霧発生判定システム、霧発生領域監視システム、及び霧制御システム
【課題】簡単な構成で霧の発生領域を監視すること、及び、霧の発生領域をあらかじめ設定した範囲内に抑制することができる、霧発生判定装置、霧発生領域監視装置、及び霧制御装置を提供する。
【解決手段】外気より低温の冷却源の近傍に設けられた第1の温度計と、実質的に該冷却源の影響を受けない地点に設けられた第2の温度計及び湿度計と、1つ以上の計測点を含む計測点群に各々設けられた温度計と、該第1の温度計、該第2の温度計、該湿度計、及び該計測点群に各々設けられた温度計の計測値を用いて霧の発生状態を判定する演算手段と、該演算の結果を出力する手段を備えた霧発生判定装置、該演算結果から霧の発生領域を判定し、表示する霧発生領域監視装置、及び、霧の発生領域に応じて、該冷却源の負荷を変えることによって冷却源近傍の温度を制御し、霧の発生領域の大きさ、又は/及び形状を制御することを特徴とする霧制御装置。
【解決手段】外気より低温の冷却源の近傍に設けられた第1の温度計と、実質的に該冷却源の影響を受けない地点に設けられた第2の温度計及び湿度計と、1つ以上の計測点を含む計測点群に各々設けられた温度計と、該第1の温度計、該第2の温度計、該湿度計、及び該計測点群に各々設けられた温度計の計測値を用いて霧の発生状態を判定する演算手段と、該演算の結果を出力する手段を備えた霧発生判定装置、該演算結果から霧の発生領域を判定し、表示する霧発生領域監視装置、及び、霧の発生領域に応じて、該冷却源の負荷を変えることによって冷却源近傍の温度を制御し、霧の発生領域の大きさ、又は/及び形状を制御することを特徴とする霧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液化ガス気化器のような低温の冷却源によって冷やされた空気中に生じる霧(白煙)の発生領域を監視し、また、霧の発生領域をあらかじめ設定した範囲内に抑制するための装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
LNG(Liquefied Natural Gas:液化天然ガス)、LPG(Liquefied petroleum gas:液化石油ガス)、液体窒素、液体酸素などの低温液化ガスを気化する手段として、一般的に、空温式液化ガス気化器が用いられている。空温式液化ガス気化器は、液化ガスを伝熱管の内部に通過させ、伝熱管を介して液化ガスと外気(空気)とを熱交換させることで、液化ガスを昇温し、気化させる。
【0003】
液化ガス気化器の運転時には、伝熱管が、内部を通過する液化ガスによって冷却されるため、特に液化ガスの導入路側において、伝熱管の表面温度が、外気よりも大幅に低くなる。その結果、伝熱管の周囲の空気が、露点温度以下まで急激に冷却され、冷却された空気中の水分が水滴化して、白煙状の霧が発生する。この霧は、空気よりも重く、地表面に沿って周辺に拡散しやすく、そして、霧が拡散した範囲では、視程が低下し、湿度が上昇する。その結果、例えば、計測器の監視やバルブの操作などに対して、また、ほかの機器の運転に対して、障害となることがある。そのため、霧が、あらかじめ設定した範囲を超えて拡散するのを防止する必要がある。
【0004】
特許文献1では、加熱された空気を吹き出す送風機を備え、液化ガス気化器の下方に加熱された空気を送り、液化ガス気化器の下方の雰囲気を加熱することによって、霧を消去する、あるいは、霧の発生を未然に防止する、白煙防止装置が提案されている。
【0005】
特許文献2では、液化ガス気化器の下方を覆う壁、及び吸引ファンを備え、壁の内側に滞留させた霧を吸引ファンで吸引し大気中に拡散排気する、液化ガス気化装置が提案されている。
【0006】
特許文献3では、液化ガス気化器の外側に遮蔽体を備え、さらに、遮蔽体の外側に誘導気流形成機構を備え、遮蔽体の内側に滞留させた霧を、誘導気流によって大気中に放散する、霧拡散防止構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−165588号公報
【特許文献2】特開2007−205574号公報
【特許文献3】特開2007−285481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の消霧装置は、上記のとおり、発生した霧を確実に消去すること、あるいは、霧の発生を未然に防止することを目的としている。
【0009】
ところで、液化ガス気化器を運転する際の気象条件、あるいは液化ガス気化器を設置する場所の立地条件によっては、液化ガス気化器の周辺の霧を完全に消去する必要がない場合もある。
具体的には、風によって霧が拡散し、自然に消える場合は、ある程度霧が滞留していてもかまわないし、また、液化ガス気化器周辺に人や車の通路がなく、液化ガス化気化器周辺で計測器の監視やバルブの操作などを行うことがなく、液化ガス気化器周辺に霧の影響を受ける装置などがない場合は、その領域には霧が滞留していてもかまわない。
【0010】
しかしながら、従来は、上記のような事情がある場合であっても、霧の発生領域を定量的に把握できないため、常に液化ガス気化器の消霧装置を定格で運転し、その結果、エネルギーを浪費するという問題があった。
【0011】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、簡単な構成で液化ガス気化器周辺に生じた霧の発生領域を監視すること、並びに、霧の発生領域をあらかじめ設定した範囲内に抑制すること、及び、霧の発生領域の形状を制御することにより、風による消霧の割合を増加させ、消霧時のエネルギー消費を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の要旨は以下のとおりである。
【0013】
(1)外気より低温の冷却源の近傍に設けられた第1の温度計と、実質的に該冷却源の影響を受けない地点に設けられた第2の温度計及び湿度計と、1つ以上の計測点を含む計測点群に各々設けられた温度計と、該第1の温度計、該第2の温度計、該湿度計、及び該計測点群に各々設けられた温度計の計測値を用いて計測地点の霧の発生状態を判定する演算手段と、該演算の結果を出力する手段を備えたことを特徴とする、霧発生判定システム。
【0014】
(2)(1)の演算の結果を用いて、霧の発生領域を判定し、該霧の発生領域を表示する表示手段を備えたことを特徴とする、霧発生領域監視システム。
【0015】
(3)外気より低温の冷却源の近傍に設けられた第1の温度計と、実質的に該冷却源の影響を受けない地点に設けられた第2の温度計及び湿度計と、1つ以上の計測点を含む計測点群に各々設けられた温度計と、該第1の温度計、該第2の温度計、該湿度計、及び該計測点群に各々設けられた温度計の計測値を用いて計測地点の霧の発生状態を判定する演算手段とを備え、該演算の結果を用いて霧の発生領域を判定し、霧の発生領域をあらかじめ設定された霧の制御領域と比較し、その結果に応じて、該冷却源の負荷を変えることによって冷却源近傍の温度を制御し、霧の発生領域の大きさ、又は/及び形状を制御することを特徴とする、霧制御システム。
【0016】
(4)さらに、消霧装置を備え、霧の発生領域とあらかじめ設定された霧の制御領域との比較結果に応じて消霧装置、又は/及び前記冷却源の負荷を変えることによって、霧の発生領域の大きさ、又は/及び形状を制御することを特徴とする、(3)に記載の霧制御システム。
【0017】
(5)さらに、霧の発生領域を表示する表示手段を備えたことを特徴とする、(3)又は(4)に記載の霧制御システム。
【0018】
(6)さらに、霧の拡散を防止するための遮蔽体を備えたことを特徴とする、(3)〜(5)のいずれかに記載の霧制御システム。
【0019】
(7)さらに、前記遮蔽体上方に、又は/及び前記遮蔽体側面に沿って送風するための装置を備えたことを特徴とする、(6)に記載の霧制御システム。
【0020】
(8)さらに、前記遮蔽体上方に、又は/及び前記遮蔽体側面に沿って送風するための装置の負荷を、霧の発生領域とあらかじめ設定された霧の制御領域との比較結果に応じて変え、霧の発生領域の大きさ、又は/及び形状を制御すること特徴とする、(7)に記載の霧制御システム。
【0021】
(9)さらに、霧の制御領域の外縁よりも遠方に、1つ以上の送風装置を備え、霧の発生領域とあらかじめ設定された霧の制御領域との比較結果に応じて該送風装置の負荷を変えることによって、霧の発生領域の大きさ、又は/及び形状を制御すること特徴とする、(3)〜(8)のいずれかに記載の霧制御システム。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、例えば液化ガス気化器のような、外気を冷却し霧の発生源となる物の周辺に設けられた温度の計測値から、霧の発生領域を定量的に監視することができ、また、霧の発生領域をあらかじめ設定した範囲内に抑制することができるため、霧の拡散による障害を防止することができ、かつ、消霧装置の不要な運転を避けることがでる。その結果、消霧装置が使用するエネルギーを大幅に節約することができる。したがって、産業上の貢献が極めて顕著である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】液化ガス気化器の概略側面図である。
【図2】液化ガス気化器及び周辺に設置する計測器の位置関係を示す概略図である。
【図3】本発明の実施形態の一例を、湿度図表を用いて説明する図である。
【図4】本発明の実施形態の一例で、外気の湿度が低い場合の例を、湿度図表を用いて説明する図である。
【図5】本発明の実施形態の一例で、風が強い場合の例を、湿度図表を用いて説明する図である。
【図6】本発明の霧発生領域監視システムの実施形態の一例で、計測点群に含まれる計測点が1つである場合を説明する概略図である。
【図7】本発明の霧発生領域監視システムの実施形態の一例で、計測点群に含まれる計測点が複数である場合を説明する概略図である。
【図8】本発明の霧発生領域監視システムの実施形態の一例で、計測点群に含まれる計測点を更に多くした場合を説明する概略図である。
【図9】本発明の霧発生領域監視システム及び霧制御システムに備えることができる、霧の発生領域を示す表示部の概略図である。
【図10】本発明の霧制御システムにおける実施形態で、計測点群に含まれる計測点が1つである場合の、霧発生領域の大きさを制御する一例を説明する概略図である。
【図11】本発明の霧制御システムにおける実施形態で、計測点群に含まれる計測点が4つである場合の、霧発生領域の大きさを制御する一例を説明する概略図である。
【図12】本発明の霧制御システムにおける実施形態で、計測点群に含まれる計測点を更に多くした場合の、霧発生領域の大きさを制御する一例を説明する概略図である。
【図13】本発明の消霧装置を備えた霧制御システムにおける実施形態で、霧発生領域の大きさを制御する一例を説明する概略図である。
【図14】本発明の送風ファンを備えた霧制御システムにおける実施形態で、霧発生領域の形状を制御する一例を説明する概略図である。
【図15】本発明の霧発生領域監視システム及び霧制御システムの実施形態の一例で、液化ガス気化器が複数台ある場合を説明する概略図である。
【図16】本発明の霧制御システムの、構成の一例を示す図である。
【図17】本発明の実施例で用いた、LNG気化設備の概略平面図である。
