説明

露地水耕栽培装置における植物安全生長のための改良

【課題】設備のコストダウンを図ると共に、災害から植物を直ちに保護することができる方法を提供する。
【解決手段】断熱性材料からなる栽培ボックス内部に植物の根を保持した状態で葉茎部をボックス上面に突出させ、上記ボックス内部の根に培養液を給排して露地水耕栽培を行い、
上記栽培中の植物に災害が近づいたとき、上記栽培ボックスを上下反転して、該栽培ボックスを屋根として、その下に植物保護スペースを形成すると共に、上記保護スペース内に上記植物葉茎部を位置させて災害から保護する、
露地水耕栽培における災害からの植物保護方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、露地水耕栽培において、栽培中の植物に及ぶ暴風、熱暑厳寒、降雪、降霜、害虫被害、過剰日照、強烈日差等の災害から植物を保護し健全生長を図る方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、さきに、培養液を入れた大型栽培槽を露地に設置し、その培養液面に植物を植えた多数パネルを浮かべ、各植物の根を培養液に浸して行う露地水耕栽培において、栽培する植物の日照時間の調整、暴風からの保護、熱暑厳寒からの保護、植物に付着した害虫の駆除を課題として、長い栽培槽の前部に駆動プーリーを、後部に従動プーリーをそれぞれ軸支し、上記両プーリーに無端ワイヤロープを走行駆動可能に掛け回して、上記培養液上面を走行する上部走行路と、上記駆動プーリーから反転して上記栽培槽の下を逆走して上記従動プーリーに戻る下部走行路とからなる循環走行路を形成し、上記無端ワイヤロープに多数枚の植物植設パネルを、該無端ワイヤロープとともに上部走行路を正常姿勢で、下部走行路を葉茎部を下にした反転姿勢で循環走行できるように連結し、上記下部走行路に、植物を収容すべき暗室を設けて日照時間を調整する発明、植物を案内すべき暴風退避室を設けた発明、植物を収容すべき冷暖房室を設けた発明、及び植物を案内すべき害虫駆除室を設けた発明をそれぞれ提案した。
【0003】
しかし、上記のいずれの発明も、大型栽培槽に加え、左右一対づつの駆動プーリーと従動プーリー及びワイヤロープによる大掛りなパネル循環搬送装置が必要であり、さらに下部走行路に設置する暗室、暴風退避室等は、六面の壁で覆うと共に、各室に植物植設パネルを案内する出入口にそれぞれ開閉ドアを設ける必要がある等、その設備にコストが掛かる欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2007−59457
【特許文献2】特願2007−321734
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、従来の大掛りな植物循環搬送装置を省略し、設備のコストダウンを図ると共に、露地水耕栽培において受ける各種災害から植物を直ちに保護することのできる植物保護方法、及び各種保護室つき露地水耕栽培装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本願第1発明は、
断熱性材料からなる栽培ボックス内部に植物の根を保持した状態で葉茎部をボックス上面に突出させ、上記ボックス内部の根に培養液を給排して露地水耕栽培を行い、
上記栽培中の植物に災害が近づいたとき、上記栽培ボックスを上下反転して、該栽培ボックスを屋根として、その下に植物保護スペースを形成すると共に、上記保護スペース内に上記植物葉茎部を位置させて災害から保護する、
露地水耕栽培における災害からの植物保護方法を提案する。
【0007】
本願第2発明は、
断熱性材料からなる平面矩形のボックス内部に根収納室を形成すると共に、上記ボックス上面から上記根収納室内に開通する複数の植えつけ孔を設け、該植えつけ孔に植えた植物の葉茎部をボックス上に、根を根収納室内にそれぞれ延ばし、上記根収納室内に培養液を給排する手段を備えてなる同形同寸法の多数栽培ボックスを左右支持台上に上下反転可能に支持し、
上記多数の栽培ボックスは、上下反転時に互に隣接して1枚板を形成するようにし、
上記多数栽培ボックスの下に、それらの反転時の1枚板を屋根とする植物の暴風雨退避室を設けた、
