露光装置
【課題】光配向膜における配向方向の異なる配向処理を1回の工程で実現可能にして配向処理工程を短縮する。
【解決手段】電気光学結晶材料から成る複数の光変調素子8を一定の配列ピッチで少なくとも一列に並べて有する空間光変調手段3と、前記各光変調素子8を個別に駆動して、前記空間光変調手段3に対向して配置され表面に光配向膜を塗布した基材7上に照射する偏光の偏光面の回転角度を制御する制御手段6と、前記空間光変調手段3を前記基材7に対して前記光変調素子8の並び方向と交差する方向に相対移動させる移動手段5と、を備えたものである。
【解決手段】電気光学結晶材料から成る複数の光変調素子8を一定の配列ピッチで少なくとも一列に並べて有する空間光変調手段3と、前記各光変調素子8を個別に駆動して、前記空間光変調手段3に対向して配置され表面に光配向膜を塗布した基材7上に照射する偏光の偏光面の回転角度を制御する制御手段6と、前記空間光変調手段3を前記基材7に対して前記光変調素子8の並び方向と交差する方向に相対移動させる移動手段5と、を備えたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光配向膜に偏光を照射して配向させる露光装置に関し、詳しくは、光配向膜における配向方向の異なる配向処理を1回の工程で実現可能にして配向処理工程を短縮しようとする露光装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
クレジットカード、有価証券、及び証明書類のような情報記録媒体の偽造を防止する技術として、目視では印刷画像を視認することができず、偏光板を重ねることでパターン状の潜像が見えるようにした認証媒体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような認証媒体は、潜像となる模様の内部と周辺とで配向方向が異なるように配向処理された光配向膜上に液晶モノマーを塗布した後、適切に選択された波長の非偏光を全体に照射して液晶を架橋し、液晶分子を光配向膜の配向方向に向けることによって作ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2002−530687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような従来の配向処理は、潜像と同じパターンを形成したポジ型フォトマスクを介して偏光面が一定方向に向いた偏光を光配向膜に照射して露光した後、上記模様の明暗が反転して形成されたネガ型フォトマスクを介して偏光面が上記偏光と異なる偏光を上記光配向膜に照射して露光するものであった。
【0006】
したがって、偏光方向を変えた露光パターニングが必要であるため、ポジ型フォトマスクによる露光とネガ型フォトマスクによる露光の2回の露光を行わなければならいこと、及び上記2回の露光における露光パターンの重ね合わせ精度を高精度に確保しなければならないこと等により、配向処理が複雑になるという問題があった。それ故、配向処理工程を短縮することができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、光配向膜における配向方向の異なる配向処理を1回の工程で実現可能にして配向処理工程を短縮しようとする露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明による露光装置は、電気光学結晶材料から成る複数の光変調素子を一定の配列ピッチで少なくとも一列に並べて有する空間光変調手段と、前記各光変調素子を個別に駆動して、前記空間光変調手段に対向して配置され表面に光配向膜を塗布した基材上に照射する偏光の偏光面の回転角度を制御する制御手段と、前記空間光変調手段を前記基材に対して前記光変調素子の並び方向と交差する方向に相対移動させる移動手段と、を備えたものである。
【0009】
このような構成により、移動手段で電気光学結晶材料から成る複数の光変調素子を一定の配列ピッチで少なくとも一列に並べて有する空間光変調手段を、該空間光変調手段に対向して配置され表面に光配向膜を塗布した基材に対して上記光変調素子の並び方向と交差する方向に相対移動させながら、制御手段で各光変調素子を個別に駆動して基材に照射する偏光の偏光面の回転角度を制御して光配向膜を露光する。
【0010】
また、前記各光変調素子は、前記空間光変調手段の前記相対移動方向に一定距離だけ離隔して互い違いに二列に並べて設けられている。これにより、空間光変調手段の基材に対する相対移動方向に一定距離だけ離隔して互い違いに二列に並べて設けられた複数の光変調素子で光配向膜を露光する。
【0011】
さらに、前記各光変調素子を、その光軸に直交する横断面形状が前記空間光変調手段の前記相対移動方向に長い略長方形状に形成すると共に、前記基材に照射する偏光の、前記相対移動方向の幅を一定幅に制限する光ビーム整形手段をさらに備えたものである。これにより、光ビーム整形手段で基材に照射する偏光の、上記空間光変調手段の基材に対する相対移動方向の幅を一定幅に制限する。
【0012】
そして、前記光ビーム整形手段は、前記光変調素子の並び方向に長い細長状の開口を形成した遮光マスクである。これにより、光変調素子の並び方向に長い細長状の開口を形成した遮光マスクで基材に照射する偏光の、上記空間光変調手段及び基材の相対移動方向の幅を一定幅に制限する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、光配向膜における配向方向の異なる配向処理を1回の工程で行なうことができる。したがって、配向処理工程を短縮することができる。また、電気光学結晶材料から成る光変調素子の駆動電圧を制御することにより、光配向膜に照射する偏光の偏光面の回転角度を任意に制御することができる。したがって、配向方向の異なる複数の配向パターンを1回の配向処理工程で形成することができ、複数の潜像を記録した認証媒体を容易に作ることができる。
