説明

露光ヘッド及び画像形成装置

【課題】 有機EL素子を有する、面積が極めて小さい露光ヘッドを提供する。
【解決手段】
複数の有機EL素子を有する露光ヘッドであって、基板上において千鳥状に配置されており、複数の有機EL素子を発光させる複数の駆動素子と、駆動素子を覆うように設けられた絶縁層と、絶縁層において、複数の駆動素子間に設けられた複数の開口と、を備え、有機EL素子は、複数の開口に設けられた露光ヘッド。露光ヘッドは、駆動素子の周囲に設けられ、駆動素子に接続された複数の走査線及び複数の容量線をさらに備え、絶縁層は、複数の走査線及び複数の容量線をさらに覆うように設けられており、複数の開口は、複数の駆動素子間において、複数の走査線及び複数の容量線によって囲まれた領域に設けられることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光ヘッド及び画像形成装置に関する。特に本発明は、有機EL素子を有する露光ヘッド及びこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の露光ヘッドとして特開2004−50816号公報(特許文献1)に開示されたものがある。上記特許文献1に開示された従来の露光ヘッドは、例えば図11に示すように、ガラスなどの長尺基板上に取り付けられた有機ELアレイと、それに接続され有機ELの発光を制御する駆動回路とを備えている。
【特許文献1】特開2004−50816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の露光ヘッドでは、その幅が大きいため、画像形成装置が大型化してしまうという問題が生じていた。
【0004】
よって、本発明は、上記の課題を解決することのできる露光ヘッド及び画像形成装置を提供することを目的とする。この目的は特許請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また従属項は本発明の更なる有利な具体例を規定する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の第1の形態によれば、複数の有機EL素子を有する露光ヘッドであって、基板上において千鳥状に配置されており、複数の有機EL素子を発光させる複数の駆動素子と、駆動素子を覆うように設けられた絶縁層と、絶縁層において、複数の駆動素子間に設けられた複数の開口と、を備え、有機EL素子は、複数の開口に設けられたことを特徴とする露光ヘッドを提供する。
【0006】
上記構成では、千鳥状に配置された複数の有機EL素子間に、当該複数の有機EL素子を駆動する複数の駆動素子が配置されることとなる。そして、有機EL素子を、複数の駆動素子を他の構成から絶縁するための絶縁層をマスクとして形成することができるので、素子面積が極めて小さく、歩留まりの高い露光ヘッドを提供することができる。
【0007】
上記露光ヘッドは、駆動素子の周囲に設けられ、駆動素子に接続された複数の走査線及び複数の容量線をさらに備え、絶縁層は、複数の走査線及び複数の容量線をさらに覆うように設けられており、複数の開口は、複数の駆動素子間において、複数の走査線及び複数の容量線によって囲まれた領域に設けられることが好ましい。
【0008】
上記構成では、千鳥状に配置された駆動素子を制御するための走査線及び容量線が当該駆動素子を囲むように設けられることとなる。そして、走査線及び容量線を他の構成から絶縁するための絶縁層をマスクとして、有機EL素子を形成することができるので、素子面積がさらに小さく、歩留まりの高い露光ヘッドを提供することができる。
【0009】
上記露光ヘッドにおいて、有機EL素子は、有機EL材料を開口に吐出して形成されることが好ましい。
【0010】
有機EL材料を基板上に吐出して有機EL素子を形成する場合には、基板上にバンクを形成しなければならないところ、上記構成によれば、駆動素子を他の構成から絶縁する絶縁層を、基板上に有機EL材料を吐出するためのバンクとしても用いることができる。従って、上記構成によれば、バンクを形成する工程を設けなくともよいため、工程数が少なく、安価な露光ヘッドを製造することができる。
【0011】
本発明の第2の形態によれば、上記露光ヘッドを備えたことを特徴とする画像形成装置を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、発明の実施形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
<露光ヘッドの全体構成について>
