説明

露光装置及び画像形成装置

【課題】ホログラム素子の外側を通過して被露光面に到達する光を凹凸構造で減衰させて、不要露光を低減することができる露光装置と、該露光装置を備える画像形成装置と、を提供する。
【解決手段】複数の発光素子が並ぶように配列された基板と、基板上に配置された記録層であって、複数の発光素子の各々に対応する複数のホログラム素子が多重記録された記録層と、複数の発光素子と被露光面との間に配置され、当該層の光入射側又は光出射側の表面に凹凸構造を有し、当該層を通過する光の光路を調整する光路調整層と、を備えた露光装置とする。凹凸構造は、当該構造を通過する光の進行方向を変化させて、対応するホログラム素子の外側を通過して被露光面に到達する光を減衰させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、画像を多数の微小な画素に分割し、一つもしくは複数の光源から各画素の濃度に対応した強度の光束を射出し、当該光束による輝点を、閾値以上の光量密度の光が照射されることにより、感光して表面電位変化や化学的変化等の潜像が形成される、又は感光して濃度変化を持つ画像が形成される画像記録媒体の上に走査して、各画素領域を順次感光させることにより画像を書込む光書込み装置において、前記光源と前記画像記録媒体との間であって光源側から順に、光束を集束させる光集束素子部と、光束が集束する位置に設けられた微小な光学的開口部と、該光学的開口部より射出した光束をおおむね平行な光束とするコリメータ部と、光束を複数の方向へ分解して放射すると共に複数の光束をおおむね同一の平面上に集束させるホログラム素子と、を配列された一つのユニットを、主走査方向に画素数と同数のアレイ状に配置したことを特徴とする光書込み装置が記載されている。
【0003】
特許文献2には、光源基板上に配列された複数の発光素子と、透過する光を回折させることにより当該光の光線束を収束させて像を結ぶ複数の回折正レンズを有する第1レンズアレイと、複数のレンズを有し、前記複数の発光素子の各々との間に前記第1レンズアレイを挟む第2レンズアレイとを備え、前記複数の回折正レンズの各々は、前記光源基板に垂直な方向において前記複数の発光素子の各々に重なっていることを特徴とする露光装置が記載されている。
【0004】
特許文献3には、レーザ光源からのレーザ光をスポット状のビームに変換するスイッチング素子と、そのビームを収束させるホログラム素子とを、一対一に対応して複数個存在させたことを特徴とする印字装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−330058号公報
【特許文献2】特開2007−237576号公報
【特許文献3】特開平4−201270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、基板上に配列された複数の発光素子とこれに対応する複数のホログラム素子とを備えた露光装置において、ホログラム素子の外側を通過して被露光面に到達する光を凹凸構造で減衰させて、不要露光を低減することができる露光装置と、該露光装置を備える画像形成装置と、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために各請求項に記載の発明は、下記構成を備えている。
【0008】
請求項1に記載の発明は、複数の発光素子が第1の方向に並ぶように配列された基板と、前記基板上に配置された記録層であって、前記複数の発光素子の各々から射出された射出光が、対応するホログラム素子により回折及び集光されて、被露光面上に前記第1の方向に並ぶ集光点列が形成されるように、前記複数の発光素子の各々に対応する複数のホログラム素子が多重記録された記録層と、前記複数の発光素子と前記被露光面との間に配置され、当該層の光入射側又は光出射側の表面に凹凸構造を有し、当該層を通過する光の光路を調整する光路調整層と、を備え、前記凹凸構造は、当該構造を通過する光の進行方向を変化させて、前記対応するホログラム素子の外側を通過して前記被露光面に到達する光を減衰させる、露光装置である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記光路調整層が、前記記録層に隣接するように配置される、請求項1に記載の露光装置である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記凹凸構造が、入射した光を複数の方向に拡散させる拡散体として機能する、請求項1又は請求項2に記載の露光装置である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記凹凸構造が、複数の凸部が周期的に配列されて、入射した光を予め定めた方向に偏向させる偏向素子として機能する、請求項1又は請求項2に記載の露光装置である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記偏向素子が、前記第1の方向に延びる長尺状のプリズムが凸部を構成し、複数のプリズムが前記第1の方向と交差する第2の方向に周期的に配列されて、入射した光を予め定めた方向に屈折させるプリズムアレイである、請求項4に記載の露光装置である。
【0013】
請求項6に記載の発明は、前記偏向素子が、入射した光を予め定めた方向に回折する回折格子である、請求項4に記載の露光装置である。
【0014】
請求項7に記載の発明は、前記回折格子が、参照光の照射により信号光と同じ回折光を再生するように、信号光及び参照光の二光波による干渉縞を記録したホログラムである、請求項6に記載の露光装置である。
【0015】
請求項8に記載の発明は、前記記録層は容器内に収納されて前記基板上に配置されており、前記容器の一部が前記光路調整層を構成する、請求項1から請求項7までの何れか1項に記載の露光装置である。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項1から請求項8までの何れか1項に記載の露光装置と、前記露光装置と作動距離だけ離間して配置されると共に、前記露光装置に対して前記第1の方向と交差する第2の方向に相対移動され、前記露光装置により画像データに応じて走査露光されて、画像が書き込まれる感光体と、を含む画像形成装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の各請求項に記載の発明によれば、以下の効果がある。
