露光装置用狭帯域レーザ装置
【課題】発振段レーザ(MO)から出力されたビームを効率よく増幅段レーザ(PO)に注入することができるようにすること。
【解決手段】狭帯域発振段レーザ(MO)10と共振器を配置した増幅段レーザ(PO)20とからなる注入同期式放電励起レーザ装置において、狭帯域発振段レーザ(MO)10と増幅段レーザ(PO)20の間にMOビーム転写器5を設ける。MOビーム転写器5は、狭帯域発振段レーザ(MO)10のMOレーザ光の出口近傍におけるビームを転写して、このビーム転写像を増幅段レーザ(PO)20の共振器の注入部に結像させる。これにより、発振段レーザ(MO)からのシード光を効率よく増幅段レーザ(PO)に注入することができ、また、上記シード光の方向に変動があっても注入効率は変動を少なくすることができる。
【解決手段】狭帯域発振段レーザ(MO)10と共振器を配置した増幅段レーザ(PO)20とからなる注入同期式放電励起レーザ装置において、狭帯域発振段レーザ(MO)10と増幅段レーザ(PO)20の間にMOビーム転写器5を設ける。MOビーム転写器5は、狭帯域発振段レーザ(MO)10のMOレーザ光の出口近傍におけるビームを転写して、このビーム転写像を増幅段レーザ(PO)20の共振器の注入部に結像させる。これにより、発振段レーザ(MO)からのシード光を効率よく増幅段レーザ(PO)に注入することができ、また、上記シード光の方向に変動があっても注入効率は変動を少なくすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は狭帯域発振段レーザと増幅段レーザとからなる露光装置用の注入同期式放電励起レーザ装置に関し、特に、狭帯域発振段レーザからのシード光を有効に増幅段レーザに注入することができる露光装置用レーザ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体露光装置用光源としてはエキシマレーザが使用されている。特に、60nm以下のテクノロジーノードにおいては、高出力(40W以上)でかつ超狭帯域化(0.2pm以下)にされたArFレーザ光源が採用されている
露光装置用光源のArFレーザ光源の要求を以下に示す。
1.高ドーズ安定性の確保と、高スループット化に伴い40W以上の出力が要求されている。
2.投影レンズの高解像度化のために投影レンズの高NA化が進められている。高NA化にともなって、色収差が発生し、超狭帯域化(0.2pm以下)が要求される。
3.レーザ光源の超寿命化が要求されている。
上記光源の要求を満たすために、ダブルチャンバ方式(2ステージ方式)のArFレーザが実用化されている。ダブルチャンバ方式のレーザ装置の形態としては、アンプ側に共振器ミラーを設けないMOPA(Master Oscillator Power Amprifier )方式と共振器ミラーを設けるMOPO(Master Oscillator Power Oscillator)方式とに大別される。
しかし、出力90Wのような高出力化のために、増幅器(PA)または増幅段レーザ(PO)の光学素子(特にチャンバウインドやOC)負荷が大きくなり、これら光学素子の寿命が課題となっており、レーザ光源の長寿命化が要求されるようになってきている。
【0003】
特許文献1には、MOPA方式のレーザ装置が開示されている。
特許文献1に記載のものは、発振段レーザ(MO)に狭帯域化するための狭帯域化モジュールを搭載し、スペクトル幅が非常に狭いレーザ光を出力し、このシード光を増幅器(PA)のチャンバの放電領域に注入してパワーを増幅することにより、超狭帯域かつ高出力を実現している。
また、特許文献2には、発振段レーザ(MO)からのシード光を、増幅段レーザ(PO)の低コヒーレンス共振器に注入するMOPO方式のレーザ装置が提案されている。
低空間コヒーレンスのMOPO方式を採用することにより、MOPA方式に比べて、ビーム品位をMOPAと同等に維持した状態で、高い増幅効率と長いパルス幅を実現している。
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0154668号明細書
【特許文献2】国際公開第2004/095661号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図15に上述したMOPO方式のレーザ装置の構成例を示す。
同図において、発振段レーザ(MO)10から放出されるレーザビームはシードレーザビームとして機能し、増幅段レーザ(PO)20はそのシードレーザ光を増幅する機能を有する。発振段レーザ(MO)10、増幅段レーザ(PO)20は各々レーザチャンバ11,21を有し、その内部にはレーザガスが満たされており、それぞれ内部には対向し、かつ所定距離だけ離間した一対の電極1a、2aが設置され、これらの一対の電極1a,2aに高電圧パルスが印加されることにより放電が発生する。
【0005】
また、発振段レーザ10と増幅段レーザ20のチャンバ11,21には、レーザ発振光に対して透過性がある材料によって作られたウィンドウ部材12a,12b,22a,22bがそれぞれ設置されている。
発振段レーザ10は拡大プリズム3aとグレーティング(回折格子)3bによって構成された狭帯域化モジュール(LNM)3を有し、この狭帯域化モジュール3内の光学素子と出力結合ミラー(OC)14とでレーザ共振器を構成する。
発振段レーザ10からのMOレーザ光(シード光)は高反射ミラー4a,4bで反射され、増幅段レーザ(PO)20のリアミラー26から注入される。このシード光に同期して、図示しない電源から放電電極2a間に電圧が印加され放電する。そして放電空間を透過したシード光は増幅され、増幅した光の一部は出力結合ミラー(OC)24を透過してレーザとして出力し、OC24の反射光は再びチャンバ21内にフィードバックされ共振する。
【0006】
上記MOPO方式のレーザ装置においては、コンパクト化のため、発振段レーザ(MO)10と増幅段レーザ(PO)20のチャンバを並列に配置する必要があり、発振段レーザ(MO)10と増幅段レーザ(PO)20間の距離が約1m程度必要となっていた。このため以下のような2つの問題点が発生した。
(1)発振段レーザ(MO)から出力された光が、約1m以上の光路を経て増幅段レーザ(PO)に達するため、増幅段レーザ(PO)の注入位置におけるビームサイズが大きくなり、増幅段レーザ(PO)に有効にシード光が注入されなかった。
例えば図15において、発振段レーザ(MO)のビームがビーム幅Bとビーム広がり角αで出力されると、発振段レーザ(MO)10のOC14と増幅段レーザ(PO)20のリアミラー26の距離をDとすると、増幅段レーザ(PO)20のリアミラー位置でのMOレーザビームの大きさはB+D×αとなる。
増幅段レーザ(PO)20のリアミラー26の近傍に配置されたスリット23は、増幅段レーザ(PO)20の放電電極2aのギャップの以下の開口である。
もし、発振段レーザ(MO)10と増幅段レーザ(PO)20の電極ギャップが同じとすると、増幅段レーザ(PO)20のリアミラー26で注入されたビームはD×α分だけ広がる。この広がった光はPO共振器で共振せず注入効率が低下する。
【0007】
(2)発振段レーザ(MO)のビームの進む方向が変化すると増幅段レーザ(PO)の注入位置におけるビームの位置が変化してしまい、有効にシード光が注入されなかった。
すなわち、図16に示すように、発振段レーザ(MO)10のレーザの進む方向が下方向に変化すると増幅段レーザ(PO)20のリアミラー26の位置でビームの位置が上の方向に移動し、増幅段レーザ(PO)20の放電領域に有効にシード光が注入できなくなり、増幅段レーザ(PO)20での増幅効率が悪化した。そして、増幅段レーザ(PO)20での放電領域をシード光が満たせない場合には自然発振のレーザ光が発生し、半導体露光装置用とし使用できなくなっていた。
本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、発振段レーザ(MO)から出力されたビームを効率よく増幅段レーザ(PO)に注入することができ、また、発振段レーザ(MO)から出力されたビームの方向に変動があった場合でも、注入効率の変動を少なくすることができる露光装置用狭帯域レーザ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては、発振段レーザ(MO)の出口近傍におけるレーザビームを、増幅段レーザ(PO)の共振器の注入位置に共役系で転写結像させる。これにより、発振段レーザ(MO)からのシード光を効率よく増幅段レーザ(PO)に注入することができ、また、上記シード光の方向に変動があっても注入効率は変動を少なくすることができる。
すなわち、本発明においては、以下のようにして前記課題を解決する。
(1)狭帯域発振段レーザ(MO)と共振器を配置した増幅段レーザ(PO)とからなる注入同期式放電励起レーザ装置において、狭帯域発振段レーザ(MO)と上記増幅段レーザ(PO)の間に、狭帯域発振段レーザ(MO)から放出される前記MOレーザ光の出口近傍(レーザ光が出射する共振器ミラーもしくは共振器ミラーの直後に設けられた光学素子の出射側)におけるビームを転写して、このビーム転写像を前記POの共振器内の注入部(共振器ミラー面を含む平面上、もしくは共振器ミラー間に設けられた注入用ミラー面)に結像させる共役系の光学システムを設ける。
(2)上記(1)において、上記光学システムをシリンドリカルレンズから構成される共役系とする。
なお、上記共役系の光学システムを上記のようにシリンドリカルレンズで構成し、その集光部分にスリットを配置してもよい。該スリットは、その長手方向が、シリンドリカルレンズの集光方向に直交するように配置される。
また、上記共役系の光学システムを球面レンズで構成し、その集光部分にピンホールを配置してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、以下の効果を得ることができる。
(1)発振段レーザ(MO)の出口近傍のビームを転写して、この転写像を増幅段レーザ(PO)の共振器の注入位置に転写結像させているので、増幅段レーザ(PO)の共振器の注入位置でシード光のビームは広がらず、発振段レーザ(MO)からのビームを効率よく増幅段レーザ(PO)に注入することができる。
(2)上記のように、発振段レーザ(MO)の出口近傍のビームを転写して、増幅段レーザ(PO)の共振器の注入位置に転写結像させているので、発振段レーザ(MO)のビームの進行方向が変化しても、注入位置での転写像の位置は変化しない。このため、発振段レーザ(MO)からのビームを有効にシード光として増幅段レーザ(PO)の共振器中に注入することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明の露光装置用狭帯域レーザ装置の基本構成を示す図である。
本発明のレーザ装置は、スペクトル線幅の狭いレーザ光を出力する発振段レーザ(MO)10と、発振段レーザ10が出力するレーザビームを、ビーム転写器5に導入するための高反射ミラー4aと、このレーザビームを転写結像させるためのMOビーム転写器5を備える。
また、MOビーム転写器5が出力する転写像を反射し増幅段レーザ(PO)20の光共振器に導入する高反射(HR)ミラー4bと、発振段レーザ(MO)10のレーザ光を光共振器により増幅発振させるための増幅段レーザ(PO)20を備える。
発振段レーザ(MO)10と増幅段レーザ(PO)20はそれぞれにチャンバ11,21内に設置された一対の電極1aおよび電極2aの長手方向の軸延長上両端にウィンドウ部材12a,12bおよび22a,22bを有し、その両側には波形整形のためのスリット13,23がそれぞれ設置されている。
【0011】
波長およびスペクトル波形モニタ34およびパワーモニタ38は、増幅段レーザ(PO)20から出力された光の光品位及びパルスエネルギを検出し、パワーモニタ37は、発振段レーザ(MO)10のパルスエネルギを検出する。
波長及びスペクトル波形コントローラ33は、上記波長およびスペクトル波形モニタ34の出力に基づき増幅段レーザ(PO)から出射されるレーザ光の波長及びスペクトル波形を制御する。また、エネルギコントローラ30は、パワーモニタ37,38の出力に基づき、レーザのパルスエネルギをコントロールする。
また、ガスコントローラ32は発振段レーザ(MO)10と増幅段レーザ(PO)20のレーザガスをコントロールする。レーザコントローラ31はレーザの全体を制御する。 同期コントローラ35は増幅段レーザ(PO)20に接続されているPO電源25と発振段レーザ(MO)10に接続されているMO電源15の放電タイミングをコントロールする。
【0012】
以下、図1に示すレーザ装置の構成と機能を説明する。
発振段レーザ(MO)10はスペクトル線幅を狭くするために、プリズムビームエキスパンダ3aとグレーティング(回折格子)3bを搭載した狭帯域化モジュール(LNM)3と、MO電源15を搭載したレーザチャンバ11とフロントミラー[出力結合ミラー(OC)14]とからなっている。
LNM3に配置されているグレーティング3bの分散方向(=プリズム3aのビーム拡大方向)は電極1aの放電方向に対して垂直方向に配置されている。レーザチャンバ11内にはバッファガスとArガスとF2 ガスが満たされており、MO電源15から電極1a間に電圧を印加放電させることで放電し、この放電により励起されArFエキシマが形成される。
このArFエキシマからArガスとFに分離する時に193nmの波長の光を発光する。193nmの光をLNM3で波長選択することにより、スペクトル幅約400pm→0.2pmまで狭帯域化して、発振段レーザ(MO)10の出力結合ミラー14(OutputCoupler)から出力される。発振段レーザ(MO)10は高繰返し周波数でパルス発振し、その発光パルスの時間幅は約30nsである。
【0013】
発振段レーザ(MO)10のOC14から出力された光は、高反射ミラー4aを介してMOビーム転写器5に入力する。ここで、MOビーム転写器5の出力ビーム幅が増幅段レーザ(PO)のビーム幅と同等となるようにMOビーム転写器5の倍率を設定する。すなわち、発振段レーザ(MO)10の電極ギャップをXとし、増幅段レーザ(PO)20の電極ギャップをYとすると、MOビーム転写器5は、X:Yの倍率の共役系のビーム転写を行うよう構成する。
このMOビーム転写器5から出たビームは高反射ミラー4bを介して増幅段レーザ(PO)20の光共振器のリアミラー26に導入される。
ここで、発振段レーザ(MO)10のOC14の位置におけるビームを、上記MOビーム転写器5により、増幅段レーザ(PO)20のリアミラー26に結像させて、増幅段レーザ(PO)20の出力結合ミラー(OC24)とレーザチャンバ21とリアミラー26で構成される安定共振器に注入される。なお、上記ビーム転写の詳しい光学システムに関しては、後述する図3で説明する。
【0014】
また、上記高反射ミラー4aとMOビーム転写器5の間には発振段レーザ(MO)10のパルスエネルギをモニタするためのビームスプリッタ37aとパワーモニタ37が配置されている。ここで検出された発振段レーザ(MO)10のパルスエネルギの検出値はエネルギコントローラ30に入力される。
この発振段レーザ(MO)10のパルスエネルギの検出結果に基づいて、エネルギコントローラ30は同期コントローラ35を介してMO電源15に制御信号を送る。
