説明

露光装置

【課題】画素ピッチを小さくした場合や、薄膜トランジスタの回路規模が大きくなった場合や、大きな駆動電流を必要とする場合であっても、必要十分な発光領域(面積)を確保し、高い露光能力を有する露光装置を提供すること。
【解決手段】ガラス基板と、ガラス基板の同一基板平面上に形成され所定の方向に列状に配置された複数の発光素子と、発光素子の個々に対して一対一に形成され発光素子を駆動する薄膜トランジスタ(TFT)22とを有し、発光素子が配置された群としての領域(発光素子群)35と、薄膜トランジスタが配置された群としての領域(TFT群)36とを、基板平面の水平方向に分離して配置する、構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小発光素子をライン状に配置して構成される発光素子アレイからなる露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
帯電した感光体を画像情報に応じて露光して静電潜像を形成し、トナーにより現像し、感光体上に現像されたトナー像を記録紙に転写、加熱定着して画像を得る電子写真装置がある。
【0003】
その露光装置として、発光ダイオード(Light Emitting Diode)や有機EL(ElectroLuminescence)材料を用いて構成した発光素子をライン状に配置した発光素子アレイを用いて各発光部を個別に点灯(オン・オフ)制御し感光体上に静電潜像を形成する方式と、レーザダイオードを光源とした光ビームをポリゴンミラーと呼ばれる回転多面鏡を介して感光体上に走査させて静電潜像を形成する方式が知られている。
【0004】
一般に、LEDや有機EL材料を用いた発光素子アレイを構成要素として含む露光装置は、感光体のごく近傍で各発光素子を選択的に点灯して光を感光体上に照射するので、これらを搭載したプリンタは、レーザプリンタにおけるポリゴンミラーのような可動部がなく信頼性が高く、また、レーザダイオードの光を感光体に導く光学系や、光の経路となる大きな光学的空間が不要で装置を小型化することが可能である。
【0005】
特に、発光素子として有機EL素子を搭載した露光装置は、ガラス等の基板上に薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下「TFT」と称する)から成るスイッチング素子で構成される駆動回路と有機EL素子を一体として形成できるため、発光素子として所謂LEDヘッドと比較して構造、製造工程がシンプルであり、発光素子としてLEDを搭載した露光装置と比較して更なる小型化、低コスト化を実現できる可能性がある。
【0006】
さて、有機EL素子をTFTで駆動する構成は、特にディスプレイ分野において技術開発が進んでおり、例えば(特許文献1)に開示される画素構成が知られている。この画素構成を図10及び図11に示す。
【0007】
図10及び図11において、1はガラス基板、2は多結晶シリコンTFT、2a、2bはそれぞれ多結晶シリコンTFT2におけるソース領域およびドレイン領域、3はゲート電極、3aはゲート電極母線、4はSiO2などの絶縁層、5は多結晶シリコンTFT2のソース領域2aに接続する信号電極母線、6は多結晶シリコンTFT2のドレイン領域2bに接続するITO等から成る画素電極(陽極)、7は電荷輸送層、8はEL発光層、9はたとえばAg、Mgなどから成る対向電極層(陰極)である。なお、図10)(b)は、図10に示した構成を平面的に示したものである。
【0008】
図11において、画素電極6は多結晶シリコンTFT2の領域を取り囲むように形成される。多結晶シリコンTFT2や信号電極母線5の領域は、画素電極(陽極)6と対向電極(陰極)8に挟まれておらず、発光に寄与しない。また金属の信号電極母線5や多結晶シリコンTFT2は光を透過しないため、これらの領域は発光に供せずかつ光も遮蔽する領域である。
【0009】
このように従来の画素構成では、マトリクス状に配設されたゲート電極母線3aと信号電極母線5に囲われた領域(以下、「画素領域」と称する)の内部に有機EL素子等の発光に基づく発光領域と、発光素子を駆動するための多結晶シリコンTFT2で形成されたスイッチングトランジスタを共に含む画素構成となっている。
【特許文献1】特開平4−125683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一般に電子写真装置等に用いられる露光装置では、ディスプレイと比較して発光素子を小さく形成せねばならない。露光装置では微小な発光素子を所定の解像度に応じたピッチで一方向に列状に配置する必要があり、600dpi(dot per inch)の解像度を有する露光装置では発光素子を42.3μmのピッチで配置することになる。
【0011】
昨今、露光装置の高解像度化に対する要求が大きくなってきており、例えば2400dpiの解像度を達成する場合には、発光素子ピッチは約10μmとなり、このときの発光素子サイズは必然的に発光素子ピッチ未満となる。
