説明

露光マーキング装置及び方法

【課題】安価な低出力のレーザを利用して、高品質の識別コードや任意のパターンを形成するマーキング装置及び方法を提供する。
【解決手段】感光剤が塗布された基板上の所定の位置に識別コードを露光マーキングする装置及び方法であって、識別コードに対応するドットパターン生成部と、ドットパターンのドット部を感光させるためのレーザ光線照射部と、基板の所定位置におけるドットパターンのドット部にレーザ光線を偏向させる光線偏向部とを備え、ドット部一箇所に対してレーザ光線を複数回照射でき、ドットパターンの各ドット毎に識別コードの各ドット部の径が現像後に同じになるように、レーザ光線を照射すべき回数を登録し、ドット部一箇所に対してレーザ光線を照射した回数を計数し、照射規定回数だけ各ドット部にレーザ光線を照射する機能を備えたことを特徴とする、識別コードの露光マーキング装置及び方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルディスプレイや半導体チップなどに、識別コードや任意のパターンを露光マーキングする装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ(以下、FPD)や半導体チップの製造工程では、前記製造工程における製造条件や各種製造に関する情報の履歴がトレースできる様に、識別コードと呼ばれる固有のID(例えば、2次元コードなど)が付加されている。そして、前記識別コードは、ダイレクトマーキングや、フォトリソグラフィ方法によって付加(以下、マーキング)されている。
【0003】
前記FPDや前記半導体チップは、一つの基板内に多数配置されて、一括して製造される場合が多い。そのため、前記FPDや前記半導体チップの識別コードは、一つの基板内に配置されたパネルやチップに対応させて、各々マーキングされている。
【0004】
また、前記識別コードとは別に、アライメントマークや、製造元の名称やロゴマーク、マーキング対象物の品名や型式や製造ロットなどの付加情報を示す文字、数字、その他の図形や記号など、任意のパターンが、マーキングされる場合もある。
【0005】
マーキング方式は、マーキング対象物の材質や大きさ、前記識別コードや前記任意パターンをマーキングするために与えられる時間(以下、タクト時間)などを考慮して、適宜決定される。露光マーキングに関する技術としては、特許文献1が例示される。
【0006】
一方、樹脂基板にビアホールを形成する(いわゆるダイレクトマーキング)技術分野においては、音響光学素子の偏向効率の制御に関する技術が開示されている(例えば特許文献2)。この中では、音響光学素子に印加させる交流電圧の周波数や振幅を変化させることで、出射されるレーザ光線の進行方向を変化させたときでも、それぞれの角度のレーザ光線の出力を一定にすることが可能となっている。また、ダイレクトマーキングでは、ショット数を増やすことで、マーキングの径を一定に保ちつつ、マーキングの深さを深くする技術が開示されている(例えば特許文献3)。
【0007】
図6は、従来の露光マーキング装置の一例を示す正面図であり、基板10の所定の範囲に対して露光マーキングする様子を示している。
従来の露光マーキング装置1zは、感光剤が塗布された基板10を載置するテーブル23と、レーザ発振器31zなどを含んで構成されている。
露光マーキング装置1zでは、レーザ光線32zの照射方向を調節するために、音響光学偏光器を用い、第1次高調波成分を、露光エネルギーとして使用している。レーザ発振器31zから照射されたレーザ光線32zは、ミラー33zで反射され、音響光学偏光器48x,48yを通過して、基板10に照射される。音響光学偏光器48x,48yは、周波数変調器49x,49yに接続されており、印加される交流電圧の周波数や振幅を変化させることで、それぞれを通過するレーザ光線の方向を1方向に変化させることができる。周波数変調器49x,49yは、マーキングコントローラ40zに接続されており、音響光学偏光器48x,48yの偏向方向や偏向角度を制御することができる。このような構成をしているので、レーザ発振器31zより照射されたレーザ光線32zを、基板10上の所定の範囲内の所定の位置に照射できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−131392号
【特許文献2】特開2008−129535号