図1は、一実施形態の露光ヘッドの全体を上側から見た平面図である。図1に示す露光ヘッド1は、プリンタや複写機などの画像形成装置において、感光体を露光して潜像を形成するために用いられるものである。露光ヘッド1は、その全長が主走査方向の印刷幅よりも幾分長めに形成されている。なお、露光ヘッド1の実際の断面サイズは極めて小さいため、図1では充分に表現しきれない。従って、以降では説明の便宜上、適宜拡大図等を用いて詳細を説明する。また、露光ヘッド1は一端側にコネクタ2が設けられており、当該コネクタ2を介してプリンタコントローラ側の画像データ送信部(後述する。)と接続される。また、露光ヘッド1には、コネクタ2の近傍においてタイミングコントロールIC69が配置されている。
【0014】
図2は、露光ヘッド1の図1に示すA部の部分拡大図である。図3は、図2に示すI−I線方向における断面図である。各図に示すように、露光ヘッド1は、支持フレーム3、集光レンズアレイ4及び発光素子アレイ8を含んで構成されている。図3に示すように、露光ヘッド1は、発光素子アレイ8の一方面側に集光レンズアレイ4が配置され、他方面側に吸湿剤31が積層されている。そして、露光ヘッド1は、これら全体が支持フレーム3に収容されるという構造を有する。
【0015】
発光素子アレイ8は、ガラス基板上に、複数の発光素子からなる発光素子群、当該発光素子群を駆動する駆動回路、及び当該駆動回路を制御する制御回路を有して構成される。本実施形態では、発光素子として有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子が採用されている。発光素子群は、露光ヘッド1の主走査方向画素数および副走査方向に千鳥状に配置されている。
【0016】
集光レンズアレイ4は、発光素子アレイ8の上側に配置され、個々の発光素子から出射する光をそれぞれ集光する集光レンズ群を含んでいる。
【0017】
タイミングコントロールIC69(図1参照)は、露光ヘッド1の主走査方向画素数および副走査方向に千鳥状に配置された発光素子群のうち、所定の1ブロック分を制御/駆動する駆動回路からなる。本実施形態の露光ヘッド1では、制御回路が露光ヘッドの主走査方向に沿って複数設けられており、露光ヘッド1の端部に配置されたタイミングコントロールIC69が、制御回路56に画像データを供給する。
【0018】
図4は、露光ヘッド1の図2に示すB部の部分拡大図であり、集光レンズアレイ4の詳細構成を示している。集光レンズアレイ4は、ガラス基板等を主体に構成されており、当該ガラス基板に設けられた各貫通孔(光導穴)27にそれぞれ集光レンズ13が埋め込まれた構造を有する。これらの集光レンズ13は、主走査方向に沿って所定の画素数分の集光レンズ13が配列され、更にこのような列が副走査方向に沿って8列分配列して構成された集光レンズ群を構成している。集光レンズの隣接する列同士は集光レンズ13の配置間隔の半分(半ピッチ)ずつずらされており、これにより集光レンズ群は全体として千鳥状の配置となっている。
【0019】
また、この集光レンズアレイ4の集光レンズ群の配置と一対一に対応して、上述した発光素子アレイ8の発光素子群が形成されている。発光素子群の配置は図4に示す集光レンズ群の配置とほぼ同様であるので図示は省略する。本例では、主走査方向に7680個の貫通孔27及び発光素子が形成されている。この7680個のうち奇数番目の貫通孔27及び発光素子は副走査方向の1列目に配置され、偶数番目の貫通孔27及び発光素子は副走査方向の2列目に配置されている。以下同様に、7680×4個の貫通孔27及び発光部が計8列形成されている。発光素子アレイ8の各発光素子から出射した光は、上述した貫通孔27を通過して各集光レンズ13に到達し、それぞれ各集光レンズ13によって集光されて露光ヘッド1の外部へ放出される。
【0020】
図5は、集光レンズアレイ4の配列状態について更に詳細に説明する図である。また、図6は、図5に示す配列状態の露光ヘッドにより感光体を露光した場合の状態を説明する図である。上述したように、各集光レンズ13はそれぞれ貫通孔27に圧入されており、各集光レンズ13の直下には、発光素子アレイ8の各発光素子の発光部が配置されている。例えば、露光ヘッド1の主軸方向(主走査方向)の解像度が600dpiであるとすると、各発光素子の発光部のピッチAは1/600インチとなり、主軸方向の同じライン上の発光部ピッチは2A(=1/300インチ)となる。また、副軸方向(副走査方向)の発光シフト速度が紙送り速度と一致する場合には、発光部ピッチBはB=Aとなる。本実施形態の発光素子アレイ8はこのように構成されており、各発光素子の発光部が副軸方向に千鳥状に複数列配置される。このような配列状態の露光ヘッド1により、主軸方向および副軸方向のそれぞれについて600dpiのピッチ(A=B)で感光体を露光した状態が図6に示されている。
