説明

霧化デバイスおよびそれを用いた霧化装置

【課題】 霧化効率が高く、かつ製造が容易な霧化デバイスを提供する。
【解決手段】 本発明の霧化デバイス1は、円筒状の圧電体5と、圧電体5の外周面に形成された第1の電極6および第2の電極7とを有し、円筒呼吸振動をする圧電振動子4と、圧電体5の軸方向における一端の開口部に、開口部を覆うように設けられた、中央部に複数の貫通孔10aが形成された振動体8とを備えた構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を霧化する霧化デバイスに関し、さらに詳しくは、霧化効率が高く、かつ製造が容易な霧化デバイスに関する。
【0002】
また、本発明は、上記霧化デバイスを用いた霧化装置に関する。
【背景技術】
【0003】
従来から、加湿、芳香、消臭、殺虫、洗浄、成膜などの用途で、液体を霧化する霧化装置が実用化されている。
【0004】
霧化装置は、液体を霧化する霧化デバイスを備える。霧化デバイスは、たとえば、圧電振動子などにより、中央部に複数の貫通孔(ノズル孔)が形成された振動体を振動させておき、振動体の下面側に供給された液体を、貫通孔から振動体の上面側に噴霧する構造からなる。
【0005】
図5に、特許文献1(特表2006−523532号公報)に開示された、霧化装置200を示す。
【0006】
霧化装置200は、霧化デバイス101を備える。霧化デバイス101は、中央に開口部を有する円板形状の圧電振動子102を備え、その開口部に、複数の微細な貫通孔(図示せず)が形成された円板形状の金属製の振動板(オリフィス)103が取り付けられている。圧電振動子102は、その上下両面に1対の電極(図示せず)を備えており、その電極間に所定の周波数の交流電圧が印加されることにより、たとえば超音波で周方向に伸縮する。そして、圧電振動子102が伸縮することにより、圧電振動子102に取付けられた振動体103の中央領域が上下方向に振動する。
【0007】
また、霧化装置200は、液体供給手段として、多孔質スポンジなどからなる給液芯104を備える。給液芯104は、一方端104aを露出させてプラグ105に固定され、他方端104bが液体タンク(貯留部)106に収容された液体107に含浸されている。そして、プラグ105が液体タンク106に取付けられている。給液芯104は、液体タンク106に収容された液体107を、毛細管現象により、その一方端104aに供給する。
【0008】
そして、給液芯104の一方端104aは、所定の圧力で、振動体103の下面に圧接されている。なお、バネハウジング108に収容されたバネ109は、圧電振動子102の上面を弾性的に押圧するためのものである。
【0009】
霧化装置200は、圧電振動子102の電極間に交流電圧を印加することにより、振動体103が上下方向に振動し、給液芯104の一方端104aに供給された液体を霧化し、振動体103の上面側に噴霧する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2006−523532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した、従来の霧化デバイス101は、圧電振動子102を周方向に伸縮させ、その伸縮により、圧電振動子102に取付けられた振動体103の中央領域を上下方向に振動させるものであるため、振動体の振動ノード(節)がなく、保持により拘束され振動が漏れる。よって、振動体103の振動効率が低く、霧化効率の低いものであった。したがって、十分な霧化量を確保することができない、あるいは消費電力が大きいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上述した従来の霧化デバイスの問題を解決するためになされたものである。
【0013】
その手段として、本発明の霧化デバイスは、円筒状の圧電体と、圧電体の内周面または外周面のいずれか一方の面に形成された第1の電極および第2の電極とを有し、円筒呼吸振動をする圧電振動子と、圧電体の軸方向における一端の開口部に、開口部を覆うように設けられた、中央部に複数の貫通孔が形成された振動体とを備えた構成とした。
【0014】
また、本発明の霧化装置は、上述した霧化デバイスと、霧化デバイスが取付けられ、かつ液体を貯留する貯留部を有する霧化装置本体と、貯留部に貯留されている液体を振動体の貫通孔が形成されている部分に供給する液体供給手段とを備えた構成とした。
【0015】