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、基板上に配列された複数の発光素子とこれに対応する複数のホログラム素子とを備えた露光装置において、凹凸構造でホログラム素子の外側を通過して被露光面に到達する光を減衰させる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、光路調整層は記録層を保護する保護層としても機能する。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、ホログラム素子の外側を通過する光を拡散させることができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、ホログラム素子の外側を通過する光を、被露光面外に偏向させることができる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、ホログラム素子の外側を通過する光を第2の方向(例えば、副走査方向)において偏向して、背景雑音を低減させる。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、ホログラム素子の外側を通過する光を回折することで、プリズム等の屈折による偏向素子に比べて、被露光面に到達する光を更に減衰させることができる。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、ホログラム素子の外側を通過する光を、光路調整層の凹凸構造であるホログラムにより所望の方向に回折させることができる。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、光路調整層を、記録層を収納する容器と一体に形成することができる。
【0026】
請求項9に記載の発明によれば、露光装置は、ホログラム素子の外側を通過して被露光面に到達する光を減衰させ、感光体の被露光面での不要露光が低減する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るLEDプリントヘッドの構成の一例を示す概略斜視図である。
【図3】(A)はホログラム素子の概略形状を示す斜視図である。(B)はLEDプリントヘッドの副走査方向に沿った断面図である。(C)はLEDプリントヘッドの主走査方向に沿った断面図である。
【図4】ホログラムが記録される様子を示す模式的な断面図である。
【図5】(A)は光路調整層の表面に形成される凹凸構造の一例を示す部分拡大図である。(B)はホログラムが再生される様子を示す模式的な断面図である。
【図6】(A)〜(C)は光路調整層及び凹凸構造の配置位置の変形例を示す模式的な断面図である。
【図7】(A)は光路調整層の表面に形成される凹凸構造の他の一例を示す部分拡大図である。(B)は凹凸構造を説明するための図である。(C)はホログラムが再生される様子を示す模式的な断面図である。
【図8】(A)及び(B)は角度θの好適範囲を説明するための模式図である。
【図9】(A)は光路調整層の表面に形成される凹凸構造の更に他の一例を示す部分拡大図である。(B)はホログラムが再生される様子を示す模式的な断面図である。
【図10】ホログラム記録層が容器内に収納された一体型LPHの具体的な構成を示す断面図である。
【図11】(A)〜(E)は図10に示す一体型LPHの製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0029】
<画像形成装置>
図1は本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成の一例を示す概略図である。この装置は、電子写真方式で画像を形成する画像形成装置であり、発光ダイオード(LED)を光源に用いたLED方式の露光装置(LEDプリントヘッド、略称「LPH」)を搭載している。LEDプリントヘッドは、機械的な駆動が不要という利点を有する。
【0030】
また、この画像形成装置は、所謂タンデム型のデジタルカラープリンタであり、各色の画像データに対応して画像形成を行う画像形成部としての画像形成プロセス部10、画像形成装置の動作を制御する制御部30、及び画像読取装置3と例えばパーソナルコンピュータ(PC)2等の外部装置とに接続され、これらの装置から受信された画像データに対して予め定めた画像処理を施す画像処理部40を備えている。
【0031】
画像形成プロセス部10は、一定の間隔で並列に配置される4つの画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kを備えている。画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kの各々は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー像を形成する。なお、画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kを、適宜「画像形成ユニット11」と総称する。
【0032】
各画像形成ユニット11は、静電潜像を形成してトナー像を保持する像保持体としての感光体ドラム12、感光体ドラム12の表面を予め定めた電位で一様に帯電する帯電器13、帯電器13によって帯電された感光体ドラム12を露光する露光装置としてのLEDプリントヘッド(LPH)14、LPH14によって得られた静電潜像を現像する現像器17、転写後の感光体ドラム12表面を清掃するクリーナ16を備えている。
【0033】
従来のLPHは、LEDアレイとロッドレンズアレイとで構成されていた。ロッドレンズアレイには、セルフォック(登録商標)など、屈折率分布型のロッドレンズが用いられていた。各LEDから射出された光は、ロッドレンズにより集光されて、感光体ドラム上に正立等倍像が結像される。本実施の形態に係る画像形成装置は、「ロッドレンズ」に代えて「ホログラム素子」を用いたLPHを備えている。
【0034】
LPH14は、感光体ドラム12の軸線方向の長さと略同じ長さの長尺状のプリントヘッドである。LPH14には、長さ方向に沿って複数のLEDがアレイ状(列状)に配列されている。LPH14は、その長さ方向が感光体ドラム12の軸線方向を向くように、感光体ドラム12の周囲に配置されている。本実施の形態のLPH14は、感光体ドラム12の表面から作動距離だけ離間して配置されている。本実施の形態のLPH14は、従来のLPHに比べて作動距離が長い。このため、感光体ドラム12の周方向における占有幅が小さく、感光体ドラム12の周囲の混雑が緩和されている。
【0035】
また、画像形成プロセス部10は、各画像形成ユニット11の感光体ドラム12にて形成された各色のトナー像が多重転写される中間転写ベルト21、各画像形成ユニット11の各色トナー像を中間転写ベルト21に順次転写(一次転写)させる一次転写ロール22、中間転写ベルト21上に転写された重畳トナー像を記録媒体である用紙Pに一括転写(二次転写)させる二次転写ロール23、及び二次転写された画像を用紙P上に定着させる定着器25を備えている。
【0036】
次に上記画像形成装置の動作について説明する。
まず、画像形成プロセス部10は、制御部30から供給された同期信号等の制御信号に基づいて画像形成動作を行う。その際に、画像読取装置3やPC2から入力された画像データは、画像処理部40によって画像処理が施され、インターフェースを介して各画像形成ユニット11に供給される。
【0037】
例えば、イエローの画像形成ユニット11Yでは、帯電器13により予め定めた電位で一様に帯電された感光体ドラム12の表面が、画像処理部40から得られた画像データに基づいて発光するLPH14により露光されて、感光体ドラム12上に静電潜像が形成される。即ち、LPH14の各LEDが画像データに基づいて発光することで、感光体ドラム12の表面が主走査されると共に、感光体ドラム12が回転することで副走査されて、感光体ドラム12上に静電潜像が形成される。形成された静電潜像は現像器17により現像され、感光体ドラム12上にはイエローのトナー像が形成される。同様に、画像形成ユニット11M,11C,11Kにおいて、マゼンタ、シアン、黒の各色トナー像が形成される。
