説明

露出制御方法及び撮像装置

【課題】高速ズーミング、或いは被写体輝度の変化を原因として焦点輝度が急変したいずれの場合であっても、出力画像の明るさを一定に保持するようにした露出制御方法、及びその露出制御方法を実現する撮像装置を提供する。
【解決手段】ステップS15でズーミングされているか否かを判断した後、ステップS100でF値が変化しているか否かを判断する。F値が変化している場合は、ステップS105に進み、焦点輝度の変化量を推定すると共に、該推定変化量に基づいてシャッタースピードを変更し、ステップS110で一様に明るさが変化するようにフレームレートを変更すると共に、1フレーム当りのF値の変化量に基づき、電子シャッターを一回切る毎のシャッタースピードを段階的に変化させるようにした。また、F値が変化していない場合には、適正にAF制御がなされているものと判断し、ステップS105をパスして、ステップS110に進むようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露出制御方法と、該露出制御方法を実現する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等の撮像装置は、CCD、CMOS等の固体撮像素子を結像面上へ格子状に配設して構成したイメージセンサに露光させ、受光して貯まった電荷を順次転送し、該電荷を信号制御部等で読み出して撮像している。その後、撮像された画像は画像信号へアナログ/デジタル変換され、該画像信号にホワイトバランス補正等が施されて、表示装置等へ出力される静止画像(以下「フレーム」という)が形成される。ここで該撮像装置は、イメージセンサを露光させる時間を電子シャッターのシャッタースピードで制御し、電荷の転送間隔或いは電荷読み出しタイミングを信号制御部等で制御して、撮像される画像の露出値を制御することによって、出力画像の明るさを制御している。
【0003】
そして、上記撮像装置のうち、デジタルテレビカメラ等は、上記フレームを、一秒間当りに所定回数形成する(以下「フレームレート」という)ことによって、映像を構成している。映像出力側のフレームレートは、一秒間当り30回から60回のうちの一定回数に固定されているが、上記信号制御部の入力側では、電荷の転送速度若しくは読み出しタイミングを制御することでフレームレートが可変制御され、絞り機構(メカニカルアイリス)と同様の効果を呈している。
【0004】
また、露出値は、撮像装置が有する測光機能によって測光した被写体及び被写体周辺の光量(以下「被写体輝度」という)から定まる。該被写体輝度が変化した場合、自動露出制御(以下「AE制御」という)手段によって、上記イメージセンサのシャッタースピード若しくは入力側フレームレートは予め設定された値に可変制御される。
【0005】
一般的に、AE制御は、ズームレンズの移動に伴ってフォーカスレンズが予め設定された位置に移動するオートフォーカス制御(以下「AF制御」という)手段によって焦点位置が決定されてから、行われる。また、AF制御は、ズーム操作スイッチ等により、ズーミングスピードを制御し、ズームレンズの位置に対してフォーカスレンズを可及的に移動させて、合焦させる山登り方式等が知られている。ここで、ズーミングスピードをAF制御等で制御している場合には、フォーカスレンズ位置に応じて設定された露出値が信号制御部等へ入力されるため、過剰露出や露出不足に陥る問題は起こらない。しかしながら、手動操作によって強制的に高速でズーム操作した場合には、以下のような二つの問題が生じる。
【0006】
第一の問題は、ズーム操作を広角側端部から望遠側端部にした場合、AE制御がズーミングスピードに追随できず、露出過剰になることで出力画像が「白く飛ぶ」といわれる現象である。また、第二の問題は、ズーム操作を望遠側端部から広角側端部にした場合、同様にAE制御がズーミングスピードに追随できず、露出不足になることで出力画像が「暗く沈む」という現象である。
【0007】
そこで、ズームレンズのズーム速度情報と閾値とを比較して、該閾値を越える速さでズームレンズが移動しているとき、周辺光量が急変していると判断して、焦点距離に応じた絞り最大開口径を可変制御する方法が、特開平11−183778号公報に開示されている。
