説明

露光装置

【課題】安定したプリント品質を得ることができる露光装置を提供する。
【解決手段】システム制御部45により有機EL発光素子20の発光時間及び発光光量の少なくとも一方を制御して予め定められた複数の露光量でそれぞれ濃度測定用のパッチ画像をカラー感光材料3に露光し、濃度測定部16により、カラー感光材料3に露光された各パッチ画像の濃度を示す濃度情報を取得し、濃度情報から感光材料に露光される画像の階調特性の変化の度合を示す特性値を算出し、ROM45Bに記憶されている発光面積情報に基づき、特性値から有機EL発光素子20の発光領域の面積を導出し、発光領域の面積に基づいて経時的な当該面積の減少によるカラー感光材料3上における光ビームのスポット径の縮小を補正するように光ビームの光軸方向に対する有機EL発光素子20とレンズアレイ7の間の距離及びレンズアレイ7とカラー感光材料3の間の距離の少なくとも一方を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置に係り、特に、画像データに基づいて複数の有機EL発光素子より光ビームを出射させて感光材料に露光を行う露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の発光素子が所定方向に沿って配列された露光ヘッドを備え、当該露光ヘッドと感光材料とを相対的に移動させながら露光ヘッドより感光材料に対して露光を行う露光装置が知られている。
【0003】
この種の露光装置では、各発光素子から出射される光ビームの強度にばらつき(偏差)が発生していると、同じ濃度の画素を記録するために同じ駆動条件(駆動電圧、駆動電流、発光時間等)で各発光素子を発光させたとしても、照射される光量にばらつきが発生してしまい、記録される画像に筋ムラが発生してしまう場合がある。
【0004】
このため、この種の露光装置には、光量検出センサを備え、各発光素子を同一の駆動条件で発光させると共に露光ヘッドに対して光量検出センサを所定方向に移動させ、光量検出センサにより各発光素子から照射される光ビームの光量を測定し、測定結果に基づいて各発光素子から照射される光量を均一化する光量補正係数を求め、感光材料を実際に露光する際に上記光量補正係数で補正した駆動条件で各発光素子を駆動させることにより、露光量の均一化を図っているものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
ところで、露光ヘッドには、感光材料に対して露光を行うための露光光源として、LED(発光ダイオード)、蛍光表示管等の発光素子や、光源から照射された透過光を変調するPLZT(鉛、ランタン、ジルコニウム、及びチタンの複合酸化物)、液晶等の光変調素子を採用しているものがあるが、近年、有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)発光素子を採用しているものがある。
【0006】
しかし、有機EL発光素子は、他の発光素子や光変調素子と比較して累積発光時間による輝度低下が大きいため、長期間にわたり露光ヘッドを駆動させると露光量が低下してプリント濃度が変化してしまう。このため、有機EL発光素子を露光光源として採用する場合は、定期的な光量のばらつきの補正が必須であり、上述した特許文献1のように光量検出センサを露光装置内に搭載して定期的に光量偏差補正を行うことが必要とされている。
【0007】
また、従来より、有機EL発光素子は、駆動していない状態であっても、経時的に有機EL発光素子の発光領域の面積(以下、「発光面積」ともいう。)が減少するエッジグロースと呼ばれる現象が発生することが知られており、このエッジグロースによる発光面積の減少により発光される光量が低下することが問題とされている。
【0008】
そこで、この問題を解決する技術として、特許文献2及び特許文献3には、エッジグロースの発生を抑制することができる有機EL発光素子の構成が開示されており、当該構成の有機EL発光素子をディスプレイ装置に用いた場合には、エッジグロースの発生が問題とならないレベルまで到達している。
【特許文献1】特開平10−185684号公報
【特許文献2】特開2005−5227号公報
【特許文献3】特開2001−57286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献2及び特許文献3の技術を用いたとしても有機EL発光素子の経時的なエッジグロースの発生が完全に解消されたわけではなく、本発明者の研究により、感光材料を露光する露光ヘッドに有機EL発光素子を採用した場合のエッジグロースの影響が明らかとなった。
【0010】
すなわち、エッジグロースが発生して発光面積が減少すると感光材料を露光する露光量が減少することが容易に想到されるが、この露光量の減少は、上述した特許文献1の光量偏差補正により補正することができると考えられる。
【0011】
しかしながら、有機EL発光素子の発光面積の減少による影響は単に露光量の減少のみでなく、ハロゲン化銀感光材料等の感光材料に画像をプリントする場合、発光面積の減少に伴ってプリントの階調特性が軟調化して安定したプリント品質を得ることができない、という問題点があった。
【0012】
図21は、有機EL発光素子の発光面積率が100%、90%、80%、70%、55%の場合でのハロゲン化銀感光材料を露光した場合のプリント階調特性を示すグラフである。なお、この発光面積率とは、有機EL発光素子の初期発光面積を100%としたときの当該初期発光面積に対する経時的に減少した発光面積の割合である。図21では、所定の1つの駆動条件で光量偏差補正を行い、各有機EL発光素子の累積発光時間による輝度低下を補正してある。
【0013】
同図に示されるように、発光面積率が低下するほどプリント階調特性が軟調化していることが分かる。
【0014】
すなわち、有機EL発光素子の構成として特許文献2及び特許文献3の技術を用いることにより、当該有機EL発光素子をディスプレイ装置に採用した場合は、エッジグロースの発生による発光面積の減少が問題とならないレベルとすることができるが、ハロゲン化銀感光材料を露光する露光ヘッドに有機EL発光素子を採用した場合は、発光面積の減少によって感光材料上における光ビームのスポット径が小さくなり、各光ビームで露光されるべき領域において未露光部分の面積が大きくなってしまう。これにより、プリントの階調特性が軟調化して、光量偏差補正を行ったとしても安定したプリント品質を得ることができない、という問題点があった。
【0015】
なお、露光ヘッドには、露光光源としてLED、蛍光表示管、有機EL発光素子等の発光素子や、PLZT、液晶等の光変調素子が採用されているが、有機EL発光素子以外の各素子では発光面積の経時的な減少は確認されておらず、エッジグロースの発生は有機EL発光素子に限定される問題である。
【0016】
本発明は上記問題点を解消するためになされたものであり、安定したプリント品質を得ることができる露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、画像データに基づいて発光する複数の有機EL発光素子と、前記有機EL発光素子より出射される光ビームの光軸上に配置され、前記光ビームを感光材料に結像させる光学系と、前記有機EL発光素子の発光時間及び発光光量の少なくとも一方を制御して予め定められた複数の露光量でそれぞれ濃度測定用のパッチ画像を感光材料に露光する露光制御手段と、前記感光材料に露光された各パッチ画像の濃度を示す濃度情報を取得する取得手段と、前記取得手段により取得された前記濃度情報に基づいて前記感光材料に露光される画像の階調特性を示す特性値を算出する算出手段と、前記特性値と前記有機EL発光素子の発光領域の面積との関係を示す発光面積情報を予め記憶した記憶手段と、前記記憶手段により記憶されている前記発光面積情報に基づき、前記算出手段により算出された前記特性値から前記有機EL発光素子の発光領域の面積を導出する導出手段と、前記導出手段により導出された発光領域の面積に基づいて経時的な当該面積の減少による前記感光材料上における前記光ビームのスポット径の縮小を補正するように前記光ビームの光軸方向に対する前記有機EL発光素子と前記光学系の間の距離及び前記光学系と前記感光材料の間の距離の少なくとも一方を調整する調整手段と、を備えている。
【0018】
請求項1に記載の発明は、画像データに基づいて複数の有機EL発光素子が定電流駆動されることにより発光し、有機EL発光素子より出射される光ビームの光軸上に配置された光学系により、光ビームが感光材料に結像されており、露光制御手段により、有機EL発光素子の発光時間及び発光光量の少なくとも一方を制御して予め定められた複数の露光量でそれぞれ濃度測定用のパッチ画像が感光材料に露光され、取得手段により、感光材料に露光された各パッチ画像の濃度を示す濃度情報が取得され、算出手段により、取得手段により取得された濃度情報に基づいて感光材料に露光される画像の階調特性を示す特性値が算出される。
【0019】
