説明

青果物の変色防止剤

【課題】優れた青果物の変色防止剤を提供すること。
【解決手段】本発明は、果汁と、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、およびエタノールからなる群より選択される少なくとも3種とを含有する、青果物の変色防止剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青果物の変色防止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
剥皮またはカットしたバナナ、りんごなどの青果物は、その表面が時間の経過と共に変色すること(黄変、褐変、黒変など)が知られている。このような変色は、青果物、青果物の加工品(例えば、フィリング、ジャムなど)、または青果物をそのままトッピングした菓子(例えば、バナナケーキ、フルーツゼリーなど)などの商品価値を著しく低下させる。
【0003】
そのため、青果物の変色を防止するために種々の変色防止剤が提案されている。例えば、特許文献1には、ポリフェノールオキシダーゼ活性阻害剤および可食性フィルムコーティング剤を含有する果物および野菜の変色防止剤が記載されている。特許文献2には、フラボノイドを含む有効量の抗酸化剤の1種以上を含有する溶液が、剥皮またはカットした野菜または果物の劣化を防止することが記載されている。しかし、これらの変色防止剤が有する青果物の変色防止効果は十分とはいえず、青果物の長期間の品質保持は困難である。さらに、これらの変色防止剤は、青果物の味覚に違和感を与えやすい。
【特許文献1】特開平7−289163号公報
【特許文献2】特表2003−524427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、青果物の長期間の品質保持が可能な、優れた青果物の変色防止剤を提供することにある。本発明の目的は、さらに青果物の味覚に悪影響を与えない、あるいは青果物に良好な風味を付与することが可能な青果物の変色防止剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、果汁と、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、およびエタノールからなる群より選択される少なくとも3種とを組み合わせることによって、それぞれ単独では得られない相乗的な青果物の変色防止効果が得られることを見出した。そして糖アルコールを組み合わせることによって更なる青果物の変色防止効果が得られること、あるいは糖または酒類を組み合わせることによって青果物の味覚に悪影響を与えない、あるいは青果物に良好な風味を付与することができることを見出して本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明の青果物の変色防止剤は、果汁と、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、およびエタノールからなる群より選択される少なくとも3種とを含有する。
【0007】
好ましい実施態様においては、さらに、糖アルコールを含有する。
【0008】
好ましい実施態様においては、さらに、糖および酒類のうちの少なくとも1種を含有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、果汁と、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、およびエタノールのうちの少なくとも3種とを含有する、優れた青果物の変色防止剤が提供される。この青果物の変色防止効果は、それぞれの成分単独では得られない相乗的な効果である。本発明の青果物の変色防止剤は、さらに青果物の乾燥を防止する効果も有し、既存の変色防止剤に比べて青果物の風味に影響を与えにくいため、青果物または該青果物を生のまま含有する菓子などの品質保持に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の青果物の変色防止剤は、果汁と、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、およびエタノールからなる群より選択される少なくとも3種とを含有する。さらに、必要に応じて、糖アルコール、糖、酒類などのその他の添加物を含有し得る。以下、まず各成分について説明する。
【0011】
(1)果汁
本発明に用いられる果汁は、青果物の搾汁、抽出物、またはそれらの濃縮物(濃縮果汁)であれば特に制限されない。酸化防止効果を有する成分を含有する果汁、特にアスコルビン酸含量が高い果汁が好適に用いられる。このような果汁としては、例えば、アセロラ果汁、レモン果汁、グレープフルーツ果汁、グアバ果汁、キウイフルーツ果汁、すだち果汁、ゆず果汁、カムカム果汁、シークワーサー果汁などが挙げられる。青果物の変色防止効果を高める点から、アセロラ果汁、グアバ果汁、およびカムカム果汁が特に好適に用いられる。上記果汁は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
(2)アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、およびエタノール
本発明においては、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、およびエタノール(以下、4種の化合物という場合がある)からなる群より選択される少なくとも3種の化合物を組み合わせて用いる。これらの化合物の少なくとも3種を用いることによって、優れた青果物の変色防止効果を得ることができる。これらの成分の組み合わせは、対象とする青果物などに応じて適宜設定されればよく、特に制限されない。最も好ましくはアスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、およびエタノールの4種の化合物のすべてを加えた組み合わせである。
【0013】
上記アスコルビン酸、クエン酸、およびフィチン酸は、当業者が食品添加物として通常用いるアスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、またはそれらの塩が好適に用いられる。アスコルビン酸塩としては、例えば、アスコルビン酸ナトリウムなどが挙げられる。クエン酸塩としては、例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウムなどが挙げられる。
【0014】
(3)添加物
(糖アルコール)
本発明に用いられる糖アルコールとしては、例えば、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、還元パラチノース、マルチトール、ラクチトールなどが挙げられる。好ましくはソルビトールである。糖アルコールは、さらに優れた変色防止効果を得る目的で含有される。
