説明

青果の包装方法及び青果の包装形態

【課題】本発明の目的は、輸送中に受ける振動による青果の損傷を軽減又は防止して、品質を良好に保持する性能を有する青果の包装方法及び青果の包装形態を提供することである。
【解決手段】本発明に係る青果の包装形態100は、青果1を収容するための収容部11を有する透明パック10と、収容部11の内面11aを被覆し、かつ、内面11aに固定せずに配置した損傷防止用透明シート20とを備えた包装容器30に青果1を収容した青果の包装形態であって、青果1は、損傷防止用透明シート20に載せて、収容部11に収容され、損傷防止用透明シート20の青果1と接する面20aは、面20a同士で測定した静摩擦係数が0.30以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青果の包装方法及び青果の包装形態に関し、更に詳しくは、青果が輸送中に受ける振動による損傷を防止して、品質を良好に保持することができる青果の包装方法及び青果の包装形態に関する。
【背景技術】
【0002】
イチゴなどの果皮が柔らかい青果は、通常、プラスチック製の透明パックに収容された個包装体とされ、この個包装体を段ボール箱に複数個入れた状態で、産地から消費地まで輸送される。産地から消費地までは長距離であることが多く、輸送中の損傷が発生する問題がある。特に、青果がイチゴである場合、果実が軟化する春には、損傷する割合が増える。
【0003】
これまで、青果の損傷を防止する対策として、例えば、エアーサスペンションを装備した輸送トラックを利用する対策、又はダンボール箱自体の緩衝性を向上させて、路面からの振動衝撃を低減又は減衰させる対策が講じられている。また、容器内の湿気を適度に調整し、かつ、緩衝性を有するシートを、果実と果実との間に介在させることにより、輸送中の振動によって果実が転ぶ「オドリ」によって、果実が損傷するのを防止することができる包装形態が開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−67141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
青果の包装容器には、消費者が、外部から青果の品質を確認できるようにするために、透明性を有することが求められる。しかし、特許文献1に記載の包装形態では、パルプ繊維を含む不透明なシートを果実と果実との間に介在させるため、消費者が、外部から青果の品質を確認することができない。また、エアーサスペンションを装備した輸送トラックを利用する対策又はダンボール箱自体の緩衝性を向上させる対策では、輸送中の損傷の程度を定量的に評価できるほど、損傷防止効果が得られない。これまで、個包装体内での青果の挙動に着目した損傷防止の考え方はなかった。
【0006】
本発明の目的は、輸送中に受ける振動による青果の損傷を軽減又は防止して、品質を良好に保持する性能を有する青果の包装方法及び青果の包装形態を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、個包装体内の青果の挙動に着目したところ、青果の損傷は、オドリが原因ではなく、青果と透明パックとの静摩擦係数が極めて高いことによる果皮の引張りであることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明に係る青果の包装方法は、透明パックの収容部の内面を、損傷防止用透明シートで被覆し、かつ、該損傷防止用透明シートを前記収容部の内面に固定せずに配置する工程1と、青果を、前記損傷防止用透明シートに載せて、前記収容部に収容する工程2とを有し、前記損傷防止用透明シートの前記青果と接する面は、該面同士で測定した静摩擦係数が0.30以下であることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る青果の包装方法は、前記工程2の後に、前記収容部の開口部を前記損傷防止用透明シートで被覆し、該損傷防止用透明シートの端部を前記透明パックの外面に固定する工程3を有することが好ましい。青果が脱落するのを防止することができる。
【0009】
本発明に係る青果の包装方法は、前記青果が、イチゴである形態を包含する。
【0010】