【特許文献3】特開2000−343253号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図7は、従来の装置で露光した識別コードの現像後イメージ図であり、上述の所定の範囲に対して露光された識別コード10zを、現像処理した後の観察イメージを示している。レーザ31zから照射されたレーザ光線32は、音響光学偏光器48x,48yは、コントローラ40zから印加される交流電圧の周波数や振幅を変化させることで、通過するレーザ光線の方向を変えることができる。しかし、偏向の角度を大きくすると、音響光学偏光器の特性上、エネルギーが減少してしまう。そのため、露光エリアの中心部は露光エネルギーが最も高く、露光エリアの周辺部に近づくにつれて露光エネルギーが低くなる。
【0010】
そのような条件の下で露光された識別コード10zの各ドット部は、同じエネルギー強度のレーザ光線32が照射されたにも関わらず、音響光学偏光器48x,48yを通過して照射方向が変わることで、現像後に表れるドット部の直径が異なることになる。このとき、露光エリアの外周部のドット部10z1は最も径が小さく、外周部より内側のドット部10z2と更に内側のドット部10z3は徐々に径が大きくなり、露光エリアの中央部のドット部10z4は最も径が大きい。このように、1つの識別コード10zを構成する、それぞれのドット部の大きさが異なると、コードの識別が難しい場合がある。
【0011】
音響光学偏光器を用いた従来の露光マーキング装置1では、露光エリアの中央部以外を露光する際にレーザ光線32zの直径を調節したり、大出力のレーザを用いて露光エリアの中央部を露光するときは出力を下げ、周辺部を露光するときは出力を上げて露光面での露光エネルギーを調整したりして、露光エリアの中央部と周辺部との現像後の直径の均一化を図っていた。
【0012】
しかし、それぞれのドット部は非常に高速で連続的に露光マーキングされており、場所毎に照射パワーや照射されるレーザ光線の径を瞬時に可変調節することは難しい。また、それらが瞬時に可変調節できたとしても、可変調節機構内の光学部品の僅かな光軸のずれに起因して、基板10上に露光されるドット部の露光位置の再現性を保つことが難しくなる。さらに、それらを補正するためには、非常に高価な機器を使用する必要がある。一方、高出力のレーザを用いると、それ自体のコストや、そのレーザパワーに耐えうる高価な光学素子を使用する必要もあった。
【0013】
そこで本発明は、安価な低出力のレーザを利用して、高品質の識別コードや任意のパターンを形成するマーキング装置及び方法を提供すること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
感光剤が塗布された基板上の所定の位置に識別コードを露光マーキングする装置であって、
前記識別コードに対応するドットパターンを生成するドットパターン生成部と、
前記ドットパターンのドット部を感光させるためのレーザ光線を照射させるレーザ照射部と、
前記基板の所定位置における前記ドットパターンのドット部に前記レーザ光線が照射されるように前記レーザ光線を偏向させる光線偏向部とを備え、
前記ドット部一箇所に対して前記レーザ光線を複数回照射でき、
前記ドットパターンの各ドット毎に、
前記識別コードの各ドット部の径が現像後に同じになるように、前記レーザ光線を照射すべき回数を登録する照射規定回数登録部と、
前記ドット部一箇所に対して前記レーザ光線を照射した回数を計数する実照射回数カウント部を備え、
前記照射規定回数だけ各ドット部に前記レーザ光線を照射することを特徴とする、識別コードの露光マーキング装置である。
【0015】
請求項3に記載の発明は、
感光剤が塗布された基板上の所定の位置に識別コードを露光マーキングする方法であって、
前記識別コードに対応するドットパターンを生成する識別コード生成ステップと、
前記ドットパターンのドット部を感光させるためにレーザ光線を照射させるレーザ光線照射ステップと、
前記基板の所定位置における前記ドットパターンのドット部に前記レーザ光線が照射されるように前記レーザ光線を偏向させる光線偏向ステップとを有し、
前記ドット部一箇所に対して前記レーザ光線を複数回照射する繰り返し照射ステップをさらに有し、
前記ドットパターンの各ドット毎に、
前記識別コードの各ドット部の径が現像後に同じになるように、前記レーザ光線を照射すべき回数を登録する照射規定回数登録ステップと、
前記ドット部一箇所に対して前記レーザ光線を照射した回数を計数する実照射回数カウントステップを有し、