【0015】
(糖または酒類)
本発明に用いられる糖としては、例えば、メイプルシロップ、黒糖、はちみつ、コンデンスミルク、および水飴が挙げられる。本発明に用いられる酒類としては、例えば、果実酒(ワインなど)、ウイスキー、ブランデー、リキュールなどの洋酒、日本酒、および焼酎が挙げられる。糖または酒類は、青果物に良好な風味を付与する目的で含有される。
【0016】
次に、本発明の変色防止剤について説明する。
【0017】
本発明の青果物の変色防止剤に含有される果汁の量は、青果物の味覚に影響を与えない範囲で設定すればよく、特に制限されない。好ましくは上記変色防止剤中に果汁が1〜50質量%、より好ましくは15〜50質量%、さらに好ましくは25〜50質量%含有される。なお、果汁として濃縮果汁を用いる場合は、天然果汁の濃度に換算した値が上記範囲を満たすような量に設定すればよい。例えば、アセロラ5倍濃縮果汁を用いる場合は、好ましくは上記変色防止剤中に0.2〜10質量%、より好ましくは3〜10質量%、さらに好ましくは5〜10質量%含有される。
【0018】
本発明の青果物の変色防止剤に含有される上記4種の化合物の量は、特に制限されない。特に4種の化合物のうちで、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸などの酸味に影響を与える成分を含む場合は、得られる変色防止剤のpHまたは酸度に応じて、あるいは青果物の味覚に影響を与えない範囲で設定され得る。上記変色防止剤中に、クエン酸は好ましくは1.0〜25質量%、アスコルビン酸は好ましくは0.1〜25質量%、フィチン酸は好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは0.1〜10質量%、およびエタノールは好ましくは1〜80質量%、より好ましくは1〜20質量%含有される。4種の化合物は、全体量で上記変色防止剤中に好ましくは1.2〜80質量%、より好ましくは2〜60質量%、さらに好ましくは5〜50質量%含有される。
【0019】
本発明の青果物の変色防止剤には、変色防止効果を損なわない範囲で上記添加物が含有される。例えば、糖アルコールは、好ましくは上記変色防止剤中に0.1〜40質量%、より好ましくは1〜20質量%含有される。糖は、好ましくは上記変色防止剤中に1〜50質量%含有される。そして酒類は、好ましくは上記変色防止剤中に0.1〜20質量%含有される。
【0020】
本発明の青果物の変色防止剤は、青果物中に含有される変色に起因する酵素を失活させる点から、pHが好ましくは酸性、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.0以下、最も好ましくは1.4以下である、あるいは酸度が好ましくは1.0以上、より好ましくは2.0以上、さらに好ましくは3.0以上、最も好ましくは3.5以上である。上記のpHおよび酸度に設定すると、通常、酸味により青果物の味覚に影響を与え得るが、本発明の青果物の変色防止剤は、青果物の味覚に違和感を与えることなく、優れた変色防止効果を発揮する。
【0021】
本発明の青果物の変色防止剤は、種々の青果物に使用することができる。このような青果物は、カットあるいは剥皮した場合に変色する青果物であれば特に制限されない。例えば、バナナ;もも;りんご;なし;プラム;柿;いちじく;アボガド;マンゴー;ごぼう、じゃがいも、さつまいも、里芋、山芋などの根菜類などが挙げられる。好ましくはバナナである。対象となる上記青果物の形態は、特に制限されない。例えば、未処理の青果物そのままであってもよいし、予めカットまたは剥皮した青果物であってもよいし、あるいは菓子のトッピング用などに用いられる加工品(フィリング、ジャムなど)であってもよい。
【0022】
本発明の青果物の変色防止剤は、液状、粉末状などの種々の形態であり得、対象となる青果物の形態などに応じて適宜使用される。例えば、上記未処理の青果物またはカットもしくは剥皮した青果物に対しては、変色防止剤の原液または希釈液中に浸漬させる、あるいは変色防止剤の原液または希釈液を直接噴霧することによって使用される。具体的には、変色防止剤中に、カットした青果物を1秒間〜10分間程度浸漬させ、その後、青果物を液切りして回収する。これによって、変色防止処理された青果物またはカットもしくは剥皮した青果物を得ることができる。なお、希釈液の調製は、通常、水を加えることによって行われる。変色防止効果を発揮する観点から、変色防止剤の体積の20倍程度、好ましくは5倍程度まで希釈することが可能である。
【0023】
あるいは、上記青果物の加工品(フィリング、ジャムなど)に対しては、本発明の青果物の変色防止剤を、青果物の加工時に直接練りこんで使用してもよい。例えば、バナナペースト中に練りこむ場合、上記変色防止剤が、バナナペースト中に好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上の割合で含有するように添加される。好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下の割合で含有するように添加される。
【実施例】
【0024】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明がこの実施例に制限されないことはいうまでもない。
【0025】
以下の実施例および比較例において、果汁とは、濃縮果汁を本来の濃度にまで精製水を用いて希釈したものをいう。例えば、アセロラ果汁はアセロラ5倍濃縮果汁を精製水で5倍に希釈して調製したものである。
【0026】
(実施例1〜5)
アセロラ果汁、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、エタノール、および添加剤としてソルビトール(70%含有液)、食塩、および水を表1に記載の割合で混合して試験液を調製した(試験液1〜5とする)。
【0027】
試験液1〜5を用いて、バナナの変色防止効果を以下のようにして評価した。まず、バナナを長さが均一になるようにカットし、このカットバナナを上記試験液1中に浸漬させ、約5秒間保持した。浸漬処理したバナナを液切りした後、10℃にて保存した。保存開始から12時間までは2時間毎に、保存開始12時間から120時間までは12時間毎にバナナの色の変化を目視にて観察し、変色した時間を確認することによって変色防止効果を評価した。結果を表1に示す。
【0028】
(比較例1〜14)
アセロラ果汁、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、エタノール、および添加剤としてソルビトール(70%含有液)、食塩、および水を表1に記載の割合で混合して各試験液を調製した(試験液6〜19とする)。試験液6〜19を用いて、実施例1と同様にして、バナナの変色防止効果を評価した。結果を表1に併せて示す。
【0029】
【表1】