【0021】
図7は、発光素子アレイ8について更に詳細に説明する図である。図8は、図7に示すI−I方向の断面図である。図7に示すように、発光素子アレイ8は、ガラス基板60上において、発光部25、制御回路56及び配線群95を有して構成される。
【0022】
発光部25は、ガラス基板60の幅方向における略中央部に、帯状に配置されている。制御回路56は、帯状に配置された発光部25の両側に、ガラス基板60の長手方向に沿って配置されている。また、配線群95は、制御回路56の両側に、ガラス基板60の長手方向に沿って配置されている。また、図8に示すように、ガラス基板60上に設けられた発光部25、制御回路56及び配線群95を覆うように、封止剤24が設けられている。
【0023】
図9は、発光部25の拡大図である。発光部25は、千鳥状に配置された複数の有機EL素子79、及び有機EL素子79間に配置された複数の駆動回路78を有する。すなわち、本実施形態において、複数の駆動回路78は、千鳥状に配置されており、有機EL素子79と駆動回路78との間に配置された走査線及び容量線に接続されている。発光部25の詳細な構成については、図13〜15において後述する。
【0024】
<露光制御回路の構成について>
図10は、画像形成装置の内部における画像データの経路を中心とした露光制御回路の構成例を示すブロック図であり、タンデム方式のプリンタにおける露光制御回路が例示されている。図10に基づいて、画像データの流れを追いながら各部の機能を説明する。
【0025】
プリンタコントローラ64で画像処理されたCMYK(C:シアン、M:マゼンタ、Y:イエロー、K:ブラック)のそれぞれの画像データは、画像データ送信部65でパラレル/シリアル変換され、CMYKそれぞれのLS(LVDS SARDES)信号66となる。CMYKそれぞれのLS信号66は、プリンタエンジン側のヘッド制御部68にあるCMYKそれぞれの露光ヘッド1a、1b、1c、1dへ送られる。各露光ヘッド1a等は、タイミングコントロールIC69及びデイジーチェーン接続された制御回路56を有して構成される。主走査方向の1ライン分の画像データは、各制御回路56によって分割受信され、シリアル/パラレル変換されて各制御回路56の内部のシフトレジスタに順次保持される。その後は、プリンタ機構の印刷動作に同期して、発光素子アレイ8の各発光素子を画像データの階調値に合わせてON/OFF制御する。
【0026】
メカコントローラ91は、差動信号配線66に含まれる信号線SIOに接続されており、信号線SIOを介してプリンタコントローラ64とコマンド/ステータス通信を行う。また、メカコントローラ91は、露光ヘッド1a〜dのそれぞれに対して、図11及び12において後述するレジスタクリア信号(RCLR)及びタイミングコントロール用クロック信号(TCCLK)を供給し、露光ヘッド1a〜dの通電を制御する。
【0027】
図11は、露光ヘッド1a〜dに含まれる発光素子アレイ8の構成を示すブロック図である。露光ヘッド1は、ガラス基板60上に形成された制御回路56及び発光部25と、このガラス基板60にバンプ接合されたタイミングコントロールIC69とを有して構成される。データ制御用ライン57は、タイミングコントロールIC69の入力に接続されており、プリンタコントローラ64(図10参照)から送られてくる1ライン印刷データをSERDES信号として受信する。タイミングコントロールIC69は、受信したシリアルデータをパラレルデータに変換し、各制御回路56用に分割した印刷データとして、発光時間データ線85を介して各制御回路56に供給する。
【0028】
タイミングコントロールIC69は、シフトレジスタ制御線80及び81、レジスタセレクト信号線82、カウントデータ出力線83を介して制御回路56に接続されており、各構成を制御する。これについては、図12において後述する。
【0029】
電源用ライン58は、ガラス基板60上において主走査方向に所定個数配置された制御回路56及び発光部25に接続されており、制御回路56及び発光部25に電源を供給する。
【0030】
図12は、各露光ヘッド1a〜dに含まれる発光素子アレイ8の回路構成を詳細に説明する図である。上述したように、本実施形態の露光ヘッド1は、主走査方向の印刷幅をカバーする所定個数の制御回路56を含んでいる。本例では、1ブロックの制御回路56が768個の発光素子を制御し、全体としては10ブロックの制御回路56をデイジーチェーン接続した構成としているが、これは任意である。また本例の場合、副走査方向に4個並んだ発光素子を1ブロックの制御回路56が制御する回路構成となっているが、この数も必要に応じて任意に設定し得る。以下、信号の流れに沿って各部の構成と機能を説明する。