【0012】
しかしながら、(特許文献1)の「有機EL素子等の発光に基づく発光領域と、発光素子を駆動するための多結晶シリコンTFT2で形成されたスイッチングトランジスタを共に含む画素構成」を電子写真等に用いられる露光装置に応用する場合、発光素子サイズが小さいために、画素領域における多結晶シリコンTFT2で形成されたスイッチングトランジスタの占める割合(すなわち発光に寄与しない領域の割合)が相対的に大きくなり発光領域(面積)が小さくなる。前述のごとく多結晶シリコンTFT2等が形成された領域は光を透過しないため、結果的に露光量が低下するという課題がある。
【0013】
さらに、(特許文献1)に開示された例は駆動回路という点では非常にシンプルな構成であり、実際はTFTの閾値ばらつきを補償する等して発光素子の駆動電流値を一定にする必要があり、例えば電流プログラムのような付加回路が画素領域に存在する場合は、回路規模が増大し問題はより深刻となる。
【0014】
また、電子写真装置に用いる露光装置においては、光源と電子写真感光体の間に正立等倍、すなわちイメージ伝送系のレンズアレイ等から成る光学系を配置する必要があり、この光学系の伝送効率の悪さにも起因して、通常のディスプレイと比較して、発光素子をより高輝度で発光させる必要がある。
【0015】
発光素子として有機EL素子を用いた場合、発光素子における有機材料そのものの特性や発光層の膜厚等、構造に起因した発光波長の違いや、電子写真用感光体の感度の違い、さらには電子写真装置の帯電、現像条件が複雑に絡み合うため一概には言えないが、一般に赤色系(発光波長分布のピークが660nm程度)の場合で比較すると、ディスプレイではせいぜい数100cd/m2の発光輝度を要するのに対し、電子写真装置に用いる露光装置では最低でも5000cd/m2以上、さらに安定した静電潜像を形成するためには10000cd/m2程度の発光輝度とすることが望ましい。
【0016】
このような超高輝度を実現するには、発光素子をより大きな電流で駆動させる必要があるが、このためにはTFTで形成されたスイッチングトランジスタのサイズを大きくする必要がある。(特許文献1)のごとく「有機EL素子等の発光に基づく発光領域と、発光素子を駆動するための多結晶シリコンTFT2で形成されたスイッチングトランジスタを共に含む画素構成」では、上述した画素ピッチの制約があるため、実現が困難である。
【0017】
本発明は上述の課題を解決するためになされたもので、画素ピッチを小さくした場合や、薄膜トランジスタの回路規模が大きくなった場合や、大きな駆動電流を必要とする場合であっても、必要十分な発光領域(面積)を確保し、高い露光能力を有する露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の露光装置は、基板の同一基板平面上に形成され所定の方向に列状に配置された複数の発光素子と、発光素子の個々に対して一対一に形成され発光素子を駆動する薄膜トランジスタとを有し、発光素子が配置された群としての領域と、薄膜トランジスタが配置された群としての領域とを、基板平面の水平方向に分離して配置した構成としたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、発光素子が配置された群としての領域外に薄膜トランジスタが形成されるため、薄膜トランジスタを形成する際のサイズ的制約がなくなり、発光素子の画素ピッチを小さくした場合、すなわち発光素子サイズを小さくした場合や、薄膜トランジスタの回路規模が大きくなった場合や、大きな駆動電流を必要とする場合であっても、容易に薄膜トランジスタを形成でき、電子写真装置に用いる露光装置として、必要十分な発光輝度を確保することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の露光装置は、基板と、基板の同一基板平面上に形成され所定の方向に列状に配置された複数の発光素子と、発光素子の個々に対して一対一に形成され発光素子を駆動する薄膜トランジスタと、を有し、発光素子が配置された群としての領域と、薄膜トランジスタが配置された群としての領域とを、基板平面の水平方向に分離して配置した露光装置である。
【0021】
これにより、発光素子の画素ピッチを小さくした場合、即ち発光素子サイズを小さくした場合や、薄膜トランジスタの回路規模が大きくなった場合や、大きな駆動電流を必要とする場合であっても、発光素子が配置された群としての領域以外に薄膜トランジスタを形成することができるため、必要十分な発光領域を確保することができる。
【0022】
より具体的には、基板上に形成された薄膜トランジスタに接続された金属電極と、金属電極に接続された透明電極と、金属電極及び透明電極を介して薄膜トランジスタによって駆動される発光素子と、を有し、金属電極によって発光素子が配置された群としての領域と、薄膜トランジスタが配置された群としての領域とを、基板平面の水平方向に分離するように構成してもよい。