【0030】
表1の結果から、実施例1〜5のアセロラ果汁と、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、およびエタノール(4種の化合物)のうちの少なくとも3種とを含有する試験液(試験液1〜5)で浸漬処理したバナナは、長時間変色しないことがわかる。これらの試験液1〜5は、いずれもアセロラ果汁を25質量%しか含有しないにもかかわらず、アセロラ果汁のみを50質量%以上または100質量%含有する比較例1および2の試験液(試験液6および7)に比べて、非常に優れた変色防止効果を有していた。このことは、試験液1〜5がアセロラ果汁単独では得られない相乗的な変色防止効果を有することを示す。これらの中でも、特にアセロラ果汁と、アスコルビン酸、クエン酸、およびフィチン酸とを含有する試験液1および2、さらにアセロラ果汁と、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、およびソルビトールの4種のすべての化合物とを含有する試験液2がより優れた変色防止効果を有していた。
【0031】
これに対して、比較例5〜8のアセロラ果汁と、4種の化合物のうちの1種とを含有する試験液10〜13、あるいは比較例9〜14のアセロラ果汁と、4種の化合物のうちの2種とを含有する試験液14〜19で浸漬処理したバナナは、いずれも60時間以内に変色しており、十分な変色防止効果は得られなかった。
【0032】
以上のことから、本発明のアセロラ果汁と、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、およびエタノールのうちの少なくとも3種とを含有する変色防止剤は、相乗的でかつ優れた変色防止効果を有することがわかる。
【0033】
(実施例6〜8および比較例15)
アセロラ果汁、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、エタノール、および添加剤としてソルビトール(70%含有液)、食塩、および水を表2に記載の割合で混合して試験液を調製した(試験液20〜23)。試験液20〜23を用いて、実施例1と同様にして、バナナの変色防止効果を評価した。結果を表2に示す。
【0034】
【表2】