そして、本発明によれば、記憶手段に特性値と有機EL発光素子の発光領域の面積との関係を示す発光面積情報が予め記憶されており、導出手段により、記憶手段により記憶されている発光面積情報に基づき、算出手段により算出された特性値から有機EL発光素子の発光領域の面積が導出され、調整手段により、導出手段により導出された発光領域の面積に基づいて経時的な当該面積の減少による感光材料上における光ビームのスポット径の縮小を補正するように光ビームの光軸方向に対する有機EL発光素子と光学系の間の距離及び光学系と感光材料の間の距離の少なくとも一方が調整される。なお、上記発光面積情報は、特性値と発光面積との関係を示す演算式としてもよく、特性値と発光面積との関係を示すテーブルとしてもよい。発光面積情報を演算式とした場合は、発光面積情報の記憶に必要な記憶領域を少なく抑えることができる。発光面積情報をテーブルとした場合は、発光面積の導出処理を高速化できる。また、上記記憶手段には、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、コンパクトフラッシュ(登録商標)、xDピクチャーカード(登録商標)等の可搬型メモリ、ハードディスク等の固定記憶装置が含まれる。また、上記発光領域の面積は、必ずしも絶対値である必要はなく、発光領域の面積の経時変化率(発光面積率=発光領域の面積/初期の発光領域の面積)であってもよい。
【0020】
このように、請求項1に記載の発明によれば、感光材料に対して予め定められた複数の露光量でそれぞれ濃度測定用のパッチ画像を露光し、当該パッチ画像の濃度を示す濃度情報を取得し、濃度情報に基づいて感光材料に露光される画像の階調特性を示す特性値を算出し、記憶手段に特性値と有機EL発光素子の発光領域の面積との関係を示す発光面積情報を予め記憶させておき、当該発光面積情報に基づき、算出した特性値から有機EL発光素子の発光領域の面積が導出し、導出した発光領域の面積に基づいて経時的な当該面積の減少による感光材料上における光ビームのスポット径の縮小を補正するように光ビームの光軸方向に対する有機EL発光素子と光学系の間の距離及び光学系と感光材料の間の距離の少なくとも一方を調整しているので、プリント階調特性の軟調化を防止することができるため、安定したプリント品質を得ることができる。
【0021】
また、請求項1記載の発明は、請求項2に記載の発明のように、前記算出手段は、前記濃度情報に基づいて所定の第1濃度の露光に必要な第1露光量及び前記第1濃度よりも高濃度の所定の第2濃度の露光に必要な第2露光量を求めて、前記第2濃度と前記第1濃度との間の濃度差と、前記第2露光量と前記第1露光量との間の露光量差と、に基づいて前記特性値を算出するものとしてもよい。なお、特性値を、濃度差を露光量差で割った値としてもよく、露光量差を濃度差で割った値としてもよく、また、その他の各種演算により求まる値としてもよい。
【0022】
また、請求項2記載の発明は、請求項3に記載の発明のように、前記記憶手段は、初期状態の前記有機EL発光素子を用いて前記感光材料に露光された前記各パッチ画像の濃度を示す濃度情報に基づいて前記算出手段により算出された前記特性値を初期特性値として記憶し、前記算出手段は、前記第2濃度と前記第1濃度との間の濃度差と、前記第2露光量と前記第1露光量との間の露光量差と、に基づく値を前記初期特性値で割ることより前記特性値を算出するものとしてもよい。
【0023】
また、請求項1記載の発明は、請求項4に記載の発明のように、前記露光制御手段は、一定の比率で増加するように予め定められた複数の露光量で、露光量の順に番号を対応付けて前記パッチ画像をそれぞれ前記感光材料に露光し、前記取得手段は、前記濃度情報に代えて、所定の第1濃度に最も濃度が近いパッチ画像の番号を示す第1番号情報、及び前記第1濃度よりも高濃度の所定の第2濃度に最も濃度が近いパッチ画像の番号を示す第2番号情報を取得し、前記算出手段は、前記第2番号情報により示される番号と前記第1番号情報により示される番号との差から前記特性値を算出するものとしてもよい。
【0024】
さらに、請求項4記載の発明は、請求項5に記載の発明のように、前記記憶手段は、初期状態の前記有機EL発光素子を用いて前記感光材料に露光された前記各パッチ画像から前記取得手段により取得された前記第1番号情報及び前記第2番号情報に基づいて前記算出手段により算出された前記特性値を初期特性値として記憶し、前記算出手段は、前記第2番号情報により示される番号と前記第1番号情報により示される番号との差から求まる値と、前記初期特性値との差分から前記特性値を算出するものとしてもよい。
【発明の効果】
【0025】
このように、本発明によれば、感光材料に対して予め定められた複数の露光量でそれぞれ濃度測定用のパッチ画像を露光し、当該パッチ画像の濃度を示す濃度情報を取得し、濃度情報に基づいて感光材料に露光される画像の階調特性を示す特性値を算出し、記憶手段に特性値と有機EL発光素子の発光領域の面積との関係を示す発光面積情報を予め記憶させておき、当該発光面積情報に基づき、算出した特性値から有機EL発光素子の発光領域の面積が導出し、導出した発光領域の面積に基づいて経時的な当該面積の減少による感光材料上における光ビームのスポット径の縮小を補正するように光ビームの光軸方向に対する有機EL発光素子と光学系の間の距離及び光学系と感光材料の間の距離の少なくとも一方を調整しているので、プリント階調特性の軟調化を防止することができるため、安定したプリント品質を得ることができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0027】
[第1の実施の形態]
図1には、第1の実施の形態に係る露光装置5の全体構成が示されている。
【0028】
露光装置5は、フルカラーポジ型銀塩写真感光材料であるカラー感光材料3が層状に巻き取られて収容されたペーパマガジン11と、ペーパマガジン11から引き出されたカラー感光材料3に対して露光ヘッド1より光ビームを照射して画像の露光を行なう露光部12と、露光部12により露光されたカラー感光材料3に対して現像処理を行う現像部13と、現像処理後のカラー感光材料3を乾燥させる乾燥部14と、乾燥したカラー感光材料3が排出される排出トレイ15と、カラー感光材料3に記録された画像の濃度を測定する濃度測定部16と、露光装置5の全体の動作を制御する制御部17と、を備えている。
【0029】
なお、本実施の形態に係る濃度測定部16は挿入口16Aに挿入されたカラー感光材料3を搬送して所定の濃度測定位置を通過させ、当該濃度測定位置を通過する際に光を照射し、カラー感光材料3からの反射光を受光素子16Bで受光することによりカラー感光材料3に形成された画像の濃度を測定する。また、本実施の形態に係る露光装置5では、排出トレイ15に排出されたカラー感光材料3をユーザが手動で濃度測定部16の挿入口16Aに挿入する構成としているが、カラー感光材料3が乾燥部14から排出トレイ15へ搬送される搬送経路上に受光素子16Bを設けて、乾燥部14による乾燥処理後にカラー感光材料3に形成された画像の濃度を自動的に測定するものとしても良い。
【0030】
図2には、第1の実施の形態に係る露光部12の概略構成斜視図が示されている。なお、図2では、露光ヘッド1は分解された分解斜視図として示されている。
【0031】
本実施の形態に係る露光ヘッド1は、カラー感光材料3に対して、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の光ビームを照射してカラー画像を記録するものとされている。
【0032】
露光ヘッド1は、有機ELパネル6と、当該有機ELパネル6から出射された光ビームを受ける位置に配置され、カラー感光材料3の上に光ビームを等倍で結像させる屈折率分布型レンズアレイ7と、レンズアレイ7および有機ELパネル6を保持する保持手段8と、有機ELパネル6を封止して大気中の水分から保護するための封止部材60と、を含んで構成されている。
【0033】
有機ELパネル6は、赤色の光ビームを出射するライン状発光素子アレイ6R、緑色の光ビームを出射するライン状発光素子アレイ6G、及び青色の光ビームを出射するライン状発光素子アレイ6Bが副走査方向Yに並べて配設されている。ライン状発光素子アレイ6R、6G、6Bには、それぞれ対応するR、G、Bの光ビームを出射する多数の有機EL発光素子20(図3参照)が主走査方向(矢印X方向)に沿って所定間隔毎に設けられている。
【0034】
レンズアレイ7は、微小な屈折率分布型レンズ7aが副走査方向Yに対して直交する主走査方向Xに多数配列されて構成されたレンズ列が、副走査方向Yに合計2列配設されて構成されており、一方のレンズ列を構成する複数の屈折率分布型レンズ7aが、他方のレンズ列を構成する複数の屈折率分布型レンズ7aの間に位置するように構成されている。
【0035】
図3及び図4には、第1の実施の形態に係る露光ヘッド1の詳細な構成が示されている。なお、図3は、露光ヘッド1の主走査方向Xの断面図であり、図4は、露光ヘッド1の副走査方向Yの断面図である。