【図18】本発明の実施例で用いた、LNG気化設備の概略立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の霧発生判定システム、霧発生領域監視システム、及び霧制御システムは、外気より低温の冷却源の近傍に設けられた第1の温度計と、実質的に該冷却源の影響を受けない地点に設けられた第2の温度計及び湿度計と、1つ以上の計測点を含む計測点群地点に設けられた温度計と、該第1の温度計、該第2の温度計、該湿度計、及び該計測点群に各々設けられた温度計の計測値を用いて霧の発生状態を判定するための演算手段と、該演算の結果を出力する手段を備えたことを特徴とする。
【0025】
上記の「外気より低温の冷却源」とは、例えば液化ガス気化器のような、外気と比べて表面温度が低く、霧の発生源となり得るものである。
【0026】
上記の「冷却源の近傍に設けられた第1の温度計」は、冷却源により冷却され、結露が生じている気体の温度を計測し、その結果を上記の「演算手段」に送るものである。
【0027】
上記の「実質的に該冷却源の影響を受けない地点に設けられた第2の温度計及び湿度計」は、冷却源が設置されている場所の、冷却源から発生した冷気の影響を受けない、通常の状態の外気の温度及び湿度を計測し、その結果を上記の「演算手段」に送るものである。
【0028】
上記の「1つ以上の計測点を含む計測点群地点に設けられた温度計」は、例えば、人や車の通路の周辺、設備の周辺など、霧の発生を監視、及び抑制したい場所の温度を計測し、その結果を上記の「演算手段」に送るものである。設置位置、設置台数は、特に制限はしないが、第1の温度計からの距離が、第1の温度計から第2の温度計までの距離より短い位置に設置するのがよい。
【0029】
上記の「演算手段」は、上記の温度及び湿度の計測結果から、霧の発生状態を判定する、例えば電子計算機などのことである。
【0030】
上記「演算の結果を出力する手段」は、例えば、電気信号を用いて演算結果を外部に出力するための機構などのことである。
【0031】
以下、本発明に係る実施形態を、液化ガス気化器を例として、説明する。
【0032】
液化ガス気化器の例を図1に示す。液化ガス気化器1は、液化ガスが通過する、複数の伝熱管2を備えている。伝熱管2は、垂直に等間隔で配置され、上端を上部ヘッダー管5、下端を下部ヘッダー管6で固定され、伝熱管支持体7によって、略水平面上である基準面8(地面あるいは床面)の上方に支持されている。液化ガス気化器1と基準面8の間には、一定の高さを有する下方空間9が形成される。
【0033】
液化ガス気化器1で液化ガスを気化させるためには、液化ガス導入路3から伝熱管2内に、低温状態の液化ガスが導入される。液化ガスが、伝熱管2内を通過する間に、伝熱管2を介して、液化ガスと伝熱管2の外部の空気との間で熱交換が行われる。液化ガスは伝熱管の外部における空気の熱によって昇温され、気化し、ガス導出路4から導出される。
【0034】
伝熱管2の表面、及び伝熱管2の近傍の空気は、液化ガスや気化したガスとの熱交換により冷却される。すると、伝熱管2の近傍の空気は、露点温度以下まで急激に冷却され、中に含まれる水蒸気が結露し、白煙状の霧が発生する。発生した霧、及び冷却された空気(冷気)は、液化ガス気化器の下方空間9に向かって流れ、地表面に沿って拡散する。
【0035】
下部ヘッダー管6の真下の計測点10には、第1の温度計として、伝熱管の近傍の冷気の温度を計測するための温度計が設けられている。
【0036】
さらに、図2に示すように、液化ガス気化器1から離れて、実質的に液化ガス気化器周辺の冷気による影響を受けない外気の温度及び湿度の計測点12に温度計、湿度計が設置されている。そして、計測点群11(Pn、n=1,2)に各々温度計が設置されている。図2の例では、計測点群11は2つの計測点P1及びP2を含むが、計測点群11に含まれる計測点は1つ以上の任意の数にすることができる。
【0037】
図2のように温度計及び湿度計を配置した場合に、計測値から霧の発生状態を判定する方法を、図3に示す湿度図表を用いて説明する。湿度図表の横軸は温度、縦軸は絶対湿度を表している。
【0038】
液化ガス気化器1の運転中に伝熱管2の周辺から沈降してくる空気は、伝熱管2の液化ガスとの熱交換によって冷却され、結露した状態にあるので、下部ヘッダー管6の真下の計測点10で計測される温度Taは、湿度図表における飽和曲線21上にある(図3の点A)。次に、実質的に液化ガス気化器周辺の冷気による影響を受けない計測点12で計測される温度Tb、計測される相対湿度φより求められる絶対湿度Hbの点を湿度図表上に描く(図3の点B)。この点は外気の温度、湿度を表している。
【0039】
液化ガス気化器1から発生する冷気は、温度Tb、絶対湿度Hbの外気と混合され、混合された気体は中の水蒸気量は、冷気、外気に含まれる水蒸気量とそれぞれの気体の比率から求められる。霧の発生状態は、湿度図表上に線分ABを引き、次のように求めることができる。
【0040】
線分ABと飽和曲線21上が交わる点Cの温度Tcが、計測された環境における露点温度であり、液化ガス気化器からの冷気によって、周囲の外気が冷却され霧が発生する温度である。
P1の温度をT1、P2の温度をT2とすると、冷気と外気が混合された気体は、温度がT1のように、ΔT1=T1−Tc<0であれば、結露して霧が発生した状態にあり、温度がT2のようにΔT2=T2−Tc>0であれば、結露せず霧は発生していない状態にあると判定される。
【0041】
液化ガス気化器からの冷気と大気の混合時における露点Tcの算出について説明する。
【0042】
下部ヘッダー管6の真下の計測点10で計測された絶対温度をTa[K]、温度Taにおける飽和水蒸気分圧Psa[kg/kg−dryair]、外気の全圧P[kPa](=101.3[kPa])、下部ヘッダー管6の真下における絶対湿度Ha[kg/kg−dryair]とすると、
Ha=(18/29){Psa/(P−Psa)}
の関係がある。
【0043】
水蒸気の飽和水蒸気分圧Ps[kPa]は、湿度図表上の飽和曲線として、温度T[K]のみの関数として表すことができるので、
Ps=f(T)
で表されるものとすれば、
Ha=(18/29){f(Ta)/(P−f(Ta))
と表せる。
【0044】
実質的に液化ガス気化器周辺の冷気による影響を受けない計測点12に設置された温度計で計測された絶対温度をTb[K]、計測点12に設置された湿度計で計測された相対湿度をφ[%]、温度Tbにおける飽和水蒸気分圧Psb[kg/kg−dryair]、計測点12における水蒸気分圧をPb[kPa]、計測点12おける絶対湿度Hb[kg/kg−dryair]とすると、
Pb=φ・Psb/100
Hb=(18/29){Pb/(P−Pb)}
の関係があるので、計測点12おける絶対湿度Hbは
Hb=(18/29)[(φ・f(Tb)/100)/{P−(φ・f(Tb)/100)}]
で計算される。
【0045】
湿度図表の2点(Ta,Ha)と(Tb,Hb)を結ぶ直線
H=g(T)
と、Ps=f(T)を、T>Taの範囲で連立させて解くことにより解が求まり、露点温度Tcを求めることができる。
【0046】
求められた露点温度Tcと、計測点群11に含まれる計測点で計測された温度Tnとを比較し、
ΔTn=Tn−Tc<0であれば、冷気により霧が発生した状態にあり、
ΔTn=Tn−Tc>0であれば、消霧されている状態にある
と判定する。
【0047】
上記の霧の発生状態の判定方法は、気象条件などによらず、同一の湿度図表を用いて、同一の判定方法を用いることができる。霧の発生状態の判定結果は、計測点群11に含まれる同じ地点における温度の計測値が同じであった場合でも、あるいは、液化ガス気化器運転状態が同じであった場合でも、気象条件などによって変わり得る。
【0048】
具体例として、図3の例と、液化ガス気化器の運転条件、計測点10の位置、計測点10で計測された温度、計測点12の位置、及び計測点12における温度、計測点群11の位置、及び各計測点における温度が同じで、計測点12における湿度が図3の例に比べて低い場合について、図4を用いて説明する。
【0049】
外気の湿度が低いので、外気の温度及び湿度を表す点は、図3の点Bと比べ湿度図表上では下方へ移る(図4の点B)。その結果、線分ABの傾きが小さくなり、線分ABと飽和曲線との交点で表される露点温度も低くなるので、計測点群11での温度が同一であっても、霧の発生条件は異なってくる。
【0050】
図4の例では、P1の温度T1、P2の温度T2は図3の場合と同じであるが、露点温度Tcが図3と比べ低くなっているため、T1、T2ともTcより高くなっている。その結果、P1、P2では、共に、霧は発生していないと判定される。
【0051】
次に、図3の例と、液化ガス気化器の運転条件、計測点10の位置、計測点10で計測された温度、計測点12の位置、計測点12における温度及び湿度、計測点群11の位置が同じで、図3の場合と比べて風が強い場合について、図5を用いて説明する。
【0052】
風の強い場合には、風が弱い場合と比べると、液化ガス気化器近傍で発生した冷気は、拡散しやすくなり、外気と混合されやすくなる。その結果、計測点群11の各計測点で、冷気が空気中に占める割合は小さくなるため、風が弱い日と比べると、計測点群11で計測される温度は高くなる。
【0053】
図5では、P1、P2の位置は図3と同じであるが、風の影響で冷気が拡散され計測された温度が上っている。露点温度Tcは図3の場合と同じであるが、T1、T2ともTcより高くなっており、P1点、P2点では、共に、霧は発生していないと判定される。
【0054】
上記のように、本発明では、気象条件が異なる場合であっても、液化ガス気化器1の下部ヘッダー管6の真下の計測点10の温度を計測する温度計と、実質的に液化ガス気化器周辺の冷気による影響を受けない計測点12の温度及び湿度を計測する温度計及び湿度計と、計測点群11の計測結果を、同じ湿度図表上に適用することによって、霧の発生状態を、同じ判定方法で判定することができる。
【0055】
次に、霧の発生領域の判定について説明する。
【0056】
計測点群11が1つの計測点からなる場合の例を図6に示す。図6では、計測点P1の温度T1が露点温度Tc以上であれば、霧はおおむね気化器を中心としてP1を通る円の内側の領域のみで発生していると判定でき、P1の温度T1がTc以下であれば、霧は気化器を中心としてP1を通る円を超えて広がっていると判定できる。
【0057】
霧の発生領域の外縁、すなわち、霧が発生している領域と、消霧されている領域の境界は、温度がTcである地点を結んだ線として表すことができる。
図6の円31は、P1の温度T1がTc以上の場合の、推定される霧の発生領域(以下、単に、霧の発生領域とする)の外縁である。円31の半径は、T1、計測点10で計測された温度Ta、及び露点温度Tcから推定することができる。
【0058】
計測点群11が複数の計測点を含む場合の例を図7に示す。図7では、計測点群11に4つの計測点が含まれている。計測点P1、P2、P3、P4のそれぞれの温度、T1、T2、T3、T4と露点温度Tcとを各々比較することで、霧の発生領域のおおよその外縁を推定することができる。図5は、T1がTc以下であり、T2、T3、T4がTc以上である場合の、霧の発生領域の外縁31を示したものである。
【0059】
計測点群11が更に多くの計測点を含む場合の概略を図8に示す。図8場合、霧の発生領域の外縁31は、計測点群11に含まれる計測点Pn(n=1,2,3,4,…)で計測された温度Tn(n=1,2,3,4,…)がTc以下となる領域41と、TnがTc以上となる領域42の間にあることになる。