本発明に係る青果の包装形態は、青果を収容するための収容部を有する透明パックと、前記収容部の内面を被覆し、かつ、該内面に固定せずに配置した損傷防止用透明シートとを備えた包装容器に青果を収容した青果の包装形態であって、前記青果は、前記損傷防止用透明シートに載せて、前記収容部に収容され、前記損傷防止用透明シートの前記青果と接する面は、該面同士で測定した静摩擦係数が0.30以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る青果の包装形態では、前記損傷防止用透明シートは、前記収容部の内面の展開図形と合同又は相似の形状の内壁被覆部と、前記収容部の開口部の形状と合同又は相似の形状の開口部被覆部とを有し、かつ、前記内面被覆部と前記開口部被覆部とは、一体のシートからなることが好ましい。収容部の内面を、より確実に被覆することができる。また、収容部の開口部を被覆するフィルムを別途用意する必要が無く、包装形態をより簡略化することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、輸送中に受ける振動による青果の損傷を軽減又は防止して、品質を良好に保持する性能を有する青果の包装方法及び青果の包装形態を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る青果の包装形態の一例を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】透明パックの一例を示す斜視図である。
【図4】損傷防止用透明シートの一例を示す正面図である。
【図5】図4に示す損傷防止用透明シートを組み立てた斜視図である。
【図6】包装容器の一例を示す斜視図である。
【図7】図6のB−B断面図である。
【図8】図6に示す包装容器に青果としてのイチゴを収容した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明する。次に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0015】
図1は、本実施形態に係る青果の包装形態の一例を示す斜視図である。図2は、図1のA−A断面図である。本実施形態に係る青果の包装形態100は、青果1を収容するための収容部11を有する透明パック10と、収容部11の内面11aを被覆し、かつ、内面11aに固定せずに配置した損傷防止用透明シート20とを備えた包装容器30に青果1を収容した青果の包装形態であって、青果1は、損傷防止用透明シート20に載せて、収容部11に収容され、損傷防止用透明シート20の青果1と接する面20aは、面20a同士で測定した静摩擦係数が0.30以下である。
【0016】
青果1は、特に限定されないが、例えば、イチゴ、イチジク、ぶどう、桃、びわ、梨、サクランボなどの果物、トマト、ミニトマト、なすなどの野菜を包含する。この中で、イチゴは、出荷数量が多く、外皮が汁気を多く含み柔らかいため、特に有効である。
【0017】
図3は、透明パックの一例を示す斜視図である。透明パック10は、図3に示すように、青果1を収容するための収容部11を有する。収容部11は、上方に開口部12を有するトレー状である。収容部11は、例えば、図3に示すように、略四角形の底面壁14と底面壁14の各辺から立設する側面壁15とで形成されている。底面壁14及び側面壁15には、通常、補強を目的とした凹凸(不図示)が形成されている。この凹凸があると、収容部11の内面11aと損傷防止用透明シート20との間には、隙間が存在するが、図2ではこの隙間を不図示とした。また、開口部12の周辺には、通常、鍔状のフランジ13が形成されている。なお、本発明は、透明パック10の形状に制限されない。透明パック10の変形形態としては、例えば、開口部12及び底面壁14が円形の有底筒状である収容部を有する形態、蓋付きの形態である。
【0018】
透明パック10の材質は、特に限定されないが、例えば、ポリスチレン(PS)、非晶質ポリエチレンテレフタレート(A‐PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ乳酸(PLA)である。この中で、透明性が高く、かつ、成形性に優れる点から、PSがより好ましい。ここで、「透明」とは、収容部11に収容された青果1を目視で確認できること、すなわち透視可能なことをいい、無色透明のもののほか、表面につや消し処理をしたもの、着色されたのもの又は一部に印刷がなされたものを包含する。