【0014】
また、請求項2に係る発明によれば、先行して形成された複数の露光ピクセル間の未露光部分を補完して露光することができ、緻密な配向パターンを形成することができる。したがって、複雑な形状の潜像も容易に形成することができる。
【0015】
さらに、請求項3に係る発明によれば、光ビーム整形手段により露光ピクセルの大きさを容易に規制することができる。
【0016】
そして、請求項4に係る発明によれば、光ビーム整形手段をフォトリソグラフィ技術を利用して作ることができ、露光ピクセルの大きさを高精度に規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による露光装置の実施形態を示す概略構成図である。
【図2】上記露光装置に使用する空間光変調手段の要部拡大平面図である。
【図3】上記空間光変調手段の光変調素子組立体の要部を示す三面図であり、(a)は平面図、(b)は右側面図、(c)は(a)のO−O線断面図である。
【図4】上記空間光変調手段の動作を示す説明図であり、(a)はオフ状態を示し、(b)はオン状態を示している。
【図5】上記露光装置に使用する光ビーム整形手段の遮光マスクを示す平面図である。
【図6】上記露光装置に使用する制御手段の概略構成を示すブロック図である。
【図7】潜像の一例を示す平面図である。
【図8】上記空間光変調手段の底面図であり、各光変調素子を透過した偏光の偏光面の一状態を示す。
【図9】先行して形成された複数の露光ピクセル間の未露光部分を補完して露光することを示す説明図である。
【図10】本発明の露光装置を使用して行った光配向膜の配向処理後の状態を示す説明図である。
【図11】潜像を記録した認証媒体を示す説明図であり、(a)は目視例であり、(b)は偏光板を重ねた例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明による露光装置の実施形態を示す概略構成図である。この露光装置は、電気光学結晶材料から成る複数の光変調素子により光配向膜を塗布した基材に偏光を照射して光配向膜を露光するもので、ステージ1と、レーザ光源2と、空間光変調手段3と、光ビーム整形手段4と、移動手段5と、制御手段6とを備えて構成されている。
【0019】
上記ステージ1は、上面1aに光配向膜を塗布した基材7を位置決めして載置し、例えば吸着して保持するものである。
【0020】
上記ステージ1の上方には、レーザ光源2が設けられている。このレーザ光源2は、光配向膜に偏光レーザ光を照射して光配向膜を一定方向に配向させるもので、例えば直線偏光レーザであり、偏光板と組合せて使用するならランダム偏光レーザであってもよい。又は、円偏光レーザであってもよい。以下の説明においては、レーザ光源2が直線偏光レーザの場合について説明する。
【0021】
上記ステージ1とレーザ光源2との間には、空間光変調手段3が配設されている。この空間光変調手段3は、透過光により所定のパターンを生成して基材7上に照射するもので、図2に示すように偏光の偏光面を回転制御する例えばLiNbO3等の電気光学結晶材料11から成る複数の光変調素子8をステージ1の上面1aに平行なXY平面内に配列ピッチP(図3参照)で互い違いに二列に並べて設けたものであり、図1に示すように、後述の移動手段5によって上記ステージ1の上面1aに平行にX軸方向にて矢印A方向に移動するようになっている。この場合、各光変調素子8は、その光軸に直交する横断面形状がその並び方向と交差する方向に長い略長方形状に形成されると共に、図3に示すようにその並び方向と交差する方向に対して角度θだけ傾けて形成されている。そして、各光変調素子8の並び方向がY軸方向に合致するようにしてステージ1上に対向配置されている。なお、上記二列の光変調素子8のうち、図2に示す矢印A方向に向かって前側に位置する一列の光変調素子8を第1の素子列9といい、矢印A方向に向かって後側に位置する一列の光変調素子8を第2の素子列10という。
【0022】
このような空間光変調手段3は、例えば、次のようにして形成することができる。即ち、図3に示すように、一定厚みの短冊状の電気光学結晶材料11を例えばダイシングソーを使用し、長軸に沿って幅W1、深さDの溝12を形成すると共に、該溝12に平行な電気光学結晶材料11の対辺部分を幅W2で深さDだけ切除する。このとき、電気光学結晶材料11の上記溝12及び切除部13に挟まれた部分の幅W3は、後に光変調素子8のX軸方向の幅となるものであり、後述の光ビーム整形手段4の開口25の幅w(図5参照)よりも大きくなるように設定されている。また、上記溝12及び切除部13に挟まれた部分の中心線間距離は、nw(nは正の整数)となるように設定されている。
【0023】
次に、上記溝12及び切除部13の内側面にスパッタリング、蒸着、又はCVD等の公知の成膜技術により導電膜を形成する。続いて、例えばダイシングソーを使用して電気光学結晶材料11の長軸に直交する軸に対して角度θだけ傾いた幅W4、深さd(>D)の複数の分離溝14をピッチPで形成し、第1及び第2の素子列9,10が平行に並んだ光変調素子組立体15を形成する。その後、上記溝12の底部に例えば導電ペーストを塗布する。これにより、第1及び第2の素子列9,10の各光変調素子8の溝12側の側面に形成された導電膜が共通電極(接地電極16)となり、各光変調素子8の上記溝12と反対側側面に形成された導電膜が駆動電極17となる。なお、本実施形態においては、第1の素子列9に対して第2の素子列10がY軸方向にずれて、第1の素子列9の各光変調素子8間の部分を第2の素子列10の各光変調素子8が補完し得るように各部の寸法が決定されている。また、上記導電膜は、各電極16,17の下地膜として形成し、光変調素子組立体15の加工後に上記導電膜上に金又は銅等の良導電体の膜をメッキ形成してもよい。
【0024】