【0038】
各画像形成ユニット11で形成された各色トナー像は、図1の矢印A方向に回転動作する中間転写ベルト21上に、一次転写ロール22により順次静電吸引されて転写される(一次転写)。中間転写ベルト21上には、重畳されたトナー像が形成される。重畳トナー像は、中間転写ベルト21の移動に伴って二次転写ロール23が配設された領域(二次転写部)に搬送される。重畳トナー像が二次転写部に搬送されると、トナー像が二次転写部に搬送されるタイミングに合わせて用紙Pが二次転写部に供給される。
【0039】
そして、二次転写部にて二次転写ロール23により形成される転写電界により、重畳トナー像は搬送されてきた用紙P上に一括して静電転写される(二次転写)。重畳トナー像が静電転写された用紙Pは、中間転写ベルト21から剥離され、搬送ベルト24により定着器25まで搬送される。定着器25に搬送された用紙P上の未定着トナー像は、定着器25によって熱および圧力による定着処理を受けることで用紙P上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Pは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙トレー(不図示)に排出される。
【0040】
<LEDプリントヘッド(LPH)>
図2は本実施の形態に係る露光装置としてのLEDプリントヘッドの構成の一例を示す概略斜視図である。図2に示すように、LEDプリントヘッド(LPH14)は、複数のLED50を備えたLEDアレイ52と、複数のLED50の各々に対応して設けられた複数のホログラム素子54を備えたホログラム素子アレイ56と、を備えている。図2に示す例では、LEDアレイ52は6個のLED50〜50を備え、ホログラム素子アレイ56は6個のホログラム素子54〜54を備えている。なお、各々を区別する必要がない場合には、LED50〜50を「LED50」と総称し、ホログラム素子54〜54を「ホログラム素子54」と総称する。
【0041】
複数のLED50の各々は、LEDチップ53上に配列されている。複数のLED50が配列されたLEDチップ53は、LED50の各々を駆動する駆動回路(図示せず)と共に、長尺状のLED基板58上に実装されている。LEDチップ53は、複数のLED50が主走査方向に並ぶように位置合せをして、LED基板58上に配置されている。これにより、LED50の各々は、感光体ドラム12の軸線方向と平行な方向に沿って配列される。
【0042】
LED50の配列方向が「主走査方向」である。また、LED50の各々は、互いに隣接する2つのLED50(発光点)の主走査方向の間隔(発光点ピッチ)が一定間隔となるように配列されている。また、感光体ドラム12の回転により副走査が行われるが、「主走査方向」と直交する方向を「副走査方向」として図示している。また、以下では、LED50の配置される位置を、適宜「発光点」と称する。
【0043】
複数のLED50の各々は、対応するホログラム素子54側に光を射出するように、発光面をホログラム素子54側に向けて、LEDチップ53上に配置されている。LED50の「発光光軸」は、LED50からLED基板58と直交する方向(法線方向)に射出される光の光軸である。LED基板58は、LED50や駆動回路が実装される側の表面が「主面」である。この主面の法線方向が、LED基板58の法線方向である。従って、LED50の「発光光軸」は、LED基板58の法線方向を向いている。図示した通り、発光光軸は、上記の主走査方向及び副走査方向の各々とも直交する。
【0044】
なお、図2においては、数個のLED50が1列に配列された1個のLEDチップ53で構成されたLPH14を、概略的に図示しているに過ぎない。後述するように、実際の画像形成装置では、主走査方向の解像度に応じて、数百個のLEDチップ53を配列することで、数千個のLED50が配列されている。
【0045】
また、複数のLEDチップ53は、1次元状に配置してもよく、複数列に分けて2次元状に配置してもよい。例えば千鳥状に配置する場合には、複数のLEDチップ53は、主走査方向に並ぶように一列に配置されると共に、副走査方向に一定間隔ずらして二列に配置される。複数のLEDチップ53単位に分けられていても、複数のLED50の各々は、互いに隣接する2つのLED50の主走査方向の間隔が、略一定の間隔となるように配列されている。
【0046】
LEDチップ53としては、複数の自己走査型LED(SLED:Self-scanning LED)が配列されたSLEDチップを用いてもよい。SLEDチップは、スイッチのオン・オフを二本の信号線によって行い、各SLEDを選択的に発光させて、データ線を共通化する。このSLEDチップを用いることで、基板上での配線数が少なくて済む。
【0047】
LED基板58上には、ホログラム記録層60(以下、適宜「記録層60」という。)が配置されている。ホログラム素子アレイ56は、ホログラム記録層60内に形成されている。ホログラム記録層60は、LEDチップ53から予め定めた高さだけ離間された位置に、図示しない保持部材によって保持されている。
【0048】
LEDチップ53とホログラム記録層60との間には、LEDチップ53(即ち、LED50)に隣接する離間層64と、離間層64のホログラム記録層60側に隣接する光路調整層66とが配置されている。ホログラム記録層60に隣接する光路調整層66は、記録層60を保護する保護層としても機能する。なお、後述する通り、光路調整層66は、LEDチップ53とホログラム記録層60との間に配置されていればよく、図2に示す位置には限定されない。
【0049】
ホログラム記録層60には、複数のLED50〜50の各々に対応して、主走査方向に沿って複数のホログラム素子54〜54が形成されている。ホログラム素子54の各々は、互いに隣接する2つのホログラム素子54の主走査方向の間隔(中心点の間隔)が、上記のLED50の主走査方向の間隔と、略同じ間隔となるように配列されている。即ち、互いに隣接する2つのホログラム素子54が互いに重なり合うように、径の大きいホログラム素子54が多重記録されている。また、複数のホログラム素子54の各々は、互いに異なる形状を有していてもよい。
【0050】
ホログラム記録層60は、ホログラムを永続的に記録保持することが可能な高分子材料から構成されている。このような高分子材料としては、いわゆるフォトポリマーを用いてもよい。フォトポリマーは、光重合性モノマーのポリマー化による屈折率変化を利用してホログラムを記録する。
【0051】
離間層64は、LEDチップ53とホログラム記録層60とを離間する。離間層64は、空気や透明樹脂等、LED50から射出される光に透明な材料で構成されている。光路調整層66は、ガラスや樹脂等、離間層64とは屈折率の異なる材料で構成されて、離間層64との間に界面を形成する。光路調整層66は、LED50から射出される光に透明な材料で構成されている。
【0052】
