露光装置用狭帯域レーザ装置
【課題】チャンバウインドや出力結合ミラー(OC)等の光学素子の損傷を小さくし、寿命を延ばすことができる露光装置用狭帯域レーザ装置を提供すること。
【解決手段】発振段レーザ(MO)10と増幅段レーザ(PO)20を備えた露光装置用狭帯域レーザ装置において、増幅段レーザ20にOC24,高反射ミラー5a.5b,5cからなるリング共振器を設ける。OC24と高反射ミラー5a及び高反射ミラー5bと5cは、例えば放電電極の長手方向の軸に対してオフセットして配置されている。このため、増幅段レーザ20のOC24から注入されたレーザ光はリング共振器内での往復毎にリング共振器内部でビームが移動しビーム幅が広がる。このため、増幅段レーザ(PO)20の光学素子(OC、レーザウインド及び高反射ミラー)におけるレーザ光のエネルギ密度が低減され、光学素子の寿命が長くなる。
【解決手段】発振段レーザ(MO)10と増幅段レーザ(PO)20を備えた露光装置用狭帯域レーザ装置において、増幅段レーザ20にOC24,高反射ミラー5a.5b,5cからなるリング共振器を設ける。OC24と高反射ミラー5a及び高反射ミラー5bと5cは、例えば放電電極の長手方向の軸に対してオフセットして配置されている。このため、増幅段レーザ20のOC24から注入されたレーザ光はリング共振器内での往復毎にリング共振器内部でビームが移動しビーム幅が広がる。このため、増幅段レーザ(PO)20の光学素子(OC、レーザウインド及び高反射ミラー)におけるレーザ光のエネルギ密度が低減され、光学素子の寿命が長くなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は狭帯域発振段レーザと増幅段レーザとからなる露光装置用の注入同期式放電励起レーザ装置に関し、特に、チャンバウインドや出力結合ミラー(OC)等の光学素子の寿命を延ばすことができる露光装置用レーザ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体露光装置用光源としてエキシマレーザが使用されている。特に、45nm以下のテクノロジーノードにおいては、高出力(40W以上)でかつ超狭帯域化(0.2pm以下)にされたArFレーザ光源が採用されている。
露光装置用光源のArFレーザ光源においては、高ドーズ安定性の確保と高スループット化に伴い、さらに高出力の90W以上の出力が要求されている。
上記光源の要求を満たすために、ダブルチャンバ方式(2ステージ方式)のArFレーザが実用化されている。ダブルチャンバ方式のレーザ装置の形態としては、アンプ側に共振器ミラーを設けないMOPA(Master Oscillator Power Amprifier )方式と共振器ミラーを設けるMOPO(Master Oscillator Power Oscillator)方式とに大別される。 しかし、出力90Wのような高出力化のために、増幅器(PA)または増幅段レーザ(PO)の光学素子(特にチャンバウインドやOC)負荷が大きくなり、これら光学素子の寿命が課題となっており、レーザ光源の長寿命化が要求されるようになってきている。
【0003】
これら光学素子の寿命を延ばすために、例えば特許文献1、特許文献2には以下の技術が開示されている。
特許文献1に記載のものにおいては、図8に示すように、発振段レーザ(MO)100と、増幅器(PA)200を有するMOPA方式のレーザ装置において、増幅器(PA)200の放電電極と増幅器(PA)200のレーザチャンバウインドの間にプリズムビームエキスパンダ201を配置していた。これにより、増幅器(PA)200のレーザチャンバウインドにかかる負荷(エネルギ密度)が低減される。
特許文献2に記載のものにおいては、発振段レーザ(MO)100と、増幅段レーザ(PO)300を有するMOPO方式のレーザ装置において、図9に示すように増幅段レーザ(PO)300のレーザチャンバ301と出力結合ミラー(OC)303の間にビームエキスパンダ302を配置していた。これにより、出力結合ミラー(OC)303にかかる負荷(エネルギ密度)が低減される。
【特許文献1】特表2005−524998号公報
【特許文献2】特開2006−049839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記MOPO方式のレーザ装置において、シード注入効率が高いリング共振器を増幅段レーザ(PO)に採用した場合、最終出力90W(15mJ、6kHz)では、増幅段レーザ(PO)のOC及びチャンバのウインドに高負荷がかかり、寿命が短くなっていた。 図10に増幅段レーザ(PO)にリング共振器を設置したMOPO方式のレーザ装置の従来例を示す。同図(a)は側面図を示し、同図(b)は増幅段レーザ(PO)20の上面図を示す。
同図において、発振段レーザ(MO)10から放出されるレーザビームはシードレーザビームとして機能し、増幅段レーザ(PO)20はそのシードレーザ光を増幅する機能を有する。発振段レーザ(MO)10、増幅段レーザ(PO)20は各々レーザチャンバ11,21を有し、その内部にはレーザガスが満たされており、それぞれ内部には対向し、かつ所定距離だけ離間した一対の電極1a、2aが設置され、これらの一対の電極1a,2aに高電圧パルスが印加されることにより放電が発生する。
【0005】
また、発振段レーザ10と増幅段レーザ20のチャンバ11,21には、レーザ発振光に対して透過性がある材料によって作られたウィンドウ部材12a,12b,22a,22bがそれぞれ設置されている。
発振段レーザ10は拡大プリズム3aとグレーティング(回折格子)3bによって構成された狭帯域化モジュール(LNM)3を有し、この狭帯域化モジュール3内の光学素子とOC14とでレーザ共振器を構成する。
発振段レーザ10からのMOレーザ光(シードレーザビーム)は高反射ミラー4a,4b,4cを介して増幅段レーザ(PO)20へ導かれ注入される。
増幅段レーザ(PO)20は図10(b)に示すように、光入射側に反射防止(AR)膜が施された部分反射(PR)ミラーであるOC24と、高反射ミラー5a,5b,5cで構成されるリング共振器を有する。
【0006】
発振段レーザ(MO)10から出力されたビームは高反射ミラー4a,4b,4cにより増幅段レーザ(PO)20のリング共振器のOC24から注入され、高反射ミラー5aによりレーザチャンバ21内の放電しない空間を透過させ、高反射ミラー5b及び5cにより放電電極空間に折り返される。このシード光に同期して、放電電極2a間に電圧が印加され放電する。そして放電空間を透過したシード光は増幅され、増幅した光の一部はOC24を透過してレーザとして出力し、OC24の反射光は再びリング共振器の中にフィードバックされ共振する。そして、レーザパルスとして出力される。OC24の反射率が例えば20〜30%とするとMOから出力されたビームの80〜70%がリング共振器内に注入されることになり高い注入効率を得ることができる。一方、MOPA方式の場合は、増幅段に光共振器がなく、共振増幅しないので単に増幅器としての機能のみであるため、リング共振器を備えたMOPO方式に比べて、MOの出力は約10倍程度必要となる。
しかし、増幅段レーザ(PO)20にリング共振器を採用して、レーザの出力が高い(90W以上)場合はリング共振器内部の負荷が非常に高くなる。特に増幅段レーザ(PO)20のOC24にコーティングされている部分反射(PR)膜は損傷し寿命が短くなっていた。また、増幅段レーザ(PO)20の出力側ウインド22aもエネルギ負荷が高く寿命が短かった。
【0007】
そこで、前記特許文献1に記載されるように、劣化する光学素子の手前のリング共振器の光路上に、ビームを拡大するための光学素子を配置することが考えられる。図11にこのように構成した場合の増幅段レーザ(PO)20の構成例を示す。
すなわち、同図に示すように、出力側ウインド22aの手前のリング共振器の光路上に、ビームを拡大するための光学素子であるビームエキスパインダ7を配置する。
しかし、図11に示すように、リング共振器の光路中にビームを拡大する光学素子を配置すると、リング共振器は不安定型共振器(共振器を往復する毎にビームが拡大する共振器)となる。このため、以下の問題点が発生した。
・増幅段レーザ(PO)発振の損失が大きく、かつ、注入効率が悪くなっていた。
・出力レーザ光の空間コヒーレンスが高くなり、露光装置のマスク上にスペックルが発生した。
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、狭帯域発振段レーザと増幅段レーザとからなる露光装置用レーザ装置において、ビームを拡大する光学素子を用いることなく、チャンバウインドや出力結合ミラー(OC)等の光学素子の損傷を小さくし、寿命を延ばすことができる露光装置用狭帯域レーザ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明においては発振段レーザ(MO)から増幅段レーザ(PO)のリング共振器に注入された光の光路が、注入位置から、放電方向に対して略垂直な面内で往復毎に移動しながら増幅されるように構成する。
すなわち、本発明においては以下のように構成することにより前記課題を解決する。
(1)狭帯域発振段レーザ(MO)と、リング型共振器を配置した増幅段レーザ(PO)とからなる注入同期式放電励起レーザ装置において、増幅段レーザ(PO)のリング型共振器に、狭帯域発振段レーザ(MO)からのMOレーザ光を注入し、増幅段レーザ(PO)において、上記注入された光の注入位置からの光路が、増幅段レーザ(PO)の放電方向の面(放電電極の長手方向にほぼ平行で放電方向に平行な面)に対して略垂直方向に往復毎に移動しながら増幅されるように構成する。
(2)上記(1)において、リング型の共振器に注入された光の光路が、注入位置から往復毎に、増幅段レーザ(PO)の放電方向の面に対して略垂直方向に移動するように、前記増幅段レーザ(PO)のリング型共振器のミラーを配置する。
(3)上記(1)において、リング型共振器を、レーザ光が、リング型共振器に対して所定角度で注入されたとき、同一光路を経由してリング型共振器内で往復するように構成し、このリング型共振器に上記所定角度とは異なった角度でレーザ光を注入し、注入された光の光路が、注入位置から増幅段レーザ(PO)の放電方向の面に対して略垂直方向に往復毎に移動するようにする。
(4)上記(1)において、リング型共振器のミラーを出力結合ミラーを含めて3枚以上の奇数枚とし、リング型共振器のミラー配置、およびリング型共振器へのレーザ光の注入位置を選定することにより、リング型共振器内に注入された光の奇数往復目の光路と、偶数往復目の光路が異なる光路となるようにする。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、以下の効果を得ることができる。
(1)往復毎にリング共振器内部レーザ光のビームが移動するように構成することで、結果としてビーム幅を広げることができる。
このため増幅段レーザ(PO)のリング共振器の光学素子(OC、レーザウインド及び高反射ミラー)におけるレーザ光のエネルギ密度が低減される。その結果、増幅段レーザ(PO)の光学素子の寿命を長くすることができる。
(2)リング共振器の光路中でビーム拡大しないので、注入効率が高くなる。
(3)光路中にビーム拡大のための光学素子を配置していないので、不安定共振器とならず、空間コヒーレンスは低くなる。このため露光装置用光源として使用した場合マスク上でのスペックルが抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明の第1の実施例の露光装置用狭帯域レーザ装置の構成を示す図であり、増幅段レーザ20(PO)に長方形型のリング共振器を設置した場合を示している。同図(a)は側面図を示し、同図(b)は増幅段レーザ(PO)20の上面図を示す。
同図(a)の構成は前記図10に示したものと同じであり、発振段レーザ(MO)10から放出されるレーザビームはシードレーザビームとして機能し、増幅段レーザ(PO)20はそのシードレーザ光を増幅する機能を有する。発振段レーザ(MO)10、増幅段レーザ(PO)20は各々レーザチャンバ11,21を有し、その内部にはレーザガスが満たされており、それぞれ内部には対向し、かつ所定距離だけ離間した一対の電極1a、2aが設置され、これらの一対の電極1a,2aに高電圧パルスが印加されることにより放電が発生する。
【0011】
また、発振段レーザ10と増幅段レーザ20のチャンバ11,21には、レーザ発振光に対して透過性がある材料によって作られたウィンドウ部材12a,12b,22a,22bがそれぞれ設置されている。
発振段レーザ10は拡大プリズム3aとグレーティング(回折格子)3bによって構成された狭帯域化モジュール(LNM)3を有し、この狭帯域化モジュール3内の光学素子とOC14とでレーザ共振器を構成する。
発振段レーザ10からのMOレーザ光(シードレーザビーム)は高反射ミラー4a,4b,4cを介して増幅段レーザ(PO)20へ導かれ注入される。