暴風雨退避室つき露地水耕栽培装置を提案し、
【0008】
本願第3発明は、
断熱性材料からなる平面矩形のボックス内部に根収納室を形成すると共に、上記ボックス上面から上記根収納室内に開通する複数の植えつけ孔を設け、該植えつけ孔に植えた植物の葉茎部をボックス上に、根を根収納室内にそれぞれ延ばし、上記根収納室内に培養液を給排する手段を備えてなる同形同寸法の多数栽培ボックスを左右支持台上に上下反転可能に支持し、
上記多数の栽培ボックスは、上下反転時に互に隣接して1枚板を形成するようにし、
上記多数栽培ボックスの下に、それらの反転時の1枚板を屋根とする冷、暖房室を設けた、
冷、暖房室つき露地水耕栽培装置を提案し、
【0009】
本願第4発明は、
断熱性材料からなるボックス内部に根収納室を形成すると共に、上記ボックス上面から上記根収納室内に開通する複数の植えつけ孔を設け、該植えつけ孔に植えた植物の葉茎部をボックス上に、根を根収納室内にそれぞれ延ばし、上記根収納室内に培養液を給排する手段を備えてなる多数栽培ボックスを左右支持台上に上下反転可能に支持し、
上記多数栽培ボックスの下に、浸漬液を入れた浸漬槽を設置し、上記多数栽培ボックスの反転により各植物の葉茎部を上記浸漬液中に浸漬して植物に付着した害虫を離脱又は殺虫する、
害虫駆除用浸漬槽つき露地水耕栽培装置を提案し、
【0010】
本願第5発明は、
断熱性材料からなるボックス内部に根収納室を形成すると共に、上記ボックス上面から上記根収納室内に開通する複数の植えつけ孔を設け、該植えつけ孔に植えた植物の葉茎部をボックス上に、根を根収納室内にそれぞれ延ばし、上記根収納室内に培養液を給排する手段を備えてなる多数栽培ボックスを左右支持台上に上下反転可能に支持し、
上記多数栽培ボックスの下に、それらの反転時に下に向いた植物葉茎部に対し液を噴射して植物に付着した害虫を落下させる液噴射器を固定又は多数栽培ボックスに沿って移動可能に設けると共に、上記噴射液及び害虫の落下を受け取る槽を設置した、
害虫駆除用液噴射装置つき露地水耕栽培装置を提案し、
【0011】
本願第6発明は、
断熱性遮光材料からなる平面矩形のボックス内部に根収納室を形成すると共に、上記ボックス上面から上記根収納室内に開通する複数の植えつけ孔を設け、該植えつけ孔に植えた植物の葉茎部をボックス上に、根を根収納室内にそれぞれ延ばし、上記根収納室内に培養液を給排する手段を備えてなる同形同寸法の多数栽培ボックスを左右支持台上に上下反転可能に支持し、
上記多数の栽培ボックスは、上下反転時に互に隣接して1枚板を形成するようにし、
上記多数栽培ボックスの下に、それらの反転時の1枚板を屋根とする植物用暗室を設けた、
暗室つき露地水耕栽培装置を提案し、
【0012】
本願第7発明は、
断熱性遮光材料からなるボックス内部に根収納室を形成すると共に、上記ボックス上面から上記根収納室内に開通する複数の植えつけ孔を設け、該植えつけ孔に植えた植物の葉茎部をボックス上に、根を根収納室内にそれぞれ延ばし、上記根収納室内に培養液を給排する手段を備えてなる1又は複数の栽培ボックスを左右支持台上に上下反転可能に支持し、
上記栽培ボックスの上下反転により、上記栽培ボックスを日差し避け屋根として、その下に日陰を形成すると共に、上記植物葉茎部を該日陰に位置させるようにした、
日陰つき露地水耕栽培装置を提案する。
【0013】
さらに、本願第8発明は、
各栽培ボックスの相対する左右側面に回転軸をそれぞれ突設してなる多数の栽培ボックスを、その各回転軸を左右支持台上の軸受にそれぞれ回転自在に支承させて、互に前後隣接状態に支持し、
上記各栽培ボックスの各一側の回転軸に、互に同径の内、外2個づつのスプロケットをそれぞれ固定し、上記スプロケットにおける前後隣り合う内側スプロケット同志及び外側スプロケット同志に無端チエンをそれぞれ掛け、そして回転駆動手段から1の回転軸に180度回転を伝達して各栽培ボックスを同方向へ同角度反転させるようにした、上記請求項2〜7のいずれかに記載の露地水耕栽培装置を提案する。
【発明の効果】
【0014】