【特許文献1】特開平11−183778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ズーム速度に応じ、ズームレンズの位置に基づいた絞り最大開口径を可変制御する場合、イメージセンサの結像面上の輝度(以下「焦点輝度」という)が、予め設定された絞り最大開口径に対応する輝度に合致していない場合、ズーミングが終了してから改めて測光してAE制御しなければならないため、一時的ではあるが上記に示した問題のように明るさが変化するおそれがあり、焦点輝度の変化を十分に抑制することができない。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決しようとするためになされたものであって、高速ズーミングを原因として焦点輝度が急変した場合、或いは白検出等外部の被写体輝度の変化を原因として焦点輝度が急変した場合のいずれの場合であっても、出力画像の明るさを一定に保持するようにした露出制御方法、及びその露出制御方法を実現する撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の露出制御方法は、固体撮像素子からなるイメージセンサと、光軸方向に沿って移動するズームレンズ及びフォーカスレンズと、受光素子とを有する撮像装置であって、撮像された画像に含まれる白色の割合を基準に、撮像された画像の色補正をするホワイトバランス変更手段と、該ホワイトバランス変更手段の色補正処理に基づいて、前記イメージセンサのシャッタースピードとフレームレートとから露光時間を変更する自動露出制御手段と、ズームレンズにフォーカスレンズを連動させるオートフォーカス制御手段と、受光素子による測光手段とを設けた撮像装置において、
前記オートフォーカス制御手段のズームレンズのズーミング位置情報に応じて、ズームレンズが移動したか否かを判断し、ズームレンズの移動に連動したフォーカスレンズのフォーカス位置情報から取得されるF値が、変化したか否かを判断し、該F値が変化している場合に、変化前のF値と変化後のF値とから、その変化前後の焦点輝度変化量を推定し、推定された焦点輝度の変化量から、変化前の焦点輝度に合わせた前記シャッタースピードを、変化後の焦点輝度に合わせたシャッタースピードへ変更すると共に、該変更したシャッタースピードに応じて、変化前の焦点輝度に合わせた前記フレームレートを、変化後の焦点輝度に応じたフレームレートへ変更するようにしたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の露出制御方法において、ズームレンズの位置情報に応じて、ズームレンズが移動したか否かを判断し、前記F値が変化していない場合であっても、ズームレンズが移動していると判断したときに、ズームレンズ移動前の焦点輝度に合わせたフレームレートを、ズームレンズ移動後の該焦点輝度に合わせたフレームレートへ変更すると共に、該変更したフレームレートに応じて、ズームレンズ移動前の焦点輝度に合わせたシャッタースピードを、ズームレンズ移動後の該焦点輝度に合わせたシャッタースピードへ変更するようにしたことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の露出制御方法において、前記ズームレンズの移動が無く、前記F値が変化していない場合であっても、前記測光手段によって一定周期で監視されている被写体輝度が変化した場合に、周期的に変化が検知される被写体輝度値のうち、前後に連続した該被写体輝度値の比に応じて、前記シャッタースピードを変更するようにしたことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の露出制御方法において、前記測光手段によって所定時間監視された被写体輝度を平均した平均被写体輝度値と、該測光手段によって最初に変化が検知された被写体輝度値との比を初期値とし、該初期値に応じて変更した前記シャッタースピードを基準シャッタースピードとし、その後、順次検知される被写体輝度値のうち、前後に連続した該被写体輝度値の比と、前記初期値とを比較して、該比が該初期値に合致しない場合、前後に連続した該被写体輝度値の比に応じて変更したシャッタースピードを、前記基準シャッタースピードに補正するようにしたことを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の撮像装置は、固体撮像素子からなるイメージセンサと、光軸方向に沿って移動するズームレンズ及びフォーカスレンズと、受光素子とを有する撮像装置であって、撮像された画像に含まれる白色の割合を基準に、撮像された画像の色補正をするホワイトバランス変更手段と、該ホワイトバランス変更手段の色補正処理に基づいて、前記イメージセンサのシャッタースピードとフレームレートとから露光時間を変更する自動露出制御手段と、ズームレンズにフォーカスレンズを連動させるオートフォーカス制御手段と、受光素子による測光手段とを設けた撮像装置において、