前記照射規定回数登録ステップで登録した回数に基づいて、前記繰り返し照射ステップを行うことを特徴とする、識別コードの露光マーキング方法である。
【0016】
請求項1及び請求項3に記載の発明により、
ショット数を増やすことでドット部の直径を大きくすることができる。そのため、マーキングエリア内でマーキング光線のエネルギー分布が異なる場合でも、ショット数を適宜設定することで、マーキングエリア内の各ドット部の直径を均一化することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、
前記マーキング光線が、紫外線領域の光線であることを特徴とする
請求項1に記載の露光マーキング装置である。
【0018】
請求項4に記載の発明は、
前記マーキング光線が、紫外線領域のレーザ光線であることを特徴とする
請求項3に記載の露光マーキング方法である。
【0019】
請求項2及び請求項4に記載の発明により、
光学部材やその表面のコーティングのダメージを受けやすい紫外線領域のレーザ発信器を用いても、エネルギー出力が低いものを使用することができ、ダメージを抑えることができ、長寿命化が図れる。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、安価な低出力のレーザを利用して、高品質の識別コードや任意のパターンを形成するマーキングができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明を具現化する形態の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明を具現化する形態の一例を示すシステム構成図である。
【図3】本発明を適用させずに露光したドット部の位置と積算露光強度の相関図である。
【図4】本発明を適用させて露光したドット部の位置と積算露光強度の相関図である。
【図5】本発明を適用させて露光した識別コードの現像後イメージ図である。
【図6】従来の露光マーキング装置の一例を示す正面図である。
【図7】従来の装置で露光した識別コードの現像後イメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態について、図を用いながら説明する。
各図において直交座標系の3軸をX、Y、Zとし、XY平面を水平面、Z方向を鉛直方向
とする。特にZ方向は矢印の方向を上とし、その逆方向を下と表現する。
【0023】
図1は、本発明を具現化する形態の一例を示す斜視図であり、露光マーキング装置1の全体構成を示している。図2は、本発明を具現化する形態の一例を示すシステム構成図であり、露光マーキング装置1に関するシステム構成が示されている。
露光マーキング装置1は、基板移動部2と、レーザ照射部3と、光線偏向部4と、制御部9とを含んで構成されている。ここでは、露光マーキングの対象として、ガラスに感光性樹脂(いわゆる、フォトレジスト)が塗布された基板10を例示して説明する。
【0024】
基板移動部2は、装置ベース11上に取り付けられたX軸ステージ21と、X軸ステージ21上に取り付けられたY軸ステージ22と、Y軸ステージ22上に取り付けられたテーブル23とを含んで、構成されている。X軸ステージ21は、その上に取り付けられたY軸ステージ22をX方向に移動させることができ、Y軸ステージ22は、その上に取り付けられたテーブル23をY方向に移動させることができる。
【0025】
基板移動部2は、前記の様な構成をしているので、テーブル23上に載置された基板10を、XY方向に移動させたり、それぞれを任意の位置で静止させたりすることができる。テーブル23は、表面に溝や孔が形成されており、前記溝や孔は、開閉制御用バルブを介して真空源に接続されている。テーブル23に載置された基板10は、負圧により吸着保持され、テーブル23の移動中に位置ずれしないようになっている。
【0026】
レーザ照射部3は、レーザ発振器31と、アンプ部30とを含んで構成されており、アンプ部30に対して制御信号を付与すると、アンプ部30に接続されたレーザ発振器31から、レーザ光線32が照射される。レーザ光線32は、ミラー33にて反射されて照射方向が変えられ、光線偏向部4に入射される。
【0027】
光線偏向部4は、2つの音響光学偏光器41x、41yと、周波数変調器42x,42yとを含んで構成されている。音響光学偏光器41x,41yは、それぞれ周波数変調器42x,42yに接続されており、印加される交流電圧の周波数や振幅を変化させることで、それぞれを通過するレーザ光線の方向を1方向に変化させることができる。