発振段レーザ(MO)10からきたシード光が、増幅段レーザ(PO)20の光共振器内に注入されると、シード光と同期して、増幅段レーザ(PO)20の放電電極2a間で放電する。これにより、注入された光が光共振器内で増幅発振され、出力結合ミラー24から増幅された光で出力される。
この出力された光はビームスプリッタ38a,38bによりサンプルされ、パワーモニタ38によりパルスエネルギを検出し、その結果がエネルギコントローラ30に送られる。エネルギコントローラ30はこの検出結果に基づいて同期コントローラ35を介して、PO電源25及びMO電源15に制御信号を送る。
【0015】
また、増幅段レーザ(PO)20の出力光をビームスプリッタ38aにより光サンプルし、波長及びスペクトル波形モニタ34で、波長及びスペクトル波形を検出する。この検出結果は波長及びスペクトル波形コントローラ33に送られ、LNM3内にあるグレーティング3bの入射角度を変化させる機構(図示せず)に制御信号を送る。これにより、波長が制御される。
さらに、スペクトル波形も発振段レーザ(MO)10のレーザ共振器内の光学素子の光波面を制御する(制御機構は図示していない)ことにより、スペクトル波形を制御できる。また、ガスコントローラ32により、発振段レーザ(MO)10のチャンバ11のF2 ガス濃度を制御することによってもスペクトル波形を制御することができる。
レーザコントローラ31は、MO電源15の印加電圧やPO電源25の印加電圧と、増幅段レーザ(PO)20及び発振段レーザ(MO)10のパルスエネルギの経時変化とに基づき、ガスコントローラ32に対し、レーザガス(F2 、Ar及びバッファガス)の補給及び排気を徐々に行なうように制御する。
【0016】
以上説明したように、図1のような構成とすることにより、発振段レーザ(MO)10のOC14の位置におけるビームを、MOビーム転写器5によって、共役系で増幅段レーザ(PO)20の共振器の注入位置に、増幅段レーザ(PO)20の電極ギャップ2aに合うような幅で転写することが可能であり、これにより、以下のメリットを得ることができる。
(1)発振段レーザ(MO)10から出力されたビームが全て増幅段レーザ(PO)の放電領域を満たすことができるため、発振段レーザ(MO)10からのビームを高い注入効率で、増幅段レーザ(PO)20へ注入することができる。
(2)発振段レーザ(MO)10の出力ビームの方向変動があっても、増幅段レーザ(PO)20の共振器の注入位置でのビームの位置変化がないため、増幅段レーザ(PO)20の放電領域を満たすことができる。そのため注入効率の変動が少なく、増幅段レーザ(PO)からのレーザ出力を安定にすることができる。
【0017】
以下、本発明の実施例について説明する。
1.第1の実施例
図2は本発明の第1の実施例の構成を示す図である。図2は、増幅段レーザ(PO)20の共振器として、ファブリペロ型安定共振器を設置し、この共振器のリアミラー26の位置に発振段レーザ(MO)10のOC14の位置のシード光の像を転写するようにした実施例を示す。
図2(a)に本実施例のレーザの側面図を示し、図2(b)に増幅段レーザ(PO)の上面図を示す。なお、前記図1に示したものと同一のものには同一の符号が付されており、図2では、図1に示した各種モニタ、コントローラ等は省略されている。
図2に示したものの発振段レーザ(MO)10などの動作は、前記図1で説明したのと同様であり、以下では、主としてMOビーム転写器5の構成、機能、増幅段レーザ(PO)20の動作について説明する。
発振段レーザ(MO)10から出力された光は高反射ミラー4aによりMOビーム転写器5に入射する。このMOビーム転写器5は集光レンズ5a、空間フィルタとして機能するピンホール5c及びコリメータレンズ5bにより構成されている。集光レンズ5aの焦点f1の位置にピンホール5cが配置され、ピンホール5cとコリメータレンズ5bの間の距離はコリメータレンズ5bの焦点距離f2である。
【0018】
集光レンズ5aの焦点の位置にピンホール5cが設置され発振段レーザ(MO)10の光がピンホール5cを透過する。
そして光は広がり、コリメータレンズ5bにより平行光に変換される。この平行光は高反射ミラー4bにより反射され、図2(b)に示すように、リアミラー26の位置に発振段レーザ(MO)10のOC14の位置のビームを転写結像させる。
上記のように結像させるには、発振段レーザ(MO)10OのOC14と集光レンズ5aの距離がf1、かつ、コリメータレンズ5bとリアミラー26との距離がf2となるように配置することで実現できる。
ここで空間フィルタとして機能するピンホール5cは、増幅段レーザ(PO)20からの戻り光や増幅段レーザ(PO)の発振時のリアミラー26からの漏れ光を除去するために設置している。
したがって、このピンホール5cの大きさは発振段レーザ(MO)10からの出射角度が多少変化(±0.5mrad程度)しても透過するような大きさとなっている。
【0019】
図2(b)に示すように、部分反射(PR)膜と反射防止(AR)膜がコートされたリアミラー26上に結像したシード光の一部は、リアミラー26を透過する。このリアミラーの透過率の範囲は40%から10%であり、したがって、このリアミラーの反射率は、60%から90%の範囲となる。このシード光は、増幅段レーザ(PO)20の共振器の光軸(対向する共振器ミラーの中心を結ぶ軸)に対して略平行に入射し、増幅段レーザ(PO)20のチャンバ21に入力される。
ウインド22aを透過してチャンバ21内に入射したシード光は、放電電極2a間を透過して増幅され、ウインド22bを透過して部分反射(PR)膜と反射防止(AR)膜がコートされたOC24に入射する。ここで、このOC24の反射率の範囲は20%から30%である。そして透過光は、レーザ光として出力され、他の一部は反射し再びチャンバ21に戻され、レーザチャンバ21内で増幅され、リアミラー26に入射反射して、再びチャンバ21に入射する。この工程を繰り返すことによって、シード光が増幅発振する。
【0020】
本実施例においては上記のようにピンホール5cを配置しているため、これが空間フィルタとして機能し、大きく角度がついた増幅段レーザ(PO)20からの戻り光や、ビーム広がり角が大きな増幅段レーザ(PO)20からのリアミラー26からの漏れ光はピンホール5cで大部分除去される。このため安定な注入同期が可能となる。
なお、上記実施例では、集光レンズ5a及びコリメータレンズ5bとして球面レンズを採用しているが、これに限定されることなく、図2(b)紙面に対して平行方向に集光するシリンドリカル形状の集光レンズを用い、空間フィルタは、ピンホールに代えてスリット形状のものを用いてもよい。このようにすることにより、空間フィルタの耐久性等が向上する。
【0021】
図3に、発振段レーザ(MO)10のOC14の位置のビームを増幅段レーザ(PO)20の共振器のリアミラー26に転写結像させるための、共役系の光学システム(ビーム転写器)の実施例を示す。
図3(a)は、図2に示した球面レンズを組合せた場合の発振段レーザ(MO)10の出力ビームの転写結像の光学システム(MOビーム転写器)の構成である。
なお、MOビーム転写器5は集光レンズ5a、コリメータレンズ5bから構成されるが、この例では集光レンズ5aの焦点f1の位置にピンホール5cは配置されていない。
同図に示すように、発振段レーザ(MO)10のチャンバ11の電極ギャップをXとすると、発振段レーザ(MO)10のOC14から出力されるビームの幅は略Xとなる。
球面集光レンズ5aの焦点距離をf1とすると、この球面集光レンズ5aはOC14からf1の距離だけ離れた光軸上に配置される。この集光レンズ5aを透過したMOレーザ光は集光レンズ5aからf1の距離の光軸上の焦点位置で集光する。
この集光点から光は広がり、焦点距離f2の距離の位置に配置された球面コリメータレンズ5bによりコリメートされる。このコリメート光は焦点距離f2の位置に配置されたリアミラー26に入射し、ここに発振段レーザ(MO)10のOC14の像が結像する。 ここで、増幅段レーザ(PO)20の電極ギャップをYとすると、球面レンズ5aの焦点距離f1とコリメータレンズ5bの焦点距離f2の関係は、倍率α=f2/f1=Y/Xの関係となる。
【0022】
ビーム転写器5を、このような共役系の光学システムにすることにより、以下のメリットが得られる。
(1)発振段レーザ(MO)10のビームが、増幅段レーザ(PO)20の放電領域を満たすことができるため、少ない注入エネルギでも自然発振が抑制される。したがって、露光装置の投影レンズによる安定した結像を得ることができる。
(2)発振段レーザ(MO)10のビームの進行方向が変動しても、増幅段レーザ(PO)20の共振器への注入位置の注入光の位置は変動しない。このため、注入効率の変動が抑制され、安定した増幅後の出力光を得ることができる。
なお、この実施例では集光点にピンホール5cを配置していないが、空間フィルタの機能をするピンホールを配置しなくても上記2つのメリットがある。
なお、この実施例では集光レンズとコリメータレンズの2つのレンズの組合せにより、共役系の光学システムを構成したが、これに限定されることなく、例えば、集光点でエネルギ密度が高くなり、ビームが不安定になる場合は集光レンズと集光点の間と集光点とコリメータレンズの間にそれぞれ凹レンズ配置し、共役系の光学システムを構成してもよい。
【0023】
図3(b)に球面レンズに換えシリンドリカルレンズで構成した場合の例を示す。図3(b)(1)は上面図、図3(b)(2)は側面図を示す。
この例では、発振段レーザ(MO)10のOC14のビームを増幅段レーザ(PO)20のリアミラー26に転写した場合の例を示す。
シリンドリカル集光レンズ5dと、シリンドリカルコリメータレンズ5eの配置と結像関係は図2(a)と同じである。図2(a)と異なるのは、集光点では放電方向を含む面に対して線状に集光する。
このようなシリンドリカルの共役系の光学システムのメリットを以下に示す。
(1)集光点が線状であるため、集光点でのエネルギ密度が小さく(ブレークダウンしない)、ビームが不安定にならない。
なお、図3(b)において、集光点に、線状の集光点よりもやや大きなスリットを配置してもよい。スリットを設けた場合でも、集光点でのエネルギ密度が小さいので、スリットが損傷しにくいメリットがある。
(2)放電方向に対してビームの注入位置が変化しないため、注入効率の変動が抑制される。
またこの例では、放電方向の面に対して垂直の面内で転写結像させる例を示したが、これに限定されることなく、放電方向を含む面内で転写結像させる光学システムを構成してもよい。
【0024】
ここで、発振段レーザ(MO)10のOC14から出力されるビームの出射角度が変化しても、増幅段レーザ(PO)20の注入部での注入ビームの位置変化がない理由について説明する。
図4にMOビーム転写器5により発振段レーザ(MO)10のOC14の像を増幅段レーザ(PO)20のリアミラー26(注入位置)へ転写した場合の光路図を示す。
同図の実線で示すMOビームは発振段レーザ(MO)10のOC14から垂直に出力され、MOビーム転写器5の中心軸に入射し、球面集光レンズ5aの中心軸に沿って光が透過し、球面集光レンズ5aの焦点f1の位置で集光する。そして、集光後広がったビームは球面コリメータレンズ5bの中心軸を透過し平行光に変換され、増幅段レーザ(PO)20のリアミラー26に対して垂直に入射してシード光として注入される。
一方、OC14から上の方向にビームが出射された場合の光路を、点線で示す。OC14から上方向に出射した光はMOビーム転写器5の中心軸から上の方向に入射する。そして球面集光レンズ5aの焦点面の位置に集光する。このビームは集光後広がり球面コリメータレンズ5bにより平行光に変換され、下向きに進み、増幅段レーザ(PO)20のリアミラー26の位置に、前記実線で示したシード光注入位置と重なるように入射する。つまり、増幅段レーザ(PO)20のリアミラー26の位置での注入光の角度は変化するが、その位置は変化しない。
【0025】
さらに、OC14から下の方向にビームが出射された場合の光路を破線で示す。OC14から下方向に出射した光はMOビーム転写器5の中心軸から下の方向に入射する。そして球面集光レンズ5aの焦点面の位置に集光する。このビームは集光後広がり球面コリメータレンズ5bにより平行光に変換され、上向きに進み、増幅段レーザ(PO)20のリアミラー26の位置に、前記実線で示したシード光注入位置と重なるように入射する。つまり、増幅段レーザ(PO)20のリアミラー26の位置での注入光の角度は変化するが、その位置は変化しない。
このように、MOビーム転写器5により、発振段レーザ(MO)10のOC14のビームの像を増幅段レーザ(PO)20のリアミラー26(注入位置)に結像させているので、OC14から出力されるビームの出射角度が変化しても、増幅段レーザ(PO)20の注入部での注入ビームの位置変化はない。
【0026】
3.第2の実施例(サイド注入例1)
図5に増幅段レーザ(PO)20の共振器として、ファブリペロ型安定共振器を設置し、共振器のリアミラー26のサイド位置に、発振段レーザ(MO)10のOC14の位置の像を転写する実施例を示す。なお、同図は、増幅段レーザ(PO)20の上面図であり、発振段レーザ(MO)10を含めたレーザ装置の全体構成は、前記図2(a)に示したものと同様である。
本実施例においては、発振段レーザ(MO)10のOC14の位置の像が、図5に示すように、図示しないMOビーム転写器により増幅段レーザ(PO)20のリアミラー26のサイドに結像される。
このシード光は、増幅段レーザ(PO)20の共振器の光軸に対してやや斜めに入射しチャンバ21に入力する。ウインド22aを透過したシード光は、放電電極2aの電極間を透過して増幅され、ウインド22bを透過して部分反射膜がコートされたOC24に入射し、その透過光は、レーザとして出力され、一部は反射し再びチャンバ21に戻され、レーザチャンバ21内で増幅される。そして、高反射膜がコートされたリアミラー26に入射反射して、再びチャンバ21に入射する。この工程を繰り返すことによって、シード光が増幅発振する。なお、以下では、このように共振器ミラーのサイド位置(共振器ミラーの光軸に対して直交する方向にずれた位置)に発振段レーザ(MO)10の出口近傍の像を転写・結像させ、増幅段レーザ(PO)20に注入することを「サイド注入」という。
【0027】
本実施例において、前記図3(b)に示したようなMOビーム転写装置を用い、すくなくとも放電方向に対して垂直面での転写結像の光学システムを構成することによって、以下のメリットが得られる。
(1)図5の方式ではリアミラー26のサイドの幅の狭い領域が増幅段レーザ(PO)20の共振器のシード光の注入に有効なエリアである。
そこで、発振段レーザ(MO)10のOC14の出口のビームを、増幅段レーザ(PO)20のリアミラー26のサイドの位置に転写結像させていることにより、発振段レーザ(MO)10から増幅段レーザ(PO)20にビームが到達したとき、このビームが発振段レーザ(MO)10のOC14の直後のビームの大きさに対して広がることがなくなる。このため、発振段レーザ(MO)10のビームの出射角度の変化があっても、注入ビームの位置も変化せず、シード光の注入効率が高くなると同時に注入効率の変化も少ない。(2)結像したビームの位置が変化しないため、POのリアミラーにケラレたり、リアミラーから離れることによる注入効率の低下が抑制できる。
【0028】
4.第3の実施例(サイド注入例2)
図6は、図5の実施例の変形例である。増幅段レーザ(PO)20の共振器として、ファブリペロ型安定共振器を設置し、共振器のOC24のサイドの高反射部に発振段レーザ(MO)10のOC14の位置の像を転写する実施例を示す。なお、同図は、増幅段レーザ(PO)20の上面図であり、発振段レーザ(MO)10を含めたレーザ装置の全体構成は、前記図2(a)に示したものと同様である。