【0036】
第1の実施の形態に係る有機ELパネル6は、ガラス等からなる透明基板10上に、副走査方向Yに沿って複数(本実施の形態では480本)の透明陽極21が形成され、当該透明陽極21を含む透明基板10上に発光層を含む有機化合物層22が形成され、当該有機化合物層22上に主走査方向Xに沿って3本の金属陰極23が順次積層されて形成されている。
【0037】
有機ELパネル6は、金属陰極23と透明陽極21とに電圧が印加されると、電圧が印加された両電極の交差部分の有機化合物層22に電流が流れ、そこに含まれる発光層が発光し、光ビームが透明陽極21及び透明基板10を介して出射される。本実施の形態に係る有機ELパネル6では、この発光する交差部分が1個の有機EL発光素子20に対応している。有機EL発光素子20は、発光層を含む有機化合物層22の材料を適宜選択することで所望の色の光ビームを得ることができる。
【0038】
露光ヘッド1は、カラー感光材料3に対して垂直方向でかつレンズアレイ7の焦点距離となる位置に配設されている。また、露光ヘッド1は、図示しないモータの駆動力により垂直方向へ移動可能に構成されている。よって、本実施の形態では、露光ヘッド1の移動によって有機ELパネル6及びレンズアレイ7が共にカラー感光材料3に対して垂直方向へ移動する。
【0039】
また、有機ELパネル6の有機EL発光素子20が形成されている側の面は、乾燥剤61を内包させようにしてステンレス製缶等の封止部材60により覆われている。この封止部材60の縁部と透明基板10とは接着されて、乾燥窒素ガスで置換された封止部材60内に有機EL発光素子20が封止されている。
【0040】
ところで、露光ヘッド1では、各有機EL発光素子20の発光特性ばらつきや、レンズアレイ7の取り付け位置の誤差等により光量偏差が発生している。
【0041】
このため、本実施の形態に係る露光装置5は、露光ヘッド1の各有機EL発光素子20の光量を測光するための測光検査装置50をさらに備えている。
【0042】
図5及び図6には、第1の実施の形態に係る測光検査装置50の詳細な構成が示されている。なお、図5は、測光検査装置50の副走査方向からの正面図であり、図6は、測光検査装置50の上方からの平面図である。
【0043】
測光検査装置50は、受光した光の光量に応じたアナログ信号を出力する受光部51と、受光部51を保持してガイド52に装荷された移動手段53と、受光部51の受光面の一部のみが覗く状態に当該受光面を覆う遮光部材54と、を備えている。
【0044】
本実施の形態に係る露光装置5は、ガイド52が露光ヘッド1より出射される光ビームが照射される範囲を含んで主走査方向Xに沿って設けられている。
【0045】
測光検査装置50は、光量測定を行う場合、ガイド52に沿って光ビームが照射される範囲内を露光ヘッド1と対向するように間欠移動され、光量測定を行わない場合、搬送されるカラー感光材料3と干渉しないガイド52の一端側の退避位置まで退避される。なお、本実施の形態では、各ライン状発光素子アレイ6R、6G、6Bに設けられた有機EL発光素子20の主走査方向Xの並びピッチ(以下、「素子ピッチ」という。)は100μmであり、これに対して移動手段53の間欠移動のピッチ(以下、「測光ピッチ」という)は5μmである。また、遮光部材54は、移動手段53の移動方向と直角な方向(副走査方向Y)に延びる細長いスリット54aを有し、このスリット54aの部分のみにおいて受光部51の受光面が露出している。このスリット54aの幅、すなわち、測光開口長は、上記測光ピッチと同じ5μmである。
【0046】
図7には、第1の実施の形態に係る制御部17の構成が示されている。
【0047】
露光装置5は、露光ヘッド1の各有機EL発光素子20を発光させる駆動電力を供給する駆動回路30と、駆動回路30に発光タイミングなどの各種信号を出力する発光制御部40と、装置全体の制御を司るシステム制御部45と、を備えている。
【0048】
システム制御部45は、CPU45A、ROM45B、RAM45C、図示しない書き換え可能な不揮発性メモリ等を含んで構成されている。システム制御部45は、各種補正データ等を発光制御部40へ出力する。また、システム制御部45は、図示しない外部装置から画像データを受信すると、受信した画像データに対して解像度変換等の所定の画像処理を行い、画像処理後の画像データにより示される画像の主走査方向の各ラインに対応する画像データを、副走査方向の先頭側から順に発光制御部40へ出力して1主走査ライン毎の発光動作を実施させる。この1主走査ラインの画像データには、画素毎にR、G、Bの各色の濃度データが含まれている。
【0049】
発光制御部40は、発光タイミング制御回路41と、階調変換部42と、光量補正回路43と、光量補正係数メモリ44と、階調特性情報記憶部46と、を備えている。
【0050】
階調特性情報記憶部46には、感光材料の種類に応じてR、G、Bの各色別に濃度レベルに応じた目標露光量を定めた複数のプリント階調変換テーブルが予め記憶されている。
【0051】
階調特性情報記憶部46は、システム制御部45より入力されるテーブル指定データにより指定されたプリント階調変換テーブルを階調変換部42へ出力する。このテーブル指定データは、プリントに先立ちシステム制御部45から記録対象とする感光材料の種類に応じて出力される。
【0052】
階調変換部42は、階調特性情報記憶部46より入力されるプリント階調変換テーブルを階調変換用のLUT(ルックアップテーブル)として記憶し、当該LUTに基づいてシステム制御部45より入力される画像データにより示される各画素のR、G、Bの濃度から、当該画素を露光するためのR、G、Bの各色の目標露光量を求めて、画像データを各画素のR、G、Bの各色毎の目標露光量を示す露光量データに変換する。変換された露光量データは光量補正回路43へ出力される。
【0053】
光量補正回路43は、光量補正回路43より入力される露光量データに対して光量偏差補正演算を行ってR、G、Bの色別に各画素の発光時間を示す8ビットの発光時間データを求める。求められたR、G、Bの色別の発光時間データは、各々シリアルデータDATAに変換され、色別に駆動回路30へ順次出力される。なお、本実施の形態では、R、G、Bの順に発光時間データを駆動回路30へ出力するものとする。
【0054】
光量補正係数メモリ44には、ライン状発光素子アレイ6R、6G、6Bにそれぞれ設けられた各色の有機EL発光素子20毎の光量補正係数が記憶されている。上述した光量偏差補正演算は、露光量データにより示される各画素のR、G、Bの目標露光量に対して当該画素の露光で用いられる各々対応する色の光ビームを出射する有機EL発光素子20の光量補正係数を乗算することにより、各画素のR、G、Bの各色毎の発光時間を求める。この光量補正係数は、プリントに先立ち光量補正係数メモリ44にシステム制御部45から予め設定される。
【0055】
発光タイミング制御回路41は、システム制御部45からの制御により各種信号を出力しており、駆動回路30に対して動作を制御するシリアルロードクロック信号SR_CLK及びシリアルロード信号SR_LOADを出力し、また、駆動回路30及び後述する測光タイミング制御回路56に対して発光タイミングを示す発光タイミング信号PWM_CLKを出力するものとされている。
【0056】
駆動回路30は、R、G、Bの各色に対応して3本のうちの何れか1つ金属陰極23を走査電極とし、各透明陽極21をそれぞれ入力された発光時間データにより示される発光時間だけオン状態とする所謂パッシブマトリクス(passive matrix)線順次選択駆動方式により露光ヘッド1を駆動させる。
【0057】
図8には、第1の実施の形態に係る駆動回路30の詳細な構成の一例を示すブロック図が示されている。
【0058】
駆動回路30は、シフトレジスタ33と、8bitPWM回路34と、陽極ドライバ32と、陰極ドライバ31と、ラインカウンタ・デコーダ部37と、タイミング発生回路36と、電流電圧設定部35と、を備えている。なお、駆動回路30は、3本の金属陰極23に各々対応して陰極ドライバ31を3ch備え、480本の透明陽極21に各々対応して陽極ドライバ32を480ch備えているが、図8ではそれぞれ1つのみを図示している。
【0059】
シフトレジスタ33には、シリアルロードクロック信号SR_CLKに同期して各有機EL発光素子20の発光時間を示すシリアルデータDATAが順次入力される。入力された発光時間データは一旦シフトレジスタ33に蓄積される。なお、本実施の形態では、シフトレジスタ33に各ライン状発光素子アレイ6R、6G、6Bの発光素子数480に対応して480素子分の発光時間データが蓄積される。蓄積された480素子分の発光時間データは、シフトレジスタ33にシリアルロード信号SR_LOADが入力されると各発光素子毎の発光時間信号PWM_DATAとして8bitPWM回路34へ出力される。
【0060】