増幅段レーザ(PO)20には図1(b)に示すようにOC24、高反射ミラー5a,5b,5cからなるリング共振器が設けられ、リング共振器中に、光入射側に反射防止(AR)膜が施された部分反射(PR)ミラーであるOC24が配置され、その他のリング共振器を構成するミラー5a,5b,5cには高反射(HR)膜がコートされている。
【0012】
本実施例では、増幅段レーザ(PO)20のチャンバ21の出力側に、45度入射で部分反射するOC24と45度で高反射する高反射ミラー5aの互いの面の角度が90度になるように配置されている。
また、増幅段レーザ(PO)20のチャンバ21のリア側に2枚の45度で高反射する高反射ミラー5bと5cが、互いの面の角度が90度になるように配置されている。そして、OC24、高反射ミラー5aと、高反射ミラー5b、5cのミラー面は放電方向に対してほぼ平行で、放電面(放電電極の長手方向にほぼ平行で放電方向に平行な面)に対してほぼ45度傾いて配置されている。
すなわち、放電電極2aを挟んで対向する共振器ミラー(OC24、高反射ミラー5aと、高反射ミラー5b、5c)間を往復する光の光路が放電面に垂直な面内を含むように配置されている。上記共振器ミラー間を往復する光路方向をここでは、リング共振器の光軸方向とも呼ぶ。
【0013】
ここで、通常の増幅用のリング共振器では、OC24と高反射ミラー5aのミラー面が接する交点(線)と、高反射ミラー5b及び5cのミラー面が接する交点(線)が、リング共振器の光軸方向に平行な平面上にあり、出力側のOC24と高反射ミラー5aと、リア側の高反射ミラー5b,5cが、上記光軸方向に垂直な平面に対して左右対称となるように配置されている。そして、発振段レーザ(MO)10からのシード光は、上記光軸方向に沿って注入される。
このように通常のリング共振器と同様にリング共振器を構成し、上記のようにシード光を注入すると、リング共振器内を往復する光の光路は何往復しても同じになる。
この場合、図10(b)に示したようにビーム幅は増幅段レーザ(PO)20の放電幅と略一致し、増幅段レーザ(PO)20の出力側のウインド22aとOC24の負荷(エネルギ密度)が高くなり、素子の寿命が短くなる。
【0014】
そこで、この実施例では、図1(b)に示すように、OC24と高反射ミラー5aのミラー面が交わった部分に形成される谷線(以下交線という)と、高反射ミラー5b及び5cのミラー面の交線が、共振器の光軸方向に平行(共振器内の光路を放電電極の長手方向の軸に一致させる場合は、放電電極の長手方向の軸に対して平行)で、放電電極2aの放電方向に平行な平面に対して、オフセットするように平行移動させて配置する。なお、前述したようにOC24、高反射ミラー5aと、高反射ミラー5b、5cのミラー面は放電方向に対してほぼ平行であるので、上記交線は放電方向に対して平行である。
すなわち、上記ミラー面の交線が、上記同一平面上にないように、OC24と高反射ミラー5aの組、あるいは高反射ミラー5b及び5cの組のいずれか一方を上記平面に対して垂直方向に、平行移動させて配置する。
また、発振段レーザ(MO)10からの注入ビーム(シード光)を、OC24の端部(例えば高反射ミラー5aに最も近い位置あるいは最も遠い位置)から、OC24に対して入射角度45度で入射させる。
このビームの一部はOC24を透過して、高反射ミラー5aに45度で入反射する。そして、シード光はウインド22aを透過してレーザチャンバ21に入射する。
【0015】
シード光は放電電極2aの長手方向に対して、略平行な光路でチャンバ21内を透過し、増幅されずにチャンバ21内を通過する。このシード光は高反射ミラー5b及び5cにより折り返され、放電電極2aの放電空間にシード光が通過するようにレーザチャンバ21に入射する。
放電電極2aの放電空間に導かれたシード光に同期して、図示しない電源により、放電電極2a間に電圧が印加され電極2a間で放電する。これにより、シード光が増幅されて、ビームはOC24に到達する。OC24での透過光は、出力レーザ光は1往復による増幅光として出力される。
一方OC24での反射光は、1往復目の光路に対して放電方向に対して垂直な面内で平行に移動した光路で、再び全反射ミラー5aによりレーザチャンバ21に戻され、増幅されずにチャンバ21内を透過し、全反射ミラー5b及び5cに入射する。
そして、再びレーザチャンバ21に戻され、1往復目の光路Pに対して所定の距離だけ平行移動した光路で、放電空間内を透過し、増幅される。この増幅光は、1往復目に対して一定の割合で移動してビームは再びOC24に入射し、透過光はレーザ光として出力され、反射光は再び共振器内で共振し、3往復目も同様に往復するたびに光路が平行移動して増幅発振する。
【0016】
以上のように、MOレーザ光(シード光)を増幅段レーザ(PO)20のリング共振器に注入し、その注入された光が往復毎に注入位置から放電方向の面に対して略垂直方向に移動しながら往復毎に増幅する光共振器を配置することにより、以下の効果を得ることができる。
(1)往復毎にリング共振器内部でレーザ光のビームが移動しビーム幅が広がるので、増幅段レーザ(PO)20のリング共振器の光学素子(OC、レーザウインド及び高反射ミラー)におけるレーザ光のエネルギ密度が低減される。そのため、増幅段レーザ(PO)20の光学素子の寿命が長くなる。
(2)リング共振器の光路中でビーム拡大しないので、注入効率が高くなる。
(3)光路中にビーム拡大のための光学素子を配置していないので、不安定共振器とならないために、空間コヒーレンスは低くなる。このため露光装置用光源として使用した場合マスク上でのスペックルが抑制される。
(4)往復毎に出力されるレーザ光は平行であるため、放電方向に対して垂直な方向の出力レーザ光全体としてのビームダイバージェンスは広くならない。
【0017】
図2は本発明の第2の実施例の露光装置用狭帯域レーザ装置の構成を示す図であり、増幅段レーザ20(PO)に長方形型のリング共振器を設置した前記第1の実施例の変形例を示している。同図(a)は側面図を示し、同図(b)は増幅段レーザ(PO)20の上面図を示す。
本実施例の構成は、前記共振器ミラーが全反射直角プリズム6a,6bに代わった点を除き、基本的には、前記第1の実施例と同じである。
発振段レーザ(MO)10から放出されるレーザビームはシードレーザビームとして機能し、増幅段レーザ(PO)20はそのシードレーザ光を増幅する機能を有する。発振段レーザ(MO)10、増幅段レーザ(PO)20は各々レーザチャンバ11,21を有し、その内部にはレーザガスが満たされており、それぞれ内部には対向し、かつ所定距離だけ離間した一対の電極1a、2aが設置され、これらの一対の電極1a,2aに高電圧パルスが印加されることにより放電が発生する。
以下、前記第1の実施例と異なる点について説明する。
本実施例では、(1)リング共振器の光学素子として、反射防止(AR)膜がコートされた2つの全反射直角プリズム6a,6bを設置し、(2)リング共振器の光路中に、部分反射(PR)膜をコートしたOC24を設置し、(3)全反射直角プリズム6aと全反射直角プリズム6bのそれぞれの頂角の部分の稜線を、前記第1の実施例と同様、放電電極の長手方向の軸に対して、オフセットさせて配置している。すなわち、全反射直角プリズム6aと全反射直角プリズム6bのそれぞれの頂角の部分の稜線が、共振器の光軸方向に平行(共振器内の光路が放電電極の長手方向の軸に平行の場合には、放電電極の長手方向の軸に対して平行)で、放電電極2aの放電方向に平行な平面に対して、オフセットするように平行移動させて配置する(上記稜線が上記同一平面上にないように、上記平面に対して垂直方向に、平行移動させて配置する)。
【0018】
増幅段レーザ(PO)20のリング共振器は、上述したように反射防止(AR)膜がコートされた全反射直角プリズム6a,6bから構成され、この全反射直角プリズムの全反射面は、放電方向に対してほぼ平行で、放電面(放電電極の長手方向にほぼ平行で放電方向に平行な面)に対してほぼ45度傾いて配置されている。
すなわち、放電電極2aを挟んで対向する全反射直角プリズム6a,6b間を往復する光の光路が放電面に垂直な面内を含むように配置され、第1の実施例と同様、注入された光の注入位置からの光路が、増幅段レーザ(PO)20の放電方向の面に対して略垂直方向に往復毎に移動する。
すなわち、図2(b)に示すように、MOビーム(シード光)は高反射ミラー4aにより反射され、片面に部分反射(PR)膜がコートされ、他の片面に反射防止(AR)膜がコートされたOC24の端部に入射する。
【0019】
OC24ではシード光が一部反射し、全反射直角プリズム6aに入射する。この全反射直角プリズム6aの入射出射面には反射防止(AR)膜がコートされている。シード光はプリズム6aの2つ面でフレネル反射により全反射する。
そして、シード光はウインド22aを透過してレーザチャンバ21に入射する。シード光は放電電極2aに対して、略平行な光路で透過し、増幅されずにチャンバ21内を透過し、全反射直角プリズム6bに入射する。シード光は直角プリズム6bの2面で全反射し再びウインド22bを介して放電電極2aの放電空間と光路が一致するようにレーザチャンバ21に入射する。放電電極2aの放電空間に導かれたシード光に同期して、図示しない電源により放電電極2aに電圧が印加され電極2a間で放電する。
これにより、シード光が増幅されて、レーザビームはOC24のPRコート部に入射する。OC24での反射光は、出力レーザ光(1往復による増幅光)として出力される。
【0020】
透過光は、1往復目の光路に対して平行に移動した光路で再び全反射直角プリズム6aによりレーザチャンバ21に戻され、増幅されずにチャンバ21内を透過し、全反射直角プリズム6bに入射する。そして、再びレーザチャンバ21に入射し、1往復目の光路に対して所定の距離だけ平行移動した光路で、放電空間内を透過し、増幅される。
この増幅光は、1往復目に対して一定の割合で移動してビームは再びOC24のPRコート部に入射し、反射光はレーザ光として出力され、透過光は再び共振器内で共振し、3往復目も同様に往復するたびに光路が平行移動して増幅発振する。
【0021】
本実施例では、以下効果を得ることができる。
(1)往復ビーム毎に出力レーザ光のビームが移動するので、増幅段レーザ(PO)のリング共振器の光学素子(OC、レーザウインド)におけるレーザ光のエネルギ密度が低減される。そのため、増幅段レーザ(PO)の光学素子の寿命が長くなる。
(2)全反射直角プリズムによりリング共振器を構成しているのでアライメントが容易である。
(3)往復毎に出力されるレーザ光は平行であるため、放電方向に対して垂直な方向の出力レーザ光全体としてのビームダイバージェンスは広くならない。
【0022】
図3は本発明の第3の実施例の露光装置用狭帯域レーザ装置の構成を示す図であり、前記第1の実施例において2組の折り返しミラー位置をともにオフセットした場合を示している。
同図は増幅段レーザ(PO)20の上面図を示し、発振段レーザ(MO)の構成等は省略されているが、前記図1と同様である。すなわち、発振段レーザ(MO)10から放出されるレーザビームはシードレーザビームとして機能し、増幅段レーザ(PO)20はそのシードレーザ光を増幅する機能を有する。発振段レーザ(MO)10、増幅段レーザ(PO)20は各々レーザチャンバ11,21を有し、その内部にはレーザガスが満たされており、それぞれ内部には対向し、かつ所定距離だけ離間した一対の電極1a、2aが設置され、これらの一対の電極1a,2aに高電圧パルスが印加されることにより放電が発生する。
【0023】
以下、前記第1の実施例と異なる点について説明する。
本実施例では、(1)リング共振器として往路と復路両方で放電空間を通過して増幅するタイプの共振器を採用している。また、(2)OC24と高反射ミラー5aの面の交線と、高反射ミラー5b,5cの面の交線が、共振器の光軸方向に平行(放電電極の長手方向の軸に対して平行)で、放電電極2aの放電方向に平行な平面に対して、オフセットするように平行移動させて配置する。
すなわち、上記平面を、放電電極の長手方向の軸に対して平行であって放電電極2aの放電方向に平行な平面とすると、この平面からOC24と高反射ミラー5aの交線までの距離をAとし、上記平面から高反射ミラー4b,4cの交線までの距離をBとしたとき、AとBを異なった値とする(B>A)。
また、OC24、高反射ミラー5aと、高反射ミラー5b、5cのミラー面は放電方向に対してはほぼ平行であるが、OC24、高反射ミラー5bは放電面(放電電極の長手方向にほぼ平行で放電方向に平行な面)に対してほぼ45度傾いて配置され、高反射ミラー5a、5cは上記放電面に対してα度(α<45度)傾いて配置される。
このため、リング共振器内で、光が往復する毎に、同図に示すように放電方向の面に対して垂直な面内を光路が移動する。なお、この実施例の場合、リング共振器内の光路は、往路、復路ともに放電領域を通過する。