なお、本件出願人においては、円筒状の圧電体の円筒呼吸振動により振動板を駆動する霧化デバイスおよびそれを用いた霧化装置については、既に出願済みである。ただし、本件の出願時点においては未公開である(特願2009‐27229号、PCT/JP2009/005978、PCT/JP2010/051386)。
【0016】
図6(A)、(B)に、この出願済みの霧化デバイスに用いられる圧電振動子201を示す。ただし、図6(A)は斜視図、図6(B)は断面図である。
【0017】
圧電振動子201は、円筒状の圧電体202を備え、圧電体202の内周面に第1の電極203が形成され、外周面に第2の電極204が形成されている。そして、圧電体202は、第1の電極203と第2の電極204を利用して、半径方向に分極されている。さらに、圧電体202の軸方向における一端の開口部には、図示しないが、開口部を覆うように振動体が設けられる。圧電振動子201は、第1の電極203と第2の電極204との間に交流信号を印加することにより、圧電体202が円筒呼吸振動して、振動体を上下方向に振動させる。
【0018】
圧電振動子201は、圧電体202の円筒呼吸振動により振動板を駆動するものであるため、振動板と圧電振動子との接合部が振動のノード(節)となり、圧電振動子の広がり振動が、高い機械的変換効率で、振動板の膜振動へ変換されるため、振動効率が高くなっている。したがって、霧化効率が高く、消費電力が小さいものになっており、上述した従来の霧化デバイス101の有する問題を解決している。
【0019】
しかしながら、この出願済みの霧化デバイスに用いられる圧電振動子201は、圧電体202の内周面と外周面の両方に電極が形成されているため、なお、次のような問題があった。
【0020】
すなわち、内周面に第1の電極203が形成され、外周面に第2の電極204が形成されているため、電極の形成方法に制約があり、その工程も煩雑であるという問題があった。たとえば、円筒状の圧電体202の表面全体に、バレル電解めっきなどで金属膜を形成した後に、圧電体202の両端面を研削加工し、第1の電極203と第2の電極204とを分離するなどの工程が必要であった。
【0021】
また、圧電体202の内周面に第1の電極203が形成され、外周面に第2の電極204が形成されていることにより、接続端子による引出しが難しいという問題があった。すなわち、第1の電極203と第2の電極204のそれぞれに接続端子を固定し、それらの接続端子により、電気的接続をはかるとともに、霧化デバイス全体を中空に支持しようとした場合、一方の接続端子は圧電体202の内周面側から、他方の接続端子は圧電体202の外周面側から引出すことになり、軸対称とならないため、振動バランスが崩れてしまうという問題があった。したがって、圧電体202の内周面に形成された第1電極203を、一旦、圧電体202の端面を経由して圧電体202の外周面側に引回し、そこに第1電極203用の接続端子を固定するなどの方策が必要であり、圧電体202に、非常に複雑で、加工の難しい電極を形成しなければならないという問題があった。
【0022】
本発明の霧化デバイス(および霧化装置)は、上述した従来の霧化デバイス101の有する問題を解決するとともに、上述した本件出願人の出願済み(未公開)の霧化デバイスの有する問題をも解決することを目的として、上述した構成としたものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の霧化デバイスは、圧電振動子が、筒状の圧電体の円筒呼吸振動により振動板を駆動するものであるため、振動効率が高い。したがって、霧化効率が高く、消費電力が小さいものになっている。
【0024】
また、本発明の霧化デバイスは、筒状の圧電体の外周面または内周面のいずれか一方に第1の電極および第2の電極の両方を設けたものであるため、電極形成が容易である。また、第1の電極と第2の電極のそれぞれに接続端子を固定し、それらの接続端子により、電気的接続をはかるとともに、霧化デバイス全体を中空に支持しようとした場合、接続端子の引出しが容易である。また、接続端子を軸対称に引出すことができるため、圧電振動子の良好な振動を得ることができる。
【0025】
また、本発明の霧化装置は、上述した本発明の霧化デバイスを用いたものであるため、同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態にかかる霧化装置100を示す断面図である。
【図2】霧化装置100に用いた霧化デバイス1を示す分解斜視図である。
【図3】霧化装置100(霧化デバイス1)に用いた圧電振動子4を示し、図3(A)は斜視図、図3(B)は断面図、図3(C)は電極パターンの展開図である。
