説明

霧化装置、吸引装置

【課題】液体を効率よく霧化できる簡単な構造の霧化装置を実現する。
【解決手段】霧化装置10は、液体を収容するリザーバ20と、圧電基板51の主面にIDT電極52が形成される弾性表面波素子50と、IDT電極52と接続され、弾性表面波を発生させる高周波発生回路部と、弾性表面波素子50と、弾性表面波の伝搬領域の厚さ方向に空間80を有して弾性表面波素子50に固着される液体供給板70と、からなる霧化器40と、リザーバ20と空間80とを連通し、毛細管現象により前記弾性表面波の伝搬領域に前記液体を供給する液体導通路81が液体供給板70に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、霧化装置及び吸引装置に関し、詳しくは、弾性表面波素子により液体を霧化する霧化装置と、この霧化装置を備える吸引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薬液や香味液体を微粒子化し(霧化という)吸引するための吸引装置が提案されている。例えば、従来、薬液などの患者への投与は皮下注射等によって行われていたが、その代用として気管を通して吸引する方法が提案されている。また、タバコを燃焼させることなくタバコに似た香味を嗜好するためにフレーバーを霧化して吸引する擬似喫煙具も提案されている。
【0003】
これらのような吸引装置や擬似喫煙具は、液体を微粒子化することが求められ、様々な霧化器が開発されている。これら霧化器の代表的なものとして、弾性表面波素子によるものが知られている。
【0004】
霧化器に弾性表面波素子を用いるものとしては、IDT電極が形成される圧電基板からなる振動子と、IDT電極に接続され、弾性表面波を発生させる高周波電源と、前記振動子とギャップを介して振動子の一部に配置されギャップ端にスリットが形成されるカバーと、ギャップに液体を供給する手段とを備える弾性表面波を用いた霧化器というものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、弾性表面波素子と、この弾性表面波素子の振動面上に微小間隔をあけて配置された多数の貫通孔を有する多孔薄板と、を備え、液容器内の液体は、弾性表面波による振動によって、または毛細管現象によって弾性表面波素子と多孔薄板との間の微小間隙部内に吸引され、弾性表面波は微小間隙部内の液体を介して多孔薄板に伝達され、多孔薄板内に浸透した液体を振動により霧化する霧化装置と、この霧化装置を備える吸引装置というものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、弾性表面波素子の表面に液体を供給する手段としてインクジェットユニットを用い、インクジェットユニットから供給される液滴をさらに微粒子化する弾性表面波素子を用いた霧化装置というものも知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平7−232114号公報(第2頁、第1図)
【特許文献2】WO97/05960(第8〜第10頁、図3〜図5)
【特許文献3】特開平11−114467号公報(第5頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような特許文献1では、弾性表面波素子とカバーによって形成されるギャップ端の狭いスリットから液体を吐出し、ギャップにより液体を薄い膜として吐出し霧化している。ギャップ内では、液体の表面張力により、振動のON/OFFに伴い液体の供給を促している。しかしながら、ギャップ内においては液体が充填された状態となっているため、実際に霧化している領域面積が小さくなることから、霧化効率が低下するという課題を有する。
【0009】
また、特許文献2によれば、多孔薄板への振動の伝達は、弾性表面波素子との間の液体を介して伝達されるため、振動の伝達効率が低下する。さらに、弾性表面波素子と多孔薄板は共に保持具の溝に装着しているので、保持具に振動が漏れることが予測され、振動の伝達効率を低下させる。従って、液体の霧化効率も低下するという課題を有している。
【0010】
さらに、霧化された液体粒子径は、多孔薄板のメッシュ径に依存することから、仮に要求される液体粒子径が1μm程度の微粒子化は困難であると考えられる。
【0011】
また、特許文献2による吸入器(吸引装置)は、液体を収容する容器が開放された状態であるため、傾けることにより液体が流出することから使用時の姿勢に制約があり、保管方法に制限があること、あるいは携帯用の吸引装置には不向きである。
【0012】
また、特許文献3による霧化装置は、弾性表面素子の表面に液滴を供給するインクジェットユニットを用いる構造のため複雑な構造となり小型化には不向きである。
【0013】
さらに、インクジェットユニットを駆動するための駆動制御回路が必要であり、弾性表面波素子の高周波電源と合わせて回路の規模が大きくなると共に、消費電流が増加するという課題も有している。
【0014】
本発明の目的は、上述した課題を解決することを要旨とし、液体を効率よく霧化(微粒子化)できる簡単な構造の霧化装置と、ユーザーが扱い易い吸引装置、特に小型で携帯可能な吸引装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の霧化装置は、液体を収容するリザーバと、圧電基板の主面にIDT電極が形成される弾性表面波素子と、前記弾性表面波素子に弾性表面波を発生させる高周波発振回路部と、前記弾性表面波素子と、弾性表面波の伝搬領域の厚さ方向に空間を有して前記弾性表面波素子に固着される液体供給板と、からなる霧化器と、前記リザーバと前記空間とを連通し、毛細管現象により前記弾性表面波の伝搬領域に前記液体を供給する液体供給手段と、が備えられていることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、弾性表面波の伝搬領域に供給される液体を励起される弾性表面波の放射波により直接霧化するため、高効率で液体を霧化することができ、また、粒子径を1μm程度の微粒子に分化させることができる。
【0017】
また、弾性表面波素子に液体を供給する手段として、液体と液体供給手段との間の毛細管現象を利用しているため、前述した特許文献3のように、液体供給手段としてインクジェットユニットを用いる霧化装置に比べ、構造が簡素化でき、小型化しやすいという効果がある。
【0018】
さらに、インクジェットユニットを駆動するための駆動制御回路も不用であり、回路の規模が小さく、その分消費電流を低減することができる。
【0019】
また、前記空間が、前記液体供給板と前記圧電基板との間に配設されるリング状のスペーサーにより形成され、且つ、前記弾性表面波の伝搬領域を含む範囲に形成されていることが好ましい。
【0020】
この空間は、液体を供給した際に霧化する領域を意味する。ここで、リング状のスペーサーを設けることにより、弾性表面波の伝搬領域に供給される液体のバンクとなり、液体の状態で霧化装置外に流出することを防止し、供給された液体を効率よく霧化することができる。