周波数変調器42x,42yは、マーキングコントローラ40に接続されており、音響光学偏光器41x,41yの偏向方向や偏向角度を制御することができる。
光線偏向部4は、このような構成をしているので、レーザ照射部3より照射されたレーザ光線を、基板10上の所定の範囲内の所定の位置に照射できる。
【0028】
図2に示すように、制御部9には、制御用コンピュータ90と、情報入力手段91と、情報表示手段92と、発報手段93と、情報記録手段94と、機器制御ユニット95とが接続されて含まれている。
制御用コンピュータ90としては、マイコン、パソコン、ワークステーションなどの、数値演算ユニットが搭載されたものが例示される。
情報入力手段91としては、キーボードやマウスやスイッチなどが例示される。
情報表示手段92としては、画像表示ディスプレイやランプなどが例示される。
発報手段93としては、ブザーやスピーカ、ランプなど、作業者に注意喚起をすることができるものが例示される。
情報記録手段94としては、メモリーカードやデータディスクなどの、半導体記録媒体や磁気記録媒体や光磁気記録媒体などが例示される。
機器制御ユニット95としては、プログラマブルコントローラやモーションコントローラと呼ばれる機器などが例示される。
レーザ発振器30は、マーキングコントローラ40と、制御用コンピュータ90とに接続されている。
【0029】
本発明に用いるレーザ発振器31としては、Qスイッチ式のYAGレーザやYVOレーザを例示でき、レーザ光線32としては、緑色(波長532nm付近)や紫外光(波長355nm付近)の波長のものが例示できる。Qスイッチ方式のレーザ発振器31は、アンプ部30にトリガー信号を与えると、予め設定されたパルス幅とピークパワーのエネルギーが、レーザ発振器31から照射される構造をしている。
【0030】
マーキングコントローラ40は、アンプ部30に対して、レーザ発振器31からレーザ光線32を照射させる為のトリガー信号を出力する。
制御用コンピュータ90は、アンプ部30に対して、レーザ発振器31からレーザ光線32を照射することを許可する信号(いわゆるENABLE信号)を出力したり、レーザ発振器31から照射されるレーザ光線32の出力を設定する値(いわゆる電流値など)や、レーザ発振器31内のSHG結晶及びTHG結晶などの温度設定値などの情報を送信する。
【0031】
アンプ部30は、前記トリガー信号に基づいて、前記所定のパルス幅とピークパワーを有するエネルギーを、レーザ発振器31からレーザ光線32として照射する。
アンプ部30は、制御用コンピュータ90に対して、アンプ部30及びレーザ発振器31に関するアラーム信号を出力したり、アラーム情報や、レーザ発振器31内のSHG及びTHG温度情報、レーザ発振器31に印可された電流値などを送信したりする。
上述の各信号や各情報の送信手段としては、電圧や電流によるアナログ信号やデジタル信号、データ通信などが上げられる。
【0032】
制御用コンピュータ90と機器制御ユニット95は、マーキングコントローラ40に接続されており、予め登録された露光用レシピファイルの内容に基づいて、基板10上の所定の位置に識別コードの各ドット部を形成するためのレーザ光線が照射され、露光マーキングが行われる。
【0033】
前記露光用レシピファイルの内容としては、識別コードのドットパターン、露光位置及び露光エネルギーなどが登録されている。
【0034】
[複数回露光によるドット径の増加]
図3は、本発明を適用させずに露光したドット部の位置と積算露光強度の相関図であり、上述で図7を用いて説明した従来の識別コード10zのドット部10z1〜10z4に対して、1回ずつレーザ光線がパルス状のエネルギーとして照射されたときの、エネルギー分布を示す線10e1〜10e4を例示している。各ドット部は、照射されたエネルギーの内で積算露光強度がしきい値SHを超えた領域が、現像後に各ドット部10z1〜10z4として表れ、それぞれの直径はD1〜D4となる。
【0035】
図4は、本発明を適用させて露光したドット部の位置と積算露光強度の相関図であり、図3を用いて説明したエネルギー分布を有するエネルギーを、露光エリア内の場所に応じて複数回パルス状のエネルギーとして照射したときの積算露光強度を例示している。
露光エリアの最外周(図中では最も左側)のドット部は、1回の露光エネルギーが少ないが、合計4回の露光エネルギーを付与することで積算露光強度が増し、エネルギー分布を示す線10e1’の様になる。