8bitPWM回路34は、8bitPWM回路34より入力される発光時間信号PWM_DATAにより示される480素子分の発光時間データを各々256ステップの発光パルス電圧信号PWMoutに変換する。変換された480素子分の発光パルス電圧信号PWMoutは、発光タイミング信号PWM_CLKの入力に同期して陽極ドライバ32へ出力される。
【0061】
陽極ドライバ32は、各透明陽極21の各々を定電流源と個別に接続させるスイッチング部32Aを備えている。各スイッチング部32Aは、陽極ドライバ32に発光パルス電圧信号PWMoutが入力されると発光パルス電圧信号に応じた時間だけオンされる。
【0062】
一方、タイミング発生回路36は、電流電圧設定部35及びラインカウンタ・デコーダ部37と接続されると共に上述した発光タイミング信号PWM_CLKが入力されている。タイミング発生回路36は、発光タイミング信号PWM_CLKが入力する毎に電流電圧設定部35及びラインカウンタ・デコーダ部37へタイミング信号を出力する。
【0063】
ラインカウンタ・デコーダ部37は、陰極ドライバ31と接続されており、ラインカウンタ・デコーダ部37からタイミング信号が入力すると、陰極ドライバ31の切替を指示する指示信号を出力する。
【0064】
陰極ドライバ31は、3本の金属陰極23の各々を接地させてグランドレベルとするスイッチング部31Aを有している。各スイッチング部31Aは、ラインカウンタ・デコーダ部37から入力される指示信号に基づいて各々が個別にオンされる。
【0065】
電流電圧設定部35は、陽極ドライバ32及び陰極ドライバ31と接続されており、陽極ドライバ32への駆動電流並びに駆動電圧は、電流電圧設定部35により制御されている。電流電圧設定部35は、各陽極ドライバ32へ各々一定量の電流を供給して各有機EL発光素子20を定電流駆動させるように駆動電圧を個別に制御する。
【0066】
本実施の形態に係る駆動回路30では、R、G、Bの各色に対応してスイッチング部31Aが各々オンとされて金属陰極23と接続されている各期間内に、陽極ドライバ32がスイッチング部32Aを各々オンされることにより、当該透明陽極21と金属陰極23との間の有機化合物層22に一定量の電流が流れ、有機化合物層22から光が出射される。
【0067】
一方、露光装置5は、図7に示されるように、測光検査装置50の動作を制御する検査装置制御部55をさらに備えている。
【0068】
検査装置制御部55は、測光検査装置50による測光タイミングを制御する測光タイミング制御回路56と、測光検査装置50から出力されるアナログ信号を増幅する増幅器57と、アナログ信号をデジタルデータに変換するADコンバータ58と、を備えている。
【0069】
検査装置制御部55では、増幅器57により測光検査装置50の受光部51より出力される光量を示すアナログ信号が増幅され、ADコンバータ58によりデジタルの測光データに変換されてシステム制御部45へ出力される。
【0070】
システム制御部45は、ライン状発光素子アレイ6R、6G、6Bに各々設けられた各色の有機EL発光素子20を発光させて測光検査装置50により測光を行って検査装置制御部55より入力される測光データに基づいて、ライン状発光素子アレイ6R、6G、6Bに各々設けられた各色の有機EL発光素子20毎の光量補正係数を算出する。算出された光量補正係数は各有機EL発光素子20と対応させて光量補正係数メモリ44に記憶される。
【0071】
また、システム制御部45は、光量補正回路43、操作パネル等の操作入力部47、及び上述した濃度測定部16と接続されている。
【0072】
システム制御部45は、カラー感光材料3に形成するパッチ画像の複数の露光量をパッチ情報としてROM45Bに予め記憶している。システム制御部45は、有機EL発光素子20の発光面積を導出してプリント階調特性を補正する場合に、ROM45Bに記憶しているパッチ情報の各露光量のパッチ画像を形成する露光量データを生成し、当該露光量データを光量補正回路43へ出力する。この露光量データは、光量補正回路43による光量偏差補正演算によって発光時間データに変換されて駆動回路30へ出力され、カラー感光材料3に対して各パッチ画像の露光が行なわれる。
【0073】
システム制御部45は、濃度測定部16により各パッチ画像の濃度が測定されて濃度データが入力すると後述する階調特性補正処理を行って各有機EL発光素子20の発光面積を導出する。
【0074】
さらに、露光装置5は、有機EL発光素子20の発光面積の変化によるカラー感光材料3上における光ビームのスポット径の変化を補正するために、露光ヘッド1を垂直方向へ移動させる調整量と発光面積との関係を示す調整量情報を記憶した調整量情報記憶部65と、露光ヘッド1の垂直方向への移動を制御する光学位置調整部66と、をさらに備えている。
【0075】
システム制御部45は、導出した有機EL発光素子20の発光面積を示す発光面積情報を調整量情報記憶部65へ出力する。
【0076】
調整量情報記憶部65は、発光面積情報が入力すると、当該発光面積情報により示される発光面積に応じた調整量を光学位置調整部66へ出力する。
【0077】
光学位置調整部66は、調整量が入力すると、図示しないモータを駆動させて露光ヘッド1を垂直方向へ調整量となる位置まで移動させる。
【0078】
次に、第1の実施の形態に係る露光装置5により露光を行う際の全体的な動作について簡単に説明する。
【0079】
システム制御部45は、外部装置から画像データを受信すると、当該画像データにより示される画像の主走査方向の各ラインに対応する画像データを順次に発光制御部40へ出力する。また、システム制御部45は、画像データの出力に同期させて副走査手段4の駆動を制御してカラー感光材料3の副走査方向Yへの搬送を開始させる。
【0080】
発光制御部40では、システム制御部45より画像データが入力すると、階調変換部42において当該画像データにより示される各画素のR、G、Bの濃度をLUTで変換して各画素のR、G、Bの各色毎の目標露光量を示す露光量データを求め、光量補正回路43において当該露光量データに対して光量偏差補正演算を行ってR、G、Bの色別の発光時間データを求めてR、G、Bの順に発光時間データを駆動回路30へ出力する。
【0081】
駆動回路30は、最初に入力されるRの480素子分の発光時間データをシフトレジスタ33に蓄積し、8bitPWM回路34においてRの発光時間データを各々256ステップの発光パルス電圧信号PWMoutに変換する。
【0082】
そして、駆動回路30は、発光タイミング信号PWM_CLKが入力されると、ライン状発光素子アレイ6Rを構成する金属陰極23に接続されたスイッチング部31Aをオン状態とし、当該スイッチング部31Aがオン状態とされている期間内に、陽極ドライバ32が主走査ラインの1,2,3・・・480番目の発光時間データにより示される時間だけ各スイッチング部32Aをオン状態として第1,2,3・・・480の各透明陽極21を定電流源に接続させる。
【0083】
これにより、ライン状発光素子アレイ6Rを構成する各有機EL発光素子20の透明陽極21と金属陰極23との間の有機化合物層22に画像データにより示される画素の濃度に対応したパルス幅の電流が流れ、有機化合物層22から赤色の光ビームが出射される。
【0084】
一方、駆動回路30では、ライン状発光素子アレイ6Rを発光させている間に、Gの480素子分発光時間データをシフトレジスタ33に蓄積させ、8bitPWM回路34においてGの発光時間データを各々256ステップの発光パルス電圧信号PWMoutに変換する。
【0085】
そして、駆動回路30は、発光タイミング信号PWM_CLKが入力されると、ライン状発光素子アレイ6Gを構成する金属陰極23に接続されたスイッチング部31Aをオン状態とし、上述したRの場合と同様に、当該スイッチング部31Aがオン状態とされている期間内に、陽極ドライバ32が主走査ラインの1,2,3・・・480番目の発光時間データにより示される時間だけ各スイッチング部32Aをオン状態として第1,2,3・・・480の各透明陽極21を定電流源に接続させる。
【0086】
これにより、ライン状発光素子アレイ6Gを構成する各有機EL発光素子20の透明陽極21と金属陰極23との間の有機化合物層22に、記録する画素の濃度に対応したパルス幅の電流が流れ、有機化合物層22から緑色の光ビームが出射される。
【0087】
一方、駆動回路30では、ライン状発光素子アレイ6Gを発光させている間に、Bの480素子分発光時間データをシフトレジスタ33に蓄積させ、8bitPWM回路34においてBの発光時間データを各々256ステップの発光パルス電圧信号PWMoutに変換する。
【0088】
そして、駆動回路30は、発光タイミング信号PWM_CLKが入力されると、ライン状発光素子アレイ6Bを構成する金属陰極23に接続されたスイッチング部31Aをオン状態とし、上述したR、Gの場合と同様に、当該スイッチング部31Aがオン状態とされている期間内に、陽極ドライバ32が主走査ラインの1,2,3・・・480番目の発光時間データにより示される時間だけ各スイッチング部32Aをオン状態として第1,2,3・・・480の各透明陽極21を定電流源に接続させる。