【0019】
損傷防止用透明シート20は、プラスチックフィルムである。損傷防止用透明シート20の材質は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、である。この中で、シート同士の静摩擦係数が小さく、かつ、安価である点で、PEがより好ましい。なお、本実施形態では、損傷防止用透明シート20が、単層体であるか、又は積層体であるかを問わない。損傷防止用透明シート20の肉厚は、10〜30μmであることが好ましい。ここで、「透明」とは、透明パック10と同様に、収容部11に収容された青果1を目視で確認できること、すなわち透視可能なことをいい、無色透明のもののほか、表面につや消し処理をしたもの、着色されたのもの又は一部に印刷がなされたものを包含する。
【0020】
損傷防止用透明シート20は、図2に示すように、一方の面20aを青果1側に向け、他方の面20bを収容部11の内面11a側に向けて収容部11内に配置される。損傷防止用透明シート20の青果1と接する面20aは、面20aと面20aとの面同士で測定した静摩擦係数が0.30以下である。より好ましくは、0.20以下である。損傷防止用透明シート20の青果1と接する面20a同士の静摩擦係数が0.30を超えると、損傷防止用透明シート20と青果1の外皮とが滑らず、両者が密着して、損傷防止用透明シート20に密着した青果1の外皮が輸送中に損傷することを防止できない。また、損傷防止用透明シート20の収容部11の内面11aと接する面20bは、面20bと面20bとの面同士で測定した静摩擦係数を0.30以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.20以下である。損傷防止用透明シート20の収容部11の内面11aと接する面20b同士の静摩擦係数が0.30を超えると、損傷防止用透明シート20と透明パック10とが滑らず、密着が増して、損傷防止用透明シート20に接触した青果1の外皮が輸送中に損傷することを防止できない。損傷防止用透明シート20と収容部11の内面11aとの滑りを良好とすることで、輸送中の振動によって、両者がずれることを利用して、青果1に伝達する振動エネルギーを軽減することができ、青果1の損傷を防止することができる。なお、面20aと面20aとの面同士又は面20bと面20bとの面同士の静摩擦係数で規定した理由は、損傷防止用透明シート20の固有の滑りやすさが、青果1と損傷防止用透明シート20との滑り性又は収容部11の内面11aと損傷防止用透明シート20との滑り性と関連があったためである。また、損傷防止用透明シート20の表面の静摩擦係数を小さくするための手段としては、例えば、シートの材質として静摩擦係数の小さなものを選択する方法、表面に滑り性を有するコーティングを施す方法、界面活性剤、スリップ剤などの助剤を添加する方法、又は表面に凹凸を形成する方法である。
【0021】
次に、静摩擦係数の測定方法について説明する。静摩擦係数は、例えば、摩擦試験機(傾斜法)(摩擦角測定機AN 東洋精機製作所社製)を用いて測定することができる。まず、損傷防止用透明シート20を2枚用意する。一方の損傷防止用透明シート20を傾斜板上に固定する。他方の損傷防止用透明シート20を金属ブロック(寸法:縦165mm×横65mm×高さ20mm、荷重1kg)の表面に貼り付ける。この透明シート20を表面に貼り付けた金属ブロックを傾斜板上に固定した損傷防止用透明シート20の上に、測定面同士が接触するように置き、傾斜速度3.5°/秒で傾斜板を傾けたとき、損傷防止用透明シートを表面に貼り付けた金属ブロックが滑り始める角度(摩擦角)θを測定する。このときのtanθが静摩擦係数である。なお、損傷防止用透明シート20の摩擦角θは、16.5°以下であることが好ましい。より好ましくは、12.5°以下である。
【0022】