さらに、図2に示すように、光変調素子組立体15の光射出側の面15a(図3参照)にて各光変調素子8の形成領域に対応して開口部18を形成し、該開口部18の長軸に平行な両端縁部に沿って複数の電極端子部19が形成され、短軸に平行な縁部近傍に接地電極端子部20が形成された配線基板21上に光変調素子組立体15をその光射出側の面15aの上記領域を上記開口部18に合わせて取り付け、配線基板21の電極端子部19と各光変調素子8の駆動電極17、及び配線基板21の接地電極端子部20と光変調素子8の接地電極16とを金等の導電性ワイヤ22によるワイヤボンディング等により電気的に接続することにより空間光変調手段3が完成する。
【0025】
このように構成された空間光変調手段3は、次のように動作する。即ち、図4に示すように、レーザ光源2から放射された直線偏光、例えば0°偏光のレーザ光は、光変調素子8の入射端面8aに入射する。この場合、同図(a)に示すように、光変調素子8の駆動電極17に対して電圧が印加されていないときには、光変調素子8はオフとなり、該光変調素子8内を通過するレーザ光の偏光面は、回転されない。したがって、光変調素子8の射出端面8bから射出するレーザ光は、0°偏光のままである。
【0026】
一方、図4(b)に示すように、光変調素子8の駆動電極17に適切な電圧を印加すると、光変調素子8がオン駆動され、該光変調素子8内を通過するレーザ光の偏光面が90°回転される。したがって、光変調素子8の射出端面8bから射出するレーザ光は、偏光面が90°回転された90°偏光となる。このように、各光変調素子8の駆動をオン・オフ制御することにより、空間光変調手段3を射出するレーザ光を0°偏光と90°偏光とに切り換えることができる。なお、ここでは、偏光面がY軸に平行な偏光を0°偏光といい、偏光面がX軸に平行な偏光を90°偏光という。
【0027】
なお、光変調素子8の駆動は、オン・オフ駆動に限られず、オン駆動時の電圧を変えて偏光面の回転角度を制御してもよいが、本実施形態においては、オン・オフ駆動の場合について説明する。
【0028】
上記空間光変調手段3の射出側端面に近接対向して光ビーム整形手段4が設けられている。この光ビーム整形手段4は、空間光変調手段3の各光変調素子8から射出するレーザ光のX軸方向(矢印A方向)の幅を一定幅に制限するもので、図5に示すように透明基板23の表面に被着した遮光膜24にY軸方向に長い、幅がwの細長状の開口25を形成した遮光マスクである。この場合、開口25は、第1及び第2の素子列9,10の長軸に長軸を一致させた状態で二つが平行に形成されており、その短軸方向の幅w(<W3)が露光ピクセルのX軸方向の幅を規制するようになっている。又は、光ビーム整形手段4は、遮光板にスリットを形成したものであってもよい。
【0029】
なお、図1において、符号26は、レーザ光源2から放射されたレーザ光のビーム径を拡大すると共に横断面内の強度分布を均一化し、且つ平行光にするカップリング光学系である。
そして、上記レーザ光源2、カップリング光学系26、空間光変調手段3及び光ビーム整形手段4を含んで露光光学系27を構成している。
【0030】
上記露光光学系27を移動可能に移動手段5が設けられている。この移動手段5は、露光光学系27を図1に示す矢印A方向に一定速度で移動させるためのものであり、例えばXステージとボールネジとモータとを組合せて構成されている。そして、位置センサーを備えて、X軸方向の位置情報を後述の制御手段6に出力するようになっている。
【0031】
上記空間光変調手段3及び移動手段5には、制御手段6が電気的に接続されている。この制御手段6は、空間光変調手段3の各光変調素子8を個別に駆動して透過する偏光の偏光面の回転角度を制御するものであり、図6に示すようにCADデータ記憶部28と、ビットマップデータ作成部29と、光変調素子駆動部30と、移動手段駆動制御部31とを備えている。
【0032】
ここで、CADデータ記憶部28は、基材7上に形成しようとする例えば図7に示すような潜像32のCADデータを記憶するもので、メモリ又はCD−ROM等である。また、ビットマップデータ作成部29は、空間光変調手段3(露光光学系27)の移動に同期して上記CADデータ記憶部28から一定時間間隔で潜像32のCADデータを読み出し、移動中の空間光変調手段3のX位置に対応したビットマップデータ(各光変調素子8の駆動データ)を作成するものである。さらに、光変調素子駆動部30は、ビットマップデータ作成部29から入力したビットマップデータに基づいて各光変調素子8を駆動するものである。そして、移動手段駆動制御部31は、空間光変調手段3を所定速度で矢印A方向に移動するように移動手段5の駆動を制御すると共に、移動手段5に備えた位置センサーの出力に基づいて、空間光変調手段3が距離wだけ移動する度にCADデータ記憶部28から順次一定のCADデータをビットマップデータ作成部29に転送させるように動作する。
【0033】
次に、このように構成された露光装置の動作について説明する。
先ず、基材7をステージ1上に位置決めして載置する。次に、レーザ光源2が点灯された後、移動手段5が移動手段駆動制御部31によって制御されて駆動し、空間光変調手段3(露光光学系27)を図1において矢印A方向に移動を開始する。同時に移動手段5から空間光変調手段3のX位置情報が移動手段駆動制御部31に送られる。
【0034】
移動手段駆動制御部31は、移動手段5から入力した空間光変調手段3のX位置情報に基づいて該位置に対応するCADデータをCADデータ記憶部28からビットマップデータ作成部29に転送させる。
【0035】
ビットマップデータ作成部29においては、入力したCADデータに基づいて空間光変調手段3の各光変調素子8を駆動するためのビットマップデータ(駆動データ)を作成して光変調素子駆動部30に出力する。
【0036】
光変調素子駆動部30においては、入力した上記ビットマップデータを一時的に記憶すると共に該ビットマップデータに基づいて各光変調素子8をオン・オフ駆動する。ここで、レーザ光源2から放射される直線偏光のレーザ光が、例えば0°偏光の場合、オフ駆動された光変調素子8内を通過するレーザ光は、偏光面の回転が起こらず、そのまま0°偏光(図8に示すY軸に平行な矢印)として射出する。一方、オン駆動された光変調素子8内を通過するレーザ光は、偏光面が90°回転されて90°偏光(図8に示すX軸に平行な矢印)となって射出する。