領域41と領域42の、それぞれの領域の境界線上にある計測点を直線で結び、2つの計測点における計測温度から露点温度となる位置を推定することで、更に正確に霧の発生領域の外縁を推定することができる。
【0060】
本発明の霧発生監視装置及び霧制御システムは、霧の発生領域を表示するための表示手段を備えることもできる。図9に表示部51に表示された霧の発生領域の例を示す。霧の発生領域を表示することによって、作業者などが霧の発生状態を確認でき、必要に応じた作業を行うことが可能となる。
【0061】
次に、本発明の霧制御システムによる霧の発生領域の制御について、説明する。
本発明の霧制御システムは、上記のように判定された霧の発生領域を、あらかじめ設定された霧の制御領域と比較し、その結果に応じて、該冷却源の負荷を変えることによって冷却源近傍の温度を制御し、霧の発生領域の大きさ、又は/及び形状を制御することを特徴とする。
【0062】
ここで、霧の制御領域とは、霧の発生が許容されている領域を示す。よって、霧の発生領域の制御は、霧の制御領域内には霧が滞留していてもかまわないが、霧の制御領域外は消霧されている状態となるように行う。
【0063】
霧の制御領域は、霧の発生が許容されている領域であり、外気より低温の冷却源は、必然的に、霧の制御領域内に含まれる。
霧の制御領域の外側は、霧の発生が許容されない領域である。霧の制御領域を設定する場合、本発明では、計測点群に含まれる計測点のうち、少なくとも1つの計測点は、霧の制御領域の外側に設けられる必要がある。消霧する必要がある領域は、霧の制御領域の外側であり、霧の制御領域の外側が消霧されているか否かを判定するために、霧の制御領域の外側の計測点の温度の計測値が必要となるためである。
【0064】
図10は、本発明の霧制御システムを用いて、霧の発生領域の大きさを制御する場合の実施形態の一例の概要であり。計測点群に含まれる計測点が1つである場合の例を示している。霧が液化ガス気化器を中心に、ほぼ同心円状に広がることが仮定できる場合は、計測点群に含まれる計測点が1つであっても、霧の制御は可能である。
【0065】
図11は、本発明の霧制御システムを用いて、霧の発生領域の大きさを制御する場合の実施形態の一例の概要であり。計測点群に含まれる計測点が4つである場合の例を示している。この例では、霧の制御領域の外側に3つ、霧の制御領域内に1つの計測点がある。計測点が1つの場合と比べると、霧の制御をより正確に行うことができ、また、霧の制御領域に異方性をもたせることもできる。
【0066】
図12を用いて、本発明の霧制御システムを用いて、霧の発生領域の大きさを制御する場合の実施形態について、より詳しく説明する。
多角形61は、霧の制御領域である。霧の制御領域とは、霧の滞留が許されている領域の外縁であり、霧の制御は、多角形61の内側には霧が滞留していてもかまわないが、多角形61の外側は消霧された状態となるように行う。
【0067】
霧の制御領域は、風などの気象条件、設備の配置などの立地条件により、適宜設定することができる。
また、霧の制御領域を設定した場合は、霧の制御領域の外縁上、あるいは、霧の制御領域の近傍で、霧の制御領域の外側に、複数の計測点を含むようにするのが好ましい。
【0068】
図12に示す計測点群11のうち、霧の制御領域61の近傍で、霧の制御領域の外側の計測点Pn(n=1,2,3,4,…)における計測温度Tn(n=1,2,3,4,…)について、すべてのTnとTcとを比較する。そして、TnがTc以下の地点があれば、液化ガス気化器1の負荷を下げることで、霧の発生領域31の外縁を狭めて、すべてのTnが、Tn>Tcとなるように制御する。
【0069】
すべてのTnが、Tn>Tcであれば、Tn≦Tcとならない範囲で、液化ガス気化器1の負荷を上げ、その結果、霧の発生量が増え、霧の発生領域31の外縁が広がるような制御をしてもかまわない。
【0070】
もちろん、ある程度のマージンをとり、Tn<Tc+t(tはあらかじめ定めた正の数)であれば液化ガス気化器1の負荷を下げ、Tn>Tc+tであれば液化ガス気化器1の負荷を上げる、という運用も可能である。
【0071】
液化ガス気化器の使用方法が、ガスの発生量が一時的に低下しても問題にならないようなものである場合は、上記のような制御が可能である。
【0072】
本発明の霧制御システムには、消霧装置を備えることもできる。消霧装置としては、加熱装置の熱風を霧に吹き付けて霧を蒸発させる形式の消霧装置、霧を吸引して加熱・乾燥した後に大気に還流する形式の消霧装置、特定波長の遠赤外線を霧に照射して霧を消失させる形式の消霧装置など、公知の装置が使用できる。
【0073】
消霧装置は、例えば、液化ガス気化器の近傍に設置することもできるし、霧の発生を制御したい、他の場所に設置することもできる。霧の制御領域外に設置してもよい。また、複数台の消霧装置を設置してもかまわない。さらに、消霧装置を備える場合には、消霧装置負荷を変更させるインバータなどの機器を組み込むことができる。
【0074】
消霧装置を備える場合の本発明の実施形態の例を、図13に示す。この例では液化ガス気化器1に隣接して消霧装置13が備えられている。
【0075】
図13に示す計測点群11のうち、霧の制御領域61の外縁上の計測点Pn(n=1,2,3,4,…)における計測温度Tn(n=1,2,3,4,…)について、すべてのTnとTcとを比較する。そして、TnがTc+t(tはあらかじめ定めた0以上の数)以下の地点があれば、消霧装置13の負荷を上げる、又は/及び液化ガス気化器1の負荷を下げることで、霧の発生領域31の外縁を狭めて、すべてのTnが、Tn>Tc+tとなるように制御する。
【0076】
すべてのTnが、Tn>Tc+tであれば、Tn≦Tc+tとならない範囲で、消霧装置13の負荷を下げ、又は/及び液化ガス気化器1の負荷を上げ、その結果、霧の発生量が増え、霧の発生領域31の外縁が広がるような制御をしてもかまわない。
【0077】
液化ガス気化器が連続して一定量のガス供給する必要がある場合には、消霧装置を備えるのが有効である。
【0078】
もちろん、本発明は、消霧装置を備えた場合に、消霧装置を常に定格で運転し、液化ガス気化器の負荷のみを制御することを妨げるものではない。
【0079】
また、各装置の負荷の制御は上記で説明したもののほか、例えばPID制御など、他の公知の制御方法も使用できることは言うまでもない。
【0080】
また、本発明の霧制御システムは、霧の拡散を防止するための遮蔽体を備えることができる。遮蔽体には、金属板、コンクリート板などを用いることも可能であるし、布、ビニールなどを鋼管などによって形成された支持枠によって支持することにより形成してもよい。
【0081】
遮蔽体を備えることで、遮蔽体近傍での、液化ガス気化器周辺から発生した冷気と外気との熱交換の効率を上げることができるので、その結果、消霧効果を上げることができ、エネルギー消費を更に抑制することができる。
【0082】
遮蔽体の好ましい設置位置は、液化ガス気化器の仕様によっても異なるので、特に制限はしないが、液化ガス気化器に近すぎると冷気を十分に遮蔽することができず、遮蔽体から冷気があふれ出し、液化ガス気化器から遠すぎると、遮蔽体より手前で冷気が拡散してしまい、遮蔽体の効果が低くなるので、液化ガス気化器から0.5m〜5m程度、好ましくは2〜4m程度の箇所に設置するのがよい。
【0083】
遮蔽体の好ましい高さは、液化ガス気化器の仕様によっても異なるので、特に制限はしないが、下部ヘッダー管の高さから±1m程度、好ましくは±0.5m程度とするのが、熱交換の効率の見地から好ましい。
【0084】
また、遮蔽体は冷気と外気との熱交換を目的とするものであるから、霧の制御領域内、あるいは霧の制御領域の外縁上に設置されていることが必要である。だたし、霧の制御領域は、上述のとおり、風などの気象条件、設備の配置などの立地条件により、適宜設定することができるものであり、その形状は変化し得るものであるので、遮蔽体は、常に霧の制御領域内、あるいは霧の制御領域の外縁上にあることが必要なわけではない。霧の制御領域内、あるいは霧の制御領域の外縁上に設置されている状態となることがあれば、そのときは、遮蔽体を設置した目的を達成できるからである。
【0085】
遮蔽体は、液化ガス気化器を囲むように設置するのが好ましいが、4面すべてを囲わずに、1面のみ、2面のみの設置などでもかまわない。また、二重、三重に設置してもかまわない。
【0086】
また、上記の消霧装置を、遮蔽体で囲われた内側に設置してもよいし、外側に設置してもよい。
【0087】
遮蔽体には、遮蔽体の上方に、又は/及び側面に沿って送風するための、例えば送風ファンのような装置を備えることもできる。送風するための装置は、上記の液化ガス気化器、消霧装置と同様に、霧の発生状態に応じて制御することもできる。
【0088】
さらに、本発明の霧制御システムは、霧の制御領域の外縁よりも遠方に1つ以上の、例えば送風ファンのような送風装置を備え、霧の発生領域に応じて、送風装置を運転させることもできる。
【0089】
図14は、送風ファンを備えた本発明の霧制御システムを用いて、霧の発生領域の形状を制御する場合の実施形態の概要を示している。
図14に示す計測点群11のうち、霧の制御領域61の外周上の計測点Pn(n=1,2,3,4,…)における計測温度Tn(n=1,2,3,4,…)について、すべてのTnとTcとを比較する。そして、TnがTc+t(tはあらかじめ定めた0以上の数)以下の地点があれば、送風ファン14の負荷を上げることで、霧の発生領域31の外縁を狭めて、すべてのTnが、Tn>Tc+tとなるように制御する。
【0090】
すべてのTnが、Tn>Tc+tであれば、Tn≦Tc+tとならない範囲で、送風ファン14の負荷を下げ、その結果、霧の発生量が増え、霧の発生領域31の外縁が広がるような制御をしてもかまわない。
【0091】
このようにして、送風ファン14を、霧の発生領域31が、霧の制御領域61の領域内となるように制御することにより、霧の発生領域31を一定範囲にとどめることができる。
また、霧の制御領域61の形状を、風による拡散効果が高くなる形状とすることによって、風による霧の拡散効果を高め、消霧装置のエネルギー消費を抑制することができる。
【0092】
本発明では、送風装置は、霧の制御領域の外縁よりも遠方に備えられることが必要である。ただし、霧の制御領域は、上述のとおり、風などの気象条件、設備の配置などの立地条件により、適宜設定することができるものであり、その形状は変化し得るものであるので、送風装置は、常に霧の制御領域の外縁よりも遠方にある必要はない。送風装置が、あらかじめ設定された霧の制御領域の外縁よりも遠方に備えられている状態となることがあれば、そのときは、上記の目的を達成することができるからである。
【0093】
ただし、送風装置の好ましい設定位置は、限定はしないが、図14のように、計測点群の外縁よりも外側である。計測点群の外縁より外側に設置された送風装置は、常に霧の制御領域外にあることになるためである。
【0094】
液化ガス気化器が複数基並べて配置されているような場合でも、本発明の霧発生領域監視システム及び霧制御システムを使用することができる。図15に、液化ガス気化器が複数基の場合の概略を示す。
【0095】