【0021】
また、スペーサーを、仮に金属やセラミック等の薄板で形成すれば、空間の容積を高精度に管理することができる。
【0022】
また、前記液体供給手段が、前記液体供給板に形成され、且つ、前記リザーバと前記空間とを連通する微小間隙を有する液体導通路であることが好ましい。
ここで、微小間隙とは、例えば、毛細管現象により液体を吸引可能なスリットあるいは細管状の隙間である。
【0023】
このようにすれば、前述した特許文献3のような液体供給手段としてのインクジェットユニットは不用となり、また、液体導通路が液体供給板に形成されているために前述した特許文献1に示される液体供給のためのチューブ等が不用となり、構造を簡単にし、霧化装置の小型化を実現できる。
【0024】
前記液体導通路の前記空間に連通する端部が複数個備えられていることが好ましい。
このようにすれば、液体導通路の液体流出口(空間に連通する端部を示す)の数を増やすことにより、液体の弾性表面波の伝搬領域への供給量を増やし霧化量を増加することができる。液体は、液体導通路内に毛細管現象により吸引するため、特別の部材を加えなくとも液体流出口の数を増やし液体供給量を増加することができる。
【0025】
前記液体供給板が、親液性を有する材料で形成されるか、または、少なくとも前記液体と接触する表面に親液性膜が形成されていることが好ましい。
【0026】
このようにすれば、液体の液体供給板に対する濡れ性をよくし、液体の流動性を向上させることができる。特に、液体導通路には効果が大きい。
【0027】
さらに、前記弾性表面波素子の前記弾性表面波の伝搬領域に、絶縁性を有する親液性膜が形成されていることが好ましい。
【0028】
弾性表面波の伝搬領域の表面に親液性膜を形成することにより、液体の圧電基板に対する濡れ性をよくすることができるので、圧電基板上に供給された液体は薄膜となり、弾性表面波による霧化効率を向上させることができる。
また、親液性膜が絶縁性を有していることから、IDT電極間のショートを防止することができる。
なお、絶縁性保護膜を形成し、その表面に親液性膜を形成する構成としてもよい。
【0029】
また、前記弾性表面波の伝搬領域の表面に形成される親液性膜と、前記弾性表面波の伝搬領域の外周囲に形成される撥液性膜と、が設けられていることが望ましい。
【0030】
IDT電極とスペーサーとの間にはわずかな隙間が存在する。従って、IDT電極が形成される大部分の範囲が親液性を有していたとしても、供給された液体量が多い場合には、スペーサーとIDT電極との間に液体が流動することが予測され、作動を継続することにより徐々に液体の残留量が増加することが考えられる。ここで、撥液性膜を設けることにより、IDT電極形成範囲外に流動する液体が撥液され、わずかな弾性表面波によって親液性を有する範囲まで移動すると薄膜化され瞬時に霧化されるので、液体が圧電基板上に残留することを抑制することができ、残留液体が滞留することによる振動特性への影響を軽減することができる。
【0031】
また、前記リザーバの液体流出部に設けられるセプタムと、前記液体供給板に突設された液体取り入れ口と、が備えられ、前記セプタムに前記液体取り入れ口を刺挿することで、前記リザーバと前記空間とが連通されることが望ましい。
【0032】
リザーバにセプタムを設けることにより、簡単な構造で、リザーバと霧化器との接合を容易に行うことができるとともに、接合部からの液体の漏洩を防止することができる。また、リザーバの分離、交換も容易に行うことができる。
【0033】
さらに、液体供給板に設けられる液体取り入れ口を直接リザーバ内に刺挿する構造であるため、液体導通路を短くできるので、前述した親液性膜を設けることとあわせて、液体導通路内における液体流動に対する流体抵抗を減ずることができる。
【0034】
また、前記液体供給手段は、一端が前記リザーバに収容される液体に接触し、他端が前記弾性表面波の伝搬領域の表面に接触する第1の液体吸収性多孔質部材からなり、前記液体供給板に挿通されているか貼着されていることが好ましい。
ここで、液体吸収多孔質部材としては、例えば、フェルト、パルプや樹脂を原料とする多孔質材がある。
【0035】
このように、液体供給手段として液体吸収性多孔質部材を用いることにより、液体が毛細管現象により吸収され、前述した液体導通路を設けた場合と同様な効果が得られる。
【0036】
また、液体吸収性多孔質部材の断面積を調整することで、液体供給量を容易に加減することが可能で、液体導通路の微小間隙の管理よりも容易であるという効果がある。
【0037】
また、前記第1の液体吸収性多孔質部材の他端と前記弾性表面波の伝搬領域の表面との間に、弾性を有する第2の液体吸収性多孔質部材をさらに備えていることが好ましい。
【0038】
弾性表面波の伝搬領域の表面に接触する第2の液体吸収性多孔質部材を、弾性を有する材料とすることで、それぞれの寸法ばらつきを吸収し、液体供給手段としての液体吸収性多孔質部材と弾性表面波の伝搬領域の表面との接触を確実に行うことができる。
【0039】
また、第2の液体吸収性多孔質部材が弾性を有する材料であることから、弾性表面波素子の振動への影響を抑制することができる。
【0040】
また、前記第1の液体吸収性多孔質部材の一端及び前記他端を除く表面に、液体透過性の低い膜が形成されていることが望ましい。
【0041】
このように、液体を供給するときの入口部分と出口部分以外の範囲に液体透過性の低い膜を形成することで、第1の液体吸収性多孔質部材から液体が蒸発することを抑制し、必要とされる液体量を弾性表面波の伝搬領域に供給することができる。
【0042】
また、前記リザーバと前記霧化器とが着脱自在であって、前記リザーバが、前記リザーバの内外を連通する第3の液体吸収性多孔質部材を有し、前記霧化器が、前記霧化器の外部と前記空間とを連通する第4の液体吸収性多孔質部材を有し、前記リザーバと前記霧化器とを装着したとき、前記第3の液体吸収性多孔質部材と前記第4の液体吸収性多孔質部材それぞれの端面が接触することが好ましい。
【0043】
リザーバと霧化器とを着脱自在な構造とすることで、霧化器は繰り返し使用することができ、リザーバは交換使用することを可能にする。また、リザーバと霧化器とを装着したとき、第3の液体吸収性多孔質部材と第4の液体吸収性多孔質部材それぞれの端面を接触させることにより、リザーバから霧化器への液体供給を特別な操作なしに行うことができる。
【0044】
また、前記第3の液体吸収性多孔質部材と前記第4の液体吸収性多孔質部材との接触面の少なくともどちらか一方に、弾性を有する液体吸収性多孔質部材が備えられていることが好ましい。
【0045】
このように、第3の液体吸収性多孔質部材と第4の液体吸収性多孔質部材の間に弾性を有する液体吸収性多孔質部材を設けているために、リザーバを霧化器に装着するときに、リザーバと霧化器それぞれの寸法ばらつきを吸収し、リザーバと霧化器との接触を確実に行い、液体の流路を確保することができるという効果がある。