MOビーム転写器5から出力されたコリメート光は高反射ミラー4bにより反射されリアミラー26のサイドを透過し、チャンバ21のウインド22aから、放電電極空間から外れた空間を透過し、ウインド22bを透過後OC24の高反射膜が形成された部分に入射結像する。この高反射膜を反射した光は、放電電極2aの電極間を透過し、増幅される。そして、高反射膜をコートしたリアミラー26により再びチャンバ21の放電空間内に戻され増幅する。
そしてOC24の部分反射膜が形成された部分で反射した光がフィードバック光としてチャンバ21の放電空間にもどされる。OC24の部分反射膜を透過したレーザ光は反射防止膜を透過して出力レーザ光として出力される。
【0029】
図6の実施例のものは、図5の実施例のものと比べ、さらに以下のメリットが得られる。
(1)図6の方式ではOC24の高反射部の幅の狭い領域がPO共振器のシード光の注入に有効なエリアである。
そこで、発振段レーザ(MO)10のOC14の出口のビームを、増幅段レーザ(PO)20のOC24の高反射膜が形成された部分の位置に転写結像させていることにより、発振段レーザ(MO)10から増幅段レーザ(PO)20に到達したときMOビームが発振段レーザ(MO)10のOC14直後のビームの大きさに対して広がることがなくなる。また、発振段レーザ(MO)10のビームの出射角度の変化があっても、注入ビームの位置も変化しないので、シード光の注入効率が高くなると同時に注入効率の変化も少ない。
(2)さらに、注入光が1往復分増幅されるので、注入効率は図5の実施例よりも高い。 この実施例においても、前記図3(b)に示したようなMOビーム転写装置を用い、すくなくとも放電方向に対して平行面での転写結像の光学システムを構成することによって、前記したメリットが得られる。
【0030】
5.第4の実施例(サイド注入例3:ナイフエッジミラーによる注入)
図7は、図6の実施例の変形例である。
増幅段レーザ(PO)20の共振器として、ファブリペロ型安定共振器を設置し、レーザチャンバ21とOC24の間に配置された、ナイフエッジミラー9の高反射膜が形成された部分に発振段レーザ(MO)10のOC14の位置の像を転写する実施例を示す。なお、同図は、増幅段レーザ(PO)20の上面図であり、発振段レーザ(MO)10を含めたレーザ装置の全体構成は、前記図2(a)に示したものと同様である。
MOビーム転写器5から出力されたコリメート光は高反射ミラー4bにより反射されリアミラー26のサイドを透過し、チャンバ21のウインド22aから、放電電極空間から外れた空間を透過し、ウインド22bを透過後、ナイフエッジミラー9の高反射膜が形成された部分に入射し結像する。なお、ナイフエッジミラー9は、レーザ光の光路に近い側の端部がナイフエッジ状に形成されたミラーである。
ナイフエッジミラー9の高反射膜で反射した光は、放電電極2aの電極間を透過し、増幅される。そして、高反射膜をコートしたリアミラー26により再びチャンバ21の放電空間内に戻され増幅される。そしてOC24の部分反射膜部で反射した光がフィードバック光としてチャンバ21の放電空間にもどされる。OC24の部分反射膜を透過したレーザ光は反射防止膜を透過して出力レーザ光として出力される。
【0031】
この実施例では、共振器への注入有効部(ナイフエッジミラー9の端部)の幅が狭いので、この位置にMOのビームを転写結像させることにより、シード光の注入効率が高くなると同時に注入効率の変化も少ない。
ここで、図6の実施例のメリットに加えて得られる、この実施例によるメリット・デメリットを以下に記述する。
(1)OC24のコーティングとして、部分反射(PR)と反射防止(AR)コートのみのコートとなり図6のOC24より安価となる。さらに、OC24に高反射(HR)部と部分反射(PR)コート部の境界がないため境界部に高エネルギが入射した場合OC24の劣化が少ない。
(2)一方、本実施例では、ナイフエッジミラー9は端部まで高精度な面精度で高反射膜をコートする必要があるため図6の実施例に比べに、製作が困難である。
なお、本実施例においても、図3(b)のようなMOビーム転写装置を用い、すくなくとも放電方向に対して平行な面での転写結像の光学システムを構成することによって、前記したメリットが得られる。
【0032】
6.第5の実施例(リング共振器を用いた例1)
図8に増幅段レーザ(PO)20にリング共振器を設置した場合の第1の例を示す。
図8(a)に本実施例のレーザの側面図を示し、図8(b)に増幅段レーザ(PO)の上面図を示す。なお、前記図1に示したものと同一のものには同一の符号が付されており、図8では、図1に示した各種モニタ、コントローラ等は省略され、図8に示したものの発振段レーザ(MO)10などの動作、MOビーム転写器5の機能等は、前記図1、図2〜図4で説明したのと同様である。
増幅段レーザ(PO)20は、同図(b)に示すようにOC24、高反射ミラー7a,7b,7cからなるリング共振器を備え、発振段レーザ(MO)10からシード光は、高反射ミラー4b,4cを介して部分反射ミラーであるOC24から注入される。
【0033】
発振段レーザ(MO)10から出力したビームは高反射ミラー4aによりMOビーム転写器5に導入される。このMOビーム転写器5は発振段レーザ(MO)10のOC14の位置のビームの像を、高反射ミラー4b及び4cを介して、増幅段レーザ(PO)20のリング共振器の注入位置であるOC24(出力結合ミラー)に結像させる。
そして上述したように増幅段レーザ(PO)20のリング共振器のOC24から、共振器中にシード光が注入される。
OC24を透過したシード光は、図8(b)に示すように、高反射ミラー7aによりレーザチャンバ21の放電空間に傾いて入射され、このシード光に同期して、放電電極2aに電圧が印加され、放電電極2aが放電する。そして放電空間を透過したシード光は増幅され、チャンバ21を透過し2枚の高反射ミラー7b及び7cにより折り返され、再び放電している放電空間に導かれ増幅される。増幅した光の一部はOC24を透過してレーザとして出力し、OC24の反射光は再びリング共振器の中にフィードバックされ共振する。そして、上述したようにOC24からレーザパルスとして出力される。
OC24の反射率が20%〜30%とすると、発振段レーザ(MO)10から出力されたビームの80%から70%がリング共振器内に注入されることになり高い注入効率を得ることができる。
【0034】
図8においては、増幅段レーザ(PO)20のリング共振器のOC24がシード光の注入位置となっている。
したがって、例えば、発振段レーザ(MO)10のOC14と増幅段レーザ(PO)20のリング共振器のOC24との距離が2mの場合、発振段レーザ(MO)10のOC14でのビーム寸法をV方向(幅方向:放電電極の放電方向)12mm、H方向(縦方向:放電方向に垂直な方向)1mm、ビーム広がり角度V方向2mrad、H方向1mradとすると、MOビーム転写装置5を設けない場合、増幅段レーザ(PO)20のリング共振器の注入位置(OC24の位置)ではビーム寸法はV方向16mm、H方向は3mmとなる。
増幅段レーザ(PO)20の注入ビームの有効寸法をV方向12mm、H方向2mmとすると注入に使用できる有効ビームの割合は50%(=[12×2/(16×3)]×100)となる。
また、MOビーム転写装置5を設けない場合、発振段レーザ(MO)10の出射方向が0.5mrad変化すると、増幅段レーザ(PO)20のリング共振器の注入位置(OC24の位置)ではビームの位置が1mm移動することになり、注入効率が変化する。
これに対し、発振段レーザ(MO)10のOC14の位置のビームをMOビーム転写装置5によって増幅段レーザ(PO)20の注入位置に転写結像させて注入することにより、発振段レーザ(MO)10と増幅段レーザ(PO)の距離が大きく離れても、発振段レーザ(MO)10のOC14の直後のビームを増幅段レーザ(PO)20の共振器の注入位置に導入することが可能となる。
【0035】
またこの実施例では、2枚の高反射ミラー7b,7cでレーザチャンバ21にレーザ光を戻したが45度よりも多少小さな角度(数mrad)の全反射プリズムでフレネル反射で戻しても同様の機能を果たすことができる。
以上のように、増幅段レーザ(PO)20にリング共振器を配置し、発振段レーザ10のOC14の位置のビームを増幅段レーザ(PO)20のリング共振器のOC24付近で結像させて注入することによって以下の特別なメリットがある。
(1)増幅段レーザ(PO)20のリング共振器のOC24の位置で注入ビームの位置が変動しないため、注入効率が変化せず、安定した増幅発振が得られる。
(2)図2の実施例(10〜40%)に比べて高い注入効率(70〜80%)を得ることができる。
(3)OC24から注入され、2パスの増幅がなされるため、図2の実施例のようなリアミラーから注入される1パスの増幅に比べて増幅効率が高い。
【0036】
図9は上記第5の実施例の変形例を示す図であり、本変形例は、図8において、発振段レーザ(MO)10のOC14と高反射ミラー4aの間に、ビームエキスパンダ6を設けたものである。
このように、発振段レーザ(MO)と増幅段レーザ(PO)の間の光路中に、少なくとも増幅段レーザ(PO)20の電極2aの放電ギャップ方向にビームを拡大するビームエキスパンダ6を設置することで、発振段レーザ(MO)10の電極間ギャップより増幅段レーザ(PO)20の電極間ギャップが大きくても、増幅段レーザ(PO)20の放電空間をシード光で満たすことができる。
図10に、上記ビームエキスパンダ4の構成例を示す。同図(a)は、両面が0度入射反射防止(AR)膜コートされたシリンドリカル凹凸レンズ4a,4bを用いた例を示し、発振段レーザ(MO)10の出力光はシリンドリカル凹レンズ4aに入射した後、シリンドリカル凸レンズ4bに入射し、増幅段レーザ(PO)20の放電ギャップ方向にビーム径が拡大される。
同図(b)は、両面が0度入射反射防止(AR)膜コートされたシリンドリカル凸レンズ4b,4cを用いた例を示し、同図 (c) は、入射面がS偏光に対してARコートされ、出射面が0度ARコートされたプリズムビームエキスパンダ4d,4eを用いた例を示し、同図(d)は両面がS偏光に対してARコートされたウエッジ基板4f,4gを用いた場合を示し、いずれの構成でも、同図(a)と同様に増幅段レーザ(PO)20の放電ギャップ方向にビーム幅を拡大することができる。
なお、本実施例では、ビームエキスパンダを図8の実施例のものに設けた場合について説明したが、上記実施例に限定されず、他の実施例のレーザ装置に本実施例を適用してもよい。
【0037】
7.第6の実施例(リング共振器を用いた例2)
図11に増幅段レーザ(PO)20にリング共振器を設置した場合の第2の例を示す。なお、同図は、増幅段レーザ(PO)20の上面図であり、発振段レーザ(MO)10を含めたレーザ装置の全体構成は、前記図2(a)に示したものと同様である。
増幅段レーザ(PO)20は、同図に示すようにOC24、高反射ミラー7a,7b,7cからなるリング共振器を備え、発振段レーザ(MO)10からのシード光は、高反射ミラー4b,4cを介してOC24の反射防止(AR)コートされた部分から注入される。このため、注入光が全て増幅段レーザ(PO)共振器20内に注入される。
本実施例では、レーザ装置の光軸中心(例えば放電電極2aの長手方向の軸)に対して、2枚のミラーOC24,高反射ミラー7aとが交差する部分と、高反射ミラー7b,7cとが交差する部分を、上記光軸中心(中心線)に対してそれぞれA,Bだけオフセットさせている。
また、OC24と高反射ミラー7cのミラー面が上記中心線と交わる角度は45度であり、高反射ミラー7aと7cのミラー面が上記中心線と交わる角度は45度より数mrad小さい。
【0038】
上記のようにOC24と高反射ミラー7aのミラー面が交わる部分とレーザ装置の光軸中心との距離Aと、高反射ミラー7b,7cのミラー面が交わる部分とレーザ装置の光軸中心の距離をBとの大きさが等しくならないように共振器ミラーを配置することにより、図11に示すようにリング共振器内でビームが平行に移動しながら共振し、出力レーザ光として出力される。
すなわち、本実施例と前記図10に示したものとの違いは次の通りである。
(1)増幅段レーザ(PO)20の共振器のOC24に、部分反射(PR)コート領域(OCとして機能する領域)と反射防止(AR)コート領域(注入部として機能する領域)を設置したこと。
(2)発振段レーザ(MO)10のOC14の転写像は増幅段レーザ(PO)のOC24の反射防止(AR)コート領域に結像させて、増幅段レーザ(PO)20のリング共振器に注入していること。
(3)共振器を往復する毎に、増幅段レーザ(PO)20内でのビームが1方向に移動する配置としていること。
【0039】
以下この増幅段レーザ(PO)20の動作を説明する。
前述したように発振段レーザ(MO)10のOC14のビームをMOビーム転写器5により増幅段レーザ(PO)20のOC24のARコート部に転写させる。
このビームはほとんど反射することなくOC24を透過し高反射ミラー7aに入射し、そこで反射して増幅段レーザ(PO)20のレーザチャンバ21の放電空間に傾いて入射され、放電電極2aにシード光に同期して、電圧が印加され放電する。
そして放電空間を透過したシード光は増幅され、チャンバ21を透過し2枚の高反射ミラー7b及び7cにより折り返され、再び放電している放電空間に導かれ、増幅される。 そして、ビームは図11に示すように注入部から一定の割合で移動し、OC24の部分反射(PR)コート部に入射し、一部透過して、レーザの出力光(1往復光)となる。
また、一部は反射され再び高反射ミラー7aに入射し、同様に放電空間を1往復目の光路に対して平行移動した光路で透過し、高反射ミラー7b及び7cにより再び放電空間を1往復目の光路に対して平行移動した光路で透過し、1往復目に対して一定の割合で移動してビームは再びOC24の部分反射(PR)コート部に入射する。そして、透過光はレーザ光として出力され、反射光は再び共振器内で共振し、3往復目も同様に往復するたびに光路が平行移動して増幅発振する。
【0040】
本実施例では、注入効率を向上させるために、増幅段レーザ(PO)20のリング共振器のOC24に反射防止(AR)コート領域を設置して、この反射防止(AR)コート領域から発振段レーザ(MO)10のビームを注入しているため、発振段レーザ(MO)10のビーム幅(H方向1mm)が狭い必要がある。
そこで、本発明のように発振段レーザ(MO)10のOC14のビーム(V方向12mm、H方向1mm)をMOビーム転写装置5によって転写結像させることにより、注入位置で(V方向12mm、H方向1mm)のビームとすることができる。
注入有効エリアをV方向12mm、H方向1mmとすると、発振段レーザ(MO)10のビームが100%シード光として注入される。しかも、発振段レーザ(MO)10から出射される方向が変化しても注入ビームの位置は変化しないので有効に注入される。
以上のように、注入効率を約100%とすることができると同時に注入効率の変動が少なく安定となる。
【0041】
本実施例では、上述したメリットに加え以下のメリットが得られる。
すなわち、往復ビーム毎に出力レーザ光のビームが移動するので、増幅段レーザ(PO)レーザ20のリング共振器の光学素子(OC、レーザウインド及び高反射ミラー)におけるレーザ光のエネルギ密度が低減される。そのため、増幅段レーザ(PO)20の光学素子の寿命が長くなる。