離間層64を低屈折率の空気層とし、光路調整層66を高屈折率の樹脂層とする等、光路調整層66を離間層64よりも屈折率が高い材料で構成してもよい。空気の屈折率は1である。光路調整層66を構成する材料としては、ポリスチレン(屈折率:1.60)、メタクリル樹脂(屈折率:1.49)、ポリカーボネート樹脂(屈折率:1.59)、シクロポリオレフィン樹脂(屈折率:1.51)等の樹脂材料、硼珪酸ガラス(屈折率:1.51)等の無機材料が挙げられる。
【0053】
また、離間層64を高屈折率の透明樹脂層とし、光路調整層66を低屈折率の樹脂層とする等、光路調整層66を離間層64よりも屈折率が低い材料で構成してもよい。離間層64を高屈折率層とした場合には、隣接するLED50との屈折率差が小さくなり、光取り出し効率が向上する。
【0054】
光路調整層66は、LED基板58側の表面に凹凸構造66Aを有している。以下では、凹凸構造66Aを有する側の表面を、「光路調整層66の表面」という。凹凸構造66Aが存在しなければ、LED50から射出された光の一部は、ホログラム素子54の外側を通過して感光体ドラム12の表面に到達する不要光となる。凹凸構造66Aは、不要光の光路に挿入されている。換言すれば、凹凸構造66Aは、発光点からホログラム径まで拡がる拡散光(参照光)の光路と、ホログラム素子54による回折光(信号光)の光路とを避けて配置されている。
【0055】
図2に示す例では、凹凸構造66Aは、不要光の光路と光路調整層66の表面とが交差する調整領域に設けられている。凹凸構造66Aの形成領域は、主走査方向に延びる帯状の領域としてもよい。具体的には、凹凸構造66Aが設けられる調整領域は、光路調整層66の表面において、ホログラム素子54を記録した参照光の光路と光路調整層66の表面とが交差する非調整領域に隣接して配置される。調整領域は、非調整領域の感光体ドラム12側に配置される。
【0056】
光路調整層66は、この凹凸構造66Aにより、ホログラム素子54の外側を通過する光の光路を調整する。凹凸構造66Aは、複数のLED50の各々から射出されて、凹凸構造66Aに入射した光の進行方向を変化させて、対応するホログラム素子54の外側を通過して感光体ドラム12の表面に到達する不要光を減衰させる。
【0057】
凹凸構造66Aは、光路調整層66の表面にレリーフ状に形成されている。LEDチップ53とホログラム記録層60との間に、記録層60の保護層を兼ねた光路調整層66を、一層追加するだけで不要露光が低減される。新たな遮光部材を位置合わせして配置する場合と比較すれば分かるように、本実施の形態では、非常に簡素な構造で不要光を減衰している。
【0058】
凹凸構造66Aは、光路調整層66の材料に応じた方法で、光路調整層66の表面に形成される。例えば、光路調整層66を樹脂層とする場合には、表面に凹凸構造66Aを有する光路調整層66を、凹凸構造66Aに応じて微細加工された成形型を用いて、射出成形により作製してもよい。射出成形により作製された光路調整層66は、記録層60に隣接するように配置される。或いは、光路調整層66の樹脂表面を加工して、凹凸構造66Aを形成してもよい。樹脂表面の加工は、光路調整層66を配置した後に行ってもよく、光路調整層66を配置する前に行ってもよい。
【0059】
また、例えば、光路調整層66をガラス層とする場合には、光路調整層66の表面を機械的に加工して、凹凸構造66Aを形成してもよい。ガラス表面の加工には、板状のガラスに切り込みを入れて回折格子を作製する技術など、従来公知のガラス加工技術を用いてもよい。ガラス表面の加工は、光路調整層66を配置した後に行ってもよく、光路調整層66を配置する前に行ってもよい。或いは、表面に凹凸構造66Aを有するガラス製の光路調整層66を、成形型を用いて作製してもよい。
【0060】
なお、図示は省略するが、LPH14は、ホログラム素子54で生成された回折光が感光体ドラム12の方向に射出されるように、ハウジングやホルダー等の保持部材により保持されて、図1に示す画像形成ユニット11内の予め定めた位置に取り付けられている。なお、LPH14は、調整ネジ(図示せず)等の調整手段により、回折光の光軸方向に移動するように構成されていてもよい。ホログラム素子54による結像位置(焦点面)が、感光体ドラム12表面上に位置するように、上記の調整手段により調整する。また、ホログラム記録層60上に、カバーガラスや透明樹脂等で保護層が形成されていてもよい。保護層によりゴミの付着を防止する。
【0061】
また、ホログラム記録層60は、ガラスや樹脂等で構成された容器内に収納されていてもよい。例えば、ホログラム記録層60を、容器内に封入されたホログラム記録材料で構成してもよい。一般に体積型ホログラム材料は形状保持性が低いものが多いが、容器内に収納されたホログラム記録層60は元の形状が安定に保たれ、取り扱いが容易である。また、容器は保護層としても機能する。ホログラム記録層60が容器内に収納されている場合には、光路調整層66を容器の一部として形成してもよい。具体的な実施の形態については、後で詳しく説明する。
【0062】
<LEDプリントヘッドの動作>
インコヒーレント光源であるLED50から射出される光は、発散して拡がることが知られている。この現象は「ランバーシアン配光」と称される。同じくインコヒーレント光源である電界発光素子(EL)においても、同様の現象が観測される。LED50を発光させると、LED50から射出された光は発散して拡がる。
【0063】
図2に示すように、LEDアレイ52とホログラム素子アレイ56とを備えたLPH14では、複数のLED50〜50の各々から射出された各光は、離間層64を通過し、光路調整層66に入射する。光路調整層66の調整領域に入射した不要光は、調整領域に配置された凹凸構造66Aにより減衰される。
【0064】
光路調整層66の非調整領域を通過した光は、対応するホログラム素子54〜54のいずれかに入射する。即ち、LED50から射出された光の一部は参照光の光路を通り、ホログラム素子54に参照光が照射されたのと略同じ状況となる。ホログラム素子54〜54は、入射された光を回折して回折光を生成する。ホログラム素子54〜54の各々で生成された各回折光は、拡散光の光路を避けて、その光軸が発光光軸と角度θを成す方向に射出され、感光体ドラム12の方向に集光される。
【0065】
射出された各回折光は、感光体ドラム12の方向に収束して、数cm先の焦点面に配置された感光体ドラム12の表面で結像される。即ち、複数のホログラム素子54の各々は、対応するLED50から射出された光を回折して集光し、感光体ドラム12表面に結像させる光学部材として機能する。感光体ドラム12の表面には、各回折光による微小なスポット62〜62が、主走査方向に一列に配列されるように形成される。換言すれば、LPH14により、感光体ドラム12が主走査される。なお、各々を区別する必要がない場合には、スポット62〜62を「スポット62」と総称する。
【0066】
例えば、A3幅まで印字可能な画像形成装置において、1インチ当たり1200スポットの解像度を得るためには、LED基板58上には、14848個のLED50が21μmの間隔で配列される。これに応じて、感光体ドラム12の表面12Aには、21μmの間隔で主走査方向に並ぶように14848個のスポット62が形成される。
【0067】
一般に、インコヒーレント光(非干渉性の光)を射出するLEDを用いるLPHでは、コヒーレンス性が低下してスポットぼけ(いわゆる色収差)が生じ、微小スポットを形成することは容易ではない。これに対して、本実施の形態のLPH14は、ホログラム素子54の入射角選択性及び波長選択性が高く、従来のLPHより高い回折効率が得られる。