【0031】
データ制御ラインから入力した発光時間データ(階調データ)は、タイミングコントローラ入力部86にあるデシリアライザ(図示せず)においてシリアルデータからパラレルデータに変換され、768個のレジスタ70o、70eが右に延びるところのシフトレジスタ71o、71eにクロック同期で順次送られる。各レジスタ70o、70eは、各シフトレジスタ71o、71eに対し、発光時間データを出力する。また、タイミングコントローラ69は、各シフトレジスタ71o、71eの動作タイミングを制御するShift Clk信号、SRn/O信号及びSRn/E信号(それぞれnは自然数)信号を出力する。また、タイミングコントローラ69は、発光素子駆動回路74o、74eの動作タイミングを制御するOELn/O信号及びOELn/E信号O(それぞれnは自然数)信号を出力する。
【0032】
シフトレジスタ71o、71eは、それぞれ、副走査方向に連なる発光素子アレイ8に対応した4個のレジスタを備え、各レジスタ70o、70eから送られてくる発光時間データをShift Clk信号に同期して順次シフトする。そして、シフトレジスタ71o、71eは、タイミングコントローラ69からのSRn/O信号及びSRn/E信号に応じて、コンパレータ73o、73eに対して発光時間データを出力する。
【0033】
カウンタ72は、発光時間を制御するカウンタであり、カウンタのビット数(ここでは6ビット)は、シフトレジスタ71に入る発光時間データのビット長と同じである。また、このカウンタの入力周波数は、副走査方向の画素ピッチを時間換算して、その周期をカウント数で除算した結果の逆数(周波数)である。カウンタ72は、コンパレータ73(o,e)に対し、ここでは6ビットのカウント値を出力する。
【0034】
コンパレータ73(o,e)には、シフトレジスタ71(o,e)へのタイミング入力信号SRn(o,e)に同期してシフトレジスタ71(o,e)から送られた6ビットの発光時間データと、カウンタ72からの6ビットのカウント値とを比較して、その比較結果をなお、タイミングコントローラ69からシフトレジスタ71(o,e)へのタイミング入力信号SRn(o,e)は、カウンタ72のクロック周期を、主走査方向のライン数で除算した時間間隔で行われる。
【0035】
電力調整回路77は、電力供給線51を介して駆動回路78(o、e)に電力を供給する。電力調整回路77は、図12に示すように、例えば、発光素子アレイ8に設けられたVref端子に適当な値の外部抵抗に基づいて、駆動回路78(o、e)に供給する電力を調整する。この外部抵抗の値は、例えば、当該外部抵抗をレーザトリミングすることにより行われる。
【0036】
発光部25において、駆動回路78(o、e)は、コンパレータ73(o、e)からの出力信号、すなわち、容量線52の電圧と、タイミングコントローラ69からのタイミング信号、すなわち、走査線53の電圧とに基づいて選択される駆動回路78(o、e)に接続された有機EL素子79をアクティブマトリクス駆動する。
【0037】
駆動回路78(o、e)は、図12に示すように、発光部25のエリア内に奇数ライン、偶数ラインに分かれて存在する。駆動回路78(o、e)の入力は、容量線52、走査線53、及び電力供給線51に接続されている。コンパレータ73(o、e)は、その出力が容量線52に接続されており、容量線52の電圧を制御して、駆動回路78(o、e)に供給する電圧を制御する。走査線53は、タイミングコントローラ69の走査線出力に接続されており、タイミングコントローラ69は、各ラインの駆動回路78(o、e)を選択して駆動する。電力供給線51は、電力調整回路77の出力に接続されており、電力調整回路77は、有機EL素子79のドライブ電力を供給する。
【0038】
図13は、有機EL素子79及びこれをアクティブマトリクス駆動させるための駆動回路78(o、e)の回路構成を示す図である。図13において、電力供給線51は、ドライビング用トランジスタTr2のソースSbに接続されている。図13において、発光素子として有機EL(OEL)素子79を使用しており、Kはそのカソード端子、Aはそのアノード端子である。アノード端子Aは、ドライビング用トランジスタTr2のドレインDbに接続されている。カソード端子Kは、接地線54に接続されている。走査線53は、スイッチング用トランジスタTr1のゲートGaに接続されている。また、容量線52は、スイッチング用トランジスタTr1のソースSaに接続されている。スイッチング用トランジスタTr1のドレインDaは、ストレージキャパシタCaとドライビング用トランジスタTr2のゲートGbに接続される。ストレージキャパシタCaのもう一方の電極は、ドライビング用トランジスタTr2のソースSbに接続される。