【0089】
これにより、ライン状発光素子アレイ6Bを構成する各有機EL発光素子20の透明陽極21と金属陰極23との間の有機化合物層22に記録する画素の濃度に対応したパルス幅の電流が流れ、有機化合物層22から青色の光ビームが出射される。
【0090】
このように有機ELパネル6から出射されたR、G、Bの各色の光ビームは、レンズアレイ7によってカラー感光材料3上に集光され、カラー感光材料3上に主走査ラインを構成する第1,2,3・・・480番目の画素が露光されてフルカラーの主走査ラインが記録される。
【0091】
以下、主走査ライン毎に同様の処理が繰り返されて、カラー感光材料3上に多数の主走査ラインにより構成された2次元カラー画像が記録される。
【0092】
ところで、有機EL発光素子20は、上述したように、累積発光時間による輝度低下が発生し、長期間に渡り露光ヘッド1を駆動させていると各有機EL発光素子20から出射される光ビームの強度にばらつきが発生して記録される画像に筋ムラが発生したり、露光量が低下してプリント濃度が変化してしまう。
【0093】
そこで、第1の実施の形態に係る露光装置5では、定期的に測光検査装置50により各有機EL発光素子20から出射される光ビームの光量を測光して光量の偏差を補正する光量補正係数を導出している。
【0094】
次に、第1の実施の形態に係る露光装置5により光量補正係数を導出する際の全体的な動作について簡単に説明する。
【0095】
システム制御部45は、移動手段53の動作を制御して測光検査装置50をガイド52の一端側の退避位置に位置させる。
【0096】
そして、システム制御部45は、各ライン状発光素子アレイ6R、6G、6Bに設けられた全ての有機EL発光素子20をライン状発光素子アレイ毎に同一発光パルス幅で発光させるために各画素の濃度を同一値とした画像データを発光制御部40へ出力する。このとき、システム制御部45は、光量補正係数メモリ44に記憶される光量補正係数を全て1に設定する。なお、以下では、ライン状発光素子アレイ6Rの各有機EL発光素子20を発光させて測光検査装置50により測光を行う場合を例として説明する。
【0097】
ライン状発光素子アレイ6Rは、全ての有機EL発光素子20が、同一の発光時間データに基づいて一定の電流が供給されることにより、孤立点灯、もしくは一律点灯(1ライン上の全ての発光素子を同時に点灯)する。
【0098】
システム制御部45は、発光する有機EL発光素子20と同期して測光検査装置50を主走査方向へ測光ピッチ間隔で間欠移動させ、停止する毎に受光部51により、レンズアレイ7から出射される光ビームの光量を測定させる。受光部51は、光ビームの光量に応じたアナログ信号を出力する。当該アナログ信号は、増幅器57により増幅され、ADコンバータ58によりデジタルの測光データに変換されてシステム制御部45へ出力される。なお、測光は各ライン状発光素子アレイ毎に行われ、ライン状発光素子アレイ6G、6Bについても同様の手順で各有機EL発光素子20の光量が測定される。
【0099】
図9には、測光データにより示される光ビームのビームプロファイルの一例が示されている。
【0100】
システム制御部45は、入力された測光データに基づいて、各有機EL発光素子20毎に、有機EL発光素子20の素子ピッチと等しい区間(100μm)幅について積分する。具体的に、本実施の形態では、1つの有機EL発光素子20について、その発光素子の中心から主走査方向一方方向に10点、他方方向に10点の合計20点の測光点に関する測定光量を合計し、それに1/20を乗じた平均値(移動平均)を求める。
【0101】
なお、この場合、有機EL発光素子20の中心位置を正解に求める必要は無く、あくまでも上記20個の測定点が当該有機EL発光素子20の中心から左右に10点ずつ分布したものあることが確認できればよい。よって、例えば、光量の極大値が測定された測定点Aと、その測定点の2つの隣接測定点のうち測定光量がより大である方の測定点Bとの間に素子中心が存在するとみなし、測定点Aから素子中心と反対側に10点(測定点Aを含む)および、測定点Bから素子中心と反対側に10点(測定点Bを含む)の合計20点に関する測定光量を移動平均値の算出に供すればよい。
【0102】
なお、1回目の発光パルスの積分値よりも、複数回の発光パルスを積分した方が検出精度を高くすることができる。
【0103】
この積分光量は光ビームの光量に相当する値であるため、システム制御部45は、各有機EL発光素子20の積分光量の同一の値とする光量補正係数を導出し、導出した各有機EL発光素子20毎の補正係数を光量補正係数メモリ44へ出力する。なお、光量補正係数の導出は、ライン状発光素子アレイ6R、6G、6Bについてそれぞれ行われる。
【0104】
本実施の形態に係る露光装置5では、上述したように、光量補正回路43により光量補正回路43より入力される露光量データに対して光量偏差補正演算を行っているため、画像露光時のライン状発光素子アレイ6R、6G、6Bの各有機EL発光素子20の出射される光ビームの光量偏差特性が解消されるように補正され、露光画像に筋ムラが発生することが防止される。
【0105】
ところで、有機EL発光素子20では、上述したように、駆動していない状態であっても発光面積が減少するエッジグロースが発生している。このエッジグロースは、有機EL発光素子20の発光領域20Aの周辺部が絶縁化または高抵抗化して電流が流れなくなる現象であり、図10に示すように、当該周辺部が非発光領域化して発光領域20Aの発光面積が減少する。露光装置5は、この発光面積の減少によってカラー感光材料3上における光ビームのスポット径が小さくなるため、プリント階調特性の軟調化が発生する。
【0106】
図11には、露光量−濃度の関係の一例を示すグラフが示されている。なお、図11は、実線が発光面積減少前の露光量−濃度の関係を示すグラフであり、破線が発光面積減少後の露光量−濃度の特性を関係をグラフである。
【0107】
同図に示されるように、低濃度領域の所定の濃度をDとし、高濃度領域の所定の濃度をDとした場合、発光面積減少前の濃度D、濃度Dに対応した露光量を、E´、E´とし、発光面積減少後の濃度D、濃度Dに対応した露光量を、E、Eとすると、発光面積減少前のグラフにおける露光量E´、露光量E´を結ぶ直線Aの傾きγ´及び発光面積減少後のグラフにおける露光量E、露光量Eを結ぶ直線Bの傾きγは、以下の(1)、(2)式ように表される。
γ´=(D−D)/(logE´−logE´)・・・(1)
γ=(D−D)/(logE−logE)・・・(2)
(1)、(2)式よりγ/γ´を以下の(3)式のように導くことができる。
γ/γ´=(logE´−logE´)/(logE−logE)・・・(3)
図12には、D=1.6、D=0.3の場合の発光面積と傾きγおよびγ/γ´との関係の一例を示すグラフが示されている。なお、図12では、発光面積を、初期の発光面積を1(=100%)とした発光面積率として示している。
【0108】
同図に示されるように、発光面積の低下に伴い、傾きγおよびγ/γ´は単調減少特性を有している。よって、傾きγもしくはγ/γ´を算出することによって発光面積を導出することができる。
【0109】
そこで、第1の実施の形態に係る露光装置5では、エッジグロースの進行状況を検出する場合に、カラー感光材料3に対して各々異なる露光量で複数のパッチ画像を露光し、当該パッチ画像の濃度を測定した濃度データに基づいて階調特性を示す特性値として傾きγを算出し、算出された傾きγから発光面積を導出している。なお、本実施の形態では、傾きγを、濃度差を露光量差で割った値としているが、露光量差を濃度差で割った値としてもよい。
【0110】
次に、第1の実施の形態に係る露光ヘッド1の有機EL発光素子20Aの発光領域の発光面積を導出してプリント階調特性を補正する際の動作について説明する。
【0111】
本実施の形態に係るシステム制御部45のROM45Bには、パッチ情報として、図13に示される、露光量E〜E16の16段階の露光量が記憶されている。
【0112】
システム制御部45は、光量補正回路43へR、G、Bの各色の露光量データを出力すると共に、当該露光量データの出力に同期させて副走査手段4の駆動を制御してカラー感光材料3の副走査方向Yへの搬送を開始させる。
【0113】
光量補正回路43は入力される露光量データに対して光量偏差補正演算を行って発光時間データを求め、480素子分の発光時間データを駆動回路30へ出力し、駆動回路30は発光時間データにより示される時間だけ各有機EL発光素子20を定電流駆動させて光ビームを出射させる。
【0114】
これにより、副走査手段4によりペーパマガジン11から引き出されたカラー感光材料3は、露光ヘッド1と対向する露光位置を通過する際に、各有機EL発光素子20から出射された光ビームにより露光されて各々異なる露光量の複数のパッチ画像が形成される。なお、このパッチ画像の大きさは濃度測定部16で濃度が測定可能なサイズ(例えば、5mm角程度)であれば良い。
【0115】