図4は、損傷防止用透明シートの一例を示す正面図である。図4に示す損傷防止用透明シート20は、図3に示す透明パック10の収容部11に対応した形状を有するものである。本実施形態に係る青果の包装形態100では、図4に示すように、損傷防止用透明シート20は、収容部11の内面11aの展開図形と合同又は相似の形状の内面被覆部21と、収容部11の開口部12の形状と合同又は相似の形状の開口部被覆部22とを有し、かつ、内面被覆部21と開口部被覆部22とは、一体のシートからなることが好ましい。内面被覆部21は、透明パック10の底面壁14の形状と合同又は相似の形状の底面被覆部24と透明パック10の側面壁15の形状と合同又は相似の形状の側面壁被覆部25とを有する。開口部被覆部22は、開口部12を被覆して、青果1が脱落するのを防止する役割をもつ。従来の青果の包装形態では、開口部12は、別体のカバーフィルムを用いて被覆されていたが、本実施形態では、内面被覆部21と開口部被覆部22とを一体のシートとすることで、収容部11の開口部12を被覆するフィルムを別途用意する必要が無く、包装形態をより簡略化することができる。
【0023】
図5は、図4に示す損傷防止用透明シート20を組み立てた斜視図である。損傷防止用透明シート20を、図4に示すような収容部11の展開図形とすることで、図5に示すように、損傷防止用透明シート20で透明パック10の収容部11と合同又は相似の立体形状を形成して、収容部11の内面11aを、より確実に被覆することができる。さらに、作業効率を向上することができる。なお、開口部被覆部22が長辺側の側面壁被覆部25に連接した形態を示したが、図4に示す展開図形に限定されず、例えば、短辺側の側面壁被覆部25に連接していてもよい。また、その他の損傷防止用透明シート20の変形形態としては、例えば、収容部11と合同又は相似の立体形状を有するトレー状とした形態、袋状とした形態など損傷防止用透明シート20だけで独立した容器を形成する形態である。なお、損傷防止用透明シート20だけで独立した容器を形成した場合、この容器を透明パック10の収容部11に装着した後、青果1を詰めるか、又はこの容器に青果1を詰めた後、これを透明パック10の収容部11に入れてもよい。
【0024】
図6は、包装容器の一例を示す斜視図である。図7は、図6のB−B断面図である。図6及び図7に示すように、包装容器30は、透明パック10の収容部11の内面11aを、損傷防止用透明シート20で被覆し、かつ、損傷防止用透明シート20を収容部11の内面11aに固定せずに配置した構造を有する。透明パック10及び損傷防止用透明シート20は、ともに透明であるため、消費者が外側から青果1の品質を確認することができる。損傷防止用透明シート20の端部20cが、収容部11の外面又はフランジ13に固定されていることが好ましい。図6及び図7は、損傷防止用透明シート20の端部20cをフランジ13に固定した形態を示す。なお、図6及び図7では、損傷防止用透明シート20が収容部11の内面11aの全領域を被覆する形態を示したが、損傷防止用透明シート20は、青果1と収容部11の内面11aとが接触しないように配置すればよく、収容部11の内面11aの一部に被覆していない領域があってもよい。
【0025】
次に、青果1が輸送中に損傷するメカニズムについて説明する。本発明者は、研究の結果、青果1の外皮表面の静摩擦係数が極めて高いという知見を得た。例えば、青果1としてのイチゴ(とちおとめ、20g/個)と透明パック10を想定したポリスチレン製のプラスチック板との静摩擦係数は、本発明者が測定したところによると、2.0〜4.0であった。このような高い静摩擦係数が得られた理由は、青果1の外皮の表面を覆う無数の毛によるものであると考えられる。ここで、イチゴとポリスチレン製のプラスチック板との静摩擦係数は、損傷防止用透明シート20の静摩擦係数の測定に用いた摩擦角測定機では、青果1が転がって測定できないため、JIS K 7125:1999「プラスチック−フィルム及びシート‐摩擦係数試験方法」に準拠した水平摩擦試験装置(摩擦係数試験機 日本TMC社製)を用いて測定した。ポリスチレン製のプラスチック板上に、イチゴを置き、水平にイチゴを引張り、イチゴが滑りだす引張り強度を測定し、このときの強度Nをイチゴの質量で割った値を静摩擦係数として求めた。青果1を透明パック10に直接収容すると、前記の高い静摩擦係数のために、青果1は収容部11の内面11aに強く密着するため、輸送による振動では、青果1は動かない。しかし、振動エネルギーが、収容部11の内面11aに密着した青果1の外皮を剥がすように作用することで、青果1が損傷するものと本発明者は推測する。