前記ズームレンズの移動を検知するズーミング検知手段と、前記ズームレンズと連動して移動するフォーカスレンズのフォーカス位置情報を検知し、F値の変化を検知するF値検知手段と、前記ズーミング検知手段で検知したズームレンズの移動距離、若しくはF値検知手段で検知したレンズを通過する光量の増減に基づき、前記イメージセンサの結像面上の焦点輝度が変化したと推定する焦点輝度推定手段と、該焦点輝度推定手段で推定した焦点輝度の推定変化量に基づき、前記自動露出制御手段で制御中の前記シャッタースピードを変更するシャッタースピード変更手段と、前記ズーミング検知手段で検知したズームレンズの移動距離に基づき、前記自動露出制御手段で制御中の前記フレームレートを変更するフレームレート変更手段とを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の露出制御方法によれば、ズームレンズの移動に遅延してフォーカスレンズが移動するときに、F値が変化するか否かをトリガとして、ズーム速度が高速であるか否かを判断するようにした。そして、F値が変化した場合に、フォーカスレンズがズームレンズのスピードに遅延している、すなわち、焦点輝度が変化し、出力画像の明るさが変化したと判断して、通常処理中のAE制御におけるシャッタースピードを、強制的に変更するようにした。そのため、出力画像の明るさの変化を抑制することができる。
【0016】
請求項2に記載の露出制御方法によれば、F値が変化していない場合でも、ズームレンズが移動していると判断した場合には、AF制御が適正になされていると判断して、シャッタースピードをズーム速度に合わせて制御するようにした。そのため、出力画像の明るさを一定に保持することができる。
【0017】
請求項3に記載の露出制御方法によれば、測光手段によって、一定周期で測光した被写体輝度が変化した場合に、周期的に検知された被写体輝度値のうち、連続する前後の値から変化比率を算出して、該変化比率に応じて、シャッタースピードを変更するようにした。そのため、ズーミング以外の外部からの輝度を変化させる原因となる白検出等があっても、変化前後の被写体輝度値を比較することで、変更すべきシャッタースピードを求めることができ、変更したシャッタースピードで撮像することにより、出力画像の明るさの変化を抑制することができる。
【0018】
請求項4に記載の露出制御方法によれば、所定時間監視された被写体輝度値を平均化して平均被写体輝度値を算出し、該平均被写体輝度値と最初に変化を検知したときの被写体輝度値との変化比率を初期変化比率とし、該初期変化比率に応じて変更したシャッタースピードを基準に、以後順次検知される被写体輝度値と前記平均被写体輝度値とから算出した変化比率と、前記初期変化比率とを比較して、その比率が合致しない場合には、変化比率によって変更されたシャッタースピードを基準シャッタースピードに補正するようにした。そのため、最初に検知した変化量から算出される変化比率で一定にシャッタースピードが変化するように補正されるので、焦点輝度の変化を略一定にすることができ、出力画像の明るさの変化が急変することを防ぐことができる。
【0019】
請求項5に記載の撮像装置によれば、周知のAE制御手段及びAF制御手段を用いて、焦点輝度の変化量を推定することができるようにした。そのため、従来のAE制御手段及びAF制御手段を流用することができるので、撮像装置の製造コストを抑えることができる。
【実施例1】
【0020】
本発明を構成する実施例を、添付した図面にしたがって説明する。図1は撮像装置1の概略構成を示したブロック図である。図2は露出制御方法の概略を示したフローチャートである。
【0021】
撮像装置1は、撮像部2とAF制御部3と中央演算装置4(CPU)とから構成される。
撮像部2は、レンズ群5と、イメージセンサ6と、電子シャッター制御部7と、信号処理制御部8と、レンズ位置情報制御部9と、から構成される。
レンズ群5は、ズームレンズ及びフォーカスレンズ等複数枚のレンズ群からなるが、単レンズに省略して図示した。イメージセンサ6は、CCD等からなる固定撮像素子を格子状に配列して形成し、該レンズ群5後方の結像面上に配設して構成される。電子シャッター制御部7は、所定周期で発振するパルスによって、イメージセンサ6のシャッタースピードを制御する。信号処理制御部8は、イメージセンサ6の固定撮像子に貯まった電荷からなる画像信号を読み取るタイミングを制御して外部記憶媒体等へ画像信号を出力する処理を行う。レンズ位置情報制御部9は、CPU4から伝達されたズームレンズとフォーカスレンズの位置情報を信号処理制御部8へ伝達する処理を行う。ここで、イメージセンサ6のCCD等は、AF制御或いはAE制御等に用いる受光素子として被写体輝度を測光する測光手段としても用いられる。なお、イメージセンサ6とは別に、CdSセル等を受光素子とした測光手段を設けても良い。
【0022】
AF制御部3は、ズーム・フォーカス装置10と、ズーム・フォーカス制御部11とから構成される。
ズーム・フォーカス装置10には、レンズ群5を構成する複数枚のズームレンズ及びフォーカスレンズ等レンズを、各個独立に調節可能な位置調節手段を設けた。また、ズーム・フォーカス制御部11には、ズームレンズの位置に応じて、フォーカスレンズの位置を焦点位置に合致させるAF制御手段を設けた。
【0023】