露光後のカラー感光材料3は現像部13へ送られて現像処理され、その後、乾燥部14に送られて乾燥された後、所望のサイズにカットされて排出トレイ15に排出される。
【0116】
図14には、本実施の形態に係る露光装置5によりカラー感光材料3に形成されるパッチ画像3Aの一例が示されている。なお、図14の各パッチ画像3Aに付された番号の1〜16は露光量E〜E16の各パッチ画像3Aに対応しており、図14ではパッチ画像3A内に番号を付しているが、実際のパッチ画像3Aは対応する番号の露光量Eで露光されて各々異なる濃度の画像となっている。なお、各パッチ画像3Aの隅に対応する番号を記録するものとしてもよい。
【0117】
パッチ画像3Aが形成されたカラー感光材料3は、ユーザによって排出トレイ15から取り出されて濃度測定部16の挿入口16Aへ挿入される。
【0118】
濃度測定部16は、挿入されたカラー感光材料3にプリントされた各パッチ画像3Aの濃度の測定を行ない、各パッチ画像3Aの濃度を示す濃度データを制御部17へ出力する。なお、本実施の形態では、濃度測定部16により測定された濃度がシステム制御部45に入力するものとしたが、これに限定されるものではなく、ユーザが汎用の濃度測定機(例えば、エックスライト(X−RITE)など)を用いて各パッチ画像3Aの濃度を測定し、露光装置5に設けられた操作入力部47から濃度値を入力するものとしてもよい。
【0119】
システム制御部45は、濃度測定部16より濃度データが入力されると、以下の階調特性補正処理を実行する。
【0120】
図15には、第1の実施の形態に係る階調特性補正処理の流れが示されている。なお、図15は、システム制御部45のCPU45Bにより実行される階調特性補正処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはROM45Aの所定領域に予め記憶されている。
【0121】
同図のステップ100では、濃度データにより示される各パッチ画像3Aの濃度から上述した傾きγを算出する。
【0122】
図13には、16個のパッチ画像3Aの濃度を測定した結果の一例が示されている。
【0123】
同図に示されるように、濃度Dに対応する露光量がEとEの間、濃度Dに対応する露光量がEとE10の間となっている。このため、線形補間によって以下の(4)、(5)式ようにlogE、logEを算出する。
【0124】
【数1】

【0125】
【数2】

【0126】
そして、(4)、(5)式を上述した(2)式に代入することにより直線Cの傾きγを算出する。なお、本階調特性補正処理では、線形補間によって傾きγを算出しているが、他の補間方法によってlogE及びlogEを算出するものとしてもよい。また、カラー感光材料3に形成されるパッチ画像3Aの数が十分に多く、分解能が高い場合は(4)(5)式のような線形補間を行なわず、最も濃度が最も近いパッチ画像3Aの露光量をEやEとして傾きγを算出してもよい。
【0127】
ところで、露光量Eは、光量Lと発光時間tの積である。また、有機EL発光素子20では出射される光ビームの光量Lと有機EL発光素子20を流れる電流量Iとの間には比例関係がある。このため、露光量Eは、電流量Iと発光時間tの積に比例する。つまり、E=αIt(α:比例係数)の関係がある。よって、上述した(2)式に代入すると、以下の(6)式が求まる。
γ=(D−D)/(logE−logE)・・・(2)
=(D−D)/log(E/E
=(D−D)/log(αI/αI
=(D−D)/log(I/I)・・・(6)
すなわち、有機EL発光素子20を流れる電流量Iを一定として露光時間tのみ変化させてパッチ画像3Aを形成しても、発光時間tを一定として電流量Iを変化させてパッチ画像3Aを形成しても、傾きγを求めることができる。
【0128】
本実施の形態に係る露光装置5では、各有機EL発光素子20を定電流駆動させて発光時間tを変化させているが、発光時間tを一定として露光量に応じて各有機EL発光素子20を供給する電流量を変化させる構成であっても傾きγを算出することができる。また、露光装置5が露光量に応じて電流量Iと発光時間tを両方変化させる駆動方式であってもよい。
【0129】
また、有機EL発光素子20は、光ビームの光量が変動する要因として、発光面積減少の他に、上述した累積発光時間による輝度の低下もある。しかし、例えば、初期状態の光量L=αIであったものが、累積発光時間が長くなり、発光効率が低下して光量L=βI(β<α)となったとしてαをβに置き換えて(2)式に代入したとしても(6)式は変わらない。すなわち、傾きγの値は累積発光時間による輝度の低下の影響を受けることがなく、傾きγの値は発光面積の減少によって変化する値である。
【0130】
このため、本実施の形態では、有機EL発光素子20の発光面積の導出に傾きγを用いている。
【0131】
次のステップ102では、上記ステップ100で算出された直線Cの傾きγから発光面積を導出する。
【0132】
図12に示したような、直線Cの傾きγおよびγ/γ´は単調減少特性を有している。
【0133】
そこで、本実施の形態では、図12に示したような、傾きγと発光面積の関係を示す発光面積情報を傾きγ−発光面積変換テーブルとして予めシステム制御部45のROM45Bに予め記憶しておく。
【0134】
そして、本ステップ102では、ROM45Bに記憶している傾きγ−発光面積変換テーブルに基づいて傾きγから発光面積を導出する。
【0135】
次のステップ104では、導出した発光面積を示す発光面積情報を調整量情報記憶部65へ出力し、本階調特性補正処理を終了する。
【0136】
図16には、発光面積と露光ヘッド1の垂直方向への調整量の関係の一例が示されている。なお、図16は、発光面積を、初期の発光面積を1(=100%)とした発光面積率として示している。
【0137】
調整量情報記憶部65は、発光面積と調整量の関係を示す調整量情報を発光面積−調整量変換テーブルとして予め記憶しており、発光面積情報が入力すると、当該発光面積情報により示される発光面積に応じた調整量を光学位置調整部66へ出力する。
【0138】
光学位置調整部66は、光学位置調整部66より調整量が入力すると、図示しないモータを駆動させて露光ヘッド1を焦点距離の位置から垂直方向へ調整量となる位置まで移動させる。
【0139】
これにより、有機ELパネル6から出射されてレンズアレイ7により集光された光ビームのカラー感光材料3上におけるスポット径は、露光ヘッド1が焦点距離に位置していた際よりも大きくなる。よって、カラー感光材料3の各光ビームにより露光されるべき領域において未露光部分の面積を減らすことができるためプリント階調特性の軟調化を防止することができる。
【0140】
なお、第1の実施の形態に係る露光装置5は、図4に示されるように、露光ヘッド1を垂直方向へ移動させてレンズアレイ7とカラー感光材料3の間の距離を調整するものとしたが、副走査手段4を垂直方向へ移動させることによりカラー感光材料3を垂直方向へ移動させてレンズアレイ7とカラー感光材料3の間の距離を調整するものとしてもよい。
【0141】
また、図17に示されるように、有機ELパネル6、又はレンズアレイ7及び副走査手段4を垂直方向へ移動させて有機ELパネル6とレンズアレイ7の間の距離を調整するものとしてもよい。なお、有機ELパネル6とレンズアレイ7の間の距離、及びレンズアレイ7とカラー感光材料3の間の距離を共に調整するようにしてもよいが、制御機構が複雑となるため、何れか一方のみとすることが好ましい。
【0142】
このように、第1の実施の形態によれば、画像データに基づいて複数の有機EL発光素子(ここでは、有機EL発光素子20)を発光させ、有機EL発光素子より出射される光ビームの光軸上に配置された光学系(ここでは、レンズアレイ7)により、光ビームを感光材料(ここでは、カラー感光材料3)に結像させており、露光制御手段(ここでは、システム制御部45)により、有機EL発光素子の発光時間及び発光光量の少なくとも一方を制御して予め定められた複数の露光量でそれぞれ濃度測定用のパッチ画像を感光材料に露光し、取得手段(ここでは、濃度測定部16)により、感光材料に露光された各パッチ画像の濃度を示す濃度情報を取得し、算出手段(ここでは、階調特性補正処理のステップ100)により、取得手段により取得された濃度情報に基づいて感光材料に露光される画像の階調特性を示す特性値を算出する。
【0143】
そして、第1の実施の形態によれば、記憶手段(ここでは、ROM45B)に特性値と有機EL発光素子の発光領域の面積との関係を示す発光面積情報が予め記憶されており、導出手段(ここでは、階調特性補正処理のステップ102)により、記憶手段により記憶されている発光面積情報に基づき、算出手段により算出された特性値から有機EL発光素子の発光領域の面積を導出し、調整手段(ここでは、光学位置調整部66)により、導出手段により導出された発光領域の面積に基づいて経時的な当該面積の減少による感光材料上における光ビームのスポット径の縮小を補正するように光ビームの光軸方向に対する有機EL発光素子と光学系の間の距離及び光学系と感光材料の間の距離の少なくとも一方を調整しているので、プリント階調特性の軟調化を防止することができるため、安定したプリント品質を得ることができる。