【0037】
各光変調素子8を射出した直線偏光のレーザ光は、光ビーム整形手段4によって一定の大きさの光ビームに整形されて基材7上に到達に、基材7上の光配向膜を露光する。これにより、光配向膜は、0°偏光によって照射された露光ピクセル内がY軸方向に配向され、90°偏光によって照射された露光ピクセル内がX軸方向に配向される。
【0038】
以後、ビットマップデータ作成部29では、空間光変調手段3が距離wだけ移動する度に、空間光変調手段3のX位置に対応したCADデータをCADデータ記憶部28から読出し、対応するビットマップデータを作成する。そして、このビットマップデータに基づいて光変調素子駆動部30により空間光変調手段3の第1の素子列9の各光変調素子8を駆動する。これにより、第1の素子列9の各光変調素子8に対応した光配向膜上の部分が露光され、各光変調素子8の駆動状態に応じて一定方向に配向される。
【0039】
一方、第2の素子列10は、光変調素子駆動部30に一時的に記憶されているn回前に転送された第1の素子列9を駆動するビットマップデータに基づいて駆動される。これにより、第1の素子列9によりn回前に露光された位置が第2の素子列10により露光される。この場合、第2の素子列10は、その各光変調素子8が第1の素子列9の各光変調素子8間の部分を補完し得るように形成されているので、図9に示すように、第1の素子列9による各露光ピクセル33間の未露光部分を第2の素子列10による露光ピクセル33で補完することが可能となる。
【0040】
このようにして、空間光変調手段3を矢印A方向に移動しながら、一定の時間間隔で作成されたビットマップデータに基づいて各光変調素子8をオン・オフ駆動して光配向膜を露光することにより、図10に示すように、光配向膜34は潜像32に対応したパターン内部が90°偏光によってX軸方向に配向され、パターン外部が0°偏光によってY軸方向に配向される。
【0041】
上述のようにして露光された光配向膜34は、適切に設定された温度で熱処理されて配向が定着される。その後、上記光配向膜34上に液晶モノマーを塗布した後、紫外線を照射して液晶を硬化することにより、液晶が架橋して液晶分子が光配向膜34の配向に倣って並ぶ。こうして、潜像32を記録した認証媒体35が得られる(図11参照)。
【0042】
このような潜像32は、図11(a)に示すように直接目視では見ることができず、同図(b)に示すように偏光板36を重ねることによって見えるようになる。
【0043】
なお、上記実施形態においては、空間光変調手段3が第1及び第2の素子列9,10を有する場合について説明したが、本発明はこれに限られず、第1の素子列9だけであってもよい。
【0044】
また、上記実施形態においては、光ビーム整形手段4を空間光変調手段3の射出側端面に近接対向して設けた場合について説明したが、本発明はこれに限られず、光ビーム整形手段4は、空間光変調手段3の入射側端面に近接対向して設けてもよい。
【0045】
さらに、上記実施形態においては、光ビーム整形手段4が光を透過する開口25を有する遮光マスクである場合について説明したが、本発明はこれに限られず、光ビーム整形手段4は、入射光を直交二軸の一軸方向(X軸方向)にのみ絞って線状の光ビームを生成するシリンドリカルレンズを含んで構成したものであってもよい。
【0046】
さらにまた、上記実施形態においては、空間光変調手段3側を移動する場合について説明したが、本発明はこれに限られず、ステージ1側を移動してもよく、又はその両方を互いに反対方向に移動させてもよい。
【0047】
そして、以上の説明においては、認証媒体35の潜像32を形成する場合について述べたが、本発明はこれに限られず、同一の基材上に塗布された光配向膜34に配向方向の異なる配向パターンを形成しようとするものであれば、例えば液晶表示用基板の配向処理や3D用偏光フィルタの配向処理にも適用することができる。この場合、光ビーム整形手段4をX軸方向に移動可能に形成すれば、空間光変調手段3の各光変調素子8がX軸方向に対して角度θだけ傾けて設けられているので、各光変調素子8によって露光される位置をY軸方向にずらすことができる。したがって、このずらし量を制御することにより、露光位置を調整することができ、露光位置精度を向上することができる。
【符号の説明】
【0048】
3…空間光変調手段
4…光ビーム整形手段
5…移動手段
7…基材
8…光変調素子
9…第1の素子列
10…第2の素子列
11…電気光学結晶材料
25…開口
34…光配向膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、光配向膜に偏光を照射して配向させる露光装置に関し、詳しくは、光配向膜における配向方向の異なる配向処理を1回の工程で実現可能にして配向処理工程を短縮しようとする露光装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
クレジットカード、有価証券、及び証明書類のような情報記録媒体の偽造を防止する技術として、目視では印刷画像を視認することができず、偏光板を重ねることでパターン状の潜像が見えるようにした認証媒体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような認証媒体は、潜像となる模様の内部と周辺とで配向方向が異なるように配向処理された光配向膜上に液晶モノマーを塗布した後、適切に選択された波長の非偏光を全体に照射して液晶を架橋し、液晶分子を光配向膜の配向方向に向けることによって作ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2002−530687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような従来の配向処理は、潜像と同じパターンを形成したポジ型フォトマスクを介して偏光面が一定方向に向いた偏光を光配向膜に照射して露光した後、上記模様の明暗が反転して形成されたネガ型フォトマスクを介して偏光面が上記偏光と異なる偏光を上記光配向膜に照射して露光するものであった。