本願第1発明の露地水耕栽培における災害からの植物保護方法によれば、栽培ボックスにて植物の栽培を行いながら、栽培中の植物に災害が近づいたときは、上記栽培ボックスを上下反転させて、該栽培ボックスを屋根とする植物保護スペースを形成すると共に、植物葉茎部を該保護スペース内に収容させ、それにより災害から植物を保護することができ、災害が止んだときは、栽培ボックスを再上下反転させて元の栽培状態に戻すことができるのである。
【0015】
本願第2〜第8発明によれば、培養液の給排される多数の栽培ボックスにて植物の栽培を行うから、従来のような大型の栽培槽、及び大掛りなパネル循環搬送装置が不要となり、設備費の大幅な節減をすることができるようになり、しかも本願第4発明以外の他の発明によれば、反転した栽培ボックスが暴風雨退避室、冷暖房室等の屋根を兼ねることができるから、設備費のさらなる削減を可能にすることができるのである。
【0016】
加えて、本願第2発明は、暴風雨、強風、又は大雨の前に各栽培ボックスを反転しておけば、各植物の葉茎部を退避室内に収容して暴風雨、強風、又は大雨から安全に保護することができるのであり、
【0017】
本願第3発明は、夏期の熱暑時や冬期の厳寒時及び降雪、降霜時に、そのまま露地栽培を続けると植物がダメージを受けるおそれがある場合に、各栽培ボックスを反転して植物の葉茎部を冷、暖房室内に収容して保護することができるのであり、
【0018】
本願第4発明は、植物の葉茎部に害虫が付着したとき、各栽培ボックスを反転して植物の葉茎部を浸漬槽の浸漬液中に浸漬して、害虫を植物から離脱させ、又は殺虫して駆除することができるのであり、
【0019】
本願第5発明は、同じく植物の葉茎部に害虫が付着したとき、各栽培ボックスを反転し、下向きになった各植物の葉茎部に液噴射器により液を噴射して害虫を植物から落下させ、駆除することができるのであり、
【0020】
本願第6発明は、栽培している植物が、その種に固有の1日当りの適正日照時間を超えた日照を受け続けると、生殖生長を促して花芽をつけてしまい、栄養生長は停滞してしまうことになる場合に、上記1日当りの適正日照時間が経過する前に、各栽培ボックスを反転して各植物の葉茎部を暗室内に収容してそれ以上の日照を打ち切り、以下毎日、1日の適正日照時間経過前の各栽培ボックスの反転を繰返して植物を所望の栄養生長に導くことができるのであり、
【0021】
本願第7発明は、強い日差しに弱い植物を栽培している場合、夏期の日差しの強いときには、栽培ボックスを上下反転して栽培ボックスの下に日陰をつくり、該日陰に植物葉茎部を位置させて植物を保護することができる。
【0022】
さらに、本願第8発明によれば、多数の栽培ボックスを同時に同方向に180度上下反転させることが可能となり、作業能率の向上を実現できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1発明の実施例の一部省略平面図である。
【図2】(イ)図1のA−A線断面図である。 (ロ)図1のB−B線に沿う一部省略断面図である。
【図3】(イ)第2発明の実施例の図1のC−C線と同一切断面による断面図である。(ロ)図1のB−B線と同一切断面による反転後の一部省略断面図である。
【図4】(イ)第3発明の実施例の図1のA−A線と同一切断面による断面図である。(ロ)培養液供給管の略線図である。
【図5】第3発明の実施例における注入排出管部分の拡大断面図である。
【図6】第4発明の実施例の図1のB−B線と同一切断面による一部省略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本願発明における上記「断熱性の材料」には、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂等の合成樹脂発泡体、又は合成樹脂発泡体と、合成樹脂板、木板、アルミニウム等軽金属板との複合材その他種々の断熱性のある材料が使用される。好ましくは、軽量断熱性材料が使用される。
【0025】
又、合成樹脂発泡体で栽培ボックスを形成した場合、その内外面に、ポリウレタン樹脂塗料等の防水性塗料を塗布しておくとよい。
【0026】
さらに、栽培ボックス内の根収納室内に、多数繊維を互に小間隙をあけててん絡してなる繊維マット、スポンジ、布、糸屑等の保水材を装入しておくのもよい。