【0046】
また、前記リザーバが、前記第3の液体吸収性多孔質部材または弾性を有する液体吸収性多孔質部材を囲むキャップを備えていることが望ましい。
【0047】
このようにキャップを設けることにより、第3の液体吸収性多孔質部材または弾性を有する液体吸収性多孔質部材を保護するとともに、リザーバが単体のときに、リザーバからの液体の流出を防止することができる。
【0048】
また、前記リザーバを格納する前記リザーバよりも剛性が高いケースがさらに備えられ、前記第3の液体吸収性多孔質部材または弾性を有する液体吸収性多孔質部材が前記ケースの外部に突出されていることが望ましい。
【0049】
前述したように、本発明の霧化装置は、リザーバの交換使用を可能にしている。従って、リザーバ単独で販売、あるいはユーザーが霧化器への装着操作をすることが考えられる。この際、リザーバをケース内に格納することで、リザーバの変形等を防止することができる。
【0050】
また、前記リザーバに、外部から液体を注入するためのセプタムが設けられていることが望ましい。
【0051】
このように、セプタムを設けることにより、製造時に注射針のような注入具を用いて液体を注入することを容易に行うことができる他、ユーザー自身が、大型の液体収容容器からリザーバに液体を追加注入することもでき、利便性と経済性を向上させることができる。
【0052】
また、前記セプタムの近傍に前記リザーバに液体を注入するための開口部が開設されていることが望ましい。
【0053】
このようにすることで、リザーバがケース内に格納された状態で液体の注入を行うことができる。
仮に、リザーバが柔軟性を有する材料で形成される場合、液体を霧化器に供給した際にリザーバ内が大気圧に対して負圧となり、液体の供給を妨げることが考えられるが、ケースの開口部はケース内外の通気口ともなり、ケース内の圧力が外部の大気圧と常に同じになることから、負圧による液体の供給を妨げない。
【0054】
また、前記リザーバを前記霧化器と分離した状態で、前記第3の液体吸収性多孔質部材または前記弾性を有する液体吸収性多孔質部材を囲むキャップがさらに備えられていることが望ましい。
【0055】
このようなキャップを設けることにより、第3の液体吸収性多孔質部材または弾性を有する液体吸収性多孔質部材を保護するとともに、リザーバが単体のときに、液体の流出を防止することができる。剛性が高いケースとキャップを備えることにより、リザーバの取り扱いが容易になるという効果もある。
【0056】
また、本発明の吸引装置は、液体を収容するリザーバと、圧電基板の主面にIDT電極が形成される弾性表面波素子と、前記弾性表面波素子に弾性表面波を発生させる高周波発振回路部と、前記弾性表面波素子と、弾性表面波の伝搬領域の厚さ方向に空間を有して前記弾性表面波素子に固着される液体供給板と、からなる霧化器と、前記リザーバと前記空間とを連通し、毛細管現象により前記弾性表面波の伝搬領域に前記液体を供給する液体供給手段と、を備える霧化器と、前記リザーバと前記空間とを連通し、毛細管現象により前記弾性表面波の伝搬領域に前記液体を供給する液体供給手段と、が備えられる霧化装置と、少なくとも前記高周波発振回路部を含む制御部と、前記制御部に電力を供給する電源と、前記霧化装置にて霧化された液体微粒子が流通する流路を有する銜え口部と、が備えられていることを特徴とする。
【0057】
この発明によれば、リザーバに収容された液体を毛細管現象を利用して弾性表面波素子上に供給する簡単な構造により、吸引装置の小型化を実現することができる。
【0058】
また、仮に、上述した機能部位をユニット化し、それら各ユニットを直列に接続する構造とすれば、細いパイプ状の形態とすることができ、携帯性のよい吸引装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3は実施形態1に係る霧化装置を示し、図4,5は実施形態2、図6,7は実施形態3、図8は実施形態4に係る霧化装置、図9は本発明の吸引装置を示している。
なお、以下の説明で参照する図は、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
(実施形態1)
【0060】
図1は、本発明の実施形態1に係る霧化装置の平面図、図2は図1のA−A切断面を示す断面図である。図1,2において、霧化装置10は、液体を収容するリザーバ20と、リザーバ20から供給された液体を霧化(微粒子化)して吐出する霧化器40とが接続されて構成されている。
【0061】
リザーバ20は、薄肉の液体ケース21と液体ケース21の端部に装着され霧化器40と接続するセプタム30と、セプタム30と略対向する位置に液体ケース21内に液体を注入するためのセプタム130とから構成されている。
【0062】
ここで、リザーバ20に収容される液体としては、薬液やフレーバー等の香味液体など特に限定されないが、後述する液体導通路81を毛細管現象により吸引可能な粘度を有しているものが使用可能である。
【0063】
セプタム30は、液体ケース21の開口部22に刺挿部31を霧化器40側方向にして装着されている。開口部22は、液体ケース21の他の部分より圧肉にすることによりセプタム30の装着強度を高めている。
【0064】
リザーバ20は、霧化器40に装着されていない単独の状態では、セプタム30及びセプタム130が閉塞された状態であって、液体の漏洩はない。
リザーバ20内に液体を注入する場合には、セプタム130に注射針のごとき針(図示せず)を刺挿することで注入することができる。
【0065】
なお、セプタム130を設けずにセプタム30の刺挿部31から同様に液体を注入することができるが、本実施形態では、セプタム30には、液体供給板70に突設された取り入れ口75が挿入されるため、刺挿部の形状が異なるため別に備えている。
【0066】
霧化器40は、弾性表面波素子50と、弾性表面波素子50の上面に配設される液体供給板70と、から構成されている。弾性表面波素子50には、圧電基板51の一方の主面(以降、単に表面と表す)に励振電極53と反射器54とからなるIDT電極(Interdigital Transducer)52が形成されている。圧電基板51は、圧電性材料であれば特に限定されないが、LiNbO3、LiTO3、水晶などの圧電性単結晶、PZT(登録商標)、圧電性セラミックや、ガラス基板上にPZT(登録商標)等を形成したものを使用できる。
【0067】
圧電基板51の表面にはスペーサー60が密着されている。このスペーサー60は、ステンレスなどの金属からなるリング状の薄板であり、励振電極53と反射器54を含む弾性表面波の伝搬領域を取り囲んで配設される。従って、スペーサー60を設けることによる弾性表面波の励起、伝搬には影響はない。そして、スペーサー60の表面には液体供給板70が密着されている。
【0068】