【0023】
これにより、発光素子の画素ピッチを小さくした場合、即ち発光素子サイズを小さくした場合や、薄膜トランジスタの回路規模が大きくなった場合や、大きな駆動電流を必要とする場合であっても、発光素子が配置された群としての領域以外に薄膜トランジスタを形成することができるため、必要十分な発光領域を確保することができる。
【0024】
このとき金属前記が、発光素子が放出する光を遮蔽するように構成することが望ましい。
【0025】
これによって、均一な発光光量を得ることができる。
【0026】
また、薄膜トランジスタに接続された金属電極と、金属電極に接続された透明電極と、透明電極上に形成され透明電極のサイズを規制する絶縁層と、金属電極及び透明電極を介して薄膜トランジスタによって駆動される発光素子と、を有し、絶縁層によって、発光素子が配置された群としての領域と、薄膜トランジスタが配置された群としての領域とを、基板平面の水平方向に分離するように構成してもよい。
【0027】
これにより、発光素子の画素ピッチを小さくした場合、即ち発光素子サイズを小さくした場合や、薄膜トランジスタの回路規模が大きくなった場合や、大きな駆動電流を必要とする場合であっても、発光素子が配置された群としての領域以外に薄膜トランジスタを形成することができるため、必要十分な発光領域を確保することができる。
【0028】
このとき絶縁層が、発光素子の発光領域を制限するように構成することが望ましい。
【0029】
これによって、均一な発光光量を得ることができる。
【0030】
このとき絶縁層として無機物を使用することが望ましい。
【0031】
これによって、絶縁層による段差を小さくすることができ、有機EL素子の発光光量の均一化や形成歩留を向上させることが可能となる。
【0032】
また、発光素子が配置された群としての領域と、薄膜トランジスタが配置された群としての領域を分離する方向は、基板平面の水平方向であって、かつ複数の発光素子が配列された方向(主走査方向)と直交する方向(副走査方向)とすることが望ましい。
【0033】
これによって発光素子が配置された群としての領域と、薄膜トランジスタが配置された群としての領域を容易に分離することが可能となる。
【0034】
また、発光素子としては有機EL素子を用いることが望ましい。
【0035】
これによって、TFTの形成と有機EL素子の形成工程が一連の製造プロセスで行えるため、低コスト化を図ることができる。
【0036】
また、発光素子を所定の方向に600dpi以上の密度で複数配置して、発光素子アレイを形成することが望ましい。
【0037】
これによって、高解像度の画像再現ができるため、高画質の露光装置を得ることができる。
【0038】
また、薄膜トランジスタは多結晶シリコン(ポリシリコン)によって構成することが望ましい。
【0039】
これによって、基板サイズが小さくなるため、露光装置の製造コストを低くすることができる。
【0040】
また、薄膜トランジスタは非結晶シリコン(アモルファスシリコン)によって構成してもよい。
【0041】
これによって、製造プロセスのコストを低く抑えて、露光装置の製造コストを低くすることができる。
【0042】
また、発光素子の発光光は前記基板を通過して出力されるように構成することが望ましい。
【0043】
これによって、発光素子の封止が簡易となるため、信頼性が高く低価格の露光装置の提供が可能となる。
【0044】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0045】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における露光装置の画素構成の断面図である。
【0046】
図1において、20は例えばホウケイ酸ガラス等で構成されたガラス基板である。発光素子や駆動回路が発生する熱を急速に放熱する必要がある場合は、基板として例えば石英等を使用してもよい。
【0047】
21はベースコート層であり、例えばSiNとSiO2を積層することで構成される。ベースコート層21の上には多結晶シリコン(ポリシリコン)から成るTFT22が形成されている。現時点で多結晶シリコンは5MHz程度の駆動周波数で負荷を駆動することが可能であり、更に1.5μm〜4.5μm程度の比較的細かなデザインルールが適用できることから基板を小さくすることができる。
【0048】
実施の形態1においてはTFT22として多結晶シリコンを用いているが、非結晶シリコン(アモルファスシリコン)を用いてもよい。非結晶シリコンの場合、デザインルールや駆動周波数の点で多結晶シリコンと比べて不利になるが、製造プロセスが安価でありコストメリットがある。
【0049】
23は例えばSiO2からなるゲート絶縁層であり、TFT22とMoなどの金属で構成されたゲート電極24を所定の間隔で離間、絶縁する。
【0050】