【0024】
以下この実施例の動作を説明する。
MOビーム(シード光)は高反射ミラー4cにより増幅段レーザ(PO)20のOC24の端部に45度で入射する。
45度の部分反射(PR)膜をコートしたOC24を透過し高反射ミラー5aに入射角度α(45度よりも数mrad小さな角度)で入反射し、ウインド22aを透過し、増幅段レーザ(PO)20のレーザチャンバ21の放電空間に傾いて入射される。
上記シード光に同期して、放電電極2aに電圧が印加され、放電電極2aは放電する。そして放電空間を透過したシード光は増幅され、ウインド22bを透過し高反射ミラー5bに入射角度αで入反射する。そして、高反射ミラー5cに入射角度45度で入反射し、放電電極2aの長手方向と平行な光路でウインド22aを透過し、再び放電している放電空間に導かれ、増幅される。
そして、レーザビームの光路は注入部(OC24の端部)から放電方向の面に対して垂直な面内で一定の割合で移動し、OC24に入射し一部透過して、レーザの出力光(1往復光)となり、一部は反射され再び高反射ミラー5aに入射し、同様に放電空間を1往復目の光路に対して平行移動した光路で透過し、高反射ミラー5b及び5cにより再び放電空間を1往復目の光路に対して平行移動した光路で透過し、1往復目に対して一定の割合で移動してビームは再びOC24のPRコート部に入射し、透過光はレーザ光として出力され、反射光は再び共振器内で共振し、3往復目も同様に往復するたびに光路が平行移動して増幅発振する。
【0025】
本実施例では、以下効果を得ることができる。
(1)往復ビーム毎に出力レーザ光のビームが移動するので、増幅段レーザ(PO)のリング共振器の光学素子(OC、レーザウインド及び高反射ミラー)におけるレーザ光のエネルギ密度が低減される。そのため、増幅段レーザ(PO)の光学素子の寿命が長くなる。
(2)往路と復路で増幅されるので増幅効率が高い。
(3)往復毎に出力されるレーザ光は平行であるため、放電方向に対して垂直な方向の出力レーザ光全体としてのビームダイバージェンスは広くならない。
なお、上記実施例では、共振器にミラーを用い、2枚の高反射ミラーでレーザチャンバにレーザ光を戻す場合について説明したが、前記第2の実施例のように全反射プリズムを用い、45度よりも多少小さな角度(数mrad)でフレネル反射で戻しても同様の機能を果たすことができる。
【0026】
図4は本発明の第4の実施例の露光装置用狭帯域レーザ装置の構成を示す図であり、前記図1に示した長方形型のリング共振器において1枚のミラーの軸をずらして設置した場合の構成例について示す。
同図は増幅段レーザ(PO)20の上面図を示し、発振段レーザ(MO)の構成等は省略されているが、前記図1と同様である。すなわち、発振段レーザ(MO)10から放出されるレーザビームはシードレーザビームとしての機能し、増幅段レーザ(PO)20はそのシードレーザ光を増幅する機能を有する。発振段レーザ(MO)10、増幅段レーザ(PO)20は各々レーザチャンバ11,21を有し、その内部にはレーザガスが満たされており、それぞれ内部には対向し、かつ所定距離だけ離間した一対の電極1a、2aが設置され、これらの一対の電極1a,2aに高電圧パルスが印加されることにより放電が発生する。
【0027】
以下、前記第1の実施例と異なる点について説明する。
増幅段レーザ(PO)20のチャンバ21の出力側には、45度入射で部分反射するOC24と45度で高反射する高反射ミラー5aが設けられ、互いの面が成す角度は90度で配置されている。
一方、チャンバ21のリア側に2枚の45度で高反射する高反射ミラー5bと5cが設けられ、その互いの面の角度が90度よりもやや小さな角度βになるように配置されている。
また、OC24、高反射ミラー5aと、高反射ミラー5b、5cのミラー面は放電方向に対してはほぼ平行であるが、OC24、高反射ミラー5a,5bは放電面(放電電極の長手方向にほぼ平行で放電方向に平行な面)に対してほぼ45度傾いて配置され、高反射ミラー5cは上記放電面に対して45度よりもやや小さい角度に傾いて配置される。
なお、本実施例においてはOC24と高反射ミラー5aの面の交線と、高反射ミラー5b,5cの面の交線は、共振器の光軸方向(放電電極2aの長手方向の軸)に平行で、放電方向に平行な平面に対して、オフセットしていない。すなわち、OC24と高反射ミラー5aの面の交線と、高反射ミラー5b,5cの面の交線は、上記平面から等しい距離になるように配置されている。
【0028】
以下この実施例の動作を説明する。
MOビーム(シード光)は高反射ミラー4cにより増幅段レーザ(PO)20のOC24の端部に入射角度45度で入射する。このビームの一部はOC24を透過して、高反射ミラー5aに45度で入反射する。そして、シード光はウインド22aを透過してレーザチャンバ21内に入射する。シード光は放電電極2aの長手方向の軸に対して、略平行に透過し、増幅されずにチャンバ21内を透過する。このシード光は高反射ミラー5bに45度で入反射し、高反射ミラー5cに45度よりも多少小さな角度で入反射する。
45度で入反射する場合はβの角度は90度であり、矢印のように光が進みOCでの注入位置と一致するところに光が戻る。
一方、本発明では、高反射ミラー5cの反射角度を45度よりも多少小さくしているので、レーザビームは放電空間を透過して増幅され、OC24に注入位置から移動した位置に入射する。このOC24での透過光は、出力レーザ光として出力(1往復による増幅光)される。
【0029】
OC24での反射光は、1往復目の光路に対して多少傾いた光路で再び全反射ミラー5aによりレーザチャンバ21に戻され、増幅されずにチャンバ21内を透過し、全反射ミラー5b及び5cに入射する。そして、再びレーザチャンバ21に戻され、1往復目の光路に対して所定の距離だけ平行移動した光路で、放電空間内を透過し増幅される。
この増幅光は、1往復目に対して一定の割合で移動してビームは再びOC24に入射し、透過光はレーザ光として出力され、反射光は再び共振器内で共振し、3往復目も同様に往復する度に光路が傾き移動して増幅発振する。
【0030】
以上のように、本実施例では、MOレーザ光(シード光)を増幅段レーザ(PO)20の前記リング共振器に注入し、その注入された光が往復毎に注入位置が放電方向の面に対して略垂直方向に移動しながら増幅されるので、以下の効果が得られる。
往復毎にリング共振器内部レーザ光のビームが移動しビーム幅が広がるので、増幅段レーザ(PO)のリング共振器の光学素子(OC、レーザウインド及び高反射ミラー)におけるレーザ光のエネルギ密度が低減される。そのため、POの光学素子の寿命が長くなる。
なお、前記図1〜図3に示した第1〜第3の実施例と本実施例の特性が異なる点は、往復毎の出力光の出射角度が多少ずれるので、結果として放電方向に垂直な方向のビームダイバージェンスは広くなる点である。
また、本実施例では、高反射ミラー5cの角度を放電方向に対して垂直な面内で反射角度を45度より小さな角度で反射させることによって、往復毎のビームの位置を移動させたが、この実施例に限定されることなく、リング共振器を構成するミラーの中で少なくとも1枚のミラーの入反射角度を他のミラーの入反射角(ここでは45度)からずらして、往復毎のOC上でのビーム位置が移動するようにすればよい。
また、前記図3に示した往復路で増幅するようなリング共振器において、本実施例のように、少なくとも1枚のミラーの角度をずらすようにしてもよい。これにより、往復毎のOC上でのビーム位置が移動する。
【0031】
図5は本発明の第5の実施例の露光装置用狭帯域レーザ装置の構成を示す図であり、注入光の入射角度を、増幅段レーザ(PO)のリング共振器への通常の入射角度に対してずらした場合の構成例について示す。
同図は増幅段レーザ(PO)20の上面図を示し、発振段レーザ(MO)の構成等は省略されているが、前記図1と同様である。すなわち、発振段レーザ(MO)10から放出されるレーザビームはシードレーザビームとして機能し、増幅段レーザ(PO)20はそのシードレーザ光を増幅する機能を有する。
【0032】
以下、前記第1の実施例と異なる点について説明する。
増幅段レーザ(PO)20のチャンバ21の出力側には、45度入射で部分反射するOC24と45度で高反射する高反射ミラー5aの互いの面の角度が90度で配置されている。
また、増幅段レーザ(PO)20のチャンバ21のリア側に2枚の45度で高反射する高反射ミラー5bと5cの互いの面の角度が90度になるように配置されている。そして、OC24、高反射ミラー5a、5b及び5cのミラー面は電極の放電方向と平行に設置され、OC24、高反射ミラー5a,5b,5cは放電面(放電電極の長手方向にほぼ平行で放電方向に平行な面)に対してほぼ45度傾いて配置されている。
さらに、本実施例においてはOC24と高反射ミラー5aの面の交線と、高反射ミラー5b,5cの面の交線は、共振器の光軸方向に平行(放電電極の長手方向の軸に対して平行)で放電電極2aの放電方向に平行な平面に対して、オフセットしていない。すなわち、OC24と高反射ミラー5aの面の交線と、高反射ミラー5b,5cの面の交線は、上記平面から等しい距離にあり、出力側とリア側が、左右対称となるように配置されている。
【0033】
この構成は、通常の増幅用のリング共振器と同様の構成であり、前記図10(b)に示したように、シード光をOC24に対して所定の角度(例えば45度)で注入すると、リング共振器内を往復する光の光路は何往復しても同じになり、増幅段レーザ(PO)20の出力側のウインド22aとOC24の負荷(エネルギ密度)が高くなり、素子の寿命が短くなる。
そこで、本実施例では、発振段レーザ(MO)からのシード光を、上記所定の角度とは異なる角度で注入する。すなわち、共振器に注入された光の光路が、注入位置から増幅段レーザ(PO)20の放電方向の面に対して略垂直方向に往復毎に移動するように、上記所定角度とは異なった角度で上記リング型共振器にレーザ光を注入する。例えば、MOビーム(シード光)を、高反射ミラー4cから、OC24の端部に入射角度45度よりも多少大きな角度で入射する。
【0034】
以下この実施例の動作を説明する。
上記のように、MOビーム(シード光)をOC24の端部に入射角度45度よりも多少大きな角度で入射すると、このビームの一部はOC24を透過して、高反射ミラー5aに入射する。そして、シード光はウインド22aを透過してレーザチャンバ21に入射する。
シード光は放電電極2aの長手方向の軸に対して、略平行(多少斜め)な光路で透過し、増幅されずにチャンバ21内を透過する。このシード光は高反射ミラー5b,5cにより折り返され、放電電極2aの放電空間に光が通過するようにウインド22bを介してレーザチャンバ21に入射する。
上記シード光は放電電極2aの放電空間に導かれ、シード光に同期して、図示しない電源により電圧が放電電極2aに印加され、電極2a間で放電する。
これにより、シード光が増幅されて、ビームはOC24に到達する。OC24での透過光は、出力レーザ光として出力(1往復による増幅光)される。
【0035】
1往復目の光路に対して多少傾いた光路で再び全反射ミラー5aによりレーザチャンバ21に戻され、増幅されずにチャンバ21内を透過し、全反射ミラー5b及び5cに入射する。そして、再びチャンバ21に戻され、1往復目の光路に対して所定の距離だけ平行移動した光路で、放電空間内を透過し、増幅される。この増幅光は、1往復目に対して一定の割合で移動してビームは再びOC24に入射し、透過光はレーザ光として出力され、反射光は再び共振器内で共振し、3往復目も同様に往復するたびに光路が平行に移動して増幅発振する。
【0036】
以上のように、本実施例では、MOレーザ光を増幅段レーザ(PO)のリング共振器に斜めに注入し、その注入された光が往復毎に注入位置が増幅段レーザ(PO)の放電方向の面に対して略垂直方向に移動しながら往復毎に増幅するようにしたので、以下の効果を得ることができる。
(1)往復毎にリング共振器内部レーザ光のビームが移動しビーム幅が広がるので、増幅段レーザ(PO)のリング共振器の光学素子(OC、レーザウインド及び高反射ミラー)におけるレーザ光のエネルギ密度が低減される。そのため、増幅段レーザ(PO)の光学素子の寿命が長くなる。
(2)リング共振器の光路中でビーム拡大しないので、注入効率が高くなる。
(3)往復毎に出力されるレーザ光は平行であるため、放電方向に対して垂直な方向の出力レーザ光全体としてのビームダイバージェンスは広くならない。
なお、第3の実施例(図3)のような往復路で増幅するようなリング共振器であっても、本実施例に示すように注入光を斜めに注入し、往復毎のOC24上でのビーム位置が移動するようにしてもよい。
【0037】
図6は本発明の第6の実施例の露光装置用狭帯域レーザ装置の構成を示す図であり、本実施例は、増幅段レーザ(PO)に3枚のミラーから構成されるリング共振器を用い、シード光をずらして注入することにより、共振器内に注入された光の奇数往復目の光路と、偶数往復目の光路が異なる光路となるようにした実施例を示す。