なお、上記実施例では、2枚の高反射ミラー7b,7cでレーザチャンバ21にレーザ光を戻したが全反射プリズムでフレネル反射で戻しても同様の機能を果たすことができる。
【0042】
8.第7の実施例(リング共振器を用いた例3)
図12に増幅段レーザ(PO)20にリング共振器を設置した場合の第3の例を示す。 図12(a)は本実施例のレーザの側面図を示し、図12(b)は増幅段レーザ(PO)の上面図を示す。なお、前記図1に示したものと同一のものには同一の符号が付されており、図12に示したものの発振段レーザ(MO)10などの動作、MOビーム転写器5の機能等は、前記図1、図2〜図4で説明したのと同様である。
本実施例は全反射直角プリズムを共振器ミラーとし、このリング共振器内にOC24を配置し、発振段レーザ(MO)10のOC14のビームの像をMOビーム転写器5により、増幅段レーザ(PO)24のリング共振器のOC(出力結合ミラー)24に結像させるようにしたものである。
【0043】
図12において、発振段レーザ(MO)10のOC14のビームを増幅段レーザ(PO)20のOC24上に転写結像させる。このビームは片面に部分反射(PR)膜と片面に反射防止(AR)膜がコーティングされたOC24に入射し、一部反射させ、全反射直角プリズム8a入射する。この全反射直角プリズム8aの入射出射面には反射防止(AR)膜がコーティングされている。
シード光はプリズム8aの2つ面でフレネル反射により全反射し、ウインド22aを透過してレーザチャンバ21に入射する。シード光は放電電極2aに対して、略平行な光軸で透過し、増幅されずにチャンバ21内を透過し、全反射直角プリズム8bに入射する。 シード光はプリズム8bの2面で全反射し再びウインド22bを介して放電電極2aの放電空間の光軸が一致するようにレーザチャンバ21に入射する。
放電電極2aにはシード光に同期して電圧が印加され放電する。そして放電空間を透過したシード光は増幅され、チャンバ21を透過し、再びOC24に入射する。増幅した光の一部はOC24を反射してレーザ光として出力し、OC24の透過光はフィードバック光として再びリング共振器内に戻される。
【0044】
図12の実施例では図8の実施例と同様、増幅段レーザ(PO)20のリング共振器のOC24がシード光の注入位置となっている。
したがって、例えば、発振段レーザ(MO)10のOC14と増幅段レーザ(PO)20のOC24との距離が2mの場合、発振段レーザ(MO)10のOC14でのビーム寸法をV方向12mm、H方向1mm、ビーム広がり角度V方向2mrad、H方向1mradとすると、増幅段レーザ(PO)20のリング共振器の注入位置(OC24の位置)ではビーム寸法はV方向16mm、H方向は3mmとなる。増幅段レーザ(PO)20の注入ビームの有効寸法をV方向12mm、H方向2mmとすると注入に使用できる有効ビームの割合は50%(=[12×2/(16×3)]×100)となる。
また、発振段レーザ(MO)10の出射方向が0.5mrad変化すると増幅段レーザ(PO)20のリング共振器の注入位置(OC24の位置)ではビームの位置が1mm移動することになり、注入効率が変化する。
これに対し、発振段レーザ(MO)10のOCのビームをMOビーム転写装置5によって増幅段レーザ(PO)20の注入位置に転写結像させて注入することにより、発振段レーザ(MO)10と増幅段レーザ(PO)20の距離が大きく離れても、発振段レーザ(MO)10のOC14の直後のビームを増幅段レーザ(PO)20の共振器の注入位置に導入することが可能となる。
【0045】
本実施例では、上述したメリットに加え以下のメリットが得られる。
すなわち、上述したように増幅段レーザ(PO)20が増幅発振し、OC24の反射率が70%〜80%とすると注入効率は70%から80%となり高い注入効率を得ることができる。
また、直角全反射プリズム2個でリング共振器を構成し、OC24をリング共振器の光軸上に設置しているので、リング共振器の光軸のアライメントが容易であり、安定に動作する。
【0046】
9.第8の実施例(リング共振器を用いた例4)
図13に増幅段レーザ(PO)20にリング共振器を設置した、前記図11に示した実施例の変形例である第4の例を示す。
なお、同図は、増幅段レーザ(PO)20の上面図であり、発振段レーザ(MO)10を含めたレーザ装置の全体構成は、前記図12(a)に示したものと同様である。
増幅段レーザ(PO)20は、同図に示すように全反射直角プリズム8a,8bからなるリング共振器を備え、発振段レーザ(MO)10からのシード光は、OC24の高反射(HR)コートされた部分から注入される。このため、注入光が全て増幅段レーザ(PO)共振器20内に注入される。
本実施例では、レーザ装置の光軸中心(例えば放電電極2aの長手方向の軸)に平行な軸に対して、2個の全反射直角プリズム8a,8bの頂角の位置をオフセットさせている。これによりリング共振器内でビームが平行に移動しながら共振し、出力レーザ光として出力される。
【0047】
本実施例と図11の実施例との違いは以下の点である。
(1)増幅段レーザ(PO)20の共振器のOC24に部分反射(PR)コート領域(OC24として機能する領域)と高反射(HR)コート領域(注入部として機能する領域)を設置したこと。
(2)発振段レーザ(MO)10のOC14の転写像は増幅段レーザ(PO)20のOC24の高反射(HR)コート領域に結像させて、増幅段レーザ(PO)20のリング共振器に注入すること。
(3)共振器を往復する毎に、増幅段レーザ(PO)20内でビームが1方向に移動する配置としていること。
【0048】
図13において、発振段レーザ(MO)10のOC14のビームをMOビーム転写器5により増幅段レーザ(PO)20のOC24の高反射(HR)コート部に転写させる。
このビームはOC24の高反射(HR)コート部で全反射し、プリズム8a,8bの2つ面でフレネル反射により全反射する。
そして、シード光はウインド22aを透過して、レーザチャンバ21に入射する。シード光は放電電極2aに対して、略平行な光軸で透過し、増幅されずにチャンバ21内を透過し、全反射直角プリズム8bに入射する。シード光はプリズム8bの2面で全反射し再びウインド22bを介して放電電極2aの放電空間と光軸が一致するようにレーザチャンバ21に入射する。
【0049】
シード光が導入される放電空間は、シード光に同期して電源により印加される電圧により放電電極2a間で放電する。これにより、シード光が増幅されて、ビームはOC24の部分反射(PR)コート部に入射する。OC24での反射光は、出力レーザ光として出力(1往復による増幅光)される。
透過光は、1往復目の光路に対して平行に移動した光路で再び全反射直角プリズム8aによりレーザチャンバ21に戻され、増幅されずにチャンバ21内を透過し、全反射直角プリズム8bに入射する。そして、再びレーザチャンバ21に入射し、1往復目の光路に対して所定の距離だけ平行移動した光路で、放電空間内を透過し、増幅される。
この増幅光は、1往復目に対して一定の割合で移動してビームは再びOC24の部分反射(PR)コート部に入射し、反射光はレーザ光として出力され、透過光は再び共振器内で共振し、3往復目も同様に往復するたびに光路が平行移動して増幅発振する。
【0050】
本実施例では、注入効率を向上させるために、増幅段レーザ(PO)20のリング共振器のOC24に高反射(HR)コート領域を設置して、この高反射(HR)コート領域から発振段レーザ(MO)10のビームを注入しているため、発振段レーザ(MO)10のビーム幅(H方向1mm)が狭い必要がある。
そこで、本発明のように発振段レーザ(MO)10のOCのビーム(V方向12mm、H方向1mm)をMOビーム転写装置5によって転写結像させることにより、注入位置で(V方向12mm、H方向1mm)のビームとすることができる。
注入有効エリアをV方向12mm、H方向1mmとすると、100%発振段レーザ(MO)のビームがシード光として注入される。しかも、発振段レーザ(MO)から出射される方向が変化しても注入ビームの位置は変化しないので有効に注入される。以上のように、注入効率を約100%とすることができると同時に注入効率の変動が少なく安定となる。
本実施例では、上述したメリットに加え以下のメリットが得られる。
すなわち、往復ビーム毎に出力レーザ光のビームが移動するので、増幅段レーザ(PO)20のリング共振器の光学素子(OC、レーザウインド及び高反射ミラー)におけるレーザ光のエネルギ密度が低減される。そのため、増幅段レーザ(PO)20の光学素子の寿命が長くなる。
【0051】
10.第9の実施例(偏光制御による共振器の例)
図14に増幅段レーザ(PO)の共振器として、ファブリペロ型安定共振器を設置し、シード光の注入に偏光素子と波長板を用いた実施例を示す。
図14(a)は本実施例のレーザの側面図を示し、図14(b)は増幅段レーザ(PO)の上面図を示す。なお、前記図1に示したものと同一のものには同一の符号が付されており、MOビーム転写器5の機能等は、前記図2〜図4で説明したのと同様である。
図14において、発振段レーザ(MO)10のLNM3のプリズムビームエキスパンダ3a及びレーザチャンバ11のウインド12a,12bがブリュースタ角で設置されており、紙面に対して垂直な偏波面でレーザ発振する。
この発振段レーザ(MO)10から出力されたレーザ光は偏波面を維持した状態で高反射ミラー4aによりMOビーム転写器5に入射する。
【0052】
この転写器5から出力された光はPS分離膜をコートしたビームスプリッタ(BS)27aに入射する。このBS27aではS偏光(紙面に対して垂直な偏波面)は全反射する。この反射光はλ/4板27bを透過し円偏光に変換される。
この円偏光に変換された発振段レーザ(MO)10のビームは増幅段レーザ(PO)20の共振器のOC24の位置に発振段レーザ(MO)24の像を結像する。
そして、このOC24から増幅段レーザ(PO)20の光共振器中に注入され、チャンバ21の放電電極ギャップ間で透過、増幅され、ウインド22bを透過して高反射膜がコートされたリアミラー26に入反射して、再び増幅段レーザ(PO)20のチャンバ21に入射し、透過、増幅されてOC24により一部が反射されて再び増幅段レーザ(PO)20の共振器内に戻される。
円偏光でOC24から出力したレーザ光は再びλ/4板27bにより、紙面を含む偏波面に変換される。この偏光状態の光はBS27aのP偏光成分の光なのでほとんど全てBS27aを透過し出力レーザ光として取り出される。
ここで、増幅段レーザ(PO)20の共振器内では円偏光で共振するのでウインド22a,22bには反射防止(AR)コートとして、P及びS偏光に対する反射防止膜をコートする必要がある。
【0053】
図14の実施例では増幅段レーザ(PO)20のファブリペロ安定共振器のOC24がシード光の注入位置となっている。
したがって、例えば、発振段レーザ(MO)10のOC14と増幅段レーザ(PO)20の共振器のOC24との距離が2mの場合、発振段レーザ(MO)10のOC14でのビーム寸法をV方向12mm、H方向1mm、ビーム広がり角度V方向2mrad、H方向1mradとすると、増幅段レーザ(PO)20の共振器の注入位置(OC24の位置)では、ビーム寸法はV方向16mm、H方向は3mmとなる。
増幅段レーザ(PO)の注入ビームの有効寸法をV方向12mm、H方向2mmとすると注入に使用できる有効ビームの割合は50%(=[12×2/(16×3)]×100)となる。また、発振段レーザ(MO)10の出射方向が0.5mrad変化すると増幅段レーザ(PO)20の共振器の注入位置(OC24)ではビームの位置が1mm移動することになり、注入効率が変化する。
これに対し、発振段レーザ(MO)のOC14のビームをMOビーム転写装置5によって増幅段レーザ(PO)20の注入位置に転写結像させて注入することにより、発振段レーザ(MO)10と増幅段レーザ(PO)20の距離が大きく離れても、発振段レーザ(MO)10のOC14の直後のビームを増幅段レーザ(PO)20の共振器の注入位置に導入することが可能となる。
【0054】
以上のように発振段レーザ(MO)10のOC14のビームをMOビーム転写装置5によって増幅段レーザ(PO)20の注入位置に転写結像させて注入することにより、発振段レーザ(MO)10と増幅段レーザ(PO)20の距離が大きく離れても、発振段レーザ(MO)10のOC14の直後のビームを増幅段レーザ(PO)20の共振器の注入位置に導入することが可能となる。
本実施例では、上述したメリットに加え以下のメリットが得られる。
すなわち、図2の実施例に比べて増幅段レーザ(PO)20のOC24の反射率が20%から30%で動作するので、注入効率が70%から80%の高い効率を得ることができ、増幅段レーザ(PO)20の共振器のアライメントが容易で安定していることである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の露光装置用狭帯域レーザ装置の基本構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施例の構成を示す図である。
【図3】本発明の実施例のビーム転写器の構成例を示す図である。
【図4】本発明の実施例のビーム転写器の光路図である。
【図5】本発明の第2の実施例(サイド注入例1)の構成を示す図である。
【図6】本発明の第3の実施例(サイド注入例2)の構成を示す図である。
【図7】本発明の第4の実施例(サイド注入例3)の構成を示す図である。
【図8】本発明の第5の実施例(リング共振器の例1)の構成を示す図である。
【図9】本発明の第5の実施例の変形例の構成を示す図である。
【図10】ビームエキスパンダの構成例を示す図である。
【図11】本発明の第6の実施例(リング共振器の例2)の構成を示す図である。
【図12】本発明の第7の実施例(リング共振器の例3)の構成を示す図である。
【図13】本発明の第8の実施例(リング共振器の例4)の構成を示す図である。
【図14】本発明の第9の実施例(偏光制御)の構成を示す図である。
【図15】MOPO方式のレーザ装置の構成例を示す図である。
【図16】発振段レーザ(MO)のビームの進む方向の変化と注入光の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1a,2a 放電電極
3 LMN
4a〜4c 高反射ミラー
5 MOビーム転写器
5a 球面集光レンズ
5b 球面コリメータレンズ
5c ピンホール
5d シリンドリカル集光レンズ
5e シリンドリカルコリメータレンズ
6 ビームエキスパンダ
7a〜7c 高反射ミラー
8a,8b 全反射直角プリズム
9 ナイフエッジミラー
10 発振段レーザ(MO)
11,21 チャンバ
12a,12bウィンドウ部材
22a,22bウィンドウ部材
13,23 スリット
14 OC(出力結合ミラー)
15,25 電源
20 増幅段レーザ(PO)
24 OC(出力結合ミラー)
26 リアミラー
27a ビームスプリッタ(BS)
27b λ/4板
30 エネルギコントローラ
31 レーザコントローラ
32 ガスコントローラ
33 波長及びスペクトル波形コントローラ
34 波長およびスペクトル波形モニタ
35 同期コントローラ
36 露光装置
37,38 パワーモニタ
【技術分野】
【0001】