25は例えばSiO2およびSiNを積層することで構成される中間層である。中間層25はゲート電極24を被うとともに、この表面に沿ってAlなどの金属で構成されるソース電極26およびドレイン電極27を支持している。ソース電極26およびドレイン電極27は中間層25およびゲート絶縁層23に設けられたコンタクトホールを介してTFT22に接続されており、ソース電極26とドレイン電極27の間に所定の電位差を付与した状態でゲート電極24に所定の電位を付与することで、TFT22はスイッチングトランジスタとして動作する。
【0051】
28はSiN等で構成されたTFT表面層でありソース電極26を完全に被うと共に、ドレイン電極27の一部にコンタクトホール29を形成する。30はTFT表面層28上に形成された透明電極(ホール注入電極)であり、実施の形態1ではITO(錫ドープ酸化インジウム)を用いている。透明電極としては、ITOの他にIZO(亜鉛ドープ酸化インジウム)、ZnO、SnO2、In23等を用いることができるがITO、IZOが望ましい。透明電極は、蒸着法等によっても形成できるが、スパッタ法により形成することが望ましい。この透明電極30はコンタクトホール29にてドレイン電極27と接続されている。
【0052】
以上説明した構造によってTFT基板31が構成されている。
【0053】
ガラス基板平面上にTFT22等を積層して作成されたTFT基板31に対して、TFT22が形成された面と同一面に、例えばスピンコート法や蒸着法によって有機EL層32が形成される。このとき透明電極30と有機EL層32の間に、例えば金属酸化物などによってホール注入層を設けてもよい。33は例えばAl等の金属を蒸着法等によって形成した陰極である。このとき有機EL層32と陰極33の間に電子注入層として、例えばK、Li、Na、Mg、La、Ce、Ca、Sr、Ba、Al、Ag、Ln、Sn、Zn、Zrのごとき金属元素単体、または安定性を向上させるためにこれらを含む2成分若しくは3成分の合金、又は金属元素単体を例えば有機EL層32に近い方から例えばCa、Alの順に積層する構造を用いることが望ましい。また有機EL材料としては、低分子系の材料を用いてもよいし、高分子系の材料を用いてもよい。
【0054】
以上説明した構造、工程によってTFT基板31上に有機EL素子が形成される。TFT22は個々の有機EL素子に対して1:1の関係で形成されており電気的には所謂アクティブマトリクスを構成する。各有機EL素子のソース電極26を正極とし、ソース電極26と陰極33間に所定の電位差を設け、更にゲート電極24を所定の電位に制御することで、電流がソース電極26、TFT22、ドレイン電極27、透明電極30、有機EL層32、陰極33に流れ有機EL層32が発光する。有機EL層32から放出された光は透明電極30、中間層25、ゲート絶縁層23、ベースコート層21およびガラス基板20を透過して図示しない電子写真感光体を露光する。このように有機EL層32が形成された基板面と反対側の基板面から光を取り出す構成とすることで、有機EL層32の封止が容易になる。
【0055】
図2は、本発明の実施の形態1における露光装置の画素構成の上面図であり、本実施の形態の露光装置の発光素子および駆動回路の配置について詳細に説明する。
【0056】
図2において、一点鎖線Aは図1(断面図)の断面位置に対応している。また、図2は図1における有機EL層32および陰極33を除去した状態、即ち透明電極30が目視される状態を示している。またTFT22およびドレイン電極27を破線で示しているが、これはTFT22およびドレイン電極27が、透明電極30またはTFT表面層28によって被覆されていることを示している。
【0057】
露光装置は電子写真装置において感光体上に静電潜像を形成する手段である。露光装置は複数の微小な発光素子を主走査方向に一列ないしは複数列配置した発光素子アレイを有する。この発光素子を画像データに基づく所定のタイミングで個別に点灯、消灯制御することで、感光体上に静電潜像を形成する。
【0058】
図2において、主走査方向とは発光素子が列状に配置される方向であり、実施の形態1では微小画素の配置ピッチを主走査方向に600dpi(dot per inch)に設定している。即ち各発光素子の配置ピッチは42.3μmである。42.3μmの配置ピッチ内における発光素子どうしの間隔は7μmに設定されている。透明電極30を形成する際に露光パターンとして5μmの間隔を設けて露光した場合、露光部を除去するポジ型のプロセスでは残パターン(この場合は透明電極)のエッジ部は約1μm程度縮むため、透明電極間には7μmの間隔が設けられることになる。プロセスによるパターンの収縮を考慮にいれることで、所望のサイズの透明電極30を得ることができる。
【0059】
このように発光素子は主走査方向に発光素子群35を構成している。
【0060】