同図は増幅段レーザ(PO)20の上面図を示し、発振段レーザ(MO)の構成等は省略されているが、前記図1と同様である。すなわち、発振段レーザ(MO)10から放出されるレーザビームはシードレーザビームとして機能し、増幅段レーザ(PO)20はそのシードレーザ光を増幅する機能を有する。
【0038】
図6において、増幅段レーザ(PO)のチャンバ21の出力側には45度よりやや小さな角度でシード光が入射し、部分反射するOC24と、45度よりやや小さな角度の入射角度で高反射する高反射ミラー5aの互いの面の角度が約90度よりも小さい角度で配置されている。
また、増幅段レーザ(PO)20のチャンバ21のリア側には略0度入射(3から6mrad)で高反射する高反射ミラー5bが配置されている。
そして、OC24、高反射ミラー5a,5bのミラー面は、電極の放電方向と平行に設置され、OC24と高反射ミラー5aのミラー面は、上記放電方向に平行で放電電極2aの長手方向の軸に平行な平面に対して等しい角度になるように配置され、高反射ミラー5cは、この平面に対して垂直に配置されている。
すなわち、OC24、高反射ミラー5a,5bは、リング共振器内の光路が、放電方向に垂直で放電領域を含む面上になるように配置されている。
この例のリング共振器では、OC24と高反射ミラー5aのミラー面の交線と、高反射ミラー5bのミラー面の中央の線が、放電電極2aの長手方向の軸を含み、放電方向と平行な同一平面上にある。そして、放電方向の面に対して垂直な面内であって、電極間の放電領域を含む面と平行になるようにシード光を注入する。
【0039】
図6において、MOビーム(シード光)は高反射ミラー4cにより増幅段レーザ(PO)20のOC24の端部Aに、放電方向の面に対して垂直な面内であって、電極間の放電領域を含む面に沿って入射する。OC24の面に対する入射角度は、45度よりも多少小さな角度である。
このビームの一部はOC24を透過して、高反射ミラー5aに入射する。そして、シード光はウインド22aを透過してレーザチャンバ21に入射する。シード光は放電電極2a間を、斜めに透過する。そして、シード光に同期して図示しない電源により電圧が印加され電極2a間で放電する。これにより、シード光は増幅されてチャンバ21内を透過する。
このシード光は高反射ミラー5bの端部aで高反射され、再び放電電極2aの放電空間に光が通過するようにウインド22bを介してレーザチャンバ21に入射する。入射したシード光は電極2aの放電空間に導かれ増幅されて、OC24に到達する。
【0040】
このビームは、OC24に入射するが、中央光軸(この例では共振器内に注入された光の奇数往復目の光路と、偶数往復目の光路の中央を通る軸、同図の点線で示す線)に対して上記端部Aの反対側の端部Bに入射する。
そして、OC24での透過光は、出力レーザ光として出力(1往復による増幅光)される。OC24での反射光は、1往復目の光路に対して互いに平行な光路で再び全反射ミラー5aによりレーザチャンバ21に戻され、増幅され、チャンバ21内を透過し、全反射ミラー5bの端部bで高反射される。
そして、再びレーザチャンバ21に戻され、1往復目の光路に対して、互いに平行な光軸で、放電空間内を透過し、増幅される。この増幅光は、シード光の注入位置と一致するOC24の位置(端部A)に入射し、透過光は2往復目のレーザ光として出力される。
反射光は3往復目の光としてリング共振器内を進み、増幅される。3往復目の光軸は、1往復目と同じ光軸となる。
すなわち、リング共振器内で、レーザビームは、上記中央光軸に対して両側のOC24の端部Aと端部Bに交互に入射し、また、上記中央光軸の両側の高反射ミラー5bの端部aと端部bに交互に入射する。
このように、本実施例では、奇数往復の光路が一致し、偶数往復の光路がおのおの一致する。
【0041】
以上のように、リング共振器として、3枚のミラーによるリング共振器を配置し、共振器内に注入された光の奇数往復目の光路と、偶数往復目の光路が異なる光路となるように、上記リング型共振器のミラー配置、およびリング型共振器へのレーザ光の注入位置を選定することにより、以下の効果を得ることができる。
(1)奇数往復目と偶数往復目で増幅された出力光のビーム位置がことなるのでビーム幅が広がる。したがって、増幅段レーザ(PO)のリング共振器の光学素子(OC、レーザウインド及び高反射ミラー)におけるレーザ光のエネルギ密度が低減される。そのため、POの光学素子の寿命が長くなる。
(2)リング共振器の光路中でビーム拡大しないので、注入効率が高くなる。
(3)往復毎に出力されるレーザ光は平行であるため、放電方向に対して垂直な方向の出力レーザ光全体としてのビームダイバージェンスは広くならない。
(4)奇数往復目と偶数往復目のそれぞれの光軸が一致することにより、共振器内の光の往復回数が増加してもケラレることがなく共振するため、前記実施例に比べて、パルス幅が長くなる。
【0042】
図7は本発明の第7の実施例の露光装置用狭帯域レーザ装置の構成を示す図であり、本実施例は、5枚のミラーによりリング共振器を構成し、シード光を、放電方向を含む面に対して垂直な面内で平行にずらして注入する実施例を示す。
同図は増幅段レーザ(PO)20の上面図を示し、発振段レーザ(MO)の構成等は省略されているが、前記図1と同様である。すなわち、発振段レーザ(MO)10から放出されるレーザビームはシードレーザビームとして機能し、増幅段レーザ(PO)20はそのシードレーザ光を増幅する機能を有する。
【0043】
以下、前記第6の実施例(図6)と異なる点について説明する。
本実施例においては、(1)リング共振器のミラーの枚数を5枚とし、OC24、高反射ミラー5a〜5dでリング共振器を構成している。また、(2)OC24と高反射ミラー5b間を往復する光の光路を電極2aの長手方向と一致させ、高反射ミラー5aと高反射ミラー5d間を往復する光路は電極2aの長手方向に対して傾けて配置している。
さらに(3)高反射ミラー5aで反射した光を、高反射ミラー5dで反射させ、高反射ミラー5dから5cを介して高反射ミラー5bに入射させている。
増幅段レーザ(PO)20のチャンバ21の出力側には45度の角度でシード光が入射し、部分反射するPRコートが施されたOC24と、45度の入射角度で高反射する高反射ミラー5aが設けられ、OC24と高反射ミラー5aの互いの面の角度が約90度の角度で配置されている。
チャンバ21のリア側には入射角22.5度よりもやや小さな角度で高反射する高反射ミラー5c,5dが配置されている。そして、45度入射角度の高反射ミラー5bが配置されている。
【0044】
OC24、高反射ミラー5a,5b,5c及び5dのミラー面は電極の放電方向と平行に設置され、リング共振器内の光の光路が、放電方向に対して垂直な平面内に含まれるように配置されている。この例では、放電方向の面に対して垂直な面内であって、電極間の放電領域を含む面と平行になるようにシード光を注入する。
図7において、発振段レーザ(MO)からのシード光は高反射ミラー4cにより増幅段レーザ(PO)20のOC24の端部Aに入射角度45度で入射する。
このビームの一部はOC24を透過して、高反射ミラー5aに45度よりもやや小さな角度で入射する。そして、シード光はウインド22aを透過してレーザチャンバ21に入射する。
シード光は放電電極2a間を、放電電極2aの長手方向の軸を横切るように斜めに透過する。そして、シード光に同期して図示しない電源により電圧が印加され電極2a間で放電する。
【0045】
これにより、シード光は増幅されてチャンバ21内を透過する。このシード光は高反射ミラー5d,5cにより入射角度22.5度よりも小さな角度で高反射され、高反射ミラー5bに45度で入射する。
そして、リング共振器の放電電極2aの長手方向の軸と平行な光路で再び放電電極2aの放電空間を通過するようにウインド22bを介してレーザチャンバ21に入射する。電極2aの放電空間に導かれたシード光は増幅されて、ビームはOC24に到達する。
ここで、このビームは中央光軸(この例では共振器内に注入された光の奇数往復目の光路と、偶数往復目の光路の中央を通る軸、同図の破線で示す線)に対して端部Aと反対側の端部Bに入射する。
ここで、OC24での透過光は、出力レーザ光として出力(1往復による増幅光)される。OC24での反射光は1往復目の光路に対して互いに平行な光路で再び全反射ミラー5aによりレーザチャンバ21に戻されて増幅され、チャンバ21内を透過し、全反射ミラー5d,5c及び5bにより高反射する。
そして、再びレーザチャンバ21に戻され、1往復目の光路に対して互いに平行な光路で、放電空間内を透過し、増幅される。
【0046】
この増幅光は、シード光の注入位置と一致するOC24の位置(端部A)に入射し、透過光は2往復目のレーザ光として出力される。反射光は3往復目の光としてリング共振器内を進み、増幅される。ただし、3往復目の光軸は、1往復目と同じ光路となる。このようにして、この実施例のリング共振器では、奇数往復の光路が一致し、偶数往復の光路が一致する。
以上のように、リング共振器として、5枚のミラーによるリング共振器を配置して、注入光を前記5枚のミラーに注入することにより図6に示した第6の実施例の効果に加え、以下の効果が得られる。
リング共振器内を光が高反射ミラー5aから5dへ進む際に、放電電極を横切るように放電空間を透過させ、次に、光が高反射ミラー5bからOC24へ進む際に電極に沿って放電空間を透過させて増幅しているので、図6の実施例にくらべて、増幅効率が高く安定している。
【0047】
上述した第1〜7の実施例において、OC、高反射ミラーの高反射膜、ウインドの反射防止膜はP偏光の成分に対してコーティングされる。
コーティングの材料としては、193nmで吸収の少ない低屈折率の材料としてMgF2 、高屈折率の材料としてGdF3 及びLaF3 を使用する。これら膜の蒸着法としては、抵抗過熱法、イオンビームスパッタ法、マグネトロンスパッタ法がある。とくに、F2 ガス雰囲気中行うスパッタリング法により製膜された膜は散乱及び吸収が少なく、高出力の増幅段レーザ(PO)のリング共振器用の光学素子のコーティングに適している。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施例の構成を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施例の構成を示す図である。
【図3】本発明の第3の実施例の構成を示す図である。
【図4】本発明の第4の実施例の構成を示す図である。
【図5】本発明の第5の実施例の構成を示す図である。
【図6】本発明の第6の実施例の構成を示す図である。
【図7】本発明の第7の実施例の構成を示す図である。
【図8】特許文献1に記載の従来例(1)を示す図である。
【図9】特許文献2に記載の従来例(2)を示す図である。
【図10】MOPO方式のレーザ装置の従来例を示す図である。
【図11】リング共振器の光路中にビームを拡大する光学素子を配置した場合を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1a,2a 放電電極
3 狭帯域化モジュール(LNM)
3a プリズムビームエキスパンダ
3b グレーティング(回折格子)
4a〜4c 高反射ミラー
5a〜5d 高反射ミラー
6a,6b 全反射直角プリズム
10 発振段レーザ(MO)
11 MOチャンバ
12a,12b ウィンドウ部材
13,23 スリット
14,24 OC(出力結合ミラー)
20 増幅段レーザ(PO)
21 POチャンバ
22a,22b ウィンドウ部材
【技術分野】
【0001】
本発明は狭帯域発振段レーザと増幅段レーザとからなる露光装置用の注入同期式放電励起レーザ装置に関し、特に、チャンバウインドや出力結合ミラー(OC)等の光学素子の寿命を延ばすことができる露光装置用レーザ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体露光装置用光源としてエキシマレーザが使用されている。特に、45nm以下のテクノロジーノードにおいては、高出力(40W以上)でかつ超狭帯域化(0.2pm以下)にされたArFレーザ光源が採用されている。
露光装置用光源のArFレーザ光源においては、高ドーズ安定性の確保と高スループット化に伴い、さらに高出力の90W以上の出力が要求されている。
上記光源の要求を満たすために、ダブルチャンバ方式(2ステージ方式)のArFレーザが実用化されている。ダブルチャンバ方式のレーザ装置の形態としては、アンプ側に共振器ミラーを設けないMOPA(Master Oscillator Power Amprifier )方式と共振器ミラーを設けるMOPO(Master Oscillator Power Oscillator)方式とに大別される。 しかし、出力90Wのような高出力化のために、増幅器(PA)または増幅段レーザ(PO)の光学素子(特にチャンバウインドやOC)負荷が大きくなり、これら光学素子の寿命が課題となっており、レーザ光源の長寿命化が要求されるようになってきている。