本発明は狭帯域発振段レーザと増幅段レーザとからなる露光装置用の注入同期式放電励起レーザ装置に関し、特に、狭帯域発振段レーザからのシード光を有効に増幅段レーザに注入することができる露光装置用レーザ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体露光装置用光源としてはエキシマレーザが使用されている。特に、60nm以下のテクノロジーノードにおいては、高出力(40W以上)でかつ超狭帯域化(0.2pm以下)にされたArFレーザ光源が採用されている
露光装置用光源のArFレーザ光源の要求を以下に示す。
1.高ドーズ安定性の確保と、高スループット化に伴い40W以上の出力が要求されている。
2.投影レンズの高解像度化のために投影レンズの高NA化が進められている。高NA化にともなって、色収差が発生し、超狭帯域化(0.2pm以下)が要求される。
3.レーザ光源の超寿命化が要求されている。
上記光源の要求を満たすために、ダブルチャンバ方式(2ステージ方式)のArFレーザが実用化されている。ダブルチャンバ方式のレーザ装置の形態としては、アンプ側に共振器ミラーを設けないMOPA(Master Oscillator Power Amprifier )方式と共振器ミラーを設けるMOPO(Master Oscillator Power Oscillator)方式とに大別される。
しかし、出力90Wのような高出力化のために、増幅器(PA)または増幅段レーザ(PO)の光学素子(特にチャンバウインドやOC)負荷が大きくなり、これら光学素子の寿命が課題となっており、レーザ光源の長寿命化が要求されるようになってきている。
【0003】
特許文献1には、MOPA方式のレーザ装置が開示されている。
特許文献1に記載のものは、発振段レーザ(MO)に狭帯域化するための狭帯域化モジュールを搭載し、スペクトル幅が非常に狭いレーザ光を出力し、このシード光を増幅器(PA)のチャンバの放電領域に注入してパワーを増幅することにより、超狭帯域かつ高出力を実現している。
また、特許文献2には、発振段レーザ(MO)からのシード光を、増幅段レーザ(PO)の低コヒーレンス共振器に注入するMOPO方式のレーザ装置が提案されている。
低空間コヒーレンスのMOPO方式を採用することにより、MOPA方式に比べて、ビーム品位をMOPAと同等に維持した状態で、高い増幅効率と長いパルス幅を実現している。
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0154668号明細書
【特許文献2】国際公開第2004/095661号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図15に上述したMOPO方式のレーザ装置の構成例を示す。
同図において、発振段レーザ(MO)10から放出されるレーザビームはシードレーザビームとして機能し、増幅段レーザ(PO)20はそのシードレーザ光を増幅する機能を有する。発振段レーザ(MO)10、増幅段レーザ(PO)20は各々レーザチャンバ11,21を有し、その内部にはレーザガスが満たされており、それぞれ内部には対向し、かつ所定距離だけ離間した一対の電極1a、2aが設置され、これらの一対の電極1a,2aに高電圧パルスが印加されることにより放電が発生する。
【0005】
また、発振段レーザ10と増幅段レーザ20のチャンバ11,21には、レーザ発振光に対して透過性がある材料によって作られたウィンドウ部材12a,12b,22a,22bがそれぞれ設置されている。
発振段レーザ10は拡大プリズム3aとグレーティング(回折格子)3bによって構成された狭帯域化モジュール(LNM)3を有し、この狭帯域化モジュール3内の光学素子と出力結合ミラー(OC)14とでレーザ共振器を構成する。
発振段レーザ10からのMOレーザ光(シード光)は高反射ミラー4a,4bで反射され、増幅段レーザ(PO)20のリアミラー26から注入される。このシード光に同期して、図示しない電源から放電電極2a間に電圧が印加され放電する。そして放電空間を透過したシード光は増幅され、増幅した光の一部は出力結合ミラー(OC)24を透過してレーザとして出力し、OC24の反射光は再びチャンバ21内にフィードバックされ共振する。
【0006】
上記MOPO方式のレーザ装置においては、コンパクト化のため、発振段レーザ(MO)10と増幅段レーザ(PO)20のチャンバを並列に配置する必要があり、発振段レーザ(MO)10と増幅段レーザ(PO)20間の距離が約1m程度必要となっていた。このため以下のような2つの問題点が発生した。
(1)発振段レーザ(MO)から出力された光が、約1m以上の光路を経て増幅段レーザ(PO)に達するため、増幅段レーザ(PO)の注入位置におけるビームサイズが大きくなり、増幅段レーザ(PO)に有効にシード光が注入されなかった。
例えば図15において、発振段レーザ(MO)のビームがビーム幅Bとビーム広がり角αで出力されると、発振段レーザ(MO)10のOC14と増幅段レーザ(PO)20のリアミラー26の距離をDとすると、増幅段レーザ(PO)20のリアミラー位置でのMOレーザビームの大きさはB+D×αとなる。
増幅段レーザ(PO)20のリアミラー26の近傍に配置されたスリット23は、増幅段レーザ(PO)20の放電電極2aのギャップの以下の開口である。
もし、発振段レーザ(MO)10と増幅段レーザ(PO)20の電極ギャップが同じとすると、増幅段レーザ(PO)20のリアミラー26で注入されたビームはD×α分だけ広がる。この広がった光はPO共振器で共振せず注入効率が低下する。
【0007】
(2)発振段レーザ(MO)のビームの進む方向が変化すると増幅段レーザ(PO)の注入位置におけるビームの位置が変化してしまい、有効にシード光が注入されなかった。
すなわち、図16に示すように、発振段レーザ(MO)10のレーザの進む方向が下方向に変化すると増幅段レーザ(PO)20のリアミラー26の位置でビームの位置が上の方向に移動し、増幅段レーザ(PO)20の放電領域に有効にシード光が注入できなくなり、増幅段レーザ(PO)20での増幅効率が悪化した。そして、増幅段レーザ(PO)20での放電領域をシード光が満たせない場合には自然発振のレーザ光が発生し、半導体露光装置用とし使用できなくなっていた。
本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、発振段レーザ(MO)から出力されたビームを効率よく増幅段レーザ(PO)に注入することができ、また、発振段レーザ(MO)から出力されたビームの方向に変動があった場合でも、注入効率の変動を少なくすることができる露光装置用狭帯域レーザ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては、発振段レーザ(MO)の出口近傍におけるレーザビームを、増幅段レーザ(PO)の共振器の注入位置に共役系で転写結像させる。これにより、発振段レーザ(MO)からのシード光を効率よく増幅段レーザ(PO)に注入することができ、また、上記シード光の方向に変動があっても注入効率は変動を少なくすることができる。
すなわち、本発明においては、以下のようにして前記課題を解決する。
(1)狭帯域発振段レーザ(MO)と共振器を配置した増幅段レーザ(PO)とからなる注入同期式放電励起レーザ装置において、狭帯域発振段レーザ(MO)と上記増幅段レーザ(PO)の間に、狭帯域発振段レーザ(MO)から放出される前記MOレーザ光の出口近傍(レーザ光が出射する共振器ミラーもしくは共振器ミラーの直後に設けられた光学素子の出射側)におけるビームを転写して、このビーム転写像を前記POの共振器内の注入部(共振器ミラー面を含む平面上、もしくは共振器ミラー間に設けられた注入用ミラー面)に結像させる共役系の光学システムを設ける。
(2)上記(1)において、上記光学システムをシリンドリカルレンズから構成される共役系とする。
なお、上記共役系の光学システムを上記のようにシリンドリカルレンズで構成し、その集光部分にスリットを配置してもよい。該スリットは、その長手方向が、シリンドリカルレンズの集光方向に直交するように配置される。
また、上記共役系の光学システムを球面レンズで構成し、その集光部分にピンホールを配置してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、以下の効果を得ることができる。
(1)発振段レーザ(MO)の出口近傍のビームを転写して、この転写像を増幅段レーザ(PO)の共振器の注入位置に転写結像させているので、増幅段レーザ(PO)の共振器の注入位置でシード光のビームは広がらず、発振段レーザ(MO)からのビームを効率よく増幅段レーザ(PO)に注入することができる。
(2)上記のように、発振段レーザ(MO)の出口近傍のビームを転写して、増幅段レーザ(PO)の共振器の注入位置に転写結像させているので、発振段レーザ(MO)のビームの進行方向が変化しても、注入位置での転写像の位置は変化しない。このため、発振段レーザ(MO)からのビームを有効にシード光として増幅段レーザ(PO)の共振器中に注入することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明の露光装置用狭帯域レーザ装置の基本構成を示す図である。
本発明のレーザ装置は、スペクトル線幅の狭いレーザ光を出力する発振段レーザ(MO)10と、発振段レーザ10が出力するレーザビームを、ビーム転写器5に導入するための高反射ミラー4aと、このレーザビームを転写結像させるためのMOビーム転写器5を備える。
また、MOビーム転写器5が出力する転写像を反射し増幅段レーザ(PO)20の光共振器に導入する高反射(HR)ミラー4bと、発振段レーザ(MO)10のレーザ光を光共振器により増幅発振させるための増幅段レーザ(PO)20を備える。
発振段レーザ(MO)10と増幅段レーザ(PO)20はそれぞれにチャンバ11,21内に設置された一対の電極1aおよび電極2aの長手方向の軸延長上両端にウィンドウ部材12a,12bおよび22a,22bを有し、その両側には波形整形のためのスリット13,23がそれぞれ設置されている。
【0011】
波長およびスペクトル波形モニタ34およびパワーモニタ38は、増幅段レーザ(PO)20から出力された光の光品位及びパルスエネルギを検出し、パワーモニタ37は、発振段レーザ(MO)10のパルスエネルギを検出する。
波長及びスペクトル波形コントローラ33は、上記波長およびスペクトル波形モニタ34の出力に基づき増幅段レーザ(PO)から出射されるレーザ光の波長及びスペクトル波形を制御する。また、エネルギコントローラ30は、パワーモニタ37,38の出力に基づき、レーザのパルスエネルギをコントロールする。
また、ガスコントローラ32は発振段レーザ(MO)10と増幅段レーザ(PO)20のレーザガスをコントロールする。レーザコントローラ31はレーザの全体を制御する。 同期コントローラ35は増幅段レーザ(PO)20に接続されているPO電源25と発振段レーザ(MO)10に接続されているMO電源15の放電タイミングをコントロールする。
【0012】
以下、図1に示すレーザ装置の構成と機能を説明する。
発振段レーザ(MO)10はスペクトル線幅を狭くするために、プリズムビームエキスパンダ3aとグレーティング(回折格子)3bを搭載した狭帯域化モジュール(LNM)3と、MO電源15を搭載したレーザチャンバ11とフロントミラー[出力結合ミラー(OC)14]とからなっている。
LNM3に配置されているグレーティング3bの分散方向(=プリズム3aのビーム拡大方向)は電極1aの放電方向に対して垂直方向に配置されている。レーザチャンバ11内にはバッファガスとArガスとF2 ガスが満たされており、MO電源15から電極1a間に電圧を印加放電させることで放電し、この放電により励起されArFエキシマが形成される。
このArFエキシマからArガスとFに分離する時に193nmの波長の光を発光する。193nmの光をLNM3で波長選択することにより、スペクトル幅約400pm→0.2pmまで狭帯域化して、発振段レーザ(MO)10の出力結合ミラー14(OutputCoupler)から出力される。発振段レーザ(MO)10は高繰返し周波数でパルス発振し、その発光パルスの時間幅は約30nsである。
【0013】
発振段レーザ(MO)10のOC14から出力された光は、高反射ミラー4aを介してMOビーム転写器5に入力する。ここで、MOビーム転写器5の出力ビーム幅が増幅段レーザ(PO)のビーム幅と同等となるようにMOビーム転写器5の倍率を設定する。すなわち、発振段レーザ(MO)10の電極ギャップをXとし、増幅段レーザ(PO)20の電極ギャップをYとすると、MOビーム転写器5は、X:Yの倍率の共役系のビーム転写を行うよう構成する。
このMOビーム転写器5から出たビームは高反射ミラー4bを介して増幅段レーザ(PO)20の光共振器のリアミラー26に導入される。
ここで、発振段レーザ(MO)10のOC14の位置におけるビームを、上記MOビーム転写器5により、増幅段レーザ(PO)20のリアミラー26に結像させて、増幅段レーザ(PO)20の出力結合ミラー(OC24)とレーザチャンバ21とリアミラー26で構成される安定共振器に注入される。なお、上記ビーム転写の詳しい光学システムに関しては、後述する図3で説明する。
【0014】
また、上記高反射ミラー4aとMOビーム転写器5の間には発振段レーザ(MO)10のパルスエネルギをモニタするためのビームスプリッタ37aとパワーモニタ37が配置されている。ここで検出された発振段レーザ(MO)10のパルスエネルギの検出値はエネルギコントローラ30に入力される。
この発振段レーザ(MO)10のパルスエネルギの検出結果に基づいて、エネルギコントローラ30は同期コントローラ35を介してMO電源15に制御信号を送る。
発振段レーザ(MO)10からきたシード光が、増幅段レーザ(PO)20の光共振器内に注入されると、シード光と同期して、増幅段レーザ(PO)20の放電電極2a間で放電する。これにより、注入された光が光共振器内で増幅発振され、出力結合ミラー24から増幅された光で出力される。
この出力された光はビームスプリッタ38a,38bによりサンプルされ、パワーモニタ38によりパルスエネルギを検出し、その結果がエネルギコントローラ30に送られる。エネルギコントローラ30はこの検出結果に基づいて同期コントローラ35を介して、PO電源25及びMO電源15に制御信号を送る。
【0015】
また、増幅段レーザ(PO)20の出力光をビームスプリッタ38aにより光サンプルし、波長及びスペクトル波形モニタ34で、波長及びスペクトル波形を検出する。この検出結果は波長及びスペクトル波形コントローラ33に送られ、LNM3内にあるグレーティング3bの入射角度を変化させる機構(図示せず)に制御信号を送る。これにより、波長が制御される。
さらに、スペクトル波形も発振段レーザ(MO)10のレーザ共振器内の光学素子の光波面を制御する(制御機構は図示していない)ことにより、スペクトル波形を制御できる。また、ガスコントローラ32により、発振段レーザ(MO)10のチャンバ11のF2 ガス濃度を制御することによってもスペクトル波形を制御することができる。
レーザコントローラ31は、MO電源15の印加電圧やPO電源25の印加電圧と、増幅段レーザ(PO)20及び発振段レーザ(MO)10のパルスエネルギの経時変化とに基づき、ガスコントローラ32に対し、レーザガス(F2 、Ar及びバッファガス)の補給及び排気を徐々に行なうように制御する。
【0016】