液体供給板70は、リザーバ20側方向に半島状に突出した取り入れ口75と、取り入れ口75から貫通するスリット状の液体導通路81と、霧化された液体微粒子を排出する吐出口71と二つの通気孔73とが設けられている。
【0069】
液体供給板70は、スペーサー60の上面に密接固定されるが、この際、IDT電極52の厚さ方向上方に空間80が形成される。取り入れ口75がリザーバ20のセプタム30に刺挿された状態で、液体導通路81の一端はリザーバ20内の液体に接触し、他端は滴下口72に連続して上述した空間80に連通している。
【0070】
液体導通路81は、液体がリザーバ20内から滴下口72に至るまで毛細管現象により充填可能な大きさの微小間隙で形成される。従って、この隙間を形成する方法としては、液体供給板70を液体導通路81で厚さ方向に液体供給板本体70aと液体導通路板70bとに分割し、どちらかに液体導通路81に相当する溝を形成した後に接合する方法で容易に形成することができる。
【0071】
液体供給板70には、通気孔73が形成されているが、この通気孔73は、霧化器40の空間80と外部とを連通し、内外の圧力を同等にすることで、霧化された液体微粒子の吐出口71への流れを促進している。
【0072】
なお、液体供給板70の液体との接触面には親液性膜(図示せず)が形成されている。つまり、親液性膜は、液体導通路81、滴下口72及び空間80の内面にわたって形成される。液体供給板70の材質は特に限定されないが、親液性を有する材料とすれば、親液性膜を成形しなくてもよい。
【0073】
次に、本実施形態の弾性表面波素子50の構成について説明を加える。
図3は、本実施形態に係る弾性表面波素子を示す平面図である。図3において、弾性表面波素子50は、圧電基板51の表面にIDT電極52が形成されて構成される。IDT電極52は、一対の交差指電極が相互に櫛歯状に間挿されて構成される励振電極53と、弾性表面波の伝搬方向に配設される格子状の電極からなる反射器54とからなり、交差指電極の一方はIN電極、他方はグランド電極である。このIDT電極52と平面方向に離間した周囲には、スペーサー60が固着されている。
【0074】
そして、圧電基板51の表面のうち、IDT電極52が形成される範囲、つまり、弾性表面波が伝搬する領域には、親液性膜55が形成されている。この親液性膜55は、絶縁性を有しており、供給される液体が導電性を有する場合にIDT電極52の電極間ショートを防止する。さらに、親液性膜55は、IDT電極52の保護膜としての機能を有し、IDT電極52が液体によって腐食されることを防止する。
なお、まず、絶縁性膜を形成した後、その表面に親液性膜55を形成するという構成としてもよい。
また、親液性膜55の外周囲とスペーサー60との間には、撥液性膜56が形成される。
【0075】
続いて、本実施形態による霧化装置10の霧化作用について図1〜図3を参照して説明する。リザーバ20内の液体は、リザーバ20と霧化器40とが装着された状態で、毛細管現象により液体導通路81を経由して滴下口72まで至り、弾性表面波素子50の表面に滴下する。液体導通路81及び滴下口72の内面には親液性膜55が形成されており、液体の通路の抵抗を減じている。
【0076】
このような状態において、励振電極53に励振信号を入力すると弾性表面波が励起され、所定の共振周波数で振動する。この弾性表面波の放射波によって、表面に滴下された液体は霧化され、霧化された液体微粒子は吐出口71から吐出される。弾性表面波素子50の表面には親液性膜55が形成されているので、滴下された液体は、弾性表面波の伝搬領域(親液性膜55の範囲)において薄い膜状となっているため、弾性表面波による霧化作用の効率を高めている。
【0077】
弾性表面波の伝搬領域の外周囲には撥液性膜56が設けられているために、弾性表面波の伝搬領域から流動または飛散した液体を撥液して親液性膜55の形成領域まで弾性表面波により戻し、霧化を促進する。
【0078】
また、IDT電極52には、反射器54を有しており、弾性表面波の振動強度を高めている。なお、反射器54は必ずしもなくてもよい。
【0079】
なお、図1では、液体導通路81が1個の場合を例示して説明したが、液体導通路は1本に限らず複数備える構造とすることができる。この場合、複数の液体導通路をリザーバ20内に連通させる構造としても、リザーバ20内に連通する液体導通路は1個にし、途中から複数の液体導通路に分岐して、空間80に複数の滴下口を連通させる構造としてもよい。この場合、液体を滴下する位置を弾性表面波素子上にバランスよく配置することがより好ましい。
【0080】
従って、前述した実施形態1によれば、励起される弾性表面波の放射波により液体を直接霧化するため、前述した特許文献2のように間接的に霧化する霧化装置に比べ、液体を高効率で霧化させることができる。弾性表面波の共振周波数を数十MHzにすれば、1μm程度の微粒子径が得られる。
【0081】
また、弾性表面波素子50に液体を供給する手段として、液体導通路81の毛細管現象を利用しているため、前述した特許文献3のように、液体供給手段としてインクジェットユニットを用いる霧化装置に比べ、構造が簡素化でき、小型化しやすいという効果がある。
さらに、インクジェットユニットを駆動するための駆動制御回路も不用であり、回路の規模が小さく、消費電流を低減することができる。
【0082】
また、圧電基板51と液体供給板70との間にリング状のスペーサー60を設けることにより、スペーサー60が弾性表面波の伝搬領域に供給される液体のバンクとなり、液体の状態で弾性表面波素子50の外部に流出することを防止し、供給された液体を効率よく霧化することができる。
【0083】
また、スペーサー60を、仮に金属やセラミック等の薄板で形成すれば、空間80の隙間を高精度に管理することができる。
【0084】
また、液体導通路81が液体供給板70に形成されているために、前述した特許文献1に示される液体供給のためのチューブ等が不用となり、構造が簡単で木型の霧化装置10を実現できる。
【0085】
また、リザーバ20には、開口部22に設けられるセプタム30と、セプタム30に略対向する位置に設けられるセプタム130とを備えている。セプタム30には、液体供給板70に突設された液体取り入れ口75を刺挿することで、リザーバ20と霧化器40の空間80とを連通する。従って、簡単な構造で、リザーバ20と霧化器40との接合を行うことができるとともに、接合部からの液体の漏洩を防止することができる。また、リザーバ20の分離も容易に行うことができる。さらに、液体導通路を短くできる。
【0086】
また、注射針のごとき針をセプタム130に刺挿することにより、製造時において、リザーバ20内に液体を充填することも、ユーザーが液体を追加注入することもできる。
【0087】
また、液体供給板70を親液性を有する材料で形成するか、または、少なくとも液体と接触する表面に親液性膜55を形成することにより、液体供給板70に対する濡れ性をよくし、液体の流動性を向上させることができる。特に、液体導通路81には効果が大きい。
【0088】
