する霧と攪拌を生じさせて、霧の影響を希釈化する。
【0008】
US特許第4,781,326号明細書においては、高圧の水を小滴を噴霧するノズルを介して噴射する方法が開示されている。これらの小滴は、霧内を落下して衝突し、霧と粒子を凝縮する。この方法は、容易に見つかるパイプと水を必要とし、空港または都市に敷設されるが、長いハイウエー等に組み込むことが困難である。長い道路の場合、水を再使用することは滑走路や都市の場合よりも一層困難である。
【0009】
US特許第6,152,378号明細書においては、霧を凝結させるためにコロナ放電が使用される。
【0010】
コロナ効果は、ワイヤ中で発生し空気または粒子をイオン化する。イオンの効果は、そのような粒子の極性に起因する水その他の粒子を凝縮させることである。粒子は成長し、最初は電界線に沿って移動することによって、重力が有効になって凝縮を起こすまで成長を開始する。このシステムは、空中ワイヤを道路に沿って組み立てる必要があり、凝縮は、道路近傍の機械プラント類や、電気的導管路に起因する予測できない電界線の挙動に関連する。この場合の別の不利益は、霧の消散に指向性がなく低容量効率な点である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
霧を解消する場合に解決すべき概念的問題点は2つであることが筆者によって指摘されている。
【0012】
最初の問題は、落下を開始するための充分な大きさを持つ水性、非水性の粒子の集合体を作り出すことである。
【0013】
これにとってかわる問題は、集合と凝結とによって、空気を浄化するための水/粒子の移動を発生させることである。
【0014】
この発明は、上に挙げた2つの技術的問題を解決すること、すなわち、開かれた環境下の所定のエリア内において霧の凝結体を作り出すとともに、前記エリア内において霧の凝結効果を維持することを目的としている。
【0015】
開かれた環境とは、霧と靄(もや)の移動が、エリヤを囲む壁や、システムによって区画されない、或いはまた、境界が所定のエリヤから遠く離れており、前記壁やシステムの霧や靄に及ぼす影響が無視できる環境として定義される。
【0016】
US特許第5,085,783号明細書には、懸濁物から別の粒子を作り出すいくつかの方法が開示されている。しかしながら、これらのどれも、(1ミクロンオーダーの)微小な粒子を有効に分離する方法を提供しない。この場合は、懸濁物がシリンダ内に供給される。アコースティックな波動がシリンダの各端部に送られる。アコースティックな波動の総量は、懸濁物の内部にキャビテーションを惹起する。強力な圧力パルスは、粒子をシリンダの中心へと追いやり、粒子はここで除去されることができる。この領域は狭い領域であり、実際の応用に用いることは困難である。
【0017】
US特許第4,462,483号明細書には、視界の透視範囲と赤外部と透明性を増大させる発明が開示されている。ここで提案された解決案は、煙霧、霧、煙幕を除去して視界を改善することである。空気中に浮遊する粒子を凝結するために、強力な超音波発生器が使用される。超音波を利用する凝結装置は、流体中に浮遊する小さな固体粒子を、超音波振動に起因して混ぜ合わせる装置である。主たる問題点は、過度に強力な超音波発生源を作り出すことにあり、爆発を利用する解決策は、道路に沿って使用するには危険かつ困難である。この解決策の他の不利益は、爆発を発生させ、音の危険なレベルを生じることを要する点である。
【0018】
この発明は、定在波を用いて霧粒子の凝結物を作り出す方法を開示する。定義される規定されない容量のエリヤ内において凝結物を作り出すことができるいくつかの装置も同時に開示される。
【課題を解決するための手段】
【0019】
提案された定在波は、凝結させようとする粒子、または、振動すなわち機械的振動または電気的振動すなわち無線周波数の波動(RFwaves)に応じて2つのタイプであることができる。
【0020】
音響波の場合、粒子の重量と容積が、移動を発生させるために用いられ、無線周波数の場合には、粒子が例えばイオナイザまたはフリクションデバイスによって多少とも帯電されることが必要である。
【0021】
照射の初期における経験と記述された物理現象によれば、粒子は、殆ど瞬間的に波動の節の平面(nodes planes)に向かって駆動され、粒子間の平均距離がかなり減少する。次いで、前記平面内でトラップされた粒子が、接近状態で一緒に移動し、それによって、凝結と一様な合体(coalescence)がトリガーされる。
【0022】