液化ガス気化器1が複数基ある場合、液化ガス気化器1の下部ヘッダー管の真下の温度を計測する温度計は、各液化ガス気化器の運転条件が同じであれば、1基の液化ガス気化器にのみ設置し、霧の発生領域31を一括して監視、制御してもよいし、すべての液化ガス気化器に温度計を設置し、計測された温度を用いて、霧の発生領域31を監視、制御してもよい。
【0096】
各液化ガス気化器の運転条件が異なる場合は、例えば、それぞれの液化ガス気化器の下部ヘッダー管の真下で温度を計測し、計測された最も低い温度を代表値として用い、霧の発生領域31を求めてもよい。
【0097】
図16は、上記の実施形態における、処理の一例の概略を示したものである。露点温度、霧の発生領域は、上記のとおり、計測された温度及び湿度から、湿り温度線図を用いて容易に求めることができる。液化ガス気化器、消霧装置、送風ファンの運転条件は、各々の装置の特性や、立地条件から、霧の発生領域に応じた運転条件をあらかじめ定めておき、計測された霧の発生状態と比較し、各々の運転条件が決定される。
【0098】
本発明の霧発生領域監視システム及び霧制御システムは、計測点群11の各々の計測点の温度を計測することにより霧の発生状態を判定する。すなわち、特定の立地条件における霧の発生領域を正確に判定するために計測点を増やす場合であっても、計測器としては比較的安価な温度計を増設するだけで、種々の立地条件に対応することが可能である。
【実施例】
【0099】
本発明の実施例について説明する。
【0100】
2基の空温式LNG気化器を備えたLNG気化設備において、LNGの気化を行った。LNG気化設備の概略平面図を図17に、概略立面図を図18に示す。図17は、右側が北、下側が東となるように描かれている。
【0101】
気化能力1.5ton/h、縦2.4m×横2.7m、高さ8mの、2基の空温式LNG気化器1a、1bを、中心間距離で東西に8.8m離して設置した。空温式LNG気化器1a、1bの周囲4面は、南北5m、東西14.5m、高さ2mの遮蔽体16aで囲い、遮蔽体16aの内側には、遮蔽体16a内の冷気を排気する、排気能力800m3/minの排気ファン13aを設置した。
【0102】
空温式LNG気化器、1a、1bの下部ヘッダー管は、地表面から1.8mの位置に設置し、排気ファン13aは、プロペラ部下端が地表面から1.8mの位置になるように設置した。
【0103】
遮蔽体16aの南面は、遮蔽体16aから外側に0.8m離れた位置に、東西14.5m、高さ1.5mの遮蔽体16bを設け二重壁とし、さらに、遮蔽体16a、16bの間の領域に外気を送風できるように、排気能力200m3/minの、2基のポータブルファン15a、15bを備えた設備で、LNGの気化を行った。
【0104】
LNG気化設備には、霧の発生状況を監視するために、空温式LNG気化器周辺の16か所の計測点群(図17のPN1、PN2、PS1、PS2、…)に温度計、2基の空温式LNG気化器1a、1bの直下(図17のPVa、PVb)に温度計、並びに気化器から離れた位置(図17のPN4)での外気の温度及び湿度を計測する温度計及び湿度計を設置した。
【0105】
表1に、2基の空温式LNG気化器1a、1bの中心地点(図17のO)の地表面を原点とした、各装置、遮蔽体、温度計及び湿度計の位置を示す。座標は(南北位置,東西位置,高さ)を示しており、正負の向きは、図17のO付近に示した矢印のとおりである。
【0106】
本実施例では、遮蔽体16aの内側、遮蔽体16a、16bの間、及び、遮蔽体16aの西側面よりも西は、霧の滞留が許容されている。その他の領域は霧の滞留が許容されていない。すなわち、図17に示した霧の制御領域61を表す破線よりも西側(図の上側)は霧の滞留が許容されており、東側(図の下側)は霧の滞留が許容されていない。
【0107】
【表1】
【0108】
ところで、LNG気化器を同様に運転させた場合であっても、環境条件によって霧の発生状況は異なる。具体的には、湿度が低い場合は、湿度が高い場合に比べ、霧は発生しにくい。また、風が強い場合は、風が弱い場合に比べ、霧は発生しにくい。
【0109】
表2に、本実施例の設備において、環境条件(湿度、風速)が異なる条件で、排気ファンを13a動作させた場合、及び、排気ファン13aを動作させなかった場合の霧の発生状況を示す。なお、空温式LNG気化器1a、1bは、共に、1.5ton/hで動作させ、2台のポータブルファン15a、15bを定格で運転させた。
【0110】
霧の発生領域は、本実施例における露点温度Tcと、計測点群の各計測点における温度Tnとの差、ΔTn=Tn−Tcで判定される。露点温度Tcを求める際に用いる空温式LNG気化器の直下の温度には、PVa、PVbで計測された温度の平均値を使用した。
【0111】
例1、例2は、環境条件が良い(湿度が低く、風が強い)場合の例である。排気ファン13aを運転させた例1では、霧の滞留が許容されていない領域(表中に*で示した)では、すべてΔTn>0であり、目視でも消霧されていることが確認できた。排気ファン13aを運転させなかった例2でも、霧の滞留が許容されていない領域では、すべてΔTn>0であり、目視でも消霧されていること確認できた。したがって、この環境条件の下では、排気ファン13aの運転は必要ないことが分かる。
【0112】
例3、例4は、環境条件が悪い(湿度が高く、風が弱い)場合の例である。排気ファン13aを運転させた例3では、霧の滞留が許容されていない領域(表中に*で示した)では、すべてΔTn>0であり、目視でも消霧されていることが確認できた。排気ファン13aを運転させなかった例4では、霧の滞留が許容されていない領域で、すべてΔTn<0となり、目視でも霧が発生していることが確認できた。したがって、この環境条件の下では、排気ファン13aの運転が必要であることが分かる。
【0113】
【表2】
【0114】
本システムによれば、各計測点における温度の測定値から霧の発生領域が定量的に把握できるので、すべての霧の滞留が許容されていない領域でΔTn>0となり排気ファン13aの運転が必要ないと判断できれば、排気ファン13aの運転を自動的に停止することができる。
【0115】
すなわち、表2の例2のように、環境条件が良く、排気ファン13aの運転を止めても霧の滞留が許容されていない領域が消霧できる場合には、排気ファン13aの運転を停止することによって、排気ファン13aの動力費を低減することができる。
【0116】
一方、本システムを用いない場合には、霧の発生を定量的に把握することはできない。そのため、例えば表2中の例2のように、環境条件が良く排気ファン13aを運転させなくてもよい場合でも排気ファン13aを運転させざるを得ないか、又は、霧の発生を監視し、排気ファン13aの動作を切り替える作業者が必要となる。
【0117】
以上説明したように、本発明のシステムを用いることにより、霧の発生状況を定量的に把握できるので、本実施例においては、環境条件が悪く霧が発生しやすいときには、自動的に排気ファン13aを運転し、環境条件が良く霧が発生しにくいときには、自動的に排気ファン13aの運転を停止することができる。そのため、排気ファン13aの動力費、及び、霧の発生状況監視のための人件費を低減することが可能となる。
【0118】
また、例えば、特定の領域について、昼間の霧の滞留は許容するが、夜間の霧の滞留は許容しない等の運用も可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明によれば、例えばLNG、LPG、液体窒素、液体酸素などの液化ガスを蒸発させる液化ガス気化器において発生する霧を監視し、また、霧の発生領域を制御する、エネルギー消費を抑制した霧発生領域監視システム及び霧制御システムを提供することができる。
【0120】
なお、液化ガス気化器において発生する霧の監視、制御について実施例を用いて説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、外気を冷却することで霧の発生源となるものから発生する霧に対しては、液化ガス気化器の場合と同様に、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0121】
1、1a、1b 液化ガス気化器
2 伝熱管
3 液化ガス導入路
4 ガス導出路
5 上部ヘッダー管
6 下部ヘッダー管
7 伝熱管支持体
8 基準面
9 下方空間
10 伝熱管の近傍の冷気の温度を計測するための計測点
11 計測点群(Pn、n=1,2,3,4,…)
12 外気の温度及び湿度の計測点するための計測点
13 消霧装置
13a 排気ファン(消霧装置)
14 送風ファン
15a、15b ポータブルファン
16a、16b 遮蔽体
21 飽和曲線
31 温度及び湿度の計測値から推定された霧の発生領域の外縁
41 計測点の温度Tn<露点温度Tcである領域
42 計測点の温度Tn>露点温度Tcである領域
51 霧の発生領域が表示された表示部の例
61 霧の制御領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液化ガス気化器のような低温の冷却源によって冷やされた空気中に生じる霧(白煙)の発生領域を監視し、また、霧の発生領域をあらかじめ設定した範囲内に抑制するための装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
LNG(Liquefied Natural Gas:液化天然ガス)、LPG(Liquefied petroleum gas:液化石油ガス)、液体窒素、液体酸素などの低温液化ガスを気化する手段として、一般的に、空温式液化ガス気化器が用いられている。空温式液化ガス気化器は、液化ガスを伝熱管の内部に通過させ、伝熱管を介して液化ガスと外気(空気)とを熱交換させることで、液化ガスを昇温し、気化させる。
【0003】
液化ガス気化器の運転時には、伝熱管が、内部を通過する液化ガスによって冷却されるため、特に液化ガスの導入路側において、伝熱管の表面温度が、外気よりも大幅に低くなる。その結果、伝熱管の周囲の空気が、露点温度以下まで急激に冷却され、冷却された空気中の水分が水滴化して、白煙状の霧が発生する。この霧は、空気よりも重く、地表面に沿って周辺に拡散しやすく、そして、霧が拡散した範囲では、視程が低下し、湿度が上昇する。その結果、例えば、計測器の監視やバルブの操作などに対して、また、ほかの機器の運転に対して、障害となることがある。そのため、霧が、あらかじめ設定した範囲を超えて拡散するのを防止する必要がある。
【0004】
特許文献1では、加熱された空気を吹き出す送風機を備え、液化ガス気化器の下方に加熱された空気を送り、液化ガス気化器の下方の雰囲気を加熱することによって、霧を消去する、あるいは、霧の発生を未然に防止する、白煙防止装置が提案されている。
【0005】
特許文献2では、液化ガス気化器の下方を覆う壁、及び吸引ファンを備え、壁の内側に滞留させた霧を吸引ファンで吸引し大気中に拡散排気する、液化ガス気化装置が提案されている。
【0006】
特許文献3では、液化ガス気化器の外側に遮蔽体を備え、さらに、遮蔽体の外側に誘導気流形成機構を備え、遮蔽体の内側に滞留させた霧を、誘導気流によって大気中に放散する、霧拡散防止構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−165588号公報
【特許文献2】特開2007−205574号公報