CPU4は、ズームレンズ位置に応じたF値をズーム・フォーカス制御部11へ出力すると共に、F値に対応するズームレンズとフォーカスレンズの位置情報をレンズ位置情報制御部9を介して信号処理制御部8へ出力する。ズームレンズ位置に応じたF値は、図示しないが、外部記憶媒体上に形成されたデータベース上のテーブルに記録保管されているものとする。
【0024】
上記のように構成される撮像装置1は、以下の方法で露出を制御する。図2は、その露出制御方法の概略を示したフローチャートである。
以下の説明において、イメージセンサで撮像された一枚の静止画像を1フレームとし、単位時間内で読み取るフレーム枚数をフレームレートとする。そして、レンズの焦点距離をレンズ有効口径で割った値をF値とする。また、被写体及び該被写体周辺の光量を被写体輝度とし、レンズ後方の結像面上の光量を焦点輝度とする。
【0025】
所定周期で露出を制御する通常のAE制御は、ステップS10で、過去の周期で測定した被写体輝度値、及び過去に形成されたフレームに含まれる白色の割合(以下「白色含有率」という)から、それぞれ平均値を求める処理を行う。次にステップS15でズームレンズが現在移動していないと判断し、かつ、ステップS20で過去においても移動していないと判断した場合に、ステップS25以下に連なる各ステップで制御される。
【0026】
ステップS25は、AEデータが入力されるまで待機する処理ステップである。AEデータは、測光手段によって得られる被写体輝度と、イメージセンサの結像面上で形成された補正前の原画像である。AEデータが入力された場合、ステップS30に進む。
【0027】
ステップS30では、新たに入力された該AEデータから測光手段によって得られた被写体輝度を、原画像に関連付ける処理を行う。同時に、画像のホワイトバランスをとるために白色含有率を算出する処理が行われる。
【0028】
ステップS35では、ステップS10で算出した平均被写体輝度値と、ステップS30で関連付けた被写体輝度の値とから、新たに被写体輝度の平均輝度値を算出する更新処理が行われる。また並行して、ステップS10で算出した平均白色含有率と、ステップS30で算出した白色含有率とから、新たに平均白色含有率を算出する更新処理が行われる。平均輝度値及び平均白色含有率を算出することで、被写体の周辺環境の微細な変化に伴う被写体輝度値と白色含有率の細かな値の変動は、算出した平均値に吸収される。そのため、出力画像を表示装置等に映し出した際に、画像のチラつきを防ぐことができる。
【0029】
ステップS40では、算出した平均白色含有率と、出力画像が予め撮像装置側で設定された明るさとなるように1フレーム中に含まれる白色の割合を設定した設定白色含有率とから補正率を取得する。そして、該補正率に基づいて、平均白色含有率を設定白色含有率に補正するホワイトバランス補正処理を行う。
【0030】
ステップS45では、ステップ40で算出した補正率に基づいて、被写体輝度の平均輝度値を予め撮像装置側で設定された設定輝度値に補正する設定輝度補正処理を行う。
【0031】
ステップS50では、ステップ45で補正した設定輝度値と、平均輝度値との差から、イメージセンサ6のシャッタースピードの変更量を決定するシャッタースピード変更処理を行う。
【0032】
そして、ステップS130では、ステップS50で変更したシャッタースピードに基づいて、出力画像が予め設定された明るさとなるように、フレームレートの変更を行う。ステップS50でシャッタースピードを変更し、それに対応して、絞り効果を得ることのできるフレームレートを変更するので、適正な露出値を得ることができる。
【0033】
一方、ステップS20で、過去ズームレンズが移動していたと判断された場合には、上記のAE制御を行わず、ズームレンズの移動に伴って、後述する高速ズーミングのAE制御が既に行われていたものと判断し、フレームレートの調整等が行われるステップS130に進む。当該高速ズーミングで変更したイメージセンサのシャッタースピードが、通常のAE制御によって元に戻ってしまうことを防ぐためである。
【0034】
以上の各ステップを所定周期で行うことにより、通常のAE制御が行われている。ここで、ズームレンズの移動がステップS15で検知された場合、通常のAE制御を一旦中止して、以下に示すようなAE制御を行う。
【0035】
ステップS100では、F値が変化しているか否かを判断する。F値が変化している場合は、ステップS105に進む。この場合は、ズーミングの速度に対して、フォーカスレンズの反応が遅れたことが原因で、AF制御が間に合わず、レンズの焦点距離と有効口径との関係が一定に保持できないため、F値が変化する。一方、F値が変化していない場合は、ステップS110に進む。この場合は、フォーカスレンズがズーミングに追随できているため、レンズの焦点距離と有効口径との関係が一定に保持され、F値が変化しない。
【0036】