【実施例】
【0027】
第2発明の実施例
以下図面を参照して本願第2発明の実施例について詳述する。図1、2において、本願発明において使用される栽培ボックス(1)は、発泡スチロール製の軽量、断熱材からなる長方形上板(2)と、同材料からなる長方形下板(3)とを重ね合わせ状態に接合し、その四周にアルミニウム合金、ステンレス鋼等の横断面コ字状の枠材(4)…を外側から被嵌すると共に、隣り合う枠材(4)…の側端部同志をネジ止め、ピン止め等により着脱自在に連結し、それにより平面を長方形、短辺がわ側面を逆台形状の扁平ボックスに形成してある。
【0028】
上記栽培ボックス(1)の内部には、図2(イ)に示すように、上下狭く、平面の広い根収納室(5)を形成し、ボックス上板(2)には、上記根収納室(5)を上面から開閉する複数(図では5個)の円形蓋板(6)…を着脱自在に嵌合し、各蓋板(6)…に、上面から根収納室(5)内に開通する植えつけ孔(7)…を貫通し、各植えつけ孔(7)…に植物(P)…を植えつけ、その葉茎部を上板(2)上に突出させた状態で、根を根収納室(5)内に展延させている。
【0029】
上記上板(2)の一側に、上端部を一部突出し、下端を上記根収納室(5)内に開口する培養液注入管(8)を、上板(2)他側に、上端を上記根収納室(5)内に開口し、下端部を上記下板(3)から一部突出する培養液排出管(9)をそれぞれ設け、このような栽培ボックス(1)…の各短辺がわ左右両側面の中心位置に、回転軸(10)、(11)をそれぞれ水平に突設してある。
【0030】
上記栽培ボックス(1)…を支持する支持フレーム(F)は、適宜高さで左右長の短い前後側枠(12)、(13)、同じ高さで前後長の長い左右側枠(14)、(15)及び底枠(16)からなる上面開口の箱形フレームで、上記側枠(12)、(13)及び(14)、(15)の上端に、それぞれ外方へ張り出す前後支持台(17)、(18)、左右支持台(19)、(20)を設けてあり、その左右支持台(19)、(20)上に、軸受(21)…、(22)…を、栽培ボックス(1)の前後幅と等しい中心間隔をあけてそれぞれ固定し、これら左右軸受(21)(22)、…に上記栽培ボックス(1)…の左右回転軸(10)(11)、…をそれぞれ回転自在に支承させて、多数の栽培ボックス(1)…を互に前後隣接状態で支持してある。
【0031】
上記栽培ボックス(1)…の回転駆動手段として、前部支持台(17)の側端部上にギャードモータ(23)を設置し、一方上記栽培ボックス(1)…の各右側の回転軸(11)…に互に同径の内側及び外側の2個のスプロケット(24)(25)、…をそれぞれ固定し(但し最後位のボックスには内側スプロケットのみ)、そして上記モータ(23)の出力軸に固定され、上記スプロケット(24)、(25)と同径の駆動スプロケット(26)から、最前位のボックス(1)の内側スプロケット(24)にチエン(27)を掛け、該最前位のボックス(1)の外側スプロケット(25)から第2位のボックス(1)の外側スプロケット(25)にチエン(28)を掛け、ついで第2位のボックス(1)の内側スプロケット(24)から第3位のボックス(1)の内側スプロケット(24)にチエン(29)を掛け、以下同様にチエン(30)、(31)…を掛け、最後位のボックス(1)のスプロケット(24)までチエン(n)を順次掛ける。
【0032】
かくしてモータ(23)の所要角度回転により各回転軸(11)が同方向へ同角度回転され、それにより各栽培ボックス(1)…が互に同方向へ同角度回転することとなる。上記モータ(23)は、回転角度制御型モータで、本例では180度づつ回転するよう調整されている。
【0033】
暴風雨退避室は次のようである。上記前後側枠(12)、(13)、左右側枠(14)、(15)及び底枠(16)に、板、孔あき板、金網等の風よけ板(32)…をそれぞれ張設し、それにより前後、左右側枠内に、上記栽培ボックス(1)…が180度反転したときに、各植物(P)…の葉茎部を支障なく収納できるスペース(e)を形成している。
【0034】