【0003】
これら光学素子の寿命を延ばすために、例えば特許文献1、特許文献2には以下の技術が開示されている。
特許文献1に記載のものにおいては、図8に示すように、発振段レーザ(MO)100と、増幅器(PA)200を有するMOPA方式のレーザ装置において、増幅器(PA)200の放電電極と増幅器(PA)200のレーザチャンバウインドの間にプリズムビームエキスパンダ201を配置していた。これにより、増幅器(PA)200のレーザチャンバウインドにかかる負荷(エネルギ密度)が低減される。
特許文献2に記載のものにおいては、発振段レーザ(MO)100と、増幅段レーザ(PO)300を有するMOPO方式のレーザ装置において、図9に示すように増幅段レーザ(PO)300のレーザチャンバ301と出力結合ミラー(OC)303の間にビームエキスパンダ302を配置していた。これにより、出力結合ミラー(OC)303にかかる負荷(エネルギ密度)が低減される。
【特許文献1】特表2005−524998号公報
【特許文献2】特開2006−049839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記MOPO方式のレーザ装置において、シード注入効率が高いリング共振器を増幅段レーザ(PO)に採用した場合、最終出力90W(15mJ、6kHz)では、増幅段レーザ(PO)のOC及びチャンバのウインドに高負荷がかかり、寿命が短くなっていた。 図10に増幅段レーザ(PO)にリング共振器を設置したMOPO方式のレーザ装置の従来例を示す。同図(a)は側面図を示し、同図(b)は増幅段レーザ(PO)20の上面図を示す。
同図において、発振段レーザ(MO)10から放出されるレーザビームはシードレーザビームとして機能し、増幅段レーザ(PO)20はそのシードレーザ光を増幅する機能を有する。発振段レーザ(MO)10、増幅段レーザ(PO)20は各々レーザチャンバ11,21を有し、その内部にはレーザガスが満たされており、それぞれ内部には対向し、かつ所定距離だけ離間した一対の電極1a、2aが設置され、これらの一対の電極1a,2aに高電圧パルスが印加されることにより放電が発生する。
【0005】
また、発振段レーザ10と増幅段レーザ20のチャンバ11,21には、レーザ発振光に対して透過性がある材料によって作られたウィンドウ部材12a,12b,22a,22bがそれぞれ設置されている。
発振段レーザ10は拡大プリズム3aとグレーティング(回折格子)3bによって構成された狭帯域化モジュール(LNM)3を有し、この狭帯域化モジュール3内の光学素子とOC14とでレーザ共振器を構成する。
発振段レーザ10からのMOレーザ光(シードレーザビーム)は高反射ミラー4a,4b,4cを介して増幅段レーザ(PO)20へ導かれ注入される。
増幅段レーザ(PO)20は図10(b)に示すように、光入射側に反射防止(AR)膜が施された部分反射(PR)ミラーであるOC24と、高反射ミラー5a,5b,5cで構成されるリング共振器を有する。
【0006】
発振段レーザ(MO)10から出力されたビームは高反射ミラー4a,4b,4cにより増幅段レーザ(PO)20のリング共振器のOC24から注入され、高反射ミラー5aによりレーザチャンバ21内の放電しない空間を透過させ、高反射ミラー5b及び5cにより放電電極空間に折り返される。このシード光に同期して、放電電極2a間に電圧が印加され放電する。そして放電空間を透過したシード光は増幅され、増幅した光の一部はOC24を透過してレーザとして出力し、OC24の反射光は再びリング共振器の中にフィードバックされ共振する。そして、レーザパルスとして出力される。OC24の反射率が例えば20〜30%とするとMOから出力されたビームの80〜70%がリング共振器内に注入されることになり高い注入効率を得ることができる。一方、MOPA方式の場合は、増幅段に光共振器がなく、共振増幅しないので単に増幅器としての機能のみであるため、リング共振器を備えたMOPO方式に比べて、MOの出力は約10倍程度必要となる。
しかし、増幅段レーザ(PO)20にリング共振器を採用して、レーザの出力が高い(90W以上)場合はリング共振器内部の負荷が非常に高くなる。特に増幅段レーザ(PO)20のOC24にコーティングされている部分反射(PR)膜は損傷し寿命が短くなっていた。また、増幅段レーザ(PO)20の出力側ウインド22aもエネルギ負荷が高く寿命が短かった。
【0007】
そこで、前記特許文献1に記載されるように、劣化する光学素子の手前のリング共振器の光路上に、ビームを拡大するための光学素子を配置することが考えられる。図11にこのように構成した場合の増幅段レーザ(PO)20の構成例を示す。
すなわち、同図に示すように、出力側ウインド22aの手前のリング共振器の光路上に、ビームを拡大するための光学素子であるビームエキスパインダ7を配置する。
しかし、図11に示すように、リング共振器の光路中にビームを拡大する光学素子を配置すると、リング共振器は不安定型共振器(共振器を往復する毎にビームが拡大する共振器)となる。このため、以下の問題点が発生した。
・増幅段レーザ(PO)発振の損失が大きく、かつ、注入効率が悪くなっていた。
・出力レーザ光の空間コヒーレンスが高くなり、露光装置のマスク上にスペックルが発生した。
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、狭帯域発振段レーザと増幅段レーザとからなる露光装置用レーザ装置において、ビームを拡大する光学素子を用いることなく、チャンバウインドや出力結合ミラー(OC)等の光学素子の損傷を小さくし、寿命を延ばすことができる露光装置用狭帯域レーザ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明においては発振段レーザ(MO)から増幅段レーザ(PO)のリング共振器に注入された光の光路が、注入位置から、放電方向に対して略垂直な面内で往復毎に移動しながら増幅されるように構成する。
すなわち、本発明においては以下のように構成することにより前記課題を解決する。
(1)狭帯域発振段レーザ(MO)と、リング型共振器を配置した増幅段レーザ(PO)とからなる注入同期式放電励起レーザ装置において、増幅段レーザ(PO)のリング型共振器に、狭帯域発振段レーザ(MO)からのMOレーザ光を注入し、増幅段レーザ(PO)において、上記注入された光の注入位置からの光路が、増幅段レーザ(PO)の放電方向の面(放電電極の長手方向にほぼ平行で放電方向に平行な面)に対して略垂直方向に往復毎に移動しながら増幅されるように構成する。
(2)上記(1)において、リング型の共振器に注入された光の光路が、注入位置から往復毎に、増幅段レーザ(PO)の放電方向の面に対して略垂直方向に移動するように、前記増幅段レーザ(PO)のリング型共振器のミラーを配置する。
(3)上記(1)において、リング型共振器を、レーザ光が、リング型共振器に対して所定角度で注入されたとき、同一光路を経由してリング型共振器内で往復するように構成し、このリング型共振器に上記所定角度とは異なった角度でレーザ光を注入し、注入された光の光路が、注入位置から増幅段レーザ(PO)の放電方向の面に対して略垂直方向に往復毎に移動するようにする。
(4)上記(1)において、リング型共振器のミラーを出力結合ミラーを含めて3枚以上の奇数枚とし、リング型共振器のミラー配置、およびリング型共振器へのレーザ光の注入位置を選定することにより、リング型共振器内に注入された光の奇数往復目の光路と、偶数往復目の光路が異なる光路となるようにする。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、以下の効果を得ることができる。
(1)往復毎にリング共振器内部レーザ光のビームが移動するように構成することで、結果としてビーム幅を広げることができる。
このため増幅段レーザ(PO)のリング共振器の光学素子(OC、レーザウインド及び高反射ミラー)におけるレーザ光のエネルギ密度が低減される。その結果、増幅段レーザ(PO)の光学素子の寿命を長くすることができる。
(2)リング共振器の光路中でビーム拡大しないので、注入効率が高くなる。
(3)光路中にビーム拡大のための光学素子を配置していないので、不安定共振器とならず、空間コヒーレンスは低くなる。このため露光装置用光源として使用した場合マスク上でのスペックルが抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明の第1の実施例の露光装置用狭帯域レーザ装置の構成を示す図であり、増幅段レーザ20(PO)に長方形型のリング共振器を設置した場合を示している。同図(a)は側面図を示し、同図(b)は増幅段レーザ(PO)20の上面図を示す。
同図(a)の構成は前記図10に示したものと同じであり、発振段レーザ(MO)10から放出されるレーザビームはシードレーザビームとして機能し、増幅段レーザ(PO)20はそのシードレーザ光を増幅する機能を有する。発振段レーザ(MO)10、増幅段レーザ(PO)20は各々レーザチャンバ11,21を有し、その内部にはレーザガスが満たされており、それぞれ内部には対向し、かつ所定距離だけ離間した一対の電極1a、2aが設置され、これらの一対の電極1a,2aに高電圧パルスが印加されることにより放電が発生する。
【0011】
また、発振段レーザ10と増幅段レーザ20のチャンバ11,21には、レーザ発振光に対して透過性がある材料によって作られたウィンドウ部材12a,12b,22a,22bがそれぞれ設置されている。
発振段レーザ10は拡大プリズム3aとグレーティング(回折格子)3bによって構成された狭帯域化モジュール(LNM)3を有し、この狭帯域化モジュール3内の光学素子とOC14とでレーザ共振器を構成する。
発振段レーザ10からのMOレーザ光(シードレーザビーム)は高反射ミラー4a,4b,4cを介して増幅段レーザ(PO)20へ導かれ注入される。
増幅段レーザ(PO)20には図1(b)に示すようにOC24、高反射ミラー5a,5b,5cからなるリング共振器が設けられ、リング共振器中に、光入射側に反射防止(AR)膜が施された部分反射(PR)ミラーであるOC24が配置され、その他のリング共振器を構成するミラー5a,5b,5cには高反射(HR)膜がコートされている。
【0012】
本実施例では、増幅段レーザ(PO)20のチャンバ21の出力側に、45度入射で部分反射するOC24と45度で高反射する高反射ミラー5aの互いの面の角度が90度になるように配置されている。
また、増幅段レーザ(PO)20のチャンバ21のリア側に2枚の45度で高反射する高反射ミラー5bと5cが、互いの面の角度が90度になるように配置されている。そして、OC24、高反射ミラー5aと、高反射ミラー5b、5cのミラー面は放電方向に対してほぼ平行で、放電面(放電電極の長手方向にほぼ平行で放電方向に平行な面)に対してほぼ45度傾いて配置されている。
すなわち、放電電極2aを挟んで対向する共振器ミラー(OC24、高反射ミラー5aと、高反射ミラー5b、5c)間を往復する光の光路が放電面に垂直な面内を含むように配置されている。上記共振器ミラー間を往復する光路方向をここでは、リング共振器の光軸方向とも呼ぶ。
【0013】
ここで、通常の増幅用のリング共振器では、OC24と高反射ミラー5aのミラー面が接する交点(線)と、高反射ミラー5b及び5cのミラー面が接する交点(線)が、リング共振器の光軸方向に平行な平面上にあり、出力側のOC24と高反射ミラー5aと、リア側の高反射ミラー5b,5cが、上記光軸方向に垂直な平面に対して左右対称となるように配置されている。そして、発振段レーザ(MO)10からのシード光は、上記光軸方向に沿って注入される。
このように通常のリング共振器と同様にリング共振器を構成し、上記のようにシード光を注入すると、リング共振器内を往復する光の光路は何往復しても同じになる。
この場合、図10(b)に示したようにビーム幅は増幅段レーザ(PO)20の放電幅と略一致し、増幅段レーザ(PO)20の出力側のウインド22aとOC24の負荷(エネルギ密度)が高くなり、素子の寿命が短くなる。
【0014】
そこで、この実施例では、図1(b)に示すように、OC24と高反射ミラー5aのミラー面が交わった部分に形成される谷線(以下交線という)と、高反射ミラー5b及び5cのミラー面の交線が、共振器の光軸方向に平行(共振器内の光路を放電電極の長手方向の軸に一致させる場合は、放電電極の長手方向の軸に対して平行)で、放電電極2aの放電方向に平行な平面に対して、オフセットするように平行移動させて配置する。なお、前述したようにOC24、高反射ミラー5aと、高反射ミラー5b、5cのミラー面は放電方向に対してほぼ平行であるので、上記交線は放電方向に対して平行である。