ステップS105では、高速ズーミングによるF値の変化に影響されて焦点輝度が露出過剰或いは露出不足の状態に陥ったものとして、焦点輝度の変化量を推定する処理を行う。そして、該推定変化量からシャッタースピードを変更する処理を行う。ここで、輝度は単位面積当たりで光束が通過する値であって、F値は光束が通過するレンズ口径に関する値であるので、変化前の焦点輝度をLf0とし、変化後の焦点輝度をL、変化前のF値をF0、変化後のF値をFとすると、「数1」のように表すことができる。
【0037】
【数1】

【0038】
また、イメージセンサを露光させる時間、すなわちシャッタースピードは被写体輝度に比例して定まるので、変化前の被写体輝度をLとし、変化後の被写体輝度をL、変化前のシャッタースピードをT、変化後のシャッタースピードをTとすると、被写体輝度の変化とシャッタースピードの変化については「数2」のように表すことができる。
【0039】
【数2】

【0040】
被写体輝度と焦点輝度が等しくなる場合には、上記の「数1」と「数2」の左辺が相殺され、数式3に示したように、変化前のシャッタースピードとF値の変化とから、変化後のシャッタースピードを求めることができる。したがって、高速ズーミングによって急激に変化した露出値に対するシャッタースピードは、変化前後のF値を比べることで求めることができる。
【0041】
【数3】

【0042】
そして、電子シャッター制御部によるシャッターのタイミングは、パルス制御されるので、一定周期で切られるシャッターのうち、連続するシャッタータイミングの前後でF値の変化を比較すれば、シャッター一回ごとのシャッタースピードの変化を求めることができる。しかし、そのようにするとシャッタースピードが一回ごとに細かく変化し、露出値に影響を及ぼす問題がある。そのため、次のステップS110と連動させて、シャッタースピードを変化させる。
【0043】
ステップS110では、フレームレートを変更する処理を行う。上記の問題を防ぐために、高速ズーミングの始端と終端でのF値の変化を比較し、始端でのシャッタースピードから終端でのシャッタースピードを算出する。そして、露出値が一定に保たれるようにフレームレートを変更する。露出値は、シャッタースピード値と、フレームレート制御による絞り値との和によって定まる。そのためシャッタースピードが速くなる場合には、フレームレートを下げて、単位時間に固定撮像子から読み出す画像を減らせば良い。一方、シャッタースピードが遅くなる場合には、フレームレートを上げて、単位時間に固定撮像子から読み出す画像を増やせば良い。
【0044】
そして、上記処理で定めたフレームレートに含まれるフレームの総数をF値の総変化量で割り、1フレーム毎のF値の変化量を決定する処理を行う。また並行して、1フレーム当りのF値の変化量に基づき、電子シャッターを一回切る毎のシャッタースピードを段階的に変化させる処理を行う。
【0045】
また、上記ステップS105でシャッタースピードを変更した場合だけでなく、ステップS105をパスしたときであっても、ステップS110の処理を行う場合がある。この場合、適正にAF制御がなされ、F値は一定に保たれている。しかし、ズーム操作に伴って焦点距離が変化すると共に絞り値が変化するので、露出値を一定に保持するためにもフレームレートの変更が必要となる。
【0046】
ステップS115では、ステップ110で決定したフレームレートを信号処理制御部8で実行し、該フレームレートに含まれる1フレーム毎のシャッタースピードを電子シャッター制御部7で実行する電子シャッター最適化処理を行う。このように最適化されたシャッタースピードとフレームレートによって、露出値を一定に保持することができ、そして、ズーミング最中にも表示画面等の明るさを一定の割合で変化させることができる。
【0047】
ステップS120では、上記設定したフレームレートが終了するまで待機する処理を行う。終了したと判断した場合には、ステップS125でズーミングを停止させる。ズーミングが停止すれば、上記のような高速ズーミングに伴うAE制御の例外的な処理を必要としない。しかしズーミングの始端と終端でフレームレートが変化しており、その終端での露出値は、その終端フレームレートで設定されているので、ズーミング前のフレームレートをズーミング後のフレームレートに変更する処理をステップS130で行う。そして、通常のAE制御ループに戻り、ステップS10に戻る。
【0048】
上記のAE制御ループでは、ズームレンズが移動するか、或いは、F値が変化して焦点輝度が変化した場合に、シャッタースピード及びフレームレートを変化させることで焦点輝度の変化を抑えるようにした。しかし、ズームレンズが現在、または過去にも作動せず固定されている場合であっても、AE制御においては、ホワイトバランスによって補正を行っているため、例えば撮像面に白い紙等が挿入された場合、画像に含まれる白色の割合が急変し、被写体輝度が急激に変化したと判断される場合がある。この場合、ズームレンズの移動や、F値の変化といった上記AE制御ループで用いたトリガを用いることができないので、対応することができない。