【0035】
表2の結果から、実施例6〜8のアセロラ果汁と、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、およびエタノールのうちの少なくとも3種とを含有する試験液(試験液20〜22)で浸漬処理したバナナは、比較例15のアセロラ果汁を含有しない試験液(試験液23)に比べて、長時間変色しないことがわかる。特に、アセロラ果汁を25質量%以上含有する試験液(試験液20および21)は、優れた変色防止効果を有することがわかる。
【0036】
(実施例9〜15)
表3に記載の果汁、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、エタノール、および添加剤としてソルビトール(70%含有液)、食塩、および水を表3に記載の割合で混合して試験液を調製した(試験液24〜30)。試験液24〜30を用いて、実施例1と同様にして、バナナの変色防止効果を評価した。結果を表3に示す。
【0037】
【表3】

【0038】
表3の結果から、実施例9〜15の果汁と、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、およびエタノールのうちの少なくとも3種とを含有する試験液(試験液24〜30)で浸漬処理したバナナは、長時間変色しないことがわかる。これらの中でも、特にアセロラ果汁を含有する試験液(試験液24)が優れた変色防止効果を有していた。
【0039】
(実施例16〜20)
アセロラ果汁、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、エタノール、および添加剤としてソルビトール(70%含有液)、はちみつ、洋酒、食塩、および水を表7に記載の割合で混合して試験液を調製した(試験液31〜35)。試験液31〜35を用いて、実施例1と同様にして、バナナの変色防止効果を評価した。結果を表4に示す。
【0040】
さらに、各試験液で処理したバナナを、10名の被験者にそれぞれ試食させ、以下の評価基準で採点し、平均点を算出した。さらに、得られた平均点の小数点第1位を四捨五入して味覚の点数とした。結果を表4に示す。
【0041】
(味覚の評価基準)
1:バナナの味に影響がなく、非常に風味がよい。
2:バナナの味に影響がなく、風味がよい。
3:バナナの味に影響がない。
4:バナナの味としては酸味を感じる。
5:バナナの味としては酸味が強い。
【0042】
【表4】

【0043】
表4の結果から、実施例16〜20のアセロラ果汁と、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、およびエタノールのうちの少なくとも3種とを含有する試験液(試験液31〜35)で浸漬処理したバナナは、長時間変色しないことがわかる。さらに、はちみつまたは洋酒を含有する試験液31〜34を用いて浸漬処理したバナナは、自然なバナナの風味を有し、違和感がなかった。
【0044】
(実施例21〜25)
グアバ果汁、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、エタノール、および添加剤としてソルビトール(70%含有液)、はちみつ、洋酒、食塩、および水を表5に記載の割合で混合して試験液を調製した(試験液36〜40とする)。試験液36〜40を用いて、実施例1と同様にして、バナナの変色防止効果を評価した。結果を表5に示す。
【0045】
(比較例16〜29)
グアバ果汁、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、エタノールおよび添加剤としてソルビトール(70%含有液)、はちみつ、洋酒、食塩、および水を表5に記載の割合で混合して試験液を調製した(試験液41〜54とする)。試験液41〜54を用いて、実施例1と同様にして、バナナの変色防止効果を評価した。結果を表5に併せて示す。
【0046】
【表5】

【0047】
表5の結果から、実施例21〜25のグアバ果汁と、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、およびエタノール(4種の化合物)のうちの少なくとも3種とを含有する試験液(試験液36〜40)で浸漬処理したバナナは、長時間変色しないことがわかる。これらの試験液36〜40は、いずれもグアバ果汁を25質量%しか含有しないにもかかわらず、グアバ果汁のみを50質量%以上または100質量%含有する比較例16および17の試験液(試験液41および42)に比べて、非常に優れた変色防止効果を有していた。このことは、試験液36〜40がグアバ果汁単独では得られない相乗的な変色防止効果を有することを示す。これらの中でも、特にグアバ果汁と、アスコルビン酸、クエン酸、およびフィチン酸とを含有する試験液36および37、さらにグアバ果汁と、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、およびソルビトールの4種のすべての化合物とを含有する試験液37がより優れた変色防止効果を有していた。
【0048】
これに対して、比較例20〜23のグアバ果汁と、4種の化合物のうちの1種とを含有する試験液45〜48、あるいは比較例24〜29のグアバ果汁と、4種の化合物のうちの2種とを含有する試験液49〜54で浸漬処理したバナナは、いずれも60時間以内に変色しており、十分な変色防止効果は得られなかった。
【0049】
以上のことから、本発明のグアバ果汁と、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、およびエタノールのうちの少なくとも3種とを含有する変色防止剤は、相乗的でかつ優れた変色防止効果を有することがわかる。
【0050】
(実施例26〜28および比較例30)
グアバ果汁、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、エタノール、および添加剤としてソルビトール(70%含有液)、はちみつ、洋酒、食塩、および水を表6に記載の割合で混合して試験液を調製した(試験液55〜58)。試験液55〜58を用いて、実施例1と同様にして、バナナの変色防止効果を評価した。結果を表6に示す。
【0051】
【表6】