【図4】霧化装置100に用いた霧化デバイス1の駆動状態を示す断面図である。なお、図4(A)〜(C)は、一連の駆動状態を示す。
【図5】従来の霧化装置200を示す断面図である。
【図6】本件出願人において出願済みの霧化装置(未公開)に用いた圧電振動子102を示し、図3(A)は斜視図、図3(B)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面とともに、本発明を実施するための形態について説明する。
【0028】
図1に、本発明の実施形態にかかる霧化装置100を示す。また、図2に、霧化装置100に用いた霧化デバイス1を示す。また、図3(A)〜(C)に、霧化デバイス1に用いた圧電振動子2を示す。ただし、図1は断面図、図2は分解斜視図、図3(A)は斜視図、図3(B)は断面図、図3(C)は電極パターンの展開図である。
【0029】
霧化装置100は、霧化デバイス1と、液体を貯留する貯留部2aを有する霧化装置本体2と、貯留部2aに貯留されている液体を霧化デバイス1の下面側に供給する給液芯(液体供給手段)3とを備える。
【0030】
霧化デバイス1は、圧電振動子4と振動体8とを備える。
【0031】
圧電振動子4は、円筒状の圧電体5を備える。圧電体5は、たとえば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系セラミックなどから形成される。圧電体5の寸法は限定されないが、たとえば、外径9.6mm、内径8.0mm、高さ2.6mmのものを用いることができる。
【0032】
圧電体5の外周面には、特に図3(A)〜(C)に詳細に示すように、第1の電極6と、第2の電極7とが形成されている。第1の電極6は、複数の櫛歯状の電極指6aと、後で説明する接続端子を固定するための接続電極6bとを有し、複数の電極指6aと接続電極6bはバスバー6cにより電気的に接続されている。同様に、第2の電極7は、複数の櫛歯状の電極指7aと、後で説明する接続端子を固定するための接続電極7bとを有し、複数の電極指7aと接続電極7bはバスバー7cにより電気的に接続されている。本実施形態においては、接続電極6b、7bは、電極指6a、7aよりも、若干、幅が大きく形成されている。そして、第1の電極6と第2の電極7は、櫛歯状の電極指6a、接続電極6bと、電極指7a、接続電極7bとが、間隔をあけて、交互に位置するように、対向して配置されている。第1の電極6、第2の電極7の材質は限定されないが、たとえば、Ag、Cu,Au、Pt、Ni、Snなどを用いることができる。ここで、櫛歯状の電極指6aと電極指7aと間にある圧電体表面に形成される円周方向の電極指が形成されない露出部の間隔、または、各電極指自体の円周方向の幅が変更されると、櫛歯状の電極指6a、7aによる電界の強度を制御することができるため、第1の電極6および第2の電極7に印加される電圧が一定であっても、霧化器の霧化量または霧化高さを制御できるという効果を有する。このとき、複数の櫛歯状の電極指を有する第1および第2の電極が圧電体の内周面または外周面のいずれか一方に形成されることで、複数の櫛歯状の電極指を有する第1および第2の電極が内周面と外周面とのいずれにも形成されるときに比べて、内周面と外周面とに形成される第1および第2の電極の内周面と外周面との相対位置がずれることによる圧電体に作用する電界強度の変動が生じないため、霧化器の霧化量および霧化高さをより安定にすることができる。
【0033】
圧電体5は、図3(B)に矢印で示すように、隣接する電極指6a、接続電極6bと、電極指7a、接続電極7bとの間で分極されている。この分極は、後で説明するように、電極指6a、接続電極6b、電極指7a、接続電極7bを使っておこなわれる。
【0034】
圧電体5の軸方向における一端の開口部には、開口部を覆うように振動体8が取付けられている。振動体8は、振動板9にオリフィス10を取付けた構成からなる。
【0035】
振動板9は、中央部に開口部9aが形成されるとともに、後で説明する接続端子との電気的絶縁を確保するために、外周の対向する部分に1対の切欠き9bが形成されている。振動板9の材質は限定されないが、たとえば、42アロイを用いることができる。その他、ばねSUS、洋泊、りん青銅、セラミックス(ジルコニア、PZT、アルミナ)などを、振動板9の弾性材料として用いるようにしても良い。振動板9の寸法も限定されないが、たとえば、外径10.0mm、内径1.9mm、厚み0.25mmのものを用いることができる。
【0036】