【0006】
したがって、偏光方向を変えた露光パターニングが必要であるため、ポジ型フォトマスクによる露光とネガ型フォトマスクによる露光の2回の露光を行わなければならいこと、及び上記2回の露光における露光パターンの重ね合わせ精度を高精度に確保しなければならないこと等により、配向処理が複雑になるという問題があった。それ故、配向処理工程を短縮することができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、光配向膜における配向方向の異なる配向処理を1回の工程で実現可能にして配向処理工程を短縮しようとする露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明による露光装置は、電気光学結晶材料から成る複数の光変調素子を一定の配列ピッチで少なくとも一列に並べて有する空間光変調手段と、前記各光変調素子を個別に駆動して、前記空間光変調手段に対向して配置され表面に光配向膜を塗布した基材上に照射する偏光の偏光面の回転角度を制御する制御手段と、前記空間光変調手段を前記基材に対して前記光変調素子の並び方向と交差する方向に相対移動させる移動手段と、を備えたものである。
【0009】
このような構成により、移動手段で電気光学結晶材料から成る複数の光変調素子を一定の配列ピッチで少なくとも一列に並べて有する空間光変調手段を、該空間光変調手段に対向して配置され表面に光配向膜を塗布した基材に対して上記光変調素子の並び方向と交差する方向に相対移動させながら、制御手段で各光変調素子を個別に駆動して基材に照射する偏光の偏光面の回転角度を制御して光配向膜を露光する。
【0010】
また、前記各光変調素子は、前記空間光変調手段の前記相対移動方向に一定距離だけ離隔して互い違いに二列に並べて設けられている。これにより、空間光変調手段の基材に対する相対移動方向に一定距離だけ離隔して互い違いに二列に並べて設けられた複数の光変調素子で光配向膜を露光する。
【0011】
さらに、前記各光変調素子を、その光軸に直交する横断面形状が前記空間光変調手段の前記相対移動方向に長い略長方形状に形成すると共に、前記基材に照射する偏光の、前記相対移動方向の幅を一定幅に制限する光ビーム整形手段をさらに備えたものである。これにより、光ビーム整形手段で基材に照射する偏光の、上記空間光変調手段の基材に対する相対移動方向の幅を一定幅に制限する。
【0012】
そして、前記光ビーム整形手段は、前記光変調素子の並び方向に長い細長状の開口を形成した遮光マスクである。これにより、光変調素子の並び方向に長い細長状の開口を形成した遮光マスクで基材に照射する偏光の、上記空間光変調手段及び基材の相対移動方向の幅を一定幅に制限する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、光配向膜における配向方向の異なる配向処理を1回の工程で行なうことができる。したがって、配向処理工程を短縮することができる。また、電気光学結晶材料から成る光変調素子の駆動電圧を制御することにより、光配向膜に照射する偏光の偏光面の回転角度を任意に制御することができる。したがって、配向方向の異なる複数の配向パターンを1回の配向処理工程で形成することができ、複数の潜像を記録した認証媒体を容易に作ることができる。
【0014】
また、請求項2に係る発明によれば、先行して形成された複数の露光ピクセル間の未露光部分を補完して露光することができ、緻密な配向パターンを形成することができる。したがって、複雑な形状の潜像も容易に形成することができる。
【0015】
さらに、請求項3に係る発明によれば、光ビーム整形手段により露光ピクセルの大きさを容易に規制することができる。
【0016】
そして、請求項4に係る発明によれば、光ビーム整形手段をフォトリソグラフィ技術を利用して作ることができ、露光ピクセルの大きさを高精度に規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による露光装置の実施形態を示す概略構成図である。
【図2】上記露光装置に使用する空間光変調手段の要部拡大平面図である。
【図3】上記空間光変調手段の光変調素子組立体の要部を示す三面図であり、(a)は平面図、(b)は右側面図、(c)は(a)のO−O線断面図である。
【図4】上記空間光変調手段の動作を示す説明図であり、(a)はオフ状態を示し、(b)はオン状態を示している。
【図5】上記露光装置に使用する光ビーム整形手段の遮光マスクを示す平面図である。
【図6】上記露光装置に使用する制御手段の概略構成を示すブロック図である。
【図7】潜像の一例を示す平面図である。
【図8】上記空間光変調手段の底面図であり、各光変調素子を透過した偏光の偏光面の一状態を示す。
【図9】先行して形成された複数の露光ピクセル間の未露光部分を補完して露光することを示す説明図である。
【図10】本発明の露光装置を使用して行った光配向膜の配向処理後の状態を示す説明図である。
【図11】潜像を記録した認証媒体を示す説明図であり、(a)は目視例であり、(b)は偏光板を重ねた例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明による露光装置の実施形態を示す概略構成図である。この露光装置は、電気光学結晶材料から成る複数の光変調素子により光配向膜を塗布した基材に偏光を照射して光配向膜を露光するもので、ステージ1と、レーザ光源2と、空間光変調手段3と、光ビーム整形手段4と、移動手段5と、制御手段6とを備えて構成されている。
【0019】
