説明

青果物の保存容器および青果物の保存方法

【課題】青果物の瑞々しい外観を保つことができることで長期間保存することができる青果物の保存容器および青果物の保存方法を提供する。
【解決手段】保存容器10は、苺Sを密閉状態で個々に収納する凹部20aが形成された容器本体20に、苺Sに接して水分を補給する保水材30を備えたものである。保水材30は、粒状に形成された吸水性ポリマーにシラスを混在させたものが使用できる。この凹部20aに苺Sを収納するときに、粒状に形成された保水材30に蔕Hが接するように、蔕Hを下にした状態で配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜や果物などの青果物を長期間保存しても鮮度を保つことができる果実の保存容器および青果物の保存方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
青果物の一例である果実を長期間保存する技術に関し、例えば、特許文献1,2に記載されたものが知られている。
特許文献1の「イチゴの鮮度保持方法」には、イチゴ側に位置する透水性シートと、高吸水性樹脂と、透水性あるいは非透水性シートとを加熱エンボス加工により圧着してなる積層吸水性シートを、トレー内に敷設し、この積層吸水性シート上にイチゴを載せることで、イチゴからのドリップ、結露水を吸水することで、水分活性の上昇、雑菌の繁殖を抑制することができることが記載されている。
【0003】
また、特許文献2の「青果物の保存シート、前記シートを使用した青果物保存用品および前記シートを使用した青果物保存方法」には、樹脂フィルムで形成された青果物保存用袋の内部に、液吸収層と樹脂フィルム層とが積層され、保存用袋の内面に凝縮した水分を吸収する青果物保存用シートと、野菜や果物の被保存物とを収納し、袋の開口部を密閉し、冷蔵庫に保管することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−14701号公報
【特許文献2】特開2006−288271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1,2に記載の技術では、余分な水分を吸収する点においては長期保存に適していると思われるが、水分を吸収する余りに密閉された容器内が過度に乾燥してしまうと、果肉などの実部分はある程度耐えられるが、蔕は萎れたり枯れたりする。蔕の萎れは、鮮度の低下が外観から視認できるため問題である。
【0006】
そこで本発明は、青果物の瑞々しい外観を保つことができることで長期間保存することができる青果物の保存容器および青果物の保存方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の果実の保存容器は、青果物を密閉状態で個々に収納する凹部が形成された容器本体と、前記凹部の底部に、青果物に接して水分を補給する保水材とを備えたことを特徴する。
また、本発明の果実の保存方法は、青果物を個々に収納する凹部が形成され、前記凹部の底部に、保水した状態の保水材が配置された容器本体に、蔕を下にした青果物を前記保水材に蔕が接した状態で収納するステップと、前記凹部に蓋をして密閉状態とするステップとを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、保水材が水分を吸収し、保水材に接した状態で収納された青果物に水分を補給するので、蔕の萎れや枯れを防止することができる。
【0009】
前記凹部に青果物を収納するときに、青果物の蔕を下にして、粒状に形成された保水材に接した状態で配置するのが望ましい。
前記保水材が粒状に形成されていると、青果物と接する部分の保水材が青果物の輪郭に合致した形になるので、安定した状態で青果物を保持させることができる。また、青果物の輪郭に合致した形になった保水材は、青果物と接する面積を広く確保することができるので、蔕のように異型であっても蔕全体に水分を補給することができる。更に、粒状の保水材は、緩衝材としても機能するので、振動や衝撃から青果物を保護することができる。
【0010】
前記容器本体は、青果物の蔕を下にして前記保水材に接した状態で前記凹部に青果物が収納されたときに、前記青果物の実部分と前記凹部の周壁部との間に隙間が確保できるように形成されているのが望ましい。
容器本体の凹部の周壁部と青果物の実部分との間に隙間が無く接した状態であると、実部分が軟化して劣化してしまうが、容器本体は青果物の実部分が接しないように形成されているので、青果物が軟化することが防止できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、保水材が水分を吸収し、保水材に接した状態で収納された青果物に水分を補給して、蔕の萎れや枯れを防止することができる。従って、青果物の瑞々しい外観を保つことができるので、青果物を長期間保存することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る保存容器を示す図であり、(A)は容器上部が開いた状態を示す図であり、(B)は(A)は容器上部が閉じた状態を示す図である。
【図2】(A)から(D)は、本発明の実施の形態に係る苺の保存方法の各ステップを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態に係る青果物の保存容器を図面に基づいて説明する。
図1に示す保存容器10は、青果物の一例である苺Sを収納して長期間保管するためのものである。保存容器10は、苺Sを収納する容器本体20と、水分を苺Sに補給する保水材30とを備えている。
【0014】
容器本体20は、苺Sの収納状態が外部から視認できる透明ケースである。容器本体20は、苺Sを個々に収容するための凹部20aが奥行き方向に2列に並べられた容器下部21と、凹部20aのそれぞれの蓋となる容器上部22とが、一方の端辺で繋がっている。本実施の形態では、容器本体20を透明ケースとしたが、色つきケースなどの不透明ケースや遮光ケースとしてもよい。
凹部20aは、保水材30を底部に敷き、苺Sの蔕Hを下にして配置したときに、苺Sの実部分である果肉と周壁部20bとの間に隙間ができる大きさに形成されている。
本実施の形態では、容器本体20として、奥行き方向の凹部20aが2列のものを使用しているが、3列や5列、それ以上の容器を使用してもよい。また、容器本体20は容器下部21と容器上部22とが一方の端辺で繋がっているが、容器下部21と容器上部22とが繋がっていなくてもよい。