一方、上記栽培ボックス(1)…における、台形の平行対辺のうちの長辺に相当する部分の前後両側端部に、図2(ロ)に示すようにゴム、スポンジ等の柔軟弾性シール材(33)…をそれぞれ突設し、この場合本例では、正常時にも隣り合う栽培ボックス(1)(1)、…同志でシール材(33)(33)、…を圧接させているが、その位置から180度回転したときにも隣り合うボックス(1)(1)、…同志でシール材(33)(33)、…を圧接させ、上記スペース(e)の1枚板の屋根となって暴風雨退避室(E)を形成すると共に、該退避室内に各植物(P)…の葉茎部を収容する。
【0035】
さらに風の吹きこみを防ぐため、前後、左右支持台(17)、(18)、(19)、(20)の各外側端に壁(34)、(35)、(36)、(37)を起立し、各壁の上端に覆板(38)、(39)、(40)、(41)の基端部をヒンジ連結し、暴風時に、各覆板(38)〜(41)を揺動させて覆板先端部分を、反転した栽培ボックス(1)…の上面に当接し、それにより各栽培ボックス(1)…とスペース(S)との隙間を覆板(38)〜(41)で覆う。
【0036】
この場合、各覆板(38)〜(41)を覆い位置にロックする手段として、覆板先端部分を栽培ボックス(1)…の枠材(4)…に着脱自在にネジ止めするとよい。
【0037】
なお、栽培ボックス(1)…が正常姿勢にあるときの各ボックス(1)…の培養液注入管(8)…の上位に培養液供給管(42)を配置し、該供給管(42)の培養液供給口を各注入管(8)…の注入口に向けており、又培養液排出管(9)…の下位に培養液排送樋(43)を配置し、該排送樋(43)に各排出管(9)…からの排出液を受ける。
【0038】
さらに、栽培ボックス(1)…が反転姿勢に至ったときは、上記培養液排出管(9)が上向きの注入管として働くときは、その上位に培養液供給管(44)を配置し、又上記培養液注入管(8)が下向きの排出管として働くときは、その下位に培養液排送樋(45)を配置してある。
【0039】
上例の作用を操作とともに説明する。各栽培ボックス(1)…を正常姿勢で栽培を行っている図1、2の状態において、暴風雨、強風、又は大雨の予報に従い、その到来小時間前に、モータ(23)の始動によりチエン(27)、(28)、(29)、(30)、(31)…(n)を介して各栽培ボックス(1)…を図2(ロ)時計方向へ徐々に回転させ、180度回転したとき各栽培ボックス(1)…が隣り合うボックス同志、シール材(33)(33)、…を圧接して1枚板の屋根となって、スペース(e)との間に暴風雨退避室(E)を形成すると共に、各栽培ボックス(1)…の植物葉茎部を該退避室内に収容して暴風雨、強風、又は大雨から保護する。必要により覆板(38)、(39)、(40)、(41)をそれぞれ閉止し、ロック手段によりロックする。
【0040】
退避中も培養液注入管(8)を排出管として、培養液排出管(9)を注入管として各ボックス(1)…の根収納室(5)…への培養液注入排出を継続する。
【0041】
暴風雨、強風又は大雨がおさまったら、各覆板(38)、(39)、(40)、(41)を開いた後、モータ(23)の駆動により各栽培ボックス(1)…を図2(ロ)時計方向へ180度回転させて正常姿勢に戻す。
【0042】
第3発明の実施例
熱暑、厳寒時及び降雪、降霜時に、各栽培ボックス(1a)…の反転により植物を冷暖房室に収容する例である。
【0043】
図3(イ)、(ロ)に示すように、前後側枠(12a)、(13a)、左右側枠(14a)、(15a)、及び底枠(16a)に発泡スチロール板等の断熱板(32a)…をそれぞれ張設してスペース(ea)を形成し、又、左右側枠(14a)、(15a)と各栽培ボックス(1a)…の左右両側面との間を封止すべく、同図(イ)に示すように、左右側枠(14a)、(15a)がわに、柔軟弾性ゴム製のホース状シール材(45a)及びフィン形シール材(46a)を取りつけ、又最前端の栽培ボックス(1a)と前側枠(12a)との間、及び最後端の栽培ボックス(1a)と後側枠(13a)との間を封止すべく、前、後側枠(12a)、(13a)に柔軟弾性ゴム製のホース状シール材(47a)及びフィン形シール材(48a)をそれぞれ取りつけ(前側枠がわのシール材は図示略)、そして上記スペース(ea)の外部に設置されたヒートポンプ式冷暖房機(49a)の送風ダクト(50a)を上記スペース(ea)内に挿入してある。他の構造は図1、図2(イ)、(ロ)と実質的に同一である。