この現象は、すべての種類の消散(dispershons)に当て嵌まる。粒子は、気体状、液体状または固体状であることが可能である。消散流体は、ガス状、液体状であることができ、この発明の目的のためには、気体(air)状であることが好ましい。最も重要な実例は、大気中のすべての種類の粒子(エアロゾル)である。可能なすべての種類の消散においてこれが当て嵌まることは、超音波分離の大きな潜在可能性を暗示している。しかしながら、この現象は、いまだ、産業上の広く普及した応用性を認知されるに至っていない。その理由は、この方法が妨害物に対して高度に敏感であり、粘性の牽引力を制限する分離速度と比較されなければならないアコースティックな力を含むからである。しかし、今日利用することが可能な、高度に進歩したピエゾ電気トランジューサと駆動用エレクトロニクスにあっては、波動放射制御または局所集中化デバイスの具体化が必要とあれば、エリヤ内において波動の放射を専ら行うきわめて強力な電力原を構築することが可能である。しかしながら、今日の技術を以ってすれば、必要なエリヤに強力なパワーを集中できるソニックまたはウルトラソニックレンズのような集中システムを作り出すことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
この発明の好ましい1具体例は、図1のa、b、cによる複数の部材とバイブレータを備えるピエゾ電気すなわち従来の音源であり、直列の波動を作り出す。このバイブレータは、ピエゾ電気型、共鳴膜すなわち電磁石膜であることができる。音源のエミッタ列の形状は、音場によってカバーされるエリヤの所望の結果にしたがって異なる造形を有する。波動の周波数は、500〜600Hzから1MHzの範囲に亘ることができ、それらの周波数は、霧の特性、励起される凝結現象のタイプ、「浄化」しようとする所望のエリヤ、および、浄化時間、音源において利用可能な電力にしたがって選択される。特別な適用においては、選択範囲は1〜20KHzであり、この範囲は霧のタイプに応じて有用である。各エミッタ(100)は、波動の放射を制御して所定の形の波を発生する電子回路網を介して制御され(図2のa、b、c参照)、そして、遅延される(図3のb参照)。この遅延は、規定のエリヤにおいて、規定の長さで生じるように検討される。
【0024】
・波動の強さと集中によって、小水滴を濃縮し、凝結させること
・下記の説明による3つの基本的な力の作用によって、粒子/水滴を移動させること
背景をなす文献に特定されるようにシステムの挙動を支配する3つの力が利用される。1つの放射力F1が、粒子をアコースティックの移動速度の節とは反対側の平面に移動する。他方においては、ベルヌーイの力F2が、粒子を移動速度を横断する増幅グラディエントに沿って移動し、粒子にトランヂューサに垂直な柱を形成させる。この部位において、放射力F3が伝播された音場によって発生し、付近の粒子の凝結を生じさせる。
【0025】
最後の力が、伝播された音場によってのみならず、適切な波動の成分と時間的造形によっても発生する。
【0026】
この発明の好ましい具体例においては、道路の上方、すなわち、集中制御領域のエリヤに定在波を付与ことによって図3aの具体例が実現される。この形態においては、水滴が、エミッタ近傍において発生し、次いで水蒸気と他の小滴を集めて移動する。波動の励起タイプは、蓄積エリヤ内の水滴を移動させて、道路上に落下を開始する寸法に到達させる。
【0027】
定在波のエリヤは、通常は、数メートルの範囲に亘る高度に集中された音波の放射領域である。そのような態様で派生する波動列の成分は、凝結エリヤを囲む全領域に発生する負の成分と、凝結を作り出すように特定された領域の正の成分とが存在する。ガウスやベッセルビームのような適切な波動を利用すると、境界を持たないきわめて強力な音場を発生することができる。
【0028】
この発明の他の好ましい具体例においては、エミッタが上方位置から下方位置に向かって付勢され音場を伴って傾動され(図2のb参照)、前に説明したメカニズムと道路上方のエリヤの走査にしたがって、水滴の成長を生じる。
【0029】
回り道のために特に好適な、この発明の好ましい1具体例は、エミッタを回り道の中心にぶら下げて配置してこれをゆっくりと回転させることを可能にする。エミッタ自体の回転を避けるために、軸状の音場を形成するようにエミッタを造形することが可能である。
【0030】
この発明の更に別の好ましい1具体例は、特に、帯電粒子の周りの凝結に適しており、音場によって濃縮と移動が誘発される。
【0031】
(その他の参考文献)
Kundt und Lehmann ("Longitudinal vibrations and acoustic figures in cylindrical columns of liquid,"Annalen der Physik und Chemie(Poggendorf's Annalen),vol.153,pp.1,1874)
L.A.Crum,"Acoustic force on a liquid droplet in an acoustic stationary wave ,"J.Acoust.Soc.Am.,vol.50,pp.157-163,1971.