以上説明したように、図1のような構成とすることにより、発振段レーザ(MO)10のOC14の位置におけるビームを、MOビーム転写器5によって、共役系で増幅段レーザ(PO)20の共振器の注入位置に、増幅段レーザ(PO)20の電極ギャップ2aに合うような幅で転写することが可能であり、これにより、以下のメリットを得ることができる。
(1)発振段レーザ(MO)10から出力されたビームが全て増幅段レーザ(PO)の放電領域を満たすことができるため、発振段レーザ(MO)10からのビームを高い注入効率で、増幅段レーザ(PO)20へ注入することができる。
(2)発振段レーザ(MO)10の出力ビームの方向変動があっても、増幅段レーザ(PO)20の共振器の注入位置でのビームの位置変化がないため、増幅段レーザ(PO)20の放電領域を満たすことができる。そのため注入効率の変動が少なく、増幅段レーザ(PO)からのレーザ出力を安定にすることができる。
【0017】
以下、本発明の実施例について説明する。
1.第1の実施例
図2は本発明の第1の実施例の構成を示す図である。図2は、増幅段レーザ(PO)20の共振器として、ファブリペロ型安定共振器を設置し、この共振器のリアミラー26の位置に発振段レーザ(MO)10のOC14の位置のシード光の像を転写するようにした実施例を示す。
図2(a)に本実施例のレーザの側面図を示し、図2(b)に増幅段レーザ(PO)の上面図を示す。なお、前記図1に示したものと同一のものには同一の符号が付されており、図2では、図1に示した各種モニタ、コントローラ等は省略されている。
図2に示したものの発振段レーザ(MO)10などの動作は、前記図1で説明したのと同様であり、以下では、主としてMOビーム転写器5の構成、機能、増幅段レーザ(PO)20の動作について説明する。
発振段レーザ(MO)10から出力された光は高反射ミラー4aによりMOビーム転写器5に入射する。このMOビーム転写器5は集光レンズ5a、空間フィルタとして機能するピンホール5c及びコリメータレンズ5bにより構成されている。集光レンズ5aの焦点f1の位置にピンホール5cが配置され、ピンホール5cとコリメータレンズ5bの間の距離はコリメータレンズ5bの焦点距離f2である。
【0018】
集光レンズ5aの焦点の位置にピンホール5cが設置され発振段レーザ(MO)10の光がピンホール5cを透過する。
そして光は広がり、コリメータレンズ5bにより平行光に変換される。この平行光は高反射ミラー4bにより反射され、図2(b)に示すように、リアミラー26の位置に発振段レーザ(MO)10のOC14の位置のビームを転写結像させる。
上記のように結像させるには、発振段レーザ(MO)10OのOC14と集光レンズ5aの距離がf1、かつ、コリメータレンズ5bとリアミラー26との距離がf2となるように配置することで実現できる。
ここで空間フィルタとして機能するピンホール5cは、増幅段レーザ(PO)20からの戻り光や増幅段レーザ(PO)の発振時のリアミラー26からの漏れ光を除去するために設置している。
したがって、このピンホール5cの大きさは発振段レーザ(MO)10からの出射角度が多少変化(±0.5mrad程度)しても透過するような大きさとなっている。
【0019】
図2(b)に示すように、部分反射(PR)膜と反射防止(AR)膜がコートされたリアミラー26上に結像したシード光の一部は、リアミラー26を透過する。このリアミラーの透過率の範囲は40%から10%であり、したがって、このリアミラーの反射率は、60%から90%の範囲となる。このシード光は、増幅段レーザ(PO)20の共振器の光軸(対向する共振器ミラーの中心を結ぶ軸)に対して略平行に入射し、増幅段レーザ(PO)20のチャンバ21に入力される。
ウインド22aを透過してチャンバ21内に入射したシード光は、放電電極2a間を透過して増幅され、ウインド22bを透過して部分反射(PR)膜と反射防止(AR)膜がコートされたOC24に入射する。ここで、このOC24の反射率の範囲は20%から30%である。そして透過光は、レーザ光として出力され、他の一部は反射し再びチャンバ21に戻され、レーザチャンバ21内で増幅され、リアミラー26に入射反射して、再びチャンバ21に入射する。この工程を繰り返すことによって、シード光が増幅発振する。
【0020】
本実施例においては上記のようにピンホール5cを配置しているため、これが空間フィルタとして機能し、大きく角度がついた増幅段レーザ(PO)20からの戻り光や、ビーム広がり角が大きな増幅段レーザ(PO)20からのリアミラー26からの漏れ光はピンホール5cで大部分除去される。このため安定な注入同期が可能となる。
なお、上記実施例では、集光レンズ5a及びコリメータレンズ5bとして球面レンズを採用しているが、これに限定されることなく、図2(b)紙面に対して平行方向に集光するシリンドリカル形状の集光レンズを用い、空間フィルタは、ピンホールに代えてスリット形状のものを用いてもよい。このようにすることにより、空間フィルタの耐久性等が向上する。
【0021】
図3に、発振段レーザ(MO)10のOC14の位置のビームを増幅段レーザ(PO)20の共振器のリアミラー26に転写結像させるための、共役系の光学システム(ビーム転写器)の実施例を示す。
図3(a)は、図2に示した球面レンズを組合せた場合の発振段レーザ(MO)10の出力ビームの転写結像の光学システム(MOビーム転写器)の構成である。
なお、MOビーム転写器5は集光レンズ5a、コリメータレンズ5bから構成されるが、この例では集光レンズ5aの焦点f1の位置にピンホール5cは配置されていない。
同図に示すように、発振段レーザ(MO)10のチャンバ11の電極ギャップをXとすると、発振段レーザ(MO)10のOC14から出力されるビームの幅は略Xとなる。
球面集光レンズ5aの焦点距離をf1とすると、この球面集光レンズ5aはOC14からf1の距離だけ離れた光軸上に配置される。この集光レンズ5aを透過したMOレーザ光は集光レンズ5aからf1の距離の光軸上の焦点位置で集光する。
この集光点から光は広がり、焦点距離f2の距離の位置に配置された球面コリメータレンズ5bによりコリメートされる。このコリメート光は焦点距離f2の位置に配置されたリアミラー26に入射し、ここに発振段レーザ(MO)10のOC14の像が結像する。 ここで、増幅段レーザ(PO)20の電極ギャップをYとすると、球面レンズ5aの焦点距離f1とコリメータレンズ5bの焦点距離f2の関係は、倍率α=f2/f1=Y/Xの関係となる。
【0022】
ビーム転写器5を、このような共役系の光学システムにすることにより、以下のメリットが得られる。
(1)発振段レーザ(MO)10のビームが、増幅段レーザ(PO)20の放電領域を満たすことができるため、少ない注入エネルギでも自然発振が抑制される。したがって、露光装置の投影レンズによる安定した結像を得ることができる。
(2)発振段レーザ(MO)10のビームの進行方向が変動しても、増幅段レーザ(PO)20の共振器への注入位置の注入光の位置は変動しない。このため、注入効率の変動が抑制され、安定した増幅後の出力光を得ることができる。
なお、この実施例では集光点にピンホール5cを配置していないが、空間フィルタの機能をするピンホールを配置しなくても上記2つのメリットがある。
なお、この実施例では集光レンズとコリメータレンズの2つのレンズの組合せにより、共役系の光学システムを構成したが、これに限定されることなく、例えば、集光点でエネルギ密度が高くなり、ビームが不安定になる場合は集光レンズと集光点の間と集光点とコリメータレンズの間にそれぞれ凹レンズ配置し、共役系の光学システムを構成してもよい。
【0023】
図3(b)に球面レンズに換えシリンドリカルレンズで構成した場合の例を示す。図3(b)(1)は上面図、図3(b)(2)は側面図を示す。
この例では、発振段レーザ(MO)10のOC14のビームを増幅段レーザ(PO)20のリアミラー26に転写した場合の例を示す。
シリンドリカル集光レンズ5dと、シリンドリカルコリメータレンズ5eの配置と結像関係は図2(a)と同じである。図2(a)と異なるのは、集光点では放電方向を含む面に対して線状に集光する。
このようなシリンドリカルの共役系の光学システムのメリットを以下に示す。
(1)集光点が線状であるため、集光点でのエネルギ密度が小さく(ブレークダウンしない)、ビームが不安定にならない。
なお、図3(b)において、集光点に、線状の集光点よりもやや大きなスリットを配置してもよい。スリットを設けた場合でも、集光点でのエネルギ密度が小さいので、スリットが損傷しにくいメリットがある。
(2)放電方向に対してビームの注入位置が変化しないため、注入効率の変動が抑制される。
またこの例では、放電方向の面に対して垂直の面内で転写結像させる例を示したが、これに限定されることなく、放電方向を含む面内で転写結像させる光学システムを構成してもよい。
【0024】
ここで、発振段レーザ(MO)10のOC14から出力されるビームの出射角度が変化しても、増幅段レーザ(PO)20の注入部での注入ビームの位置変化がない理由について説明する。
図4にMOビーム転写器5により発振段レーザ(MO)10のOC14の像を増幅段レーザ(PO)20のリアミラー26(注入位置)へ転写した場合の光路図を示す。
同図の実線で示すMOビームは発振段レーザ(MO)10のOC14から垂直に出力され、MOビーム転写器5の中心軸に入射し、球面集光レンズ5aの中心軸に沿って光が透過し、球面集光レンズ5aの焦点f1の位置で集光する。そして、集光後広がったビームは球面コリメータレンズ5bの中心軸を透過し平行光に変換され、増幅段レーザ(PO)20のリアミラー26に対して垂直に入射してシード光として注入される。
一方、OC14から上の方向にビームが出射された場合の光路を、点線で示す。OC14から上方向に出射した光はMOビーム転写器5の中心軸から上の方向に入射する。そして球面集光レンズ5aの焦点面の位置に集光する。このビームは集光後広がり球面コリメータレンズ5bにより平行光に変換され、下向きに進み、増幅段レーザ(PO)20のリアミラー26の位置に、前記実線で示したシード光注入位置と重なるように入射する。つまり、増幅段レーザ(PO)20のリアミラー26の位置での注入光の角度は変化するが、その位置は変化しない。
【0025】
さらに、OC14から下の方向にビームが出射された場合の光路を破線で示す。OC14から下方向に出射した光はMOビーム転写器5の中心軸から下の方向に入射する。そして球面集光レンズ5aの焦点面の位置に集光する。このビームは集光後広がり球面コリメータレンズ5bにより平行光に変換され、上向きに進み、増幅段レーザ(PO)20のリアミラー26の位置に、前記実線で示したシード光注入位置と重なるように入射する。つまり、増幅段レーザ(PO)20のリアミラー26の位置での注入光の角度は変化するが、その位置は変化しない。
このように、MOビーム転写器5により、発振段レーザ(MO)10のOC14のビームの像を増幅段レーザ(PO)20のリアミラー26(注入位置)に結像させているので、OC14から出力されるビームの出射角度が変化しても、増幅段レーザ(PO)20の注入部での注入ビームの位置変化はない。
【0026】
3.第2の実施例(サイド注入例1)
図5に増幅段レーザ(PO)20の共振器として、ファブリペロ型安定共振器を設置し、共振器のリアミラー26のサイド位置に、発振段レーザ(MO)10のOC14の位置の像を転写する実施例を示す。なお、同図は、増幅段レーザ(PO)20の上面図であり、発振段レーザ(MO)10を含めたレーザ装置の全体構成は、前記図2(a)に示したものと同様である。
本実施例においては、発振段レーザ(MO)10のOC14の位置の像が、図5に示すように、図示しないMOビーム転写器により増幅段レーザ(PO)20のリアミラー26のサイドに結像される。
このシード光は、増幅段レーザ(PO)20の共振器の光軸に対してやや斜めに入射しチャンバ21に入力する。ウインド22aを透過したシード光は、放電電極2aの電極間を透過して増幅され、ウインド22bを透過して部分反射膜がコートされたOC24に入射し、その透過光は、レーザとして出力され、一部は反射し再びチャンバ21に戻され、レーザチャンバ21内で増幅される。そして、高反射膜がコートされたリアミラー26に入射反射して、再びチャンバ21に入射する。この工程を繰り返すことによって、シード光が増幅発振する。なお、以下では、このように共振器ミラーのサイド位置(共振器ミラーの光軸に対して直交する方向にずれた位置)に発振段レーザ(MO)10の出口近傍の像を転写・結像させ、増幅段レーザ(PO)20に注入することを「サイド注入」という。
【0027】
本実施例において、前記図3(b)に示したようなMOビーム転写装置を用い、すくなくとも放電方向に対して垂直面での転写結像の光学システムを構成することによって、以下のメリットが得られる。
(1)図5の方式ではリアミラー26のサイドの幅の狭い領域が増幅段レーザ(PO)20の共振器のシード光の注入に有効なエリアである。
そこで、発振段レーザ(MO)10のOC14の出口のビームを、増幅段レーザ(PO)20のリアミラー26のサイドの位置に転写結像させていることにより、発振段レーザ(MO)10から増幅段レーザ(PO)20にビームが到達したとき、このビームが発振段レーザ(MO)10のOC14の直後のビームの大きさに対して広がることがなくなる。このため、発振段レーザ(MO)10のビームの出射角度の変化があっても、注入ビームの位置も変化せず、シード光の注入効率が高くなると同時に注入効率の変化も少ない。(2)結像したビームの位置が変化しないため、POのリアミラーにケラレたり、リアミラーから離れることによる注入効率の低下が抑制できる。
【0028】
4.第3の実施例(サイド注入例2)
図6は、図5の実施例の変形例である。増幅段レーザ(PO)20の共振器として、ファブリペロ型安定共振器を設置し、共振器のOC24のサイドの高反射部に発振段レーザ(MO)10のOC14の位置の像を転写する実施例を示す。なお、同図は、増幅段レーザ(PO)20の上面図であり、発振段レーザ(MO)10を含めたレーザ装置の全体構成は、前記図2(a)に示したものと同様である。
MOビーム転写器5から出力されたコリメート光は高反射ミラー4bにより反射されリアミラー26のサイドを透過し、チャンバ21のウインド22aから、放電電極空間から外れた空間を透過し、ウインド22bを透過後OC24の高反射膜が形成された部分に入射結像する。この高反射膜を反射した光は、放電電極2aの電極間を透過し、増幅される。そして、高反射膜をコートしたリアミラー26により再びチャンバ21の放電空間内に戻され増幅する。
そしてOC24の部分反射膜が形成された部分で反射した光がフィードバック光としてチャンバ21の放電空間にもどされる。OC24の部分反射膜を透過したレーザ光は反射防止膜を透過して出力レーザ光として出力される。
【0029】
図6の実施例のものは、図5の実施例のものと比べ、さらに以下のメリットが得られる。
(1)図6の方式ではOC24の高反射部の幅の狭い領域がPO共振器のシード光の注入に有効なエリアである。
そこで、発振段レーザ(MO)10のOC14の出口のビームを、増幅段レーザ(PO)20のOC24の高反射膜が形成された部分の位置に転写結像させていることにより、発振段レーザ(MO)10から増幅段レーザ(PO)20に到達したときMOビームが発振段レーザ(MO)10のOC14直後のビームの大きさに対して広がることがなくなる。また、発振段レーザ(MO)10のビームの出射角度の変化があっても、注入ビームの位置も変化しないので、シード光の注入効率が高くなると同時に注入効率の変化も少ない。