【0144】
また、第1の実施の形態によれば、算出手段は、濃度情報に基づいて所定の第1濃度(ここでは、濃度D)の露光に必要な第1露光量(ここでは、logE)及び第1濃度よりも高濃度の所定の第2濃度(ここでは、濃度D)の露光に必要な第2露光量(ここでは、logE)を求めて、第2濃度と第1濃度との間の濃度差と、第2露光量と第1露光量との間の露光量差と、に基づいて特性値を算出しているので、累積発光時間による有機EL発光素子の発光領域の輝度の低下による影響を受けることなく、プリント階調特性の軟調化を検出することができる。
【0145】
なお、本実施の形態に係る露光装置5では、図13に示したように、各パッチ画像3Aの露光量の間隔ΔlogEを一定とするようにパッチ画像3Aの露光量を定めているが、間隔ΔlogEを露光量に比例させても良く、また、ランダムに割り振ってもよい。また、濃度Dと濃度Dの値はγを算出するのに十分な精度が出せる量だけ離れていれば良く、本実施の形態で用いた値に限らない。図13に示した直線Cの傾きγが大きくなる濃度値に適宜設定することが好ましい。
【0146】
また、第1の実施の形態では、直線Cの傾きγから発光面積を導出する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、γ/γ´から発光面積を導出してもよい。
【0147】
この場合、発光面積減少前の初期状態の有機EL発光素子20を用いてカラー感光材料3にパッチ画像3Aを形成して濃度の測定を行い、傾きγを算出して発光面積減少前の傾きγ´としてシステム制御部45に備えられた不揮発性メモリに予め記憶させる。そして、露光ヘッド1の発光面積を導出する際に直線Cの傾きγを算出し、記憶している傾きγ´からγ/γ´を算出する。一方、ROM45Bには、図12に示したような、γ/γ´と発光面積の関係を示す発光面積情報をγ/γ´−発光面積変換テーブルとして予め記憶させておく。これにより、γ/γ´−発光面積変換テーブルに基づいて算出されたγ/γ´から発光面積を導出することができる。
【0148】
有機EL発光素子20の発光面積減少前の初期状態での露光ヘッド1のγの値のばらつきが小さければ、γ´を記憶する必要はなく、発光素子面積が減少した時点でのγの値のみでよい。しかし、実際には露光ヘッド1毎に異なる可能性がある。例えば、光ビームを結像させる屈折率分布型レンズアレイ7の焦点方向のずれや固定位置ずれ等により、結像される光ビームの強度が異なるとγ´が変化するので、露光装置5毎にγ´が異なる場合あがる。この場合は、γではなくγ/γ´を用いて発光面積を導出することが望ましい。
【0149】
なお、第1の実施の形態の階調特性補正処理では、発光面積を導出するものとしたが、発光面積は、その絶対値ではなく、例えば、初期発光面積を100%とし、当該初期発光面積に対する経時変化後の発光面積の割合で表す発光面積率を用いてもよい。
【0150】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態では、ユーザが目視にてパッチ画像3Aの濃度を判別し、ユーザが入力した濃度の判別結果に基づいてプリント階調特性を補正する場合について説明する。なお、第2の実施の形態に係る露光装置5の構成は、第1の実施の形態の構成(図1〜図8)と同様であるため、説明を省略する。
【0151】
第2の実施の形態に係るROM45Bには、パッチ情報として、一定の比率で増加するように予め定められた16段階の露光量E〜E16が記憶されている。この露光量E〜E16は、一定の比率で増加しているため、図18に示されるように、露光量間隔ΔlogE(=log(E/En−1))が一定となっている。
【0152】
第2の実施の形態では、発光面積減少前の初期状態の露光ヘッド1を用いて、ROM45Bに記憶されているパッチ情報に基づいて露光量E〜E16の各パッチ画像を形成する露光量データを生成し、当該露光量データに基づいてカラー感光材料3に各パッチ画像3Aを形成する。
【0153】
そして、ユーザは、カラー感光材料3に形成された各パッチ画像3Aから、所定の濃度値D、Dに最も近いパッチ画像3Aを選定する。この選定方法は汎用的な濃度測定器によりパッチ画像3Aの濃度を測定して選定しても良く。また、例えば、図19に示すように、ユーザが、予め用意された濃度値D、Dの比較用パッチ画像3Bと、カラー感光材料3に形成された各パッチ画像3Aとを目視で比較して最も近い濃度のパッチ画像3Aを選定する方法でも良い。
【0154】
図18には、発光面積減少前と発光面積減少後の露光量−濃度の関係の一例を示すグラフが示されている。なお、図18では、実線が発光面積減少前の露光量−濃度の関係を示すグラフであり、破線が発光面積減少後の露光量−濃度の特性を関係をグラフである。
【0155】
図18の実線で示されるように、発光面積減少前の各パッチ画像3Aでは、濃度Dに最も近い濃度は9番パッチ画像3Aの濃度D´であり、濃度Dに最も近い濃度は2番パッチ画像3Aの濃度D´であるため、ユーザは、濃度値Dに最も近いパッチ画像3Aを9番、濃度値Dに最も近いパッチ画像3Aを2番と選定する。
【0156】
第2の実施の形態に係る露光装置5では、ユーザが選定したパッチ画像3Aの番号の差(9−2=7)を求めて、当該差を発光面積減少前のパッチ画像3Aの番号の差として操作入力部47より入力する。
【0157】
システム制御部45では、入力された発光面積減少前のパッチ画像3Aの番号の差を不揮発性メモリに記憶させる。
【0158】
そして、本実施の形態に係る露光装置5は、プリント階調特性を補正する場合にカラー感光材料3に上述した露光量E〜E16の各パッチ画像3Aを形成する。
【0159】
ユーザは、カラー感光材料3に形成された各パッチ画像3Aから、所定の濃度値D、Dに最も近いパッチ画像3Aを選定する。
【0160】
発光面積減少後の各パッチ画像3Aの濃度が、図18の破線で示されるような値の場合、発光面積減少後の各パッチ画像3Aでは、濃度Dに最も近い濃度は13番パッチ画像3Aの濃度D13であり、濃度Dに最も近い濃度は4番パッチ画像3Aの濃度Dであるため、ユーザは、濃度値Dに最も近いパッチ画像3Aを13番、濃度値Dに最も近いパッチ画像3Aを4と選定する。
【0161】
ユーザは選定したパッチ画像3Aの番号の差13−4=9を求めて、当該差を発光面積減少後のパッチ画像3Aの番号の差として操作入力部47より入力する。
【0162】
システム制御部45は、操作入力部47より発光面積減少後のパッチ画像3Aの番号の差が入力すると、以下の階調特性補正処理を実行する。
【0163】
図20には、第2の実施の形態に係る階調特性補正処理の流れが示されている。
【0164】
同図のステップ106では、発光面積減少後のパッチ画像3Aの番号の差と不揮発性メモリに記憶されている発光面積減少前のパッチ画像3Aの番号の差との差分を算出する。
【0165】
次のステップ108では、上記ステップ106で算出された差分から発光面積を導出する。
【0166】
ここで、発光面積減少前の状態でのパッチの番号の差「7」に対して発光面積減少後のパッチ画像3Aの番号の差「9」は、値が2増加している。これは、図18に示されるように、発光面積により階調特性が軟調化して傾きγが低下していることを意味しており、この増加量が大きいほどγが低下して発光面積が減少している。
【0167】
そこで、本実施の形態では、差分と発光面積の関係を示す発光面積情報を差分−発光面積変換テーブルとして予めシステム制御部45のROM45Bに予め記憶しておく。
【0168】
そして、本ステップ108では、ROM45Bに記憶している差分−発光面積変換テーブルに基づいてステップ106で算出された差分から発光面積を導出する。
【0169】
次のステップ110では、導出した発光面積を示す発光面積情報を調整量情報記憶部65へ出力し、本階調特性補正処理を終了する。
【0170】
これにより、調整量情報記憶部65によって、発光面積情報により示される発光面積に応じた調整量が光学位置調整部66へ出力され、光学位置調整部66によって、露光ヘッド1が焦点距離の位置から垂直方向へ調整量となる位置まで移動されるため、プリント階調特性の軟調化を防止することができる。
【0171】
また、第2の実施の形態に係る露光装置5は、濃度測定部16を設ける必要がないため、コストダウンや省電力化ができる。
【0172】
なお、第1の実施の形態と同様に初期状態の露光ヘッド1の傾きγのばらつきが小さければ、発光面積減少前のパッチ画像3Aの番号の差を求める必要なく、発光面積減少後のパッチ画像3Aの番号の差のみで判定を行うことも可能である。
【0173】
また、本実施の形態では、ユーザがパッチ画像3Aの番号の差を求めて、操作入力部47より入力する場合について説明したが、ユーザが操作入力部47より濃度Dに最も近いパッチ画像3Aの番号、及び濃度Dに最も近いパッチ画像3Aの番号を入力するものとし、システム制御部45においてパッチ画像3Aの番号の差を求めるものとしてもよい。