【0049】
そこで、そのような場合には、被写体輝度の変化に基づいて、焦点輝度の変化を抑えて出力画面の明るさの変化を抑制するように、以下の方法で露出を制御する。図3は、白検出等により繰り返して被写体輝度が変化した場合の焦点輝度の分布を示したものである。ここで点線で示した焦点輝度は、所定時間監視された被写体輝度を平均化した平均被写体輝度値から得られるものである。そして図4は、白検出後、被写体輝度が変化し、AE制御によって、所定周期で監視される被写体輝度値が時系列で積算され、平均被写体輝度値が更新された場合の焦点輝度の分布を示したものである。ここで点線で示した焦点輝度は、所定時間監視された被写体輝度を平均化した平均被写体輝度値に対して得られるものである。また、図3及び図4に示した複数個の○が焦点輝度である。
【0050】
ここで、カメラ周辺の色環境の急激な変化を原因として被写体輝度が変化した場合、露出値を一定に保つには、シャッタースピードを変化させる場合と、フレームレートを変化させる場合がある。フレームレートを制御した場合は、被写体輝度の変化の始端から終端に亘って、該被写体輝度の変化量を平均化し、一定の割合で変化させることが容易であるが即応性に欠ける。したがって、本実施例においては、以下に示すように、シャッタースピードによって被写体輝度の変化による焦点輝度の変化を抑制するようにした。
【0051】
パルス制御される電子シャッターを有する撮像装置1は、適正な露出値を得るために、前記電子シャッターとシンクロした測光手段によって被写体輝度を測光する。
【0052】
そして、一般的に変化前の輝度Lに対する変化後の輝度Lと、変化前のシャッタースピードTvに対する変化後のシャッタースピードTvとは、数式4に示したように比例関係にある。しかし、測光手段で監視する周期毎に被写体輝度が細かく変化している場合、各周期それぞれでシャッタースピードも連動して変化するので、出力画面の明るさがちらつき、非常に見づらくなるという問題がある。そのため、図3及び図4に示すように、一定周期毎に測光された被写体輝度は、平均化された平均被写体輝度値として、適正な焦点輝度へ補正されている。
【0053】
【数4】

【0054】
ここで、上記「数4」から、一定周期で観測される被写体輝度と、該被写体輝度に応じて設定されたシャッタースピードのうち、被写体輝度Ln−1で撮像したときのシャッタースピードTvn−1と、連続して観測された次の周期における被写体輝度LとシャッタースピードTvとの関係は、「数5」のように表すことができる。
【0055】
【数5】

【0056】
上記の「数5」より、一定周期で連続して観測された被写体輝度のうち、左辺に示した、後の被写体輝度Lに対するシャッタースピードTvは、右辺に示した、変化前後の被写体輝度の比、L/Ln−1と、先の被写体輝度Ln−1に対するシャッタースピードTvn−1とから求めることができる。ここで所定時間監視されている被写体輝度値を平均した平均被写体輝度値をLとし、被写体輝度が変化した場合に最初に測定された被写体輝度Lとし、LとLとの比を初期値とすると、該初期値に基づいた、次のシャッター時の被写体輝度Lは、図5(a)に示したように推定される。
【0057】
しかし、次に測定された被写体輝度Lが被写体輝度Lより暗かった場合や、明るかった場合には、そのときの被写体輝度の変化は、図5(b)及び図5(c)に示したようになる。このように被写体輝度が推定された変化から外れた場合に、以下に示すような補正を行って、被写体輝度が変化している場合に、焦点輝度を補正し、出力画面のちらつきを抑えることができる。
【0058】
図5(b)は、被写体輝度が大きくなる場合にシャッタースピードを補正するパターンを示すものである。図中の一点鎖線は、図5(a)で示したように推定された被写体輝度の変化である。図5(b)の左図に示したように、被写体輝度Lが、推定被写体輝度よりも暗くなった場合には、次に観測される被写体輝度Lが、平均被写体輝度値Lと最初に変化した被写体輝度値Lとの比による初期値から推定された被写体輝度になるようにシャッタースピードの補正をする。また、図5(b)の右図に示したように、被写体輝度Lが、推定被写体輝度よりも明るくなった場合には、次に観測される被写体輝度Lが、同様に推定された被写体輝度になるようにシャッタースピードの補正をする。
【0059】
一方、図5(c)は、被写体輝度が小さくなる場合にシャッタースピードを補正するパターンを示すものである。図中の一点鎖線は、図5(a)で示したように、推定された被写体輝度の変化である。図5(c)の左図に示したように、被写体輝度Lが、推定被写体輝度よりも明るくなった場合には、次に観測される被写体輝度Lが、平均被写体輝度値Lと最初に変化した被写体輝度値Lとの比による初期値から推定された被写体輝度になるようにシャッタースピードの補正をする。また、図5(c)の右図に示したように、被写体輝度Lが、推定被写体輝度よりも明るくなった場合には、次に観測される被写体輝度Lが、同様に推定された被写体輝度になるようにシャッタースピードの補正をする。