【0039】
有機EL素子79のドライビング用トランジスタTr2のソースSbは電力供給線51に接続され、ドレインDbは有機EL素子79のアノード端子Aに接続される。さらに、ドライビング用トランジスタTr2のゲートGbは、スイッチング用のトランジスタTr1のドレインDaに接続されている。
【0040】
次に、図13の回路の動作について説明する。スイッチング用トランジスタTr1のドレインDaに、電力供給線51の電圧がストレージキャパシタCaを介して印加されている状態で走査線53が通電すると、スイッチング用トランジスタTr1がオンになる。このため、ドライビング用トランジスタTr2のゲート電圧が下がり、電力供給線51の電圧がドライビング用トランジスタTr2のソースSbから供給されてドライビング用トランジスタTr2が導通する。この結果、有機EL素子79が動作して、所定の光量で発光する。また、ストレージキャパシタCaは電力供給線51容量線52の電位差で充電される。
【0041】
スイッチング用トランジスタTr1をオフにした場合にも、ストレージキャパシタCaに充電された電荷に基づいてドライビング用トランジスタTr2は依然として導通状態となっているので、有機EL素子79は発光状態を維持する。したがって、アクティブマトリクスを発光素子アレイ8に形成される各発光部の駆動回路に適用した場合には、画像データ(発光時間データ又は階調データ)をシフトレジスタで転送するためにスイッチング用トランジスタTr1をオフにしたときでも、有機EL素子79の動作が継続して発光を維持し、高輝度で画素の露光を行うことができる。
【0042】
図14は、図9及び図13に示した有機EL素子79及び駆動回路78の配置を示す図である。図9において説明したとおり、本実施形態において、有機EL素子79及び駆動回路78は、それぞれ千鳥状に、かつ交互に配置されている。
【0043】
容量線52及び走査線53は、有機EL素子79と駆動回路78との間に設けられている。本実施形態において、容量線52は、主に発光素子アレイ8(図7参照)の幅方向、すなわち、露光ヘッドの主走査方向において、有機EL素子79と駆動回路78との間に延在している。また、走査線53は、主に発光素子アレイ8の長手方向、すなわち、露光ヘッドの副走査方向において、有機EL素子79と駆動回路78との間に延在している。すなわち、本実施形態において、容量線52及び走査線53は、発光部25において格子状に設けられている。
【0044】
駆動回路78は、容量線52及び走査線53により区切られた領域に、千鳥状に配置されている。すなわち、駆動回路78は、格子状に配置された容量線52及び走査線53によって囲まれた領域に配置されている。
【0045】
駆動回路78並びにそれの周囲に設けられた容量線52及び走査線53は、絶縁層44に覆われている。絶縁層44は、複数の駆動回路78の間における容量線52及び走査線53に囲まれた領域において開口100が設けられており、有機EL素子79は、開口100の内部に設けられている。図14に示すとおり、本実施形態において開口100は円形に設けられているが、楕円形や矩形に設けられてもよい。
【0046】
また、本実施形態において、容量線52及び走査線53は、有機EL素子79が設けられる領域が駆動回路78が設けられる領域より大きくなるように設けられている。具体的には、容量線52は、主に主走査方向に所定の間隔で複数設けられているが、有機EL素子79が設けられる領域における隣接する容量線52の間隔が、駆動回路78が設けられる領域における隣接する容量線52の間隔よりも広くなるように設けられている。
【0047】
図15は、図14に示すI−I方向における発光素子アレイ8の断面図である。発光素子アレイ8は、ガラス基板60上に設けられた電力供給線51、容量線52及びアノード電極17、並びにこれらの上層に設けられた有機EL素子79及び駆動回路78を有して構成される。また、走査線53は駆動回路78の周囲に設けられており、駆動回路78及び走査線53は、絶縁層44により覆われている。
【0048】