【0174】
また、ユーザが発光面積減少後のパッチ画像3Aの番号の差と不揮発性メモリに記憶されている発光面積減少前のパッチ画像3Aの番号の差との差分を求めて、当該差分を操作入力部47より入力するものとしてもよい。
【0175】
このように、第2の実施の形態によれば、露光制御手段は、一定の比率で増加するように予め定められた複数の露光量で、露光量の順に番号を対応付けてパッチ画像をそれぞれ感光材料に露光し、取得手段(ここでは、操作入力部47)は、濃度情報に代えて、所定の第1濃度に最も濃度が近いパッチ画像の番号を示す第1番号情報、及び第1濃度よりも高濃度の所定の第2濃度に最も濃度が近いパッチ画像の番号を示す第2番号情報を取得し、算出手段は、第2番号情報により示される番号と第1番号情報により示される番号との差から特性値を算出しているので、複雑演算を行なう必要が無く処理が容易となる。また、パッチ画像の濃度を測定する測定手段を設ける必要がないため、コストダウンや省電力化ができる。
【0176】
また、第2の実施の形態によれば、記憶手段は、初期状態の有機EL発光素子を用いて感光材料に露光された各パッチ画像から取得手段により取得された第1番号情報及び第2番号情報に基づいて算出手段により算出された特性値を初期特性値として記憶し、算出手段は、第2番号情報により示される番号と第1番号情報により示される番号との差から求まる値と、初期特性値との差分から特性値を算出しているので、初期状態の露光ヘッドに光量にばらつきがあっても初期状態からの階調特性の変化を求めることができる。
【0177】
なお、第1及び第2の実施の形態の階調特性補正処理では、発光面積を導出するものとしたが、発光面積は、その絶対値ではなく、例えば、初期発光面積を100%とし、当該初期発光面積に対する経時変化後の発光面積の割合で表す発光面積率を用いてもよい。
【0178】
その他、第1及び第2の実施の形態で説明した露光装置5の構成(図1〜図8参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0179】
また、第1及び第2の実施の形態で説明した階調特性補正処理(図15及び図20参照)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0180】
また、図14、図19に示したパッチ画像3Aも一例であり形状、大きさ、配置順等は適宜設定される。
【0181】
さらに、図9に示すビームプロファイルも一例であり、図11〜図13、図18に示す関係図も一例であり、実際の露光ヘッド1の構成に応じて適宜設定される。
【図面の簡単な説明】
【0182】
【図1】第1の実施の形態に係る露光装置の全体構成を示す図である。
【図2】第1の実施の形態に係る露光部の概略構成を示す斜視図である。
【図3】第1の実施の形態に係る露光ヘッドの主走査方向からの断面図である。
【図4】第1の実施の形態に係る露光ヘッドの副走査方向からの断面図である。
【図5】第1の実施の形態に係る測光検査装置の副走査方向からの正面図である。
【図6】第1の実施の形態に係る測光検査装置の上方からの平面図である。
【図7】第1の実施の形態に係る制御部の構成を示すブロック図である。
【図8】第1の実施の形態に係る駆動回路の詳細構成を示すブロック図である。
【図9】露光ヘッドの1個の有機EL発光素子を発光させた際のビームプロファイルの一例を示す図である。
【図10】エッジグロースによる有機EL発光素子の発光領域の現象を示す模式図である。
【図11】第1の実施の形態に係る露光量−濃度の関係の一例を示すグラフである。
【図12】第1の実施の形態に係る発光面積と傾きγおよびγ/γ´との関係の一例を示すグラフである。
【図13】第1の実施の形態に係るパッチ画像の濃度を測定した結果の一例を示すグラフである。
【図14】第1の実施の形態に係るカラー感光材料に形成されるパッチ画像の一例を示す図である。
【図15】第1の実施の形態に係る階調特性補正処理の流れを示すフローチャートである。
【図16】第1の実施の形態に係る発光面積と露光ヘッド1の垂直方向への調整量の関係の一例を示すグラフである。
【図17】露光ヘッドの別な構成例を示す平面図である。
【図18】第2の実施の形態に係る露光量−濃度の関係の一例を示すグラフである。
【図19】第2の実施の形態に係るカラー感光材料に形成されるパッチ画像及び比較用パッチ画像の一例を示す図である。
【図20】第2の実施の形態に係る階調特性補正処理の流れを示すフローチャートである。
【図21】発光面積率変化による階調特性変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0183】
1 露光ヘッド
3 カラー感光材料
5 露光装置
7 レンズアレイ
16 濃度測定部
20 有機EL発光素子
45 システム制御部
45B ROM
47 操作入力部
66 光学位置調整部66

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに基づいて発光する複数の有機EL発光素子と、
前記有機EL発光素子より出射される光ビームの光軸上に配置され、前記光ビームを感光材料に結像させる光学系と、
前記有機EL発光素子の発光時間及び発光光量の少なくとも一方を制御して予め定められた複数の露光量でそれぞれ濃度測定用のパッチ画像を感光材料に露光する露光制御手段と、
前記感光材料に露光された各パッチ画像の濃度を示す濃度情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記濃度情報に基づいて前記感光材料に露光される画像の階調特性を示す特性値を算出する算出手段と、
前記特性値と前記有機EL発光素子の発光領域の面積との関係を示す発光面積情報を予め記憶した記憶手段と、
前記記憶手段により記憶されている前記発光面積情報に基づき、前記算出手段により算出された前記特性値から前記有機EL発光素子の発光領域の面積を導出する導出手段と、
前記導出手段により導出された発光領域の面積に基づいて経時的な当該面積の減少による前記感光材料上における前記光ビームのスポット径の縮小を補正するように前記光ビームの光軸方向に対する前記有機EL発光素子と前記光学系の間の距離及び前記光学系と前記感光材料の間の距離の少なくとも一方を調整する調整手段と、
を備えた露光装置。
【請求項2】
前記算出手段は、前記濃度情報に基づいて所定の第1濃度の露光に必要な第1露光量及び前記第1濃度よりも高濃度の所定の第2濃度の露光に必要な第2露光量を求めて、前記第2濃度と前記第1濃度との間の濃度差と、前記第2露光量と前記第1露光量との間の露光量差と、に基づいて前記特性値を算出する
請求項1記載の露光装置。
【請求項3】
前記記憶手段は、初期状態の前記有機EL発光素子を用いて前記感光材料に露光された前記各パッチ画像の濃度を示す濃度情報に基づいて前記算出手段により算出された前記特性値を初期特性値として記憶し、
前記算出手段は、前記第2濃度と前記第1濃度との間の濃度差と、前記第2露光量と前記第1露光量との間の露光量差と、に基づく値を前記初期特性値で割ることより前記特性値を算出する
請求項2記載の露光装置。
【請求項4】
前記露光制御手段は、一定の比率で増加するように予め定められた複数の露光量で、露光量の順に番号を対応付けて前記パッチ画像をそれぞれ前記感光材料に露光し、
前記取得手段は、前記濃度情報に代えて、所定の第1濃度に最も濃度が近いパッチ画像の番号を示す第1番号情報、及び前記第1濃度よりも高濃度の所定の第2濃度に最も濃度が近いパッチ画像の番号を示す第2番号情報を取得し、
前記算出手段は、前記第2番号情報により示される番号と前記第1番号情報により示される番号との差から前記特性値を算出する
請求項1記載の露光装置。
【請求項5】
前記記憶手段は、初期状態の前記有機EL発光素子を用いて前記感光材料に露光された前記各パッチ画像から前記取得手段により取得された前記第1番号情報及び前記第2番号情報に基づいて前記算出手段により算出された前記特性値を初期特性値として記憶し、
前記算出手段は、前記第2番号情報により示される番号と前記第1番号情報により示される番号との差から求まる値と、前記初期特性値との差分から前記特性値を算出する
請求項4記載の露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図20】
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【図21】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−163984(P2007−163984A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362274(P2005−362274)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】