【特許文献3】特開2007−285481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の消霧装置は、上記のとおり、発生した霧を確実に消去すること、あるいは、霧の発生を未然に防止することを目的としている。
【0009】
ところで、液化ガス気化器を運転する際の気象条件、あるいは液化ガス気化器を設置する場所の立地条件によっては、液化ガス気化器の周辺の霧を完全に消去する必要がない場合もある。
具体的には、風によって霧が拡散し、自然に消える場合は、ある程度霧が滞留していてもかまわないし、また、液化ガス気化器周辺に人や車の通路がなく、液化ガス化気化器周辺で計測器の監視やバルブの操作などを行うことがなく、液化ガス気化器周辺に霧の影響を受ける装置などがない場合は、その領域には霧が滞留していてもかまわない。
【0010】
しかしながら、従来は、上記のような事情がある場合であっても、霧の発生領域を定量的に把握できないため、常に液化ガス気化器の消霧装置を定格で運転し、その結果、エネルギーを浪費するという問題があった。
【0011】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、簡単な構成で液化ガス気化器周辺に生じた霧の発生領域を監視すること、並びに、霧の発生領域をあらかじめ設定した範囲内に抑制すること、及び、霧の発生領域の形状を制御することにより、風による消霧の割合を増加させ、消霧時のエネルギー消費を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の要旨は以下のとおりである。
【0013】
(1)外気より低温の冷却源の近傍に設けられた第1の温度計と、実質的に該冷却源の影響を受けない地点に設けられた第2の温度計及び湿度計と、1つ以上の計測点を含む計測点群に各々設けられた温度計と、該第1の温度計、該第2の温度計、該湿度計、及び該計測点群に各々設けられた温度計の計測値を用いて計測地点の霧の発生状態を判定する演算手段と、該演算の結果を出力する手段を備えたことを特徴とする、霧発生判定システム。
【0014】
(2)(1)の演算の結果を用いて、霧の発生領域を判定し、該霧の発生領域を表示する表示手段を備えたことを特徴とする、霧発生領域監視システム。
【0015】
(3)外気より低温の冷却源の近傍に設けられた第1の温度計と、実質的に該冷却源の影響を受けない地点に設けられた第2の温度計及び湿度計と、1つ以上の計測点を含む計測点群に各々設けられた温度計と、該第1の温度計、該第2の温度計、該湿度計、及び該計測点群に各々設けられた温度計の計測値を用いて計測地点の霧の発生状態を判定する演算手段とを備え、該演算の結果を用いて霧の発生領域を判定し、霧の発生領域をあらかじめ設定された霧の制御領域と比較し、その結果に応じて、該冷却源の負荷を変えることによって冷却源近傍の温度を制御し、霧の発生領域の大きさ、又は/及び形状を制御することを特徴とする、霧制御システム。
【0016】
(4)さらに、消霧装置を備え、霧の発生領域とあらかじめ設定された霧の制御領域との比較結果に応じて消霧装置、又は/及び前記冷却源の負荷を変えることによって、霧の発生領域の大きさ、又は/及び形状を制御することを特徴とする、(3)に記載の霧制御システム。
【0017】
(5)さらに、霧の発生領域を表示する表示手段を備えたことを特徴とする、(3)又は(4)に記載の霧制御システム。
【0018】
(6)さらに、霧の拡散を防止するための遮蔽体を備えたことを特徴とする、(3)〜(5)のいずれかに記載の霧制御システム。
【0019】
(7)さらに、前記遮蔽体上方に、又は/及び前記遮蔽体側面に沿って送風するための装置を備えたことを特徴とする、(6)に記載の霧制御システム。
【0020】
(8)さらに、前記遮蔽体上方に、又は/及び前記遮蔽体側面に沿って送風するための装置の負荷を、霧の発生領域とあらかじめ設定された霧の制御領域との比較結果に応じて変え、霧の発生領域の大きさ、又は/及び形状を制御すること特徴とする、(7)に記載の霧制御システム。
【0021】
(9)さらに、霧の制御領域の外縁よりも遠方に、1つ以上の送風装置を備え、霧の発生領域とあらかじめ設定された霧の制御領域との比較結果に応じて該送風装置の負荷を変えることによって、霧の発生領域の大きさ、又は/及び形状を制御すること特徴とする、(3)〜(8)のいずれかに記載の霧制御システム。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、例えば液化ガス気化器のような、外気を冷却し霧の発生源となる物の周辺に設けられた温度の計測値から、霧の発生領域を定量的に監視することができ、また、霧の発生領域をあらかじめ設定した範囲内に抑制することができるため、霧の拡散による障害を防止することができ、かつ、消霧装置の不要な運転を避けることがでる。その結果、消霧装置が使用するエネルギーを大幅に節約することができる。したがって、産業上の貢献が極めて顕著である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】液化ガス気化器の概略側面図である。
【図2】液化ガス気化器及び周辺に設置する計測器の位置関係を示す概略図である。
【図3】本発明の実施形態の一例を、湿度図表を用いて説明する図である。
【図4】本発明の実施形態の一例で、外気の湿度が低い場合の例を、湿度図表を用いて説明する図である。
【図5】本発明の実施形態の一例で、風が強い場合の例を、湿度図表を用いて説明する図である。
【図6】本発明の霧発生領域監視システムの実施形態の一例で、計測点群に含まれる計測点が1つである場合を説明する概略図である。
【図7】本発明の霧発生領域監視システムの実施形態の一例で、計測点群に含まれる計測点が複数である場合を説明する概略図である。
【図8】本発明の霧発生領域監視システムの実施形態の一例で、計測点群に含まれる計測点を更に多くした場合を説明する概略図である。
【図9】本発明の霧発生領域監視システム及び霧制御システムに備えることができる、霧の発生領域を示す表示部の概略図である。
【図10】本発明の霧制御システムにおける実施形態で、計測点群に含まれる計測点が1つである場合の、霧発生領域の大きさを制御する一例を説明する概略図である。
【図11】本発明の霧制御システムにおける実施形態で、計測点群に含まれる計測点が4つである場合の、霧発生領域の大きさを制御する一例を説明する概略図である。
【図12】本発明の霧制御システムにおける実施形態で、計測点群に含まれる計測点を更に多くした場合の、霧発生領域の大きさを制御する一例を説明する概略図である。
【図13】本発明の消霧装置を備えた霧制御システムにおける実施形態で、霧発生領域の大きさを制御する一例を説明する概略図である。
【図14】本発明の送風ファンを備えた霧制御システムにおける実施形態で、霧発生領域の形状を制御する一例を説明する概略図である。
【図15】本発明の霧発生領域監視システム及び霧制御システムの実施形態の一例で、液化ガス気化器が複数台ある場合を説明する概略図である。
【図16】本発明の霧制御システムの、構成の一例を示す図である。
【図17】本発明の実施例で用いた、LNG気化設備の概略平面図である。
【図18】本発明の実施例で用いた、LNG気化設備の概略立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の霧発生判定システム、霧発生領域監視システム、及び霧制御システムは、外気より低温の冷却源の近傍に設けられた第1の温度計と、実質的に該冷却源の影響を受けない地点に設けられた第2の温度計及び湿度計と、1つ以上の計測点を含む計測点群地点に設けられた温度計と、該第1の温度計、該第2の温度計、該湿度計、及び該計測点群に各々設けられた温度計の計測値を用いて霧の発生状態を判定するための演算手段と、該演算の結果を出力する手段を備えたことを特徴とする。
【0025】
上記の「外気より低温の冷却源」とは、例えば液化ガス気化器のような、外気と比べて表面温度が低く、霧の発生源となり得るものである。
【0026】
上記の「冷却源の近傍に設けられた第1の温度計」は、冷却源により冷却され、結露が生じている気体の温度を計測し、その結果を上記の「演算手段」に送るものである。
【0027】
上記の「実質的に該冷却源の影響を受けない地点に設けられた第2の温度計及び湿度計」は、冷却源が設置されている場所の、冷却源から発生した冷気の影響を受けない、通常の状態の外気の温度及び湿度を計測し、その結果を上記の「演算手段」に送るものである。
【0028】
上記の「1つ以上の計測点を含む計測点群地点に設けられた温度計」は、例えば、人や車の通路の周辺、設備の周辺など、霧の発生を監視、及び抑制したい場所の温度を計測し、その結果を上記の「演算手段」に送るものである。設置位置、設置台数は、特に制限はしないが、第1の温度計からの距離が、第1の温度計から第2の温度計までの距離より短い位置に設置するのがよい。
【0029】
上記の「演算手段」は、上記の温度及び湿度の計測結果から、霧の発生状態を判定する、例えば電子計算機などのことである。
【0030】
上記「演算の結果を出力する手段」は、例えば、電気信号を用いて演算結果を外部に出力するための機構などのことである。
【0031】
以下、本発明に係る実施形態を、液化ガス気化器を例として、説明する。
【0032】
液化ガス気化器の例を図1に示す。液化ガス気化器1は、液化ガスが通過する、複数の伝熱管2を備えている。伝熱管2は、垂直に等間隔で配置され、上端を上部ヘッダー管5、下端を下部ヘッダー管6で固定され、伝熱管支持体7によって、略水平面上である基準面8(地面あるいは床面)の上方に支持されている。液化ガス気化器1と基準面8の間には、一定の高さを有する下方空間9が形成される。
【0033】
液化ガス気化器1で液化ガスを気化させるためには、液化ガス導入路3から伝熱管2内に、低温状態の液化ガスが導入される。液化ガスが、伝熱管2内を通過する間に、伝熱管2を介して、液化ガスと伝熱管2の外部の空気との間で熱交換が行われる。液化ガスは伝熱管の外部における空気の熱によって昇温され、気化し、ガス導出路4から導出される。
【0034】
伝熱管2の表面、及び伝熱管2の近傍の空気は、液化ガスや気化したガスとの熱交換により冷却される。すると、伝熱管2の近傍の空気は、露点温度以下まで急激に冷却され、中に含まれる水蒸気が結露し、白煙状の霧が発生する。発生した霧、及び冷却された空気(冷気)は、液化ガス気化器の下方空間9に向かって流れ、地表面に沿って拡散する。
【0035】
下部ヘッダー管6の真下の計測点10には、第1の温度計として、伝熱管の近傍の冷気の温度を計測するための温度計が設けられている。
【0036】
さらに、図2に示すように、液化ガス気化器1から離れて、実質的に液化ガス気化器周辺の冷気による影響を受けない外気の温度及び湿度の計測点12に温度計、湿度計が設置されている。そして、計測点群11(Pn、n=1,2)に各々温度計が設置されている。図2の例では、計測点群11は2つの計測点P1及びP2を含むが、計測点群11に含まれる計測点は1つ以上の任意の数にすることができる。
【0037】
図2のように温度計及び湿度計を配置した場合に、計測値から霧の発生状態を判定する方法を、図3に示す湿度図表を用いて説明する。湿度図表の横軸は温度、縦軸は絶対湿度を表している。
【0038】