(2)さらに、注入光が1往復分増幅されるので、注入効率は図5の実施例よりも高い。 この実施例においても、前記図3(b)に示したようなMOビーム転写装置を用い、すくなくとも放電方向に対して平行面での転写結像の光学システムを構成することによって、前記したメリットが得られる。
【0030】
5.第4の実施例(サイド注入例3:ナイフエッジミラーによる注入)
図7は、図6の実施例の変形例である。
増幅段レーザ(PO)20の共振器として、ファブリペロ型安定共振器を設置し、レーザチャンバ21とOC24の間に配置された、ナイフエッジミラー9の高反射膜が形成された部分に発振段レーザ(MO)10のOC14の位置の像を転写する実施例を示す。なお、同図は、増幅段レーザ(PO)20の上面図であり、発振段レーザ(MO)10を含めたレーザ装置の全体構成は、前記図2(a)に示したものと同様である。
MOビーム転写器5から出力されたコリメート光は高反射ミラー4bにより反射されリアミラー26のサイドを透過し、チャンバ21のウインド22aから、放電電極空間から外れた空間を透過し、ウインド22bを透過後、ナイフエッジミラー9の高反射膜が形成された部分に入射し結像する。なお、ナイフエッジミラー9は、レーザ光の光路に近い側の端部がナイフエッジ状に形成されたミラーである。
ナイフエッジミラー9の高反射膜で反射した光は、放電電極2aの電極間を透過し、増幅される。そして、高反射膜をコートしたリアミラー26により再びチャンバ21の放電空間内に戻され増幅される。そしてOC24の部分反射膜部で反射した光がフィードバック光としてチャンバ21の放電空間にもどされる。OC24の部分反射膜を透過したレーザ光は反射防止膜を透過して出力レーザ光として出力される。
【0031】
この実施例では、共振器への注入有効部(ナイフエッジミラー9の端部)の幅が狭いので、この位置にMOのビームを転写結像させることにより、シード光の注入効率が高くなると同時に注入効率の変化も少ない。
ここで、図6の実施例のメリットに加えて得られる、この実施例によるメリット・デメリットを以下に記述する。
(1)OC24のコーティングとして、部分反射(PR)と反射防止(AR)コートのみのコートとなり図6のOC24より安価となる。さらに、OC24に高反射(HR)部と部分反射(PR)コート部の境界がないため境界部に高エネルギが入射した場合OC24の劣化が少ない。
(2)一方、本実施例では、ナイフエッジミラー9は端部まで高精度な面精度で高反射膜をコートする必要があるため図6の実施例に比べに、製作が困難である。
なお、本実施例においても、図3(b)のようなMOビーム転写装置を用い、すくなくとも放電方向に対して平行な面での転写結像の光学システムを構成することによって、前記したメリットが得られる。
【0032】
6.第5の実施例(リング共振器を用いた例1)
図8に増幅段レーザ(PO)20にリング共振器を設置した場合の第1の例を示す。
図8(a)に本実施例のレーザの側面図を示し、図8(b)に増幅段レーザ(PO)の上面図を示す。なお、前記図1に示したものと同一のものには同一の符号が付されており、図8では、図1に示した各種モニタ、コントローラ等は省略され、図8に示したものの発振段レーザ(MO)10などの動作、MOビーム転写器5の機能等は、前記図1、図2〜図4で説明したのと同様である。
増幅段レーザ(PO)20は、同図(b)に示すようにOC24、高反射ミラー7a,7b,7cからなるリング共振器を備え、発振段レーザ(MO)10からシード光は、高反射ミラー4b,4cを介して部分反射ミラーであるOC24から注入される。
【0033】
発振段レーザ(MO)10から出力したビームは高反射ミラー4aによりMOビーム転写器5に導入される。このMOビーム転写器5は発振段レーザ(MO)10のOC14の位置のビームの像を、高反射ミラー4b及び4cを介して、増幅段レーザ(PO)20のリング共振器の注入位置であるOC24(出力結合ミラー)に結像させる。
そして上述したように増幅段レーザ(PO)20のリング共振器のOC24から、共振器中にシード光が注入される。
OC24を透過したシード光は、図8(b)に示すように、高反射ミラー7aによりレーザチャンバ21の放電空間に傾いて入射され、このシード光に同期して、放電電極2aに電圧が印加され、放電電極2aが放電する。そして放電空間を透過したシード光は増幅され、チャンバ21を透過し2枚の高反射ミラー7b及び7cにより折り返され、再び放電している放電空間に導かれ増幅される。増幅した光の一部はOC24を透過してレーザとして出力し、OC24の反射光は再びリング共振器の中にフィードバックされ共振する。そして、上述したようにOC24からレーザパルスとして出力される。
OC24の反射率が20%〜30%とすると、発振段レーザ(MO)10から出力されたビームの80%から70%がリング共振器内に注入されることになり高い注入効率を得ることができる。
【0034】
図8においては、増幅段レーザ(PO)20のリング共振器のOC24がシード光の注入位置となっている。
したがって、例えば、発振段レーザ(MO)10のOC14と増幅段レーザ(PO)20のリング共振器のOC24との距離が2mの場合、発振段レーザ(MO)10のOC14でのビーム寸法をV方向(幅方向:放電電極の放電方向)12mm、H方向(縦方向:放電方向に垂直な方向)1mm、ビーム広がり角度V方向2mrad、H方向1mradとすると、MOビーム転写装置5を設けない場合、増幅段レーザ(PO)20のリング共振器の注入位置(OC24の位置)ではビーム寸法はV方向16mm、H方向は3mmとなる。
増幅段レーザ(PO)20の注入ビームの有効寸法をV方向12mm、H方向2mmとすると注入に使用できる有効ビームの割合は50%(=[12×2/(16×3)]×100)となる。
また、MOビーム転写装置5を設けない場合、発振段レーザ(MO)10の出射方向が0.5mrad変化すると、増幅段レーザ(PO)20のリング共振器の注入位置(OC24の位置)ではビームの位置が1mm移動することになり、注入効率が変化する。
これに対し、発振段レーザ(MO)10のOC14の位置のビームをMOビーム転写装置5によって増幅段レーザ(PO)20の注入位置に転写結像させて注入することにより、発振段レーザ(MO)10と増幅段レーザ(PO)の距離が大きく離れても、発振段レーザ(MO)10のOC14の直後のビームを増幅段レーザ(PO)20の共振器の注入位置に導入することが可能となる。
【0035】
またこの実施例では、2枚の高反射ミラー7b,7cでレーザチャンバ21にレーザ光を戻したが45度よりも多少小さな角度(数mrad)の全反射プリズムでフレネル反射で戻しても同様の機能を果たすことができる。
以上のように、増幅段レーザ(PO)20にリング共振器を配置し、発振段レーザ10のOC14の位置のビームを増幅段レーザ(PO)20のリング共振器のOC24付近で結像させて注入することによって以下の特別なメリットがある。
(1)増幅段レーザ(PO)20のリング共振器のOC24の位置で注入ビームの位置が変動しないため、注入効率が変化せず、安定した増幅発振が得られる。
(2)図2の実施例(10〜40%)に比べて高い注入効率(70〜80%)を得ることができる。
(3)OC24から注入され、2パスの増幅がなされるため、図2の実施例のようなリアミラーから注入される1パスの増幅に比べて増幅効率が高い。
【0036】
図9は上記第5の実施例の変形例を示す図であり、本変形例は、図8において、発振段レーザ(MO)10のOC14と高反射ミラー4aの間に、ビームエキスパンダ6を設けたものである。
このように、発振段レーザ(MO)と増幅段レーザ(PO)の間の光路中に、少なくとも増幅段レーザ(PO)20の電極2aの放電ギャップ方向にビームを拡大するビームエキスパンダ6を設置することで、発振段レーザ(MO)10の電極間ギャップより増幅段レーザ(PO)20の電極間ギャップが大きくても、増幅段レーザ(PO)20の放電空間をシード光で満たすことができる。
図10に、上記ビームエキスパンダ4の構成例を示す。同図(a)は、両面が0度入射反射防止(AR)膜コートされたシリンドリカル凹凸レンズ4a,4bを用いた例を示し、発振段レーザ(MO)10の出力光はシリンドリカル凹レンズ4aに入射した後、シリンドリカル凸レンズ4bに入射し、増幅段レーザ(PO)20の放電ギャップ方向にビーム径が拡大される。
同図(b)は、両面が0度入射反射防止(AR)膜コートされたシリンドリカル凸レンズ4b,4cを用いた例を示し、同図 (c) は、入射面がS偏光に対してARコートされ、出射面が0度ARコートされたプリズムビームエキスパンダ4d,4eを用いた例を示し、同図(d)は両面がS偏光に対してARコートされたウエッジ基板4f,4gを用いた場合を示し、いずれの構成でも、同図(a)と同様に増幅段レーザ(PO)20の放電ギャップ方向にビーム幅を拡大することができる。
なお、本実施例では、ビームエキスパンダを図8の実施例のものに設けた場合について説明したが、上記実施例に限定されず、他の実施例のレーザ装置に本実施例を適用してもよい。
【0037】
7.第6の実施例(リング共振器を用いた例2)
図11に増幅段レーザ(PO)20にリング共振器を設置した場合の第2の例を示す。なお、同図は、増幅段レーザ(PO)20の上面図であり、発振段レーザ(MO)10を含めたレーザ装置の全体構成は、前記図2(a)に示したものと同様である。
増幅段レーザ(PO)20は、同図に示すようにOC24、高反射ミラー7a,7b,7cからなるリング共振器を備え、発振段レーザ(MO)10からのシード光は、高反射ミラー4b,4cを介してOC24の反射防止(AR)コートされた部分から注入される。このため、注入光が全て増幅段レーザ(PO)共振器20内に注入される。
本実施例では、レーザ装置の光軸中心(例えば放電電極2aの長手方向の軸)に対して、2枚のミラーOC24,高反射ミラー7aとが交差する部分と、高反射ミラー7b,7cとが交差する部分を、上記光軸中心(中心線)に対してそれぞれA,Bだけオフセットさせている。
また、OC24と高反射ミラー7cのミラー面が上記中心線と交わる角度は45度であり、高反射ミラー7aと7cのミラー面が上記中心線と交わる角度は45度より数mrad小さい。
【0038】
上記のようにOC24と高反射ミラー7aのミラー面が交わる部分とレーザ装置の光軸中心との距離Aと、高反射ミラー7b,7cのミラー面が交わる部分とレーザ装置の光軸中心の距離をBとの大きさが等しくならないように共振器ミラーを配置することにより、図11に示すようにリング共振器内でビームが平行に移動しながら共振し、出力レーザ光として出力される。
すなわち、本実施例と前記図10に示したものとの違いは次の通りである。
(1)増幅段レーザ(PO)20の共振器のOC24に、部分反射(PR)コート領域(OCとして機能する領域)と反射防止(AR)コート領域(注入部として機能する領域)を設置したこと。
(2)発振段レーザ(MO)10のOC14の転写像は増幅段レーザ(PO)のOC24の反射防止(AR)コート領域に結像させて、増幅段レーザ(PO)20のリング共振器に注入していること。
(3)共振器を往復する毎に、増幅段レーザ(PO)20内でのビームが1方向に移動する配置としていること。
【0039】
以下この増幅段レーザ(PO)20の動作を説明する。
前述したように発振段レーザ(MO)10のOC14のビームをMOビーム転写器5により増幅段レーザ(PO)20のOC24のARコート部に転写させる。
このビームはほとんど反射することなくOC24を透過し高反射ミラー7aに入射し、そこで反射して増幅段レーザ(PO)20のレーザチャンバ21の放電空間に傾いて入射され、放電電極2aにシード光に同期して、電圧が印加され放電する。
そして放電空間を透過したシード光は増幅され、チャンバ21を透過し2枚の高反射ミラー7b及び7cにより折り返され、再び放電している放電空間に導かれ、増幅される。 そして、ビームは図11に示すように注入部から一定の割合で移動し、OC24の部分反射(PR)コート部に入射し、一部透過して、レーザの出力光(1往復光)となる。
また、一部は反射され再び高反射ミラー7aに入射し、同様に放電空間を1往復目の光路に対して平行移動した光路で透過し、高反射ミラー7b及び7cにより再び放電空間を1往復目の光路に対して平行移動した光路で透過し、1往復目に対して一定の割合で移動してビームは再びOC24の部分反射(PR)コート部に入射する。そして、透過光はレーザ光として出力され、反射光は再び共振器内で共振し、3往復目も同様に往復するたびに光路が平行移動して増幅発振する。
【0040】
本実施例では、注入効率を向上させるために、増幅段レーザ(PO)20のリング共振器のOC24に反射防止(AR)コート領域を設置して、この反射防止(AR)コート領域から発振段レーザ(MO)10のビームを注入しているため、発振段レーザ(MO)10のビーム幅(H方向1mm)が狭い必要がある。
そこで、本発明のように発振段レーザ(MO)10のOC14のビーム(V方向12mm、H方向1mm)をMOビーム転写装置5によって転写結像させることにより、注入位置で(V方向12mm、H方向1mm)のビームとすることができる。
注入有効エリアをV方向12mm、H方向1mmとすると、発振段レーザ(MO)10のビームが100%シード光として注入される。しかも、発振段レーザ(MO)10から出射される方向が変化しても注入ビームの位置は変化しないので有効に注入される。
以上のように、注入効率を約100%とすることができると同時に注入効率の変動が少なく安定となる。
【0041】
本実施例では、上述したメリットに加え以下のメリットが得られる。
すなわち、往復ビーム毎に出力レーザ光のビームが移動するので、増幅段レーザ(PO)レーザ20のリング共振器の光学素子(OC、レーザウインド及び高反射ミラー)におけるレーザ光のエネルギ密度が低減される。そのため、増幅段レーザ(PO)20の光学素子の寿命が長くなる。
なお、上記実施例では、2枚の高反射ミラー7b,7cでレーザチャンバ21にレーザ光を戻したが全反射プリズムでフレネル反射で戻しても同様の機能を果たすことができる。
【0042】
8.第7の実施例(リング共振器を用いた例3)
図12に増幅段レーザ(PO)20にリング共振器を設置した場合の第3の例を示す。 図12(a)は本実施例のレーザの側面図を示し、図12(b)は増幅段レーザ(PO)の上面図を示す。なお、前記図1に示したものと同一のものには同一の符号が付されており、図12に示したものの発振段レーザ(MO)10などの動作、MOビーム転写器5の機能等は、前記図1、図2〜図4で説明したのと同様である。
本実施例は全反射直角プリズムを共振器ミラーとし、このリング共振器内にOC24を配置し、発振段レーザ(MO)10のOC14のビームの像をMOビーム転写器5により、増幅段レーザ(PO)24のリング共振器のOC(出力結合ミラー)24に結像させるようにしたものである。
【0043】
図12において、発振段レーザ(MO)10のOC14のビームを増幅段レーザ(PO)20のOC24上に転写結像させる。このビームは片面に部分反射(PR)膜と片面に反射防止(AR)膜がコーティングされたOC24に入射し、一部反射させ、全反射直角プリズム8a入射する。この全反射直角プリズム8aの入射出射面には反射防止(AR)膜がコーティングされている。
シード光はプリズム8aの2つ面でフレネル反射により全反射し、ウインド22aを透過してレーザチャンバ21に入射する。シード光は放電電極2aに対して、略平行な光軸で透過し、増幅されずにチャンバ21内を透過し、全反射直角プリズム8bに入射する。 シード光はプリズム8bの2面で全反射し再びウインド22bを介して放電電極2aの放電空間の光軸が一致するようにレーザチャンバ21に入射する。