オリフィス10は、中央部に複数の貫通孔10aが形成されている。そして、オリフィス10は、振動板9の開口部9aを覆うように、振動板9の下面に取付けられている。オリフィス10の材質は限定されないが、たとえば、Ni‐Coを用いることができる。その他、Ni、Si、ガラスなどを、オリフィス10の材質として用いることができる。オリフィス10の寸法も限定されないが、たとえば、外径3.0mm、厚み50μmのものを用いることができる。オリフィス10の貫通孔10aとしては、たとえば、直径8μのものが85個形成されている。なお、貫通孔10aの直径は、発生させるミスト形状により決定し、貫通孔10aの穴数は、霧化量により決定する。たとえば、8μmでは、5~25μmのミスト形状となり、これを85個形成することにより、0.1〜2.0μ/sの霧化量を実現できる。
【0037】
なお、本実施形態においては、振動板9にオリフィス10を取付けた振動体8を用いているが、これに代えて、振動板とオリフィスとが一体的に形成された振動体、すなわち、振動体自身の中央部に貫通孔を設けた振動体を用いるようにしても良い。
【0038】
以上のように、圧電体5の外周面に第1の電極6と第2の電極7とが形成された圧電振動子4に、振動体8を取付けた霧化デバイス1は、図4(A)〜(C)に示すように、第1の電極6と第2の電極7との間に交流を印加することにより、圧電体5が径方向に振動(円筒呼吸振動)し、振動体8が上下方向に振動する。この円筒呼吸振動は、圧電体5と振動板9の取付け部分近傍がノードとなるため、圧電体5は、振動板9の取付けられていない側の軸方向端部がより大きく振動する。霧化デバイス1は、円筒呼吸振動を用いたものであり、振動効率が高く、霧化効率が高い。
【0039】
霧化デバイス1には、図2に示すように、1対の、たとえばL字型の接続端子11a、11bが固定される。具体的には、圧電体5に形成された接続電極6bに接続端子11aが、接続電極7bに接続端子11bが、それぞれ、はんだなどにより固定される。接続端子11a、11bの材質は特定されないが、たとえば、42アロイにNiめっきを施したもの、リン青銅、洋白などを用いることができる。
【0040】
霧化デバイス1は、接続端子11a、11bにより、駆動回路との電気的接続がはかられるとともに、中空に支持される。接続端子11a、11bは、振動のノード近傍(圧電体5と振動板9の取付け部分近傍)に固定されているため、接続端子11a、11bが、霧化デバイス1の振動に与える影響は小さい。また、接続端子11a、11bは、霧化デバイス1から軸対称に引出されるため、接続端子11a、11bが、霧化デバイス1の振動のバランスを崩す原因になることもない。
【0041】
なお、振動板9と接続端子11a、11bとの電気的絶縁は、上述のとおり、振動板9に形成された切欠き9bにより確保されている。ただし、振動板9に切欠き9bを形成するのに代えて、接続端子11a、11bを、圧電体5の上面から、たとえば0.2mm下にずらして固定するようにして、両者の電気的絶縁を確保するようにしても良い。あるいは、振動板9に切欠き9bを形成するのに代えて、振動板9の接続端子11a、11b近傍部分を、プレス加工により、凹形状に変形させ、接続端子11a、11bと接触しないようにして、両者の電気的絶縁を確保するようにしても良い。
【0042】
そして、霧化デバイス1は、図1に示すように、霧化装置本体2上の中空に保持される。具体的には、たとえば、接続端子11a、11bの先端を、中央部に開口部が形成された基板(図示せず)に取付け、その基板を霧化装置本体2に取付けるようにする。この場合、霧化デバイス1は、基板の開口部内に配置されることになる。
【0043】
霧化装置本体2は、液体を貯留するための凹形状の貯留部2aと、貯留部2aを塞ぐための蓋部2bとを有する。貯留部2a、蓋部2bは、たとえば樹脂により形成される。
【0044】
そして、蓋部2bには、たとえば金属板12を介して、給液芯(液体供給手段)3が取付けられる。給液芯3は、多孔質スポンジ、フェルト、布などからなり、一方端3aが貯留部2aに貯留された液体13に含浸され、他方端3bがオリフィス10の下面に当接され、毛細管現象により液体13をオリフィス10の下面側に供給する。なお、給液芯3の取付けに、金属板12は必ずしも必要ではなく、給液芯3を、蓋部2bに直接取付けるようにしても良い。
【0045】
かかる構造からなる、本実施形態にかかる霧化装置100は、駆動回路(図示せず)により発生された交流電圧を、接続端子11a、11bを介して、第1の電極6と第2の電極7との間に印加することにより、圧電振動子4が振動され、振動体8が上下に振動され、オリフィス10の下面側に供給された液体13を、オリフィス10の上面側に噴霧する。なお、圧電振動子4の振動は、自励振であっても良いし、他励振であっても良い。ただし、他励振の場合は、圧電振動子4の表面に液体が付着すると、共振周波数が変動するため、周波数を変動させないための制御回路が必要となる。したがって、圧電振動子4の振動は、自励振であることが好ましい。