個々の透明電極30はその裏側で、例えばAlで構成され、透明電極30に対して1:1に設けられたドレイン電極27と接続されており、更にドレイン電極27は、実際はTFT表面層28により目視できないTFT22と接続されている。ドレイン電極27は図1にも示すように、TFT22から副走査方向に所定の長さ延伸され、その端部でコンタクトホール29を介して透明電極30と接続されている。これと同一の構造が主走査方向に複数設けられ、TFT22は主走査方向にTFT群36を構成している。
【0061】
発光素子群35とTFT群36はガラス基板平面の水平方向(より具体的には副走査方向)に完全に分離して配置され、発光素子群35に含まれる透明電極30とTFT群36に含まれるTFT22の間は金属製のドレイン電極27にて接続されている。このように発光素子群35の領域とTFT群36の領域は完全に分離し、副走査方向に長くTFT22を形成することができる。
【0062】
これによって必要な有効発光領域Bを確保しつつ主走査方向の解像度が1200dpiや2400dpiといった、高解像度の露光ヘッドを容易に実現できる。また発光光量を高精度に制御するために、アクティブマトリクス駆動回路を構成する薄膜トランジスタの回路規模が大きくなった場合や、発光輝度を大きくするために大電流駆動を必要とする場合、即ちトランジスタサイズが大きくなった場合であっても、副走査方向にTFT22の配置領域を確保することができる。
【0063】
さて、ドレイン電極27は前述したように金属であるため、一定の厚みがあれば光を完全に遮蔽する。これを利用して実施の形態1ではドレイン電極27によって副走査方向の有効発光領域(有機EL層の出力光のうち露光に寄与する光を出力する領域)を規制している。
【0064】
以降ドレイン電極27によって有効発光領域を規制する構成を詳細に説明する。
【0065】
一般的には、有機EL層(図示せず)をスピンコート法や蒸着法で形成し、その上に陰極(図示せず)を蒸着法によって形成する場合、有機EL材料は基板全面に塗布され、陰極は金属マスクを用いて形成されるため、透明電極30が形成された部分には必ず有機EL層と陰極が形成され、透明電極30が形成された部分は必ず発光する(発光領域37)。
【0066】
この発光する部分にはコンタクトホール29が含まれるが、コンタクトホール29は完全に平坦ではなく、有機EL材料の塗布むら等に起因して発光光量むらが発生することがある。そこでドレイン電極27の主走査方向におけるサイズを透明電極30と略同一とし、更に副走査方向にコンタクトホール29を越えるサイズに設定した。前述のようにドレイン電極27は金属であるため、ドレイン電極27の真上において有機EL層32は発光するものの、ドレイン電極27に遮光に必要な厚みを与えれば、有機EL層32から放出された光はドレイン電極27によって遮られる。これにより副走査方向の発光領域37はドレイン電極27によって規制され、有効発光領域Bを得ることができる。この有効発光領域Bには前述したコンタクトホール29は含まれず、均一な露光が可能となる。
【0067】
実施の形態1ではドレイン電極27の主走査方向のサイズを透明電極と略同一としたが、ドレイン電極27の主走査方向のサイズを透明電極30の主走査方向サイズを越えるように設定することが望ましい。これによりドレイン電極27による遮光が確実に行えるとともに、ドレイン電極27と透明電極30の位置合わせに求められる精度を緩和することができる。
【0068】
薄膜トランジスタをアクティブマトリクス駆動回路として有する露光装置においては、解像度を向上させたり、素子の駆動電流を増加したり、駆動精度を向上しようとするとTFT22のサイズが制約を受けるが、上記説明したように、ドレイン電極27を副走査方向に延伸し、かつドレイン電極27によって発光領域37に由来する発光光の一部を遮光することで、発光光量むらを抑制しつつ、非常に簡易な構成にて有効発光領域BとTFT22のオーバーラップを解消し、発光素子群35の領域とTFT群36の領域を完全に分離することができる。
【0069】
なお、発光素子群35の領域とTFT群36の領域を離間する間隔は、少なくとも有効発光領域BのTFT22側で生起する光が、TFT22に直接入射しない距離とすることが望ましい。これによってTFT22の上部に遮光層等を設けることなく、特に非結晶シリコンTFTにおいて問題となる光誘起電流の影響を低減することが可能である。
発光素子群35の領域とTFT群36の領域を完全に分離するによって、光誘起電流の影響を低減する効果は、実施の形態1に限らず以降の全ての実施の形態について共通の効果である。
【0070】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2における露光装置画素構成の断面図であり、図4は同上面図である。
【0071】
実施の形態1はドレイン電極27によって発光領域を制限して、発光素子群35の領域と、TFT群36の領域を分離するようにしたものであるが、実施の形態2は透明電極30上に絶縁層を形成して同様の効果を得るようにしたものである。
【0072】
以下、図3と図4を用いて実施の形態2に係る露光装置の発光素子および駆動回路の配置について説明する。なお、実施の形態1との共通部分については説明を省略する。