絶縁層44は、アノード電極17が露出するように開口100を有しており、有機EL素子79は、開口100の内部において、アノード電極17に接続して設けられている。具体的には、有機EL素子79は、正孔輸送層33、発光層34及び電子輸送層94が積層された構造を有しており、正孔輸送層33がアノード電極17に接続されている。また、有機EL素子79の上層にはカソード電極35が設けられており、電子輸送層94に接続されている。
【0049】
正孔輸送層33、発光層34及び電子輸送層94の各層は、これらを構成する材料を含む液体材料を、開口100に吐出して形成される。すなわち、正孔輸送層33、発光層34及び電子輸送層94の各層は、駆動回路78、容量線52及び走査線53を覆う絶縁層44をバンクとして、開口100の内部に当該液体材料を吐出して形成される。
【0050】
具体的には、まず、絶縁層44に開口100を形成して、開口100の底部にアノード電極17を露出させる。次に、正孔輸送層33を構成する材料を含む液体材料を、開口100に吐出して、アノード電極17上に液体層を形成する。そして、当該液体層から溶媒を蒸発させて、アノード電極17上に正孔輸送層33が形成される。
【0051】
同様に、正孔輸送層33を形成した後、これの上層に発光層34を構成する材料を含む液体材料を吐出させて液体層を形成し、当該液体層から溶媒を蒸発させて発光層34を形成する。そして、発光層34を形成した後、これの上層に電子輸送層94を構成する材料を含む液体材料を吐出させて液体層を形成し、当該液体層から溶媒を蒸発させて電子輸送層94を形成する。これにより、絶縁層44をバンクとして、開口100に有機EL素子79が形成される。
【0052】
<制御タイミングについて>
図16は、タイミングコントローラ69の入力信号タイミングを説明するタイミングチャートである。タイミングコントローラ69の制御ラインは、5組の差動ラインからなり、図16では発光時間データの取り込みに関するタイミングについて説明する。
【0053】
信号SP(P/N)は、スタート信号であり、発光時間データの受信前にパルスが発生し、以降、768画素×6ビット=4608個の発光時間データ受信前毎に発生する(図16(A))。タイミングコントローラ69は、このSP(P/N)信号のパルス数をカウントして、制御回路56に設定されたアドレス値と比較し、合致したときにそれ以降の768×6個のデータを取り込む。
【0054】
信号SDCLK(P/N)は、シリアルデータ同期クロックであり、そのクロックの立ち上がりと立ち下がりの両方に同期してシリアルデータが読み込まれる(図16(B))。信号SDCLKの周期は、各発光素子の最大発光時間を主走査方向の発光素子数で除算し、さらに発光時間データ幅で除算し、その値に信号SDCLKの周期におけるリード回数を乗じた値となる。これらの値は、例えば以下のようになる(A4,600dpi,50ppmのタンデム・カラープリンタとした場合)。
【0055】
最大発光時間=170(μsec)
主軸方向の発光素子数=7680(個)
発光時間データ幅=6(ビット)
SDCLK周期におけるリード回数=2(回)
SDCLK周期=170(μsec)÷7680÷6×2≒7.4(nsec)
従って、信号SDCLKの周波数は、約135.5MHzとなる。
【0056】
信号SD(P/N)は、6ビット1組のシリアルデータ(発光時間データ)であり、図16に示すように、信号SDCLKに同期して読み込まれる(図16(C))。
【0057】
図17は、タイミングコントローラ69の入力信号タイミングを説明するタイミングチャートである。発光素子アレイ8の5組の差動入力信号のうち、図16で示した入力信号以外の2組の入力信号のタイミングを示す。
【0058】
信号RCLR(P/N)は、シフトレジスタ70o、70eのデータクリア信号で、このパルスにより、シフトレジスタ71(o,e)へ出力される発光時間データがクリアされる(図17(A))。なお、信号RCLR(P/N)は、光量調整用レジスタのデータクリア信号も兼ねている。
【0059】
信号TCCLK(P/N)は、タイミングコントローラ69が制御する発光素子の発光時間制御に関わる基準クロックであり、これをもとに、信号Shift Clk、信号CCLK、信号OELn/O、信号OELn/E、信号SRn/O、信号SRn/Eのタイミングが決められている(図17(B))。
【0060】
図18は、タイミングコントローラ69からシフトレジスタ110o、110eへ送る発光時間データの転送タイミングを示すものである。信号SPCLKは画像データの転送スタート信号であり(図18(A))、信号PDCLKはデータ転送時の同期クロックである(図18(B))。信号PADn(n:0〜5)は、パラレルの発光時間データであり、信号PDCLKの立ち上がりと立ち下がりに同期してシフトレジスタ110o、110eに順次書き込まれる(図18(C)〜図18(H))。