さらに、弾性表面波素子50(圧電基板51)の弾性表面波の伝搬領域の表面に、絶縁性を有する親液性膜55を形成することにより、液体の圧電基板51に対する濡れ性をよくすることができるので、圧電基板51上に供給された液体は薄膜状となり、弾性表面波による霧化効率を向上させることができる。
また、親液性膜55が絶縁性を有していることから、IDT電極52のショートを防止することができ、IDT電極52の腐食を防止することができる。
【0089】
また、親液性膜55の外周囲に撥液性膜56を設けることにより、IDT電極52の形成範囲外に流動する液体が撥液され、わずかな弾性表面波によって移動し、親液性を有する範囲まで移動すると薄膜化し、瞬時に霧化されるので、液体が圧電基板51上に残留することを抑制することができ、振動特性への影響を軽減することができる。
【0090】
さらに、液体導通路81の空間80に連通する液体の滴下口72を複数設けることにより、液体の供給量を増やし霧化量を増加することができる。液体は、液体導通路81内に毛細管現象により吸引するため、特別の部材を加えなくとも液体の滴下口の数を増やすことで液体供給量を増加することができる。
(実施形態2)
【0091】
続いて、本発明の実施形態2に係る霧化装置について図面を参照して説明する。実施形態2は、液体供給手段として液体吸収性多孔質部材を用いていることに特徴を有している。従って、前述した実施形態1との相違個所を中心に説明し、共通部分には同じ符号を附して説明する。なお、弾性表面波素子50は実施形態1と同じ構成である。
図4は、実施形態2に係る霧化装置を示す平面図、図5は図4のB−B切断面を示す断面図である。図4,5において、本実施形態の霧化装置10は、リザーバ20と霧化器40の空間80とは、第1の液体吸収性多孔質部材82(以降、単に多孔質部材82と表す)によって連通されている。
【0092】
多孔質部材82は、フェルト、パルプや樹脂等を原料として棒状に成形される液体吸収性が優れた部材である。この多孔質部材82は、霧化器40側あるいはリザーバ20側のどちら側に挿着されていてもよく、霧化器40側にあっては、液体供給板70に設けられる挿着孔78に挿入され、リザーバ20側にあっては、液体ケース21に配設される保持部材32に挿入されて保持されている。なお、多孔質部材82は、液体供給板70の板面に貼着する構造としてもよい。
【0093】
保持部材32と多孔質部材82とは、液体が漏洩せず、且つ、液体を吸収可能な範囲の嵌合関係にある。液体ケース21内の保持部材32側には、多孔質部材82よりも柔軟性を有する液体吸着部材90が収容されている。
【0094】
多孔質部材82の一方の端部は、この液体吸着部材90の内部に挿入されており、この液体吸着部材90を介して液体を吸収し、霧化器40側の他端方向に液体を毛細管現象により移動させる。
【0095】
多孔質部材82の霧化器40側の他端先端部には、多孔質部材82と圧電基板51とを接続するための弾性を有する第2の液体吸収性多孔質部材83(以降、単に多孔質部材83と表す)が設けられている。多孔質部材83は、多孔質部材82と圧電基板51との間で初期撓み量をもって接触しているが、弾性を有し、弾性表面波の励起、伝搬には影響しない程度の押圧力となるように調整される。
【0096】
なお、液体吸着部材90は、多孔質部材82がリザーバ20の姿勢や液体残量に関わらず常に液体に接触させるために設けられているが、多孔質部材82が液体に接触していれば必ずしもなくてもよい。
【0097】
なお、多孔質部材82の表面には、液体透過性の低い膜が形成されている(図示せず)。この膜は、多孔質部材82の液体供給板70に設けられる挿着孔78との接触範囲に設けられ、リザーバ20内で液体と接触する部位(液体を吸収する部位)、多孔質部材83と接触する部位(液体を供給する部位)以外における液体の漏洩を抑えている。
【0098】
液体供給板70には、空間80と連通する吐出溝74が、スペーサー60の上部を横切って側面外部に開口する霧化された液体微粒子の吐出口76まで形成されている。
なお、吐出溝74は、前述した実施形態1(図2、参照)と同様に、液体供給板70の上面に開口する吐出口71を設ける構造としてもよい。
【0099】
実施形態2による霧化作用も実施形態1と同じであるが、リザーバ20内の液体は、多孔質部材82,83から圧電基板51の弾性表面波の伝搬領域にまで毛細管現象により移動し、多孔質部材83と圧電基板51との接触面に供給された液体が、弾性表面波の放射波により霧化されて、吐出口76から吐出される。
【0100】
圧電基板51の弾性表面波の伝搬領域には、親液性膜55(図3、参照)が設けられていることから、多孔質部材83の表面に存在する液体は、親液性膜55によって薄膜状に展開し弾性表面波によって霧化される。多孔質部材83の表面の液体が霧化されるに従い、多孔質部材83にはリザーバ20からの液体供給は連続する。
【0101】
従って、上述した実施形態2によれば、液体供給部材として多孔質部材82を設けることにより、前述した実施形態1による液体導通路81を設ける構造と同様に毛細管現象により液体供給を行うことができる。また、実施形態1及び実施形態2では、ともに毛細管現象を利用して液体供給をしているが、多孔質部材82を用いれば、液体導通路81を用いる構造よりも高精度な寸法管理をしなくても所望の液体供給機能を果たすことができる。
【0102】
また、多孔質部材82と弾性表面波の伝搬領域の表面との間に、弾性を有する多孔質部材83をさらに備えていることから、関係する部材それぞれの寸法ばらつきを吸収し、多孔質部材83と圧電基板51との接触を確実に行うことができる。
【0103】
また、多孔質部材83が弾性を有する材料であることから、弾性表面波素子50の振動への影響を抑制することができる。
【0104】
さらに、多孔質部材82へ液体を供給するときの入口部分と出口部分以外の範囲(つまり、リザーバ20内の液体と接触する多孔質部材82、多孔質部材82と挿着孔78との接触範囲)に液体透過性の低い膜を形成することで、多孔質部材82から液体が蒸発することを抑制し、必要な液体量を霧化器40に供給することができる。
(実施形態3)
【0105】
続いて、本発明の実施形態3に係る霧化装置について図面を参照して説明する。実施形態3は、リザーバ20と霧化器40を着脱自在としたところに特徴を有し、特に、リザーバ20と霧化器40のそれぞれに液体吸収性多孔質部材を備えているという特徴を有している。
図6は、実施形態3に係る霧化装置の一部を示す断面図である。図6において、霧化装置10は、リザーバ20の嵌着部33と霧化器40の嵌着部77とが嵌着結合されて構成されている。
【0106】
リザーバ20は、液体ケース21と、液体ケース21の開口部22に圧入された保持部材32と、保持部材32に挿着される第3の液体吸収性多孔質部材85(以降、単に多孔質部材85と表す)と、多孔質部材85の先端部に挿着される弾性を有する液体吸収性多孔質部材87(以降、単に多孔質部材87と表す)とから構成されている。