液化ガス気化器1の運転中に伝熱管2の周辺から沈降してくる空気は、伝熱管2の液化ガスとの熱交換によって冷却され、結露した状態にあるので、下部ヘッダー管6の真下の計測点10で計測される温度Taは、湿度図表における飽和曲線21上にある(図3の点A)。次に、実質的に液化ガス気化器周辺の冷気による影響を受けない計測点12で計測される温度Tb、計測される相対湿度φより求められる絶対湿度Hbの点を湿度図表上に描く(図3の点B)。この点は外気の温度、湿度を表している。
【0039】
液化ガス気化器1から発生する冷気は、温度Tb、絶対湿度Hbの外気と混合され、混合された気体は中の水蒸気量は、冷気、外気に含まれる水蒸気量とそれぞれの気体の比率から求められる。霧の発生状態は、湿度図表上に線分ABを引き、次のように求めることができる。
【0040】
線分ABと飽和曲線21上が交わる点Cの温度Tcが、計測された環境における露点温度であり、液化ガス気化器からの冷気によって、周囲の外気が冷却され霧が発生する温度である。
P1の温度をT1、P2の温度をT2とすると、冷気と外気が混合された気体は、温度がT1のように、ΔT1=T1−Tc<0であれば、結露して霧が発生した状態にあり、温度がT2のようにΔT2=T2−Tc>0であれば、結露せず霧は発生していない状態にあると判定される。
【0041】
液化ガス気化器からの冷気と大気の混合時における露点Tcの算出について説明する。
【0042】
下部ヘッダー管6の真下の計測点10で計測された絶対温度をTa[K]、温度Taにおける飽和水蒸気分圧Psa[kg/kg−dryair]、外気の全圧P[kPa](=101.3[kPa])、下部ヘッダー管6の真下における絶対湿度Ha[kg/kg−dryair]とすると、
Ha=(18/29){Psa/(P−Psa)}
の関係がある。
【0043】
水蒸気の飽和水蒸気分圧Ps[kPa]は、湿度図表上の飽和曲線として、温度T[K]のみの関数として表すことができるので、
Ps=f(T)
で表されるものとすれば、
Ha=(18/29){f(Ta)/(P−f(Ta))
と表せる。
【0044】
実質的に液化ガス気化器周辺の冷気による影響を受けない計測点12に設置された温度計で計測された絶対温度をTb[K]、計測点12に設置された湿度計で計測された相対湿度をφ[%]、温度Tbにおける飽和水蒸気分圧Psb[kg/kg−dryair]、計測点12における水蒸気分圧をPb[kPa]、計測点12おける絶対湿度Hb[kg/kg−dryair]とすると、
Pb=φ・Psb/100
Hb=(18/29){Pb/(P−Pb)}
の関係があるので、計測点12おける絶対湿度Hbは
Hb=(18/29)[(φ・f(Tb)/100)/{P−(φ・f(Tb)/100)}]
で計算される。
【0045】
湿度図表の2点(Ta,Ha)と(Tb,Hb)を結ぶ直線
H=g(T)
と、Ps=f(T)を、T>Taの範囲で連立させて解くことにより解が求まり、露点温度Tcを求めることができる。
【0046】
求められた露点温度Tcと、計測点群11に含まれる計測点で計測された温度Tnとを比較し、
ΔTn=Tn−Tc<0であれば、冷気により霧が発生した状態にあり、
ΔTn=Tn−Tc>0であれば、消霧されている状態にある
と判定する。
【0047】
上記の霧の発生状態の判定方法は、気象条件などによらず、同一の湿度図表を用いて、同一の判定方法を用いることができる。霧の発生状態の判定結果は、計測点群11に含まれる同じ地点における温度の計測値が同じであった場合でも、あるいは、液化ガス気化器運転状態が同じであった場合でも、気象条件などによって変わり得る。
【0048】
具体例として、図3の例と、液化ガス気化器の運転条件、計測点10の位置、計測点10で計測された温度、計測点12の位置、及び計測点12における温度、計測点群11の位置、及び各計測点における温度が同じで、計測点12における湿度が図3の例に比べて低い場合について、図4を用いて説明する。
【0049】
外気の湿度が低いので、外気の温度及び湿度を表す点は、図3の点Bと比べ湿度図表上では下方へ移る(図4の点B)。その結果、線分ABの傾きが小さくなり、線分ABと飽和曲線との交点で表される露点温度も低くなるので、計測点群11での温度が同一であっても、霧の発生条件は異なってくる。
【0050】
図4の例では、P1の温度T1、P2の温度T2は図3の場合と同じであるが、露点温度Tcが図3と比べ低くなっているため、T1、T2ともTcより高くなっている。その結果、P1、P2では、共に、霧は発生していないと判定される。
【0051】
次に、図3の例と、液化ガス気化器の運転条件、計測点10の位置、計測点10で計測された温度、計測点12の位置、計測点12における温度及び湿度、計測点群11の位置が同じで、図3の場合と比べて風が強い場合について、図5を用いて説明する。
【0052】
風の強い場合には、風が弱い場合と比べると、液化ガス気化器近傍で発生した冷気は、拡散しやすくなり、外気と混合されやすくなる。その結果、計測点群11の各計測点で、冷気が空気中に占める割合は小さくなるため、風が弱い日と比べると、計測点群11で計測される温度は高くなる。
【0053】
図5では、P1、P2の位置は図3と同じであるが、風の影響で冷気が拡散され計測された温度が上っている。露点温度Tcは図3の場合と同じであるが、T1、T2ともTcより高くなっており、P1点、P2点では、共に、霧は発生していないと判定される。
【0054】
上記のように、本発明では、気象条件が異なる場合であっても、液化ガス気化器1の下部ヘッダー管6の真下の計測点10の温度を計測する温度計と、実質的に液化ガス気化器周辺の冷気による影響を受けない計測点12の温度及び湿度を計測する温度計及び湿度計と、計測点群11の計測結果を、同じ湿度図表上に適用することによって、霧の発生状態を、同じ判定方法で判定することができる。
【0055】
次に、霧の発生領域の判定について説明する。
【0056】
計測点群11が1つの計測点からなる場合の例を図6に示す。図6では、計測点P1の温度T1が露点温度Tc以上であれば、霧はおおむね気化器を中心としてP1を通る円の内側の領域のみで発生していると判定でき、P1の温度T1がTc以下であれば、霧は気化器を中心としてP1を通る円を超えて広がっていると判定できる。
【0057】
霧の発生領域の外縁、すなわち、霧が発生している領域と、消霧されている領域の境界は、温度がTcである地点を結んだ線として表すことができる。
図6の円31は、P1の温度T1がTc以上の場合の、推定される霧の発生領域(以下、単に、霧の発生領域とする)の外縁である。円31の半径は、T1、計測点10で計測された温度Ta、及び露点温度Tcから推定することができる。
【0058】
計測点群11が複数の計測点を含む場合の例を図7に示す。図7では、計測点群11に4つの計測点が含まれている。計測点P1、P2、P3、P4のそれぞれの温度、T1、T2、T3、T4と露点温度Tcとを各々比較することで、霧の発生領域のおおよその外縁を推定することができる。図5は、T1がTc以下であり、T2、T3、T4がTc以上である場合の、霧の発生領域の外縁31を示したものである。
【0059】
計測点群11が更に多くの計測点を含む場合の概略を図8に示す。図8場合、霧の発生領域の外縁31は、計測点群11に含まれる計測点Pn(n=1,2,3,4,…)で計測された温度Tn(n=1,2,3,4,…)がTc以下となる領域41と、TnがTc以上となる領域42の間にあることになる。
領域41と領域42の、それぞれの領域の境界線上にある計測点を直線で結び、2つの計測点における計測温度から露点温度となる位置を推定することで、更に正確に霧の発生領域の外縁を推定することができる。
【0060】
本発明の霧発生監視装置及び霧制御システムは、霧の発生領域を表示するための表示手段を備えることもできる。図9に表示部51に表示された霧の発生領域の例を示す。霧の発生領域を表示することによって、作業者などが霧の発生状態を確認でき、必要に応じた作業を行うことが可能となる。
【0061】
次に、本発明の霧制御システムによる霧の発生領域の制御について、説明する。
本発明の霧制御システムは、上記のように判定された霧の発生領域を、あらかじめ設定された霧の制御領域と比較し、その結果に応じて、該冷却源の負荷を変えることによって冷却源近傍の温度を制御し、霧の発生領域の大きさ、又は/及び形状を制御することを特徴とする。
【0062】
ここで、霧の制御領域とは、霧の発生が許容されている領域を示す。よって、霧の発生領域の制御は、霧の制御領域内には霧が滞留していてもかまわないが、霧の制御領域外は消霧されている状態となるように行う。
【0063】
霧の制御領域は、霧の発生が許容されている領域であり、外気より低温の冷却源は、必然的に、霧の制御領域内に含まれる。
霧の制御領域の外側は、霧の発生が許容されない領域である。霧の制御領域を設定する場合、本発明では、計測点群に含まれる計測点のうち、少なくとも1つの計測点は、霧の制御領域の外側に設けられる必要がある。消霧する必要がある領域は、霧の制御領域の外側であり、霧の制御領域の外側が消霧されているか否かを判定するために、霧の制御領域の外側の計測点の温度の計測値が必要となるためである。
【0064】
図10は、本発明の霧制御システムを用いて、霧の発生領域の大きさを制御する場合の実施形態の一例の概要であり。計測点群に含まれる計測点が1つである場合の例を示している。霧が液化ガス気化器を中心に、ほぼ同心円状に広がることが仮定できる場合は、計測点群に含まれる計測点が1つであっても、霧の制御は可能である。
【0065】
図11は、本発明の霧制御システムを用いて、霧の発生領域の大きさを制御する場合の実施形態の一例の概要であり。計測点群に含まれる計測点が4つである場合の例を示している。この例では、霧の制御領域の外側に3つ、霧の制御領域内に1つの計測点がある。計測点が1つの場合と比べると、霧の制御をより正確に行うことができ、また、霧の制御領域に異方性をもたせることもできる。
【0066】
図12を用いて、本発明の霧制御システムを用いて、霧の発生領域の大きさを制御する場合の実施形態について、より詳しく説明する。
多角形61は、霧の制御領域である。霧の制御領域とは、霧の滞留が許されている領域の外縁であり、霧の制御は、多角形61の内側には霧が滞留していてもかまわないが、多角形61の外側は消霧された状態となるように行う。
【0067】
霧の制御領域は、風などの気象条件、設備の配置などの立地条件により、適宜設定することができる。
また、霧の制御領域を設定した場合は、霧の制御領域の外縁上、あるいは、霧の制御領域の近傍で、霧の制御領域の外側に、複数の計測点を含むようにするのが好ましい。
【0068】
図12に示す計測点群11のうち、霧の制御領域61の近傍で、霧の制御領域の外側の計測点Pn(n=1,2,3,4,…)における計測温度Tn(n=1,2,3,4,…)について、すべてのTnとTcとを比較する。そして、TnがTc以下の地点があれば、液化ガス気化器1の負荷を下げることで、霧の発生領域31の外縁を狭めて、すべてのTnが、Tn>Tcとなるように制御する。
【0069】
すべてのTnが、Tn>Tcであれば、Tn≦Tcとならない範囲で、液化ガス気化器1の負荷を上げ、その結果、霧の発生量が増え、霧の発生領域31の外縁が広がるような制御をしてもかまわない。
【0070】