すなわち、上記ミラー面の交線が、上記同一平面上にないように、OC24と高反射ミラー5aの組、あるいは高反射ミラー5b及び5cの組のいずれか一方を上記平面に対して垂直方向に、平行移動させて配置する。
また、発振段レーザ(MO)10からの注入ビーム(シード光)を、OC24の端部(例えば高反射ミラー5aに最も近い位置あるいは最も遠い位置)から、OC24に対して入射角度45度で入射させる。
このビームの一部はOC24を透過して、高反射ミラー5aに45度で入反射する。そして、シード光はウインド22aを透過してレーザチャンバ21に入射する。
【0015】
シード光は放電電極2aの長手方向に対して、略平行な光路でチャンバ21内を透過し、増幅されずにチャンバ21内を通過する。このシード光は高反射ミラー5b及び5cにより折り返され、放電電極2aの放電空間にシード光が通過するようにレーザチャンバ21に入射する。
放電電極2aの放電空間に導かれたシード光に同期して、図示しない電源により、放電電極2a間に電圧が印加され電極2a間で放電する。これにより、シード光が増幅されて、ビームはOC24に到達する。OC24での透過光は、出力レーザ光は1往復による増幅光として出力される。
一方OC24での反射光は、1往復目の光路に対して放電方向に対して垂直な面内で平行に移動した光路で、再び全反射ミラー5aによりレーザチャンバ21に戻され、増幅されずにチャンバ21内を透過し、全反射ミラー5b及び5cに入射する。
そして、再びレーザチャンバ21に戻され、1往復目の光路Pに対して所定の距離だけ平行移動した光路で、放電空間内を透過し、増幅される。この増幅光は、1往復目に対して一定の割合で移動してビームは再びOC24に入射し、透過光はレーザ光として出力され、反射光は再び共振器内で共振し、3往復目も同様に往復するたびに光路が平行移動して増幅発振する。
【0016】
以上のように、MOレーザ光(シード光)を増幅段レーザ(PO)20のリング共振器に注入し、その注入された光が往復毎に注入位置から放電方向の面に対して略垂直方向に移動しながら往復毎に増幅する光共振器を配置することにより、以下の効果を得ることができる。
(1)往復毎にリング共振器内部でレーザ光のビームが移動しビーム幅が広がるので、増幅段レーザ(PO)20のリング共振器の光学素子(OC、レーザウインド及び高反射ミラー)におけるレーザ光のエネルギ密度が低減される。そのため、増幅段レーザ(PO)20の光学素子の寿命が長くなる。
(2)リング共振器の光路中でビーム拡大しないので、注入効率が高くなる。
(3)光路中にビーム拡大のための光学素子を配置していないので、不安定共振器とならないために、空間コヒーレンスは低くなる。このため露光装置用光源として使用した場合マスク上でのスペックルが抑制される。
(4)往復毎に出力されるレーザ光は平行であるため、放電方向に対して垂直な方向の出力レーザ光全体としてのビームダイバージェンスは広くならない。
【0017】
図2は本発明の第2の実施例の露光装置用狭帯域レーザ装置の構成を示す図であり、増幅段レーザ20(PO)に長方形型のリング共振器を設置した前記第1の実施例の変形例を示している。同図(a)は側面図を示し、同図(b)は増幅段レーザ(PO)20の上面図を示す。
本実施例の構成は、前記共振器ミラーが全反射直角プリズム6a,6bに代わった点を除き、基本的には、前記第1の実施例と同じである。
発振段レーザ(MO)10から放出されるレーザビームはシードレーザビームとして機能し、増幅段レーザ(PO)20はそのシードレーザ光を増幅する機能を有する。発振段レーザ(MO)10、増幅段レーザ(PO)20は各々レーザチャンバ11,21を有し、その内部にはレーザガスが満たされており、それぞれ内部には対向し、かつ所定距離だけ離間した一対の電極1a、2aが設置され、これらの一対の電極1a,2aに高電圧パルスが印加されることにより放電が発生する。
以下、前記第1の実施例と異なる点について説明する。
本実施例では、(1)リング共振器の光学素子として、反射防止(AR)膜がコートされた2つの全反射直角プリズム6a,6bを設置し、(2)リング共振器の光路中に、部分反射(PR)膜をコートしたOC24を設置し、(3)全反射直角プリズム6aと全反射直角プリズム6bのそれぞれの頂角の部分の稜線を、前記第1の実施例と同様、放電電極の長手方向の軸に対して、オフセットさせて配置している。すなわち、全反射直角プリズム6aと全反射直角プリズム6bのそれぞれの頂角の部分の稜線が、共振器の光軸方向に平行(共振器内の光路が放電電極の長手方向の軸に平行の場合には、放電電極の長手方向の軸に対して平行)で、放電電極2aの放電方向に平行な平面に対して、オフセットするように平行移動させて配置する(上記稜線が上記同一平面上にないように、上記平面に対して垂直方向に、平行移動させて配置する)。
【0018】
増幅段レーザ(PO)20のリング共振器は、上述したように反射防止(AR)膜がコートされた全反射直角プリズム6a,6bから構成され、この全反射直角プリズムの全反射面は、放電方向に対してほぼ平行で、放電面(放電電極の長手方向にほぼ平行で放電方向に平行な面)に対してほぼ45度傾いて配置されている。
すなわち、放電電極2aを挟んで対向する全反射直角プリズム6a,6b間を往復する光の光路が放電面に垂直な面内を含むように配置され、第1の実施例と同様、注入された光の注入位置からの光路が、増幅段レーザ(PO)20の放電方向の面に対して略垂直方向に往復毎に移動する。
すなわち、図2(b)に示すように、MOビーム(シード光)は高反射ミラー4aにより反射され、片面に部分反射(PR)膜がコートされ、他の片面に反射防止(AR)膜がコートされたOC24の端部に入射する。
【0019】
OC24ではシード光が一部反射し、全反射直角プリズム6aに入射する。この全反射直角プリズム6aの入射出射面には反射防止(AR)膜がコートされている。シード光はプリズム6aの2つ面でフレネル反射により全反射する。
そして、シード光はウインド22aを透過してレーザチャンバ21に入射する。シード光は放電電極2aに対して、略平行な光路で透過し、増幅されずにチャンバ21内を透過し、全反射直角プリズム6bに入射する。シード光は直角プリズム6bの2面で全反射し再びウインド22bを介して放電電極2aの放電空間と光路が一致するようにレーザチャンバ21に入射する。放電電極2aの放電空間に導かれたシード光に同期して、図示しない電源により放電電極2aに電圧が印加され電極2a間で放電する。
これにより、シード光が増幅されて、レーザビームはOC24のPRコート部に入射する。OC24での反射光は、出力レーザ光(1往復による増幅光)として出力される。
【0020】
透過光は、1往復目の光路に対して平行に移動した光路で再び全反射直角プリズム6aによりレーザチャンバ21に戻され、増幅されずにチャンバ21内を透過し、全反射直角プリズム6bに入射する。そして、再びレーザチャンバ21に入射し、1往復目の光路に対して所定の距離だけ平行移動した光路で、放電空間内を透過し、増幅される。
この増幅光は、1往復目に対して一定の割合で移動してビームは再びOC24のPRコート部に入射し、反射光はレーザ光として出力され、透過光は再び共振器内で共振し、3往復目も同様に往復するたびに光路が平行移動して増幅発振する。
【0021】
本実施例では、以下効果を得ることができる。
(1)往復ビーム毎に出力レーザ光のビームが移動するので、増幅段レーザ(PO)のリング共振器の光学素子(OC、レーザウインド)におけるレーザ光のエネルギ密度が低減される。そのため、増幅段レーザ(PO)の光学素子の寿命が長くなる。
(2)全反射直角プリズムによりリング共振器を構成しているのでアライメントが容易である。
(3)往復毎に出力されるレーザ光は平行であるため、放電方向に対して垂直な方向の出力レーザ光全体としてのビームダイバージェンスは広くならない。
【0022】
図3は本発明の第3の実施例の露光装置用狭帯域レーザ装置の構成を示す図であり、前記第1の実施例において2組の折り返しミラー位置をともにオフセットした場合を示している。
同図は増幅段レーザ(PO)20の上面図を示し、発振段レーザ(MO)の構成等は省略されているが、前記図1と同様である。すなわち、発振段レーザ(MO)10から放出されるレーザビームはシードレーザビームとして機能し、増幅段レーザ(PO)20はそのシードレーザ光を増幅する機能を有する。発振段レーザ(MO)10、増幅段レーザ(PO)20は各々レーザチャンバ11,21を有し、その内部にはレーザガスが満たされており、それぞれ内部には対向し、かつ所定距離だけ離間した一対の電極1a、2aが設置され、これらの一対の電極1a,2aに高電圧パルスが印加されることにより放電が発生する。
【0023】
以下、前記第1の実施例と異なる点について説明する。
本実施例では、(1)リング共振器として往路と復路両方で放電空間を通過して増幅するタイプの共振器を採用している。また、(2)OC24と高反射ミラー5aの面の交線と、高反射ミラー5b,5cの面の交線が、共振器の光軸方向に平行(放電電極の長手方向の軸に対して平行)で、放電電極2aの放電方向に平行な平面に対して、オフセットするように平行移動させて配置する。
すなわち、上記平面を、放電電極の長手方向の軸に対して平行であって放電電極2aの放電方向に平行な平面とすると、この平面からOC24と高反射ミラー5aの交線までの距離をAとし、上記平面から高反射ミラー4b,4cの交線までの距離をBとしたとき、AとBを異なった値とする(B>A)。
また、OC24、高反射ミラー5aと、高反射ミラー5b、5cのミラー面は放電方向に対してはほぼ平行であるが、OC24、高反射ミラー5bは放電面(放電電極の長手方向にほぼ平行で放電方向に平行な面)に対してほぼ45度傾いて配置され、高反射ミラー5a、5cは上記放電面に対してα度(α<45度)傾いて配置される。
このため、リング共振器内で、光が往復する毎に、同図に示すように放電方向の面に対して垂直な面内を光路が移動する。なお、この実施例の場合、リング共振器内の光路は、往路、復路ともに放電領域を通過する。
【0024】
以下この実施例の動作を説明する。
MOビーム(シード光)は高反射ミラー4cにより増幅段レーザ(PO)20のOC24の端部に45度で入射する。
45度の部分反射(PR)膜をコートしたOC24を透過し高反射ミラー5aに入射角度α(45度よりも数mrad小さな角度)で入反射し、ウインド22aを透過し、増幅段レーザ(PO)20のレーザチャンバ21の放電空間に傾いて入射される。
上記シード光に同期して、放電電極2aに電圧が印加され、放電電極2aは放電する。そして放電空間を透過したシード光は増幅され、ウインド22bを透過し高反射ミラー5bに入射角度αで入反射する。そして、高反射ミラー5cに入射角度45度で入反射し、放電電極2aの長手方向と平行な光路でウインド22aを透過し、再び放電している放電空間に導かれ、増幅される。
そして、レーザビームの光路は注入部(OC24の端部)から放電方向の面に対して垂直な面内で一定の割合で移動し、OC24に入射し一部透過して、レーザの出力光(1往復光)となり、一部は反射され再び高反射ミラー5aに入射し、同様に放電空間を1往復目の光路に対して平行移動した光路で透過し、高反射ミラー5b及び5cにより再び放電空間を1往復目の光路に対して平行移動した光路で透過し、1往復目に対して一定の割合で移動してビームは再びOC24のPRコート部に入射し、透過光はレーザ光として出力され、反射光は再び共振器内で共振し、3往復目も同様に往復するたびに光路が平行移動して増幅発振する。
【0025】
本実施例では、以下効果を得ることができる。
(1)往復ビーム毎に出力レーザ光のビームが移動するので、増幅段レーザ(PO)のリング共振器の光学素子(OC、レーザウインド及び高反射ミラー)におけるレーザ光のエネルギ密度が低減される。そのため、増幅段レーザ(PO)の光学素子の寿命が長くなる。
(2)往路と復路で増幅されるので増幅効率が高い。
(3)往復毎に出力されるレーザ光は平行であるため、放電方向に対して垂直な方向の出力レーザ光全体としてのビームダイバージェンスは広くならない。
なお、上記実施例では、共振器にミラーを用い、2枚の高反射ミラーでレーザチャンバにレーザ光を戻す場合について説明したが、前記第2の実施例のように全反射プリズムを用い、45度よりも多少小さな角度(数mrad)でフレネル反射で戻しても同様の機能を果たすことができる。
【0026】
図4は本発明の第4の実施例の露光装置用狭帯域レーザ装置の構成を示す図であり、前記図1に示した長方形型のリング共振器において1枚のミラーの軸をずらして設置した場合の構成例について示す。
同図は増幅段レーザ(PO)20の上面図を示し、発振段レーザ(MO)の構成等は省略されているが、前記図1と同様である。すなわち、発振段レーザ(MO)10から放出されるレーザビームはシードレーザビームとしての機能し、増幅段レーザ(PO)20はそのシードレーザ光を増幅する機能を有する。発振段レーザ(MO)10、増幅段レーザ(PO)20は各々レーザチャンバ11,21を有し、その内部にはレーザガスが満たされており、それぞれ内部には対向し、かつ所定距離だけ離間した一対の電極1a、2aが設置され、これらの一対の電極1a,2aに高電圧パルスが印加されることにより放電が発生する。