上記ステージ1は、上面1aに光配向膜を塗布した基材7を位置決めして載置し、例えば吸着して保持するものである。
【0020】
上記ステージ1の上方には、レーザ光源2が設けられている。このレーザ光源2は、光配向膜に偏光レーザ光を照射して光配向膜を一定方向に配向させるもので、例えば直線偏光レーザであり、偏光板と組合せて使用するならランダム偏光レーザであってもよい。又は、円偏光レーザであってもよい。以下の説明においては、レーザ光源2が直線偏光レーザの場合について説明する。
【0021】
上記ステージ1とレーザ光源2との間には、空間光変調手段3が配設されている。この空間光変調手段3は、透過光により所定のパターンを生成して基材7上に照射するもので、図2に示すように偏光の偏光面を回転制御する例えばLiNbO3等の電気光学結晶材料11から成る複数の光変調素子8をステージ1の上面1aに平行なXY平面内に配列ピッチP(図3参照)で互い違いに二列に並べて設けたものであり、図1に示すように、後述の移動手段5によって上記ステージ1の上面1aに平行にX軸方向にて矢印A方向に移動するようになっている。この場合、各光変調素子8は、その光軸に直交する横断面形状がその並び方向と交差する方向に長い略長方形状に形成されると共に、図3に示すようにその並び方向と交差する方向に対して角度θだけ傾けて形成されている。そして、各光変調素子8の並び方向がY軸方向に合致するようにしてステージ1上に対向配置されている。なお、上記二列の光変調素子8のうち、図2に示す矢印A方向に向かって前側に位置する一列の光変調素子8を第1の素子列9といい、矢印A方向に向かって後側に位置する一列の光変調素子8を第2の素子列10という。
【0022】
このような空間光変調手段3は、例えば、次のようにして形成することができる。即ち、図3に示すように、一定厚みの短冊状の電気光学結晶材料11を例えばダイシングソーを使用し、長軸に沿って幅W1、深さDの溝12を形成すると共に、該溝12に平行な電気光学結晶材料11の対辺部分を幅W2で深さDだけ切除する。このとき、電気光学結晶材料11の上記溝12及び切除部13に挟まれた部分の幅W3は、後に光変調素子8のX軸方向の幅となるものであり、後述の光ビーム整形手段4の開口25の幅w(図5参照)よりも大きくなるように設定されている。また、上記溝12及び切除部13に挟まれた部分の中心線間距離は、nw(nは正の整数)となるように設定されている。
【0023】
次に、上記溝12及び切除部13の内側面にスパッタリング、蒸着、又はCVD等の公知の成膜技術により導電膜を形成する。続いて、例えばダイシングソーを使用して電気光学結晶材料11の長軸に直交する軸に対して角度θだけ傾いた幅W4、深さd(>D)の複数の分離溝14をピッチPで形成し、第1及び第2の素子列9,10が平行に並んだ光変調素子組立体15を形成する。その後、上記溝12の底部に例えば導電ペーストを塗布する。これにより、第1及び第2の素子列9,10の各光変調素子8の溝12側の側面に形成された導電膜が共通電極(接地電極16)となり、各光変調素子8の上記溝12と反対側側面に形成された導電膜が駆動電極17となる。なお、本実施形態においては、第1の素子列9に対して第2の素子列10がY軸方向にずれて、第1の素子列9の各光変調素子8間の部分を第2の素子列10の各光変調素子8が補完し得るように各部の寸法が決定されている。また、上記導電膜は、各電極16,17の下地膜として形成し、光変調素子組立体15の加工後に上記導電膜上に金又は銅等の良導電体の膜をメッキ形成してもよい。
【0024】
さらに、図2に示すように、光変調素子組立体15の光射出側の面15a(図3参照)にて各光変調素子8の形成領域に対応して開口部18を形成し、該開口部18の長軸に平行な両端縁部に沿って複数の電極端子部19が形成され、短軸に平行な縁部近傍に接地電極端子部20が形成された配線基板21上に光変調素子組立体15をその光射出側の面15aの上記領域を上記開口部18に合わせて取り付け、配線基板21の電極端子部19と各光変調素子8の駆動電極17、及び配線基板21の接地電極端子部20と光変調素子8の接地電極16とを金等の導電性ワイヤ22によるワイヤボンディング等により電気的に接続することにより空間光変調手段3が完成する。
【0025】
このように構成された空間光変調手段3は、次のように動作する。即ち、図4に示すように、レーザ光源2から放射された直線偏光、例えば0°偏光のレーザ光は、光変調素子8の入射端面8aに入射する。この場合、同図(a)に示すように、光変調素子8の駆動電極17に対して電圧が印加されていないときには、光変調素子8はオフとなり、該光変調素子8内を通過するレーザ光の偏光面は、回転されない。したがって、光変調素子8の射出端面8bから射出するレーザ光は、0°偏光のままである。
【0026】
一方、図4(b)に示すように、光変調素子8の駆動電極17に適切な電圧を印加すると、光変調素子8がオン駆動され、該光変調素子8内を通過するレーザ光の偏光面が90°回転される。したがって、光変調素子8の射出端面8bから射出するレーザ光は、偏光面が90°回転された90°偏光となる。このように、各光変調素子8の駆動をオン・オフ制御することにより、空間光変調手段3を射出するレーザ光を0°偏光と90°偏光とに切り換えることができる。なお、ここでは、偏光面がY軸に平行な偏光を0°偏光といい、偏光面がX軸に平行な偏光を90°偏光という。
【0027】
なお、光変調素子8の駆動は、オン・オフ駆動に限られず、オン駆動時の電圧を変えて偏光面の回転角度を制御してもよいが、本実施形態においては、オン・オフ駆動の場合について説明する。
【0028】
上記空間光変調手段3の射出側端面に近接対向して光ビーム整形手段4が設けられている。この光ビーム整形手段4は、空間光変調手段3の各光変調素子8から射出するレーザ光のX軸方向(矢印A方向)の幅を一定幅に制限するもので、図5に示すように透明基板23の表面に被着した遮光膜24にY軸方向に長い、幅がwの細長状の開口25を形成した遮光マスクである。この場合、開口25は、第1及び第2の素子列9,10の長軸に長軸を一致させた状態で二つが平行に形成されており、その短軸方向の幅w(<W3)が露光ピクセルのX軸方向の幅を規制するようになっている。又は、光ビーム整形手段4は、遮光板にスリットを形成したものであってもよい。