T.L.Tolt and D.L.Feke,"Separation of dispersed phases from liquids in acoustically driven chambers,"Chem.Eng.Sci.,vol.48,pp.527-540,1993.
E.Riera-Franco de Sarabia,J.A. Gallego-Juarez,G.Rodriguez-Corral,L.Elvira-Segura,and I.Gonzales-Gomez,"Applicacation of high-power ultrasound to enhance fluid/solid particle separation processes,"Ultrasonics,vol.38,pp.642-646,2000
L.P.Gor'kov,"On the forces acting on a small particles in an acoustical field in an ideal fluid,"Sov.Phys.Dokl.,vol,6,pp.773-775,1962.
S.M.Woodside,J.M.Piret,M.Groschl,E.Benes,and B.D.Bowen,"Acoustic force distribution in resonators for ultrasonic particle separation,"AIChE Journal,vol.44,pp.1976-1984,1998.
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】記載なし
【図2】記載なし
【図3】記載なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波または電磁波を第1のパワー密度まで発生させ、前記波動は、霧や靄(もや)の粒子に力を及ぼして、これらの粒子の凝結物を作り出すステップを含む方法であって、
前記波動は、オープンスペースの選択されたエリヤにおいて発生される定在波である点を特徴とする方法。
【請求項2】
前記選択エリヤ内の前記波動を集中デバイスによって第1のパワー密度よりも大きい第2のパワー密度にまで集中するステップを含む点を特徴とする請求項1に記載の粒子の凝結物を作り出す方法。
【請求項3】
核を含む粒子を発生させてこれらを移動して、
・前記粒子を前記の力によって前記エリヤ内において移動し、
・前記粒子が移動する間に、粒子を集めることによって前記核を含む粒子の大きさを成長させるステップを含む点を特徴とする請求項1に記載の粒子の凝結物を作り出す方法。
【請求項4】
帯電粒子発生させて、
・これらを前記エリヤ内において電磁場によって移動し、
・前記移動中に前記粒子を集めることによって大きさを増大させるステップを含む点を特徴とする請求項1に記載の粒子凝結物を作り出す方法。
【請求項100】
波または電磁波を第1のパワー密度まで発生させ、前記波動は、霧や靄(もや)の粒子に力を及ぼして、これらの粒子の凝結物を作り出す手段を含む装置であって、
前記波動は、オープンスペースの選択されたエリヤにおいて発生される定在波である点を特徴とする装置。
【請求項5】
音波または電磁波の定在波を発生させる手段を含む粒子の凝結物を作り出す装置であって、前記粒子と前記帯電された、および/または、核を含む粒子との間の距離を減少する手段と、前記粒子と前記帯電された、および/または、核を含む粒子とを重量特性の励起を介してオープンスペースの選択されたエリヤ内において移動するトランジューサを含む装置。
【請求項6】
大寸法の帯電粒子を発生させる手段と、前記粒子と前記帯電された、および/または、核を含む粒子とを重量特性の励起を介してオープンスペースの選択されたエリヤ内において移動するトランジューサとを含む点を特徴とする請求項4に記載の粒子を作り出す装置。
【請求項7】
凝結エリヤを傾動および/または移動する手段を含む点を特徴とする請求項4に記載の粒子凝結物を作り出す装置。
【請求項8】
前記の音の定在波を発生させる手段は、少なくとも1つのピエゾ電気部材である点を特徴とする請求項4に記載の粒子凝結物を作り出す装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つのピエゾ電気部材は、造形された可変表面を有する点を特徴とする請求項7に記載の粒子凝結物を作り出す装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つのピエゾ電気部材は、厚さが可変である表面を有する点を特徴とする請求項7に記載の粒子凝結物を作り出す装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−518900(P2007−518900A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−510902(P2005−510902)
【出願日】平成15年11月28日(2003.11.28)
【国際出願番号】PCT/IT2003/000786
【国際公開番号】WO2005/052263
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(506157444)イーズィー・インターナショナル・エス.アール.エル (2)