【0052】
表6の結果から、実施例26〜28のグアバ果汁と、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、およびエタノールのうちの少なくとも3種とを含有する試験液(試験液55〜57)で浸漬処理したバナナは、比較例30のグアバ果汁を含有しない試験液(試験液58)に比べて、長時間変色しないことがわかる。特に、グアバ果汁を25質量%以上含有する試験液(試験液55および56)は、優れた変色防止効果を有することがわかる。
【0053】
(実施例29〜31)
グアバ果汁、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、エタノール、および添加剤としてソルビトール(70%含有液)、はちみつ、洋酒、食塩、および水を表7に記載の割合で混合して試験液を調製した(試験液59〜61)。試験液59〜61を用いて、実施例1と同様にして、バナナの変色防止効果を評価した。結果を表7に示す。
【0054】
【表7】

【0055】
表7の結果から、実施例29〜31のグアバ果汁と、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、およびエタノールのうちの少なくとも3種とを含有する試験液(試験液59〜61)で浸漬処理したバナナは、長時間変色しないことがわかる。特に、ソルビトールを含む試験液59および60は、優れた変色防止効果を有していた。
【0056】
(実施例32〜36)
グアバ果汁、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、エタノール、および添加剤としてソルビトール(70%含有液)、はちみつ、洋酒、食塩、および水を表8に記載の割合で混合して試験液を調製した(試験液62〜66)。試験液62〜66を用いて、実施例1と同様にして、バナナの変色防止効果を評価した。さらに、各試験液を用いた場合の味覚について実施例16と同様に評価した。結果を表8に示す。
【0057】
【表8】

【0058】
表8の結果から、実施例32〜36のグアバ果汁と、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、およびエタノールのうちの少なくとも3種とを含有する試験液(試験液62〜66)で浸漬処理したバナナは、長時間変色しないことがわかる。さらに、はちみつまたは洋酒を含有する試験液62〜65を用いて浸漬処理したバナナは、自然なバナナの風味を有し、違和感がなかった。
【0059】
(実施例37〜41)
カムカム果汁、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、エタノール、および添加剤としてソルビトール(70%含有液)、はちみつ、洋酒、食塩、および水を表9に記載の割合で混合して試験液を調製した(試験液67〜71とする)。試験液67〜71を用いて、実施例1と同様にして、バナナの変色防止効果を評価した。結果を表9に示す。
【0060】
(比較例31〜44)
カムカム果汁、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、エタノール、および添加剤としてソルビトール(70%含有液)、はちみつ、洋酒、食塩、および水を表9に記載の割合で混合して試験液を調製した(試験液72〜85とする)。試験液72〜85を用いて、実施例1と同様にして、バナナの変色防止効果を評価した。結果を表9に併せて示す。
【0061】
【表9】