【0044】
各栽培ボックス(1a)…を正常姿勢から180度反転させれば、各栽培ボックス(1a)…を1枚板の屋根とする冷暖房室(Ea)を形成すると共に、該室(Ea)内に植物(Pa)…を収容し、熱暑時には冷房、厳寒時及び降雪、降霜時には暖房を行う。
【0045】
第4発明の実施例
各栽培ボックス(1b)…の反転により植物を害虫駆除用浸漬液中に浸漬する例である。
【0046】
図4(イ)に示すように、前後側枠、左右側枠(14b)、(15b)及び底枠(16b)からなるスペース(eb)内に、浸漬液として本例では水(51b)を入れた上面開放の箱形浸漬槽(52b)を設置し、風よけ板(32)、シール板(33)、覆板(38)、(39)、(40)、(41)を除き、栽培ボックスへの培養液注入排出装置が相違するが、他の構造は図1、図2(イ)、(ロ)と実質的に同一である。
【0047】
培養液注入排出装置は次のようである。栽培ボックス(1b)の一方の回転軸(10b)を中空軸として、内側端を根収納室(5b)内に開通する注入排出兼用管(53b)とし、該兼用管(53b)の外側突出部分を軸受(21b)に支承させると共に、各栽培ボックス(1b)…の兼用管(53b)…の外側先端を1本の培養液供給管(42b)の側面にそれぞれ接続し、該供給管(42b)の基端部を、同図(ロ)のように、タンク(54b)内の培養液(55b)中に入れたポンプ(56b)に接続してある。
【0048】
上記各兼用管(53b)…の軸受(21b)に近い部分に、スイベル継手(57b)を装着してあり、該スイベル継手(57b)は、図5に示すように、上記兼用管(53b)に開設された小孔(58b)、(58b)の部分にスイベルケース(59b)を回転自在に被嵌すると共に、該スイベルケース(59b)の下面に、培養液排送樋(43b)に向けて開口する排出小孔(60b)を設けてある。
【0049】
なお、上記スイベルケース(59b)は、適宜手段により上記排送樋(43b)に固定されている。
【0050】
各栽培ボックス(1b)…を180度反転させれば、各栽培ボックス(1b)に栽培されている植物(Pb)…の葉茎部が浸漬槽(52b)の水(51b)中に浸り、付着する害虫を離脱させる。浸漬は、短時間づつ繰り返し行うことにより、害虫の離脱を促進する。離脱した害虫のうち、水中に沈んだものは、水(51b)の濾過機に回収して駆除し、水面に浮遊するものは網等により回収して駆除する。
【0051】
上記離脱方式に替え、葉茎部を、害虫が窒息死するまで水(51b)中に浸漬して駆除する方式に使用することもできる。
【0052】
第5発明の実施例
各栽培ボックス(1c)…の反転により植物を害虫駆除用液噴射室に配置する例である。
【0053】
前後側枠(12c)(後側枠は図示略)、左右側枠(図示略)からなるスペース(ec)内面に防水板(32c)…を張り、底枠(16c)上に、落下する液及び害虫を受け取る底の浅い槽(61c)を設置し、該槽(61c)の上に、反転時の植物葉茎部から若干下位に水供給管(62c)…を配置し、各供給管(62c)…に水噴射ノズル(63c)…をそれぞれ設けてある。
【0054】
各栽培ボックス(1c)…への培養液注入排出装置は、図4(イ)、(ロ)、図5と実質的に同一であり、他の構造は図1、図2(イ)、(ロ)と実質的に同一である。
【0055】
各栽培ボックス(1c)…を180度反転させて1枚板の屋根を形成し、前後覆板(38c)(後覆板は図示略)、左右覆板(40c)(右覆板は図示略)をそれぞれ栽培ボックス(1c)…上に被装し、その状態で各噴射ノズル(63c)…から水を噴射して植物葉茎部に吹きつけ、それにより植物に付着する害虫を吹き落す。
【0056】
吹き落とされた害虫及び落下する水は槽(61c)に受け、これを濾過機に送って水は濾過し、害虫は回収して処分する。
【0057】
上記噴射ノズル(63c)…を有する1本の水供給管(62c)を栽培ボックス(1c)…に沿って往復移動させる構成にすることもできる。
【0058】
第6発明の実施例
各栽培ボックス(1d)…の反転により植物を暗室に収容し、所要の日照時間の調整を行う例である。