【0068】
また、感光体ドラム12の表面に不要光が到達すると、バックグラウンドノイズ(背景雑音)が増加してコントラストが低下する。これに対して、本実施の形態のLPH14では、凹凸構造66Aにより不要光を減衰させる。このため、本実施の形態のLPH14では、不要露光が低減され、信号光が精度よく再生されて、輪郭の鮮明な微小スポット62(集光点)が形成される。
【0069】
<ホログラム素子の形状>
図3(A)はホログラム素子の概略形状を示す斜視図である。図3(B)はLEDプリントヘッドの副走査方向の断面図である。図3(C)はLEDプリントヘッドの主走査方向に沿った断面図である。
【0070】
図3(A)に示すように、ホログラム素子54の各々は、一般に厚いホログラム素子と称される体積ホログラムである。上述した通り、ホログラム素子は、入射角選択性及び波長選択性が高く、回折光の出射角度(回折角)を高精度で制御して、輪郭の鮮明な微小スポットを形成する。回折角の精度はホログラムの厚さが厚いほど高くなる。
【0071】
図3(A)、図3(B)に示すように、ホログラム素子54の各々は、ホログラム記録層60の表面側を底面とし、LED50側に向かって収束する円錐台状に形成されている。この例では円錐台状のホログラム素子について説明するが、ホログラム素子の形状はこれには限定されない。例えば、円錐、楕円錐、楕円錐台等の形状としてもよい。円錐台状のホログラム素子54の直径は、底面で最も大きくなる。この円形の底面の直径を「ホログラム径r」とする。なお、「ホログラム厚さh」は、ホログラム素子54の厚さである。
【0072】
ホログラム素子54の各々は、LED50の主走査方向の間隔よりも大きな「ホログラム径r」を有している。例えば、LED50の主走査方向の間隔は30μmであり、ホログラム径rは2mm、ホログラム厚さhは250μmである。従って、図2及び図3(C)に示すように、互いに隣接する2つのホログラム素子54は、互いに大幅に重なり合うように形成されている。複数のホログラム素子54は、例えば、球面波シフト多重により多重記録されている。なお、複数のホログラム素子54の各々は、同一波長で記録してもよく、複数の波長を組み合わせて(波長多重)記録してもよい。
【0073】
<ホログラムの記録方法>
次に、ホログラムの記録方法について説明する。図4は、ホログラム記録層にホログラム素子54が形成される様子、即ち、ホログラム記録層にホログラムが記録される様子を示す図である。感光体ドラム12の図示は省略し、結像面である表面12Aだけを図示する。また、ホログラム記録層60Aは、ホログラム素子54が形成される前の記録層であり、符号Aを付して、ホログラム素子54が形成されたホログラム記録層60と区別する。
【0074】
図4に示すように、表面12Aに結像される回折光の光路を通るコヒーレント光が、信号光としてホログラム記録層60Aに照射される。同時に、ホログラム記録層60Aを通過する際に、発光点から所望のホログラム径rまで拡がる拡散光の光路を通るコヒーレント光が、参照光としてホログラム記録層60Aに照射される。コヒーレント光の照射には、半導体レーザ等のレーザ光源が用いられる。
【0075】
信号光と参照光とは、ホログラム記録層60Aに対し、同じ側(LED基板58が配置される側)から照射される。信号光と参照光との干渉により得られる干渉縞(強度分布)が、ホログラム記録層60Aの厚さ方向にわたって記録される。これにより、透過型のホログラム素子54が形成されたホログラム記録層60が得られる。ホログラム素子54は、面方向及び厚さ方向に干渉縞の強度分布が記録された体積ホログラムである。このホログラム記録層60を、LEDアレイ52が実装されたLED基板58上に取り付けることで、LPH14が作製される。
【0076】
ここで、ホログラム記録層60AをLEDアレイ52が実装されたLED基板58上に取り付けた後に、位相共役記録によりホログラムを記録してもよい。ホログラム記録層60Aを取り付けた後でホログラムを記録するので、LED50と対応するホログラム素子54との距離が確保されると共に、LED50と対応するホログラム素子54との高い位置決め精度は不要になる。位相共役記録では、上記と同じ光路を通る信号光と参照光とが、LED基板58等が配置されていない側、即ち、ホログラム記録層60Aの表面側から照射される。この場合も同様に、ホログラム記録層60には、透過型のホログラム素子54が形成される。
【0077】
<凹凸構造による不要光の減衰>
次に、凹凸構造の具体例と不要光の減衰作用について説明する。図5(A)は、光路調整層の表面に形成される凹凸構造の一例を示す部分拡大図である。図5(B)は、ホログラムが再生される様子を示す模式的な断面図である。
【0078】
図5(A)に示すように、光路調整層66の表面には、複数の凸部又は複数の凹部が不規則に配列された凹凸構造66Aが形成されている。微細な凹凸面を透過する透過光や、微細な凹凸面で反射される反射光は、規則的な特性を持たずに各方向に散らばる拡散光である。即ち、凹凸構造66Aは、入射した光を複数の方向に拡散させる拡散体として機能する。
【0079】
凹凸構造66Aとしての拡散構造は、光路調整層66の表面を粗面化することにより形成される。表面の粗面化には、サンドブラスト加工等、従来公知の粗面化技術を用いてもよい。例えば、拡散構造を有する光路調整層66を射出成形により作製する場合には、樹脂材料を成形した後で、成形品の表面を粗面化してもよい。或いは、金型等の成形型の表面を粗面化した後に射出成形を行って、転写により表面が粗面化された成形品を得てもよい。
【0080】
サンドブラスト加工による粗面化では、表面粗さが「砂番(#)」により表現される。砂番が大きくなるほど、表面の凹凸は細かくなり、拡散性が低下する。本実施の形態では、入射光を広く拡散させること(即ち、拡散の度合いが大きいこと)が重要であり、砂番が#150〜#1000の範囲の拡散構造を用いる。砂番を#200〜#800の範囲とすれば、入射光がより広く拡散される。
【0081】
図5(B)に示すように、LED50を発光させると、ホログラム素子54に参照光が照射されたのと略同じ状況となる。点線で図示する参照光の照射により、実線で図示するように、ホログラム素子54から信号光と同じ光が再生され、回折光として射出される。射出された回折光は収束して、数cmの作動距離で感光体ドラム12の表面12Aに結像される。表面12Aにはスポット62が形成される。
【0082】
一方、LED50から射出された光の一部は、光路調整層66の表面に設けられた凹凸構造66Aに入射する。凹凸構造66Aとしての拡散構造は、入射した光を拡散させて、対応するホログラム素子54の外側を通過して感光体ドラム12の表面に到達する不要光を減衰させる。これにより、感光体ドラム12の不要露光が低減される。
【0083】
なお、回折光は、回折光光軸が発光光軸と角度θを成す方向に回折される。感光体ドラム12が参照光の光路の外側に位置するように、発光光軸と回折光光軸とが成す角度θが設定されている。このため、回折されずにホログラム素子54を透過する「0次光」が発生したとしても、この0次光は感光体ドラム12には照射されない。