露光エリアの最外周より内側(図中では左から2つめ)のドット部は、1回の露光エネルギーが少ないが、合計3回の露光エネルギーを付与することで積算露光強度が増し、エネルギー分布を示す線10e2’の様になる。
露光エリアの中心より外側(図中では右から2つめ)のドット部は、1回の露光エネルギーが少ないが、合計2回の露光エネルギーを付与することで積算露光強度が増し、エネルギー分布を示す線10e3’の様になる。
露光エリアの中心(図中では最も右側)のドット部は、1回の露光エネルギーを付与することで所定の積算露光強度があり、エネルギー分布を示す線10e4のとおりである。
【0036】
上述の様にして露光されたドット部は、現像すると、エネルギー分布を示す線10e1’〜10e3’及び10e4の積算露光強度がしきい値SHを超えた領域がドット部として表れ、それぞれの直径は、D1’〜D3’及びD4となる。これら繰り返して露光したドット部の直径D1’〜D3’は、繰り返し無しで露光したドット部の直径D1〜D3よりも大きくなっている。
このとき、それぞれのドット部の直径D1’〜D3’とD4とが、概ね同じ直径となるように、それぞれのドット部を露光するための繰り返し露光回数を、前記露光用レシピファイルに設定しておく。
【0037】
図5は、本発明を適用させて露光した識別コードの現像後イメージ図であり、露光エリアの最外周から中心部まで、どのドット部も同じ直径になっていることを示している。
前記露光用レシピファイルは、1つの露光エリア内に露光マーキングされるドット部に対して、どのドット部に何回ずつマーキング光線を照射するかを設定して登録するので、本発明における照射規定回数登録部に相当する。
制御コンピュータ90は、前記照射規定回数に基づいて、ドット部一箇所に対して、何回露光したかを計測する。そのため、制御コンピュータ90は、本発明における実照射回数カウント部としての機能を備えている。
【0038】
上述の説明では、露光エリアの中心部のドットは、1回しか露光しない例を示したが、更に低いレーザ出力のものを用いて、複数回露光するものであっても良い。その場合、露光エリアの周辺部のドット部に対しては、さらに露光回数を増やす必要があるが、レーザの繰り返し照射ができる周波数が高く、所定の時間内に全ての露光対象部に露光でき、現像後のドット部が所望の径で形成されれば良い。
【0039】
本発明を適用するにあたって、露光回数を変えてドット径を同じ直径にしようとしても、厳密に測定すると完全に一致していない場合がある。この場合、どの程度のドット径のばらつきの範囲を同じものとして扱うかどうかは、露光テスト及び識別テストにより決定する。その場合、露光エリア中央部の露光回数を多く設定できれば、隣接するドット部との露光回数が異なることにより起因する、外側のドット部の方が内側のドット部よりも径が大きくなる現象(いわゆる、逆転現象)を緩和することができる。
【0040】
ここでいう、ドット部の径が同じとは、人が見て同じと判断できるかどうか、あるいは識別コードの読み取り装置にて許容し得るばらつきの範囲内であれば、厳密に測定した結果が異なっていても、ドット部の径が同じものとして取り扱う。
上述の露光エリア内のどの部分のドットを何回繰り返して露光するかという設定は、事前の露光テストにより決定し、前記露光用レシピファイルに設定する。
【0041】
上述の説明の様に、本発明を適用した露光マーキング装置1によれば、
低出力のレーザ発振器を用いることができ、ミラー33zやレンズの素材やコーティングの耐久力を過度に高める必要もなくなるため、コストダウンが図れる。また、レーザ光線のビーム径を可変調節する機構の設置も不要となり、コストダウンが図れると共に、可変調整機構に起因する光軸ずれも生じない。そのため、基板10上に露光されるドット部の露光位置の再現性が保たれる。
【0042】
本発明を適用した露光マーキング装置では、マーキング光線を照射する手段として繰り返し周波数の高いレーザ発振器を用いることにより、全体の露光時間の短縮も図れる。
【0043】