【0073】
図3および図4において、40は例えば膜厚300nm程度のSiNから成る絶縁層である。絶縁層40はTFT表面層28上に形成され、透明電極30の一部を被うことで発光領域37のサイズ、形状、および形成位置を規制する。この絶縁層40により透明電極30上に成膜される有機EL層32に対するホール注入領域が規制され、絶縁層40が被った領域は有機EL層32が発光しなくなる。この結果副走査方向における有効発光領域Bのサイズは発光領域37と等しくなる。一方、主走査方向における発光領域サイズは透明電極30によって規制される。
【0074】
絶縁層40としてレジン等の透明な有機物を使用することは可能であるが、一般に有機物によって絶縁膜を形成した場合は膜厚が数μm程度となり、有機EL層32との接触角等の問題から発光不良を生ずるおそれがある。このため絶縁層40としては、より薄く形成可能な無機物を用いることが望ましい。
【0075】
絶縁層40はコンタクトホール29が配置されている部分を完全に被覆しているため、この領域の有機EL層32は発光しない。従って実施の形態2においても、有効発光領域Bにおいて実施の形態1で説明したコンタクトホール29の段差に起因する発光光量むらは発生しない。
【0076】
以上説明したように、TFT表面層28および透明電極30上に形成した絶縁層40で透明電極30のサイズ等を規制することで、発光領域37の位置を規制し、発光光量むらを抑制しつつ、非常に簡易な構成にて有効発光領域BとTFT22のオーバーラップを解消し、発光素子群35の領域とTFT群36の領域を完全に分離することができる。
【0077】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3における露光装置の画素構成の上面図である。実施の形態3に係る画素構成の断面図は実施の形態2と共通である。
【0078】
実施の形態2では、主走査方向については透明電極30によって、副走査方向については絶縁層40によって発光領域37の位置を規制するものであるが、実施の形態3は主走査方向、副走査方向ともに絶縁層40によって発光領域37の位置を規制するものである。
【0079】
以下、図3と図5を用いて実施の形態3に係る露光装置の発光素子および駆動回路の配置について説明する。なお、実施の形態2との共通部分については説明を省略する。
【0080】
図3および図5において、40は例えば膜厚300nm程度のSiNから成る絶縁層である。絶縁層40は所謂フォトエッチングによって形成され、フォトマスクの形状によって様々なパターンを作成することができる。
【0081】
実施の形態3は、TFT表面層28および透明電極30上に絶縁層40を形成するにあたり、透明電極30に対して、有機EL層32とのコンタクト部分を楕円形状のパターンとして規定したものである。実施の形態2で説明したごとく、絶縁層40が配置された領域の有機EL層32は発光しない。
【0082】
上述の如く、この形状を形成する自由度は非常に高いため、有機EL層とのコンタクト部分は、楕円形状のみならず円形であってもよいし、レンズアレイ等の光学系を通過した後の光量分布を均一化するために、例えば楕円形状パターンの中央部に島状に絶縁層40を設け、発光領域37の中央部のみを光らせなくする(このとき発光領域はリング状になる)こともできる。
【0083】
絶縁層40はコンタクトホール29が配置されている部分を完全に被覆しているため、この領域の有機EL層32は発光しない。従って実施の形態3においても、発光領域37において実施の形態1で説明したコンタクトホール29の段差に起因する発光光量むらは発生しない。
【0084】
以上説明したように、TFT表面層28および透明電極30上に形成した絶縁層40で透明電極30のサイズ等を規制することで、発光領域37の位置を規制し、発光光量むらを抑制しつつ、非常に簡易な構成にて有効発光領域とTFT22のオーバーラップを解消し、発光素子群35の領域とTFT群36の領域を完全に分離することができる。
【0085】
更に絶縁層40によって発光領域37の形状を任意の形状にできるため、電子写真の特性に合わせた光スポットを有する露光装置を提供することができる。
【0086】
(実施の形態4)
図6は、本発明の実施の形態4における露光装置の画素構成の断面図であり、図7は同上面図である。
【0087】
実施の形態3では、主走査方向、副走査方向ともに絶縁層40によって発光領域37の位置を規制するものであるが、実施の形態4は、主走査方向においては透明電極30によって、副走査方向においてはその一方を透明電極30によって、他方を絶縁層40によって発光領域37のサイズ、形状、および形成位置を規制するものである。
【0088】
以下、図6と図7を用いて実施の形態4に係る露光装置の発光素子および駆動回路の配置について説明する。なお、これまでの説明した実施の形態との共通部分については説明を省略する。