【0029】
なお、図1において、符号26は、レーザ光源2から放射されたレーザ光のビーム径を拡大すると共に横断面内の強度分布を均一化し、且つ平行光にするカップリング光学系である。
そして、上記レーザ光源2、カップリング光学系26、空間光変調手段3及び光ビーム整形手段4を含んで露光光学系27を構成している。
【0030】
上記露光光学系27を移動可能に移動手段5が設けられている。この移動手段5は、露光光学系27を図1に示す矢印A方向に一定速度で移動させるためのものであり、例えばXステージとボールネジとモータとを組合せて構成されている。そして、位置センサーを備えて、X軸方向の位置情報を後述の制御手段6に出力するようになっている。
【0031】
上記空間光変調手段3及び移動手段5には、制御手段6が電気的に接続されている。この制御手段6は、空間光変調手段3の各光変調素子8を個別に駆動して透過する偏光の偏光面の回転角度を制御するものであり、図6に示すようにCADデータ記憶部28と、ビットマップデータ作成部29と、光変調素子駆動部30と、移動手段駆動制御部31とを備えている。
【0032】
ここで、CADデータ記憶部28は、基材7上に形成しようとする例えば図7に示すような潜像32のCADデータを記憶するもので、メモリ又はCD−ROM等である。また、ビットマップデータ作成部29は、空間光変調手段3(露光光学系27)の移動に同期して上記CADデータ記憶部28から一定時間間隔で潜像32のCADデータを読み出し、移動中の空間光変調手段3のX位置に対応したビットマップデータ(各光変調素子8の駆動データ)を作成するものである。さらに、光変調素子駆動部30は、ビットマップデータ作成部29から入力したビットマップデータに基づいて各光変調素子8を駆動するものである。そして、移動手段駆動制御部31は、空間光変調手段3を所定速度で矢印A方向に移動するように移動手段5の駆動を制御すると共に、移動手段5に備えた位置センサーの出力に基づいて、空間光変調手段3が距離wだけ移動する度にCADデータ記憶部28から順次一定のCADデータをビットマップデータ作成部29に転送させるように動作する。
【0033】
次に、このように構成された露光装置の動作について説明する。
先ず、基材7をステージ1上に位置決めして載置する。次に、レーザ光源2が点灯された後、移動手段5が移動手段駆動制御部31によって制御されて駆動し、空間光変調手段3(露光光学系27)を図1において矢印A方向に移動を開始する。同時に移動手段5から空間光変調手段3のX位置情報が移動手段駆動制御部31に送られる。
【0034】
移動手段駆動制御部31は、移動手段5から入力した空間光変調手段3のX位置情報に基づいて該位置に対応するCADデータをCADデータ記憶部28からビットマップデータ作成部29に転送させる。
【0035】
ビットマップデータ作成部29においては、入力したCADデータに基づいて空間光変調手段3の各光変調素子8を駆動するためのビットマップデータ(駆動データ)を作成して光変調素子駆動部30に出力する。
【0036】
光変調素子駆動部30においては、入力した上記ビットマップデータを一時的に記憶すると共に該ビットマップデータに基づいて各光変調素子8をオン・オフ駆動する。ここで、レーザ光源2から放射される直線偏光のレーザ光が、例えば0°偏光の場合、オフ駆動された光変調素子8内を通過するレーザ光は、偏光面の回転が起こらず、そのまま0°偏光(図8に示すY軸に平行な矢印)として射出する。一方、オン駆動された光変調素子8内を通過するレーザ光は、偏光面が90°回転されて90°偏光(図8に示すX軸に平行な矢印)となって射出する。
【0037】
各光変調素子8を射出した直線偏光のレーザ光は、光ビーム整形手段4によって一定の大きさの光ビームに整形されて基材7上に到達に、基材7上の光配向膜を露光する。これにより、光配向膜は、0°偏光によって照射された露光ピクセル内がY軸方向に配向され、90°偏光によって照射された露光ピクセル内がX軸方向に配向される。
【0038】
以後、ビットマップデータ作成部29では、空間光変調手段3が距離wだけ移動する度に、空間光変調手段3のX位置に対応したCADデータをCADデータ記憶部28から読出し、対応するビットマップデータを作成する。そして、このビットマップデータに基づいて光変調素子駆動部30により空間光変調手段3の第1の素子列9の各光変調素子8を駆動する。これにより、第1の素子列9の各光変調素子8に対応した光配向膜上の部分が露光され、各光変調素子8の駆動状態に応じて一定方向に配向される。
【0039】
一方、第2の素子列10は、光変調素子駆動部30に一時的に記憶されているn回前に転送された第1の素子列9を駆動するビットマップデータに基づいて駆動される。これにより、第1の素子列9によりn回前に露光された位置が第2の素子列10により露光される。この場合、第2の素子列10は、その各光変調素子8が第1の素子列9の各光変調素子8間の部分を補完し得るように形成されているので、図9に示すように、第1の素子列9による各露光ピクセル33間の未露光部分を第2の素子列10による露光ピクセル33で補完することが可能となる。
【0040】
このようにして、空間光変調手段3を矢印A方向に移動しながら、一定の時間間隔で作成されたビットマップデータに基づいて各光変調素子8をオン・オフ駆動して光配向膜を露光することにより、図10に示すように、光配向膜34は潜像32に対応したパターン内部が90°偏光によってX軸方向に配向され、パターン外部が0°偏光によってY軸方向に配向される。
【0041】