【0059】
図3(イ)、(ロ)と実質的に同一の栽培装置を使用する。この装置を用いて、一例として「ほうれん草」の日照時間調整の例について説明する。
【0060】
長日植物であるほうれん草の1日の限界日照時間は14時間であり、1日14時間をこえると早期に花芽をつけてしまい、葉茎が小型の段階で花芽をつけたほうれん草は商品価値がなくなる。
【0061】
そこで、便宜上図3の符号を利用して述べれば、各栽培ボックス(1a)…にて栽培しているほうれん草が日照時間を12時間経過したとき、各栽培ボックス(1a)…を180度回転させてほうれん草葉茎部を反転状態でスペース(ea)内に位置させ、ついで前後覆板(39a)(前部覆板は図示略)、左右覆板(40a)、(41a)をそれぞれ栽培ボックス(1a)…上に倒伏し、それらと弾性シール材(33a)…、(45a)…、(46a)…の封止作用によって上記スペース(ea)を暗室(Ea)に形成し、それによりほうれん草の日照を遮断する。
【0062】
この状態で、各栽培ボックス(1a)…への培養液注入排出を継続しつつ翌日朝まで日照遮断を行う。
【0063】
暗室(Ea)内では、好ましくは夏期に冷暖房機(49a)により適宜冷房し、冬期には適宜暖房する。又5〜15℃の低温で暗室におくと、植物は休眠状態となる。
【0064】
翌日、各覆板(39a)、(40a)、(41a)を開いた後、各栽培ボックス(1a)…を180度回転させて元の正姿勢に戻し、以下上記と同様に日照12時間の栽培と暗室収容を繰り返す。
【0065】
このように1日の日照を12時間に制限し、好ましくは低温を付加することによって、ほうれん草の生殖生長を停滞させつつ栄養生長を継続させて豊かな葉茎部に生長させる。
【0066】
第7発明の実施例
本例は、栽培ボックスの反転により植物を日陰におく最も簡単な例である。
【0067】
図4(イ)、(ロ)及び図5の装置から浸漬槽を除いたものと実質的に同一の栽培装置を使用し、便宜上同図の符号を用いて説明する。栽培中の植物に強い日差しが当り、そのままでは植物にダメージを与えるおそれがある場合は、栽培ボックス(1b)…を180度反転させ、それにより栽培ボックス(1b)…の下に日陰を形成すると共に、植物葉茎部を上記日陰に位置させて強い日差しを避ける。その間栽培ボックス内の根収納室に培養液の注入、排出を行う。
【符号の説明】
【0068】
1、1a、1b、1c 栽培ボックス
P、Pa、Pb、Pc 植物
5、5b 根収納室
7、7b 植えつけ孔
19、19a、19b、19c 左支持台
20、20a、20b、20c 右支持台
E 暴風雨退避室
Ea 冷暖房室
51b 浸漬液
52b 浸漬槽
63c 噴射ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱性材料からなる栽培ボックス内部に植物の根を保持した状態で葉茎部をボックス上面に突出させ、上記ボックス内部の根に培養液を給排して露地水耕栽培を行い、
上記栽培中の植物に災害が近づいたとき、上記栽培ボックスを上下反転して、該栽培ボックスを屋根として、その下に植物保護スペースを形成すると共に、上記保護スペース内に上記植物葉茎部を位置させて災害から保護する、
露地水耕栽培における災害からの植物保護方法。
【請求項2】
断熱性材料からなる平面矩形のボックス内部に根収納室を形成すると共に、上記ボックス上面から上記根収納室内に開通する複数の植えつけ孔を設け、該植えつけ孔に植えた植物の葉茎部をボックス上に、根を根収納室内にそれぞれ延ばし、上記根収納室内に培養液を給排する手段を備えてなる同形同寸法の多数栽培ボックスを左右支持台上に上下反転可能に支持し、
上記多数の栽培ボックスは、上下反転時に互に隣接して1枚板を形成するようにし、
上記多数栽培ボックスの下に、それらの反転時の1枚板を屋根とする植物の暴風雨退避室を設けた、
暴風雨退避室つき露地水耕栽培装置。
【請求項3】
断熱性材料からなる平面矩形のボックス内部に根収納室を形成すると共に、上記ボックス上面から上記根収納室内に開通する複数の植えつけ孔を設け、該植えつけ孔に植えた植物の葉茎部をボックス上に、根を根収納室内にそれぞれ延ばし、上記根収納室内に培養液を給排する手段を備えてなる同形同寸法の多数栽培ボックスを左右支持台上に上下反転可能に支持し、