【0046】
かかる構造からなる、本実施形態にかかる霧化装置100は、たとえば、次の方法で製造される。
【0047】
まず、円筒状の圧電体5を形成する。具体的には、たとえば、材料となるPZTセラミックなどを、所定の形状に粉体プレス成形し、所定のプロファイルで焼成して形成する。
【0048】
次に、圧電体5の外周面または内周面のいずれか一方に、第1の電極6と第2の電極7を形成する。具体的には、たとえば、圧電体5の外周面に、所定の形状のマスクパターンを形成したうえで、Ag、Cu,Au、Pt、Ni、Snなどが含まれた導電ペーストを塗布し、マスクパターンを削除したうえで、所定の温度で焼付けて形成する。あるいは、別の方法として、圧電体5の外周面に、インクジェット印刷により、導電性ペーストを所定の形状に印刷し、所定の温度で焼付けて形成する。あるいは、別の方法として、圧電体5の外周面全面に、電解めっき、無電解めっき、導電ペーストを塗布したうえで焼付けるなどの方法により、Ag、Cu,Au、Pt、Ni、Snなどの金属膜を形成し、この金属膜をレーザートリミング、エッチングなどにより所定の形状に加工して形成する。いずれの方法によっても、第1の電極6と第2の電極7は、圧電体5の外周面または内周面の一方に設けることができる。
【0049】
導電性ペーストのインクジェット印刷により、第1および第2の電極を圧電体5の内周面に所定の形状に形成するようにすれば、圧電体5の内周面に印刷された焼付前の導電性ペーストへの外部からの接触を、圧電体の外周面により保護することができる。すなわち、圧電体5の外周面を保持するようにすれば、焼付前の導電性ペーストに接触することがないため、製造工程において、圧電体5の搬送が容易になるという効果を有する。
【0050】
あるいは、無電解めっきにより圧電体5の内周面または外周面のいずれか一方の全面に金属膜を形成し、しかる後に、レーザートリミングなどにより第1および第2の電極を所定の形状に形成することができる。なお、この場合において、圧電体5の寸法が小型になると、レーザトリミングのレーザ放出部を圧電体の内部に配置することが困難になるため、第1および第2の電極を圧電体5の外周面に形成する方が、レーザトリミングなどの加工工程が容易となるため好ましい。
【0051】
次に、第1の電極6と第2の電極7を用いて、圧電体5を分極する。たとえば、4kV/mm程度の電圧を、第1の電極6と第2の電極7間に印加することにより、圧電体5は、図3(B)に矢印で示すように分極される。
【0052】
次に、圧電体5の外周面に形成された接続電極6b、7bに、接続端子11a、11bを、たとえばはんだにより固定する。
【0053】
次に、予めプレスなどで開口部9aと切欠き9bが形成された振動板9と、予めエレクトロフォーミング加工などで貫通孔10aが形成されたオリフィス10とを準備し、振動板9下面の開口部9a周辺に、オリフィス10を、たとえばはんだにより固定し、振動体8を形成する。
【0054】
次に、振動体8を、圧電体5の軸方向における一端の開口部に、たとえばエポキシ接着剤により取付け、霧化デバイス1を完成させる。
【0055】
また、上記工程とは別に、貯留部2aと蓋部2bとからなる霧化装置本体2を準備する。さらに、中央部に形成された開口部に、予め給液芯3が取付けられた金属板12を準備する。そして、金属板12を蓋部2bに取付けることにより、給液芯3を霧化装置本体2に取付ける。
【0056】
そして、最後に、霧化装置本体2上の中空に、霧化デバイス1を支持する。具体的には、たとえば、霧化デバイス1の接続端子11a、11b(図2参照)の先端を、中央部に開口部が形成された基板(図示せず)に取付け、その基板を霧化装置本体2に取付ける。なお、この際、給液芯3の一方端3aが、所定の圧力でオリフィス10の下面に当接するように、霧化装置本体2と霧化デバイス1との距離を調整する。以上の工程により、本実施形態にかかる霧化装置100は完成する。
【0057】
なお、霧化装置100を使用するに際して、給液芯3やオリフィス10から液体が蒸発または飛散され、圧電体5の内周面に付着することがある。特に、この液体が導電性を有するときは、内周面に第1および第2の電極が形成されると、第1および第2の電極が液体によって短絡する可能性があり、たとえば、電極を被覆する絶縁膜を形成する必要があるが、第1および第2の電極が圧電体5の外周面のみに形成されれば、圧電体により導電性の液体が外周面の第1および第2の電極に付着することが抑制できるため、電極を被覆する絶縁膜の形成を省略することができる点において好ましい。