なお、本発明者が、青果1の損傷が発生する輸送条件を検証したところ、例えば、青果1としてのとちおとめイチゴをポリスチレン製の透明パックに直接収容した場合では、加速度0.3G及び周波数10Hzの縦振動を、300秒(3000回)与えると、損傷が発生していた。これに対して、本実施形態に係る包装形態に青果1としてのとちおとめイチゴを収容した場合では、同条件の縦振動を900秒以上与えても、損傷が発生しなかった。本実施形態に係る包装形態100では、収容部11の内面11aに固定されていない損傷防止用透明シート20を青果1と収容部11の内面11aとの間に介在させることで、両者が接触するのを防止し、青果1に伝達する振動エネルギーを軽減して、輸送時の損傷を防止することができる。
【0026】
次に、青果の包装方法について、図6〜図8を参照して説明する。図8は、図6に示す包装容器に青果としてのイチゴを収容した断面図である。
【0027】
本実施形態に係る青果の包装方法は、図6及び図7に示すように、透明パック10の収容部11の内面11aを、損傷防止用透明シート20で被覆し、かつ、損傷防止用透明シート20を収容部11の内面11aに固定せずに配置する工程1と、図8に示すように、青果1を、損傷防止用透明シート20に載せて、収容部11に収容する工程2とを有し、損傷防止用透明シート20の青果1と接する面20aは、面20a同士で測定した静摩擦係数が0.30以下である。
【0028】
工程1では、まず、透明パック10と損傷防止用透明シート20とを用意する。次に、透明パック10の収容部11内に、損傷防止用透明シート20を収容部11の内面11aには固定せずに配置する。このとき、損傷防止用透明シート20の端部20cを、収容部11の外面又はフランジ13に固定することが好ましい。図6及び図7は、損傷防止用透明シート20の端部20cをフランジ13に固定した形態を示す。固定方法は、特に限定されず、例えば、ヒートシールによる方法、超音波シールによる方法、接着剤、粘着テープなどの副資材を用いる方法である。
【0029】
工程2では、図8に示すように、青果1を損傷防止用透明シート20に載せて並べる。青果1は、例えば、イチゴなどの比較的小さなものの場合には、二段積み又は三段積みなど複数段に重ねた状態で収容する。
【0030】
本実施形態に係る青果の包装方法は、工程2の後に、図2に示すように、収容部11の開口部12を損傷防止用透明シート20で被覆し、損傷防止用透明シート20の端部20dを透明パック10の外面に固定する工程3を有することが好ましい。損傷防止用透明シート20で開口部12を被覆するときは、損傷防止用透明シート20と青果1との間に隙間が生じるように余裕をもたせて被覆することが好ましい。このように被覆することで、輸送中の青果1の損傷をより安定的に防止することができる。
【0031】
透明パック10の外面は、例えば、フランジ13の表面、側面壁15の外面、底面壁14の外面である。図2では、損傷防止用透明シート20の端部20dをフランジ13の表面に固定した形態を示した。損傷防止用透明シート20の端部20dを透明パック10の外面に固定することで、青果1が脱落するのを防止することができる。固定方法は、損傷防止用透明シート20の端部20cを、収容部11の外面又はフランジ13に固定する方法として例示した方法を用いることができる。
【実施例】
【0032】
次に、実施例を示しながら本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定して解釈されない。
【0033】
(実施例1)
透明パック10として、トレー(材質:PS、寸法:縦160mm、横115mm、深さ45mm、肉厚20μm)を用意した。また、損傷防止用透明シート20として、PEシート(肉厚10μm)を用い、図4に示すような展開図形とした。透明パック10の収容部11内に、損傷防止用透明シート20を配置し、青果1としてイチゴ(とちおとめ)300gを二段積みで収容した。その後、開口部12を損傷防止用透明シート20で被覆して、フランジ13に固定し、実施例1の青果の包装形態を得た。
【0034】
(比較例1)
実施例1と同様の透明パック10を用い、損傷防止用透明シート20を用いず、透明パック10に青果1としてのイチゴを直接収容した。開口部12は、カバーフィルム(材質:PS、肉厚10μm)で被覆し、比較例1の青果の包装形態を得た。
【0035】
(静摩擦係数)