上述のようにして露光された光配向膜34は、適切に設定された温度で熱処理されて配向が定着される。その後、上記光配向膜34上に液晶モノマーを塗布した後、紫外線を照射して液晶を硬化することにより、液晶が架橋して液晶分子が光配向膜34の配向に倣って並ぶ。こうして、潜像32を記録した認証媒体35が得られる(図11参照)。
【0042】
このような潜像32は、図11(a)に示すように直接目視では見ることができず、同図(b)に示すように偏光板36を重ねることによって見えるようになる。
【0043】
なお、上記実施形態においては、空間光変調手段3が第1及び第2の素子列9,10を有する場合について説明したが、本発明はこれに限られず、第1の素子列9だけであってもよい。
【0044】
また、上記実施形態においては、光ビーム整形手段4を空間光変調手段3の射出側端面に近接対向して設けた場合について説明したが、本発明はこれに限られず、光ビーム整形手段4は、空間光変調手段3の入射側端面に近接対向して設けてもよい。
【0045】
さらに、上記実施形態においては、光ビーム整形手段4が光を透過する開口25を有する遮光マスクである場合について説明したが、本発明はこれに限られず、光ビーム整形手段4は、入射光を直交二軸の一軸方向(X軸方向)にのみ絞って線状の光ビームを生成するシリンドリカルレンズを含んで構成したものであってもよい。
【0046】
さらにまた、上記実施形態においては、空間光変調手段3側を移動する場合について説明したが、本発明はこれに限られず、ステージ1側を移動してもよく、又はその両方を互いに反対方向に移動させてもよい。
【0047】
そして、以上の説明においては、認証媒体35の潜像32を形成する場合について述べたが、本発明はこれに限られず、同一の基材上に塗布された光配向膜34に配向方向の異なる配向パターンを形成しようとするものであれば、例えば液晶表示用基板の配向処理や3D用偏光フィルタの配向処理にも適用することができる。この場合、光ビーム整形手段4をX軸方向に移動可能に形成すれば、空間光変調手段3の各光変調素子8がX軸方向に対して角度θだけ傾けて設けられているので、各光変調素子8によって露光される位置をY軸方向にずらすことができる。したがって、このずらし量を制御することにより、露光位置を調整することができ、露光位置精度を向上することができる。
【符号の説明】
【0048】
3…空間光変調手段
4…光ビーム整形手段
5…移動手段
7…基材
8…光変調素子
9…第1の素子列
10…第2の素子列
11…電気光学結晶材料
25…開口
34…光配向膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学結晶材料から成る複数の光変調素子を一定の配列ピッチで少なくとも一列に並べて有する空間光変調手段と、
前記各光変調素子を個別に駆動して、前記空間光変調手段に対向して配置され表面に光配向膜を塗布した基材上に照射する偏光の偏光面の回転角度を制御する制御手段と、
前記空間光変調手段を前記基材に対して前記光変調素子の並び方向と交差する方向に相対移動させる移動手段と、
を備えたことを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記各光変調素子は、前記空間光変調手段の前記相対移動方向に一定距離だけ離隔して互い違いに二列に並べて設けられたことを特徴とする請求項1記載の露光装置。
【請求項3】
前記各光変調素子を、その光軸に直交する横断面形状が前記空間光変調手段の前記相対移動方向に長い略長方形状に形成すると共に、前記基材に照射する偏光の、前記相対移動方向の幅を一定幅に制限する光ビーム整形手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の露光装置。
【請求項4】
前記光ビーム整形手段は、前記光変調素子の並び方向に長い細長状の開口を形成した遮光マスクであることを特徴とする請求項3記載の露光装置。
【請求項1】
電気光学結晶材料から成る複数の光変調素子を一定の配列ピッチで少なくとも一列に並べて有する空間光変調手段と、
前記各光変調素子を個別に駆動して、前記空間光変調手段に対向して配置され表面に光配向膜を塗布した基材上に照射する偏光の偏光面の回転角度を制御する制御手段と、
前記空間光変調手段を前記基材に対して前記光変調素子の並び方向と交差する方向に相対移動させる移動手段と、
を備えたことを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記各光変調素子は、前記空間光変調手段の前記相対移動方向に一定距離だけ離隔して互い違いに二列に並べて設けられたことを特徴とする請求項1記載の露光装置。
【請求項3】
前記各光変調素子を、その光軸に直交する横断面形状が前記空間光変調手段の前記相対移動方向に長い略長方形状に形成すると共に、前記基材に照射する偏光の、前記相対移動方向の幅を一定幅に制限する光ビーム整形手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の露光装置。
【請求項4】
前記光ビーム整形手段は、前記光変調素子の並び方向に長い細長状の開口を形成した遮光マスクであることを特徴とする請求項3記載の露光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−32730(P2012−32730A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174201(P2010−174201)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(500171707)株式会社ブイ・テクノロジー (283)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(500171707)株式会社ブイ・テクノロジー (283)
【Fターム(参考)】
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