放電電極2aにはシード光に同期して電圧が印加され放電する。そして放電空間を透過したシード光は増幅され、チャンバ21を透過し、再びOC24に入射する。増幅した光の一部はOC24を反射してレーザ光として出力し、OC24の透過光はフィードバック光として再びリング共振器内に戻される。
【0044】
図12の実施例では図8の実施例と同様、増幅段レーザ(PO)20のリング共振器のOC24がシード光の注入位置となっている。
したがって、例えば、発振段レーザ(MO)10のOC14と増幅段レーザ(PO)20のOC24との距離が2mの場合、発振段レーザ(MO)10のOC14でのビーム寸法をV方向12mm、H方向1mm、ビーム広がり角度V方向2mrad、H方向1mradとすると、増幅段レーザ(PO)20のリング共振器の注入位置(OC24の位置)ではビーム寸法はV方向16mm、H方向は3mmとなる。増幅段レーザ(PO)20の注入ビームの有効寸法をV方向12mm、H方向2mmとすると注入に使用できる有効ビームの割合は50%(=[12×2/(16×3)]×100)となる。
また、発振段レーザ(MO)10の出射方向が0.5mrad変化すると増幅段レーザ(PO)20のリング共振器の注入位置(OC24の位置)ではビームの位置が1mm移動することになり、注入効率が変化する。
これに対し、発振段レーザ(MO)10のOCのビームをMOビーム転写装置5によって増幅段レーザ(PO)20の注入位置に転写結像させて注入することにより、発振段レーザ(MO)10と増幅段レーザ(PO)20の距離が大きく離れても、発振段レーザ(MO)10のOC14の直後のビームを増幅段レーザ(PO)20の共振器の注入位置に導入することが可能となる。
【0045】
本実施例では、上述したメリットに加え以下のメリットが得られる。
すなわち、上述したように増幅段レーザ(PO)20が増幅発振し、OC24の反射率が70%〜80%とすると注入効率は70%から80%となり高い注入効率を得ることができる。
また、直角全反射プリズム2個でリング共振器を構成し、OC24をリング共振器の光軸上に設置しているので、リング共振器の光軸のアライメントが容易であり、安定に動作する。
【0046】
9.第8の実施例(リング共振器を用いた例4)
図13に増幅段レーザ(PO)20にリング共振器を設置した、前記図11に示した実施例の変形例である第4の例を示す。
なお、同図は、増幅段レーザ(PO)20の上面図であり、発振段レーザ(MO)10を含めたレーザ装置の全体構成は、前記図12(a)に示したものと同様である。
増幅段レーザ(PO)20は、同図に示すように全反射直角プリズム8a,8bからなるリング共振器を備え、発振段レーザ(MO)10からのシード光は、OC24の高反射(HR)コートされた部分から注入される。このため、注入光が全て増幅段レーザ(PO)共振器20内に注入される。
本実施例では、レーザ装置の光軸中心(例えば放電電極2aの長手方向の軸)に平行な軸に対して、2個の全反射直角プリズム8a,8bの頂角の位置をオフセットさせている。これによりリング共振器内でビームが平行に移動しながら共振し、出力レーザ光として出力される。
【0047】
本実施例と図11の実施例との違いは以下の点である。
(1)増幅段レーザ(PO)20の共振器のOC24に部分反射(PR)コート領域(OC24として機能する領域)と高反射(HR)コート領域(注入部として機能する領域)を設置したこと。
(2)発振段レーザ(MO)10のOC14の転写像は増幅段レーザ(PO)20のOC24の高反射(HR)コート領域に結像させて、増幅段レーザ(PO)20のリング共振器に注入すること。
(3)共振器を往復する毎に、増幅段レーザ(PO)20内でビームが1方向に移動する配置としていること。
【0048】
図13において、発振段レーザ(MO)10のOC14のビームをMOビーム転写器5により増幅段レーザ(PO)20のOC24の高反射(HR)コート部に転写させる。
このビームはOC24の高反射(HR)コート部で全反射し、プリズム8a,8bの2つ面でフレネル反射により全反射する。
そして、シード光はウインド22aを透過して、レーザチャンバ21に入射する。シード光は放電電極2aに対して、略平行な光軸で透過し、増幅されずにチャンバ21内を透過し、全反射直角プリズム8bに入射する。シード光はプリズム8bの2面で全反射し再びウインド22bを介して放電電極2aの放電空間と光軸が一致するようにレーザチャンバ21に入射する。
【0049】
シード光が導入される放電空間は、シード光に同期して電源により印加される電圧により放電電極2a間で放電する。これにより、シード光が増幅されて、ビームはOC24の部分反射(PR)コート部に入射する。OC24での反射光は、出力レーザ光として出力(1往復による増幅光)される。
透過光は、1往復目の光路に対して平行に移動した光路で再び全反射直角プリズム8aによりレーザチャンバ21に戻され、増幅されずにチャンバ21内を透過し、全反射直角プリズム8bに入射する。そして、再びレーザチャンバ21に入射し、1往復目の光路に対して所定の距離だけ平行移動した光路で、放電空間内を透過し、増幅される。
この増幅光は、1往復目に対して一定の割合で移動してビームは再びOC24の部分反射(PR)コート部に入射し、反射光はレーザ光として出力され、透過光は再び共振器内で共振し、3往復目も同様に往復するたびに光路が平行移動して増幅発振する。
【0050】
本実施例では、注入効率を向上させるために、増幅段レーザ(PO)20のリング共振器のOC24に高反射(HR)コート領域を設置して、この高反射(HR)コート領域から発振段レーザ(MO)10のビームを注入しているため、発振段レーザ(MO)10のビーム幅(H方向1mm)が狭い必要がある。
そこで、本発明のように発振段レーザ(MO)10のOCのビーム(V方向12mm、H方向1mm)をMOビーム転写装置5によって転写結像させることにより、注入位置で(V方向12mm、H方向1mm)のビームとすることができる。
注入有効エリアをV方向12mm、H方向1mmとすると、100%発振段レーザ(MO)のビームがシード光として注入される。しかも、発振段レーザ(MO)から出射される方向が変化しても注入ビームの位置は変化しないので有効に注入される。以上のように、注入効率を約100%とすることができると同時に注入効率の変動が少なく安定となる。
本実施例では、上述したメリットに加え以下のメリットが得られる。
すなわち、往復ビーム毎に出力レーザ光のビームが移動するので、増幅段レーザ(PO)20のリング共振器の光学素子(OC、レーザウインド及び高反射ミラー)におけるレーザ光のエネルギ密度が低減される。そのため、増幅段レーザ(PO)20の光学素子の寿命が長くなる。
【0051】
10.第9の実施例(偏光制御による共振器の例)
図14に増幅段レーザ(PO)の共振器として、ファブリペロ型安定共振器を設置し、シード光の注入に偏光素子と波長板を用いた実施例を示す。
図14(a)は本実施例のレーザの側面図を示し、図14(b)は増幅段レーザ(PO)の上面図を示す。なお、前記図1に示したものと同一のものには同一の符号が付されており、MOビーム転写器5の機能等は、前記図2〜図4で説明したのと同様である。
図14において、発振段レーザ(MO)10のLNM3のプリズムビームエキスパンダ3a及びレーザチャンバ11のウインド12a,12bがブリュースタ角で設置されており、紙面に対して垂直な偏波面でレーザ発振する。
この発振段レーザ(MO)10から出力されたレーザ光は偏波面を維持した状態で高反射ミラー4aによりMOビーム転写器5に入射する。
【0052】
この転写器5から出力された光はPS分離膜をコートしたビームスプリッタ(BS)27aに入射する。このBS27aではS偏光(紙面に対して垂直な偏波面)は全反射する。この反射光はλ/4板27bを透過し円偏光に変換される。
この円偏光に変換された発振段レーザ(MO)10のビームは増幅段レーザ(PO)20の共振器のOC24の位置に発振段レーザ(MO)24の像を結像する。
そして、このOC24から増幅段レーザ(PO)20の光共振器中に注入され、チャンバ21の放電電極ギャップ間で透過、増幅され、ウインド22bを透過して高反射膜がコートされたリアミラー26に入反射して、再び増幅段レーザ(PO)20のチャンバ21に入射し、透過、増幅されてOC24により一部が反射されて再び増幅段レーザ(PO)20の共振器内に戻される。
円偏光でOC24から出力したレーザ光は再びλ/4板27bにより、紙面を含む偏波面に変換される。この偏光状態の光はBS27aのP偏光成分の光なのでほとんど全てBS27aを透過し出力レーザ光として取り出される。
ここで、増幅段レーザ(PO)20の共振器内では円偏光で共振するのでウインド22a,22bには反射防止(AR)コートとして、P及びS偏光に対する反射防止膜をコートする必要がある。
【0053】
図14の実施例では増幅段レーザ(PO)20のファブリペロ安定共振器のOC24がシード光の注入位置となっている。
したがって、例えば、発振段レーザ(MO)10のOC14と増幅段レーザ(PO)20の共振器のOC24との距離が2mの場合、発振段レーザ(MO)10のOC14でのビーム寸法をV方向12mm、H方向1mm、ビーム広がり角度V方向2mrad、H方向1mradとすると、増幅段レーザ(PO)20の共振器の注入位置(OC24の位置)では、ビーム寸法はV方向16mm、H方向は3mmとなる。
増幅段レーザ(PO)の注入ビームの有効寸法をV方向12mm、H方向2mmとすると注入に使用できる有効ビームの割合は50%(=[12×2/(16×3)]×100)となる。また、発振段レーザ(MO)10の出射方向が0.5mrad変化すると増幅段レーザ(PO)20の共振器の注入位置(OC24)ではビームの位置が1mm移動することになり、注入効率が変化する。
これに対し、発振段レーザ(MO)のOC14のビームをMOビーム転写装置5によって増幅段レーザ(PO)20の注入位置に転写結像させて注入することにより、発振段レーザ(MO)10と増幅段レーザ(PO)20の距離が大きく離れても、発振段レーザ(MO)10のOC14の直後のビームを増幅段レーザ(PO)20の共振器の注入位置に導入することが可能となる。
【0054】
以上のように発振段レーザ(MO)10のOC14のビームをMOビーム転写装置5によって増幅段レーザ(PO)20の注入位置に転写結像させて注入することにより、発振段レーザ(MO)10と増幅段レーザ(PO)20の距離が大きく離れても、発振段レーザ(MO)10のOC14の直後のビームを増幅段レーザ(PO)20の共振器の注入位置に導入することが可能となる。
本実施例では、上述したメリットに加え以下のメリットが得られる。
すなわち、図2の実施例に比べて増幅段レーザ(PO)20のOC24の反射率が20%から30%で動作するので、注入効率が70%から80%の高い効率を得ることができ、増幅段レーザ(PO)20の共振器のアライメントが容易で安定していることである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の露光装置用狭帯域レーザ装置の基本構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施例の構成を示す図である。
【図3】本発明の実施例のビーム転写器の構成例を示す図である。
【図4】本発明の実施例のビーム転写器の光路図である。
【図5】本発明の第2の実施例(サイド注入例1)の構成を示す図である。
【図6】本発明の第3の実施例(サイド注入例2)の構成を示す図である。
【図7】本発明の第4の実施例(サイド注入例3)の構成を示す図である。
【図8】本発明の第5の実施例(リング共振器の例1)の構成を示す図である。
【図9】本発明の第5の実施例の変形例の構成を示す図である。
【図10】ビームエキスパンダの構成例を示す図である。
【図11】本発明の第6の実施例(リング共振器の例2)の構成を示す図である。
【図12】本発明の第7の実施例(リング共振器の例3)の構成を示す図である。
【図13】本発明の第8の実施例(リング共振器の例4)の構成を示す図である。
【図14】本発明の第9の実施例(偏光制御)の構成を示す図である。
【図15】MOPO方式のレーザ装置の構成例を示す図である。
【図16】発振段レーザ(MO)のビームの進む方向の変化と注入光の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1a,2a 放電電極
3 LMN
4a〜4c 高反射ミラー
5 MOビーム転写器
5a 球面集光レンズ
5b 球面コリメータレンズ
5c ピンホール
5d シリンドリカル集光レンズ
5e シリンドリカルコリメータレンズ
6 ビームエキスパンダ
7a〜7c 高反射ミラー
8a,8b 全反射直角プリズム
9 ナイフエッジミラー
10 発振段レーザ(MO)
11,21 チャンバ
12a,12bウィンドウ部材
22a,22bウィンドウ部材
13,23 スリット
14 OC(出力結合ミラー)
15,25 電源
20 増幅段レーザ(PO)
24 OC(出力結合ミラー)
26 リアミラー
27a ビームスプリッタ(BS)
27b λ/4板
30 エネルギコントローラ
31 レーザコントローラ
32 ガスコントローラ
33 波長及びスペクトル波形コントローラ
34 波長およびスペクトル波形モニタ
35 同期コントローラ
36 露光装置
37,38 パワーモニタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
狭帯域発振段レーザ(MO)と共振器を配置した増幅段レーザ(PO)とからなる注入同期式放電励起レーザ装置であって、
狭帯域発振段レーザ(MO)と上記増幅段レーザ(PO)の間には、
狭帯域発振段レーザ(MO)から放出される前記MOレーザ光の出口近傍のビームを転写して、このビーム転写像を前記共振器内の注入部に結像させる共役系の光学システムを備えた
ことを特徴とする露光装置用狭帯域レーザ装置。
【請求項2】
上記光学システムは、シリンドリカルレンズから構成される共役系であることを特徴とする請求項1に記載の露光装置用狭帯域レーザ装置。
【請求項1】
狭帯域発振段レーザ(MO)と共振器を配置した増幅段レーザ(PO)とからなる注入同期式放電励起レーザ装置であって、
狭帯域発振段レーザ(MO)と上記増幅段レーザ(PO)の間には、
狭帯域発振段レーザ(MO)から放出される前記MOレーザ光の出口近傍のビームを転写して、このビーム転写像を前記共振器内の注入部に結像させる共役系の光学システムを備えた
ことを特徴とする露光装置用狭帯域レーザ装置。
【請求項2】
上記光学システムは、シリンドリカルレンズから構成される共役系であることを特徴とする請求項1に記載の露光装置用狭帯域レーザ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−135631(P2008−135631A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321667(P2006−321667)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】
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