【0061】
図19は、タイミングコントローラ69のセレクタ部出力信号タイミングの詳細を説明するタイミングチャートである。
【0062】
信号TCCLKは、発光素子の発光時間を制御するための基準クロックであり、その周期は、各発光素子の最大発光時間を発光時間制御分割数で除して、さらに副走査方向のライン数で除した値とされている(図19(A))。例えば、A4,600dpi,50ppmのタンデム・カラープリンタとした場合、以下のようになる。
【0063】
最大発光時間=170(μsec)
発光時間制御分割数=26=64(分割)
副走査方向のライン数=8(ライン)
TCCLK周期=170(μsec)÷64÷8≒332(nsec)
従って、信号TCCLKの周波数は、約3MHzとなる。
【0064】
信号SHIFT CLKは、シフトレジスタ71o、71eのレジスタ保持値を順次シフトして行くためのクロックであり、各素子の最大発光時間を、発光時間制御分割数で除したものである(図19(B))。
【0065】
信号CCLKは、発光タイミング制御回路116o、116eのカウント入力信号であり、信号SHIFT CLKと同じ周波数である(図19(C))。
【0066】
走査線信号OEL1/Oとレジスタ選択信号SR1/Oは、同じタイミングで、SHIFT CLKの立ち下がりから1番目のTCCLKの立ち上がりに同期して、TCCLKクロック1周期分のパルスを発生する(図19(D)、図19(E))。
【0067】
信号OEL ON/OFFは、有機EL素子79のON時間(発光時間)を示すものであり、本例の場合、発光時間幅は0マイクロ秒から最大発光時間170マイクロ秒である(図19(F))。
【0068】
これらの信号に即して発光動作を説明する。レジスタ選択信号SR1/Oによりシフトレジスタ71oの1段目のレジスタから出力された発光時間データは、カウンタ値と比較されて容量線52にON又はOFFの信号が出力される。一方、これと同タイミングで、走査線信号OEL1/Oが1段目の駆動回路78に一定時間ごとに出力される。
【0069】
上述した通り、走査線信号OEL1/OがONとなったときに容量線52がONであれば、有機EL素子79が点灯する。そして、走査線信号OEL1/OがOFFとなっても、有機EL素子79の点灯が維持される。更に走査線信号OEL1/OがONとなったときに容量線52がOFFであれば、有機EL素子79が消灯する。
【0070】
図20は、タイミングコントローラ69のセレクタ部と発光素子駆動回路の信号タイミングを説明するタイミングチャートである。図20では、副走査方向の偶数ラインと奇数ライン合わせて8ラインの発光素子の発光制御タイミングについて説明する。
【0071】
走査線信号OELn/Oとレジスタ選択信号SRn/Oは、同じタイミングで、SHIFT CLKの立ち下がりからn番目のTCCLKの立ち上がりに同期して、TCCLKクロック1周期分のパルスを発生する。レジスタ選択信号SRn/Oは、シフトレジスタ71のnライン目のレジスタを選択するので、当該レジスタから出力された発光時間データがコンパレータ73にてカウンタ値と比較され、容量線52にON又はOFFの信号が出力される。一方これと同タイミングで、走査線信号OELn/Oは、nライン目の発光素子走査線を選択する。上述のように駆動回路78は、走査線が選択されている時だけ、そのときの容量線52の状態によって発光素子をON/OFFできる。従って容量線52を共通にする他の発光素子駆動回路に接続された走査線の選択タイミングをずらすことにより、複数の駆動回路78を時分割駆動することができる。
【0072】
シフトレジスタ71の各レジスタの発光時間データに基づく発光がすべて終了したら、SHIFT CLKの64パルスごとにシフトレジスタ71の各レジスタの発光時間データを次のレジスタにシフトさせ、同様に発光させる。このとき、感光体と有機ELアレイとの副走査方向の相対位置を移動させることにより、感光体上の同一画素に、同一の発光時間データに基づく露光を重ねて行うことができる。
【0073】
上記発明の実施形態を通じて説明された実施例や応用例は、用途に応じて適宜に組み合わせて、又は変更若しくは改良を加えて用いることができ、本発明は上述した実施形態の記載に限定されるものではない。そのような組み合わせ又は変更若しくは改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】露光ヘッドの全体を上側から見た平面図である。
【図2】露光ヘッド1の図1に示すA部の部分拡大図である。