【0107】
多孔質部材87は、一方が多孔質部材85と密着し、他方が保持部材32の外側に突出している。リザーバ20が、霧化器40に挿着された状態で多孔質部材87は、霧化器40側の弾性を有する液体吸収性多孔質部材88(以降、単に多孔質部材88と表す)と密着する。
【0108】
霧化器40は、弾性表面波素子50(実施形態1と共通)の上面に配設される液体供給板70と、液体供給板70に設けられる挿着孔78に挿着される多孔質部材86と、多孔質部材86に密着する多孔質部材88とから構成されている。なお、圧電基板51と液体供給板70との間にはスペーサー60(図5、参照)が配設されている。また、霧化器40内部の空間や霧化された液体微粒子の吐出口等の構造は、前述した実施形態2(図5、参照)と同じであるため説明を省略する。
液体供給板70のリザーバ20側端部には凹状の嵌着部77が穿設されている。
【0109】
リザーバ20側の嵌着部33と霧化器40側の嵌着部77には、どちらか一方に突出した凸部が、他方に凹部が形成されており、この凸部と凹部とを嵌着することでリザーバ20と霧化器40とが装着され、多孔質部材87と多孔質部材88とが密着する。そして、装着された状態で、リザーバ20内の液体と霧化器40内の空間80とが多孔質部材85〜88によって連通され、毛細管現象によって液体が弾性表面波素子50の表面に供給される。
霧化作用は、前述した実施形態2と同様であるため説明を省略する。
【0110】
なお、液体ケース21の内部に、実施形態2にて説明した液体吸着部材90(図4,5、参照)を収容し、液体吸着部材90と多孔質部材85とを接触させる構造とすることもできる。
【0111】
また、リザーバ20と霧化器40との装着構造は、嵌着結合に限らず螺合構造としても、フック構造としてもよい。
【0112】
また、図6では、リザーバ20側及び霧化器40側それぞれに多孔質部材87,88を備える構造を例示しているが、多孔質部材87,88は、どちらか一方を備える構造としてもよい。具体的には、多孔質部材87を備える構造の場合、霧化器40側の多孔質部材86を多孔質部材87に密着する位置まで延在することで実現できる。
【0113】
また、多孔質部材88を備える構造の場合は、リザーバ20側の多孔質部材85を多孔質部材88に密着するまで延在すればよい。
【0114】
あるいは、多孔質部材87,88を用いずに、多孔質部材85と多孔質部材86とを直接密着する構造も本発明の範疇に含まれる。
【0115】
本実施形態では、リザーバ20と霧化器40とが着脱自在であるため、リザーバ20単独の状態について説明を加える。
図7は、実施形態3に係るリザーバの形態について示す断面図である。図7において、保持部材32の嵌着部33には、キャップ95が装着されている。キャップ95は、液体供給板70に設けられる嵌着部77(図6、参照)と同様な形状をしており、保持部材32とは嵌着結合される。
【0116】
なお、キャップ95と保持部材32の嵌着部33との間にパッキン(図示せず)を設けることで、液体が多孔質部材87から外部に漏洩することを防止することができる。
【0117】
リザーバ20と霧化器40とが螺合結合の場合は、嵌着部32に雄螺子を、キャップ95の内部に雌螺子を形成すればよく、液体の漏洩防止には一層効果がある。
【0118】
従って、上述した実施形態3によれば、リザーバ20と霧化器40とを着脱自在な構造としていることで、霧化器40は繰り返し使用することができ、リザーバ20は交換使用することができる。また、リザーバ20と霧化器40とを装着したとき、多孔質部材87と多孔質部材88それぞれの端面を接触(密着)させることができ、リザーバ20から霧化器40への液体供給を特別な操作なしに行うことができる。
【0119】
また、弾性を有する多孔質部材87,88を設けているために、リザーバ20を霧化器40に装着するときに、リザーバ20と霧化器40それぞれの寸法ばらつきを吸収し、リザーバ20と霧化器40との密着性を高め、液体の流路を確保することができるという効果がある。
【0120】
また、リザーバ20が、多孔質部材85または多孔質部材87を囲むキャップ95を備えていることにより、多孔質部材85または多孔質部材87を保護するとともに液体の流出を防止することができる。
(実施形態4)
【0121】
続いて、本発明の実施形態4に係る霧化装置について図面を参照して説明する。実施形態4は、リザーバがケースに格納されているところに特徴を有している。なお、本実施形態の霧化器は、前述した実施形態3に記載の霧化器40(図6、参照)を採用できるので、図示及び説明を省略する。
図8は、実施形態4に係るリザーバを示す断面図である。図8において、リザーバ120は、液体を収容する液体ケース121と、液体ケース121を格納するケース(以降、リザーバケース150と表す)とから構成されている。
【0122】
液体ケース121には、一方の側面にリザーバ開口部122が開設され、リザーバ開口部122と対向する側面にセプタム130が装着されている。セプタム130は、液体ケース121内に液体を注入するために設けられている。
【0123】
リザーバケース150は、液体ケース121よりも剛性が大きい材料あるいは厚さを有して形成された容器であって、ケース本体151とケース蓋152とから構成され、ケース本体151に液体ケース121を挿入した後、ケース蓋152を固定することで一体化される。
【0124】
ケース蓋152には、セプタム130を覗ける位置に開口部153が設けられ、セプタム130から液体を液体ケース121内に注入できるようにしている。
【0125】
リザーバ開口部122側には保持部材132が装着されており、この保持部材132と液体ケース121のリザーバ開口部122を貫通して多孔質部材85が設けられている。多孔質部材85の一方の端部は液体と接触し、他方の端部は保持部材132内に延在され、先端部には弾性を有する多孔質部材87が設けられている。
【0126】
さらに、保持部材の先端部133にはキャップ95が嵌着されて、多孔質部材85,87を保護するとともに液体の外部への漏洩を防止している。キャップ95と保持部材132との結合は嵌着以外に螺合結合としてもよい。
【0127】
本実施形態の霧化装置は、リザーバケース150を有するリザーバ120を霧化器40に装着することで、リザーバ120と霧化器40とが結合され、毛細管現象により弾性表面波素子50に液体が供給される。
【0128】
従って、上述した実施形態4による霧化装置は、リザーバ120と霧化器40との着脱が可能である。従って、リザーバ120単独で販売、あるいはユーザーが霧化器40への装着操作をすることが考えられる。この際、液体ケース121をリザーバケース150内に格納することで、液体ケース121の変形等を防止することができ、液体ケース121を薄い柔軟性を有する材料で形成することができる。
【0129】