もちろん、ある程度のマージンをとり、Tn<Tc+t(tはあらかじめ定めた正の数)であれば液化ガス気化器1の負荷を下げ、Tn>Tc+tであれば液化ガス気化器1の負荷を上げる、という運用も可能である。
【0071】
液化ガス気化器の使用方法が、ガスの発生量が一時的に低下しても問題にならないようなものである場合は、上記のような制御が可能である。
【0072】
本発明の霧制御システムには、消霧装置を備えることもできる。消霧装置としては、加熱装置の熱風を霧に吹き付けて霧を蒸発させる形式の消霧装置、霧を吸引して加熱・乾燥した後に大気に還流する形式の消霧装置、特定波長の遠赤外線を霧に照射して霧を消失させる形式の消霧装置など、公知の装置が使用できる。
【0073】
消霧装置は、例えば、液化ガス気化器の近傍に設置することもできるし、霧の発生を制御したい、他の場所に設置することもできる。霧の制御領域外に設置してもよい。また、複数台の消霧装置を設置してもかまわない。さらに、消霧装置を備える場合には、消霧装置負荷を変更させるインバータなどの機器を組み込むことができる。
【0074】
消霧装置を備える場合の本発明の実施形態の例を、図13に示す。この例では液化ガス気化器1に隣接して消霧装置13が備えられている。
【0075】
図13に示す計測点群11のうち、霧の制御領域61の外縁上の計測点Pn(n=1,2,3,4,…)における計測温度Tn(n=1,2,3,4,…)について、すべてのTnとTcとを比較する。そして、TnがTc+t(tはあらかじめ定めた0以上の数)以下の地点があれば、消霧装置13の負荷を上げる、又は/及び液化ガス気化器1の負荷を下げることで、霧の発生領域31の外縁を狭めて、すべてのTnが、Tn>Tc+tとなるように制御する。
【0076】
すべてのTnが、Tn>Tc+tであれば、Tn≦Tc+tとならない範囲で、消霧装置13の負荷を下げ、又は/及び液化ガス気化器1の負荷を上げ、その結果、霧の発生量が増え、霧の発生領域31の外縁が広がるような制御をしてもかまわない。
【0077】
液化ガス気化器が連続して一定量のガス供給する必要がある場合には、消霧装置を備えるのが有効である。
【0078】
もちろん、本発明は、消霧装置を備えた場合に、消霧装置を常に定格で運転し、液化ガス気化器の負荷のみを制御することを妨げるものではない。
【0079】
また、各装置の負荷の制御は上記で説明したもののほか、例えばPID制御など、他の公知の制御方法も使用できることは言うまでもない。
【0080】
また、本発明の霧制御システムは、霧の拡散を防止するための遮蔽体を備えることができる。遮蔽体には、金属板、コンクリート板などを用いることも可能であるし、布、ビニールなどを鋼管などによって形成された支持枠によって支持することにより形成してもよい。
【0081】
遮蔽体を備えることで、遮蔽体近傍での、液化ガス気化器周辺から発生した冷気と外気との熱交換の効率を上げることができるので、その結果、消霧効果を上げることができ、エネルギー消費を更に抑制することができる。
【0082】
遮蔽体の好ましい設置位置は、液化ガス気化器の仕様によっても異なるので、特に制限はしないが、液化ガス気化器に近すぎると冷気を十分に遮蔽することができず、遮蔽体から冷気があふれ出し、液化ガス気化器から遠すぎると、遮蔽体より手前で冷気が拡散してしまい、遮蔽体の効果が低くなるので、液化ガス気化器から0.5m〜5m程度、好ましくは2〜4m程度の箇所に設置するのがよい。
【0083】
遮蔽体の好ましい高さは、液化ガス気化器の仕様によっても異なるので、特に制限はしないが、下部ヘッダー管の高さから±1m程度、好ましくは±0.5m程度とするのが、熱交換の効率の見地から好ましい。
【0084】
また、遮蔽体は冷気と外気との熱交換を目的とするものであるから、霧の制御領域内、あるいは霧の制御領域の外縁上に設置されていることが必要である。だたし、霧の制御領域は、上述のとおり、風などの気象条件、設備の配置などの立地条件により、適宜設定することができるものであり、その形状は変化し得るものであるので、遮蔽体は、常に霧の制御領域内、あるいは霧の制御領域の外縁上にあることが必要なわけではない。霧の制御領域内、あるいは霧の制御領域の外縁上に設置されている状態となることがあれば、そのときは、遮蔽体を設置した目的を達成できるからである。
【0085】
遮蔽体は、液化ガス気化器を囲むように設置するのが好ましいが、4面すべてを囲わずに、1面のみ、2面のみの設置などでもかまわない。また、二重、三重に設置してもかまわない。
【0086】
また、上記の消霧装置を、遮蔽体で囲われた内側に設置してもよいし、外側に設置してもよい。
【0087】
遮蔽体には、遮蔽体の上方に、又は/及び側面に沿って送風するための、例えば送風ファンのような装置を備えることもできる。送風するための装置は、上記の液化ガス気化器、消霧装置と同様に、霧の発生状態に応じて制御することもできる。
【0088】
さらに、本発明の霧制御システムは、霧の制御領域の外縁よりも遠方に1つ以上の、例えば送風ファンのような送風装置を備え、霧の発生領域に応じて、送風装置を運転させることもできる。
【0089】
図14は、送風ファンを備えた本発明の霧制御システムを用いて、霧の発生領域の形状を制御する場合の実施形態の概要を示している。
図14に示す計測点群11のうち、霧の制御領域61の外周上の計測点Pn(n=1,2,3,4,…)における計測温度Tn(n=1,2,3,4,…)について、すべてのTnとTcとを比較する。そして、TnがTc+t(tはあらかじめ定めた0以上の数)以下の地点があれば、送風ファン14の負荷を上げることで、霧の発生領域31の外縁を狭めて、すべてのTnが、Tn>Tc+tとなるように制御する。
【0090】
すべてのTnが、Tn>Tc+tであれば、Tn≦Tc+tとならない範囲で、送風ファン14の負荷を下げ、その結果、霧の発生量が増え、霧の発生領域31の外縁が広がるような制御をしてもかまわない。
【0091】
このようにして、送風ファン14を、霧の発生領域31が、霧の制御領域61の領域内となるように制御することにより、霧の発生領域31を一定範囲にとどめることができる。
また、霧の制御領域61の形状を、風による拡散効果が高くなる形状とすることによって、風による霧の拡散効果を高め、消霧装置のエネルギー消費を抑制することができる。
【0092】
本発明では、送風装置は、霧の制御領域の外縁よりも遠方に備えられることが必要である。ただし、霧の制御領域は、上述のとおり、風などの気象条件、設備の配置などの立地条件により、適宜設定することができるものであり、その形状は変化し得るものであるので、送風装置は、常に霧の制御領域の外縁よりも遠方にある必要はない。送風装置が、あらかじめ設定された霧の制御領域の外縁よりも遠方に備えられている状態となることがあれば、そのときは、上記の目的を達成することができるからである。
【0093】
ただし、送風装置の好ましい設定位置は、限定はしないが、図14のように、計測点群の外縁よりも外側である。計測点群の外縁より外側に設置された送風装置は、常に霧の制御領域外にあることになるためである。
【0094】
液化ガス気化器が複数基並べて配置されているような場合でも、本発明の霧発生領域監視システム及び霧制御システムを使用することができる。図15に、液化ガス気化器が複数基の場合の概略を示す。
【0095】
液化ガス気化器1が複数基ある場合、液化ガス気化器1の下部ヘッダー管の真下の温度を計測する温度計は、各液化ガス気化器の運転条件が同じであれば、1基の液化ガス気化器にのみ設置し、霧の発生領域31を一括して監視、制御してもよいし、すべての液化ガス気化器に温度計を設置し、計測された温度を用いて、霧の発生領域31を監視、制御してもよい。
【0096】
各液化ガス気化器の運転条件が異なる場合は、例えば、それぞれの液化ガス気化器の下部ヘッダー管の真下で温度を計測し、計測された最も低い温度を代表値として用い、霧の発生領域31を求めてもよい。
【0097】
図16は、上記の実施形態における、処理の一例の概略を示したものである。露点温度、霧の発生領域は、上記のとおり、計測された温度及び湿度から、湿り温度線図を用いて容易に求めることができる。液化ガス気化器、消霧装置、送風ファンの運転条件は、各々の装置の特性や、立地条件から、霧の発生領域に応じた運転条件をあらかじめ定めておき、計測された霧の発生状態と比較し、各々の運転条件が決定される。
【0098】
本発明の霧発生領域監視システム及び霧制御システムは、計測点群11の各々の計測点の温度を計測することにより霧の発生状態を判定する。すなわち、特定の立地条件における霧の発生領域を正確に判定するために計測点を増やす場合であっても、計測器としては比較的安価な温度計を増設するだけで、種々の立地条件に対応することが可能である。
【実施例】
【0099】
本発明の実施例について説明する。
【0100】
2基の空温式LNG気化器を備えたLNG気化設備において、LNGの気化を行った。LNG気化設備の概略平面図を図17に、概略立面図を図18に示す。図17は、右側が北、下側が東となるように描かれている。
【0101】
気化能力1.5ton/h、縦2.4m×横2.7m、高さ8mの、2基の空温式LNG気化器1a、1bを、中心間距離で東西に8.8m離して設置した。空温式LNG気化器1a、1bの周囲4面は、南北5m、東西14.5m、高さ2mの遮蔽体16aで囲い、遮蔽体16aの内側には、遮蔽体16a内の冷気を排気する、排気能力800m3/minの排気ファン13aを設置した。
【0102】
空温式LNG気化器、1a、1bの下部ヘッダー管は、地表面から1.8mの位置に設置し、排気ファン13aは、プロペラ部下端が地表面から1.8mの位置になるように設置した。
【0103】
遮蔽体16aの南面は、遮蔽体16aから外側に0.8m離れた位置に、東西14.5m、高さ1.5mの遮蔽体16bを設け二重壁とし、さらに、遮蔽体16a、16bの間の領域に外気を送風できるように、排気能力200m3/minの、2基のポータブルファン15a、15bを備えた設備で、LNGの気化を行った。
【0104】
LNG気化設備には、霧の発生状況を監視するために、空温式LNG気化器周辺の16か所の計測点群(図17のPN1、PN2、PS1、PS2、…)に温度計、2基の空温式LNG気化器1a、1bの直下(図17のPVa、PVb)に温度計、並びに気化器から離れた位置(図17のPN4)での外気の温度及び湿度を計測する温度計及び湿度計を設置した。
【0105】
表1に、2基の空温式LNG気化器1a、1bの中心地点(図17のO)の地表面を原点とした、各装置、遮蔽体、温度計及び湿度計の位置を示す。座標は(南北位置,東西位置,高さ)を示しており、正負の向きは、図17のO付近に示した矢印のとおりである。
【0106】
本実施例では、遮蔽体16aの内側、遮蔽体16a、16bの間、及び、遮蔽体16aの西側面よりも西は、霧の滞留が許容されている。その他の領域は霧の滞留が許容されていない。すなわち、図17に示した霧の制御領域61を表す破線よりも西側(図の上側)は霧の滞留が許容されており、東側(図の下側)は霧の滞留が許容されていない。
【0107】
【表1】
【0108】
ところで、LNG気化器を同様に運転させた場合であっても、環境条件によって霧の発生状況は異なる。具体的には、湿度が低い場合は、湿度が高い場合に比べ、霧は発生しにくい。また、風が強い場合は、風が弱い場合に比べ、霧は発生しにくい。
【0109】