【図3】図2に示すI−I線方向における断面図である。
【図4】露光ヘッド1の図2に示すB部の部分拡大図であり、集光レンズアレイ4の詳細構成を示している。
【図5】集光レンズアレイ4の配列状態について更に詳細に説明する図である。
【図6】図5に示す配列状態の露光ヘッドにより感光体を露光した場合の状態を説明する図である。
【図7】発光素子アレイ8について更に詳細に説明する図である。
【図8】図7に示すI−I方向の断面図である。
【図9】発光部25の拡大図である。
【図10】画像形成装置の内部における画像データの経路を中心とした露光制御回路の構成例を示すブロック図である。
【図11】露光ヘッド1a〜dに含まれる発光素子アレイ8の構成を示すブロック図である。
【図12】各露光ヘッド1a〜dに含まれる発光素子アレイ8の回路構成を詳細に説明する図である。
【図13】有機EL素子79及びこれをアクティブマトリクス駆動させるための駆動回路78(o、e)の回路構成を示す図である。
【図14】図9及び図13に示した有機EL素子79及び駆動回路78の配置を示す図である。
【図15】図14に示すI−I方向における発光素子アレイ8の断面図である。
【図16】タイミングコントローラ69の入力信号タイミングを説明するタイミングチャートである。
【図17】タイミングコントローラ69の入力信号タイミングを説明するタイミングチャートである。
【図18】タイミングコントローラ69からシフトレジスタ110o、110eへ送る発光時間データの転送タイミングを示すものである。
【図19】タイミングコントローラ69のセレクタ部出力信号タイミングの詳細を説明するタイミングチャートである。
【図20】タイミングコントローラ69のセレクタ部と発光素子駆動回路の信号タイミングを説明するタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0075】
1・・・露光ヘッド、2・・・コネクタ、3・・・支持フレーム、4・・・集光レンズアレイ、8・・・発光素子アレイ、13・・・集光レンズ、17・・・アノード電極、21・・・制御ライン用パッド、24・・・封止剤、25・・・発光部、27・・・貫通孔、31・・・吸湿剤、33・・・正孔輸送層、34・・・発光層、35・・・カソード電極、44・・・絶縁層、51・・・電力供給線、52・・・容量線、53・・・走査線、54・・・接地線、56・・・制御回路、57・・・データ制御用ライン、58・・・電源用ライン、60・・・ガラス基板、64・・・プリンタコントローラ、65・・・画像データ送信部、66・・・差動信号配線、68・・・ヘッド制御部、69・・・タイミングコントローラ、70・・・レジスタ、71・・・シフトレジスタ、72・・・カウンタ、73・・・コンパレータ、74・・・発光素子駆動回路、77・・・電力調整回路、78・・・駆動回路、79・・・有機EL素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の有機EL素子を有する露光ヘッドであって、
基板上において千鳥状に配置されており、前記複数の有機EL素子を発光させる複数の駆動素子と、
前記駆動素子を覆うように設けられた絶縁層と、
前記絶縁層において、前記複数の駆動素子間に設けられた複数の開口と、
を備え、
前記有機EL素子は、前記複数の開口に設けられたことを特徴とする露光ヘッド。
【請求項2】
前記駆動素子の周囲に設けられ、前記駆動素子に接続された複数の走査線及び複数の容量線をさらに備え、
前記絶縁層は、前記複数の走査線及び前記複数の容量線をさらに覆うように設けられており、
前記複数の開口は、前記複数の駆動素子間において、前記複数の走査線及び前記複数の容量線によって囲まれた領域に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の露光ヘッド。
【請求項3】
前記有機EL素子は、有機EL材料を前記開口に吐出して形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の露光ヘッド。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載の露光ヘッドを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−181979(P2006−181979A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−380922(P2004−380922)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】