【0084】
上記の通り、図2〜図5に示す例では、LED基板58側の表面に凹凸構造66Aを有する光路調整層66を、ホログラム記録層60に対しLED基板58側に配置する場合について説明したが、光路調整層66及び凹凸構造66Aの位置は、これに限定される訳ではない。図6(A)〜(C)は光路調整層の配置位置の変形例を示す模式的な断面図である。
【0085】
図6(A)に示すように、光路調整層66は、記録層60側の表面に凹凸構造66Aを有していてもよい。凹凸構造66Aは、不要光の光路と光路調整層66の記録層60側の表面とが交差する調整領域に設けられる。記録層60側の表面に設けられた凹凸構造66Aは、LED基板58側の表面に設けられた凹凸構造66Aと同様に、不要光を減衰させる。
【0086】
図6(B)に示すように、光路調整層66は、記録層60に対し回折光出射側(LED基板58側とは反対側)に配置されていてもよい。光路調整層66は、回折光出射側の表面に凹凸構造66Aを有している。凹凸構造66Aは、不要光の光路と光路調整層66の回折光出射側の表面とが交差する調整領域に設けられる。この光路調整層66の表面に設けられた凹凸構造66Aは、記録層60に対しLED基板58側に配置された凹凸構造66Aと同様に、不要光を減衰させる。
【0087】
図6(C)に示すように、記録層60に対し回折光出射側に配置された光路調整層66は、記録層60側の表面に凹凸構造66Aを有していてもよい。凹凸構造66Aは、不要光の光路と光路調整層66の記録層60側の表面とが交差する調整領域に設けられる。記録層60側の表面に設けられた凹凸構造66Aは、回折光出射側の表面に設けられた凹凸構造66Aと同様に、不要光を減衰させる。
【0088】
上記の通り、図5に示す例では、凹凸構造66Aとして「拡散構造」を設ける場合について説明したが、凹凸構造は、入射する光の進行方向を変化させて通過する光を減衰させる凹凸構造であればよく、「拡散構造」には限定される訳ではない。
【0089】
ここで、凹凸構造の変形例について説明する。図7(A)は光路調整層の表面に形成される凹凸構造の他の一例(マイクロプリズムアレイ)を示す部分拡大図である。図7(B)は凹凸構造を説明するための図である。図7(C)はホログラムが再生される様子を示す模式的な断面図である。また、図8(A)及び図8(B)は角度θの好適範囲を説明するための模式図である。
【0090】
図7(A)に示すように、光路調整層66の表面には、複数の凸部が周期的に配列された凹凸構造66Aが形成されている。複数の凸部が周期的に配列された凹凸構造は、入射した光を予め定めた方向に偏向させる偏向素子として機能する。図7(A)に示す例では、主走査方向に延びる長尺状のマイクロプリズムが、複数の凸部の各々を構成している。これら複数のマイクロプリズムは、副走査方向に予め定めた間隔(ピッチ)で配列されて、マイクロプリズムアレイを構成している。
【0091】
図7(C)に示すように、ホログラム素子54から射出された回折光は、感光体ドラム12の表面12Aに結像され、スポット62が形成される。一方、LED50から射出された光の一部は、光路調整層66の表面に設けられた凹凸構造66Aに入射する。凹凸構造66Aとしてのマイクロプリズムアレイは、副走査方向において入射した光を屈折させる。マイクロプリズムアレイからは、感光体ドラム12が位置する方向とは異なる方向に、不要光が射出される。これにより、感光体ドラム12の不要露光が低減される。
【0092】
図7(B)に示すように、マイクロプリズムの各々は、第1の面と第2の面とを備えている。第1の面は、LED基板58の主面と直交するように、副走査方向に約90°傾けられている。なお、第1の面の傾斜角度は一例であり、90°に限定される訳ではない。第2の面は、LED基板58の主面に対し、副走査方向に予め定めた傾斜角度で傾けられている。従って、マイクロプリズムアレイは、第1の面と第2の面とが副走査方向に交互に並べられて、その副走査方向の断面形状が「鋸歯状」となる。凹凸構造66Aとしてのマイクロプリズムアレイは、樹脂の射出成形やガラスや樹脂の表面加工等により、光路調整層66の表面に作り込まれる。
【0093】
このマイクロプリズムアレイは、入射した光を予め定めた方向に屈折させる。マイクロプリズムアレイからは、予め定めた方向に不要光が射出される。なお、矢印で図示したのは「出射光(不要光)の進行方向」である。出射光の進行方向と第1の面とが成す角度をθとし、出射光の進行方向と第2の面とが成す角度をθとする。これら角度θ及び角度θの各値が好適範囲となるように、第2の面の傾斜角度が設定される。
【0094】
図7(B)に示すように、角度θが負の値となる場合には、第2の面に先に入射した光が、次に第1の面でホログラム記録層60に向かって反射されてしまう。この反射拡散状態を避けるために、角度θはゼロ又は正の値が好ましい。角度θがゼロ近傍の値であれば、反射拡散状態には陥らない。
【0095】
図8(A)に示すように、角度θが90°より小さい場合には、第2の面で屈折する光が光源からみて手前に倒れるために、不要光の減衰効果が損なわれる虞がある。これに対し、図8(B)に示すように、角度θが90°より大きい場合には、第2の面で屈折する光が光源からみて向こう側に倒れるために、高い減衰効果が得られる。従って、不要光を感光体ドラム12に到達させないように、角度θを90°以上とする。
【0096】
複数のマイクロプリズムの配列ピッチPは、第1の面と第2の面とにより構成される谷部(凹部)の深さが、光路調整層66の厚さに対して十分小さくなるよう選択される。例えば、配列ピッチPは、光路調整層66の厚さの1/10以下としてもよい。また、配列ピッチPは、光源であるLED50の発光波長より十分大きくする。例えば、LED50の発光波長の10倍以上としてもよい。
【0097】
一例として、離間層64を空気(屈折率:1.00)、光路調整層66をシクロポリオレフィン樹脂(屈折率:1.51)により形成した場合を考える。凹凸構造66Aがない場合、例えば光路調整層66に45°の角度で入射した光線はスネルの法則により28°の角度で光路調整層66の内部を伝搬する。これに対し、光路調整層66の接線方向に対し正負45°ずつの角度をもつ凹凸構造66Aを設置した場合、θ1=0°、θ2=90°となり、光路調整層66を伝搬する光線の角度は45°となる。この場合、結果として凹凸構造66Aの設置により伝搬する光線の角度を副走査方向に17°偏向することが可能となる。
【0098】
上記例の場合、配列ピッチPは7.8μm以上とすることができる。また光路調整層66の厚さを0.5mmとした場合、凹凸構造66Aの深さは50μm以下とすることができる。従って本例の場合、配列ピッチPは7.8μm〜100μmとすることが、凹凸構造66Aの深さは3.9μm〜50μmとすることができる。
【0099】
複数のマイクロプリズムの各々は、マイクロプリズムの表面(即ち、第1の面と第2の面)に、より微細な凹凸構造を有していてもよい。微細な凹凸構造は、図5に示すように、複数の凸部又は複数の凹部が不規則に配列されて拡散体として機能する凹凸構造としてもよい。また、微細な凹凸構造は、次に説明するように、ホログラム等の回折格子として機能する凹凸構造としてもよい(図9参照)。
【0100】