【0058】
以上、本発明の実施形態にかかる霧化装置100、それに用いられる霧化デバイス1、これらの製造方法の一例について説明した。しかしながら、本発明がこれらの内容に限定されることはなく、発明の主旨に沿って、種々の変更を加えることができる。
【0059】
たとえば、振動板9にオリフィス10を取付けた振動体8を用いているが、これに代えて、振動板とオリフィスとを一体化し、振動体自身に貫通孔(ノズル孔)を設けるようにしても良い。
【0060】
また、霧化装置本体2が、貯留部2aと蓋部2bとで構成されているが、別途、液体注入孔を設け、蓋部2bを有さない構成としても良い。また、給液芯3を霧化装置本体2に金属板12を介して取付けているが、これを省略し、直接取付けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0061】
1:霧化デバイス(圧電振動子4、振動体8を備える)
2:霧化装置本体
2a:貯留部
2b:蓋部
3:給液芯(液体供給手段)
4:圧電振動子(圧電体5、第1の電極6、第2の電極7を備える)
5:圧電体
6:第1の電極
6a:電極指
6b:接続電極
6c:バスバー
7:第2の電極
7a:電極指
7b:接続電極
7c:バスバー
8:振動体(振動板9、オリフィス10を備える)
9:振動板
9a:開口部
9b:切欠き
10:オリフィス
10a:貫通孔
100:霧化装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の圧電体と、前記圧電体の内周面または外周面のいずれか一方の面に形成された第1の電極および第2の電極とを有し、円筒呼吸振動をする圧電振動子と、
前記圧電体の軸方向における一端の開口部に、前記開口部を覆うように設けられた、中央部に複数の貫通孔が形成された振動体と、を備えた霧化デバイス。
【請求項2】
前記第1の電極および前記第2の電極が、それぞれ複数の電極指を有する櫛歯状に形成され、第1の電極の電極指と第2の電極の電極指とが所定の間隔を設けて前記圧電体を駆動する位置に対向して配置されている、請求項1に記載された霧化デバイス。
【請求項3】
前記第1の電極の電極指と前記第2の電極の電極指とが、交互に位置するように対向して配置されている、請求項2に記載された霧化デバイス。
【請求項4】
前記圧電体の内周面または外周面のいずれか一方の面のみに形成された第1の電極および第2の電極を有する、請求項1ないし3のいずれか1項に記載された霧化デバイス。
【請求項5】
前記圧電体の外周面のみに形成された第1の電極および第2の電極を有する、請求項4に記載された霧化デバイス。
【請求項6】
前記圧電体の内周面のみに形成された第1の電極および第2の電極を有する、請求項4に記載された霧化デバイス。
【請求項7】
前記第1の電極および前記第2の電極に、それぞれ接続端子が固定されている、請求項1ないし6のいずれか1項に記載された霧化デバイス。
【請求項8】
前記接続端子が、前記圧電振動子の円筒呼吸振動のノード近傍の、前記第1の電極および前記第2の電極にそれぞれ固定されている、請求項7に記載の霧化デバイス。
【請求項9】
前記振動体が、中央部に開口部が形成された振動板と、前記振動板の前記開口部を覆うように設けられた、中央部に複数の貫通孔が形成されたオリフィスとで構成されている、請求項1ないし8のいずれか1項に記載された霧化デバイス。
【請求項10】
前記振動板および前記オリフィスが、いずれも金属製である、請求項9に記載された霧化デバイス。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載された霧化デバイスと、
前記霧化デバイスが取付けられ、かつ液体を貯留する貯留部を有する霧化装置本体と、
前記貯留部に貯留されている液体を前記振動体の前記貫通孔が形成されている部分に供給する液体供給手段と、を備えた霧化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−20207(P2012−20207A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157487(P2010−157487)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】