【0089】
図6および図7において、40は例えば膜厚300nm程度のSiNから成る絶縁層である。絶縁層40はTFT表面層28上に形成され、コンタクトホール29の側の透明電極30を被うことで発光領域37のサイズ、形状、および形成位置を規制する。これにより、透明電極30上に成膜される有機EL層32に対するホール注入領域が規制され、絶縁層40が被った領域は有機EL層32が発光しなくなる。この結果副走査方向における有効発光領域Bのサイズは発光領域37と等しくなる。
【0090】
副走査方向においてコンタクトホール29と反対側に位置する部分については、透明電極30によって発光領域37のサイズおよび形成位置を規制する。同様に主走査方向における発光領域サイズも透明電極30によって規制される。
【0091】
絶縁層40はコンタクトホール29が配置されている部分を完全に被覆しているため、この領域の有機EL層32は発光しない。従って実施の形態4においても、有効発光領域Bにおいて実施の形態1で説明したコンタクトホール29の段差に起因する発光光量むらは発生しない。
【0092】
実施の形態4では副走査方向のコンタクトホール29が配置されている側に対して、主走査方向に一直線の絶縁層40を設け、コンタクトホール29と反対側に位置する部分については透明電極30によって有効発光領域Bを決定するようにしたが、コンタクトホール29側を図5に示すように曲線に沿って絶縁層40を設け、コンタクトホール29と反対側の透明電極30を同様に曲線に沿う形状に形成することも可能である。
【0093】
以上説明したように、TFT表面層28および透明電極30上に形成した絶縁層40で透明電極30のサイズを規制することで、発光領域37のサイズ等を規制し、発光光量むらを抑制しつつ、非常に簡易な構成にて有効発光領域BとTFT22のオーバーラップを解消し、発光素子群35の領域とTFT群36の領域を完全に分離することができる。
【0094】
(実施の形態5)
図8は、本発明の実施の形態5における露光装置の画素構成の断面図であり、図9は同上面図である。図9において、一点鎖線Cは図8(断面図)の断面位置に対応している。
【0095】
これまで説明してきた実施の形態では、主走査方向に単一の素子列を配置したものについて説明したが、実施の形態5では素子列を複数とした場合について説明する。
【0096】
以下、図8と図9を用いて実施の形態5に係る露光装置の発光素子および駆動回路の配置について説明する。なお、これまで説明してきた実施の形態との共通部分については説明を省略する。
【0097】
実施の形態5では、43は第1の発光素子群であり、主走査方向に所定のピッチで配置されている。45は第2の発光素子群であり、第1の発光素子群43と同一の配置ピッチで、第1の発光素子群43と並列して主走査方向に配置されている。ただし第1の発光素子群43と第2の発光素子群45の素子配置は、互いに1/2素子分だけずらして配置され、所謂千鳥状の配列となっている。これによって例えば第1の発光素子群43の発光素子を600dpiで配置したとすると、二列全体として1200dpiに相当する露光解像度を得ることができる。
【0098】
第1の発行素子群43および第2の発光素子群45を一つの発光素子群とみなしたとき、その両側には発光素子群に沿って、それぞれ第1のTFT群44および第2のTFT群46が配置されている。
【0099】
発光素子群とTFT群を分離する具体的な構成については、実施の形態2で詳細に述べたものと同様であり、絶縁層40によって発光領域37のサイズ、形状、および形成位置を規制することで、第1の発光素子群43と第1のTFT群を副走査方向に分離することができる。また第2の発光素子群45と第2のTFT群46も同様に分離される。
【0100】
実施の形態5は、実施の形態2で説明した絶縁層40によって有効発光領域Bを規制する構成に基づき、発光素子群を複数列化したものであるが、その他実施の形態1、実施の形態3、実施の形態4で示した構成に従っても、容易に複数列化が果たせることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明に係る露光装置は、必要とされる発光素子サイズを確保しつつ主走査方向の解像度が1200dpiや2400dpiといった、高解像度の露光ヘッドを容易に実現できる。また、発光光量を高精度に制御するためにアクティブマトリクス駆動回路を構成する薄膜トランジスタの回路規模が大きくなった場合や、発光輝度を大きくするために大電流駆動を必要とする場合、即ちトランジスタサイズが大きくなった場合であっても、副走査方向にTFT22の配置領域を確保することができるところから、例えば粉体または液体トナーを用いる電子写真方式による、プリンタ、複写機、ファクシミリ装置、およびオンデマンド印刷機などに搭載される露光ヘッドへの利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の実施の形態1における露光装置の画素構成の断面図