【0060】
したがって、測光手段において、被写体輝度が細かく変化して観測された場合であっても、その被写体輝度が一定割合で変化するものと推定し、シャッタースピードの補正をすることで、結像面上で観測された焦点輝度を補正し、出力画面上のちらつきを抑えることができる。
【0061】
また、図5(d)は、平均被写体輝度に対して、ちらつきの原因となるような白検出がされた場合のシャッタースピード補正パターンを示したものである。図中の一点鎖線は、平均被写体輝度を示したものである。ここで、白検出等で被写体輝度が上昇或いは下降し、その後、その原因が除かれて、被写体輝度が下降或いは上昇する場合、そのまま上昇した被写体輝度の分だけ反転させると、焦点輝度の変化が大きく出力画面に大きな影響を及ぼすので、以下のように補正を行う。
【0062】
図5(d)の左図は、通常の被写体輝度に対して暗い被写体輝度Lが測定され、その後、速やかに原因が除かれて通常の被写体輝度と等しい被写体輝度Lが測定された場合の補正パターンを示したものである。この場合、シャッタースピードを急に元へ戻すと、明るさの変化が際立つので、平均被写体輝度値Lと被写体輝度値Lの変化の比に対して、小さい所定値で正負逆転させる補正をすることにより、被写体輝度Lの際のシャッタースピードを補正して、明るさの変化を緩衝する。また図5(d)の右図は、平均被写体輝度Lに対して明るい被写体輝度Lが測定され、その後、速やかに原因が除かれて通常の被写体輝度と等しい被写体輝度Lが測定された場合の補正パターンを示したものである。この場合も上記と同様の補正をして、明るさの変化を緩衝を吸収する。
【0063】
図5(b)から図5(d)に示した補正パターンを、図3及び図4に施した場合の焦点輝度の変化を図6及び図7に示す。図6と図3を比較すると、焦点輝度の変化が大きく連続する図3に対して、図6に示した補正後においては、図3で現れていた三角形状の波形が、該波形の後方で緩やかに収束している。そのため、焦点輝度の変化が緩やかに収まり、出力画面のちらつきを抑制することができる。
【0064】
また、図7と図4とを比較すると、被写体輝度の変化に遅れ、その変化と同様に急激に焦点輝度が変化する図4に対して、図7に示した補正後においては、焦点輝度の変化が丸められ、図4で台形状に表されてたパルス波形が、略半円状の波形に変化する。そのため、焦点輝度は段階的に変化し、出力画面の明るさが急変することを防止できる。
【0065】
このように、外部の色環境の変化によって被写体輝度が変化した場合においても、シャッタースピードを補正し、焦点輝度の変化を抑制することができるので、出力画面がちらつくのを防ぐことができ、また、明るさを一様に変化させることができる。
【0066】
以上のAE制御によって、高速ズーミングによって焦点輝度が急激に変化した場合、または、外部の被写体輝度の変化によって焦点輝度が変化した場合にそれぞれ、シャッタースピードやフレームレートを制御して出力画像の明るさを一定に保つことができる。また、本実施例では、CCD、CMOS等の固体撮像子を用いて露出を制御したが、本実施例の露出制御方法は、絞り機構(メカニカルアイリス)によるAE制御に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本実施例に係る撮像装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本実施例に係る露出制御方法の概略を示したフローチャートである。
【図3】本実施例に係る撮像装置で測定された被写体輝度の上下に伴う焦点輝度の分布を示した説明図である。
【図4】本実施例に係る撮像装置で測定された被写体輝度に対して再度AE制御した場合の焦点輝度の変化を示した説明図である。
【図5】本実施例に係る露出制御方法において被写体輝度に対する焦点輝度の補正パターンを示した説明図である。
【図6】本実施例に係る露出制御方法によって、図3で示した焦点輝度を補正した場合を示した説明図である。
【図7】本実施例に係る露出制御方法によって、図4で示した焦点輝度を補正した場合を示した説明図である。
【符号の説明】
【0068】
1…撮像装置、2…撮像部本体、3…AF制御部、4…中央演算装置、5…レンズ群、6…イメージセンサ、7…電子シャッター制御部、8…信号処理制御部、9…レンズ位置情報制御部、10…ズーム・フォーカス装置、11…ズーム・フォーカス制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体撮像素子からなるイメージセンサと、光軸方向に沿って移動するズームレンズ及びフォーカスレンズと、受光素子とを有する撮像装置であって、