また、液体ケース121にセプタム130を設けることにより、製造時に液体を注入することを容易に行うことができる他、ユーザー自身が、大型の液体収容容器からリザーバ120に液体を追加注入することもでき、利便性と経済性を向上させることができる。
【0130】
また、リザーバケース150にセプタム130を覗く位置に開口部152を開設していることにより、液体ケース121がリザーバケース150内に格納された状態で液体の注入を行うことができる。
仮に、液体ケース121が柔軟性を有する材料で形成される場合、液体を霧化器40に供給した際に液体ケース121内が大気圧に対して負圧となることから、液体の供給を妨げることが考えられる。しかし、リザーバケース150の開口部153はリザーバケース150内外の通気口ともなり、リザーバケース150内の圧力を外部の大気圧と常に同じにすることにより、液体供給に伴う負圧による液体の供給を妨げない。
【0131】
さらに、リザーバ120にキャップ95を設けていることにより、多孔質部材85または弾性を有する多孔質部材87を保護するとともに、リザーバ120が単体のときに、液体の流出を防止することができるほか、リザーバ単独での取り扱い性が向上する。
(吸引装置)
【0132】
次に、前述した実施形態1〜実施形態4にて示した霧化装置を搭載する吸引装置について図面を参照して説明する。
図9は、本発明による吸引装置の概略構造を示す断面図である。図9において、吸引装置200は、電源としての電池140、リザーバ20と霧化器40とからなる霧化装置10と、制御部145と、銜え口部251を有する第1ケース250と、が略直線状に配列されて構成されている。なお、霧化装置10は、実施形態1にて示された構造を例示しているが、実施形態2〜実施形態4にて示した霧化装置を採用することもできる。
【0133】
ここで、電池140は電池ケース211内に着脱可能に挿着されて電池ユニット210を構成し、弾性表面波素子50に励振信号を入力するための高周波発振回路部を含む制御部145は第4ケース221に装着されて制御部ユニット220を構成している。
【0134】
また、リザーバ20は、第3ケース223に着脱可能に装着されてリザーバユニット230を構成し、霧化器40は第2ケース225に装着されて霧化器ユニット240を構成して第1ケース250に嵌着されている。
【0135】
電池ユニット210は、制御部ユニット220と螺着部212で結合され、制御部ユニット220はリザーバユニット230と嵌着部222にて嵌着結合され、リザーバユニット230は霧化器ユニット240と嵌着部224にて嵌着結合されている。
【0136】
さらに、霧化器ユニット240は第1ケース250と嵌着部253にて嵌着結合されている。リザーバ20は、液体導通路81で霧化器40の内部に連通されている。また、霧化器40の上部と第2ケース225との間の空間180は、第1ケース250に開通されている流路252と連通している。
【0137】
上述した各ユニット及び第1ケース250は、図9に示すように直線的に結合し一体化されている。各ユニットは、隣接している他のユニットと螺着または嵌着されているので、容易に着脱可能である。特に、消耗品となる電池140とリザーバ20については、交換する機会があるので、上述したようにユニット化することで着脱操作のために特殊な工具等を用いずに行うことができる構造としている。
【0138】
次に、吸引装置200の作用について図9を参照して説明する。電池140は制御部145に電力を供給しており、制御部145には、図示しない電源制御回路と、弾性表面波素子50に励振信号を出力する高周波発振回路部と、を含んでいる。従って、制御部145から励振信号が弾性表面波素子50に出力される。
【0139】
リザーバ20内の液体は、毛細管現象により液体導通路81を経由して弾性表面波素子50の表面に液滴として滴下される。液体の滴下に連動して弾性表面波素子50は、励振信号に基づき弾性表面波を発生して放射波により液体を霧化する。霧化された液体微粒子は、一旦、空間180内に滞留する。ここで、第1ケース250の先端部の銜え口部251をユーザーが銜えて液体微粒子を吸引する。
【0140】
第2ケース225には、空気流通孔226が開設されている。従って、銜え口部251から吸引したときに、空気流通孔226から外部の空気が流入するので、空間180内の圧力が略一定(大気圧)となり継続吸引を容易にする。
【0141】
従って、前述した本発明の吸引装置200は、リザーバ20に収容された液体を液体導通路81を介して弾性表面波素子50上に滴下し、前述した霧化器40によって液体を効率よく霧化して、銜え口部251から吸引することができる。
【0142】
また、電池ユニット210、制御部ユニット220、リザーバユニット230、霧化器ユニット240、第1ケース250がそれぞれ着脱可能にユニット化しているので、組立性がよく、また、それぞれを単独に分解することができることからメンテナンス性がよいという効果がある。特に、リザーバ20や電池140は消耗品であるため交換することが求められるが、本実施例の構造によれば容易に交換することができる。
【0143】
また、各ユニットを着脱可能にしているので、液体が付着する霧化器ユニット240、口に銜える第1ケース250の洗浄を容易に行うことができる。特に第1ケース250を耐熱性及び耐薬品性の優れた材質にすれば、消毒等を単独で行うことができるので衛生面においても優れた吸引装置200を実現できる。
【0144】
また、弾性表面波素子50において霧化された微粒子は、吐出口71のみから吐出するため、制御部145に液体または霧化された微粒子が付着することに起因する駆動異常を防ぐことができる。
【0145】
また、これら各ユニットは、直列に結合しているので、細いパイプ状の形態とすることができ、携帯性のよい吸引装置200を提供することができる。
さらに、霧化された液体微粒子を第1ケース250の流路252に集中させて吸引するため、効率よく吸引することができる。
【0146】
なお、本発明は前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0147】
以上説明した本発明の霧化装置は、香味液体、薬液、塗料等、様々な液体を霧化、微粒子化することができる。
また、電子タバコのような環境及び人体に無害な喫煙具、薬液の経口吸引具として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】本発明の実施形態1に係る霧化装置の平面図。
【図2】図1のA−A切断面を示す断面図。
【図3】本発明の実施形態1に係る弾性表面波素子を示す平面図。
【図4】本発明の実施形態2に係る霧化装置を示す平面図。
【図5】図4のB−B切断面を示す断面図。
【図6】本発明の実施形態3に係る霧化装置の一部を示す断面図。
【図7】本発明の実施形態3に係るリザーバの形態について示す断面図。
【図8】本発明の実施形態4に係るリザーバを示す断面図。
【図9】本発明による吸引装置の概略構造を示す断面図。
【符号の説明】
【0149】