表2に、本実施例の設備において、環境条件(湿度、風速)が異なる条件で、排気ファンを13a動作させた場合、及び、排気ファン13aを動作させなかった場合の霧の発生状況を示す。なお、空温式LNG気化器1a、1bは、共に、1.5ton/hで動作させ、2台のポータブルファン15a、15bを定格で運転させた。
【0110】
霧の発生領域は、本実施例における露点温度Tcと、計測点群の各計測点における温度Tnとの差、ΔTn=Tn−Tcで判定される。露点温度Tcを求める際に用いる空温式LNG気化器の直下の温度には、PVa、PVbで計測された温度の平均値を使用した。
【0111】
例1、例2は、環境条件が良い(湿度が低く、風が強い)場合の例である。排気ファン13aを運転させた例1では、霧の滞留が許容されていない領域(表中に*で示した)では、すべてΔTn>0であり、目視でも消霧されていることが確認できた。排気ファン13aを運転させなかった例2でも、霧の滞留が許容されていない領域では、すべてΔTn>0であり、目視でも消霧されていること確認できた。したがって、この環境条件の下では、排気ファン13aの運転は必要ないことが分かる。
【0112】
例3、例4は、環境条件が悪い(湿度が高く、風が弱い)場合の例である。排気ファン13aを運転させた例3では、霧の滞留が許容されていない領域(表中に*で示した)では、すべてΔTn>0であり、目視でも消霧されていることが確認できた。排気ファン13aを運転させなかった例4では、霧の滞留が許容されていない領域で、すべてΔTn<0となり、目視でも霧が発生していることが確認できた。したがって、この環境条件の下では、排気ファン13aの運転が必要であることが分かる。
【0113】
【表2】
【0114】
本システムによれば、各計測点における温度の測定値から霧の発生領域が定量的に把握できるので、すべての霧の滞留が許容されていない領域でΔTn>0となり排気ファン13aの運転が必要ないと判断できれば、排気ファン13aの運転を自動的に停止することができる。
【0115】
すなわち、表2の例2のように、環境条件が良く、排気ファン13aの運転を止めても霧の滞留が許容されていない領域が消霧できる場合には、排気ファン13aの運転を停止することによって、排気ファン13aの動力費を低減することができる。
【0116】
一方、本システムを用いない場合には、霧の発生を定量的に把握することはできない。そのため、例えば表2中の例2のように、環境条件が良く排気ファン13aを運転させなくてもよい場合でも排気ファン13aを運転させざるを得ないか、又は、霧の発生を監視し、排気ファン13aの動作を切り替える作業者が必要となる。
【0117】
以上説明したように、本発明のシステムを用いることにより、霧の発生状況を定量的に把握できるので、本実施例においては、環境条件が悪く霧が発生しやすいときには、自動的に排気ファン13aを運転し、環境条件が良く霧が発生しにくいときには、自動的に排気ファン13aの運転を停止することができる。そのため、排気ファン13aの動力費、及び、霧の発生状況監視のための人件費を低減することが可能となる。
【0118】
また、例えば、特定の領域について、昼間の霧の滞留は許容するが、夜間の霧の滞留は許容しない等の運用も可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明によれば、例えばLNG、LPG、液体窒素、液体酸素などの液化ガスを蒸発させる液化ガス気化器において発生する霧を監視し、また、霧の発生領域を制御する、エネルギー消費を抑制した霧発生領域監視システム及び霧制御システムを提供することができる。
【0120】
なお、液化ガス気化器において発生する霧の監視、制御について実施例を用いて説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、外気を冷却することで霧の発生源となるものから発生する霧に対しては、液化ガス気化器の場合と同様に、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0121】
1、1a、1b 液化ガス気化器
2 伝熱管
3 液化ガス導入路
4 ガス導出路
5 上部ヘッダー管
6 下部ヘッダー管
7 伝熱管支持体
8 基準面
9 下方空間
10 伝熱管の近傍の冷気の温度を計測するための計測点
11 計測点群(Pn、n=1,2,3,4,…)
12 外気の温度及び湿度の計測点するための計測点
13 消霧装置
13a 排気ファン(消霧装置)
14 送風ファン
15a、15b ポータブルファン
16a、16b 遮蔽体
21 飽和曲線
31 温度及び湿度の計測値から推定された霧の発生領域の外縁
41 計測点の温度Tn<露点温度Tcである領域
42 計測点の温度Tn>露点温度Tcである領域
51 霧の発生領域が表示された表示部の例
61 霧の制御領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気より低温の冷却源の近傍に設けられた第1の温度計と、実質的に該冷却源の影響を受けない地点に設けられた第2の温度計及び湿度計と、1つ以上の計測点を含む計測点群に各々設けられた温度計と、該第1の温度計、該第2の温度計、該湿度計、及び該計測点群に各々設けられた温度計の計測値を用いて計測地点の霧の発生状態を判定する演算手段と、該演算の結果を出力する手段を備えたことを特徴とする、霧発生判定システム。
【請求項2】
請求項1に記載の演算の結果を用いて、霧の発生領域を判定し、該霧の発生領域を表示する表示手段を備えたことを特徴とする、霧発生領域監視システム。
【請求項3】
外気より低温の冷却源の近傍に設けられた第1の温度計と、実質的に該冷却源の影響を受けない地点に設けられた第2の温度計及び湿度計と、1つ以上の計測点を含む計測点群に各々設けられた温度計と、該第1の温度計、該第2の温度計、該湿度計、及び該計測点群に各々設けられた温度計の計測値を用いて計測地点の霧の発生状態を判定する演算手段とを備え、該演算の結果を用いて霧の発生領域を判定し、霧の発生領域をあらかじめ設定された霧の制御領域と比較し、その結果に応じて、該冷却源の負荷を変えることによって冷却源近傍の温度を制御し、霧の発生領域の大きさ、又は/及び形状を制御することを特徴とする、霧制御システム。
【請求項4】
さらに、消霧装置を備え、霧の発生領域とあらかじめ設定された霧の制御領域との比較結果に応じて消霧装置、又は/及び前記冷却源の負荷を変えることによって、霧の発生領域の大きさ、又は/及び形状を制御することを特徴とする、請求項3に記載の霧制御システム。
【請求項5】
さらに、霧の発生領域を表示する表示手段を備えたことを特徴とする、請求項3又は4に記載の霧制御システム。
【請求項6】
さらに、霧の拡散を防止するための遮蔽体を備えたことを特徴とする、請求項3〜5のいずれか1項に記載の霧制御システム。
【請求項7】
さらに、前記遮蔽体上方に、又は/及び前記遮蔽体側面に沿って送風するための装置を備えたことを特徴とする、請求項6に記載の霧制御システム。
【請求項8】
さらに、前記遮蔽体上方に、又は/及び前記遮蔽体側面に沿って送風するための装置の負荷を、霧の発生領域とあらかじめ設定された霧の制御領域との比較結果に応じて変え、霧の発生領域の大きさ、又は/及び形状を制御すること特徴とする、請求項7に記載の霧制御システム。
【請求項9】
さらに、霧の制御領域の外縁よりも遠方に、1つ以上の送風装置を備え、霧の発生領域とあらかじめ設定された霧の制御領域との比較結果に応じて該送風装置の負荷を変えることによって、霧の発生領域の大きさ、又は/及び形状を制御すること特徴とする、請求項3〜8のいずれか1項に記載の霧制御システム。
【請求項1】
外気より低温の冷却源の近傍に設けられた第1の温度計と、実質的に該冷却源の影響を受けない地点に設けられた第2の温度計及び湿度計と、1つ以上の計測点を含む計測点群に各々設けられた温度計と、該第1の温度計、該第2の温度計、該湿度計、及び該計測点群に各々設けられた温度計の計測値を用いて計測地点の霧の発生状態を判定する演算手段と、該演算の結果を出力する手段を備えたことを特徴とする、霧発生判定システム。
【請求項2】
請求項1に記載の演算の結果を用いて、霧の発生領域を判定し、該霧の発生領域を表示する表示手段を備えたことを特徴とする、霧発生領域監視システム。
【請求項3】
外気より低温の冷却源の近傍に設けられた第1の温度計と、実質的に該冷却源の影響を受けない地点に設けられた第2の温度計及び湿度計と、1つ以上の計測点を含む計測点群に各々設けられた温度計と、該第1の温度計、該第2の温度計、該湿度計、及び該計測点群に各々設けられた温度計の計測値を用いて計測地点の霧の発生状態を判定する演算手段とを備え、該演算の結果を用いて霧の発生領域を判定し、霧の発生領域をあらかじめ設定された霧の制御領域と比較し、その結果に応じて、該冷却源の負荷を変えることによって冷却源近傍の温度を制御し、霧の発生領域の大きさ、又は/及び形状を制御することを特徴とする、霧制御システム。
【請求項4】
さらに、消霧装置を備え、霧の発生領域とあらかじめ設定された霧の制御領域との比較結果に応じて消霧装置、又は/及び前記冷却源の負荷を変えることによって、霧の発生領域の大きさ、又は/及び形状を制御することを特徴とする、請求項3に記載の霧制御システム。
【請求項5】
さらに、霧の発生領域を表示する表示手段を備えたことを特徴とする、請求項3又は4に記載の霧制御システム。
【請求項6】
さらに、霧の拡散を防止するための遮蔽体を備えたことを特徴とする、請求項3〜5のいずれか1項に記載の霧制御システム。
【請求項7】
さらに、前記遮蔽体上方に、又は/及び前記遮蔽体側面に沿って送風するための装置を備えたことを特徴とする、請求項6に記載の霧制御システム。
【請求項8】
さらに、前記遮蔽体上方に、又は/及び前記遮蔽体側面に沿って送風するための装置の負荷を、霧の発生領域とあらかじめ設定された霧の制御領域との比較結果に応じて変え、霧の発生領域の大きさ、又は/及び形状を制御すること特徴とする、請求項7に記載の霧制御システム。
【請求項9】
さらに、霧の制御領域の外縁よりも遠方に、1つ以上の送風装置を備え、霧の発生領域とあらかじめ設定された霧の制御領域との比較結果に応じて該送風装置の負荷を変えることによって、霧の発生領域の大きさ、又は/及び形状を制御すること特徴とする、請求項3〜8のいずれか1項に記載の霧制御システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−252820(P2011−252820A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127678(P2010−127678)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り http://www.nsc−eng.co.jp/business/catalog/(掲載日:平成21年12月16日)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り http://www.nsc−eng.co.jp/business/catalog/(掲載日:平成21年12月16日)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】
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