【0027】
以下、前記第1の実施例と異なる点について説明する。
増幅段レーザ(PO)20のチャンバ21の出力側には、45度入射で部分反射するOC24と45度で高反射する高反射ミラー5aが設けられ、互いの面が成す角度は90度で配置されている。
一方、チャンバ21のリア側に2枚の45度で高反射する高反射ミラー5bと5cが設けられ、その互いの面の角度が90度よりもやや小さな角度βになるように配置されている。
また、OC24、高反射ミラー5aと、高反射ミラー5b、5cのミラー面は放電方向に対してはほぼ平行であるが、OC24、高反射ミラー5a,5bは放電面(放電電極の長手方向にほぼ平行で放電方向に平行な面)に対してほぼ45度傾いて配置され、高反射ミラー5cは上記放電面に対して45度よりもやや小さい角度に傾いて配置される。
なお、本実施例においてはOC24と高反射ミラー5aの面の交線と、高反射ミラー5b,5cの面の交線は、共振器の光軸方向(放電電極2aの長手方向の軸)に平行で、放電方向に平行な平面に対して、オフセットしていない。すなわち、OC24と高反射ミラー5aの面の交線と、高反射ミラー5b,5cの面の交線は、上記平面から等しい距離になるように配置されている。
【0028】
以下この実施例の動作を説明する。
MOビーム(シード光)は高反射ミラー4cにより増幅段レーザ(PO)20のOC24の端部に入射角度45度で入射する。このビームの一部はOC24を透過して、高反射ミラー5aに45度で入反射する。そして、シード光はウインド22aを透過してレーザチャンバ21内に入射する。シード光は放電電極2aの長手方向の軸に対して、略平行に透過し、増幅されずにチャンバ21内を透過する。このシード光は高反射ミラー5bに45度で入反射し、高反射ミラー5cに45度よりも多少小さな角度で入反射する。
45度で入反射する場合はβの角度は90度であり、矢印のように光が進みOCでの注入位置と一致するところに光が戻る。
一方、本発明では、高反射ミラー5cの反射角度を45度よりも多少小さくしているので、レーザビームは放電空間を透過して増幅され、OC24に注入位置から移動した位置に入射する。このOC24での透過光は、出力レーザ光として出力(1往復による増幅光)される。
【0029】
OC24での反射光は、1往復目の光路に対して多少傾いた光路で再び全反射ミラー5aによりレーザチャンバ21に戻され、増幅されずにチャンバ21内を透過し、全反射ミラー5b及び5cに入射する。そして、再びレーザチャンバ21に戻され、1往復目の光路に対して所定の距離だけ平行移動した光路で、放電空間内を透過し増幅される。
この増幅光は、1往復目に対して一定の割合で移動してビームは再びOC24に入射し、透過光はレーザ光として出力され、反射光は再び共振器内で共振し、3往復目も同様に往復する度に光路が傾き移動して増幅発振する。
【0030】
以上のように、本実施例では、MOレーザ光(シード光)を増幅段レーザ(PO)20の前記リング共振器に注入し、その注入された光が往復毎に注入位置が放電方向の面に対して略垂直方向に移動しながら増幅されるので、以下の効果が得られる。
往復毎にリング共振器内部レーザ光のビームが移動しビーム幅が広がるので、増幅段レーザ(PO)のリング共振器の光学素子(OC、レーザウインド及び高反射ミラー)におけるレーザ光のエネルギ密度が低減される。そのため、POの光学素子の寿命が長くなる。
なお、前記図1〜図3に示した第1〜第3の実施例と本実施例の特性が異なる点は、往復毎の出力光の出射角度が多少ずれるので、結果として放電方向に垂直な方向のビームダイバージェンスは広くなる点である。
また、本実施例では、高反射ミラー5cの角度を放電方向に対して垂直な面内で反射角度を45度より小さな角度で反射させることによって、往復毎のビームの位置を移動させたが、この実施例に限定されることなく、リング共振器を構成するミラーの中で少なくとも1枚のミラーの入反射角度を他のミラーの入反射角(ここでは45度)からずらして、往復毎のOC上でのビーム位置が移動するようにすればよい。
また、前記図3に示した往復路で増幅するようなリング共振器において、本実施例のように、少なくとも1枚のミラーの角度をずらすようにしてもよい。これにより、往復毎のOC上でのビーム位置が移動する。
【0031】
図5は本発明の第5の実施例の露光装置用狭帯域レーザ装置の構成を示す図であり、注入光の入射角度を、増幅段レーザ(PO)のリング共振器への通常の入射角度に対してずらした場合の構成例について示す。
同図は増幅段レーザ(PO)20の上面図を示し、発振段レーザ(MO)の構成等は省略されているが、前記図1と同様である。すなわち、発振段レーザ(MO)10から放出されるレーザビームはシードレーザビームとして機能し、増幅段レーザ(PO)20はそのシードレーザ光を増幅する機能を有する。
【0032】
以下、前記第1の実施例と異なる点について説明する。
増幅段レーザ(PO)20のチャンバ21の出力側には、45度入射で部分反射するOC24と45度で高反射する高反射ミラー5aの互いの面の角度が90度で配置されている。
また、増幅段レーザ(PO)20のチャンバ21のリア側に2枚の45度で高反射する高反射ミラー5bと5cの互いの面の角度が90度になるように配置されている。そして、OC24、高反射ミラー5a、5b及び5cのミラー面は電極の放電方向と平行に設置され、OC24、高反射ミラー5a,5b,5cは放電面(放電電極の長手方向にほぼ平行で放電方向に平行な面)に対してほぼ45度傾いて配置されている。
さらに、本実施例においてはOC24と高反射ミラー5aの面の交線と、高反射ミラー5b,5cの面の交線は、共振器の光軸方向に平行(放電電極の長手方向の軸に対して平行)で放電電極2aの放電方向に平行な平面に対して、オフセットしていない。すなわち、OC24と高反射ミラー5aの面の交線と、高反射ミラー5b,5cの面の交線は、上記平面から等しい距離にあり、出力側とリア側が、左右対称となるように配置されている。
【0033】
この構成は、通常の増幅用のリング共振器と同様の構成であり、前記図10(b)に示したように、シード光をOC24に対して所定の角度(例えば45度)で注入すると、リング共振器内を往復する光の光路は何往復しても同じになり、増幅段レーザ(PO)20の出力側のウインド22aとOC24の負荷(エネルギ密度)が高くなり、素子の寿命が短くなる。
そこで、本実施例では、発振段レーザ(MO)からのシード光を、上記所定の角度とは異なる角度で注入する。すなわち、共振器に注入された光の光路が、注入位置から増幅段レーザ(PO)20の放電方向の面に対して略垂直方向に往復毎に移動するように、上記所定角度とは異なった角度で上記リング型共振器にレーザ光を注入する。例えば、MOビーム(シード光)を、高反射ミラー4cから、OC24の端部に入射角度45度よりも多少大きな角度で入射する。
【0034】
以下この実施例の動作を説明する。
上記のように、MOビーム(シード光)をOC24の端部に入射角度45度よりも多少大きな角度で入射すると、このビームの一部はOC24を透過して、高反射ミラー5aに入射する。そして、シード光はウインド22aを透過してレーザチャンバ21に入射する。
シード光は放電電極2aの長手方向の軸に対して、略平行(多少斜め)な光路で透過し、増幅されずにチャンバ21内を透過する。このシード光は高反射ミラー5b,5cにより折り返され、放電電極2aの放電空間に光が通過するようにウインド22bを介してレーザチャンバ21に入射する。
上記シード光は放電電極2aの放電空間に導かれ、シード光に同期して、図示しない電源により電圧が放電電極2aに印加され、電極2a間で放電する。
これにより、シード光が増幅されて、ビームはOC24に到達する。OC24での透過光は、出力レーザ光として出力(1往復による増幅光)される。
【0035】
1往復目の光路に対して多少傾いた光路で再び全反射ミラー5aによりレーザチャンバ21に戻され、増幅されずにチャンバ21内を透過し、全反射ミラー5b及び5cに入射する。そして、再びチャンバ21に戻され、1往復目の光路に対して所定の距離だけ平行移動した光路で、放電空間内を透過し、増幅される。この増幅光は、1往復目に対して一定の割合で移動してビームは再びOC24に入射し、透過光はレーザ光として出力され、反射光は再び共振器内で共振し、3往復目も同様に往復するたびに光路が平行に移動して増幅発振する。
【0036】
以上のように、本実施例では、MOレーザ光を増幅段レーザ(PO)のリング共振器に斜めに注入し、その注入された光が往復毎に注入位置が増幅段レーザ(PO)の放電方向の面に対して略垂直方向に移動しながら往復毎に増幅するようにしたので、以下の効果を得ることができる。
(1)往復毎にリング共振器内部レーザ光のビームが移動しビーム幅が広がるので、増幅段レーザ(PO)のリング共振器の光学素子(OC、レーザウインド及び高反射ミラー)におけるレーザ光のエネルギ密度が低減される。そのため、増幅段レーザ(PO)の光学素子の寿命が長くなる。
(2)リング共振器の光路中でビーム拡大しないので、注入効率が高くなる。
(3)往復毎に出力されるレーザ光は平行であるため、放電方向に対して垂直な方向の出力レーザ光全体としてのビームダイバージェンスは広くならない。
なお、第3の実施例(図3)のような往復路で増幅するようなリング共振器であっても、本実施例に示すように注入光を斜めに注入し、往復毎のOC24上でのビーム位置が移動するようにしてもよい。
【0037】
図6は本発明の第6の実施例の露光装置用狭帯域レーザ装置の構成を示す図であり、本実施例は、増幅段レーザ(PO)に3枚のミラーから構成されるリング共振器を用い、シード光をずらして注入することにより、共振器内に注入された光の奇数往復目の光路と、偶数往復目の光路が異なる光路となるようにした実施例を示す。
同図は増幅段レーザ(PO)20の上面図を示し、発振段レーザ(MO)の構成等は省略されているが、前記図1と同様である。すなわち、発振段レーザ(MO)10から放出されるレーザビームはシードレーザビームとして機能し、増幅段レーザ(PO)20はそのシードレーザ光を増幅する機能を有する。
【0038】
図6において、増幅段レーザ(PO)のチャンバ21の出力側には45度よりやや小さな角度でシード光が入射し、部分反射するOC24と、45度よりやや小さな角度の入射角度で高反射する高反射ミラー5aの互いの面の角度が約90度よりも小さい角度で配置されている。
また、増幅段レーザ(PO)20のチャンバ21のリア側には略0度入射(3から6mrad)で高反射する高反射ミラー5bが配置されている。
そして、OC24、高反射ミラー5a,5bのミラー面は、電極の放電方向と平行に設置され、OC24と高反射ミラー5aのミラー面は、上記放電方向に平行で放電電極2aの長手方向の軸に平行な平面に対して等しい角度になるように配置され、高反射ミラー5cは、この平面に対して垂直に配置されている。
すなわち、OC24、高反射ミラー5a,5bは、リング共振器内の光路が、放電方向に垂直で放電領域を含む面上になるように配置されている。
この例のリング共振器では、OC24と高反射ミラー5aのミラー面の交線と、高反射ミラー5bのミラー面の中央の線が、放電電極2aの長手方向の軸を含み、放電方向と平行な同一平面上にある。そして、放電方向の面に対して垂直な面内であって、電極間の放電領域を含む面と平行になるようにシード光を注入する。
【0039】
図6において、MOビーム(シード光)は高反射ミラー4cにより増幅段レーザ(PO)20のOC24の端部Aに、放電方向の面に対して垂直な面内であって、電極間の放電領域を含む面に沿って入射する。OC24の面に対する入射角度は、45度よりも多少小さな角度である。
このビームの一部はOC24を透過して、高反射ミラー5aに入射する。そして、シード光はウインド22aを透過してレーザチャンバ21に入射する。シード光は放電電極2a間を、斜めに透過する。そして、シード光に同期して図示しない電源により電圧が印加され電極2a間で放電する。これにより、シード光は増幅されてチャンバ21内を透過する。
このシード光は高反射ミラー5bの端部aで高反射され、再び放電電極2aの放電空間に光が通過するようにウインド22bを介してレーザチャンバ21に入射する。入射したシード光は電極2aの放電空間に導かれ増幅されて、OC24に到達する。
【0040】
このビームは、OC24に入射するが、中央光軸(この例では共振器内に注入された光の奇数往復目の光路と、偶数往復目の光路の中央を通る軸、同図の点線で示す線)に対して上記端部Aの反対側の端部Bに入射する。
そして、OC24での透過光は、出力レーザ光として出力(1往復による増幅光)される。OC24での反射光は、1往復目の光路に対して互いに平行な光路で再び全反射ミラー5aによりレーザチャンバ21に戻され、増幅され、チャンバ21内を透過し、全反射ミラー5bの端部bで高反射される。