また、凹凸構造の他の変形例について説明する。図9(A)は光路調整層の表面に形成される凹凸構造の更に他の一例(回折格子)を示す部分拡大図である。図9(B)はホログラムが再生される様子を示す模式的な断面図である。図9(A)に示すように、光路調整層66の表面には、複数の凸部が周期的に配列された凹凸構造66Aが形成されている。複数の凸部が周期的に配列された凹凸構造は偏向素子として機能する。
【0101】
図9(A)に示す例では、凹凸構造66Aは、複数の凸部が副走査方向に予め定めた格子間隔(ピッチ)で配列された回折格子である。この回折格子は、入射した光を予め定めた方向に回折する。回折格子は、信号光及び参照光の二光波による干渉縞を記録したホログラムとしてもよい。なお、計算機ホログラムで記録してもよい。ホログラムは、参照光の照射により、信号光と同じ回折光を再生する。
【0102】
凹凸構造66Aとしての回折格子は、樹脂の射出成形やガラスや樹脂の表面加工等により、光路調整層66の表面に作り込まれる。例えば、ホログラムは、通常の表面レリーフホログラムの製造法を用いて、信号光及び参照光の二光波の干渉により作製される。
【0103】
図9(B)に示すように、ホログラム素子54から射出された回折光は、感光体ドラム12の表面12Aに結像され、スポット62が形成される。一方、LED50から射出された光の一部は、光路調整層66の表面に設けられた凹凸構造66Aに入射する。凹凸構造66Aとしての回折格子は、入射した光を予め定めた方向に回折させる。回折格子からは、感光体ドラム12が位置する方向とは異なる方向に、不要光が射出される。これにより、感光体ドラム12の不要露光が低減される。
【0104】
凹凸構造66Aとしての回折格子は、副走査方向において入射した光を偏向させると共に、主走査方向において入射した光を偏向させる。即ち、回折格子によれば、回折光は主走査方向に拡がらずに、予め定めた所望の方向に収束する。このため、背景雑音が低減されると共に、クロストークによる雑音が低減される。従って、プリズム等の屈折による偏向素子に比べて、感光体ドラム12に到達する光が更に減衰する。
【0105】
回折格子の格子ピッチが狭いほど、回折格子による回折角が大きくなる。一方、格子ピッチがLED50の発光波長に近付くほど、回折光が得られ難くなる。このため、回折格子の格子ピッチの上限は、光源であるLED50の発光波長の10倍未満としてもよく、発光波長の5倍未満としてもよい。回折格子の格子ピッチの下限は、光源であるLED50の発光波長を超えていればよく、発光波長の2倍以上としてもよい。
【0106】
例えば、LED50の発光波長を780nmとすると、格子ピッチは1.56μm〜7.8μmとしてもよい。具体例を挙げると、光路調整層66の接線方向に対し正負45°ずつの角度をもつ凹凸構造66Aに対し45°で入射する光を考えた場合、凹凸構造66Aの表面に格子ピッチ2.0μm(1mmあたり500本)の回折格子を備えると、この回折格子は、入射した光を回折及び集光して、一次回折光を0次回折光に対し23°の角度で射出する。
【0107】
回折格子をホログラムとした場合、回折格子の格子ピッチの変動により、回折光の配光を制御することが容易となる。
【0108】
<一体型LPHの具体的な構成例>
図10はホログラム記録層が容器内に収納された一体型LPHの具体的な構成を示す断面図である。図10に示すように、一体型LPH14は、複数のLED50を備えたLEDチップ53が複数配列されたLED基板58と、複数のLED50の各々に対応して複数のホログラム素子54が記録されたホログラム記録層60と、を備えている。
【0109】
ホログラム記録層60は、ガラスや樹脂等で構成された容器70内に収納されて保護されている。ホログラム記録層60は、ホログラム記録材料を容器70内に封入する等して、容器70内に収納されている。複数のホログラム素子54は、容器内に収納されたホログラム記録層60A(記録前)に対し、位相共役記録により記録される。
【0110】
容器70は、主走査方向に延びる長尺状で且つ平板状の第1の平板部72と、ホログラム記録層60を挟んで第1の平板部72と対向する長尺状で且つ平板状の第2の平板部74と、側面を形成して第1の平板部72と第2の平板部74とを連結する連結部76と、第1の平板部72を一定の高さに支持する支持部78と、を備えている。
【0111】
また、図10に示すように、第1の平板部72は、LED基板58側の表面に凹凸構造72Aを有している。凹凸構造72Aは、不要光の光路と光路調整層66の表面とが交差する調整領域に設けられている。凹凸構造66Aの形成領域は、主走査方向に延びる帯状の領域とされている。凹凸構造72Aを有する第1の平板部72は、容器70の一部を構成する。
【0112】
容器70は、空気より屈折率の高いガラスや樹脂等の材料で構成されている。容器70を構成する材料としては、図2の光路調整層66の材料として例示された材料を用いてもよい。容器70は、例えば、成形型を用いた射出成形等により作製してもよい。また、容器70を複数の部材に分けて、各部材を射出成形等により作製してもよい。押出成型等により所望の寸法よりも長い部材を作製した後、両端を切除、封止することにより容器70を形成してもよい。
【0113】
また所望の寸法よりも短い部材を作製した後、複数の部材を接合し両端を封止することにより容器70を作製してもよい。凹凸構造72Aは、第1の平板部72と一体に形成されてもよく、平板部72の形成後、切削や熱スタンプなどの手法により形成されてもよい。またUV硬化樹脂等の放射線硬化型樹脂膜を塗布、貼り付け等の手法により形成した後、強度分布をもった放射線により露光することにより形成されてもよい。
【0114】
支持部78は、主走査方向に延びる長尺状の部材で構成されている。支持部78は、第1の平板部72の幅方向の両端に設けられている。支持部78は、第1の平板部72から見ると、第1の平板部72からその法線方向に延びる脚部である。容器70は、脚部である支持部78の一端をLED基板58上に着けて、LED基板58上に載せ置かれる。
【0115】
容器70がLED基板58上に載せ置かれることにより、凹凸構造72Aを有する第1の平板部72が、LED基板58上の一定の高さに支持される。これにより、LED50と第1の平板部72とが離間されて、LED50と第1の平板部72との間には、空気層が介在することになる。同時に、ホログラム記録層60が、LED基板58上の一定の高さに配置される。また、LED基板58上の複数のLED50は、第1の平板部72と支持部78とで形成されるハウジング内に収納される。
【0116】
LED50から射出された光は、容器70に収納されたホログラム記録層60に照射される。本実施の形態では、記録層60に記録されたホログラム素子54は位相共役記録されているため、当該ホログラム素子54からは、信号光の位相共役光が回折光として射出される。一方、LED50から射出された光の一部は、第1の平板部72の表面に設けられた凹凸構造72Aに入射する。凹凸構造72Aは、入射した光の進行方向を変化させて、不要光を減衰させる。
【0117】
また、主走査方向に並ぶ複数のLED50に対して、主走査方向に延びる凹凸構造72Aが設けられるので、複数のLED50を高密度に配列しても、高い位置決め精度は不要にとなる。
【0118】