本発明は、可視光領域の露光マーキングに適用できるが、紫外光領域のレーザ光線による露光マーキングに適用させることが好ましい。紫外光領域のレーザ光線を照射するレーザ発振器は、YAGレーザやYVOレーザから照射されるエネルギー(波長1064nm付近)を基本波長とし、第2高調波成分を取り出すためのSHG結晶、第3高調波成分を取り出すためのTHG結晶が用いられている。さらに、深紫外光領域のレーザ光線を照射するレーザ発振器には、第4高調波成分を取り出すためのFHG結晶が用いられている。前記第3及び第4高調波成分(つまり、紫外線領域の光)は、高価であり、レーザ光線からのダメージを最小限に抑えるために、表面にコーティングが施されている。そのため、低出力のレーザを用いることにより、これらレーザ発振器内部の結晶(SHG結晶・THG結晶・FHG結晶など)や、ミラー33に照射されるエネルギーを低く抑えることができる。そうすることで、それらの光学素子やコーティングに与えるダメージを減らすことができ、長時間安定して使用し続けることが可能となる。
上述では、基本波長を出力するレーザ発振器として、YAGレーザやYVOレーザを例示したが、YLF(基本波長1050nm前後)であっても良い。
【符号の説明】
【0044】
1 露光マーキング装置
2 基板移動部
3 レーザ照射部
4 光線偏向部
9 制御部
10 基板
10d 識別コード
10d1〜10d4 本発明による識別コードのドット部
10e1〜10e4 ドット部に付与されたエネルギー分布を示す線(1回露光)
10e1’〜10e3’ ドット部に付与されたエネルギー分布を示す線(複数回露光)
10z 従来の識別コード
10z1〜10z4 従来の識別コードのドット部
21 X軸ステージ
22 Y軸ステージ
23 テーブル
30 アンプ部
31 レーザ発振器
32 レーザ光線
33 ミラー
40 マーキングコントローラ
41x 音響光学偏向器
41y 音響光学偏向器
42x 周波数変調器
42y 周波数変調器
90 制御用コンピュータ
91 情報入力手段
92 情報出力手段
93 発報手段
94 情報記録手段
95 制御ユニット
96 画像処理ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光剤が塗布された基板上の所定の位置に識別コードを露光マーキングする装置であって、
前記識別コードに対応するドットパターンを生成するドットパターン生成部と、
前記ドットパターンのドット部を感光させるためのレーザ光線を照射させるレーザ照射部と、
前記基板の所定位置における前記ドットパターンのドット部に前記レーザ光線が照射されるように前記レーザ光線を偏向させる光線偏向部とを備え、
前記ドット部一箇所に対して前記レーザ光線を複数回照射でき、
前記ドットパターンの各ドット毎に、
前記識別コードの各ドット部の径が現像後に同じになるように、前記レーザ光線を照射すべき回数を登録する照射規定回数登録部と、
前記ドット部一箇所に対して前記レーザ光線を照射した回数を計数する実照射回数カウント部を備え、
前記照射規定回数だけ各ドット部に前記レーザ光線を照射することを特徴とする、識別コードの露光マーキング装置。
【請求項2】
前記レーザ光線が、紫外線領域の光線であることを特徴とする
請求項1に記載の露光マーキング装置。
【請求項3】
感光剤が塗布された基板上の所定の位置に識別コードを露光マーキングする方法であって、
前記識別コードに対応するドットパターンを生成する識別コード生成ステップと、
前記ドットパターンのドット部を感光させるためにレーザ光線を照射させるレーザ光線照射ステップと、
前記基板の所定位置における前記ドットパターンのドット部に前記レーザ光線が照射されるように前記レーザ光線を偏向させる光線偏向ステップとを有し、
前記ドット部一箇所に対して前記レーザ光線を複数回照射する繰り返し照射ステップをさらに有し、
前記ドットパターンの各ドット毎に、
前記識別コードの各ドット部の径が現像後に同じになるように、前記レーザ光線を照射すべき回数を登録する照射規定回数登録ステップと、
前記ドット部一箇所に対して前記レーザ光線を照射した回数を計数する実照射回数カウントステップを有し、
前記照射規定回数登録ステップで登録した回数に基づいて、前記繰り返し照射ステップを行うことを特徴とする、識別コードの露光マーキング方法。
【請求項4】
前記レーザ光線が、紫外線領域のレーザ光線であることを特徴とする
請求項3に記載の露光マーキング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−206126(P2012−206126A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71657(P2011−71657)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】