【図2】本発明の実施の形態1における露光装置の画素構成の上面図
【図3】本発明の実施の形態2における露光装置の画素構成の断面図
【図4】本発明の実施の形態2における露光装置の画素構成の上面図
【図5】本発明の実施の形態3における露光装置の画素構成の上面図
【図6】本発明の実施の形態4における露光装置の画素構成の断面図
【図7】本発明の実施の形態4における露光装置の画素構成の上面図
【図8】本発明の実施の形態5における露光装置の画素構成の断面図
【図9】本発明の実施の形態5における露光装置の画素構成の上面図
【図10】従来の画素構成を示す図
【図11】従来の画素構成を平面的に示す図
【符号の説明】
【0103】
20 ガラス基材
21 ベストコート層
22 TFT
24 ゲート電極
26 ソース電極
27 ドレイン電極
28 TFT表面層
29 コンタクトホール
30 透明電極
31 TFT基板
32 有機EL層
33 陰極
35 発光素子群
36 TFT群
37 発光領域
40 絶縁層
45 第2の発光素子群
46 第2のTFT群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板の同一基板平面上に形成され所定の方向に列状に配置された複数の発光素子と、前記発光素子の個々に対して一対一に形成され前記発光素子を駆動する薄膜トランジスタと、を有し、
前記発光素子が配置された群としての領域と、前記薄膜トランジスタが配置された群としての領域とを、前記基板平面の水平方向に分離して配置したことを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記薄膜トランジスタに接続された金属電極と、前記金属電極に接続された透明電極と、前記金属電極及び透明電極を介して前記薄膜トランジスタによって駆動される発光素子と、を有し、
前記金属電極によって、前記発光素子が配置された群としての領域と、前記薄膜トランジスタが配置された群としての領域とを、前記基板平面の水平方向に分離することを特徴とする請求項1記載の露光装置。
【請求項3】
前記薄膜トランジスタに接続された金属電極と、前記金属電極に接続された透明電極と、前記透明電極上に形成され透明電極のサイズを規制する絶縁層と、前記金属電極及び透明電極を介して前記薄膜トランジスタによって駆動される発光素子と、を有し、
前記絶縁層によって、前記発光素子が配置された群としての領域と、前記薄膜トランジスタが配置された群としての領域とを、前記基板平面の水平方向に分離することを特徴とする請求項1記載の露光装置。
【請求項4】
前記金属電極が、前記発光素子が放出する光を遮蔽することを特徴とする請求項2に記載の露光装置。
【請求項5】
前記絶縁層が、前記発光素子の発光領域を制限することを特徴とする請求項3記載の露光装置。
【請求項6】
前記発光素子が配置された群としての領域と、前記薄膜トランジスタが配置された群としての領域とを分離する方向は、前記基板平面の水平方向であって、かつ複数の発光素子が配列された方向(主走査方向)と直交する方向(副走査方向)であることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1に記載の露光装置。
【請求項7】
前記発光素子は有機EL素子であることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1に記載の露光装置。
【請求項8】
前記発光素子を所定の方向に600dpi(dot per inch)以上の密度で複数配置して、発光素子アレイを形成したことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1に記載の露光装置。
【請求項9】
前記薄膜トランジスタは多結晶シリコンによって構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1に記載の露光装置。
【請求項10】
前記薄膜トランジスタは非結晶シリコンによって構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1に記載の露光装置。
【請求項11】
前記基板が透明であり、前記発光素子の発光光は前記基板を通過して出力されることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1に記載の露光装置。
【請求項12】
前記絶縁層が無機物であることを特徴とする請求項3に記載の露光装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2007−19384(P2007−19384A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−201520(P2005−201520)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】