そして、再びレーザチャンバ21に戻され、1往復目の光路に対して、互いに平行な光軸で、放電空間内を透過し、増幅される。この増幅光は、シード光の注入位置と一致するOC24の位置(端部A)に入射し、透過光は2往復目のレーザ光として出力される。
反射光は3往復目の光としてリング共振器内を進み、増幅される。3往復目の光軸は、1往復目と同じ光軸となる。
すなわち、リング共振器内で、レーザビームは、上記中央光軸に対して両側のOC24の端部Aと端部Bに交互に入射し、また、上記中央光軸の両側の高反射ミラー5bの端部aと端部bに交互に入射する。
このように、本実施例では、奇数往復の光路が一致し、偶数往復の光路がおのおの一致する。
【0041】
以上のように、リング共振器として、3枚のミラーによるリング共振器を配置し、共振器内に注入された光の奇数往復目の光路と、偶数往復目の光路が異なる光路となるように、上記リング型共振器のミラー配置、およびリング型共振器へのレーザ光の注入位置を選定することにより、以下の効果を得ることができる。
(1)奇数往復目と偶数往復目で増幅された出力光のビーム位置がことなるのでビーム幅が広がる。したがって、増幅段レーザ(PO)のリング共振器の光学素子(OC、レーザウインド及び高反射ミラー)におけるレーザ光のエネルギ密度が低減される。そのため、POの光学素子の寿命が長くなる。
(2)リング共振器の光路中でビーム拡大しないので、注入効率が高くなる。
(3)往復毎に出力されるレーザ光は平行であるため、放電方向に対して垂直な方向の出力レーザ光全体としてのビームダイバージェンスは広くならない。
(4)奇数往復目と偶数往復目のそれぞれの光軸が一致することにより、共振器内の光の往復回数が増加してもケラレることがなく共振するため、前記実施例に比べて、パルス幅が長くなる。
【0042】
図7は本発明の第7の実施例の露光装置用狭帯域レーザ装置の構成を示す図であり、本実施例は、5枚のミラーによりリング共振器を構成し、シード光を、放電方向を含む面に対して垂直な面内で平行にずらして注入する実施例を示す。
同図は増幅段レーザ(PO)20の上面図を示し、発振段レーザ(MO)の構成等は省略されているが、前記図1と同様である。すなわち、発振段レーザ(MO)10から放出されるレーザビームはシードレーザビームとして機能し、増幅段レーザ(PO)20はそのシードレーザ光を増幅する機能を有する。
【0043】
以下、前記第6の実施例(図6)と異なる点について説明する。
本実施例においては、(1)リング共振器のミラーの枚数を5枚とし、OC24、高反射ミラー5a〜5dでリング共振器を構成している。また、(2)OC24と高反射ミラー5b間を往復する光の光路を電極2aの長手方向と一致させ、高反射ミラー5aと高反射ミラー5d間を往復する光路は電極2aの長手方向に対して傾けて配置している。
さらに(3)高反射ミラー5aで反射した光を、高反射ミラー5dで反射させ、高反射ミラー5dから5cを介して高反射ミラー5bに入射させている。
増幅段レーザ(PO)20のチャンバ21の出力側には45度の角度でシード光が入射し、部分反射するPRコートが施されたOC24と、45度の入射角度で高反射する高反射ミラー5aが設けられ、OC24と高反射ミラー5aの互いの面の角度が約90度の角度で配置されている。
チャンバ21のリア側には入射角22.5度よりもやや小さな角度で高反射する高反射ミラー5c,5dが配置されている。そして、45度入射角度の高反射ミラー5bが配置されている。
【0044】
OC24、高反射ミラー5a,5b,5c及び5dのミラー面は電極の放電方向と平行に設置され、リング共振器内の光の光路が、放電方向に対して垂直な平面内に含まれるように配置されている。この例では、放電方向の面に対して垂直な面内であって、電極間の放電領域を含む面と平行になるようにシード光を注入する。
図7において、発振段レーザ(MO)からのシード光は高反射ミラー4cにより増幅段レーザ(PO)20のOC24の端部Aに入射角度45度で入射する。
このビームの一部はOC24を透過して、高反射ミラー5aに45度よりもやや小さな角度で入射する。そして、シード光はウインド22aを透過してレーザチャンバ21に入射する。
シード光は放電電極2a間を、放電電極2aの長手方向の軸を横切るように斜めに透過する。そして、シード光に同期して図示しない電源により電圧が印加され電極2a間で放電する。
【0045】
これにより、シード光は増幅されてチャンバ21内を透過する。このシード光は高反射ミラー5d,5cにより入射角度22.5度よりも小さな角度で高反射され、高反射ミラー5bに45度で入射する。
そして、リング共振器の放電電極2aの長手方向の軸と平行な光路で再び放電電極2aの放電空間を通過するようにウインド22bを介してレーザチャンバ21に入射する。電極2aの放電空間に導かれたシード光は増幅されて、ビームはOC24に到達する。
ここで、このビームは中央光軸(この例では共振器内に注入された光の奇数往復目の光路と、偶数往復目の光路の中央を通る軸、同図の破線で示す線)に対して端部Aと反対側の端部Bに入射する。
ここで、OC24での透過光は、出力レーザ光として出力(1往復による増幅光)される。OC24での反射光は1往復目の光路に対して互いに平行な光路で再び全反射ミラー5aによりレーザチャンバ21に戻されて増幅され、チャンバ21内を透過し、全反射ミラー5d,5c及び5bにより高反射する。
そして、再びレーザチャンバ21に戻され、1往復目の光路に対して互いに平行な光路で、放電空間内を透過し、増幅される。
【0046】
この増幅光は、シード光の注入位置と一致するOC24の位置(端部A)に入射し、透過光は2往復目のレーザ光として出力される。反射光は3往復目の光としてリング共振器内を進み、増幅される。ただし、3往復目の光軸は、1往復目と同じ光路となる。このようにして、この実施例のリング共振器では、奇数往復の光路が一致し、偶数往復の光路が一致する。
以上のように、リング共振器として、5枚のミラーによるリング共振器を配置して、注入光を前記5枚のミラーに注入することにより図6に示した第6の実施例の効果に加え、以下の効果が得られる。
リング共振器内を光が高反射ミラー5aから5dへ進む際に、放電電極を横切るように放電空間を透過させ、次に、光が高反射ミラー5bからOC24へ進む際に電極に沿って放電空間を透過させて増幅しているので、図6の実施例にくらべて、増幅効率が高く安定している。
【0047】
上述した第1〜7の実施例において、OC、高反射ミラーの高反射膜、ウインドの反射防止膜はP偏光の成分に対してコーティングされる。
コーティングの材料としては、193nmで吸収の少ない低屈折率の材料としてMgF2 、高屈折率の材料としてGdF3 及びLaF3 を使用する。これら膜の蒸着法としては、抵抗過熱法、イオンビームスパッタ法、マグネトロンスパッタ法がある。とくに、F2 ガス雰囲気中行うスパッタリング法により製膜された膜は散乱及び吸収が少なく、高出力の増幅段レーザ(PO)のリング共振器用の光学素子のコーティングに適している。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施例の構成を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施例の構成を示す図である。
【図3】本発明の第3の実施例の構成を示す図である。
【図4】本発明の第4の実施例の構成を示す図である。
【図5】本発明の第5の実施例の構成を示す図である。
【図6】本発明の第6の実施例の構成を示す図である。
【図7】本発明の第7の実施例の構成を示す図である。
【図8】特許文献1に記載の従来例(1)を示す図である。
【図9】特許文献2に記載の従来例(2)を示す図である。
【図10】MOPO方式のレーザ装置の従来例を示す図である。
【図11】リング共振器の光路中にビームを拡大する光学素子を配置した場合を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1a,2a 放電電極
3 狭帯域化モジュール(LNM)
3a プリズムビームエキスパンダ
3b グレーティング(回折格子)
4a〜4c 高反射ミラー
5a〜5d 高反射ミラー
6a,6b 全反射直角プリズム
10 発振段レーザ(MO)
11 MOチャンバ
12a,12b ウィンドウ部材
13,23 スリット
14,24 OC(出力結合ミラー)
20 増幅段レーザ(PO)
21 POチャンバ
22a,22b ウィンドウ部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
狭帯域発振段レーザ(MO)と、リング型共振器を配置した増幅段レーザ(PO)とからなる注入同期式放電励起レーザ装置であって、
上記増幅段レーザ(PO)のリング型共振器には、上記狭帯域発振段レーザ(MO)からのMOレーザ光が注入され、
上記増幅段レーザ(PO)において、上記注入された光は、注入位置から光路が増幅段レーザ(PO)の放電方向の面に対して略垂直方向に往復毎に移動するように増幅されることを特徴とする露光装置用狭帯域レーザ装置。
【請求項2】
前記増幅段レーザ(PO)のリング型共振器のミラーは、
リング型の共振器に注入された光の光路が、注入位置から往復毎に、増幅段レーザ(PO)の放電方向の面に対して略垂直方向に移動するように配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の露光装置用狭帯域レーザ装置。
【請求項3】
上記リング型共振器は、レーザ光が、リング型共振器に対して所定角度で注入されたとき、同一光路を経由してリング型共振器内で往復するように構成されており、
リング型の共振器に注入された光の光路が、注入位置から増幅段レーザ(PO)の放電方向の面に対して略垂直方向に往復毎に移動するように、上記所定角度とは異なった角度で上記リング型共振器にレーザ光が注入される
ことを特徴とする請求項1に記載の露光装置用狭帯域レーザ装置。
【請求項4】
前記リング型共振器のミラーは出力結合ミラーを含めて3枚以上の奇数枚であり、
前記リング型共振器内に注入された光の奇数往復目の光路と、偶数往復目の光路が異なる光路となるように、上記リング型共振器のミラー配置、およびリング型共振器へのレーザ光の注入位置が選定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の露光装置用狭帯域レーザ装置。
【請求項1】
狭帯域発振段レーザ(MO)と、リング型共振器を配置した増幅段レーザ(PO)とからなる注入同期式放電励起レーザ装置であって、
上記増幅段レーザ(PO)のリング型共振器には、上記狭帯域発振段レーザ(MO)からのMOレーザ光が注入され、
上記増幅段レーザ(PO)において、上記注入された光は、注入位置から光路が増幅段レーザ(PO)の放電方向の面に対して略垂直方向に往復毎に移動するように増幅されることを特徴とする露光装置用狭帯域レーザ装置。
【請求項2】
前記増幅段レーザ(PO)のリング型共振器のミラーは、
リング型の共振器に注入された光の光路が、注入位置から往復毎に、増幅段レーザ(PO)の放電方向の面に対して略垂直方向に移動するように配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の露光装置用狭帯域レーザ装置。
【請求項3】
上記リング型共振器は、レーザ光が、リング型共振器に対して所定角度で注入されたとき、同一光路を経由してリング型共振器内で往復するように構成されており、
リング型の共振器に注入された光の光路が、注入位置から増幅段レーザ(PO)の放電方向の面に対して略垂直方向に往復毎に移動するように、上記所定角度とは異なった角度で上記リング型共振器にレーザ光が注入される
ことを特徴とする請求項1に記載の露光装置用狭帯域レーザ装置。
【請求項4】
前記リング型共振器のミラーは出力結合ミラーを含めて3枚以上の奇数枚であり、
前記リング型共振器内に注入された光の奇数往復目の光路と、偶数往復目の光路が異なる光路となるように、上記リング型共振器のミラー配置、およびリング型共振器へのレーザ光の注入位置が選定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の露光装置用狭帯域レーザ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−130652(P2008−130652A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311400(P2006−311400)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】
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