10…霧化装置、20…リザーバ、40…霧化器、50…弾性表面波素子、51…圧電基板、70…液体供給板、80…空間、81…液体供給手段としての液体導通路、145…高周波電源を含む制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容するリザーバと、
圧電基板の主面にIDT電極が形成される弾性表面波素子と、
前記弾性表面波素子に弾性表面波を発生させる高周波発振回路部と、
前記弾性表面波素子と、弾性表面波の伝搬領域の厚さ方向に空間を有して前記弾性表面波素子に固着される液体供給板と、からなる霧化器と、
前記リザーバと前記空間とを連通し、毛細管現象により前記弾性表面波の伝搬領域に前記液体を供給する液体供給手段と、
が備えられていることを特徴とする霧化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の霧化装置において、
前記空間が、前記液体供給板と前記圧電基板との間に配設されるリング状のスペーサーにより形成され、且つ、前記弾性表面波の伝搬領域を含む範囲に形成されていることを特徴とする霧化装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の霧化装置において、
前記液体供給手段が、前記液体供給板に形成され、且つ、前記リザーバと前記空間とを連通する微小間隙を有する液体導通路であることを特徴とする霧化装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の霧化装置において、
前記液体導通路の前記空間に連通する端部が複数個備えられていることを特徴とする霧化装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の霧化装置において、
前記液体供給板が、親液性を有する材料で形成されるか、または、少なくとも前記液体と接触する表面に親液性膜が形成されていることを特徴とする霧化装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の霧化装置において、
前記弾性表面波素子の前記弾性表面波の伝搬領域に、絶縁性を有する親液性膜が形成されていることを特徴とする霧化装置。
【請求項7】
請求項6に記載の霧化装置において、
前記弾性表面波の伝搬領域の表面に形成される親液性膜と、
前記弾性表面波の伝搬領域の外周囲に形成される撥液性膜と、
が設けられていることを特徴とする霧化装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の霧化装置において、
前記リザーバの液体流出部に設けられるセプタムと、
前記液体供給板に突設された液体取り入れ口と、が備えられ、
前記セプタムに前記液体取り入れ口を刺挿することで、前記リザーバと前記空間とが連通されることを特徴とする霧化装置。
【請求項9】
請求項1に記載の霧化装置において、
前記液体供給手段は、一端が前記リザーバに収容される液体に接触し、他端が前記弾性表面波の伝搬領域の表面に接触する第1の液体吸収性多孔質部材からなり、前記液体供給板に挿通されているか貼着されていることを特徴とする霧化装置。
【請求項10】
請求項9に記載の霧化装置において、
前記第1の液体吸収性多孔質部材の他端と前記弾性表面波の伝搬領域の表面との間に、弾性を有する第2の液体吸収性多孔質部材をさらに備えていることを特徴とする霧化装置。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の霧化装置において、
前記第1の液体吸収性多孔質部材の一端及び前記他端を除く表面に、液体透過性の低い膜が形成されていることを特徴とする霧化装置。
【請求項12】
請求項1に記載の霧化装置において、
前記リザーバと前記霧化器とが着脱自在であって、
前記リザーバが、前記リザーバの内外を連通する第3の液体吸収性多孔質部材を有し、
前記霧化器が、前記霧化器の外部と前記空間とを連通する第4の液体吸収性多孔質部材を有し、
前記リザーバと前記霧化器とを装着したとき、前記第3の液体吸収性多孔質部材と前記第4の液体吸収性多孔質部材それぞれの端面が接触することを特徴とする霧化装置。
【請求項13】
請求項12に記載の霧化装置において、
前記第3の液体吸収性多孔質部材と前記第4の液体吸収性多孔質部材との接触面の少なくともどちらか一方に、弾性を有する液体吸収性多孔質部材が備えられていることを特徴とする霧化装置。
【請求項14】
請求項12または請求項13に記載の霧化装置において、
前記リザーバが、前記第3の液体吸収性多孔質部材または弾性を有する液体吸収性多孔質部材を囲むキャップを備えていることを特徴とする霧化装置。
【請求項15】
請求項11または請求項13に記載の霧化装置において、
前記リザーバを格納する前記リザーバよりも剛性が高いケースがさらに備えられ、前記第3の液体吸収性多孔質部材または弾性を有する液体吸収性多孔質部材が前記ケースの外部に突出されていることを特徴とする霧化装置。
【請求項16】
請求項1ないし請求項15のいずれか一項に記載の霧化装置において、
前記リザーバに、外部から液体を注入するためのセプタムが設けられていることを特徴とする霧化装置。
【請求項17】
請求項15または請求項16に記載の霧化装置において、
前記セプタムの近傍に、前記リザーバに液体を注入するための開口部が開設されていることを特徴とする霧化装置。
【請求項18】
請求項12ないし請求項17のいずれか一項に記載の霧化装置において、
前記リザーバを前記霧化器と分離した状態で、前記第3の液体吸収性多孔質部材または前記弾性を有する液体吸収性多孔質部材を囲むキャップがさらに備えられていることを特徴とする霧化装置。
【請求項19】
液体を収容するリザーバと、圧電基板の主面にIDT電極が形成される弾性表面波素子と、前記弾性表面波素子に弾性表面波を発生させる高周波発振回路部と、前記弾性表面波素子と、弾性表面波の伝搬領域の厚さ方向に空間を有して前記弾性表面波素子に固着される液体供給板と、からなる霧化器と、前記リザーバと前記空間とを連通し、毛細管現象により前記弾性表面波の伝搬領域に前記液体を供給する液体供給手段と、を備える霧化器と、前記リザーバと前記空間とを連通し、毛細管現象により前記弾性表面波の伝搬領域に前記液体を供給する液体供給手段と、が備えられる霧化装置と、
少なくとも前記高周波発振回路部を含む制御部と、
前記制御部に電力を供給する電源と、
前記霧化装置にて霧化された液体微粒子が流通する流路を有する銜え口部と、
が備えられていることを特徴とする吸引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−104966(P2008−104966A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290821(P2006−290821)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】