撮像された画像に含まれる白色の割合を基準に、撮像された画像の色補正をするホワイトバランス変更手段と、該ホワイトバランス変更手段の色補正処理に基づいて、前記イメージセンサのシャッタースピードとフレームレートとから露光時間を変更する自動露出制御手段と、ズームレンズにフォーカスレンズを連動させるオートフォーカス制御手段と、受光素子による測光手段とを設けた撮像装置において、
前記オートフォーカス制御手段のズームレンズのズーミング位置情報に応じて、ズームレンズが移動したか否かを判断し、
ズームレンズの移動に連動したフォーカスレンズのフォーカス位置情報から取得されるF値が、変化したか否かを判断し、
該F値が変化している場合に、変化前のF値と変化後のF値とから、その変化前後の焦点輝度変化量を推定し、
推定された焦点輝度の変化量から、変化前の焦点輝度に合わせた前記シャッタースピードを、変化後の焦点輝度に合わせたシャッタースピードへ変更すると共に、
該変更したシャッタースピードに応じて、変化前の焦点輝度に合わせた前記フレームレートを、変化後の焦点輝度に応じたフレームレートへ変更するようにしたことを特徴とする露出制御方法。
【請求項2】
ズームレンズの位置情報に応じて、ズームレンズが移動したか否かを判断し、
前記F値が変化していない場合であっても、ズームレンズが移動していると判断したときに、
ズームレンズ移動前の焦点輝度に合わせたフレームレートを、ズームレンズ移動後の該焦点輝度に合わせたフレームレートへ変更すると共に、
該変更したフレームレートに応じて、ズームレンズ移動前の焦点輝度に合わせたシャッタースピードを、ズームレンズ移動後の該焦点輝度に合わせたシャッタースピードへ変更するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の露出制御方法。
【請求項3】
前記ズームレンズの移動が無く、前記F値が変化していない場合であっても、
前記測光手段によって一定周期で監視されている被写体輝度が変化した場合に、
周期的に変化が検知される被写体輝度値のうち、前後に連続した該被写体輝度値の比に応じて、前記シャッタースピードを変更するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の露出制御方法。
【請求項4】
前記測光手段によって所定時間監視された被写体輝度を平均した平均被写体輝度値と、該測光手段によって最初に変化が検知された被写体輝度値との比を初期値とし、
該初期値に応じて変更した前記シャッタースピードを基準シャッタースピードとし、
その後、順次検知される被写体輝度値のうち、前後に連続した該被写体輝度値の比と、前記初期値とを比較して、該比が該初期値に合致しない場合、
前後に連続した該被写体輝度値の比に応じて変更したシャッタースピードを、前記基準シャッタースピードに補正するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の露出制御方法。
【請求項5】
固体撮像素子からなるイメージセンサと、光軸方向に沿って移動するズームレンズ及びフォーカスレンズと、受光素子とを有する撮像装置であって、
撮像された画像に含まれる白色の割合を基準に、撮像された画像の色補正をするホワイトバランス変更手段と、該ホワイトバランス変更手段の色補正処理に基づいて、前記イメージセンサのシャッタースピードとフレームレートとから露光時間を変更する自動露出制御手段と、ズームレンズにフォーカスレンズを連動させるオートフォーカス制御手段と、受光素子による測光手段とを設けた撮像装置において、
前記ズームレンズの移動を検知するズーミング検知手段と、
前記ズームレンズと連動して移動するフォーカスレンズのフォーカス位置情報を検知し、F値の変化を検知するF値検知手段と、
前記ズーミング検知手段で検知したズームレンズの移動距離、若しくはF値検知手段で検知したレンズを通過する光量の増減に基づき、前記イメージセンサの結像面上の焦点輝度が変化したと推定する焦点輝度推定手段と、
該焦点輝度推定手段で推定した焦点輝度の推定変化量に基づき、前記自動露出制御手段で制御中の前記シャッタースピードを変更するシャッタースピード変更手段と、
前記ズーミング検知手段で検知したズームレンズの移動距離に基づき、前記自動露出制御手段で制御中の前記フレームレートを変更するフレームレート変更手段とを設けたことを特徴とする撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−263492(P2008−263492A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105750(P2007−105750)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000000424)株式会社エルモ社 (104)
【Fターム(参考)】