【0062】
表9の結果から、実施例37〜41のカムカム果汁と、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、およびエタノール(4種の化合物)のうちの少なくとも3種とを含有する試験液(試験液67〜71)で浸漬処理したバナナは、長時間変色しないことがわかる。これらの試験液67〜71は、いずれもカムカム果汁を25質量%しか含有しないにもかかわらず、カムカム果汁のみを50質量%以上または100質量%含有する比較例31および32の試験液(試験液72および73)に比べて、非常に優れた変色防止効果を有していた。このことは、試験液67〜71がカムカム果汁単独では得られない相乗的な変色防止効果を有することを示す。これらの中でも、特にカムカム果汁と、アスコルビン酸、クエン酸、およびフィチン酸とを含有する試験液67および68、さらにカムカム果汁と、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、およびソルビトールの4種のすべての化合物とを含有する試験液68がより優れた変色防止効果を有していた。
【0063】
これに対して、比較例35〜38のカムカム果汁と、4種の化合物のうちの1種とを含有する試験液76〜79、あるいは比較例39〜44のカムカム果汁と、4種の化合物のうちの2種とを含有する試験液80〜85で浸漬処理したバナナは、いずれも60時間以内に変色しており、十分な変色防止効果は得られなかった。
【0064】
以上のことから、本発明のカムカム果汁と、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、およびエタノールのうちの少なくとも3種とを含有する変色防止剤は、相乗的でかつ優れた変色防止効果を有することがわかる。
【0065】
(実施例42〜44および比較例45)
カムカム果汁、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、エタノール、および添加剤としてソルビトール(70%含有液)、はちみつ、洋酒、食塩、および水を表10に記載の割合で混合して試験液を調製した(試験液86〜89とする)。試験液86〜89を用いて、実施例1と同様にして、バナナの変色防止効果を評価した。結果を表10に示す。
【0066】
【表10】

【0067】
表10の結果から、実施例42〜44のカムカム果汁と、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、およびエタノールのうちの少なくとも3種とを含有する試験液(試験液86〜88)で浸漬処理したバナナは、比較例45のカムカム果汁を含有しない試験液(試験液89)に比べて、長時間変色しないことがわかる。特に、カムカム果汁を25質量%以上含有する試験液(試験液86および87)は、優れた変色防止効果を有することがわかる。
【0068】
(実施例45〜47)
カムカム果汁、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、エタノール、および添加剤としてソルビトール(70%含有液)、はちみつ、洋酒、食塩、および水を表11に記載の割合で混合して試験液を調製した(試験液90〜92とする)。試験液90〜92を用いて、実施例1と同様にして、バナナの変色防止効果を評価した。結果を表11に示す。
【0069】
【表11】

【0070】
表11の結果から、実施例45〜47のカムカム果汁と、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、およびエタノールのうちの少なくとも3種とを含有する試験液(試験液90〜92)で浸漬処理したバナナは、長時間変色しないことがわかる。特に、ソルビトールを含む試験液90および91は、優れた変色防止効果を有していた。
【0071】
(実施例48〜52)
カムカム果汁、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、エタノール、および添加剤としてソルビトール(70%含有液)、はちみつ、洋酒、食塩、および水を表12に記載の割合で混合して試験液を調製した(試験液93〜97とする)。試験液93〜97を用いて、実施例1と同様にして、バナナの変色防止効果を評価した。さらに、各試験液を用いた場合の味覚について実施例16と同様に評価した。結果を表12に示す。
【0072】
【表12】

【0073】
表12の結果から、実施例48〜52のカムカム果汁と、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、およびエタノールのうちの少なくとも3種とを含有する試験液(試験液93〜97)で浸漬処理したバナナは、長時間変色しないことがわかる。さらに、はちみつまたは洋酒を含有する試験液93〜96を用いて浸漬処理したバナナは、自然なバナナの風味を有し、違和感がなかった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によれば、果汁と、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、およびエタノールのうちの少なくとも3種とを含有する青果物の変色防止剤は、優れた青果物の変色防止効果を有する。この青果物の変色防止効果は、それぞれの成分単独では得られない相乗的な効果である。果汁は、アセロラ果汁、グアバ果汁、およびカムカム果汁からなる群より選択される少なくも1種が好ましく用いられる。本発明の青果物の変色防止剤は、さらに青果物の乾燥を防止する効果も有し、既存の変色防止剤に比べて青果物の風味に影響を与えにくい。本発明の青果物の変色防止剤は、カットまたは剥皮した青果物の品質保持、あるいはカットまたは剥皮した青果物を含有する菓子類、特にバナナケーキ、フルーツゼリーなどの果物を含有する菓子類の品質保持などに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
果汁と、アスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、およびエタノールからなる群より選択される少なくとも3種とを含有する、青果物の変色防止剤。
【請求項2】
さらに、糖アルコールを含有する、請求項1に記載の青果物の変色防止剤。
【請求項3】
さらに、糖および酒類のうちの少なくとも1種を含有する、請求項1または2に記載の青果物の変色防止剤。