【0015】
保水材30は、この容器下部21の凹部20aの底部に培地として配置されている。保水材30は、粒状の吸水性ポリマー材にシラスを添加したものである。
本実施の形態では、吸水性ポリマー材として、水分を吸収して保水するだけでなく、適度な水分量を放出することができるものを使用している。
シラスは、白色粗鬆な火山噴出物、およびそれに由来する二次堆積物が急速加熱処理されることで、シラスバルーンと称される約20μm以下の中空球状となったものである。
【0016】
以上のように構成された本発明の実施の形態に係る青果物の保存方法について、図面に基づいて説明する。
図2(A)に示すように、まず保存容器10を準備し、保水材30を配置する。図2(B)に示すように容器上部22が開いた状態で、水を噴霧して、保水材30に給水する。
【0017】
次に、図2(C)に示すように、保水材30が設けられた容器本体20の凹部20aに、苺Sを配置する。このとき、苺Sの蔕Hが保水材30に接するように蔕Hを下にして配置する。
次に、図2(D)に示すように容器上部22を容器下部21に被せ蓋をする。容器上部22により容器下部21に蓋をする際に、両面テープ20cで容器上部22を容器下部21に貼り合わせて密閉状態とする。貼り合わせるものとしては、両面テープの他に、接着できるのであれば、容器下部21と容器上部22とを合わせたときの周縁部全体を外側から貼り付ける片面の接着テープとしてもよいし、液状の接着剤としてもよい。
このようにして苺Sを収納した保存容器10を、−2℃以下となる氷点下域の温度に保たれた氷温貯蔵庫にて保管する。
【0018】
保存容器10では、苺Sが密閉状態で保存されているので、苺Sから排出された炭酸ガスにより容器内の炭酸ガス濃度が高くなり、酸素濃度が低くなることで、自然作用によるCA貯蔵(Controlled Atmosphere Storage)の状態となるため、長期間の保存が可能である。また、苺Sを氷点下域の温度で冷蔵しているので、新陳代謝の抑制とカビの発生防止とを同時に図ることができる。
【0019】
CA貯蔵の状態における保存は、苺Sの果肉に対して効果的であるが、蔕Hについては萎れや枯れが心配される。しかし、保存容器10には水を含ませた保水材30が凹部20aの底部に蔕Hに接するように設けられているので、保水材30からの水分が蔕Hに補給されるので、いつまでも瑞々しい蔕Hを維持することができる。
【0020】
また、保存容器10は苺Sを個々に収納するものであり、凹部20aの周壁部20bは、苺Sと接していないため、果肉が他の物と接することで発生する果肉表面の軟化を防止することができる。
【0021】
また、保水材30は、粒状に形成されていることにより、苺Sと接する部分の保水材30が苺Sの輪郭に合致した形になるので、安定した状態で苺Sを保持させることができる。また、苺Sの輪郭に合致した形になった保水材30は、苺Sと接する面積を広く確保することができるので、蔕Hの周囲全体に水分を補給することができる。更に、粒状の保水材30は、緩衝材としても機能するので、振動や衝撃から苺Sを保護することができる。従って、苺Sを収納した保存容器10を氷温貯蔵庫へ保管したり、取り出して出荷したりしても、果肉が凹部20aの周壁部20bと接しない状態のまま、保存容器10を運搬することができる。
【0022】
保水材30を吸水性ポリマー材とシラスとを混合したものとすることで、吸水性ポリマー材が保持した水分を粉末状のシラスが浸透圧の関係からゆっくりと取り出して苺Sへ補給させることができる。また、シラスが保水材30全体の容積を増量することができるため、吸水性ポリマー材だけで保水材30を構成するより安価とすることができる。また、シラスが緩衝材としての機能を発揮することで、苺Sに対して保持性が向上し、振動や衝撃から苺Sを保護することができる。
【0023】
なお、本実施の形態では、保水材30として粒状のものを使用しているが、吸水性ポリマー材をシート状にしたものも使用することができる。しかし、上述のように保水材30は、苺Sを収納したときに蔕Hを包み込むように配置できる点や緩衝材としての機能を有する点など優れた機能を備えているため、保水材30は粒状とするのが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、青果物として苺の他、トマト、柿などの果実とする以外に、茄子や葱、ニラなどの野菜の長期保管に好適である。
【符号の説明】
【0025】
10 保存容器
20 容器本体
20a 凹部
20b 周壁部
20c 両面テープ
21 容器下部
22 容器上部
30 保水材
S 苺
H 蔕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
青果物を密閉状態で個々に収納する凹部が形成された容器本体と、
前記凹部の底部に、青果物に接して水分を補給する保水材とを備えたことを特徴する青果物の保存容器。
【請求項2】
前記保水材は、粒状に形成されたものである請求項1または2記載の青果物の保存容器。
【請求項3】
前記容器本体は、青果物の蔕を下にして前記保水材に接した状態で前記凹部に青果物が収納されたときに、前記青果物の実部分と前記凹部の周壁部との間に隙間が確保できるように形成されている請求項1または2記載の青果物の保存容器。
【請求項4】
前記保水材は、吸水性ポリマー材にシラスを混在させたものである請求項1から3のいずれかの項に記載の青果物の保存容器。
【請求項5】
青果物を個々に収納する凹部が形成され、前記凹部の底部に、保水した状態の保水材が配置された容器本体に、蔕を下にした青果物を前記保水材に蔕が接した状態で収納するステップと、
前記凹部に蓋をして密閉状態とするステップとを含むことを特徴とする青果物の保存方法。
【請求項6】
前記凹部に青果物を収納するときに、粒状に形成された保水材に蔕が接した状態で配置する請求項5記載の青果物の保存方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−43667(P2013−43667A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181639(P2011−181639)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(511205600)有限会社プレール (1)
【Fターム(参考)】