静摩擦係数は、摩擦試験機(傾斜法)(摩擦角測定機AN 東洋精機製作所社製)を用いて測定した。測定面は、損傷防止用透明シート20として用いたPEシートのイチゴと接触する面同士、及び透明パック10の収容部11の内面11a同士とした。まず、損傷防止用透明シート20を2枚用意した。一方の損傷防止用透明シート20を傾斜板上に固定し、他方の損傷防止用透明シート20を金属ブロック(寸法:縦165mm×横65mm×高さ20mm、荷重1kg)の表面に貼り付けた。この透明シート20を表面に貼り付けた金属ブロックを傾斜板上に固定した損傷防止用透明シート20の上に、測定面同士が接触するように置き、傾斜速度3°/秒で傾斜板を傾けて、損傷防止用透明シートを表面に貼り付けた金属ブロックが滑り始める角度(摩擦角)θを測定した。静摩擦係数をtanθとして求めた。損傷防止用透明シート20として用いたPEシートのイチゴと接触する面同士の静摩擦係数は、0.07であった。また、透明パック10の収容部11の内面11a同士の静摩擦係数は、0.5であった。
【0036】
(振動試験)
実施例1及び比較例1の青果の包装形態について、加速度0.3G及び周波数10Hzの縦振動を与え、300秒後、600秒後、900秒後に損傷の有無を確認し、最初に損傷を確認した時間を記録した。比較例1は、300秒であったのに対し、実施例1は、900秒を経過しても損傷が確認されなかった。
【0037】
実施例1では、イチゴを損傷防止用透明シート20に載せて収容し、青果1と接する面の、面同士で測定した静摩擦係数を0.30以下とすることで、青果1に伝達する振動エネルギーを軽減して、輸送時の損傷を防止することができることが確認できた。
【符号の説明】
【0038】
1 青果
10 透明パック
11 収容部
11a 収容部の内面
12 開口部
13 フランジ
14 底面壁
15 側面壁
20 損傷防止用透明シート
20a 損傷防止用透明シートの青果と接する面
20b 損傷防止用透明シートの収容部の内面と接する面
21 内面被覆部
22 開口部被覆部
24 底面被覆部
25 側面壁被覆部
30 包装容器
20c,20d 損傷防止用透明シートの端部
100 包装形態

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明パックの収容部の内面を、損傷防止用透明シートで被覆し、かつ、該損傷防止用透明シートを前記収容部の内面に固定せずに配置する工程1と、
青果を前記損傷防止用透明シートに載せて、前記収容部に収容する工程2とを有し、
前記損傷防止用透明シートの前記青果と接する面は、該面同士で測定した静摩擦係数が0.30以下であることを特徴とする青果の包装方法。
【請求項2】
前記工程2の後に、前記収容部の開口部を前記損傷防止用透明シートで被覆し、該損傷防止用透明シートの端部を前記透明パックの外面に固定する工程3を有することを特徴とする請求項1に記載の青果の包装方法。
【請求項3】
前記青果が、イチゴであることを特徴とする請求項1又は2に記載の青果の包装方法。
【請求項4】
青果を収容するための収容部を有する透明パックと、前記収容部の内面を被覆し、かつ、該内面に固定せずに配置した損傷防止用透明シートとを備えた包装容器に青果を収容した青果の包装形態であって、
前記青果は、前記損傷防止用透明シートに載せて、前記収容部に収容され、
前記損傷防止用透明シートの前記青果と接する面は、該面同士で測定した静摩擦係数が0.30以下であることを特徴とする青果の包装形態。
【請求項5】
前記損傷防止用透明シートは、前記収容部の内面の展開図形と合同又は相似の形状の内壁被覆部と、前記収容部の開口部の形状と合同又は相似の形状の開口部被覆部とを有し、かつ、前記内面被覆部と前記開口部被覆部とは、一体のシートからなることを特徴とする請求項4に記載の青果の包装形態。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−39951(P2013−39951A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178842(P2011−178842)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(000201641)全国農業協同組合連合会 (69)
【Fターム(参考)】