上記多数の栽培ボックスは、上下反転時に互に隣接して1枚板を形成するようにし、
上記多数栽培ボックスの下に、それらの反転時の1枚板を屋根とする冷、暖房室を設けた、
冷、暖房室つき露地水耕栽培装置。
【請求項4】
断熱性材料からなるボックス内部に根収納室を形成すると共に、上記ボックス上面から上記根収納室内に開通する複数の植えつけ孔を設け、該植えつけ孔に植えた植物の葉茎部をボックス上に、根を根収納室内にそれぞれ延ばし、上記根収納室内に培養液を給排する手段を備えてなる多数栽培ボックスを左右支持台上に上下反転可能に支持し、
上記多数栽培ボックスの下に、浸漬液を入れた浸漬槽を設置し、上記多数栽培ボックスの反転により各植物の葉茎部を上記浸漬液中に浸漬して植物に付着した害虫を離脱又は殺虫する、
害虫駆除用浸漬槽つき露地水耕栽培装置。
【請求項5】
断熱性材料からなるボックス内部に根収納室を形成すると共に、上記ボックス上面から上記根収納室内に開通する複数の植えつけ孔を設け、該植えつけ孔に植えた植物の葉茎部をボックス上に、根を根収納室内にそれぞれ延ばし、上記根収納室内に培養液を給排する手段を備えてなる多数栽培ボックスを左右支持台上に上下反転可能に支持し、
上記多数栽培ボックスの下に、それらの反転時に下に向いた植物葉茎部に対し液を噴射して植物に付着した害虫を落下させる液噴射器を固定又は多数栽培ボックスに沿って移動可能に設けると共に、上記噴射液及び害虫の落下を受け取る槽を設置した、
害虫駆除用液噴射装置つき露地水耕栽培装置。
【請求項6】
断熱性遮光材料からなる平面矩形のボックス内部に根収納室を形成すると共に、上記ボックス上面から上記根収納室内に開通する複数の植えつけ孔を設け、該植えつけ孔に植えた植物の葉茎部をボックス上に、根を根収納室内にそれぞれ延ばし、上記根収納室内に培養液を給排する手段を備えてなる同形同寸法の多数栽培ボックスを左右支持台上に上下反転可能に支持し、
上記多数の栽培ボックスは、上下反転時に互に隣接して1枚板を形成するようにし、
上記多数栽培ボックスの下に、それらの反転時の1枚板を屋根とする植物用暗室を設けた、
暗室つき露地水耕栽培装置。
【請求項7】
断熱性遮光材料からなるボックス内部に根収納室を形成すると共に、上記ボックス上面から上記根収納室内に開通する複数の植えつけ孔を設け、該植えつけ孔に植えた植物の葉茎部をボックス上に、根を根収納室内にそれぞれ延ばし、上記根収納室内に培養液を給排する手段を備えてなる1又は複数の栽培ボックスを左右支持台上に上下反転可能に支持し、
上記栽培ボックスの上下反転により、上記栽培ボックスを日差し避け屋根として、その下に日陰を形成すると共に、上記植物葉茎部を該日陰に位置させるようにした、
日陰つき露地水耕栽培装置。
【請求項8】
各栽培ボックスの相対する左右側面に回転軸をそれぞれ突設してなる多数の栽培ボックスを、その各回転軸を左右支持台上の軸受にそれぞれ回転自在に支承させて、互に前後隣接状態に支持し、
上記各栽培ボックスの各一側の回転軸に、互に同径の内、外2個づつのスプロケットをそれぞれ固定し、上記スプロケットにおける前後隣り合う内側スプロケット同志及び外側スプロケット同志に無端チエンをそれぞれ掛け、そして回転駆動手段から1の回転軸に180度回転を伝達して各栽培ボックスを同方向へ同角度反転させるようにした、上記請求項2〜7のいずれかに記載の露地水耕栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−24110(P2012−24110A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247289(P2011−247289)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【分割の表示】特願2008−323138(P2008−323138)の分割
【原出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(395021239)株式会社生物機能工学研究所 (21)
【Fターム(参考)】