図11(A)〜(E)は、図10に示す一体型LPHの製造工程を示す断面図である。まず、図11(A)に示すように、容器70を構成する各部品を作製する。この例では、容器70は、第1の部材と第2の部材とに分けて作製される。第1の部材は、第2の平板部74及び連結部76の一部76Aで構成される。第2の部材は、第1の平板部72、連結部76の一部76B及び支持部78で構成される。各部材は、射出成形等により所望の形状に形成される。
【0119】
次に、図11(B)に示すように、連結部76の一部76Aと連結部76の一部76Bとを接合することで、第1の部材と第2の部材とを一体化して、第1の平板部72、第2の平板部74、連結部76及び支持部78を備えた容器70を完成させる。続いて、図11(C)に示すように、容器70内にホログラム記録材料を充填して、容器70内にホログラム記録層60A(記録前)を形成する。
【0120】
次に、図11(E)に示すように、ホログラム記録層60が収納された容器70を、LED基板58上に載せ置く。最後に、図11(D)に示すように、容器70内に収納されたホログラム記録層60A(記録前)に対し、位相共役記録により複数のホログラム素子54記録する。
【0121】
一体型LPH14では、凹凸構造72Aは容器70と一体に形成されている。また、ホログラム記録層60は、凹凸構造72Aを含む容器70と一体に形成されている。容器70は、凹凸構造72Aを有する第1の平板部72及び支持部78を備えているので、ホログラム記録層60が収納された容器70を、LED基板58上に載せ置くだけで、ホログラム記録層60及び凹凸構造72Aが所望の位置に配置されると共に、複数のLED50がハウジング内に収納される。
【0122】
<その他の変形例>
なお、上記では、複数のLEDを備えたLEDプリントヘッドを備える例について説明したが、LEDに代えて電界発光素子(EL)、レーザダイオード(LD)等、他の発光素子を用いてもよい。発光素子の特性に応じてホログラム素子を設計すると共に、インコヒーレント光による不要露光を低減することで、インコヒーレント光を射出するLEDやELを発光素子として用いた場合でも、コヒーレント光を射出するLDを発光素子として用いた場合と同様に、輪郭が鮮明な微小スポットが形成される。
【0123】
また、上記では、球面波シフト多重により複数のホログラム素子を多重記録する例について説明したが、所望の回折光が得られる多重方式であれば、他の多重方式で複数のホログラム素子を多重記録してもよい。また、複数種類の多重方式を併用しても良い。他の多重方式としては、参照光の入射角度を変えながら記録する角度多重記録、参照光の波長を変えながら記録する波長多重記録、参照光の位相を変えながら記録する位相多重記録等が挙げられる。
【0124】
また、上記では、画像形成装置がタンデム型のデジタルカラープリンタであり、その各画像形成ユニットの感光体ドラムを露光する露光装置としてのLEDプリントヘッドについて説明したが、露光装置により感光性の画像記録媒体を像様露光することで画像が形成される画像形成装置であればよく、上記の応用例には限定されない。例えば、画像形成装置は、電子写真方式のデジタルカラープリンタには限定されない。銀塩方式の画像形成装置や光書込み型電子ペーパー等の書き込み装置等にも本発明の露光装置を搭載してもよい。また、感光性の画像記録媒体は、感光体ドラムには限定されない。シート状の感光体や写真感光材料、フォトレジスト、フォトポリマー等の露光にも、上記応用例に係る露光装置を適用してもよい。
【符号の説明】
【0125】
2 PC
3 画像読取装置
10 画像形成プロセス部
11 画像形成ユニット
12 感光体ドラム
12A 表面
13 帯電器
14 LEDプリントヘッド
15 現像器
16 クリーナ
21 中間転写ベルト
22 一次転写ロール
23 二次転写ロール
24 搬送ベルト
25 定着器
30 制御部
40 画像処理部
50 LED
52 LEDアレイ
53 LEDチップ
54 ホログラム素子
56 ホログラム素子アレイ
58 LED基板
60 ホログラム記録層
60A ホログラム記録層
62 スポット
64 離間層
66 光路調整層
66A 凹凸構造
70 容器
72 第1の平板部
72A 凹凸構造
74 第2の平板部
76 連結部
78 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子が第1の方向に並ぶように配列された基板と、
前記基板上に配置された記録層であって、前記複数の発光素子の各々から射出された射出光が、対応するホログラム素子により回折及び集光されて、被露光面上に前記第1の方向に並ぶ集光点列が形成されるように、前記複数の発光素子の各々に対応する複数のホログラム素子が多重記録された記録層と、
前記複数の発光素子と前記被露光面との間に配置され、当該層の光入射側又は光出射側の表面に凹凸構造を有し、当該層を通過する光の光路を調整する光路調整層と、
を備え、
前記凹凸構造は、当該構造を通過する光の進行方向を変化させて、前記対応するホログラム素子の外側を通過して前記被露光面に到達する光を減衰させる、
露光装置。
【請求項2】
前記光路調整層は、前記記録層に隣接するように配置される、請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記凹凸構造は、入射した光を複数の方向に拡散させる拡散体として機能する、請求項1又は請求項2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記凹凸構造は、複数の凸部が周期的に配列されて、入射した光を予め定めた方向に偏向させる偏向素子として機能する、請求項1又は請求項2に記載の露光装置。
【請求項5】
前記偏向素子は、前記第1の方向に延びる長尺状のプリズムが凸部を構成し、複数のプリズムが前記第1の方向と交差する第2の方向に周期的に配列されて、入射した光を予め定めた方向に屈折させるプリズムアレイである、請求項4に記載の露光装置。
【請求項6】
前記偏向素子は、入射した光を予め定めた方向に回折する回折格子である、請求項4に記載の露光装置。
【請求項7】
前記回折格子は、参照光の照射により信号光と同じ回折光を再生するように、信号光及び参照光の二光波による干渉縞を記録したホログラムである、請求項6に記載の露光装置。
【請求項8】
前記記録層は容器内に収納されて前記基板上に配置されており、前記容器の一部が前記光路調整層を構成する、請求項1から請求項7までの何れか1項に記載の露光装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8までの何れか1項に記載の露光装置と、
前記露光装置と作動距離だけ離間して配置されると共に、前記露光装置に対して前記第1の方向と交差する第2の方向に相対移動され、前記露光装置により画像データに応じて走査露光されて、画像が書き込まれる感光体と、
を含む画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−162004(P2012−162004A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24427(P2011−24427)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】